説明

電気刺激装置

【課題】硬膜外腔等の管腔内の所定の位置に刺激電極を正確で安定的に留置しつつ、装置本体の回路部分に対する電磁波の影響を低減する。
【解決手段】管状導入具を介して生体内に植え込まれる電気刺激装置であって、生体内の神経または筋肉を電気的に刺激するための刺激電極を有する電極ブロックを備える。また、外部装置から送信される電磁波を利用して電磁誘導により通信を行うコイルを含むコイルブロックと、通信に応じた刺激信号を生成し、生成した刺激信号を刺激電極に印加する電子回路を有する回路ブロックと、刺激電極の生体内の植え込み位置を保持する切断可能な支持体とを有する。そして、電極ブロックは、コイルブロックと回路ブロックの間に介在するように、コイルブロックおよび回路ブロックとそれぞれ接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体を電気刺激する電気刺激装置に関し、特に、生体内に完全に植え込まれて使用される電気刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、痛み治療において、従来の薬物療法、神経ブロック療法あるいは外科的療法に効果を示さない場合や、副作用などによりその治療が継続できない場合に、神経を電気刺激することにより痛みを緩和する電気刺激療法が効果を上げている。電気刺激療法の1つである脊髄電気刺激療法は、脊髄を介して脳へ伝播する痛みを緩和するために、脊髄を電気刺激する刺激療法である。
【0003】
脊髄電気刺激療法では、通常、電気刺激による疼痛緩和の有効性を確かめるために、24時間から数週間のトライアル期間が設けられる。トライアル期間では、一般的に、背中側から穿刺して脊髄を覆う脊髄硬膜の外側にある硬膜外腔に刺激電極を留置した後、この刺激電極が含まれる電極リードを体外の刺激装置と接続して様々な刺激パターンの下で疼痛緩和の程度が調べられる。この期間においては電気刺激装置の植え込みは行われていない。このトライアル期間において所定の効果が認められた場合にのみ、電気刺激装置の植え込みが実施される。
【0004】
電気刺激装置の植え込みを行う場合には、トライアル期間に留置された電極リードが抜去された後、再び硬膜外腔に新たな刺激電極が留置され、この刺激電極が含まれる電極リードが皮下トンネルにより腰部や腹部、あるいは胸部に導かれる。そして、電極リードが電気刺激装置と接続されて皮下に植え込まれる。
【0005】
ところで、脊髄電気刺激療法におけるトライアル期間では、電極リードが体外の刺激装置と接続されているために、感染の危険性や、患者の活動の制限、あるいは、この活動の制限がストレスとなって疼痛緩和の有効性判断に影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
これに対して特許文献1に記載の技術では、ハウジングの両端に電極を備えた、リードレスの微小刺激装置を開示しており、この微小刺激装置全体を神経近くに完全に植え込むことにより、感染の危険性を軽減するとともに、患者の活動の制限を極力少なくすることが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,193,539号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の微小刺激装置を、脊髄電気刺激療法における硬膜外腔等の管腔内に留置する場合には、刺激装置の刺激電極を所望の位置に正確に留置するとともに、長期間にわたって安定的にその位置に留置し続けることが難しい、という問題がある。また、一旦管腔内に刺激装置を留置すると、当該刺激装置は、通信/給電を行うために、体外の外部装置から通信/給電を行うための電磁波を受信する必要がある。そのため、刺激装置の回路部分が電磁波の影響を受けてしまうという問題もあった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、硬膜外腔等の管腔内の所定の位置に刺激電極を正確に留置することが容易で、長期間にわたってその位置に刺激電極を安定的に留置することが可能な電気刺激装置を提供することを目的とする。また、外部装置から通信/給電を行うための電磁波が電気刺激装置本体に送信された際に、当該電気刺激装置本体の回路部分に対する電磁波の影響を低減する電気刺激装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の電気刺激装置は、管状導入具を介して生体内に植え込まれる電気刺激装置であって、生体内の神経または筋肉を電気的に刺激するための刺激電極を有する電極ブロックと、外部装置から送信される電磁波を利用して電磁誘導により通信を行うコイルを含むコイルブロックと、通信に応じた刺激信号を生成し、生成した刺激信号を刺激電極に印加する電子回路を有する回路ブロックと、刺激電極の生体内の植え込み位置を保持する切断可能な支持体と、を有し、電極ブロックは、コイルブロックと回路ブロックの間に介在するように、コイルブロックおよび回路ブロックとそれぞれ接続されるものである。
【0011】
