説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】右眼用画像と左眼用画像との混在が利用者に知覚されることを抑制しながら表示画像の明るさを向上させる。
【解決手段】 表示制御回路52は、nフレームの第1画像データVDn、及び一つ前のn−1フレームの第2画像データVDn-1を同時に出力可能なフレームメモリ522と、電気光学素子の応答特性を補正した第1補正画像データVDxを生成する第1補正画像データ生成部523と、右眼用画像と左目用画像とのうち一方が他方に混入することを補正する第2補正画像データVDyを生成する第2補正画像データ生成部524と、第1番目のフィールドは第1補正画像データVDxを選択し、第2番目以降のフィールドでは第2補正画像データVDyを選択する選択部525と、第1画像データVDnを補正して出力画像データVDoutを生成する補正部526とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者が立体感を知覚するように相互に視差が付与された右眼用画像と左眼用画像とを表示する技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
右眼用画像と左眼用画像とを時分割で交互に表示するフレームシーケンシャル方式の立体視方法が従来から提案されている。この方式では、右眼用画像及び左眼用画像の一方が他方に書き換えられる期間では右眼用画像と左眼用画像とが混在するクロストークが発生するから、観察者が画像を視認すると立体視画像を明確に認識することが困難になる。
この問題を解消するため、例えば特許文献1には、右眼用画像を表示する場合に左眼用画像からのクロストークを予め補正し、左眼用画像を表示する場合に右眼用画像からのクロストークを予め補正する技術が開示されている。
画像を表示する表示装置に液晶を用いる場合、液晶の透過率は緩やかに変化する。このため、上述した補正でもクロストークを十分抑圧することができない。そこで、特許文献2には、右眼用画像及び左眼用画像の一方を他方に書き換える期間(すなわち右眼用画像と左眼用画像とが混在する期間)において立体視用眼鏡の右眼用シャッター及び左眼用シャッターの双方を閉状態として観察者に画像を視認させない技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−54143号公報
【特許文献2】特開2009−25436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、利用者が実際に画像を視認できる期間が、右単位期間及び左単位期間の各々における後半期間(すなわち約半分)に制限される。したがって、表示画像の明度を充分に確保することが困難であるという問題がある。
以上の事情を考慮して、本発明は、右眼用画像と左眼用画像との混在が利用者に知覚されることを抑制しながら表示画像の明るさを向上させることを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、 右眼用シャッター及び左眼用シャッターを備えた立体視用眼鏡と共に用いられ、複数のフィールドからなるフレームごとに右眼用画像と左眼用画像とを順次表示するものであって、電気光学素子を用いて画像を表示する表示部と、一のフレームの第1画像データと前記第1画像データの一つ前のフレームの第2画像データとに基づいて、前記電気光学素子の応答特性を補正した第1補正画像データを生成する第1補正画像データ生成部と、前記第1画像データと前記第2画像データとに基づいて、右眼用画像と左目用画像との混在によるクロストークを補正する第2補正画像データを生成する第2補正画像データ生成部と、前記フレームを構成する複数のフィールドのうち、第1番目のフィールドは前記第1補正画像データを選択し、第2番目以降のフィールドでは前記第2補正画像データを選択する選択部と、前記第1画像データを前記選択部から出力されるデータで補正して出力画像データを生成して前記表示部に供給する補正部と、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターの開閉を制御する制御信号を生成する制御部と、を備える。
【0006】
この発明によれば、第1補正画像データを用いることによって、輝度を確保するとともに、第2補正画像データによって、クロストークを抑圧することができる。その結果、右眼用画像と左眼用画像との混在が利用者に知覚されることを抑制しながら表示画像の明るさを向上させることが可能となる。
また、第1補正画像データ生成部と第2補正画像データ生成部とを独立して設けたので、右眼用シャッター及び左眼用シャッターの特性が変更されても、第2補正画像データ生成部のみを新たに設計すればよいので、設計の自由度を向上させることができる。
