説明

電気伝導体のコーティング用組成物、及びかかる組成物の調製方法

【課題】得られる絶縁層が高い伸長を有しつつ、当該コーティング組成物による部分放電耐性が従来技術の溶液と比較して著しく増加した、電気伝導体用のコーティング組成物提供すること。得られるエナメル層の熱的及び機械的特性を改善すること。
【解決手段】結晶格子中に、価電子の分極を容易化する選択的に調整された電気的な欠陥構造を有する微粒子1〜50重量%と、有機及び/又は有機−無機マトリックスとからなり、前記微粒子がシリコン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属、ランタニド及びアクチニドからなる群から選択される元素の酸化物、硫化物、セレン化物及び/又はテルル化物から、適当な低原子価又は高原子価元素によるドーピングにより、基本的な結晶格子が欠陥化学(欠陥構造)により前記微粒子の電気的な分極をより容易化する空孔を有する態様で提供されるように調製されるコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気伝導体のコーティング用の組成物、及びかかる組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅又はアルミニウムなどから製造される金属ワイヤは、電気モータ、3相ACモータ、トランスなどにおいて、巻線として広範囲に用いられている。ワイヤの表面には、個々のワイヤのターンを各々絶縁し、短絡を防止するために、電気的絶縁コーティングが施されるが、それにより、当該ワイヤをコイルとして使用することが不可能になる。例えば、低〜中速の可変速モータは大部分がパルス制御される交流コンバータにより実現される。これらの条件下では、その結果として生じる絶縁体に作用する電荷は、電源の操作の場合と比較し、顕著に大きい。スイッチ操作の間、終端電圧の最高3倍のピーク電圧が生じうる。これらにより、絶縁材料が一時的に最高350℃の温度となり、それにより有機物質ベースのポリマー構造が損傷を受けうる。その熱負荷により、絶縁材料の特定の箇所において部分放電が生じ、完全な腐食が局所的に生じる場合、この部分において即座に生じる故障により、ターン間の絶縁が完全に損なわれる。
【0003】
ゆえに、例えば高電圧負荷又は交流電圧パルスによって生じるパルス形の電圧負荷による損傷を受けない状態を保つためには、ワイヤ巻線の絶縁層が、電気的及び熱的耐久性に関する厳しい条件を満たす必要がある。更に、その絶縁層は高いかき傷耐性、高い接着力、高い摩擦耐性及び高い浸食耐性を示す必要がある。それらはまた、十分な柔軟性を有する(すなわち絶縁コーティングが下流工程における、ワイヤのベンディング及び伸線の間に破れが生じない)必要もある。
【0004】
パルス制御された交流コンバータにより駆動される電気モータの特別な使用において、ポリマーエナメル結合剤中への、μm以下のサイズ範囲の無機酸化物粒子の使用により、部分放電に対する耐性の増加、それによるその系の信頼性の向上が実現されることが、特許文献1:国際公開第96/42089A1号に既に記載されている。そこで記載されている系における組成物の基本的な欠点は、微粒子状の酸化物相がマトリックスに結合しないことである。すなわち非結合の粒子の存在により絶縁層の強度が減少し、下流側の巻線工程により生じる伸線の間、そこにひびが形成され易くなる。未完成段階でのひびの形成により欠陥が生じ、部分放電に対する耐性の顕著な低下が明らかとなる。この理由から、各々の酸化物充填層の上に非充填層を重層することにより、絶縁層の頂側部からひびが生じる傾向を最小化させた、多層コーティングに関する報告がなされている。但しこの方法は、異なる材料から得られる幾つかの層が必要となるため、生産コストの上昇につながり、好ましくない。
【0005】
対照的に、特許文献2:欧州特許出願公告第1166283B1号は、金属電気伝導体用のコンポジットコーティング組成物を開示している。当該技術は単層又は多層用途に用いられ、伸張性の低下によって生じる、上記のような部分放電耐性の低下という欠点が存在しない。上記文献は、1〜60重量%の酸化物粒子、0〜90重量%の1つ以上の従来公知の結合剤、並びに0〜95重量%の1つ以上の従来公知の添加剤、溶媒、色素及び/又はフィラを含有するコーティング組成物に関して詳細に開示している。上記酸化物粒子は、アルミニウム、スズ、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属並びにランタニド及びアクチニド、特にシリコン、チタン、亜鉛、イットリウム、セリウム、バナジウム、ハフニウム、ジルコニウム、ニッケル及び/又はタンタルからなる元素群から選択される元素−酸素ネットワークに基づくものであり、結合剤マトリックスに結合する。