説明

電気光学装置、電気光学装置用基板、電気光学装置の製造方法および電子機器

【課題】 観察者の視角が変化する領域である表示領域の全体にわたって明るさが均一である電気光学装置を提供する。
【解決手段】 液晶を支持する基板16bと、複数の画素によって基板16b上に面状に形成される表示領域Vとを有する液晶表示装置である。表示領域Vは異なる光散乱特性を有する複数の領域Va、Vb、Vcを有する。例えば、視点Pから遠い領域Vb内の反射膜32の表面は深い凹凸形状で広い散乱特性を有し、視点Pから近い領域Vc内の反射膜32の表面は浅い凹凸形状で狭い散乱特性を有し、中央の領域Va内の反射膜32の表面は中間の凹凸形状で中間の散乱特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等といった電気光学装置に関する。また、本発明は、液晶表示装置等といった電気光学装置に用いられる基板に関する。また、本発明は、上記の電気光学装置を製造するための製造方法に関する。また、本発明は、上記の電気光学装置を用いて構成される電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話機、携帯情報端末機等といった各種の電子機器において、電気光学装置が広く用いられている。これらの電気光学装置は、例えば、電子機器に関する各種の情報を視覚的に表示するための表示部として用いられている。この電気光学装置において、電気光学物質として液晶を用いた装置、すなわち液晶表示装置が知られている。また、電気光学物質としてEL(Electro Luminescence)を用いたEL装置も知られている。
【0003】
例えば、液晶表示装置は電気光学パネルとしての液晶パネルを有する。この液晶パネルは、一般に、それぞれが電極を備えた一対の基板の間に液晶層を介在させた構造を有する。この液晶層は、例えば次のようにして、すなわち、前記一対の基板の間にシール材によって囲まれた隙間を形成し、この隙間の中に液晶を封止することによって形成される。この液晶表示装置では、液晶層に光を供給すると共に該液晶層に印加される電圧を画素ごとに制御することにより、液晶層内の液晶分子の配向を画素ごとに制御する。液晶層へ供給された光は、液晶分子の配向状態に従って変調され、この変調された光を偏光板の液晶側表面に供給することにより、その偏光板の観察側表面に文字、数字、図形等といった像が表示される。
【0004】
上記のように液晶層へ光を供給する方法として、反射型および透過型の2種類が知られている。また、反射型と透過型を選択して実行できる、いわゆる半透過反射型も知られている。反射型の光供給方法では、液晶パネルの内部に反射膜を設け、液晶パネル内に取り込んだ外部光、例えば太陽光、室内光をその反射膜によって反射して液晶層に光を供給する。この場合、反射膜の反射面が鏡面であると表示の背景に反射像が映って表示が見難くなるおそれがある。これを回避するため、反射膜の表面に凹凸パターンを形成して反射光を散乱させることが広く一般に行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、反射膜の表面に凹凸パターンを形成することに関して、1画素内に異なる形状の凹凸パターンを形成することにより、1画素内で異なる散乱特性を持たせるようにした技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−75987号公報(第7頁、図1)
【特許文献2】特許第3019058号公報(第7頁、図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、観察者が電気光学装置の表示を観察する場合、表示面上の領域によって観察者の視角は異なる。例えば、図20に示すように、表示面V0上において観察者の視点Eから最も遠い領域での視角をθ1、次に遠い位置での視角をθ2、最も近い位置での視角をθ3とすると、その視角はθ1<θ2<θ3のように異なる。そのため、上記特許文献1に開示された従来の液晶表示装置においては、観察者が表示領域を見たとき、その観察者から見て手前側の表示領域と奥側の表示領域とで表示の明るさが異なる場合があった。つまり、観察者の視角に応じて表示の明るさが異なる場合があった。この場合には、液晶パネルの表示領域内において、観察者が見る表示に見難い部分が発生する可能性があった。
【0008】
また、上記特許文献2に開示された従来の液晶表示装置において、液晶パネルは、1つの画素内に関しては異なる散乱特性を有するが、表示領域全体に関しては均一な散乱特性を有している。それ故、上記特許文献1に開示された液晶表示装置と同じように、観察者の視角に応じて見難い部分が発生する可能性があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、観察者の視角が変化する領域である表示領域の全体にわたって明るさが均一である電気光学装置、電気光学装置用基板、電気光学装置の製造方法および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電気光学装置は、電気光学物質を支持する基板と、複数の画素と、前記複数の画素によって構成される表示領域とを有する電気光学装置であって、前記表示領域は異なる光散乱特性を有する複数の領域を有することを特徴とする。
【0011】
本明細書において、電気光学物質は、電気的条件の変化に応じて光学的特性が変化する物質のことであり、具体的には、液晶表示装置で用いられる液晶、EL装置で用いられるEL、プラズマディスプレイ装置で用いられるガス等が考えられる。また、画素は、電気光学装置における表示の一単位であり、例えば、互いに対向する一対の電極が重なり合う場合に、その重なり合った領域を基礎として画素が特定される。この画素が複数並べられて電気光学装置の表示領域が形成される。
【0012】
上記の電気光学装置によれば、表示領域内に散乱特性が異なる複数の領域を設けたので、表示領域内の位置によって光散乱特性を変えることができる。これにより、表示領域内で観察者の視角が変化する場合でも該表示領域内の表示の明るさを均一にできる。その結果、観察者が表示領域内の表示を見たときに、その表示全体を見易くすることができる。なお、散乱特性が異なるとは、例えば、広い散乱が起こるか、狭い散乱が起こるか等のことである。
【0013】
本発明に係る電気光学装置において、前記複数の領域は、前記表示領域の中心を含み広い散乱特性を有する中央領域を備え、前記複数の領域の内、前記中央領域の他の領域は、前記中央領域よりも狭い散乱特性を有することが望ましい。
【0014】
ここで、「広い散乱特性」とは、図6(a)に示すように、散乱角φの広い範囲にわたって強度Iの散乱光が得られることである。また、「狭い散乱特性」とは、図6(b)に示すように、散乱角φの狭い範囲について強度Iの散乱光が得られることである。つまり、散乱特性が広い場合、その領域から出射される光は広い角度範囲にわたって進行する。一方、散乱特性が狭い場合、その領域から出射される光は狭い角度範囲内で進行する。
【0015】
上記の電気光学装置によれば、中央領域において広い散乱特性を備え、中央領域以外の領域では狭い散乱特性を備えるようにした。こうすれば、中央領域に対しては観察者の視角が大きく、それ以外の領域に対しては観察者の視角が小さい場合に表示領域内の表示の明るさを均一にできる。
【0016】
また、本発明に係る電気光学装置において、前記各複数の領域において、所定の観察点から表示面までの距離が長い領域は広い散乱特性を有し、前記距離が長い領域よりも前記観察点から表示面までの距離が短い領域は、前記距離が長い領域よりも狭い散乱特性を有することが望ましい。ここで「距離が長い」および「距離が短い」の語は、絶対的な長さを示すものではなく、表示領域上で区分した複数の領域間での距離の違いを相対的に表現するものである。
【0017】
上記の電気光学装置においては、表示領域に関して、観察点からの距離が長い領域、すなわち視角が広い領域は広い散乱特性を示すように設定し、観察点からの距離が短い領域、すなわち視角が狭い領域は狭い散乱特性を示すように設定した。こうすれば、表示領域内において散乱特性が異なる各領域から出射した光を、それぞれ、観察点に向けて進行させることができる。つまり、表示領域全体からの光を観察点に向けることができる。このため、観察者が観察点から表示領域内の表示を見たとき、その表示の明るさを表示領域の全体にわたって均一にできる。この結果、表示領域全体の表示を観察者にとって見易くできる。
【0018】
また、本発明に係る電気光学装置において、前記各複数の領域において、前記観察点に対して前記表示領域の中央領域より反対側にある領域では広い散乱特性を有し、前記表示領域の中央領域より観察点側にある領域では、前記反対側の領域よりも狭い散乱特性を有することが望ましい。こうすれば、表示領域の中央領域より反対側から出射される光は広い角度範囲で進行させることができ、表示領域の中央領域より観察点側の領域から出射された光は狭い角度範囲で進行させることができる。このため、前記表示領域の中央領域より下側に観察点がある場合に、観察者にとっての表示の明るさを表示領域の全体にわたって均一にすることができる。
【0019】
