説明

電気刺激装置

【課題】装置本体を完全に生体内に植え込まれるようにしつつ、刺激電極を所望の位置で保持し続ける。
【解決手段】管状導入具を介して生体内に植え込まれる電気刺激装置であって、生体内に植え込まれて神経または筋肉を電気的に刺激する刺激電極と、刺激電極と電気的に結合して刺激信号を印加する電子回路と、刺激電極の生体内の植え込み位置を保持する支持体を備える。そして、支持体内には貫通する電気的な線路がなく、支持体は、所望の位置で切断可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体を電気刺激する電気刺激装置に関し、特に、生体内に完全に植え込まれて使用される電気刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、痛み治療において、従来の薬物療法、神経ブロック療法あるいは外科的療法に効果を示さない場合や、副作用などによりその治療が継続できない場合に、神経を電気刺激することにより痛みを緩和する電気刺激療法が効果を挙げている。電気刺激療法の1つである脊髄電気刺激療法は、脊髄を介して脳へ伝播する痛みを緩和するために、脊髄を電気刺激する刺激療法である。
【0003】
脊髄電気刺激療法では、通常、電気刺激による疼痛緩和の有効性を確かめるために、24時間から数週間のトライアル期間が設けられる。トライアル期間では、一般的に、背中側から穿刺して脊髄を覆う脊髄硬膜の外側にある硬膜外腔に刺激電極を留置した後、この刺激電極が含まれる電極リードを体外の刺激装置と接続して様々な刺激パターンの下で疼痛緩和の程度が調べられる。この期間においては電気刺激装置の植え込みは行われていない。このトライアル期間において所定の効果が認められた場合にのみ、電気刺激装置の植え込みが実施される。
【0004】
電気刺激装置の植え込みを行う場合には、トライアル期間に留置された電極リードが抜去された後、再び硬膜外腔に新たな刺激電極が留置され、この刺激電極が含まれる電極リードが皮下トンネルにより腰部や腹部、あるいは胸部に導かれる。そして、電極リードが電気刺激装置と接続されて皮下に植え込まれる。
【0005】
ところで、脊髄電気刺激療法におけるトライアル期間では、電極リードが体外の刺激装置と接続されているために、感染の危険性や、患者の活動の制限、あるいは、この活動の制限がストレスとなって疼痛緩和の有効性判断に影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
これに対して特許文献1に記載の技術では、ハウジングの両端に電極を備えた、リードレスの微小刺激装置を開示しており、この微小刺激装置全体を神経近くに完全に植え込むことにより、感染の危険性を軽減するとともに、患者の活動の制限を極力少なくすることが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,193,539号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の微小刺激装置を 、脊髄電気刺激療法における硬膜外腔等の管腔内に留置する場合には、刺激装置の刺激電極を所望の位置に正確に留置し続けることが難しい、という問題がある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、装置本体を完全に生体内に植え込まれるようにしつつ、刺激電極を所望の位置で保持し続けることが可能な電気刺激装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の電気刺激装置は、管状導入具を介して生体内に植え込まれる電気刺激装置であって、生体内に植え込まれて神経または筋肉を電気的に刺激する刺激電極と、刺激電極と電気的に結合して刺激信号を印加する電子回路と、刺激電極の生体内の植え込み位置を保持する支持体を備え、支持体内には貫通する電気的な線路がなく、支持体は、所望の位置で切断可能であるものである。
【0011】
本発明の上述した構成によれば、装置本体を管状導入具を介して生体内に挿入することができる。そして、刺激電極を所望の位置で保持し続けるための支持体内には貫通する電気的な線路がなく、支持体は所望の位置で切断することができる。そのため、支持体の長さ、つまり装置本体の軸方向の長さをある程度可変にすることができる。例えば、刺激電極が所定の位置になるように、装置本体を体内に挿入し、体外に出ている部分(支持体の一部)だけを切断することも可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上述の支持体部分の長さを可変にすることができるので、支持体の切断部分から刺激電極までの距離を調節することができる。例えば、患者の身体的特徴に応じて支持体の長さ、つまり装置本体の軸方向の長さをある程度可変にすることができる。
すなわち、患者の身体的特徴による制約を受けずに、刺激電極の位置を保持することができる。これにより、適切な神経をより確実に刺激できる、という効果がある。また、支持体を切断することで、余剰となった支持体を皮下に植え込む必要がなくなるので、侵襲を小さくでき、植え込み部位の患者の違和感も小さくすることができる。さらに、電気刺激装置を完全に生体内に植え込むこともできるので、感染症を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す分解外観図である。
【図3】(a)本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を示す拡大図である。(b)本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置の軸方向の断面図である。
【図4】(a)〜(f)本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置の径方向の断面図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係る刺激回路を中心としたブロック図である。
【図6】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図8】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図9】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図10】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図11】本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【図12】本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す分解外観図である。
【図13】(a)本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置を示す拡大図である。(b)本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置の軸方向の断面図である。
【図14】(a)〜(f)本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置の径方向の断面図である。