【0007】
ここで、前記第1補正画像データ生成部は、前記第1番目のフィールドの開始から前記第1補正画像データを前記表示部の供給した場合に、前記第1番目のフィールドが終了した時点で前記電気光学素子の光学特性が、前記第1画像データの示す階調に応じた値となるように前記第1画像データ及び前記第2画像データと、前記第1補正画像データとを対応づけて記憶した第1補正テーブルを備え、前記第1補正テーブルを参照して前記第1画像データ及び前記第2画像データに対応づけられた前記第1補正画像データを読み出す ことが好ましい。
【0008】
この発明によれば、テーブルを用いて第1補正画像データを生成するので、高速の応答が可能となる。さらに、第1番目のフィールドが終了した時点で電気光学素子の光学特性が、第1画像データの示す階調に応じた値となるように補正することができる。特に、右眼用シャッター及び左眼用シャッターが第1番目のフィールドで同時に閉状態となる場合には、閉状態のうちに階調を適正値に制御するから、輝度を十分確保することができる。
【0009】
上述した電気光学装置において、前記第1補正画像データ生成部は、前記第1番目のフィールドの開始から前記第1補正画像データを前記表示部の供給した場合に、前記第1番目のフィールドが終了した時点で前記電気光学素子の光学特性が、前記第1画像データの示す階調に応じた値となるように、前記第1画像データ及び前記第2画像データをパラメータとする演算を実行して、前記第1補正画像データを生成することが好ましい。この場合には、演算によって第1補正画像データを生成することが可能となる。
【0010】
上述した電気光学装置において、前記第2補正画像データ生成部は、第2番目のフィールドの開始から前記第2補正画像データを前記表示部の供給した場合に、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターのうち一方のシャッターを通して前記表示部で表示される画像を観察した場合に、他方のシャッターを通して観察されるべき画像成分が最小となるように、前記第1画像データ及び前記第2画像データと、前記第2補正画像データとを対応づけて記憶した第2補正テーブルを備え、前記第2補正テーブルを参照して前記第1画像データ及び前記第2画像データに対応づけられた前記第2補正画像データを読み出すことが好ましい。
【0011】
この発明によれば、テーブルを用いて第2補正画像データを生成するので、高速の応答が可能となる。さらに、他方のシャッターを通して観察されるべき画像成分が最小となるように第2補正画像データを記憶した第2補正テーブルを備えるので、クロストークを低減することができる。
【0012】
さらに、前記第2補正テーブルは、複数の個別補正テーブルを含み、前記第2補正画像データ生成部は、前記複数の個別補正テーブルの中から、前記立体視用眼鏡の種類に対応して選択した一つの個別補正テーブルを選択し、選択した個別補正テーブルを用いて前記第2補正画像データを生成することが好ましい。この場合には、複数種類の立体視用眼鏡に対応することができる。
【0013】
くわえて、前記立体視用眼鏡は、前記立体視用眼鏡の種類を示す識別信号を出力し、前記第2補正画像データ生成部は、前記識別信号に応じて前記複数の個別補正テーブルの中から一つの個別補正テーブルを選択することが好ましい。この場合には、自動的に個別補正テーブルを選択することができる。
【0014】
上述した電気光学装置において、前記第2補正画像データ生成部は、第2番目のフィールドの開始から前記第2補正画像データを前記表示部の供給した場合に、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターのうち一方のシャッターを通して前記表示部で表示される画像を観察した場合に、他方のシャッターを通して観察されるべき画像成分が最小となるように、前記第1画像データ及び前記第2画像データをパラメータとする演算を実行して前記第2補正画像データを生成することが好ましい。この場合には、演算で第2補正画像データを生成することができる。
【0015】
さらに、前記第2補正画像データ生成部は、前記立体視用眼鏡から、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターの応答特性に関する情報を取得し、取得した情報と前記第1画像データ及び前記第2画像データとをパラメータとする演算を実行して前記第2補正画像データを生成することが好ましい。この場合には、汎用性をより一層向上させることができる。特に、性能が改善された立体視用眼鏡が後から開発された場合にも、これに対応して第2補正画像データを生成することができる。
【0016】