また、本発明に係る電気光学装置において、観察者が表示領域を観察する観察点は、前記表示領域の略中心に対して垂直から角度15度傾いた線上に位置すること、すなわち、前記表示領域の略中心位置の法線から角度15度傾いた線上に位置すること、が望ましい。このように、観察者の視線に対して所定角度だけ傾斜する表示領域に対して本発明を適用することが効果的である。
【0020】
また、本発明に係る電気光学装置は、前記複数の領域毎に対応した、複数の凹凸からなる複数の凹凸部を有する反射膜を前記基板上にさらに有し、前記複数の領域毎に、前記凹凸の形状、大きさまたは密度を異ならせることによって、異なる散乱特性を有する前記複数の領域を形成することが望ましい。こうすれば、反射光を確実に散乱させることができるので、特に反射型の電気光学装置に有効である。また、反射板の凹凸形状を領域ごとに異なる形状に形成することにより、表示領域内に異なる光散乱特性を有する複数の領域を容易に形成できる。
【0021】
また、本発明に係る電気光学装置は、透過する光を散乱する散乱板を前記基板上にさらに有し、該散乱板の散乱特性を前記複数の領域に対応する複数の部分毎に異ならせることによって、異なる散乱特性を有する前記複数の領域を形成することが望ましい。こうすれば、反射光のみならず任意の光を散乱させることができるので、反射型以外の電気光学装置、例えば透過型の電気光学装置にも有効である。
【0022】
また、本発明に係る電気光学装置は、前記中央領域を挟んで対向する、第1領域と第2領域とを備え、前記第1領域は、前記観察点からの距離が長くて前記中央領域を囲む領域であり、前記第2領域は、前記観察点からの距離が前記距離が長い領域よりも短く、前記中央領域を囲む領域であり、前記第1領域、前記中央領域、前記第2領域の順に広い散乱特性となることが望ましい。こうすれば、前記第1領域から出射される光は広い角度範囲で進行させることができ、前記第2領域から出射された光は狭い角度範囲で進行させることができる。また、前記中央領域から出射される光は第1領域から出射される光と第2領域から出射される光との中間の角度範囲で進行させることができる。このため、前記表示領域の中央領域より下側に観察点がある場合に、観察者にとっての表示の明るさを表示領域の全体にわたって均一にすることができる。
【0023】
次に、本発明に係る電気光学装置の製造方法は、電気光学物質を支持する基板と、複数の画素と、前記複数の画素によって構成される表示領域とを有し、前記表示領域は異なる光散乱特性を有する複数の領域を有する電気光学装置の製造方法であって、前記基板の上に、複数の凹凸からなる複数の凹凸部を備えた反射膜を形成する工程を備え、前記反射膜を形成する工程では、前記複数の領域毎に、形状、大きさまたは密度が異なる前記凹凸を形成することを特徴とする。この電気光学装置の製造方法によれば、表示領域に対する観察者の視角が変化しても該表示領域内の表示の明るさを均一にできる。その結果、観察者が表示領域内の表示を見たときに、その表示全体を見易くすることができる。
【0024】
本発明に係る電気光学装置の製造方法において、前記基板の上に、複数の凹凸からなる複数の凹凸部を備えた樹脂層を形成する工程を備え、前記反射層を形成する工程では、前記樹脂層の上に前記反射膜を形成することが望ましい。こうすれば、光散乱特性の異なる複数の領域を反射膜上の所望の位置に容易に形成できる。
【0025】
また、本発明に係る電気光学装置の製造方法において、前記樹脂層を形成する工程は、感光性樹脂材料の層を前記基板の上に形成する工程と、前記感光性樹脂材料の層を露光マスクを介して露光する露光工程と、露光された前記感光性樹脂材料の層を現像する工程とを有し、前記露光マスクは、前記複数の領域毎に遮光性が異なるマスクパターンを有し、前記露光工程では、異なる高さの凹凸の潜像が1回の露光で行われることが望ましい。
【0026】
ここでいう潜像とは、感光性樹脂材料が露光されて感光した際にその感光性樹脂材料の中に生じる像のことであって、感光性樹脂材料を現像するまでは目に見えない像のことである。この潜像を有した感光性樹脂材料に現像処理を施すことにより、その感光性樹脂材料に複数の凹凸部が形成され、これらの凹凸部によって凹凸形状が形成される。上記の電気光学装置の製造方法において、異なる高さの凹凸部の潜像を1回の露光で同時に形成するようにすれば、工程を増やすことなく樹脂層を形成できる。
【0027】
また、本発明に係る電気光学装置の製造方法において、前記樹脂層を形成する工程は、感光性樹脂材料の層を前記基板の上に形成する工程と、前記感光性樹脂材料の層を露光マスクを介して露光する露光工程と、露光された前記感光性樹脂材料の層を現像する工程と
を有し、前記露光工程では、前記複数の領域毎に異なる露光マスクを介して複数回の露光が行われ、前記複数回の露光の各々では、異なる露光量で露光が行われることが望ましい。こうすれば、フォトマスクのマスクパターンを複雑にすることなく、反射膜上に凹凸形状を形成できる。
【0028】
次に、本発明に係る電気光学装置用基板は、複数の画素が設定された基板と、前記複数の画素によって構成される表示領域を有し、前記表示領域は異なる散乱特性を有する複数の領域を有することを特徴とする。この電気光学装置用基板によれば、表示領域内に散乱特性が異なる複数の領域を設けたので、表示領域内の位置によって光散乱特性を変えることができる。これにより、表示領域内で観察者の視角が変化する場合でも該表示領域の全体の明るさを均一にできる。その結果、表示領域全体の表示を観察者にとって見易くできる。
【0029】
次に、本発明に係る電子機器は、以上に記載した構成の電気光学装置を有することを特徴とする。本発明に係る電気光学装置によれば、散乱特性が異なる複数の領域を表示領域内に設けたので、表示領域内の位置に対応させて光散乱特性を変えることができる。これにより、表示領域内で観察者の視角が変化する場合でも該表示領域の全体の明るさを均一にでき、それ故、表示領域全体の表示を観察者にとって見易くできる。従って、この電気光学装置を用いた電子機器においても、表示領域内で観察者の視角が変化する場合でも該表示領域の全体の明るさを均一にでき、それ故、表示領域全体の表示を観察者にとって見易くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(電気光学装置および電気光学装置用基板の第1実施形態)
以下、本発明に係る電気光学装置および電気光学装置用基板を、電気光学装置の一例である液晶表示装置を例に挙げて説明する。なお、本発明がその実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く説明するために、複数の要素間で寸法比が実際のものと異なっていることに留意すべきである。
【0031】
図1は、本発明に係る電気光学装置の一実施形態である液晶表示装置を示している。この液晶表示装置は、スイッチング素子として2端子型の非線形素子であるTFD(Thin Film Diode)素子を用いるアクティブマトリクス方式の液晶表示装置である。図2は、図1における画素の近傍を拡大して示している。
【0032】
図1において、電気光学装置としての液晶表示装置1は、電気光学パネルとしての液晶パネル2と、その液晶パネル2に実装された駆動用IC3と、その液晶パネル2に付設された照明装置4と、その液晶パネル2の辺端に接続された配線基板としてのFPC(Flexible Printed Circuit)5とを有する。この液晶表示装置1は、矢印Aが描かれた側が観察側である。照明装置4は、光源としてのLED(Light Emitting Diode)6と、LED6からの光を内部へ導入して面状の光として液晶パネル2へ出射する導光体7とを有する。導光体7は、光入射面7aを通して光を導入し、光出射面7bから光を出射する。照明装置4は、矢印Aで示す観察方向から見て液晶パネル2の裏側に配置されていて、バックライトとして機能する。
【0033】
液晶パネル2は、素子基板11とカラーフィルタ基板12とを正方形または長方形である枠状のシール材13によって貼り合わせることによって形成されている。素子基板11とカラーフィルタ基板12との間には、図2に示すように、間隙、いわゆるセルギャップGが形成され、そのセルギャップGに液晶が封入されて液晶層14が形成されている。液晶としては、例えばTN(Twisted Nematic)液晶を用いることができる。また、セルギャップGは球状のスペーサ15によって一定の間隔に維持されている。素子基板11はカラーフィルタ基板12の外側へ張り出す張出し部29を有し、この張出し部29上に駆動用IC3が実装されている。
【0034】
図1において、素子基板11は、透光性を有する第1の基板16aを有し、その第1透光性基板16aの外側の表面には、位相差板17aが貼着等によって装着され、さらにその上に偏光板18aが貼着等によって装着されている。一方、カラーフィルタ基板12は、透光性を有する第2の基板16bを有し、その第2透光性基板16bの外側の表面には、位相差板17bが貼着等によって装着され、さらにその上に偏光板18bが貼着等によって装着されている。第1透光性基板16aおよび第2透光性基板16bはガラス、プラスチック等によって形成される。
【0035】
第1透光性基板16aの内側表面、すなわち液晶側表面には、図2に示すように、データ線として機能するライン配線21と、スイッチング素子としてのTFD素子22と、ドット電極23と、配向膜24aとが形成される。配向膜24aは、例えばポリイミドによって形成され、その表面にラビング処理が施される。このラビング処理により、素子基板11の近傍の液晶分子の初期配向が決められる。