【図15】本発明の第三の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【図16】本発明の第三の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す分解外観図である。
【図17】(a)本発明の第三の実施形態に係る電気刺激装置を示す拡大図である。(b)本発明の第三の実施形態に係る電気刺激装置の軸方向の断面図である。
【図18】(a)本発明の第一の実施形態に係る支持体の第一変形例を示す説明図である。(b)本発明の第一の実施形態に係る支持体の第一変形例の軸方向の断面図である。
【図19】(a)本発明の第二あるいは第三の実施形態に係る支持体の第一変形例を示す説明図である。(b)本発明の第二あるいは第三の実施形態に係る支持体の第一変形例の軸方向の断面図である。
【図20】(a)本発明の第一の実施形態に係る支持体の第二変形例を示す説明図である。(b)本発明の第一の実施形態に係る支持体の第二変形例の軸方向の断面図である。
【図21】(a)本発明の第二あるいは第三の実施形態に係る支持体の第二変形例を示す説明図である。(b)本発明の第二あるいは第三の実施形態に係る支持体の第二変形例の軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための実施形態例について説明する。以下に述べる実施の形態例は、本発明の好適な具体例である。そのため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明の範囲は、下記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる各パラメータの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【0015】
以下の手順で説明を行う。
<第一の実施形態例>
(1)電気刺激装置の構成
(2)刺激回路等の構成
(3)電気刺激装置の植え込み手順
<第二の実施形態例>
(1)電気刺激装置の構成
<第三の実施形態例>
(1)電気刺激装置の構成
<変形例>
(1)第一の変形例
(2)第二の変形例
(3)その他の変形例
【0016】
<本発明の第一の実施形態例の説明>
本発明の第一の実施形態の例を、図1から図10を参照して説明する。
[1.電気刺激装置の構成]
まず、第一の実施形態に係る電気刺激装置の大まかな構成について図1および図2を参照して説明する。
図1は、第一の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
図2は、図1に示す電気刺激装置を上面から見た分解外観図である。
【0017】
電気刺激装置101は、略円筒形状に形成されており、電気的な刺激信号を生成し、その刺激信号で生体内の神経等を刺激するものである。電気刺激装置101は、脊髄の神経を刺激する際に、生体内(例えば、脊髄硬膜と脊柱背側との距離が約5mmの硬膜外腔)に植え込まれる。そのため、電気刺激装置101は、先端部114から基端部119までの直径が、約1mmから3mmであることが好ましい。
【0018】
電気刺激装置101は、大きく分けて、電極ブロック102と、回路ブロック103と、支持体104と、固定具121からなる。なお、電極ブロック102と回路ブロック103はコネクタ部107で着脱可能となっており、回路ブロック103と支持体104はコネクタ部109で着脱可能となっている。
より詳細に説明すると、図2に示すように、電極ブロック102と回路ブロック103は、電極ブロック102側のコネクタ部112と回路ブロック103側のコネクタ部107とが、例えばネジ等により固定される。同様に、回路ブロック103と支持体104は、回路ブロック103側のコネクタ部109と支持体104側のコネクタ部113とが、同様にネジ等によって固定されるようになっている。
【0019】
電極ブロック102は、先端部114が略半球状に形成され、その他の部分が略円筒形状に形成されている。先端部114の略半球状部分の半径は約0.5mmから1.5mmであることが好ましく、その他の略円筒形状部分の直径は約1mmから3mmであることが望ましい。
このような電極ブロック102は、神経等を刺激するための4つの刺激電極105と、電気刺激装置101を生体内に配置した際に各刺激電極105が生体に対して剥き出しになるように、等間隔に配置されるボディ106を含んでいる。さらに、ボディ106の基端部115側と回路ブロック103の先端部116とが連続するように接続するコネクタ部112を含んでいる。なお、第一の実施形態の例では、刺激電極105の数を4つとしたが、これはあくまでも一例であって、刺激電極105の数は任意に設定できるものである。電極ブロック102の内部構成については、図3にて後述する。
【0020】
回路ブロック103は、電極ブロック102と同じ直径の略円筒形状に形成されている。回路ブロック103は、先端部116が電極ブロック102の基端部115側のボディ106と連続するように、電極ブロック102のコネクタ部112と接続するコネクタ部107を備えている。また、回路ブロック103には、コネクタ部107と連続するボディ108が設けられる。さらに、ボディ108の基端部117側に連続し、基端部117と支持体104とを接続するコネクタ部109を備えている。なお、回路ブロック103の内部構成については、図3にて後述する。
【0021】
支持体104は、回路ブロック103と接続するコネクタ部113と、電極ブロック102と同じ直径の略円筒形状に形成された第一ボディ110と、第一ボディ110と連続する第二ボディ120を含む。
【0022】
支持体104のコネクタ部113は、第一ボディ110の先端部118側が回路ブロック103と連続するように、当該回路ブロック103のコネクタ部109と接続される。
第一ボディ110は、コネクタ部113と、基端部119側に配置される第二ボディ120とを接続する部分である。
【0023】
第二ボディ120は、電気刺激装置101が完全に生体内に植え込めるようにすべく、切断可能となっている。そして、切断面には、取り外し可能な固定具121(図1参照)が設けられている。
【0024】
固定具121は、シリコーン等の生体適合性と柔軟性のある材料で構成されており、略半球状に形成されている。この固定具121の底面には、第二ボディ120の切断面が挿入される略円筒状の空洞が形成され、側面にはリング状の溝が形成されている。そして、この略円筒形状の空洞に第二ボディ120の切断面が挿入可能になるように、略円筒形状の空洞の直径は第二ボディ120と同程度かそれより少し大きく形成されている。なお、この略円筒形状の空洞に第二ボディ120の切断面が挿入された状態で、この固定具121は、その側面に設けられた溝に通した糸によって第二ボディ120に固定されるようになっている。これにより、第二ボディ120の切断面と生体との接触に伴う炎症や異物感を防止できるようになっている。
【0025】
次に、第一の実施形態に係る電気刺激装置の内部構成について図3および図4を参照して説明する。
図3は、本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置およびその軸方向の内部構造を示す拡大図である。
図3(a)は、図1に示す電気刺激装置を上面から見た拡大外観図である。
図3(b)は、図3(a)に示す電気刺激装置のA―A’断面を示す断面図である。
【0026】
また、図4は、本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置の軸に対して垂直方向の所定箇所の内部構造を示す断面図である。