この結合の存在により、得られる絶縁層の伸張性は、非充填のポリマーマトリックスと比較してもわずかな減少に留まる。その結果、良好な表面品質を有し、十分な可撓性を有するコーティングが、単層用途においても得られることとなる。上記の粒子は1〜300nmの平均直径を有する。それらは部分放電耐性が改善されており、ゆえに、伸張した場合であっても、絶縁エナメルコーティングの電気的な耐用年数も改善される。しかしながら、微粒子の修飾により、部分放電耐性の予想外の顕著な増加がもたらされるわけではなく、実際に所望の高いレベルでの電気絶縁特性を実現するためには、30重量%の範囲の比較的高いレベルでの粒子含量でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第96/42089A1号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公告第1166283B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上より、本発明の課題は、電気伝導体用のコーティング組成物であって、得られる絶縁層が高い伸長を有しつつ、当該コーティング組成物による部分放電耐性が従来技術の解決法と比較して著しく増加した、前記組成物を提供することである。更なる課題は、同時に、得られるエナメル層の熱的及び機械的特性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、電気伝導体用のコーティング組成物の提供により解決され、前記コーティングは、1〜50重量%の微粒子であって、前記微粒子の結晶格子中に、価電子の分極を容易化する選択的に調整された電気的な欠陥構造を有する微粒子と、有機及び/又は有機−無機マトリックスと、からなり、選択的に調整された電気的な欠陥構造を有する前記微粒子は、シリコン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属並びにランタニド及びアクチニドからなる群、特にシリコン、チタン、亜鉛、イットリウム、セリウム、バナジウム、ハフニウム、ジルコニウム、ニッケル及び/又はタンタルからなる群から選択される元素の酸化物、硫化物、セレン化物及び/又はテルル化物から、適当な低原子価元素又は高原子価元素によるドーピングにより、その基本的な結晶格子が、欠陥化学(欠陥構造)により前記微粒子の電気的な分極をより容易化する空孔を有する態様で提供されるように調製される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従来公知の組成物と比較し、本発明のコーティング組成物によって得られた絶縁層の使用により、部分放電耐性の予想外の顕著な向上が実現され、その結果、高電圧(特にパルス形の電圧)と、それと同時の高温との組み合わせによる影響下においても、連続的な負荷が可能となる。それらは、欠陥化学のない粒子を含有するコンポジット組成物と比較し、顕著に高い電気負荷容量及び顕著に長い耐用年数を示す。このようにして調製されるコーティングはまた、低い表面エネルギーを示す。
【0010】
部分放電耐性の向上以外にも、本発明のコーティング組成物によって得られる絶縁層は更に、優れた粘着力、高い耐摩耗性、高レベルの硬度及び柔軟性、並びに良好な表面品質を示す。
【0011】
更に、本発明の組成物は、高温(例えば300℃)で使用でき、これらの温度においても、上記の機能様式が維持されうることが明らかとなっている。
【0012】
要約すると、電気伝導体(例えば金属ワイヤ)の絶縁に用いられる、高分子マトリックスと、過電圧を最小化する金属酸化物粒子との組成物が提供され、それにより、当該金属ワイヤが、顕著に増加した電気的な耐用年数(顕著に改良された部分放電耐性)を示すようになり、それと同時に、増加した熱安定性、並びに改善された機械的特性(耐摩耗性、強度及び柔軟性)を併せ持つようになる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、1つ以上の重合可能な結合剤及び/又は複合型結合剤を含有させるための、有機及び/又は有機−無機マトリックスの提供である。
【0014】
本発明の更なる発展形態では、上記組成物が、添加剤、重合開始剤、溶媒、色素及び/又はフィラからなる群から選択される1つ以上の物質を含有する。
【0015】
0.5〜15モル%、好ましくは1〜10モル%、更に好ましくは2〜8モル%のドーピング元素を使用してもよい。
【0016】
本発明では、電気的な欠陥構造を有する上記微粒子の平均粒子径は、1〜1,000nmの範囲内である。
【0017】
上記微粒子がポリマーベース結合剤及び/又は複合型結合剤に適する反応性表面基を含むことも、同様に本発明の範囲内である。