【0036】
ライン配線21は、図3に示すように、第1層21a、第2層21b、第3層21cを積層することによって形成されている。また、TFD素子22は、互いに直列に繋げられた第1TFD要素22aおよび第2TFD要素22bを有する。これらのTFD要素22aおよび22bは、それぞれ第1金属25、絶縁膜26、第2金属27を有する。2つのTFD要素22aおよび22bが直列接続されることにより、いわゆるバック・ツー・バック(Back-to-Back)の接続構造が採られている。
【0037】
TFD素子22の第1金属25およびライン配線21の第1層21aは、例えばTa(タンタル)によって形成されている。また、TFD素子22の絶縁膜26およびライン配線21の第2層21bは、例えば陽極酸化処理によって形成された酸化膜である。また、TFD素子22の第2金属27およびライン配線21の第3層21cは、例えばCr(クロム)によって形成されている。
【0038】
第1TFD要素22aの第2金属27はライン配線21の第3層21cと同一の材料によって形成されている。また、ドット電極23は第2TFD要素22bの第2金属27に導電接続するように第1透光性基板16aの上に形成されている。ドット電極23は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等といった金属酸化物によって形成されている。
【0039】
図2において、直線状のライン配線21は素子基板11に複数本設けられ、それらのライン配線21は、個々が図の左右方向に延び、複数本が所定間隔で互いに平行に並び、全体としてストライプ状に設けられている。また、複数のTFD素子22は個々のライン配線21に適宜の間隔をおいて接続され、それらのTFD素子22にドット電極23aが接続されている。
【0040】
図1において、素子基板11に対向する位置にカラーフィルタ基板12が配設される。図2において、カラーフィルタ基板12を構成する第2透光性基板16bの内側表面、すなわち液晶側表面には、樹脂層31が形成され、その上に反射膜32が形成され、その上に遮光部材35および着色要素33が形成される。そして、その上にオーバーコート層34が、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等といった感光性の樹脂によって形成される。さらにその上に帯状電極36が形成され、そして、その上に配向膜24bが形成される。配向膜24bは、例えばポリイミドによって形成され、その表面にラビング処理が施される。このラビング処理により、カラーフィルタ基板12の近傍の液晶分子の初期配向が決められる。
【0041】
帯状電極36はカラーフィルタ基板12上に複数設けられ、それらの個々が図2の紙面垂直方向に延びている。また、複数の帯状電極36は、図2の左右方向へ一定の間隔で互いに平行に並べられている。これらにより、複数の帯状電極36は、矢印A方向から見てストライプ状に形成されている。これらの帯状電極36は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等といった金属酸化物によって形成される。また、これらの帯状電極36は、素子基板11とカラーフィルタ基板12とをシール材13(図1参照)によって貼り合わせたとき、ライン配線21に対して直角の方向に延びる。
【0042】
個々の帯状電極36は、列状に並ぶ複数のドット電極23に平面的に重なり合う。このように帯状電極36とドット電極23とが重なり合う領域が、表示の単位である表示ドット領域Dを構成する。そして、これら複数の表示ドット領域Dは図1において符号Vで示す領域内にドットマトリクス状に並べられる。この領域Vが液晶表示装置1の有効表示領域であり、この有効表示領域V内に文字、数字、図形等といった像が表示される。
【0043】
図2において、樹脂層31の表面に凹部を形成することにより、その樹脂層31の表面に凹凸形状が形成される。なお、凸部を形成することにより凹凸形状を形成しても良い。そして、樹脂層31の表面に凹凸部を形成することにより、樹脂層31の上に積層される反射膜32の表面にも、樹脂層31の凹凸部に対応した凹凸形状が形成される。反射膜32は光反射性の材料、例えばAl(アルミニウム)によって形成され、矢印A方向から入射する光L0を反射する。反射膜32の表面に凹凸形状を設けたことにより、この反射膜32で反射する光は散乱光となる。
【0044】
図4は、図2の反射膜32を矢印A方向から平面的に見た図であり、図1に示す表示領域Vに対応した領域を示している。また、図5は、図4のB−B線に従った断面を示している。また、図6は、光の散乱特性を表すグラフであり、(a)は広い散乱特性、(b)は狭い散乱特性を表している。グラフの横軸φは反射膜32に入射する光と反射膜32で反射する光との成す角度、すなわち光の散乱角を示しており、グラフの縦軸Iは光の強度を示している。
【0045】
図1の表示領域Vは、一般に、液晶パネル2の法線X0から適宜の角度φ0傾いた点Pから観察者によって観察される。この角度φ0は視角と呼ばれることがある。この視角φ0は必要に応じて種々に設定されるが、本実施形態ではφ0=15度とする。この15度の角度は、携帯電話機等といった携帯用機器においてオペレータすなわち観察者が自然な状態で表示領域を見るときの視角に相当する。
【0046】
表示領域Vは、中央領域としてのVa、第1領域としてのVb、第2領域としてのVcの3つの領域に分かれている。領域Vaは、表示領域Vの中央部分の領域である。領域Vbは、領域Vaを囲む領域であって観察点Pから遠い領域である。そして、領域Vcは、領域Vaを囲む領域であって観察点Pから近い領域である。図4および図5に示すように、反射膜32の凹凸形状は、領域Va、Vb、Vcに対応する位置にそれぞれ異なる形状に形成されている。また、凹部の深さも領域Va、Vb、Vc毎に異なっている。なお、凹部に代えて凸部を形成する場合には、領域Va、Vb、Vc毎に凸部の高さを異ならせる。これにより、それぞれの領域Va、Vb、Vcにおいて、散乱特性を変えることができる。
【0047】
以下、各領域における反射膜32の凹凸形状と各領域における散乱特性について図5および図6を用いて説明する。なお、図6のグラフは、図7に示すようにして対象物57の散乱特性を測定した結果を表している。例えば、光源56からの光Liを測定対象物57に垂直に入射させる。入射光Liは測定対象物57において散乱して散乱光Loを出射する。この散乱光Loの強度Iを光電管58を用いて計測する。この際、光電管58が矢印C方向に走査移動することによって、散乱角φの変化に応じた散乱光Loの強度Iを計測することができる。
【0048】
まず、図5において観察点Pから遠い領域Vbにおいて反射膜32の凹凸形状は、その平面形状が図4のように粗く形成され、且つその断面形状が図5のように深く形成されている。この領域Vbでの散乱特性は図6(a)に示すような広い散乱特性を示す。この広い散乱特性において、散乱角φが0、すなわち正反射のときに強度Iが最も強く、散乱角φが0(ゼロ)から離れるにつれて強度Iは徐々に弱くなる。しかし、強度Iの変化は緩やかであり、散乱角φの広い範囲で強度Iの散乱光が得られる。
【0049】
次に、図5において観察点Pに近い領域Vcにおいて反射膜32の凹凸形状は、その平面形状が図4のように細かく形成され、且つその断面形状が図5のように浅く形成されている。この領域Vcでの散乱特性は図6(b)に示すような狭い散乱特性を示す。この狭い散乱特性において、正反射のときに強度Iが最も強く、散乱角φが変化すると強度Iは急峻な変化を示す。そして、強度Iの散乱光が得られる角度範囲は狭い範囲に限られる。なお、広い散乱特性を示す領域Vbの正反射時の強度を図6(a)においてI0とし、狭い散乱特性を示す領域Vcの正反射時の強度を図6(b)においてI1とすれば、I0<I1となる。
【0050】
次に、図4の中央領域である領域Vaにおいて、反射膜32の凹凸形状は、領域Vbと領域Vcとの中間の形状および粗さに形成されている。そして、領域Vaでの散乱特性も図6(a)の特性と図6(b)の特性との中間の特性を有している。すなわち、正反射において強度Iが最も強く、散乱角φの変化に対して強度Iは図6(a)と図6(b)との中間の特性を示す。
【0051】
さて、図2に戻って、反射膜32は個々の表示ドット領域D内に開口Kを有する。この開口Kが設けられた領域が透過領域Tであり、反射膜32が設けられた領域が反射領域Rである。反射領域Rでは、矢印Aで示す観察側から入射する光Loが反射膜32で反射して液晶層14へ供給される。一方、透過領域Tでは、照明装置4(図1参照)から出射した光L1が開口Kを通過して液晶層14へ供給される。
【0052】
着色要素33は、例えば、1つ1つが長方形のドット状に形成され、1つの着色要素33は、B(青)、G(緑)、R(赤)の3原色のいずれか1つの光を通す材料によって形成されている。これら各色の着色要素33は、矢印A方向から見てストライプ配列、デルタ配列、モザイク配列、その他適宜の配列となるように並べられている。なお、着色要素33は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3原色によって形成することもできる。