図4(a)は、図3(a)に示す電気刺激装置のB−B’断面を示す断面図である。
図4(b)は、図3(a)に示す電気刺激装置のC−C’断面を示す断面図である。
図4(c)は、図3(a)に示す電気刺激装置のD−D’断面を示す断面図である。
図4(d)は、図3(a)に示す電気刺激装置のE−E’断面を示す断面図である。
図4(e)は、図3(a)に示す電気刺激装置のF−F’断面を示す断面図である。
図4(f)は、図3(a)に示す電気刺激装置のG−G’断面を示す断面図である。
【0027】
最初に、電極ブロック102の内部構成について説明する。
ボディ106は、柔軟性があって、かつ生体適合性がある樹脂素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の素材でできている。ボディ106の先端部114(図2(a)参照)は前述したように、略半球状であり、その半径は、約0.5mmから1.5mmの範囲であることが好ましい。そして、ボディ106の先端部114以外の部分は、軸方向が一部中空の略円筒形状に形成されている。そして、この中空部分に4つの刺激電極105がボディ106の表面に剥き出しになるように、固定されている。
【0028】
刺激電極105は、導電性があって生体適合性がある素材、例えばプラチナやプラチナ合金(プラチナ90%/イリジウム10%合金など)等の素材でできており、中空の略円筒状に形成されている。刺激電極105の外径は、ボディ106の外径とほぼ等しく形成される。なお、4つの刺激電極105を先端部114側にあるものから順に刺激電極105a、b、c、dと定義する。
【0029】
各刺激電極105a、b、c、dには、導線202a、b、c、dの一端(先端部114側の端)がそれぞれはんだ203によって接着されており(図4(a)を参照)、当該導線202a、b、c、dの他端(基端部115(図2(a)参照)側の端)がコネクタ部112と電気的に接続されている。なお、導線202のはんだ203で接着される箇所およびコネクタ部112と電気的に接続されている箇所以外の箇所は、PTFEやETFEによる絶縁被覆がなされており、ボディ106内部に完全に埋め込まれている(図4(b)を参照)。
【0030】
コネクタ部112は、ボディ106と同じ素材で形成されており、略円筒形状をしたボディ106の外径から段差を設けた切り欠き部として形成されている。この切り欠き部は、基端部115から軸方向に所定の距離だけ形成されている。なお、この切り欠き部は平面であり、切り欠き部上には4つのコネクタピン210が露出して配置され、この4つのコネクタピン210に各導線202a、b、c、dが電気的に接続されるようになっている。
【0031】
次に、回路ブロック103の内部構成について説明する。
コネクタ部107は、後述する電気的接続部211以外はボディ106と同じ素材(ポリウレタンやシリコーン)で作られている。このコネクタ部107には、電極ブロック102のコネクタ部112と結合可能となるように、当該コネクタ部112の外径と略同じ形状の穴が軸方向に開けられている(図4(c)を参照)。このコネクタ部107の外径は、ボディ106の外径にほぼ等しい。また、コネクタ部107は、電極ブロック102のコネクタ部112と接続された場合に、4つのコネクタピン210とそれぞれ独立して電気的に接続される電気的接続部211を含んでいる。なお、回路ブロック103の基端部117(図2(b)参照)側に設けられるコネクタ部109は、その先端部116(図2(b)参照)側に設けられるコネクタ部107と同じものであるが、特にどこかと電気的に接続されるものではない。
【0032】
回路ブロック103のボディ108は、コネクタ部107,109と連続しており、当該コネクタ部107,109と同じ素材でできている。このボディ108は、略円筒形状に形成されており、その直径は、回路ブロック103のコネクタ部107の外径とほぼ等しく形成されている。
【0033】
このボディ108には、電気的刺激信号を生成する、フレキシブル回路基板上にカスタムICなどの小型な部品を実装することでできた刺激回路205と、刺激回路205と電気的に接続されているコイル部212とが埋め込まれている(図4(d)を参照、コイル部212は含まれていない)。なお、コイル部212は軸方向を軸として巻回されて形成される。
【0034】
刺激回路205は、生成した電気的刺激信号を各刺激電極105に独立して供給するように、ボディ108に埋め込まれている導線204を介して電気的接続部211と接続されている。なお、刺激回路205およびコイル部212の電気的な構成については、図5にて後述する。
【0035】
次に、支持体104の内部構成について説明する。
コネクタ部113は、例えばポリウレタンやシリコーンでできており、前述した電極ブロック102のコネクタ部112と同一の形状とされる。ただし、図3(b)では、コネクタ部113にはコネクタ部112と同様のコネクタピンが図示されているが、実際は外部と電気的な接続を行う必要がないので、コネクタピンは設けなくてもよい。
【0036】
支持体104の第一ボディ110は、コネクタ部113と同じ素材で作られており、略円筒形状に形成される。この第一ボディ110の直径は、回路ブロック103のボディ108の外径とほぼ等しく形成されている(図4(e)を参照)。
【0037】
第二ボディ120は、第一ボディ110と連続しており、第一ボディ110と同じ素材でできている。この第二ボディ120は、第一ボディ110の直径と同一の直径の略円筒形状に形成される固定具固定部213と、この固定具固定部213の直径よりも小さい径で形成される易切断部214からなっている(図4(f)を参照)。固定具固定部213と易切断部214は、それぞれの軸が一致するように、交互に複数設けられている。
【0038】
[2.刺激回路等の構成]
次に、回路ブロック103に含まれる刺激回路205およびコイル部212のより詳細な電気的構成について図5を参照して説明する。
図5は、本発明の第一の実施形態例に係る刺激回路およびコイル部を示す機能ブロック図である。
【0039】
刺激回路205は、通信部302と、刺激パラメータ設定部304と、電極構成設定部305と、発振部306と制御部303を含む。さらに、充電部308と、充電池309と、スイッチ部307とを備える。
【0040】
充電池309は、例えばリチウムイオン電池等の充電可能な電池である。図5に図示はしていないが、この充電池309は、蓄積している電力を、刺激回路205を構成する各ブロックに供給している。
【0041】
コイル部212は、例えばコイルとコンデンサで構成される共振回路である。コイル部212は、充電池309の充電を行う場合、図示しない体外のコントローラから送信される充電用の電磁波を受信する。そして、この受信に伴ってコイル部212から発生する交流電流が充電部308に出力される。また、コイル部212は図示しない体外のコントローラから送信される、所定の情報が載せられた電磁波を受信し、受信した電磁波が当該コイル部212から通信部302に出力される。
【0042】
充電部308は、整流回路を内蔵し、コイル部212から出力された交流電流を直流電流に変換して電力を取得する。そして、取得した電力で充電池309の充電を行う。
【0043】