【0018】
この場合、上記反応性表面基は、金属酸エステル、シアネート基、ウレタン基、エポキシド基、エポキシ、カルボン酸無水物、C=C二重結合系、ヒドロキシル基、酸素を介して結合するアルコール、エステル、エーテル、キレート剤、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム及び/又は反応性樹脂成分からなる群から選択され、上記ポリマーベース結合剤は、アクリレート基、フェノール基、メラミン基、ポリエステル−ポリエステルイミド基、ポリスルフィド基、エポキシド基若しくはポリアミド基、ポリビニルホルマール樹脂、芳香族化合物、脂肪族化合物、エステル、エーテル、アルコラート、脂肪又はキレート剤を含有するのが好適である。
【0019】
上記組成物が透明であることは、本発明の範囲内である。
【0020】
本発明によって、透明な組成物を開発することが可能であるため、例えばディスプレイ技術などの光学分野においても、これを使用することが可能である。
【0021】
本発明は更に、フッ素化合物を含む組成物の提供に関する。
【0022】
本発明の一実施形態では、上記組成物が有機的に修飾された無機縮合物を含有する。
【0023】
更なる実施形態では、上記組成物はフッ化シラン、その前縮合物又は縮合物を含有する。
【0024】
本発明の範囲にはまた、電気伝導体用のコーティングの調製方法が包含される。当該コーティングは、1〜50重量%の微粒子であって、前記微粒子の結晶格子中に、価電子の分極を容易化する選択的に調整された電気的な欠陥構造を有する微粒子と、有機及び/又は有機−無機マトリックスと、を分散させ、選択的に調整された電気的な欠陥構造を有する前記微粒子が、シリコン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属並びにランタニド及びアクチニドからなる群、にシリコン、チタン、亜鉛、イットリウム、セリウム、バナジウム、ハフニウム、ジルコニウム、ニッケル及び/又はタンタルからなる群から選択される元素の酸化物、硫化物、セレン化物及び/又はテルル化物から、適当な低原子価元素又は高原子価元素によるドーピングにより、その基本的な結晶格子が、欠陥化学(欠陥構造)により前記微粒子の電気的な分極をより容易化する空孔を有する態様で提供されるように調製される。
【0025】
この場合、上記有機及び/又は有機−無機マトリックスが、1つ以上の重合可能結合剤及び/又は複合型結合剤を含有することは本発明の範囲内である。
【0026】
本発明では、添加剤、重合開始剤、溶媒、色素及び/又はフィラからなる群から選択される1つ以上の物質が添加される。
【0027】
本発明では、0.5〜15モル%、好ましくは1〜10モル%、更に好ましくは2〜8モル%のドーピング元素が使用される。
【0028】
また、電気的な欠陥構造を有する上記微粒子の平均粒子径が1〜1,000nmであることが好適である。
【0029】
また、上記微粒子の電気的な欠陥構造は、イオンビーム及び/又は電子ビーム処理により調整されるのが好適である。
【0030】
上記微粒子がポリマーベース結合剤及び/又は複合型結合剤に適する反応性表面基を含むことも、同様に本発明の範囲内である。
【0031】
この場合、上記反応性表面基は、金属酸エステル、シアネート基、ウレタン基、エポキシド基、エポキシ、カルボン酸無水物、C=C二重結合系、ヒドロキシル基、酸素を介して結合するアルコール、エステル、エーテル、キレート剤、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム及び/又は反応性樹脂成分からなる群から選択され、上記ポリマーベース結合剤は、アクリレート基、フェノール基、メラミン基、ポリエステル−ポリエステルイミド基、ポリスルフィド基、エポキシド基若しくはポリアミド基、ポリビニルホルマール樹脂、芳香族化合物、脂肪族化合物、エステル、エーテル、アルコラート、脂肪又はキレート剤を含有する。
【0032】
上記のコーティングの機械的特性(例えば弾性係数)は、重合可能若しくは重合不可能な表面基の選択により影響されうる。
【0033】
イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムを用いた組成物の場合、本発明の基礎となる、上記微粒子中の結晶格子の電気的な欠陥構造による分極増大のメカニズムは、以下の通りと考えられるが、これは飽くまで仮定に過ぎない。ジルコニウムがイットリウムでドーピングされるとき、四価のジルコニウムの格子サイトは、統計学的に三価イットリウムによって塞がれている。その結果、非ドープ二酸化ジルコニウムに存在しない酸素空孔が上記結晶格子中で生じ、いわゆる欠陥構造が形成される。選択的に生じた欠陥構造は最終的に、原子価電子の分極の顕著な増大を生じさせる。分極の増加により、系中の電荷の移動を促進し、これが上記微粒子の結晶構造における、電荷の拡散分極の増大として明らかとなる。高分子結合剤と組み合わせた場合、微粒子の拡散分極の増大により、微粒子自体を介した電気的な活性中心が形成され、それらは低い誘電率を有する高絶縁結合剤マトリックスにより各々分離されている。