【0053】
遮光部材35は、例えばCr等といった遮光性の材料によって、複数の着色要素33の間を埋める状態に形成される。この遮光部材35は、ブラックマスクとして機能して着色要素33を透過した光によって表示される像のコントラストを向上させる。なお、遮光部材35は、Cr等といった特定の材料によって形成されることに限られず、例えば、着色要素33を構成するB,G,Rの各着色要素を重ねること、すなわち積層することによっても形成することができる。
【0054】
図8は、図1の液晶表示装置1の電気的な等価回路を示している。図8において、複数本の走査線36’が行方向Xに延び、さらに、複数本のデータ線21’が列方向Yに延びている。走査線36’は図2のカラーフィルタ基板12上の帯状電極36によって実現される。また、データ線21’は素子基板11上のライン配線21によって実現される。図8において、表示用ドット領域Dは走査線36’とデータ線21’との各交差部分に形成される。各表示ドット領域Dにおいては、液晶層14と、TFD素子22とが直列に接続されている。
【0055】
本実施形態では、液晶層14が走査線36’の側に接続され、TFD素子22がデータ線21’の側に接続されている。各走査線36’は、走査線駆動回路3aに接続される。一方、各データ線21’は、データ線駆動回路3bに接続される。走査線駆動回路3aおよびデータ線駆動回路3bは図1の駆動用IC3によって構成される。駆動用IC3は、共通のICによって両駆動回路3aおよび3bを賄うものであっても良いし、あるいは、両駆動回路3aおよび3bを個別のICに割り当てても良い。
【0056】
以上のように構成された液晶表示装置1によれば、図1において、液晶表示装置1が明るい室外や明るい室内に置かれる場合は、太陽光や室内等といった外部光を用いて反射型の表示が行われる。一方、液晶表示装置1が暗い室外や暗い室内に置かれる場合は、照明装置4をバックライトとして用いて透過型の表示が行われる。
【0057】
反射型表示を行う場合、図2において、観察側Aの方向から素子基板11を通して液晶パネル2内へ入射した外部光Loは、液晶層14を通過してカラーフィルタ基板12内へ入った後、反射領域Rにおいて反射膜32で反射して、再び、液晶層14へ供給される。一方、透過型表示を行う場合、図1の照明装置4のLED6が点灯し、LED6からの光が導光体7の光入射面7aから導光体7へ導入され、さらに、光出射面7bから面状の光として出射する。この出射光は、図2の符号L1で示すように透過領域Tにおいて開口Kを通って液晶層14へ供給される。
【0058】
以上のようにして液晶層14へ光が供給される間、素子基板11側のドット電極23とカラーフィルタ基板12側の帯状電極36との間には、走査信号およびデータ信号によって特定される表示用ドット領域Dに所定の電圧が印加される。これにより、液晶層14内の液晶分子の配向が表示用ドット領域Dごとに制御され、この結果、液晶層14に供給された光が表示用ドット領域Dごとに変調される。この変調された光が、素子基板11側の偏光板18a(図1参照)を通過するとき、その偏光板18aの偏光特性に従って表示用ドット領域Dごとに通過を許容または通過を阻止される。これにより、素子基板11の表面に文字、数字、図形といった像が表示され、これが、矢印A方向から視認される。
【0059】
以上に説明した実施形態では、図1において、表示領域Vを複数、本実施形態では3つの領域に区分し、図4および図5に示すように、反射膜32上に形成する凹凸の形状および深さをこれらの領域毎に異ならせてある。このため、各領域の散乱特性が異なっている。これらの領域Va、Vb、Vcにおいて、それぞれの領域における散乱特性は、反射膜32の凹凸形状および粗さを変えることによって変更できる。このように、領域Va、Vb、Vcにおいてそれぞれの散乱特性を変えることにより、表示領域V内で観察者の視角が変化する場合でもその表示領域Vの全体の明るさを均一にできる。その結果、観察者が図5の観察点Pから見る表示領域Vの全体で表示が見易くなる。
【0060】
本実施形態において、領域Va、Vb、Vcのうち、観察点Pからの距離が長い領域Vbは広い散乱特性を有し、観察点Pからの距離が短い領域Vcは狭い散乱特性を有するようにした。領域Vbにおいては、図6(a)に示すように、散乱角φが大きいときも散乱光はその強度Iを保っているので、図5の散乱角φbを大きくできる。このため、領域Vbで散乱した光Loは観察点Pへ進行できるので、領域Vbにおける表示を明るくできる。また、領域Vcにおいては、図6(b)に示すように、散乱角φが小さいときに散乱光の強度Iが強くなるので、図5の散乱角φcを小さくできる。このため、領域Vcで散乱した光Loは観察点Pへ進行できるので、領域Vcにおける表示を明るくできる。
【0061】
次に、領域Vaは表示領域Vの中央部の領域である。この領域Vaにおいては、領域Vbと領域Vcとの中間の散乱特性を有するようにしたので、散乱角φaも散乱角φbと散乱角φcとの中間の角度にすることができる。このため、領域Vaで散乱した光Loは観察点Pへ進行できるので、領域Vaにおける表示も明るくできる。以上のことから、観察者が観察点Pから表示領域Vを見たとき、その表示領域Vの全体の明るさを均一にすることができ、その結果、表示領域Vの全体の表示を観察者にとって見易くすることができる。
【0062】
また、図1において、観察点Pは表示領域Vの略中心の法線から角度15度傾いた線上に位置するようにした。この場合には、表示領域Vの中央部である領域Vaにおいて、その散乱角φa(図5参照)が15度になるような散乱特性とする。そして、領域Vbを領域Vaより広い散乱特性に設定すると共に、領域Vcを領域Vaより狭い散乱特性に設定すれば、観察者が観察点Pにおいて見る表示領域Vの全体の明るさを均一にできる。
【0063】
(電気光学装置および電気光学装置用基板の第2実施形態)
次に、本発明に係る電気光学装置および電気光学装置用基板の他の実施形態を説明する。本実施形態の説明も液晶表示装置を例示して行うものとし、第1実施形態と同じ要素は同じ符号を付して示すことにして、その説明は省略する。
【0064】
図9は、本発明に係る電気光学装置の他の実施形態である液晶表示装置101を示している。本実施形態が第1実施形態と異なる点は次の点である。第1に、第1実施形態では、図1に示す3つの領域Va,Vb,Vcに異なる散乱特性を設けるにあたり、図4および図5に示すように、第2透光性基板16b上に設けた反射板32の凹凸形状を、領域Va,Vb,Vcのそれぞれにおいて異なる形状及び深さに形成した。これに対して本実施形態では、図9に示すように、第1透光性基板16aを挟んで液晶層の反対側の面に光を散乱させるための光散乱板41を設けた。これにより、電気光学装置101から出射する光を散乱させるようにしている。第2に、第1実施形態では、図2に示すように反射膜32に凹凸形状を形成していたが、本実施形態では、反射膜32の表面に凹凸形状を設けることなく、いわゆる鏡面に形成した。
【0065】
上記のように、図9の散乱板41において異なる散乱特性を有する3つの領域Va、Vb、Vcを形成すれば、第1実施形態と同様に、表示領域Vに対する観察者の視角に応じて表示領域Vの全体の明るさを均一にできる。そしてその結果、観察者が表示領域Vを観察点Pから見た場合、その表示領域Vの全体の表示を見易くできる。
【0066】
また、本実施形態では、第1透光性基板16aを挟んで液晶層の反対側の面に設けた散乱板41で光を散乱させるので、図2の液晶層14を通過する光は散乱光でなくても良い。そのため、反射膜32に凹凸形状を形成しなくても良いので反射膜32を容易に形成できる。また、図2において、反射光Lo以外の任意の光を散乱させることができる。例えば、図9の照明装置4からの出射光である透過光L1を散乱させることができる。これにより、本発明は透過光を用いた液晶表示装置、すなわち透過型液晶表示装置にも適用できる。
【0067】
(電気光学装置および電気光学装置用基板の第3実施形態)
次に、本発明に係る電気光学装置および電気光学装置用基板のさらに他の実施形態を説明する。本実施形態の説明も液晶表示装置を例示して行うものとし、第1実施形態および第2実施形態と同じ要素は同じ符号を付して示すことにして、その説明は省略する。
【0068】
図10は、本発明に係る電気光学装置の他の実施形態を示しており、特に1つの表示ドット近傍を拡大して示している。第2実施形態では、図9において、散乱板41を素子基板11を挟んで液晶層の反対側に設けた。そして、この散乱板41によって電気光学装置101から出射する光を散乱させるようにした。これに対し本実施形態では、図10に示すように、散乱板41に代えて第1透光性基板16aの液晶層14側の面に光散乱膜51を設けている。この散乱膜51は、図9の散乱板41と同じ機能を有した膜であり、例えばフォトリソグラフィ処理等によって形成できる。
【0069】
この散乱膜51において、図1に示すように、異なる散乱特性を有する3つの領域Va、Vb、Vcを形成すれば、第1実施形態および第2実施形態と同様に、表示領域Vに対する観察者の視角に応じて表示領域Vの全体の明るさを均一にできる。そしてその結果、観察者が観察点Pから表示領域Vを見た場合、その表示領域Vの全体の表示を見易くできる。また、散乱膜51を設けた本実施形態においても、図10において反射光Lo以外の任意の光を散乱させることができる。例えば、図9の照明装置4からの出射光である透過光L1を散乱させることができる。これにより、本発明は透過光を用いた液晶表示装置、すなわち透過型液晶表示装置にも適用できる。