本発明の上述した構成によれば、回路ブロック、電極ブロック、コイルブロックおよび支持体の一部は、管状導入具の管腔内に挿通可能な形状(例えば、当該管腔の直径よりも小さい半径を有する略円筒形状)を有する。また、回路ブロックとコイルブロックの間に電極ブロックが設けられているので、回路ブロックとコイルブロックを離して配置することができるようになっている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、医師が支持体を操作して、管状針やカニューレなどの管状導入具を介して、刺激電極を所定の位置まで移動させて留置することができる。これにより、刺激電極を刺激対象の神経まで移動させることが容易になるとともに、刺激電極をその位置に長期間にわたって安定的に留置できるという効果がある。
さらに、回路ブロックとコイルブロックが離れているので、外部装置から電磁波がコイルブロックのコイル部に送信されても、回路ブロックの刺激回路に対する電磁波の影響を低減することができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す分解外観図である。
【図3】(a)本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を示す拡大図である。(b)本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置の軸方向の断面図である。
【図4】(a)〜(f)本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置の径方向の断面図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係る刺激回路を中心としたブロック図である。
【図6】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図8】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図9】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図10】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順を説明するための説明図である。
【図11】本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【図12】本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す分解外観図である。
【図13】(a)本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置を示す拡大図である。(b)本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置の軸方向の断面図である。
【図14】(a)〜(f)本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置の径方向の断面図である。
【図15】本発明の第三の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【図16】本発明の第三の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す分解外観図である。
【図17】(a)本発明の第三の実施形態に係る電気刺激装置を示す拡大図である。(b)本発明の第三の実施形態に係る電気刺激装置の軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための実施形態例について説明する。以下に述べる実施の形態例は、本発明の好適な具体例である。そのため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明の範囲は、下記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる各パラメータの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【0015】
以下の手順で説明を行う。
<第一の実施形態例>
(1)電気刺激装置の構成
(2)刺激回路等の構成
(3)電気刺激装置の植え込み手順
<第二の実施形態例>
(1)電気刺激装置の構成
<第三の実施形態例>
(1)電気刺激装置の構成
【0016】
<本発明の第一の実施形態例の説明>
本発明の第一の実施形態の例を、図1から図10を参照して説明する。
[1.電気刺激装置の構成]
まず、第一の実施形態に係る電気刺激装置の大まかな構成について図1および図2を参照して説明する。
図1は、第一の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
図2は、図1に示す電気刺激装置を上面から見た分解外観図である。
【0017】
電気刺激装置101は、略円筒形状に形成されており、電気的な刺激信号を生成し、その刺激信号で生体内の神経等を刺激するものである。電気刺激装置101は、脊髄の神経を刺激する際に、生体内(例えば、脊髄硬膜と脊柱背側との距離が約5mmの硬膜外腔)に植え込まれる。そのため、電気刺激装置101は、ホルダ部123(後述)を除く部分の直径が、約1mmから3mmであることが好ましい。
【0018】
電気刺激装置101は、回路ブロック102と、電極ブロック103と、コイルブロック104と、支持体105とよりなり、図2に示すように分離可能に構成されている。
【0019】