以上の各態様に係る電気光学装置は、表示体として各種の電子機器に採用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子機器の構成図である。
【図2】本発明の画素回路の構成例を示す図である。
【図3】表示制御回路の構成を示すブロック図である。
【図4】第1補正テーブルのデータ構造を示す説明図である。
【図5】電気光学パネルの液晶の応答特性を示す説明図である。
【図6】第1補正画像データを説明するための説明図である。
【図7】第2補正画像データを説明するための説明図である。
【図8】第2実施形態に係る表示制御回路のブロック図である。
【図9】第3実施形態に係る表示制御回路のブロック図である。
【図10】電子光学装置を用いた電子機器の例を示す図である。
【図11】電子光学装置を用いた電子機器の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子機器Eのブロック図である。電子機器Eは、観察者に立体感を知覚させる立体視画像をフレームシーケンシャル方式で表示する。図1に示すとおり、電子機器Eは立体視用眼鏡10と電気光学装置20とを具備する。
【0019】
図1の立体視用眼鏡10は、電気光学装置20が表示する立体視画像の視認時に観察者が装着する眼鏡型の器具であり、観察者の右眼の前方に位置する右眼用シャッター12と左眼の前方に位置する左眼用シャッター14とを含んで構成される。右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14の各々は、照射光を透過させる開状態と照射光を遮断する閉状態とに制御される。例えば印加電圧に応じた液晶の配向方向に応じて開状態及び閉状態の一方から他方に変化する液晶シャッターが右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14として採用され得る。
【0020】
図1の電気光学装置20は、電気光学パネル24と制御回路28とを具備する。電気光学パネル24は、複数の画素回路48が配列された画素部42と、各画素回路48を駆動する駆動回路44とを具備する。画素部42には、相交差するM本の走査線462とN本のデータ線464とが形成される(M及びNは自然数)。各画素回路48は、走査線462とデータ線464との各交差に対応して縦M行×横N列の行列状に配列される。
【0021】
駆動回路44は、各走査線462に走査信号G1〜Gmを出力することにより各走査線462を順次に選択する走査線駆動回路441と、走査線462の選択に同期してN本のデータ線464の各々に階調電位VGを供給するデータ線駆動回路443とを含んで構成される。階調電位VGは、外部回路から供給される画像信号VIDで指定される階調(すなわち表示画像の各画素値)に応じて可変に設定され、所定の基準電位に対する極性が周期的に反転する。
【0022】
図2は、各画素回路48の回路図である。図2に示すように、各画素回路48は、液晶素子CLと選択スイッチ487とを含んで構成される。液晶素子CLは、相対向する画素電極481及び共通電極483と両電極間の液晶485とで構成された電気光学素子である。画素電極481と共通電極483との間の印加電圧に応じて液晶485の透過率が変化する。
【0023】
選択スイッチ487は、走査線462にゲートが接続されたNチャネル型の薄膜トランジスターで構成され、液晶素子CLとデータ線464との間に介在して両者の電気的な接続(導通/非導通)を制御する。したがって、画素回路48(液晶素子CL)は、選択スイッチ487がオン状態に制御されたときのデータ線464の電位(階調電位VG)に応じた階調を表示する。なお、液晶素子CLに対して並列に接続される補助容量等の図示は省略されている。
このように本実施形態では、電気エネルギーによって光学特性が変化する電気光学素子の一例として液晶素子CLを採用する。なお、電気光学素子は有機EL素子などの自発光素子であってもよい。
【0024】
図1の制御回路28は、電気光学パネル24を制御する表示制御回路52と、立体視用眼鏡10を制御する眼鏡制御回路54を含んで構成される。なお、表示制御回路52と眼鏡制御回路54とを単体の集積回路に搭載した構成や、表示制御回路52と眼鏡制御回路54とを別体の集積回路に分散した構成が採用され得る。
【0025】