【0070】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0071】
例えば、以上に説明したそれぞれの実施形態において、図4に示すように、表示領域Vを中央部分の領域Va、表示領域Vの中央から上側であって領域Va以外の領域Vb、および表示領域Vの中央から下側であって領域Va以外の領域Vcの3つの領域に区分し、それぞれの領域を異なる散乱特性を有するように形成した。しかしながら、表示領域Vは他の形態に区分することもできる。例えば、図11(a)に示すように、表示領域Vを視点Pから遠い領域Vd及び近い領域Veの2つの領域に区分し、それぞれの領域を異なる散乱特性に形成することもできる。また、図11(b)に示すように、表示領域Vを視点Pから遠い領域から近い領域に従って3つの領域Vf,Vg,Vhに区分し、それぞれの領域を異なる散乱特性に形成することもできる。これらどちらの場合においても、上記第1実施形態と同様に表示領域Vの全体の明るさを均一に表示できる。
【0072】
また、上記それぞれの実施形態では、TFD素子を用いた液晶表示装置に本発明を適用したが、本発明は、TFD素子以外の2端子型スイッチング素子を用いたアクティブマトリクス方式の液晶表示装置にも適用できる。また、本発明は、TFT(Thin Film Transistor)等といった3端子型スイッチング素子を用いたアクティブマトリクス方式の液晶表示装置にも適用できる。また、本発明は、スイッチング素子を用いない単純マトリクス方式の液晶表示装置にも適用できる。
【0073】
また、本発明は、液晶表示装置以外の電気光学装置、例えば、有機EL装置、無機EL装置、プラズマディスプレイ装置(PDP:Plasma Display)、電気泳動ディスプレイ(EPD:Electrophoretic Display)、フィールドエミッションディスプレイ装置(FED:Field Emission Display:電界放出表示装置)にも適用できる。
【0074】
(電気光学装置の製造方法の第1実施形態)
以下、本発明に係る電気光学装置の製造方法の実施形態を図1に示した液晶表示装置1を製造する場合を例に挙げて説明する。図12は、液晶表示装置の製造方法の一例を工程図として示している。図12において、工程P1から工程P6が図1の素子基板11を形成するための工程である。また、工程P11から工程P18が図1のカラーフィルタ基板12を形成するための工程である。また、工程P21から工程P28がそれらの基板を組み合わせて液晶表示装置を完成させるための工程である。
【0075】
なお、本実施形態の製造方法では、図1に示す素子基板11およびカラーフィルタ基板12を1つずつ形成するのではなく、素子基板11に関しては、複数の素子基板11を形成できる大きさの面積を有する素子側マザー透光性基板の上に素子基板11の複数個分の要素を同時に形成するものとする。また、カラーフィルタ基板12に関しては、複数のカラーフィルタ基板12を形成できる大きさの面積を有するカラーフィルタ側マザー透光性基板の上にカラーフィルタ基板12の複数個分の要素を同時に形成するものとする。素子側マザー透光性基板およびカラーフィルタ側マザー透光性基板は、例えば、透光性ガラス、透光性プラスチック等によって形成される。
【0076】
まず、図12の工程P1において、素子側マザー透光性基板の表面にスイッチング素子である図3のTFD素子22およびライン配線21を同時に形成する。なお、配線21の第1層21aは、TFD素子22の第1金属25と同時に、例えばTaによって形成する。また、配線21の第2層21bは、陽極酸化処理によってTFD素子22の絶縁膜26と同時に形成する。また、配線21の第3層21cは、TFD素子22の第2金属27と同時に、例えばCrによって形成する。
【0077】
次に、工程P2において、図3のドット電極23をITOを材料としてフォトエッチング処理、すなわち、フォトリソグラフィ処理とエッチング処理との組み合せから成る処理によって形成する。次に、工程P3において図2の配向膜24aを、例えばポリイミドを印刷することによって形成される。次に、工程P4において、配向膜24aにラビング処理が施され、さらに工程P5において、図1のシール材13が、例えばエポキシ系樹脂を印刷することによって形成される。そして、工程P6において、素子基板11の表面に図2のスペーサ15を分散する。以上により、素子側マザー透光性基板の上に素子基板11の複数個分の要素が形成されて大面積の素子側マザー基板が形成される。
【0078】
次に図12の工程P11において、カラーフィルタ側マザー透光性基板の表面上に図2の樹脂層31を、例えばポジ型の感光性樹脂材料を材料としてフォトリソグラフィ処理によって形成する。ポジ型感光性樹脂材料は光を照射した部分が溶け易くなる材料である。本実施形態では、工程P11のフォトリソグラフィ処理において、図13に示すようなフォトマスク42を使用する。このフォトマスク42は3つの領域Va’、Vb’、Vc’を有している。そして、これらの領域Va’、Vb’、Vc’には、それぞれ異なるマスクパターン43a、43b、43cが形成されている。具体的には、領域Vb’には粗いパターン43bを形成し、領域Vc’には細かいパターン43cを形成し、そして、領域Va’には43bと43cとの中間の粗さのパターン43aを形成する。
【0079】
上記のフォトマスク42の領域Va’、Vb’、Vc’は、それぞれ図1の表示領域V内の領域Va、Vb、Vcに対応している。従って、フォトマスク42を用いてフォトリソグラフィ処理を行えば、樹脂層31の表面における表示領域V内の領域Va、Vb、Vcの対応した位置に、形状が異なる複数の凹凸パターンが形成される。具体的には、図5に示すように、領域Vbには大きく、すなわち平面的に粗く、且つ深い凹凸形状が形成され、領域Vcには小さく、すなわち平面的に細かく、且つ浅い凹凸形状が形成され、領域Vaには領域Vbと領域Vcとの中間の形状および中間の粗さに凹凸形状が形成される。
【0080】
次に、図12の工程P12において、工程P11において形成した樹脂層31の上に図2の反射膜32を、例えばAlやAl合金等を材料としてフォトエッチング処理によって形成する。このとき、表示用ドット領域Dごとに開口Kを形成することにより、光反射部Rと透光部Tを形成する。樹脂層31の表面には形状が異なる複数の凹凸形状が形成されているので、その上に積層された反射膜32の表面にも形状が異なる複数の凹凸形状が形成される。それにより、反射層32において反射する光は散乱光となる。さらに、その散乱光は凹凸のパターンによって散乱特性が異なる。
【0081】
次に、工程P13において、図2の遮光部材35を、例えばCrを材料としてフォトエッチング処理によって所定のパターン(例えば、複数の表示用ドット領域Dの周りを埋めるような格子状パターン)に形成する。次に、工程P14において、図2の着色要素33を形成する。着色要素33については、B,G,Rの各色ごとに順々に形成する。例えば、各色の顔料や染料を感光性樹脂に分散させて成る着色材料をフォトリソグラフィ処理によって所定の配列に形成する。次に、工程P15において、図2のオーバーコート層34を、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等といった感光性樹脂を材料としてフォトリソグラフィ処理によって形成する。
【0082】
次に、図12の工程P16において、図2の帯状電極36をITOを材料としてフォトエッチング処理によって形成し、さらに工程P17において図2の配向膜24bを形成し、さらに工程P18において、配向処理としてのラビング処理を行う。以上により、カラーフィルタ側マザー透光性基板の上にカラーフィルタ基板12の複数個分の要素が形成されて大面積のカラーフィルタ側マザー基板が形成される。
【0083】
その後、図12の工程P21において、素子側マザー基板とカラーフィルタ側マザー基板とを貼り合わせる。これにより、素子側マザー基板とカラーフィルタ側マザー基板とが個々の液晶表示装置の領域において図1のシール材13を挟んで貼り合わされた構造の大面積のパネル構造体が形成される。
【0084】
次に、以上のようにして形成された大面積のパネル構造体に含まれるシール材13を、工程P22において熱硬化または紫外線硬化によって硬化させて両マザー基板を接着して大面積のパネル構造体を形成する。次に、工程P23において、そのパネル構造体を1次切断、すなわち1次ブレイクして、図1の液晶パネル2の複数が1列に並んだ状態で含まれる中面積のパネル構造体、いわゆる短冊状のパネル構造体を複数形成する。シール材13には予め適所に開口が形成されており、上記の1次ブレイクによって短冊状のパネル構造体が形成されると、そのシール材13の開口が外部に露出する。
【0085】
次に、図12の工程P24において、上記のシール材13の開口を通して各液晶パネル部分の内部へ液晶を注入し、その注入の完了後、その開口を樹脂によって封止する。次に工程P25において、2回目の切断、すなわち2次ブレイクを行い、短冊状のパネル構造体から図12に示す個々の液晶パネル2を切り出す。