より詳細に説明すると、図2に示すように、回路ブロック102と電極ブロック103は、回路ブロック102側のコネクタ部106と電極ブロック103側のコネクタ部107とが、ネジ等により固定される。同様に、電極ブロック103とコイルブロック104は、電極ブロック103側のコネクタ部108とコイルブロック104側のコネクタ部109とが、ネジ等により固定され、コイルブロック104と支持体105は、コイルブロック104側のコネクタ部110と支持体105側のコネクタ部111とが、同様にネジ等によって固定されるようになっている。
【0020】
回路ブロック102は、先端部112が略半球状に形成され、その他の部分が略円筒形状に形成されているボディ113を備える。そして、このボディ113の基端部114側には、回路ブロック102を電極ブロック103に接続するためのコネクタ部106が配設されている。なお、回路ブロック102の内部構成については、図3にて後述する。
【0021】
電極ブロック103は、回路ブロック102の略円筒形状部分と同じ直径の略円筒形状に形成されている。この電極ブロック103は、神経等を刺激するための4つの刺激電極115と、電気刺激装置101を生体内に配置した際に各刺激電極115が生体に対して剥き出しになるように、等間隔に配置されるボディ116を含んでいる。そして、ボディ116の先端部117側には、当該電極ブロック103のボディ116の先端部117側と回路ブロック102のコネクタ部106とが連続するように、回路ブロック102のコネクタ部106と結合されるコネクタ部107が設けられている。さらに、このボディ116の基端部118側には、当該電極ブロック103の基端部118にコイルブロック104を接続するためのコネクタ部108が配設されている。第一の実施形態の例では、刺激電極115の数を4つとしたが、これはあくまでも一例であって、刺激電極115の数は任意に設定できるものである。なお、電極ブロック103の内部構成については、図3にて後述する。
【0022】
コイルブロック104は、電極ブロック103と同じ直径の略円筒形状に形成されている。コイルブロック104は、先端部120が電極ブロック103のボディ116の基端部118側と連続するように、電極ブロック103のコネクタ部108と結合されるコネクタ部109を備えている。また、コイルブロック104には、コネクタ部109と連続するボディ119が設けられる。さらに、ボディ119の基端部121側に連続し、コイルブロック104の基端部121に支持体105を接続するためのコネクタ部110を備えている。なお、コイルブロック104の内部構成については、図3にて後述する。
【0023】
支持体105は、コイルブロック104と接続するコネクタ部111と、電極ブロック103と同じ直径の略円筒形状に形成されたボディ122と、ボディ122よりも大きい直径を有する略円筒状のホルダ部123とを含んでいる。
支持体105のコネクタ部111は、ボディ122の先端部124側がコイルブロック104と連続するように、コイルブロック104のコネクタ部110と結合される。ボディ122は、コネクタ部111と、基端部125側に配置されるホルダ部123を接続する部分である。なお、ホルダ部123は、医師が電気刺激装置101を生体内に挿入する際に握る場所である。なお、支持体105の内部構成については、図3にて後述する。
【0024】
次に、第一の実施形態に係る電気刺激装置の内部構成について図3および図4を参照して説明する。
図3は、本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置およびその軸方向の内部構造を示す拡大図である。
図3(a)は、図1に示す電気刺激装置を上面から見た拡大外観図である。
図3(b)は、図3(a)に示す電気刺激装置のA―A’断面を示す断面図である。
【0025】
また、図4は、本発明の第一の実施形態に係る電気刺激装置の軸に対して垂直方向の所定箇所の内部構造を示す断面図である。
図4(a)は、図3(a)に示す電気刺激装置のB−B’断面を示す断面図である。
図4(b)は、図3(a)に示す電気刺激装置のC−C’断面を示す断面図である。
図4(c)は、図3(a)に示す電気刺激装置のD−D’断面を示す断面図である。
図4(d)は、図3(a)に示す電気刺激装置のE−E’断面を示す断面図である。
図4(e)は、図3(a)に示す電気刺激装置のF−F’断面を示す断面図である。
図4(f)は、図3(a)に示す電気刺激装置のG−G’断面を示す断面図である。
【0026】
最初に、回路ブロック102の内部構成について説明する。
ボディ113は、柔軟性があって、かつ生体適合性がある樹脂素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の素材でできている。ボディ113の先端部112は前述したように、略半球状であり、その半径は、約0.5mmから1.5mmの範囲であることが好ましい。そして、ボディ113の先端部112以外の部分は、略円筒形状に形成されており、その直径は約1mmから3mmの範囲であることが望ましい。そして、このボディ113には、フレキシブル回路基板上にカスタムICなどの小型な部品を実装した刺激回路207と、刺激回路207とコネクタ部106を電気的に接続する導線209とが埋め込まれている(図4(a)、図3(b)を参照)。
【0027】