通信部302は、コイル部212が受信した電磁波を復調し、電磁波に載せられている情報を取り出す。そして、取り出した情報を制御部303を介して刺激パラメータ設定部304および電極構成設定部305に出力する。刺激パラメータ設定部304に出力される情報は、電気的刺激信号の刺激強度に関する情報(以下、「刺激パラメータ」という)であり、電極構成設定部305に出力される情報は、電極構成に関する情報(以下、「電極構成情報」という)である。電気的刺激信号の刺激強度は、当該電気的刺激信号のパルス電圧、パルス電流、パルス幅あるいは周波数により決定されるので、刺激パラメータはこれらパルス電圧等の値を示す信号である。また、電極構成情報は、電気的刺激信号の極性を変更するための情報と、電気的刺激信号を出力する刺激電極105をスイッチ部307に選択させるための情報とを含む信号である。
【0044】
刺激パラメータ設定部304は、通信部302から入力される刺激パラメータに基づいて、発振部306で発生する電気的刺激信号の刺激強度を変更するための刺激強度変更信号を生成する。
電極構成設定部305は、通信部302から入力される電極構成情報に基づいて、発振部306で発生する電気的刺激信号を出力する刺激電極105を選択するための電極構成選択信号を生成する。なお、刺激パラメータ設定部304から出力される刺激強度変更信号は発振部306に出力され、電極構成設定部305から出力される電極構成選択信号はスイッチ部307に出力される。
【0045】
発振部306は、刺激パラメータ設定部304から入力される刺激強度変更信号に基づいて、電気的刺激信号を生成してスイッチ部307に出力する。
スイッチ部307は、電極構成設定部305から入力される電極構成選択信号に基づいて、発振部306から入力される電気的刺激信号を出力する刺激電極105を決定する。なお、制御部303は、例えばマイコン等であり、刺激回路205の各ブロックを制御する。
【0046】
[3.電気刺激装置の植え込み手順]
次に、電気刺激装置101を例えば硬膜外腔に植え込み、この電気刺激装置101で脊髄の神経の電気刺激を行う手順の一例について図6から図10を参照して説明する。
図6から図10は、背中付近を示す人体の横断面図である。
【0047】
まず、医師は、患者の痛みの分布状況に基づき、予め目標とする脊髄の刺激部位を決定する。そして、X線透視下で患者の背中側から穿刺して、管状導入具として硬膜外針402を硬膜外腔405まで挿入する。この硬膜外針402が硬膜外腔405に挿入される位置は、一般的に、目標とする刺激部位から3椎体以上低位が選ばれる(図6を参照)。
【0048】
次に、医師は、硬膜外針402に電気刺激装置101の先端部114(図1参照)を通し、当該電気刺激装置101を生体404内に挿入する。そして、支持体104を軸方向に押すことにより、電気刺激装置101が硬膜外針402を通して硬膜外腔405内に挿入される(図7を参照、電気刺激装置101の支持体104の固定具固定部213および易切断部214は不図示)。
【0049】
続いて、医師は、さらに支持体104を軸方向に押して、硬膜外腔405内に電気刺激装置101を上向かせ、電気刺激装置101の刺激電極105を目標とする刺激部位の近くに位置させる。
次に、医師は、刺激電極105の位置を少しずつ移動させながら、不図示の体外のコントローラを操作して神経刺激を行う。このとき、電気刺激装置101の刺激回路205では、医師の操作に基づいて、所定の強度の電気的刺激信号が生成され、生成された電気的刺激信号が刺激電極105に出力されて、当該刺激電極105の位置に近い部分の神経刺激が行われる(図3(b)、図5を参照)。そして、医師は、患者の神経刺激に対する反応を聞きながら、最適な刺激電極105の位置を決定する。
【0050】
続いて、医師は、硬膜外針402を生体404から抜き去る(図8を参照)。電気刺激装置101が完全に生体404内に植え込まれるように、電気刺激装置101の生体404からはみ出ている部分を切断する。すなわち、電気刺激装置101の支持体104(図1参照)の第二ボディ120における易切断部214を所定位置で切断する(図9を参照)。そして、易切断部214の切断面に最も近い固定具固定部213を覆うように固定具121を被せ、図10に示すように、固定具121の溝に糸406を通し、この糸406により固定具121を第二ボディ120に縛って固定する。
【0051】
さらに、この切断された電気刺激装置101が生体404内に完全に植え込まれた状態で固定されるようにするため、生体404内の靭帯や筋膜などの結合組織に固定具121を糸406で縫いつける。なお、固定具121を用いない場合は、生体404内の組織に易切断部214の所定位置を糸で縫いつけるようにしてもよい。そして最後に、背中の電気刺激装置101の刺入部を縫合する。この処置は、電気刺激装置101の刺入部から感染症等を起こさないようにするためのものである。
【0052】
ところで、硬膜外針402に代えて、カニューレを通して電気刺激装置101を硬膜外腔405内に挿入することも可能である。すなわち、予め硬膜外針402を通してカニューレを刺激を行う部位の近くまで導き、硬膜外針402を抜いた後に、このカニューレ内に電気刺激装置101を通して生体404内に挿入する。ここで、カニューレとは、柔軟性があって、かつ生体適合性がある樹脂素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の素材でできているチューブを指す。
【0053】
以上説明したように、本発明の第一の実施形態では、電極ブロック、回路ブロックおよび支持体が、硬膜外針の内部を挿通可能になるような形状に形成した。そのため、医師が支持体を操作して、硬膜外針を介して、刺激電極を所定の位置まで移動させることができるとともに、刺激電極をその位置に長期間にわたって安定的に留置できるという効果がある。また、医師が支持体を操作して、電気刺激装置を体外へ容易に取り出すことができるという効果がある。
【0054】
さらに、本発明の第一の実施形態では、支持体内には貫通する電気的な線路が設けられていないので、支持体を所望の位置で切断できる。すなわち、電気刺激装置の軸方向の長さをある程度自由に変更することができる。これにより、患者の身体的特徴に関する制約を受けずに、刺激電極の位置を保持したまま電気刺激装置を完全に生体内に植え込むことができるとともに、患者に対する侵襲を小さく、植え込み部位の違和感を小さくできる、という効果がある。
【0055】
<本発明の第二の実施形態例の説明>
次に、本発明の第二の実施形態の例を、図11から図14を参照して説明する。図11から図14に示す第二の実施形態に係る電気刺激装置501は、第一の実施形態に係る電気刺激装置101にスタイレットを挿入するための円筒状の穴(以下、「スタイレット用ルーメン」という)を備えたものである。その構成の共通部分については同一符号を付して、説明を省略することにする。
【0056】
[1.電気刺激装置の構成]
まず、第二の実施形態に係る電気刺激装置の大まかな構成について図11および図12を参照して説明する。
図11は、第二の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
図12は、図11に示す電気刺激装置を上面から見た分解外観図である。
【0057】
電気刺激装置501は、電気刺激装置101と同じく、略円筒形状に形成されており、電気的な刺激信号を生成し、その刺激信号で生体内の神経等を刺激するものである。電気刺激装置501は、脊髄の神経を刺激する際に、生体内(例えば、脊髄硬膜と脊柱背側との距離が約5mmの硬膜外腔)に植え込まれる。そのため、電気刺激装置501は、先端部506から基端部511までの直径が、約1mmから3mmであることが好ましい。