【0034】
上記微粒子は非常に小さい直径を有し、結合剤マトリックス全体にわたり微細に分散しているため、上記絶縁層は分極性が増加した非常に多くの活性中心を含有し、これらは、絶縁層で生じる、高度に局所化したピーク電圧を効果的に非局所化させる。その結果、(熱的に不安定な)絶縁結合剤相中において、顕著な過電圧がほとんど生じなくなる。これらにより、損傷が局所化され、また絶縁不良が未然に防止される。このメカニズムは、本発明による組成物の、顕著に強化された部分放電耐性、及び電気的な耐用年数の顕著な増加が原因であると考えられる。
【0035】
以下の実施例で、絶縁材料の電気的特性に対する、微粒子の選択的な欠陥化学の効果を示す。
【0036】
その際、銅製のシートを、非充填のポリウレタンエナメル、Yドープポリウレタン及び非ドープZrOでコーティングした。サンプルの層厚を約20μmとした。交流電場で、50Hzの周波数、Vpp=100Vの電圧及びT=20℃の温度でサンプルの静電容量を算出することにより、誘電特性を決定した。更に、特定の閾値電圧以下の部分放電が最初に生じたときの、平均場の強度を算出した。結果を以下の表に示す。
【0037】
表:非充填のポリウレタンマトリックスと比較した、欠陥化学を有する(及び有さない)、ZrO微粒子含有ポリウレタンベース絶縁層における、誘電定数及び部分放電:
【表1】

【0038】
電荷の拡散分極の増大を引き起こす欠陥構造が、ドープした微粒子中に存在するため、高誘電率が生じ、それにより、非ドープの微粒子の場合とは対照的な結果が得られる。この最終的な効果は、外部交流電場の印加により、絶縁体中で生じる部分放電が、再び均等にされるということである。その結果、部分放電は臨界サイズに至ることができず、それにより部分放電経路の形成(トリーイング)が防止される。これにより、最終的には、本発明に係る組成物の電気的な耐用年数の顕著な改良が観察される。
【0039】
この、欠陥構造を有するZrO微粒子を含有するコンポジットの部分放電耐性の増加は、以下の実施例で例示するように、高温において更に促進される。
【0040】
非充填のポリウレタンと、Yドープ及び非ドープZrOを含有するポリウレタンとでコーティングされた金属シートを170℃まで加熱した。上記サンプルを交流電場中に置き、並流(リーク電流)を測定した(反比例の関係にあるその一部が、特定のコーティングの絶縁特性の品質の基準となる)。ドープしたZrOを含有するコンポジットサンプルは、非ドープZrO粒子を含んでいるサンプルがより低いリーク電流を示した(IPU=33μA、IPU−ZrO2−非ドープ=60μA、IPU−ZrO2−ドープ=8.3μA)。これは、欠陥構造を有するコンポジットの電荷担体の拡散分極が、高温により更に増大することを示し、その結果、電場により生じる部分放電が更に均等にされる。これにより、既に測定された低いリーク電流となる。すなわち、これらの結果もまた、欠陥構造を有する微粒子の使用により、絶縁層の電気的な耐用年数が増加することを証明するものである。
【実施例】
【0041】
実施例1:(対照の絶縁エナメル):
市販のポリウレタン樹脂を、対照の絶縁エナメルとして用いた。PU樹脂は、成分としてポリエステルポリオールとブロック化イソシアネート架橋剤を含有する。固形分含量は約25重量%である。
【0042】
実施例2:非ドープZrO粒子からのZrO微粒子ゾルの調製:
非ドープZrO粒子を、高圧及び高温における制御された成長工程(熱水法)により調製した。この際、3,200gのZr−n−プロピレートを、適当な添加剤を用いて、制御された方法により沈殿させ、T=270℃及び80barで5時間、オートクレーブ処理した。このようにして調製される粉末ケーキを更に冷凍乾燥させた。上記の粉末を次に、エタノール中においてトリオキサデカン酸で表面修飾した。約1kgの非ドープZrOを、この混合物中に分散させた。全ての懸濁液をその後、ZrOグラインディングボールで約5時間連続的に摩擦することにより、均質化した。表面修飾された非ドープZrO微粒子を得た。
【0043】
実施例3:ドープしたZrO微粒子からのZrO微粒子ゾルの調製:
ドープしたZrO微粒子を、実施例2と同様の熱水法により調製した。この際、230gの硝酸イットリウム(Y硝酸)を、ドーピング剤として、3,200gのZr−n−プロピレート中に分散させた。これを、適当な添加剤を用いて、制御された方法により沈殿させ、T=270℃及び80barで5時間、オートクレーブ処理した。このようにして調製される粉末ケーキを更に冷凍乾燥させた。