【0086】
次に、図12の工程P26において、図1の駆動用IC3を実装する。次に、工程P27において、図1の液晶パネル2に偏光板18a,18bを貼着によって装着する。さらに工程P28において、図1の照明装置4を液晶パネル2に取付ける。これにより、液晶表示装置1が完成する。
【0087】
以上のように、本実施形態に係る液晶表示装置の製造方法においては、図12の工程P11において、図2の樹脂層31を図5に示すように3つの異なる領域Va,Vb,Vc内で複数の異なる凹凸形状に形成した。そして、図12の工程P12において、樹脂層31の上に反射膜32を形成した。これにより、反射膜32は、図5に示すように、異なる散乱特性を有した領域Va、Vb、Vcをそれぞれ形成できる。これにより、図1の表示領域Vに対する観察者の視角に応じて表示領域V全体の明るさを均一にできる。その結果、観察者が観察点Pから見る表示領域の全体で表示が見易くなる。
【0088】
また、本実施形態では、工程P11において、図13のフォトマスク42を用いて形成した。フォトマスク42には、領域Va’、Vb’、Vc’にそれぞれ異なるマスクパターン43a、43b、43cが形成されている。このフォトマスク42を用いてフォトリソグラフィ処理を行えば、1回の露光工程によって、樹脂層31に複数の異なる凹凸形状を容易に形成できる。
【0089】
(電気光学装置の製造方法の第2実施形態)
次に、本発明に係る電気光学装置の製造方法の他の実施形態を説明する。本実施形態の説明も図1に示した液晶表示装置1を製造する場合を例に挙げて説明するものとし、第1実施形態と同じ要素は同じ符号を付して示すことにして、その説明は省略する。
【0090】
本実施形態において、図12に示す工程P1から工程P6に至る素子基板11の形成工程は、第1実施形態の場合と同じであるので、これらの工程に関する説明は省略する。また、工程P11から工程P18に至るカラーフィルタ基板の形成工程において、工程P12から工程P18に至る工程も第1実施形態の場合と同じであるので、これらの工程に関する説明も省略する。また、工程P21から工程P28に至る工程も第1実施形態の場合と同じであるので、これらの工程に関する説明も省略する。
【0091】
本実施形態が図12に示した第1実施形態と異なる点は、図2の樹脂層31を形成するための工程P11にある。具体的に説明すれば、第1実施形態では、工程P11において、図2の樹脂層31の凹凸形状を図13のフォトマスク42を用いて形成した。この場合には、フォトマスク42において領域Va、Vb、Vcごとに異なるマスクのパターンを形成した。これにより、フォトマスク42を用いて露光工程を1回行うことによって、図2の樹脂層31の表面に領域Va、Vb、Vc毎に複数の異なる凹凸形状を形成した。
【0092】
本実施形態では、図12の工程P11において、樹脂層31の表面に領域Va、Vb、Vc毎に複数の異なる凹凸形状を形成するにあたり、各領域に形成する凹凸形状に対応したマスクパターンを有するフォトマスクをそれぞれ用いる。そして、複数回の露光、例えば形成する領域の数に対応した複数回の露光を行い、樹脂層31に凹凸形状を形成する。
【0093】
図14は、図12における樹脂層形成工程P11の一実地形態を示している。図12の樹脂層形成工程P11は、図14に示すように大きく分けて、樹脂層積層工程Q1、マスクパターン露光工程Q2、凹凸形状形成工程Q3の各工程を有している。樹脂層積層工程Q1は、図2の第2透光性基板16bの表面上に樹脂層31を一様な膜形状に積層するための工程である。また、マスクパターン露光工程Q2は、工程Q1で積層した樹脂層31をフォトマスクのパターンに露光する工程である。また、凹凸形状形成工程Q3は露光した樹脂層31を現像して樹脂層31に凹凸形状を形成する工程である。
【0094】
図15は図14の露光工程Q2において用いるフォトマスクを示している。図15(a)のフォトマスク52aは、図4の中央部領域Vaに対応する領域Va’に複数の開口からなるマスクパターン53aを有している。このマスクパターン53aにより、図4の樹脂層31の領域Vaのマスクパターンの光透過部に対応する領域が感光して、例えばポジ型感光性樹脂材料を用いた場合は、凹形状が形成される。
【0095】
図15(b)のフォトマスク52bは、図4の広い散乱特性の領域Vbに対応する領域Vb’に複数の開口からなるマスクパターン53bを有している。このマスクパターン53bにより、図4の樹脂層31の領域Vbのマスクパターンの光透過部に対応する領域が感光して、例えばポジ型感光性樹脂材料を用いた場合は、凹形状が形成される。
【0096】
また、図15(c)のフォトマスク52cは、図4の狭い散乱特性の領域Vcに対応する領域Vc’に複数の開口からなるマスクパターン53cを有している。このマスクパターン53cにより、図4の樹脂層31の領域Vcのマスクパターンの光透過部に対応する領域が感光して、例えばポジ型感光性樹脂材料を用いた場合は、凹形状が形成される。これらのフォトマスク52a、52b、52cが有するマスクパターン53a、53b、53cは、それぞれ平面的に見て同じ粗さのパターンである。
【0097】
以下に、樹脂層の形成工程を具体的に説明する。まず、図14の工程P31において、カラーフィルタ側マザー透光性基板の表面上に図2の樹脂層31を一様な厚さに形成する。樹脂層31は、例えばポジ型感光性樹脂材料をスパッタ処理によって一様な厚さに成膜する。
【0098】
次に、工程P32において、図4の領域Vaに対応する樹脂層31を図15(a)に示すフォトマスク52aを用いて露光する。次に、図14の工程P33において、図4の領域Vbに対応する樹脂層31を図15(b)に示すフォトマスク52bのパターン53bの形状に露光する。この場合には、工程P32における第1の露光に比べて露光量を多くして露光を行う。なお、露光量の多少は、露光時間一定で露光の光量を変化させるか、あるいは、露光量一定で露光時間を変化させることによって調節できる。フォトマスク52bのパターン53bは、フォトマスク52aのパターン53aと同じ形状である。しかし、工程P33における露光量を多くすることにより、工程P32に比べて樹脂層31における露光の深さを深くできる。
【0099】
次に、工程P34において、図4の領域Vcに対応する樹脂層31を図15(c)に示すフォトマスク52cのパターン53cの形状に露光する。この場合には、工程P32の第1露光工程に比べて露光量を少なくして露光を行う。フォトマスク52cのパターン53cは、フォトマスク52aのパターン53aと同じ形状である。しかし、工程P34における露光量を少なくすることにより、工程P32に比べて樹脂層31における露光の深さを浅くできる。
【0100】
次に、図14の工程P35において、露光した後の樹脂層31に現像剤を付与してその樹脂層31を現像する。図4および図5の樹脂層31は、工程P32から工程P34のそれぞれにおいて露光量を変えて、重ねて露光される。これにより、樹脂層31における領域Va、Vb、Vcのそれぞれにおいて深さが異なる露光が行われて、異なった深さの潜像が形成される。そして、この樹脂層31を現像することによって、樹脂層31に異なる複数の凹凸形状が形成できる。
【0101】
本実施形態では、図15に示すように、領域毎に異なる3種類のフォトマスク52a、52b、52cを用いることにより、図5に示すように、樹脂層31に複数の異なる大きさおよび異なる深さの凹凸形状を形成した。これにより、樹脂層31上に形成される反射膜32にも複数の異なる大きさおよび異なる深さの凹凸形状を形成できる。その結果、異なる散乱特性を有した領域Va、Vb、Vcをそれぞれ形成できる。これにより、図1の表示領域Vに対する観察者の視角に応じて表示領域V全体の明るさを均一にできるので、観察者が観察点Pから見る表示領域の全体で表示が見易くなる。
【0102】
なお、上記の説明では、樹脂層31としてポジ型の感光性樹脂材料を用いてその樹脂層31の表面に凹形状を形成する場合を例示したが、これに代えて、ポジ型の感光性樹脂材料を用いて凸形状を形成しても良く、ネガ型の感光性樹脂材料を用いて凹形状を形成しても良く、あるいは、ネガ型の感光性樹脂材料を用いて凸形状を形成しても良い。
【0103】
(電気光学装置の製造方法の第3実施形態)
次に、本発明に係る電気光学装置の製造方法のさらに他の実施形態を説明する。本実施形態は図9に示した液晶表示装置101を製造する場合を例に挙げて説明するが、第1実施形態と同じ要素は同じ符号を付して示すことにして、その説明は省略する。
【0104】
図16は、本実施形態に係る液晶表示装置の製造方法の一例を工程図として示している。図16において、工程P1から工程P6が図9の素子基板11を形成するための工程である。また、工程P11から工程P18が図9のカラーフィルタ基板12を形成するための工程である。また、工程P41から工程P49がそれらの基板を組み合わせて液晶表示装置を完成させるための工程である。
【0105】
本実施形態において、工程P1から工程P6に至る素子基板11の形成工程は、第1実施形態の場合と同じであるので、これらの工程に関する説明は省略する。また、工程P11から工程P18に至る工程も第1実施形態の場合と同じであるので、これらの工程に関する説明も省略する。また、工程P41から工程P46に至る工程も第1実施形態の場合と同じであるので、これらの工程に関する説明も省略する。