【0058】
電気刺激装置501は、大きく分けて、電極ブロック502と、回路ブロック503と、支持体504と、固定具121からなる。なお、電極ブロック502と回路ブロック503はコネクタ部513で着脱可能となっており、回路ブロック503と支持体504はコネクタ部515で着脱可能となっている。
より詳細に説明すると、図12に示すように、電極ブロック502と回路ブロック503は、電極ブロック502側のコネクタ部518と回路ブロック503側のコネクタ部513とが、例えばネジ等により固定される。同様に、回路ブロック503と支持体504は、回路ブロック503側のコネクタ部515と支持体504側のコネクタ部519とが、同様にネジ等によって固定されるようになっている。電極ブロック502、回路ブロック503および支持体504が接続されている場合、これらの各ブロックは、当該ブロックの軸方向に連通する、スタイレット用ルーメンを有する。ただし、スタイレット用ルーメンは、基端部511に開口し、先端部506付近まで設けられている。なお、スタイレット用ルーメンの直径は、スタイレット505の直径とほぼ等しいか、それより少し長いことが望ましい。
【0059】
電極ブロック502は、先端部506が略半球状に形成され、その他の部分が略円筒形状に形成されている。先端部506の略半球状部分の半径は約0.5mmから1.5mmであることが好ましく、その他の略円筒形状部分の直径は約1mmから3mmであることが望ましい。
このような電極ブロック502は、神経等を刺激するための4つの刺激電極105と、電気刺激装置501を生体内に配置した際に各刺激電極105が生体に対して剥き出しになるように、等間隔に配置されるボディ512を含んでいる。さらに、ボディ512の基端部507側と回路ブロック503の先端部508とが連続するように接続するコネクタ部518とを含んでいる。なお、電極ブロック502の内部構成等については、図13にて後述する。
【0060】
回路ブロック503は、電極ブロック502と同じ直径の略円筒形状に形成されている。回路ブロック503は、先端部508が電極ブロック502の基端部507側のボディ512と連続するように、電極ブロック502のコネクタ部518と接続するコネクタ部513を備えている。また、回路ブロック503には、コネクタ部513と連続するボディ514が設けられる。さらに、ボディ514の基端部509側に連続し、基端部509と支持体504とを接続するコネクタ部515を備えている。なお、回路ブロック503の内部構成等については、図13にて後述する。
【0061】
支持体504は、回路ブロック503と接続するためのコネクタ部519と、電極ブロック502と同じ直径の略円筒形状に形成された第一ボディ516と、第一ボディ516と連続する第二ボディ517を含む。
【0062】
支持体504のコネクタ部519は、第一ボディ516の先端部510側が回路ブロック503と連続するように、当該回路ブロック503のコネクタ部515と接続される。
第一ボディ516は、コネクタ部519と、基端部511側に配置される第二ボディ517とを接続する部分である。
【0063】
第二ボディ517は、電気刺激装置501が完全に生体内に植え込めるように、切断可能となっている。そして、切断した第二ボディ517の切断面には、それを覆うように取り外し可能な固定具121が取付けられる。なお、固定具121については、既に図1で説明しているので、その詳細な説明は省略する。ただし、この固定具121は、糸で第二ボディ517に固定され、これにより、第二ボディ517の切断面と生体との接触に伴う炎症や異物感を防止するとともに、第二ボディ517の基端部511側のスタイレット用ルーメンからの液体の侵入を防止できるようになっている。
【0064】
次に、第二の実施形態に係る電気刺激装置の内部構成について図13および図14を参照して説明する。
図13は、本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置およびその軸方向の内部構造を示す拡大図である。
図13(a)は、図11に示す電気刺激装置を上面から見た拡大外観図である。
図13(b)は、図13(a)に示す電気刺激装置のH―H’断面を示す断面図である。
【0065】
また、図14は、本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置の軸に対して垂直方向の所定箇所の内部構造を示す断面図である。
図14(a)は、図13(a)に示す電気刺激装置のI−I’断面を示す断面図である。
図14(b)は、図13(a)に示す電気刺激装置のJ−J’断面を示す断面図である。
図14(c)は、図13(a)に示す電気刺激装置のK−K’断面を示す断面図である。
図14(d)は、図13(a)に示す電気刺激装置のL−L’断面を示す断面図である。
図14(e)は、図13(a)に示す電気刺激装置のM−M’断面を示す断面図である。
図14(f)は、図13(a)に示す電気刺激装置のN−N’断面を示す断面図である。
【0066】
最初に、電極ブロック502の内部構成について説明する。
パイプ603は、生体適合性と絶縁性を有し、かつ柔軟性のある素材、例えばPTFEやFETEでできており、中空の略円筒状に形成されている。パイプ603の外径は0.1から1mm程度であり、内径は、パイプ603の内部をスタイレット505が通過できるように、スタイレット505の直径とほぼ等しいか、それより少し長い程度が望ましい。このようなパイプ603の一端(先端部506(図12(a)参照)側の端)が受け部608と結合される。
【0067】
受け部608は、ステンレス製で略円筒形状に形成されており、軸方向の中心に略円筒形状の穴が開いている。この穴の軸方向の全長および直径は、受け部608の軸方向の全長および外径よりもそれぞれ短くなっている。また、受け部608の穴の直径は、パイプ603を軸方向あるいは軸に対して垂直方向に動かないように固定できるように、パイプ603の外径と略等しくすることが好ましい。これらパイプ603および受け部608は、ボディ512、刺激電極105およびコネクタ部518よりなる外層部内に収納・固定される。
【0068】
ボディ512は、柔軟性があって、かつ生体適合性がある樹脂素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の素材でできている。ボディ512の先端部506は前述したように、略半球状であり、その半径は、約0.5mmから1.5mmの範囲であることが好ましい。そして、ボディ512の先端部506以外の部分は、中空の略円筒形状に形成されている。
【0069】
この中空の略円筒形状に形成されている部分の内径は、当該ボディ512が受け部608に接触する部分と、パイプ603に接触する部分で異なっている。受け部608に接触する部分の内径は、当該受け部608を固定するために、当該受け部608の外径とほぼ等しくなっている。また、パイプ603に接触する部分の内径は、当該パイプ603を固定するために、当該パイプ603の外径とほぼ等しくなっている。このような、ボディ512の中空の略円筒形状に形成された部分には、前述したように、4つの刺激電極105がボディ512の表面に剥き出しになるように、固定されている。なお、刺激電極105は、第一の実施形態の電気刺激装置101が備える刺激電極105と同じものである。
【0070】