【0044】
得られた粉末を、エタノール中においてトリオキサデカン酸で表面修飾した。この操作は、1,375gのエタノール中に125gのトリオキサデカン酸を添加することにより実施した。約1kgのドープしたZrO粒子を、そこに分散させた。全ての懸濁液をその後、ZrOグラインディングボールで約5時間連続的に摩擦することにより、均質化した。表面修飾された、ドープしたZrO微粒子を得た。
【0045】
実施例4:非ドープZrO微粒子を有するPU−ZrOコンポジットゾルの調製:
非ドープZrOを含有するPU−ZrOコンポジットゾルを絶縁エナメルとして調製するため、実施例2で得た300gの非ドープZrOゾルを、実施例1で得た約1.7kgのPUマトリックスエナメル中に、撹拌しながら分散させた。このゾルを超音波処理し、より良好に分散させた。全てのPUコンポジットゾルを更に12時間撹拌して均質化した。このようにして、均一に分散された、非ドープZrOを含有する均一なPUコンポジットゾルを得た。それはコーティング用途に適していた。
【0046】
実施例5:ドープしたZrO微粒子を有するPU−ZrOコンポジットゾルの調製:
ドープしたZrOを含有するPU−ZrOコンポジットゾルを絶縁エナメルとして調製するため、実施例4と同様の手順を用い、実施例3で得た300gのドープしたZrOゾルを、実施例1で得た約1.7kgのPUマトリックスエナメル中に分散させた。このゾルを超音波処理し、より良好に分散させた。全てのPUコンポジットゾルを更に12時間撹拌して均質化した。均一に分散された、ドープZrO微粒子を有する均一なPUコンポジットゾルを得た。それはコーティング用途に適していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1〜50重量%の微粒子であって、前記微粒子の結晶格子中に、価電子の分極を容易化する選択的に調整された電気的な欠陥構造を有する微粒子と、
有機及び/又は有機−無機マトリックスと、からなる、電気伝導体用のコーティング組成物であって、
選択的に調整された電気的な欠陥構造を有する前記微粒子が、
シリコン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属並びにランタニド及びアクチニドからなる群、
特にシリコン、チタン、亜鉛、イットリウム、セリウム、バナジウム、ハフニウム、ジルコニウム、ニッケル及び/又はタンタルからなる群から選択される元素の酸化物、硫化物、セレン化物及び/又はテルル化物から、
適当な低原子価元素又は高原子価元素によるドーピングにより、
その基本的な結晶格子が、欠陥化学(欠陥構造)により前記微粒子の電気的な分極をより容易化する空孔を有する態様で提供されるように調製される組成物。
【請求項2】
前記有機及び/又は有機−無機マトリックスが、1つ以上の重合可能な結合剤及び/又は複合型結合剤を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、添加剤、重合開始剤、溶媒、色素及び/又はフィラからなる群から選択される1つ以上の物質を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ドーピング元素が、0.5〜15モル%、好ましくは1〜10モル%、更に好ましくは2〜8モル%の量で用いられる、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記電気的な欠陥構造を有する前記微粒子の平均粒子径が、1〜1,000nmである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記微粒子が、ポリマーベース結合剤及び/又は複合型結合剤に適する反応性表面基を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項7】
前記反応性表面基が、金属酸エステル、シアネート基、ウレタン基、エポキシド基、エポキシ、カルボン酸無水物、C=C二重結合系、ヒドロキシル基、酸素を介して結合するアルコール、エステル、エーテル、キレート剤、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム及び/又は反応性樹脂成分からなる群から選択され、
前記ポリマーベース結合剤が、アクリレート基、フェノール基、メラミン基、ポリエステル−ポリエステルイミド基、ポリスルフィド基、エポキシド基若しくはポリアミド基、ポリビニルホルマール樹脂、芳香族化合物、脂肪族化合物、エステル、エーテル、アルコラート、脂肪又はキレート剤を含有する、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