刺激回路207は、電気的刺激信号を生成する回路であり、導線209を構成している、電気的刺激信号を生成するための電力をコイルブロック104から得るための給電用導線と、生成した電気的刺激信号を独立して各刺激電極115に印加するための刺激信号用導線とを介してコネクタ部106と接続されている。なお、刺激回路207の機能的な構成については図5にて後述する。
【0028】
コネクタ部106は、後述する電気的接続部211以外はボディ113と同じ素材でできており、軸方向が中空の略円筒形状に形成されている。コネクタ部106の外径はボディ113の外径とほぼ等しく、中空部分は、当該コネクタ部106が、電極ブロック103のコネクタ部107と結合可能となるように、コネクタ部107の外殻と同じ形状になっている。さらに、このコネクタ部106は、導線209、すなわち給電用導線および刺激信号用導線と電気的に接続される電気的接続部211を備えている。なお、コネクタ部107の外殻の形状については、電極ブロック103の内部構成とともに後述する。
【0029】
次に、電極ブロック103の内部構成について説明する。
ボディ116は、例えば、ポリウレタンやシリコーン等の素材でできている。軸方向が一部中空の略円筒形状に形成されており、その外径は回路ブロック102のボディ113の略円筒形状部分の直径に等しい。そして、4つの刺激電極115がボディ116の表面に剥き出しになるように、固定されている。
【0030】
刺激電極115は、導電性があって生体適合性がある素材、例えばプラチナやプラチナ合金(プラチナ90%/イリジウム10%合金など)等の素材でできており、軸方向が中空の略円筒状に形成されている。刺激電極115の外径は、ボディ116の外径とほぼ等しく形成される。なお、4つの刺激電極115を先端部112側にあるものから順に刺激電極115a、b、c、dとする(図3(a)参照)。
【0031】
各刺激電極115a、b、c、dには、導線202a、b、c、dの一端がそれぞれはんだ203によって接着されている(図3(b)および図4(d)を参照)。そして、導線202a、b、c、dの他端がコネクタ部107と電気的に接続されている。なお、導線202のはんだ203で接着される箇所およびコネクタ部107と電気的に接続されている箇所以外は、PTFEやETFEによる絶縁被覆がなされており、ボディ116内部に完全に埋め込まれている(図4(c)を参照)。
【0032】
ボディ116の先端部117(図2(b)を参照)側にあるコネクタ部107は、ボディ116と同じ素材で形成されており、略円筒形状をしたボディ116の外径から段差を設けた切り欠き部として形成されている(図4(b)を参照)。この切り欠き部は、先端部117から軸方向に所定の距離だけ形成されている。そして、その切り欠き部上に6つのコネクタピンが露出して配置されている(図2(b)、図3(b)を参照)。そのうち4つがそれぞれ独立して導線202a、b、c、dと電気的と接続される刺激電極用のコネクタピン221であり、2つがコネクタ部108と導線220a、bを介して電気的に接続される給電用のコネクタピン222である。そして、コネクタ部107が回路ブロック102のコネクタ部106に結合されると、刺激電極用のコネクタピン221は電気的接続部211を介して導線209の刺激信号用導線と電気的に接続され、給電用のコネクタピン222は同じく電気的接続部211を介して導線209の給電用導線に接続される。
【0033】
ボディ116の基端部118(図2(b)を参照)側にあるコネクタ部108は、コネクタ部107と同じ素材でできており、同じ形状に形成されている。このコネクタ部108は、コネクタ部107とは異なり、切り欠き部上に2つのコネクタピン223が露出して配置されている(図2(b)、図3(b)を参照)。この2つのコネクタピン223は、導線220を介してコネクタ部107の給電用のコネクタピン222とそれぞれ電気的に接続されている。すなわち、コネクタ部107が回路ブロック102のコネクタ部106に結合されると、2つのコネクタピン223は、電気的接続部211および導線209の給電用導線を介して刺激回路207に接続される。
【0034】
次に、コイルブロック104の内部構成について説明する。
ボディ119は、例えば、ポリウレタンやシリコーン等の素材でできている。略円筒形状に形成されており、その直径は電極ブロック103のボディ116の外径に等しい。そして、このボディ119には、軸方向を軸として巻回されて形成されるコイル部225が埋め込まれている。なお、このコイル部225は、ボディ119の先端部120(図2(c)を参照)側のコネクタ部109と電気的に接続されている。
【0035】
コネクタ部109は、後述する電気的接続部224以外はボディ119と同じ素材でできており、軸方向が中空の略円筒形状に形成されている。コネクタ部109の外径はボディ119の外径とほぼ等しく、中空部分は、当該コネクタ部109が電極ブロック103のコネクタ部108と結合可能となるように、コネクタ部108の外殻と同じ形状になっている。
【0036】
このコネクタ部109は、コイル部225の一端および他端と電気的に独立してそれぞれ接続されている電気的接続部224をさらに備えている。そして、コネクタ部109と電極ブロック103のコネクタ部108が結合され、回路ブロック102のコネクタ部106と電極ブロック103のコネクタ部107とが結合されると、コイル部225は、回路ブロック102の刺激回路207と電気的に接続される。
【0037】