図3に表示制御回路52のブロック図を示す。表示制御回路52は、外部装置から供給される画像データVDを記憶するフレームメモリ522を備える。このフレームメモリ522は、少なくとも2フレーム分の画像データVDを記憶することが可能である。また、外部装置から供給される画像データVDは1フレームで1枚の右目用画像又は左目用画像を表示可能なデータである。従って、フレームメモリ522は、右目用画像及び左目用画像を少なくとも1枚ずつ記憶できる。本実施形態では、1フレーム期間をかけて右目用画像又は左目用画像の画像データVDをフレームメモリ522に記憶する。そして、電気光学パネル24は1フレーム期間に3枚の画像を表示する。電気光学パネル24に1枚の画像を表示する期間をフィールドと称する。即ち、1フレームは3フィールドで構成されており、右目用のフレームでは各フィールドにおいて右目用画像を表示し、左目用のフレームでは各フィールドにおいて左目用画像を表示する。
【0026】
また、フレームメモリ522は、n番目のフレームの画像データを第1画像データVDn、n番目のフレームより1つ前のフレームの画像データを第2画像データVDn-1としたとき、第1画像データVDnと第2画像データVDn-1とを同時に読み出す。第1画像データVDnは、補正部526、第1補正画像データ生成部523、及び第2補正画像データ生成部524に供給される。
【0027】
第1補正画像データ生成部523は、第1補正テーブルLUT1を備え、第1補正画像データVDxを生成する。第1補正テーブルLUT1は、第1画像データVDn及び第2画像データVDn-1と、第1補正画像データVDxとを対応づけて記憶している。第1補正画像データVDxは、電気光学パネル24に用いられる液晶の応答特性を補正するために用いられる。
【0028】
第2補正画像データ生成部524は、第2補正テーブルLUT2を備え、第2補正画像データVDyを生成する。第2補正テーブルLUT2は、第1画像データVDn及び第2画像データVDn-1と、第2補正画像データVDyとを対応づけて記憶している。第2補正画像データVDyはクロストークを抑圧するために用いられる。
例えば、第1画像データVDnと第2画像データVDn-1とが各8ビットで与えられる場合、それらの値は256×256通りの組み合わせとなる。第1補正テーブルLUT1のデータ構造は、図4に示される通り、第1画像データVDn及び第2画像データVDn-1で指定される256×256の記憶領域に、第1補正画像データVDx(0,0)、VDx(1,0)、…VDx(255,255)が記憶されている。なお、第2補正テーブルLUT2のデータ構造も同様である。
【0029】
選択部525は制御部521の制御の下、1フレームの第1番目のフィールドでは第1補正画像データVDxを選択し、第2番目及び第3番目のフィールドでは第2補正画像データVDyを選択して補正部526に供給する。
補正部526は、選択部525から出力されるデータを用いて第1画像データVDnを補正して出力画像データVDoutを生成し、これを電気光学パネル24に供給する。補正部526は、例えば、第1画像データVDnに選択部525から出力されるデータを加算して出力画像データVDoutを生成する。あるいは、第1画像データVDnから選択部525から出力されるデータを減算して出力画像データVDoutを生成してもよい。さらには、補正部526は、加算、減算、乗算、及び除算を適宜組み合わせて出力画像データVDoutを生成してもよい。
【0030】
上述したように第1補正画像データVDxは電気光学パネル24に用いられる液晶の応答特性を補正する役割を担う。例えば、図5に点線で示すように液晶の印加電圧をステップ状に変化させた場合、液晶の透過率は緩やかに変化し目標値(本来、表示すべき輝度)に漸近する。液晶の透過率が目標値に漸近するまでに時間がかかると、画面が暗くなってしまう。
【0031】
本実施形態では、第1番目のフィールドが終了する時点で、液晶の透過率が表示すべき輝度となるように第1補正画像データVDxの値が定められている。上述したように第1番目のフィールドでは、第1補正画像データVDxが選択されるので、出力画像データVDoutは、VDout=VDn+VDxとなり、液晶の印加電圧と透過率は、図6に示す通り変化する。
【0032】
また、本実施形態では、クロストークを抑圧するため、各フレームの第1番目のフィールドでは、右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14を閉状態とする。上述したように、第2補正画像データVDyはクロストークを抑圧するために用いられる。クロストークは、電気光学パネル24の液晶の応答特性、並びに右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14の応答特性と関係がある。
【0033】
電気光学パネル24では線順次で画像信号の書き込みが行われる。ここで、図7に示すように、右眼用画像を表示するnフレームの第1番目のフィールドでは、右眼用シャッター12は閉状態となる。しかし、第1番目のフィールドが終了した時点では、最後に書き込まれたラインでは、液晶が十分に応答していない。このため、右眼用シャッター12が第2番目のフィールドで開状態となっても、左眼用画像から右眼用画像へと階調が十分変化しない。このように電気光学パネル24の応答特性がクロストークに影響を与える。