透明である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
フッ素化合物を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
有機的に修飾された無機縮合物を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
フッ化シラン、その前縮合物又は縮合物を含有する、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
電気伝導体用のコーティングの調製方法であって、前記コーティングが、
1〜50重量%の微粒子であって、前記微粒子の結晶格子中に、価電子の分極を容易化する選択的に調整された電気的な欠陥構造を有する微粒子と
有機及び/又は有機−無機マトリックスと、を分散させ、
選択的に調整された電気的な欠陥構造を有する前記微粒子が、
シリコン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属並びにランタニド及びアクチニドからなる群、
特にシリコン、チタン、亜鉛、イットリウム、セリウム、バナジウム、ハフニウム、ジルコニウム、ニッケル及び/又はタンタルからなる群から選択される元素の酸化物、硫化物、セレン化物及び/又はテルル化物から、
適当な低原子価元素又は高原子価元素によるドーピングにより、
その基本的な結晶格子が、欠陥化学(欠陥構造)により前記微粒子の電気的な分極をより容易化する空孔を有する態様で提供されるように調製される方法。
【請求項13】
前記有機及び/又は有機−無機マトリックスが、1つ以上の重合可能な結合剤及び/又は複合型結合剤を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
添加剤、溶媒、色素及び/又はフィラからなる群から選択される1つ以上の物質が添加される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
ドーピング元素が、0.5〜15モル%、好ましくは1〜10モル%、更に好ましくは2〜8モル%の量で用いられる、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記電気的な欠陥構造を有する前記微粒子の平均粒子径が、1〜1,000nmである、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記微粒子の前記電気的な欠陥構造が、イオンビーム及び/又は電子ビーム処理により調整される、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記微粒子が、ポリマーベース結合剤及び/又は複合型結合剤に適する反応性表面基を含む、請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記反応性表面基が、金属酸エステル、シアネート基、ウレタン基、エポキシド基、エポキシ、カルボン酸無水物、C=C二重結合系、ヒドロキシル基、酸素を介して結合するアルコール、エステル、エーテル、キレート剤、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム及び/又は反応性樹脂成分からなる群から選択され、
前記ポリマーベース結合剤が、アクリレート基、フェノール基、メラミン基、ポリエステル−ポリエステルイミド基、ポリスルフィド基、エポキシド基若しくはポリアミド基、ポリビニルホルマール樹脂、芳香族化合物、脂肪族化合物、エステル、エーテル、アルコラート、脂肪又はキレート剤を含有する、請求項12記載の方法。

【公表番号】特表2010−502772(P2010−502772A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525921(P2009−525921)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【国際出願番号】PCT/DE2007/001569
【国際公開番号】WO2008/028471
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(509060442)ライプニッツ−インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィヒ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥング (1)
【Fターム(参考)】