一方、ボディ119の基端部121(図2(c)を参照)側のコネクタ部110は、コネクタ部109と同じ形状であるが、すべてがボディ119と同じ素材でできている。
【0038】
次に、支持体105の内部構成について説明する。
支持体105のコネクタ部111は、例えば、ポリウレタンやシリコーンでできており、コイルブロック104のコネクタ部110と結合可能な形状に形成されている。
【0039】
支持体105のボディ122もまた、コネクタ部111と同じ素材で作られており、略円筒形状に形成される。このボディ122の直径は、コイルブロック104のボディ119の直径とほぼ等しく形成されている。
【0040】
支持体105の基端部125(図2(d)を参照)側に設けられるホルダ部123は、プラスティック等の素材でできており、略円筒形状に形成される。ホルダ部123は電気刺激装置101を体内に挿入する際に持つ部分であるので、当該ホルダ部123の直径はボディ122の直径の2倍から3倍以上が好ましい(図4(f)を参照)。
【0041】
[2.刺激回路等の構成]
次に、回路ブロック102に含まれる刺激回路207およびコイルブロック104に含まれるコイル部225のより詳細な電気的構成について図5を参照して説明する。
図5は、本発明の第一の実施形態例に係る刺激回路およびコイル部の機能を示すブロック図である。
【0042】
刺激回路207は、通信部302と、刺激パラメータ設定部304と、電極構成設定部305と、発振部306と制御部303を含む。さらに、充電部308と、充電池309と、スイッチ部307とを備える。
【0043】
充電池309は、例えばリチウムイオン電池等の充電可能な電池である。図5に図示はしていないが、この充電池309は、蓄積している電力を、刺激回路207を構成する各ブロックに供給している。
【0044】
コイル部225は、例えばコイルとコンデンサで構成される共振回路である。コイル部225は、充電池309の充電を行う場合、図示しない体外のコントローラから送信される充電用の電磁波を受信する。そして、この受信に伴ってコイル部225から発生する交流電流が充電部308に出力される。また、コイル部225は図示しない体外のコントローラから送信される、所定の情報が載せられた電磁波を受信し、受信した電磁波が当該コイル部225から通信部302に出力される。
【0045】
充電部308は、整流回路を内蔵し、コイル部225から出力された交流電流を直流電流に変換して電力を取得する。そして、取得した電力で充電池309の充電を行う。
【0046】
通信部302は、コイル部225が受信した電磁波を復調し、電磁波に載せられている情報を取り出す。そして、取り出した情報を制御部303を介して刺激パラメータ設定部304および電極構成設定部305に出力する。刺激パラメータ設定部304に出力される情報は、電気的刺激信号の刺激強度に関する情報(以下、「刺激パラメータ」という)であり、電極構成設定部305に出力される情報は、電極構成に関する情報(以下、「電極構成情報」という)である。電気的刺激信号の刺激強度は、当該電気的刺激信号のパルス電圧、パルス電流、パルス幅あるいは周波数により決定されるので、刺激パラメータはこれらパルス電圧等の値を示す信号である。また、電極構成情報は、電気的刺激信号の極性を変更するための情報と、電気的刺激信号を出力する刺激電極115をスイッチ部307に選択させるための情報とを含む信号である。
【0047】
刺激パラメータ設定部304は、通信部302から入力される刺激パラメータに基づいて、発振部306で発生する電気的刺激信号の刺激強度を変更するための刺激強度変更信号を生成する。
電極構成設定部305は、通信部302から入力される電極構成情報に基づいて、発振部306で発生する電気的刺激信号を出力する刺激電極115を選択するための電極構成選択信号を生成する。なお、刺激パラメータ設定部304から出力される刺激強度変更信号は発振部306に出力され、電極構成設定部305から出力される電極構成選択信号はスイッチ部307に出力される。
【0048】
発振部306は、刺激パラメータ設定部304から入力される刺激強度変更信号に基づいて、電気的刺激信号を生成してスイッチ部307に出力する。
スイッチ部307は、電極構成設定部305から入力される電極構成選択信号に基づいて、発振部306から入力される電気的刺激信号を出力する刺激電極115を決定する。なお、制御部303は、例えばマイコン等であり、刺激回路207の各ブロックを制御する。
【0049】
[3.電気刺激装置の植え込み手順]
次に、電気刺激装置101を例えば硬膜外腔に植え込み、この電気刺激装置101で脊髄の神経の電気刺激を行う手順の一例について図6から図10を参照して説明する。
図6から図10は、背中付近を示す人体の横断面図である。
【0050】
まず、医師は、患者の痛みの分布状況に基づき、予め目標とする脊髄の刺激部位を決定する。そして、X線透視下で患者の背中側から穿刺して、管状導入具として硬膜外針402を硬膜外腔405まで挿入する。この硬膜外針402が硬膜外腔405に挿入される位置は、一般的に、目標とする刺激部位から3椎体以上低位が選ばれる(図6を参照)。
【0051】
次に、医師は、硬膜外針402に電気刺激装置101の先端部112(図1参照)を通し、当該電気刺激装置101を生体404内に挿入する。そして、ホルダ部123を軸方向に押すことにより、電気刺激装置101が硬膜外針402を通して硬膜外腔405内に挿入される(図7を参照、電気刺激装置101のホルダ部123は不図示)。