【0034】
また、第2番目のフィールドでは、右眼用シャッター12が開状態となるが、シャッターは液晶を用いて構成されるため、第2番目のフィールドの始めから直ちに最大の透過率に達するのではなく、透過率は次第に大きくなる。また、第2番目のフィールドでは、左眼用シャッター14が閉状態となるが、最小透過率は0%ではなく、右眼用画像が最小透過率に応じた輝度だけ左眼用シャッター14を透過する。このようにシャッターの動的・静的な応答特性がクロストークに影響を与える。
【0035】
第2補正画像データVDyは、第2番目のフィールドの開始から第2補正画像データVDyを電気光学パネル24に供給した場合に、右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14のうち一方のシャッターを通して電気光学パネル24に表示される画像を観察した場合に、他方のシャッターを通して観察されるべき画像成分が最小となるように設定されている。具体的には、第1画像データVDn及び第2画像データVDn-1を取り得る値だけ変化させ、他方のシャッターを通して観察されるべき画像成分が最小となるように第2補正画像データVDyを定め、第1画像データVDn及び第2画像データVDn-1と対応づけて第2補正画像データVDyを第2補正テーブルLUT2に格納する。
【0036】
上述したように、選択部525は、第2番目のフィールド以降は、第2補正画像データVDyを出力する。このため、図7に示すように第2フィールド以降において、出力画像データVDoutは、VDout=VDn+VDyとなる。但し、VDyは図7における例示では負の値である。
【0037】
このように、本実施形態では、第1補正画像データVDxによって輝度を確保し、第2補正画像データVDyによってクロストークを抑圧した。この結果、右眼用画像と左眼用画像との混在が利用者に知覚されることを抑制しながら表示画像の明るさを向上させることができる。
【0038】
また、第1補正画像データ生成部523と第2補正画像データ生成部524とを独立して設けた。上述したように第1補正画像データVDxは、電気光学パネル24に固有の液晶の特性に応じて設定される。一方、第2補正画像データVDyは右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14の動的・静的な応答特性を加味して定める必要がある。従って、別の種類の立体視用眼鏡10を用いる場合には、第2補正画像データ生成部524のみを変更すれば良い。具体的には、第2補正テーブルLUT2を変更すれば他の種類の立体視用眼鏡10に対応することができる。よって、自由度の高い電子機器Eを構成することができる。
【0039】
<2.第2実施形態>
上述した第1実施形態において、第2補正画像データ生成部524は、1種類の立体視用眼鏡10に対応するものであった。これに対して、第2実施形態の電子機器Eは、複数種類の立体視用眼鏡10に対応するものであり、表示制御回路52の替わりに図8に示す表示制御回路52Aを用いる点を除いて第1実施形態の電子機器Eと同様に構成されている。
【0040】
表示制御回路52Aにおいて、第2補正テーブルLUT2は、k(kは2以上の整数)個の個別補正テーブルLUT21、LUT22、…LUT2kを備える。k個の第2補正テーブルLUT21、LUT22、…LUT2kは、k種類の立体視用眼鏡10に各々対応している。立体視用眼鏡10からは、その種類を識別する識別信号IDが送信される。制御部521Aは、識別信号IDに基づいて選択信号SELを生成する。
第2補正画像データ生成部524Aは、制御部521Aから供給される選択信号SELに基づいて、k個の個別補正テーブルLUT21、LUT22、…LUT2kの一つを選択し、選択した個別補正テーブルを用いて第2補正画像データVDyを生成する。なお、制御部521Aは識別信号IDを選択信号SELとして出力してもよい。要は、第2補正画像データ生成部524Aは、識別信号IDに応じて複数の個別補正テーブルLUT21〜LUT2kの中から対応する一つの個別補正テーブルを選択できのであれば、どのような方法を用いてもよい。
このように第2実施形態によれば、立体視用眼鏡10の種類が変更されても、これに対応する第2補正画像データVDxを生成することができる。これにより、より一層、自由度の高い電子機器Eを構成することができる。
【0041】
<3.第3実施形態>
上述した第1実施形態において、第2補正画像データ生成部524は、ある温度に対応する第2補正テーブルLUT2を備えるものであった。これに対して、第3実施形態の電子機器Eは、複数の温度に対応する個別補正テーブルLUT31、LUT32、…LUT3kを備える。