各刺激電極105a、b、c、dには、導線202a、b、c、dの一端(先端部506側の端)がそれぞれはんだ203によって接着されており(図14(a)を参照)、当該導線202a、b、c、dの他端(基端部507(図12(a)参照)側の端)がコネクタ部518と電気的に接続されている。なお、導線202のはんだ203で接着される箇所およびコネクタ部518と電気的に接続されている箇所以外の箇所は、PTFEやETFEによる絶縁被覆がなされており、ボディ512内部に完全に埋め込まれている(図14(b)を参照)。
【0071】
コネクタ部518は、ボディ512と同じ素材で形成されており、略円筒形状をしたボディ512の外径から段差を設けた切り欠き部として形成されている。この切り欠き部は、基端部507から軸方向に所定の距離だけ形成されている。なお、この切り欠き部は平面であり、切り欠き部上には4つのコネクタピン210が露出して配置され、この4つのコネクタピン210に各導線202a、b、c、dが電気的に接続されるようになっている。
【0072】
次に、回路ブロック503の内部構成について説明する。
回路ブロック503内に配置されるパイプ604も、長さ以外はパイプ603と同じである。このパイプ604は、コネクタ部513、コネクタ部513と連続するボディ514およびボディ514と連続するコネクタ部515を含む外層部内に収納・固定される。
【0073】
コネクタ部513は、後述する電気的接続部211以外はボディ512と同じ素材(ポリウレタンやシリコーン)で作られている。このコネクタ部513には、電極ブロック502のコネクタ部518と結合可能となるように、当該コネクタ部518の外径と略同じ形状の穴が軸方向に開けられている(図14(c)を参照)。このコネクタ部513の外径は、ボディ512の外径にほぼ等しい。また、コネクタ部513は、電極ブロック502のコネクタ部518と接続された場合に、4つのコネクタピン210とそれぞれ独立して電気的に接続される電気的接続部211を含んでいる。なお、回路ブロック503の基端部509(図12(b)参照)側に設けられるコネクタ部515は、その先端部508(図12(b)参照)側に設けられるコネクタ部513と同じものであるが、特にどこかと電気的に接続されるものではない。
【0074】
回路ブロック503のボディ514は、コネクタ部513,515と連続しており、当該コネクタ部513,514と同じ素材でできている。このボディ514は、中空の略円筒形状に形成されており、その外径はコネクタ部513,515の外径とほぼ等しく、内径はパイプ604の外径とほぼ等しく形成されている。
【0075】
このボディ514には、電気的刺激信号を生成する、フレキシブル回路基板上にカスタムICなどの小型な部品を実装することでできた刺激回路205と、刺激回路205と電気的に接続されているコイル部212とが埋め込まれている(図14(d)を参照、コイル部212は含まれていない)。なお、コイル部212は軸方向を軸として巻回されて形成される。
【0076】
刺激回路205は、生成した電気的刺激信号を各刺激電極105に独立して供給するように、ボディ514に埋め込まれている導線204を介して電気的接続部211と接続されている。なお、刺激回路205およびコイル部212の電気的な構成については、図5にて説明したので省略する。
【0077】
次に、支持体504の内部構成について説明する。
支持体504内に配置されるパイプ605,606も、その長さ以外はパイプ603,604と同じである。このパイプ605およびパイプ606の軸方向の間には弁体607が設けられている。
【0078】
弁体607は、例えばシリコーンゴム等のように、生体適合性のある弾性材料(特に軟質な材料が好ましい)で作られている。この弁体607は、パイプ605側にある一方の端面に開口し、他方の端面に開口しない第一の切り込みと、この第一の切り込みと内部において交差し、パイプ606側にある一方の端面に開口し、他方の端面に開口しない第二の切り込みとを有している。この弁体607を設けることにより、弁体607を介してスタイレット505を抜き差ししたとしても、電極ブロック502および回路ブロック503の内部に体液等の液体がパイプ606から侵入することを防止することができる。
【0079】
これらのパイプ605,606および弁体607は、コネクタ部519、コネクタ部519と連続する第一ボディ516および第一ボディ516に連続する第二ボディ517よりなる外層部内に収納・固定される。
【0080】
コネクタ部519は、例えばポリウレタンやシリコーンでできており、前述した電極ブロック502のコネクタ部518と同一の形状とされる。なお、図13(b)においてもコネクタ部519にはコネクタピンが描かれているが、コネクタ部519は、コネクタ部518とは異なり外部と電気的な接続を行うためのコネクタピンは、特に必要とされるものではない。
【0081】
支持体504の第一ボディ516は、コネクタ部519と同じ素材で作られており、中空の略円筒形状に形成される。この第一ボディ516の外径は、回路ブロック503のボディ514の外径とほぼ等しい(図14(e)参照)。
【0082】
第二ボディ517は、第一ボディ516と連続しており、第一ボディ516と同じ素材でできている。この第二ボディ517は、第一ボディ516の直径と同一の直径の略円筒形状に形成される固定具固定部609と、この固定具固定部609の直径よりも小さい径の易切断部610からなる(図14(f)参照)。固定具固定部609と易切断部610は、それぞれの軸が一致するように、交互に複数設けられている。なお、コネクタ部519、第一ボディ516および第二ボディ517は、その軸上にパイプ606の外径と等しい直径の空洞を有する。
【0083】
以上のように、スタイレット用ルーメンは、受け部608、パイプ603から606および弁体607により形成されている。
【0084】
なお、電気刺激装置501で脊髄の神経の電気刺激を行う際の、電気刺激装置501を植え込む手順について簡単に説明しておく。
硬膜外針402を硬膜外腔405まで挿入した後(図6参照)、電気刺激装置501の第二ボディ517の基端部511からスタイレット用ルーメン内にスタイレット505を挿入する。この電気刺激装置501の先端部506(図11参照)を硬膜外針402に通し、スタイレット505で電気刺激装置501の受け部608を押して、刺激電極105を硬膜外腔405の目標とする刺激部位まで移動させる。そして、不図示の体外のコントローラを操作して最適な刺激電極105の位置を決定したら、電気刺激装置501からスタイレット505を抜き去る。これ以降の手順については、図8から図10で説明した手順と同じなので説明を省略する。
【0085】
以上説明したように、本発明の第二の実施形態では、電極ブロック、回路ブロックおよび支持体に連通するスタイレット用ルーメンを備えることで、電気刺激装置を生体内に植え込む際に、スタイレットを利用できる。そのため、電気刺激装置の体内への植え込みを容易に行うことができるとともに、刺激電極の生体内への配置の正確性をより向上させることができる。
【0086】
さらに、本発明の第二の実施形態では、第一の実施形態と同様、支持体内には貫通する電気的な線路が設けられていない。したがって、支持体を所望の位置で切断できるので、患者の身体的特徴に関する制約を受けずに刺激電極の位置を保持したまま電気刺激装置を完全に生体内に植え込むことができるとともに、患者に対する侵襲を小さく、植え込み部位の違和感を小さくできる、という第一の実施形態と同様の効果がある。
【0087】
<本発明の第三の実施形態例の説明>