【0052】
続いて、医師は、さらにホルダ部123を軸方向に押して、硬膜外腔405内に電気刺激装置101を上向させ、電気刺激装置101の刺激電極115を目標とする刺激部位の近くに位置させる。
次に、医師は、刺激電極115の位置を少しずつ移動させながら、不図示の体外のコントローラを操作して神経刺激を行う。このとき、電気刺激装置101の刺激回路207では、医師の操作に基づいて、所定の強度の電気的刺激信号が生成され、生成された電気的刺激信号が刺激電極115に出力されて、当該刺激電極115の位置に近い部分の神経刺激が行われる。そして、医師は、患者の神経刺激に対する反応を聞きながら、最適な刺激電極115の位置を決定する。
【0053】
続いて、医師は、電気刺激装置101が完全に生体404内に植え込まれるように、電気刺激装置101のホルダ部123を切断した後、硬膜外針402を生体404から抜き去る(図8を参照)。そして最後に、電気刺激装置101の生体404からはみ出ている部分(支持体105の一部に相当)を切断(図9を参照)した後、この切断された電気刺激装置101が生体404に完全に植え込まれた状態で固定されるようにするため、生体404内の組織に切断した部分を糸406で縫いつける(図10を参照)。この処置は、電気刺激装置101の挿入口から感染症等を起こさないようにするためのものである。
ところで、硬膜外針402に代えて、カニューレを通して電気刺激装置101を硬膜外腔405内に挿入することも可能である。予め硬膜外針402を通してカニューレを刺激を行う部位の近くまで導き、硬膜外針402を抜いた後に、このカニューレ内に電気刺激装置101を通して生体404内に挿入する。ここで、カニューレとは、柔軟性があって、かつ生体適合性がある樹脂素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の素材でできているチューブを指す。
【0054】
このように、本発明の第一の実施形態では、回路ブロック102、電極ブロック103、コイルブロック104および支持体105の一部が、硬膜外針402の内部を挿通可能になるような形状に形成した。そのため、医師が支持体105を操作して、硬膜外針402を介して、刺激電極115を所定の位置まで移動させることができるとともに、刺激電極115をその位置に長期間にわたって安定的に留置できるという効果がある。また、医師が支持体105を操作して、電気刺激装置101を体外へ容易に取り出すことができるという効果がある。
【0055】
<本発明の第二の実施形態例の説明>
次に、本発明の第二の実施形態の例を、図11から図14を参照して説明する。図11から図14に示す第二の実施形態に係る電気刺激装置501は、第一の実施形態に係る電気刺激装置101にスタイレットを挿入するための円筒状の穴(以下、「スタイレット用ルーメン」という)を備えたものである。その構成の共通部分については同一符号を付して、説明を省略することにする。
【0056】
[1.電気刺激装置の構成]
まず、第二の実施形態に係る電気刺激装置の大まかな構成について図11および図12を参照して説明する。
図11は、第二の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
図12は、図11に示す電気刺激装置を上面から見た分解外観図である。
【0057】
電気刺激装置501は、前述したように、第一の実施形態の電気刺激装置101の軸方向にスタイレット用ルーメンを設けたものである。そのため、電気刺激装置501は、図1に示した回路ブロック102、電極ブロック103、コイルブロック104および支持体105(図2を参照)の代わりに、それらの軸方向に中空を形成した回路ブロック502、電極ブロック503、コイルブロック504および支持体505(図12を参照)から構成されている。
【0058】
この電気刺激装置501は、図11に示すように、回路ブロック502、電極ブロック503、コイルブロック504および支持体505の順番で各ブロックが接続されており、これらの各ブロックには、当該ブロックの軸方向に連通する、スタイレット用ルーメンが形成されている。この場合、スタイレット用ルーメンは、基端部525に開口部が設けられ、この開口が先端部512付近までつながっている。なお、スタイレット用ルーメンの直径は、スタイレット526の直径とほぼ等しいか、それより少し長いことが望ましい。なお、回路ブロック502、電極ブロック503、コイルブロック504および支持体505の内部構成については図13および図14にて後述する。
【0059】
次に、第二の実施形態に係る電気刺激装置の内部構成について図13および図14を参照して説明する。
図13は、本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置およびその軸方向の内部構造を示す拡大図である。
図13(a)は、図11に示す電気刺激装置を上面から見た拡大外観図である。
図13(b)は、図13(a)に示す電気刺激装置のH―H’断面を示す断面図である。
【0060】
また、図14は、本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置の軸に対して垂直方向の所定箇所の内部構造を示す断面図である。
図14(a)は、図13(a)に示す電気刺激装置のI−I’断面を示す断面図である。