図9に第3実施形態に係る表示制御回路52Bを示す。表示制御回路52Bにおいて、第2補正テーブルLUT2は、k(kは2以上の整数)個の個別補正テーブルLUT31、LUT32、…LUT3kを備える。k個の個別補正テーブルLUT31、LUT32、…LUT3kは、k種類の温度に各々対応している。
温度センサー527は温度を検出し、温度を示す温度信号を制御部521に供給する。制御部521Bは、温度信号に基づいて選択すべき個別補正テーブルLUT31、LUT32、…LUT3kを指定する選択信号SELを生成する。
第2補正画像データ生成部524Bは、制御部521Bから供給される選択信号SELに基づいて、k個の個別補正テーブルLUT31、LUT32、…LUT3kの一つを選択し、選択した個別補正テーブルを用いて第2補正画像データVDyを生成する。
なお、温度信号を第2補正画像データ生成部524Bに供給し、第2補正画像データ生成部524Bは、温度信号の示す温度に近い2つの個別補正テーブルを選択し、温度に応じた補間処理を実行することによって、第2補正画像データVDyを生成してもよい。
このように第3実施形態によれば、温度が変化しても、これに対応する第2補正画像データVDxを生成することができる。これにより、温度が変化しても高品質の画像を表示することが可能となる。
【0042】
<4.変形例>
以上の形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は適宜に併合され得る。
【0043】
(1)上述した各実施形態では、第1補正テーブルLUT1を用いて、第1補正画像データVDxを生成したが本発明はこれに限定されるものではなく、演算によって第1補正画像データVDxを生成してもよい。第1補正画像データ生成部523は、第1番目のフィールドの開始から第1補正画像データVDxを電気光学パネル24に供給した場合に、第1番目のフィールドが終了した時点で液晶の光学特性が、第1画像データVDnの示す階調に応じた値となるように、第1画像データVDn及び第2画像データVDn-1をパラメータとする演算を実行して、第1補正画像データVDyを生成する。この演算は、液晶の応答特性に対応する定数を含むことが好ましい。
【0044】
(2)上述した各実施形態では、第2補正テーブルLUT2(LUT21〜LUT2k)を用いて、第2補正画像データVDyを生成したが本発明はこれに限定されるものではなく、演算によって第2補正画像データVDyを生成してもよい。第2補正画像データ生成部524(524A)は、第2番目のフィールドの開始から第2補正画像データVDyを電気光学パネル24に供給した場合に、右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14のうち一方のシャッターを通して電気光学パネル24で表示される画像を観察した場合に、他方のシャッターを通して観察されるべき画像成分が最小となるように、第1画像データVDn及び第2画像データVDn-1をパラメータとする演算を実行して第2補正画像データVDyを生成する。この演算においては、電気光学パネル24の液晶の応答特性、右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14の最小透過率や応答遅延などの応答特性などの少なくとも一つを定数として含むことが好ましい。
なお、k種類の立体視用眼鏡10に対応する場合は、上述した定数をパラメータとし、立体視用眼鏡10の種類に応じて切り替えればよい。
【0045】
(3)上述した各実施形態では、1フレームを3個のフィールドで構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1フレームが2個以上のフィールドで構成されるのであれば良い。この場合にも、第1番目のフィールドでは第1補正画像データVDxが選択され、第2番目以降のフィールドで第2補正画像データVDyが選択される。
【0046】
(4)上述した各実施形態では、右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14の一方は、第1番目のフィールドと第2番目のフィールドの境界で閉状態から開状態に変化したが、本発明はこれに限定されるものではなく、多少はずれてもよい。例えば、閉状態から開状態に変化するタイミングは、第1番目のフィールドの半分より後半から第2番目のフィールドの半分より前半までの期間に含まれていればよい。
【0047】