次に、本発明の第三の実施形態の例を、図15から図17を参照して説明する。図15から図17に示す第三の実施形態に係る電気刺激装置701は、第一および第二の実施形態に係る電気刺激装置101、501とその構成はほとんど変わらないので、共通部分については同一符号を付して、説明を省略することにする。
【0088】
[1.電気刺激装置の構成]
まず、第三の実施形態に係る電気刺激装置の大まかな構成について図15および図16を参照して説明する。
図15は、第三の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
図16は、図15に示す電気刺激装置を上面から見た分解外観図である。
【0089】
電気刺激装置701は、電気刺激装置101,501と同様に、電気的な刺激信号を生成し、その刺激信号で生体内の神経等を刺激するものである。この電気刺激装置701は、ガイドワイヤ705を挿入するための円筒状の穴(以下、「ガイドワイヤ用ルーメン」)を軸上に有するため、中空の略円筒形状に形成されている。ただし、ガイドワイヤ用ルーメンは、基端部711に開口し、先端部706においても開口する貫通孔として設けられている。なお、ガイドワイヤ用ルーメンの直径は、ガイドワイヤ705の直径とほぼ等しいか、それより少し長いことが望ましい。
【0090】
電気刺激装置701は、脊髄の神経を刺激する際に、ガイドワイヤ705を用いて、生体内(例えば、脊髄硬膜と脊柱背側との距離が約5mmの硬膜外腔)に植え込まれる。そのため、電気刺激装置701は、先端部706から基端部711までの直径が、約1mmから3mmであることが好ましい。
【0091】
電気刺激装置701は、大きく分けて、電極ブロック702と、回路ブロック703と、支持体704とを備える。なお、電極ブロック702、回路ブロック703および支持体704は、その軸上にガイドワイヤ用ルーメンを備える以外は、第二の実施形態に係る電極ブロック502、回路ブロック503および支持体504とそれぞれ大きさ、形状および配置関係等は同じであるので、その説明は省略する。
【0092】
次に、第三の実施形態に係る電気刺激装置の内部構成について図17および前述の図14を参照して説明する。
図17は、本発明の第三の実施形態に係る電気刺激装置およびその軸方向の内部構造を示す拡大図である。
図17(a)は、図15に示す電気刺激装置を上面から見た拡大外観図である。
図17(b)は、図17(a)に示す電気刺激装置のP―P’断面を示す断面図である。
【0093】
また、図14は、前述したように、本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置501の軸に対して垂直方向の所定箇所の内部構造を示す断面図であるが、第三の実施形態に係る電気刺激装置701の軸に対して垂直方向の内部構造を示す断面図でもある。
【0094】
前述したように、第三の実施形態に係る電気刺激装置701は、第二の実施形態に係る電気刺激装置501の軸上に円筒形状のガイドワイヤ用ルーメンを設けたものである。このガイドワイヤ用ルーメンを有するような構成とするため、電気刺激装置701は、電気刺激装置501(図13(b)参照)のボディ512の代わりに、ボディ712を備える。さらに受け部608およびパイプ603を、弁体803およびパイプ802に置き換えたものである。なお、これらのボディ712、弁体803およびパイプ802に加え、パイプ604から606および弁体607により、ガイドワイヤ用ルーメンが形成されている。
【0095】
ボディ712は、ボディ512と同じ素材でできているが、先端部706に、略円筒形状の穴を有するものである。この穴の直径は、パイプ604から606と等しく、ガイドワイヤ705の直径とほぼ等しいか、それより少し大きいことが望ましい。なお、ボディ712の外径は、第二の実施形態例のボディ512のそれと同一である。
【0096】
パイプ802は、パイプ604から606と、軸方向の長さ以外は同じである。
また、弁体803は、弁体607と同じものであり、例えばシリコーンゴム等のように、生体適合性のある弾性材料(特に軟質な材料が好ましい)で作られている。この弁体803は、パイプ802側にある一方の端面に開口し、他方の端面に開口しない第一の切り込みと、この第一の切り込みと内部において交差し、ボディ712の先端部706側にある一方の端面に開口し、他方の端面に開口しない第二の切り込みとを有している。この弁体803を介してガイドワイヤ705を抜き差ししたとしても、電極ブロック702および回路ブロック703の内部に、体液等の液体がボディ712の先端部706に設けられた穴から侵入することを防止することができる。
【0097】
次に、電気刺激装置701で脊髄の神経の電気刺激を行う際の、電気刺激装置701を植え込む手順について簡単に説明しておく。
まず、硬膜外針402を硬膜外腔405まで挿入し(図6参照)、硬膜外針402を通してガイドワイヤ705を硬膜外腔405に挿入する。そして、ガイドワイヤ705の先端を目標とする刺激部位まで進める。続いて、ガイドワイヤ705の基端を電気刺激装置701の先端部706へ挿入し、ガイドワイヤ705上に電気刺激装置701を這わせるように第二ボディ517を押して、当該電気刺激装置701の刺激電極105を目標とする刺激部位まで移動させる。そして、不図示の体外のコントローラを操作して最適な刺激電極105の位置を決定したら、電気刺激装置701からガイドワイヤ705を抜き去る。それ以外の手順は、図8から図10で説明した手順と同じなので説明を省略する。
【0098】
以上説明したように、第三の実施形態では、電極ブロック、回路ブロックおよび支持体に連通するガイドワイヤ用ルーメンを備えることで、電気刺激装置を生体内に植え込む際に、ガイドワイヤを利用できる。そのため、電気刺激装置の体内への植え込みを容易に行うことができるとともに、刺激電極の生体内への配置をより正確に行うことができる。
【0099】
さらに、本発明の第三の実施形態では、第一、第二の実施形態と同様、支持体内には貫通する電気的な線路が設けられていない。したがって、支持体を所望の位置で切断できるので、患者の身体的特徴に関する制約を受けずに刺激電極の位置を保持したまま電気刺激装置を完全に生体内に植え込むことができるとともに、患者に対する侵襲を小さく、植え込み部位の違和感を小さくできる、という第一、第二の実施形態と同様の効果がある。
【0100】
<変形例>
次に、上述した各実施形態における変形例について図18から図21を参照して説明する。
[1.第一の変形例]
まず、第一の変形例について図18および図19を参照して説明する。
図18は、支持体を示す説明図である。
第一の変形例は、電気刺激装置101の支持体104の代わりに支持体902を設けたものである。より具体的には、支持体104の第二ボディ120(図1を参照)の代替として、図18に示すような第二ボディ903を設けた構成としている。
【0101】
第二ボディ903は、第二ボディ120と同じ素材でできており、略双円錐をその軸方向に複数個並べた形状(算盤珠を短径方向に複数個並べた形状)に形成されている。なお、第二ボディ903の直径が最も短い部分は、第二ボディ120の易切断部214(図3を参照)と同様の機能を有する。すなわち、電気刺激装置の軸方向の長さを調整するために、第二ボディ903の直径が最も短い部分を切断し、この部分を糸で生体内の組織に縫い付けて電気刺激装置を固定する。
【0102】