図14(b)は、図13(a)に示す電気刺激装置のJ−J’断面を示す断面図である。
図14(c)は、図13(a)に示す電気刺激装置のK−K’断面を示す断面図である。
図14(d)は、図13(a)に示す電気刺激装置のL−L’断面を示す断面図である。
図14(e)は、図13(a)に示す電気刺激装置のM−M’断面を示す断面図である。
図14(f)は、図13(a)に示す電気刺激装置のN−N’断面を示す断面図である。
【0061】
最初に、回路ブロック502の内部構成について説明する。
回路ブロック502のパイプ603は、生体適合性と絶縁性を有し、かつ柔軟性のある素材、例えばPTFEやETFEでできており、軸方向が中空の略円筒形状に形成されている。その外径は0.1mmから1mm程度であり、内径は、パイプ603の内部をスタイレット526が通過できるように、スタイレット526の直径とほぼ等しいか、それより少し長い程度が望ましい。このようなパイプ603の一端(先端部512側の端)が受け部602と結合される。
【0062】
受け部602は、ステンレス製で略円筒形状に形成されており、軸方向の中心に略円筒形状の穴が開いている。この穴の軸方向の全長および直径は、受け部602の軸方向の全長および外径よりもそれぞれ短くなっている。また、受け部602の穴の直径は、パイプ603を軸方向あるいは径方向に動かないように固定できるように、パイプ603の外径とほぼ等しくすることが好ましい。これらパイプ603および受け部602は、ボディ513およびコネクタ部506よりなる外層部内に収納・固定される(図13(b)を参照)。
【0063】
ボディ513は、柔軟性があって、かつ生体適合性がある樹脂素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の素材でできている。ボディ513の先端部512は、略半球状でありその半径は、約0.5mmから1.5mmの範囲であることが好ましい。そして、ボディ513の先端部512以外の部分は、軸方向が中空の略円筒形状に形成されている。この中空の略円筒形状部分の外径は約1mmから3mmの範囲であることが望ましく、内径は、受け部602およびパイプ603が収納・固定されるようにするため、受け部602あるいはパイプ603の外径とほぼ等しい。そして、このボディ513には、フレキシブル回路基板上にカスタムICなどの小型な部品を実装した刺激回路207と、刺激回路207とコネクタ部106を電気的に接続する導線209とが埋め込まれている(図14(a)を参照)。
【0064】
コネクタ部506は、電気的接続部211以外はボディ513と同じ素材でできており、軸方向が中空の略円筒形状に形成されている。コネクタ部506の外径はボディ513の外径とほぼ等しく、中空部分は、当該コネクタ部506が、電極ブロック503のコネクタ部507と結合可能となるように、コネクタ部507の外殻と同じ形状になっている。なお、刺激回路207、導線209および電気的接続部211は、第一の実施形態で説明したものと同じであるので、同じ符号を付し説明は省略する。
【0065】
次に、電極ブロック503の内部構成について説明する。
電極ブロック503を構成するパイプ604も、軸方向の長さ以外はパイプ603と同じである。このパイプ604は、コネクタ部507、ボディ516、刺激電極115およびコネクタ部508を含む外層部内に収納・固定される(図13(b)を参照)。
【0066】
ボディ516は、例えば、ポリウレタンやシリコーン等の素材でできており、軸方向が中空の略円筒形状に形成されている。ボディ516の外径は回路ブロック502のボディ513の中空の略円筒形状部分の外径と等しく、内径は、パイプ604を収納・固定するために、パイプ604の外径とほぼ等しい。そして、4つの刺激電極115がボディ516の表面に剥き出しになるように、設けられている。なお、刺激電極115は、第一の実施形態の電気刺激装置101が備える刺激電極115と同じものであるので、図3と同一の番号を付している。
【0067】
各刺激電極115a、b、c、dには、導線202a、b、c、dの一端がそれぞれはんだ203によって接着されている(図13(b)および図14(d)を参照)。そして、導線202a、b、c、dの他端がコネクタ部507と電気的に接続されている。なお、導線202のはんだ203で接着される箇所およびコネクタ部507と電気的に接続されている箇所以外は、PTFEやETFEによる絶縁被覆がなされており、ボディ516内部に完全に埋め込まれている(図14(c)を参照)。
【0068】
ボディ516の先端部517(図12(b)を参照)側にあるコネクタ部507は、ボディ516と同じ素材で形成されており、略円筒形状をしたボディ516の外径から段差を設けた切り欠き部として形成されている(図14(b)を参照)。この切り欠き部は、先端部517から軸方向に所定の距離だけ形成されている。そして、その切り欠き部上に合計6つのコネクタピン221,222が露出して配置されている(図12(b)を参照)。さらに、コネクタ部507は、パイプ604を収納・固定するために、その軸上にパイプ604の外径と等しい直径を有する略円筒形状の穴が形成されている。
【0069】