【0106】
図2に示した第1実施形態および第2実施形態においては、カラーフィルタ基板12を製造する工程P11〜P18において、図2の樹脂層31に異なる複数の凹凸形状を形成することによって、図1の表示領域に異なる3つの散乱特性を有する領域Va、Vb、Vcを形成した。これに対し、本実施形態では、素子基板11とカラーフィルタ基板12とを貼り合わせた後に、素子基板11の外側表面に図9の光散乱板41を貼り付けるようにした。この場合には、工程P11においてカラーフィルタ基板12の樹脂層31には凹凸形状を形成しても形成しなくても良い。
【0107】
具体的には、工程P1から工程P6において素子基板11を製造し、工程P11から工程P18においてカラーフィルタ基板12を製造する。その後、第1実施形態における工程P21から工程P26に至る工程と同じ方法により、工程P41から工程P46において、図9の駆動用IC3を素子基板11に実装するまでを行う。次に、図16の工程P47において図9の第1透光性基板16aを挟んで液晶層の反対側の面に光散乱板41を貼り付ける。
【0108】
次に、図16の工程P48において、図9の液晶パネル2に偏光板18a、18bを貼着によって装着する。さらに、工程P49において、図9の照明装置4を液晶パネル2に取付ける。これにより、液晶表示装置101が完成する。
【0109】
以上のように、本実施形態に係る液晶表示装置の製造方法においては、図16の工程P47において、図9の散乱板41を装着した。図9の散乱板41において異なる散乱特性を有する3つの領域Va、Vb、Vcを形成すれば、第1実施形態および第2実施形態と同様に、表示領域Vに対する観察者の視角に応じて表示領域V全体の明るさを均一にできる。その結果、観察者が観察点Pから見る表示領域の全体で表示が見易くなる。
【0110】
(電気光学装置の製造方法の第4実施形態)
次に、本発明に係る電気光学装置の製造方法のさらに他の実施形態を説明する。本実施形態において他の実施形態と同じ要素は同じ符号を付して示すことにして、その説明は省略する。
【0111】
図17は、本実施形態に係る液晶表示装置の製造方法の一例を工程図として示している。図17において、工程P51から工程P57が図1の素子基板11を形成するための工程である。また、工程P11から工程P18が図1のカラーフィルタ基板12を形成するための工程である。また、工程P21から工程P28がそれらの基板を組み合わせて液晶表示装置を完成させるための工程である。
【0112】
図16の第3実施形態おいては、素子基板11とカラーフィルタ基板12とを貼り合わせた後に、素子基板11の外側表面に図9の光散乱板41を貼り付けるようにした(工程P47)。これに対し本実施形態においては、図17の工程P51において、図10の光散乱膜51を形成するようにした。
【0113】
具体的には、まず、工程P51において、図10の第1透光性基板16aの液晶層14側の面に光散乱膜51を、例えばフォトリソグラフィ処理によって形成する。次に、図17の工程P52から工程P57において、第1実施形態と同様に素子基板11を製造する。次に、工程P11から工程P18においてカラーフィルタ基板12を製造し、その後、第1実施形態の工程P21から工程P28に至る工程と同じ方法により液晶表示装置を完成する。
【0114】
以上のように、本実施形態に係る液晶表示装置の製造方法においては、図17の工程P51において、図10の散乱板膜51を形成した。この散乱膜51において、図1に示すように、異なる散乱特性を有する3つの領域Va、Vb、Vcを形成すれば、他の実施形態と同様に、表示領域Vに対する観察者の視角に応じて表示領域V全体の明るさを均一にできる。その結果、観察者が観察点Pから見る表示領域の全体で表示が見易くなる。
【0115】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、本発明の技術思想の範囲内で種々に改変できる。また、本発明の技術思想の範囲内で上記各実施形態及び変形例を適宜組み合わせて実施できる。
【0116】
例えば、以上に説明した第1実施形態および第2実施形態において、図2の樹脂層31を形成する材料には、ポジ型の感光性樹脂材料を用いた。これに対し、樹脂層31には、ネガ型の感光性樹脂材料を用いても良い。ネガ型感光性樹脂材料は光を照射した部分が現像により溶け難くなる材料である。この場合には、図4および図15のように、パターン部分を開口によって形成したフォトマスクを用いて露光すれば、樹脂層31には凸形状が形成される。他方、図4および図15において開口である部分が覆われ、覆われていた部分が開口となるようなパターンのフォトマスクを用いて露光すれば、樹脂層31には凹形状が形成される。上記どちらの場合においても、複数の異なる凹凸形状を形成することができる。
【0117】
また、上記各実施形態においては、複数の領域ごとに樹脂層の凹凸の大きさ、言い換えると凹凸の径及び高さを変えていたが、大きさとして高さまたは径のどちらか一方のみ、または凹凸の形状や領域内の凹凸の密度を変えることで散乱特性を異ならせても良い。また、複数回露光する、いわゆる多重露光による露光工程において、上記実施形態では同じ大きさの開口を備えたマスクを用いたが、領域ごとに開口の大きさが異なるマスクを用いて露光することで、凹凸の大きさを変えても良い。また、複数の領域の数は3つに限られるものではなく、2つや4つ、またはそれ以上の領域を設定しても良い。さらに、上述の実施形態や変形例では薄膜ダイオード素子アクティブマトリクス型の液晶表示装置について説明したがこれに限られるものではなく、例えば薄膜トランジスタ素子アクティブマトリクス型、パッシブマトリクス型の液晶表示装置であっても良い。
【0118】
(電子機器の実施形態)
次に、本発明に係る電子機器の実施形態を図面を用いて説明する。図18は、本発明に係る電子機器の一実施形態のブロック図を示している。ここに示す電子機器は、液晶表示装置91と、これを制御する制御回路70とを有する。液晶表示装置91は、液晶パネル71と、半導体IC等で構成される駆動回路72とを有する。また、制御回路70は、表示情報出力源73と、表示情報処理回路74と、電源回路76と、タイミングジェネレータ77とを有する。
【0119】
表示情報出力源73は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等から成るメモリと、磁気記録ディスクや光記録ディスク等から成るストレージユニットと、デジタル画像信号を同調出力する同調回路とを有する。この表示情報出力源73は、タイミングジェネレータ77によって生成された各種のクロック信号に基づいて、所定フォーマットの画像信号等の形で表示情報を表示情報処理回路74に供給する。
【0120】
表示情報処理回路74は、シリアル−パラレル変換回路、増幅・反転回路、ローテーション回路、ガンマ補正回路、クランプ回路等といった周知の各種回路を備え、入力した表示情報の処理を実行して、その画像情報をクロック信号CLKと共に駆動回路72へ供給する。駆動回路72は、走査線駆動回路、データ線駆動回路及び検査回路を含む。また、電源回路76は、上記の各構成要素にそれぞれ所定の電圧を供給する。
【0121】
液晶表示装置91は、例えば、図1に示した液晶表示装置1、または図9に示した液晶表示装置101によって構成できる。これらの液晶表示装置1または101では、図1および図9において、散乱特性が異なる複数の領域を表示領域Vに設けたことにより、図1の表示領域Vに対して観察者の視角が変化したときでも、表示領域Vの全体の明るさを均一にできる。従って、これらの液晶表示装置1または液晶表示装置101を用いた本電子機器においても、観察者の視角にかかわらず表示領域Vの全体の明るさを均一にできる。
【0122】
次に、図19は、本発明を電子機器の一例である携帯電話機に適用した場合の一実施形態を示している。ここに示す携帯電話機80は、本体部81と、これに開閉可能に設けられた表示体部82とを有する。液晶表示装置等といった電気光学装置によって構成された表示装置83は、表示体部82の内部に配置され、電話通信に関する各種表示は、表示体部82において表示画面84によって視認できる。本体部81には操作ボタン86が配列されている。
【0123】
表示体部82の一端部にはアンテナ87が伸縮自在に取付けられている。表示体部82の上部に設けられた受話部88の内部には、図示しないスピーカが配置される。また、本体部81の下端部に設けられた送話部89の内部には図示しないマイクが内蔵されている。表示装置83の動作を制御するための制御部は、携帯電話機の全体の制御を司る制御部の一部として、又はその制御部とは別に、本体部81又は表示体部82の内部に格納される。
【0124】
表示装置83は、例えば、図1に示した液晶表示装置1、または図9に示した液晶表示装置101によって構成できる。これらの液晶表示装置1または101は、図1および図9において、表示領域Vに複数の散乱特性が異なる領域を設けた。これにより、図1の表示領域Vに対する観察者の視角に応じて表示領域V全体の明るさを均一にできるので、観察者が見る表示領域の全体で表示を見易くできる。そのため、この液晶表示装置1または液晶表示装置101を用いた図19の携帯電話機80においても表示画面84の全体で表示が見易くなる。