なお、図19の支持体904のように、支持体902に略円筒形状の空洞をその軸方向に形成することで、支持体904を第二および第三の実施形態の電気刺激装置501,701の支持体504(図11を参照)、704(図15を参照)の代替として用いることも可能である。
【0103】
[2.第二の変形例]
次に、第二の変形例について図20および図21を参照して説明する。
図20は、支持体を示す説明図である。
第二の変形例は、電気刺激装置101の支持体104の代わりに支持体906を設けたものである。より具体的には、支持体104の第二ボディ120(図1を参照)の代替えとして図20に示す第二ボディ907を設けた構成とする。
【0104】
第二ボディ907は、第二ボディ120と同じ素材でできており、複数の双円錐部908および複数のマーキング部909を含んで形成されている。
【0105】
双円錐部908は、略双円錐形状に形成された部分である。また、マーキング部909は、第一の略円錐形状部分と、第一の略円錐形状部分の底面と一致する上面を持つ略円筒形状部分と、この略円筒形状部分の下面をなす底面を持つ第二の略円錐形状部分とを含む。そして、この略円筒形状部分には、軸が重なるように、有色のリング913が埋め込まれている。なお、前述したように支持体906の素材、すなわちマーキング部909の素材はシリコーンやポリウレタン等の透明な素材であるので、リング913が透けて見える。
【0106】
このようなマーキング部909は、各双円錐部908の間に所定の間隔で設けられる。そして、各マーキング部909、すなわち透けて見えるリング913の位置を目安に、医師は、電気刺激装置が生体内に植え込まれた際の深さを知ることができる。
【0107】
ところで、第二ボディ907の直径が最も短い部分、すなわち各双円錐部908の接続部分および双円錐部908とマーキング部909との接続部分は、第二ボディ120の易切断部と同様の機能を有する。すなわち、電気刺激装置の軸方向の長さを調整するために、第二ボディ907の直径が最も短い部分を切断し、この部分を糸で生体内の組織に縫い付けて電気刺激装置を固定する。
【0108】
なお、図21の支持体910のように、支持体906に略円筒形状の空洞をその軸方向に形成することで、支持体910を第二および第三の実施形態の電気刺激装置501,701の支持体504(図11を参照)、704(図15を参照)の代替えとして用いることも可能である。
【0109】
また、支持体104(図1),504(図11),704(図15)、902(図18),904(図19),906(図20),910(図21)のそれぞれの第二ボディ120,517,903,905,907,911の所定の間隔毎に、生体適合性のある顔料でマーキングすることで、マーキング部909(図20)あるいは913(図21)の代替えとすることができることはいうまでもない。
【0110】
[3.その他の変形例]
なお、上述した各実施形態では、支持体をコネクタ部と第一ボディと第二ボディを含むものとして説明してきたが、支持体のボディを第二ボディのみとすることも可能である。また、上述した各実施形態では、コネクタにより電極ブロック、回路ブロック、支持体がそれぞれ着脱可能としたが、コネクタを廃して、電極ブロックと回路ブロックが予め一体化されていても良く、あるいは、回路ブロックと支持体が予め一体化されていても良く、あるいは、全てが予め一体化されていても良い。また、上述した各実施例では電源として充電池を用いたが、充電池の代わりに一次電池を用いても良いし、あるいは、充電池の代わりにキャパシタを用いて、体外のコントローラから常に給電を受けながら作動させても良い。
【0111】
以上、本発明の各実施形態の例について説明したが、本発明は上記各実施形態例に限定
されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0112】
101,501,701…電気刺激装置、102,502,702…電極ブロック、103,503,703…回路ブロック、104,504,704,902,904,906,910…支持体、105…刺激電極、106,108,512,514,516,712…ボディ、107,109,112,113,513,515,518,519…コネクタ部、110,516…第一ボディ、114,116,118,506,508,510,706,708,710…先端部、115,117,119,507,509,511,707,709,711…基端部、120,517,903,905,907,911…第二ボディ、121…固定具、202,204…導線、203…はんだ、205…刺激回路、608…受け部、210…コネクタピン、211…電気的接続部、212…コイル部、213…固定具固定部、214、610…易切断部、302…通信部、303…制御部、304…刺激パラメータ設定部、305…電極構成設定部、306…発振部、307…スイッチ部、308…充電部、309…充電池、402…硬膜外針、403…脊椎、404…生体、405…硬膜外腔、406…糸、505…スタイレット、603〜606,802…パイプ、607,803…弁体、705…ガイドワイヤ、908,912…双円錐部、909,913…マーキング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状導入具を介して生体内に植え込まれる電気刺激装置であって、
生体内に植え込まれて神経または筋肉を電気的に刺激する刺激電極と、
前記刺激電極と電気的に結合して刺激信号を印加する電子回路と、
前記刺激電極の前記生体内の植え込み位置を保持する支持体を備え、
前記支持体内には貫通する電気的な線路がなく、前記支持体は、所望の位置で切断可能である
ことを特徴とする電気刺激装置。
【請求項2】
前記刺激電極と、該刺激電極が前記生体に露出するように配置されるボディとを電極リードブロックとし、
前記電子回路と、該電子回路が収納されるボディとを回路ブロックとして、
前記回路ブロックと電気的に結合された前記電極リードブロックに、前記支持体が結合される
ことを特徴とする請求項1に記載の電気刺激装置。
【請求項3】
前記支持体には、その一部または全部が、軸方向に所定の間隔をあけて、複数の易切断部が形成されており、前記支持体全体が生体内に植え込み可能な長さとなるように、前記易切断部で切断される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気刺激装置。
【請求項4】
前記支持体は、前記易切断部で前記生体内の組織に固定される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項5】
前記支持体は、前記電気刺激装置が生体内にどのくらい植え込まれているのかを計測するための目盛を有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項6】
さらに、
前記易切断部で切断された前記支持体に、該支持体の基端部を覆うように接続され、前記生体内の組織へ固定するための固定具を備える
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項7】
前記刺激電極が脊髄硬膜外腔に留置され、前記刺激電極により脊髄神経を刺激する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電気刺激装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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