(5)上述した第2実施形態では、立体視用眼鏡10から識別信号IDを受け取って、個別補正テーブルLUT21〜LUT2kを切り替えたが、本発明はこれに限定されるものではなく、識別信号IDを受信しなくてもよい。この場合には、利用者が操作可能な切り換えスイッチ(例えば、リモコン)を用いて、個別補正テーブルLUT21〜LUT2kを選択してもよい。
また、識別信号IDは、立体視用眼鏡10の種類を特定できればよいので、右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14の最小透過率や遅延特性などの応答特性を数値で示した情報であってもよい。この場合は、制御部521Aが、これらの情報に基づいて個別補正テーブルを指定する選択信号SELを生成すればよい。
さらに、第2補正画像データ生成部は、立体視用眼鏡から、右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14の応答特性に関する情報を取得し、取得した情報と第1画像データVDn及び第2画像データVDn-1とをパラメータとする演算を実行して第2補正画像データVDyを生成してもよい。この場合には、性能が改善された立体視用眼鏡10が後から開発された場合にも、これに対応して第2補正画像データVDyを生成することができる。
【0048】
<5.応用例>
以上の各形態に例示した電気光学装置20は、各種の電子機器に利用され得る。
図10は、電気光学装置20を採用した可搬型のパーソナルコンピュータの斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する電気光学装置20と、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。このパーソナルコンピュータ2000は、図示せぬ立体視用眼鏡10を使用することによって、立体視が可能となっている。
【0049】
図11は、電気光学装置20を適用した投射型表示装置(3板式のプロジェクタ)4000の模式図である。投射型表示装置4000は、相異なる表示色(赤色,緑色,青色)に対応する3個の電気光学パネル24(24R,24G,24B)と図示しない制御回路とを含んで構成される。照明光学系4001は、照明装置(光源)4002からの出射光のうち赤色成分rを電気光学パネル24Rに供給し、緑色成分gを電気光学パネル24Gに供給し、青色成分bを電気光学パネル24Bに供給する。各電気光学パネル24は、照明光学系4001から供給される各単色光を表示画像に応じて変調する光変調器(ライトバルブ)として機能する。投射光学系4003は、各電気光学パネル24からの出射光を合成して投射面4004に投射する。この場合、本発明に係る表示部は、投射光学系4003を含む。そして、第2補正画像データVDyは、スクリーン4004に投射された画像を右眼用シャッター12及び左眼用シャッター14を通して観察した場合に、クロストークが最小となるように定めればよい。
【0050】
なお、本発明に係る電気光学装置が適用される電子機器としては、図10及び図11に例示した機器のほか、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants),デジタルスチルカメラ,テレビ,ビデオカメラ,カーナビゲーション装置,車載用の表示器(インパネ),電子手帳,電子ペーパー,テレビ電話,POS端末,ビデオプレーヤ,タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【符号の説明】
【0051】
10…立体視用眼鏡、12…右眼用シャッター12…左眼用シャッター、20…電気光学装置、24…電気光学パネル、28…制御回路、52…表示制御回路、521…制御部、522…フレームメモリ、523…第1補正画像データ生成部、524…第2補正画像データ生成部、525…選択部、526…補正部、VDn…第1画像データ、VDn-1…第2画像データ、LUT1…第1補正テーブル、LUT2…第2補正テーブル、LUT21〜LUT2k…個別補正テーブル、VDx…第1補正画像データ、VDy…第2補正画像データ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
右眼用シャッター及び左眼用シャッターを備えた立体視用眼鏡と共に用いられ、複数のフィールドからなるフレームごとに右眼用画像と左眼用画像とを順次表示する電気光学装置であって、
電気光学素子を用いて画像を表示する表示部と、
一のフレームの第1画像データと前記第1画像データの一つ前のフレームの第2画像データとに基づいて、前記電気光学素子の応答特性を補正した第1補正画像データを生成する第1補正画像データ生成部と、
前記第1画像データと前記第2画像データとに基づいて、右眼用画像と左目用画像との混在によるクロストークを補正する第2補正画像データを生成する第2補正画像データ生成部と、