【0125】
(変形例)
本発明に係る電子機器としては、以上に説明した携帯電話機の他にも、パーソナルコンピュータ、液晶テレビ、デジタルスチルカメラ、腕時計、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、その他各種の機器が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明に係る電気光学装置の一実施形態である液晶表示装置を示す斜視図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1の装置で用いられるスイッチング素子の一例を示す斜視図である。
【図4】図2の反射層を矢印A方向から示す平面図である。
【図5】図4のB−B線に従った断面図である。
【図6】散乱特性の一例を示すグラフであり、(a)は広い散乱特性を示しており、(b)は狭い散乱特性を示している。
【図7】図6の散乱特性の測定方法を示す概略図である。
【図8】図1の液晶表示装置の電気的な等価回路を示す回路図である。
【図9】本発明に係る電気光学装置の他の実施形態である液晶表示装置を示す斜視図である。
【図10】図9の要部を拡大して示す断面図である。
【図11】図1の液晶表示装置に適用できる表示領域の変形例を示す平面図である。
【図12】本発明に係る電気光学装置の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図13】図12の製造方法に用いるフォトマスクを示す平面図である。
【図14】本発明に係る電気光学装置の製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図15】図14の製造方法に用いるフォトマスクを示す平面図である。
【図16】本発明に係る電気光学装置の製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図17】本発明に係る電気光学装置の製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図18】本発明に係る電子機器の一実施形態を示すブロック図である。
【図19】本発明に係る電子機器の他の実施形態を示す斜視図である。
【図20】表示領域に対する観察者の視角の違いを示す図である。
【符号の説明】
【0127】
1.液晶表示装置(電気光学装置)、 2.液晶パネル、 3.駆動用IC、
4.照明装置、 5.FPC、 6.LED(光源)、 7.導光体、 8.反射層、
11.素子基板、 12.カラーフィルタ基板、 13.シール材、 14.液晶層、
15.スペーサ、 16a,16b.透光性基板 、17a,17b.位相差板、
18a,18b.偏光板、 21.ライン配線、 21’.データ線、
22.TFD素子、 23.ドット電極、 24a,24b.配向膜、
29.張出し部、 31.樹脂層、 32.反射膜、 33.着色要素、
34.オーバーコート層、 35.遮光部材、 36.帯状電極、 36’.走査線、
41.散乱板、 42,52.フォトマスク、 43,53.マスクパターン、
51.散乱膜、 80.携帯電話機(電子機器)、 83.液晶表示装置、
91.液晶表示装置、 D.表示ドット領域、 G.セルギャップ、 L0.外部光、 L1.透過光、 R.反射部、 T.透過部、 V,Va,Vb,Vc.表示領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学物質を支持する基板と、
複数の画素と、
前記複数の画素によって構成される表示領域と
を有する電気光学装置であって、
前記表示領域は異なる光散乱特性を有する複数の領域を有すること
を特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1記載の電気光学装置において、前記複数の領域は、前記表示領域の中心を含み広い散乱特性を有する中央領域を備え、
前記複数の領域の内、前記中央領域の他の領域は、前記中央領域よりも狭い散乱特性を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1記載の電気光学装置において、前記各複数の領域において、所定の観察点から表示面までの距離が長い領域は広い散乱特性を有し、
前記距離が長い領域よりも前記観察点から表示面までの距離が短い領域は、前記距離が長い領域よりも狭い散乱特性を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項3記載の電気光学装置において、前記各複数の領域において、前記観察点に対して前記表示領域の中央領域より反対側にある領域では広い散乱特性を有し、
前記表示領域の中央領域より観察点側にある領域では、前記反対側の領域よりも狭い散乱特性を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4記載の電気光学装置において、前記観察点は、前記表示領域の略中心位置の法線から角度15度傾いた線上に位置することを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の電気光学装置において、前記複数の領域毎に対応した、複数の凹凸からなる複数の凹凸部を有する反射膜を前記基板上にさらに有し、
前記複数の領域毎に、前記凹凸の形状、大きさまたは密度を異ならせることによって、異なる散乱特性を有する前記複数の領域を形成することを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の電気光学装置において、透過する光を散乱する散乱板を前記基板上にさらに有し、該散乱板の散乱特性を前記複数の領域に対応する複数の部分毎に異ならせることによって、異なる散乱特性を有する前記複数の領域を形成することを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の電気光学装置において、
前記中央領域を挟んで対向する、第1領域と第2領域とを備え、
前記第1領域は、前記観察点からの距離が長くて前記中央領域を囲む領域であり、
前記第2領域は、前記観察点からの距離が前記距離が長い領域よりも短く、前記中央領域を囲む領域であり、
前記第1領域、前記中央領域、前記第2領域の順に広い散乱特性となることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
電気光学物質を支持する基板と、複数の画素と、前記複数の画素によって構成される表示領域とを有し、前記表示領域は異なる光散乱特性を有する複数の領域を有する電気光学装置の製造方法であって、
前記基板の上に、複数の凹凸からなる複数の凹凸部を備えた反射膜を形成する工程を備え、
前記反射膜を形成する工程では、前記複数の領域毎に、形状、大きさまたは密度が異なる前記凹凸を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の電気光学装置の製造方法において、
前記基板の上に、複数の凹凸からなる複数の凹凸部を備えた樹脂層を形成する工程を備え、
前記反射層を形成する工程では、前記樹脂層の上に前記反射膜を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の電気光学装置の製造方法において、前記樹脂層を形成する工程は、
感光性樹脂材料の層を前記基板の上に形成する工程と、
前記感光性樹脂材料の層を露光マスクを介して露光する露光工程と、
露光された前記感光性樹脂材料の層を現像する工程と
を有し、
前記露光マスクは、前記複数の領域毎に遮光性が異なるマスクパターンを有し、
前記露光工程では、異なる高さの凹凸の潜像が1回の露光で行われる
ことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10記載の電気光学装置の製造方法において、前記樹脂層を形成する工程は、
感光性樹脂材料の層を前記基板の上に形成する工程と、
前記感光性樹脂材料の層を露光マスクを介して露光する露光工程と、
露光された前記感光性樹脂材料の層を現像する工程と
を有し、
前記露光工程では、前記複数の領域毎に異なる露光マスクを介して複数回の露光が行われ、
前記複数回の露光の各々では、異なる露光量で露光が行われる
ことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項13】
複数の画素が設定された基板と、
前記複数の画素によって構成される表示領域を有し、
前記表示領域は異なる散乱特性を有する複数の領域を有すること
を特徴とする電気光学装置用基板。
【請求項14】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の電気光学装置を有することを特徴とする電子機器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2006−78723(P2006−78723A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261986(P2004−261986)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】