前記フレームを構成する複数のフィールドのうち、第1番目のフィールドは前記第1補正画像データを選択し、第2番目以降のフィールドでは前記第2補正画像データを選択する選択部と、
前記第1画像データを前記選択部から出力されるデータで補正して出力画像データを生成して前記表示部に供給する補正部と、
前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターの開閉を制御する制御信号を生成する制御部と、
を備える電気光学装置。
【請求項2】
前記第1補正画像データ生成部は、前記第1番目のフィールドの開始から前記第1補正画像データを前記表示部の供給した場合に、前記第1番目のフィールドが終了した時点で前記電気光学素子の光学特性が、前記第1画像データの示す階調に応じた値となるように前記第1画像データ及び前記第2画像データと、前記第1補正画像データとを対応づけて記憶した第1補正テーブルを備え、前記第1補正テーブルを参照して前記第1画像データ及び前記第2画像データに対応づけられた前記第1補正画像データを読み出す、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1補正画像データ生成部は、前記第1番目のフィールドの開始から前記第1補正画像データを前記表示部の供給した場合に、前記第1番目のフィールドが終了した時点で前記電気光学素子の光学特性が、前記第1画像データの示す階調に応じた値となるように、前記第1画像データ及び前記第2画像データをパラメータとする演算を実行して、前記第1補正画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第2補正画像データ生成部は、第2番目のフィールドの開始から前記第2補正画像データを前記表示部の供給した場合に、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターのうち一方のシャッターを通して前記表示部で表示される画像を観察した場合に、他方のシャッターを通して観察されるべき画像成分が最小となるように、前記第1画像データ及び前記第2画像データと、前記第2補正画像データとを対応づけて記憶した第2補正テーブルを備え、前記第2補正テーブルを参照して前記第1画像データ及び前記第2画像データに対応づけられた前記第2補正画像データを読み出す、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第2補正テーブルは、複数の個別補正テーブルを含み、
前記第2補正画像データ生成部は、前記複数の個別補正テーブルの中から、前記立体視用眼鏡の種類に対応して選択した一つの個別補正テーブルを選択し、選択した個別補正テーブルを用いて前記第2補正画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記立体視用眼鏡は、前記立体視用眼鏡の種類を示す識別信号を出力し、
前記第2補正画像データ生成部は、前記識別信号に応じて前記複数の個別補正テーブルの中から一つの個別補正テーブルを選択することを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第2補正画像データ生成部は、第2番目のフィールドの開始から前記第2補正画像データを前記表示部の供給した場合に、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターのうち一方のシャッターを通して前記表示部で表示される画像を観察した場合に、他方のシャッターを通して観察されるべき画像成分が最小となるように、前記第1画像データ及び前記第2画像データをパラメータとする演算を実行して前記第2補正画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第2補正画像データ生成部は、前記立体視用眼鏡から、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターの応答特性に関する情報を取得し、取得した情報と前記第1画像データ及び前記第2画像データとをパラメータとする演算を実行して前記第2補正画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項7に記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−156891(P2012−156891A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15675(P2011−15675)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】