ボディ516の基端部518(図12(b)を参照)側にあるコネクタ部508は、コネクタ部507と同じ素材でできており、同じ形状に形成されている。このコネクタ部508は、コネクタ部507とは異なり、切り欠き部上に2つのコネクタピン223が露出して配置されている(図12(b)を参照)。なお、コネクタピン221〜223は、第一の実施形態で説明したものと同じであるので、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0070】
次に、コイルブロック504の内部構成について説明する。
コイルブロック504を構成するパイプ605も、軸方向の長さ以外はパイプ603と同じである。このパイプ605は、コネクタ部509、ボディ519およびコネクタ部510を含む外層部内に収納・固定される(図13(b)を参照)。
【0071】
コイルブロック504のボディ519は、例えば、ポリウレタンやシリコーン等の素材でできている。このボディ519は、軸方向が中空の略円筒形状に形成されている。その外径は、電極ブロック503のボディ516の外径とほぼ等しく、内径は、パイプ605を収納・固定するため、パイプ605の外径とほぼ等しく形成されている。そして、このボディ519には、軸方向を軸として巻回されて形成されるコイル部225が埋め込まれている。なお、このコイル部225は、ボディ519の先端部520(図12(c)を参照)側のコネクタ部509と電気的に接続されている。
【0072】
コネクタ部509は、電気的接続部224以外はボディ519と同じ素材でできており、軸方向が中空の略円筒形状に形成されている。コネクタ部509の外径はボディ519の外径とほぼ等しく、中空部分は、当該コネクタ部509が電極ブロック503のコネクタ部508と結合可能となるように、コネクタ部508の外殻と同じ形状になっている。なお、コイル部225および電気的接続部224は、第一の実施形態で説明したものと同じであるので、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0073】
一方、ボディ519の基端部521(図12(c)を参照)側のコネクタ部510は、コネクタ部509と同じ形状であるが、すべてがボディ519と同じ素材でできている。
【0074】
次に、支持体505の内部構成について説明する。
支持体505を構成するパイプ606,607も、軸方向の長さ以外はパイプ603と同じである。このパイプ606およびパイプ607の軸方向の間には弁体608が設けられている。
【0075】
弁体608は、例えばシリコーンゴム等のように、生体適合性のある弾性材料(特に軟質な材料が好ましい)で作られている。この弁体608は、パイプ606側にある一方の端面に開口し、他方の端面に開口しない第一の切り込みと、この第一の切り込みと内部において交差し、パイプ607側にある一方の端面に開口し、他方の端面に開口しない第二の切り込みとを有している。この弁体608を設けることにより、弁体608を介してスタイレット526を抜き差ししたとしても、回路ブロック502、電極ブロック503およびコイルブロック504の内部に体液等の液体がパイプ607から侵入することを防止することができる。
【0076】
これらのパイプ606,607および弁体608は、コネクタ部511、ボディ522およびホルダ部523よりなる外層部内に収納・固定される(図13(b)を参照)。
コネクタ部511も、電極ブロック503やコイルブロック504のコネクタ部507〜510と同様に、例えばポリウレタンやシリコーンでできており、コイルブロック504のコネクタ部510と結合可能となるように形成されている(図12(d)を参照)。
【0077】
支持体505のボディ522は、コネクタ部511と同じ素材で作られており、軸方向が中空の略円筒形状に形成される。このボディ522の外径は、コイルブロック504のボディ519の外径とほぼ等しい。
【0078】
支持体505の基端部525(図12(d)を参照)側に設けられるホルダ部523は、プラスティック等の素材でできており、軸方向が中空の略円筒形状に形成される。このホルダ部523の内径は、パイプ607を収納・固定するために、当該パイプ607の外径とほぼ等しい。また、ホルダ部523は電気刺激装置501を体内に挿入する際に持つ部分であるので、当該ホルダ部523の外径はボディ522の外径の2倍から3倍以上が好ましい(図14(f)を参照)。
【0079】
以上のように、スタイレット用ルーメンは、受け部602、パイプ603〜607および弁体608により形成されている。
【0080】
なお、電気刺激装置501で脊髄の神経の電気刺激を行う際の、電気刺激装置501を植え込む手順について簡単に説明しておく。
硬膜外針402を硬膜外腔405まで挿入した後(図6参照)、電気刺激装置501のホルダ部523の基端部525からスタイレット用ルーメン内にスタイレット526を挿入する。この電気刺激装置501の先端部512(図11参照)を硬膜外針402に通し、スタイレット526で電気刺激装置501の受け部602を押して、刺激電極105を硬膜外腔405の目標とする刺激部位まで移動させる。そして、不図示の体外のコントローラを操作して最適な刺激電極105の位置を決定したら、電気刺激装置501からスタイレット526を抜き去る。これ以降の手順については、図8から図10で説明した手順と同じなので説明を省略する。
【0081】
このように、本発明の第二の実施形態では、回路ブロック、電極ブロック、コイルブロックおよび支持体に連通するスタイレット用ルーメンを備えることで、電気刺激装置を生体内に植え込む際に、スタイレットを利用できる。そのため、電気刺激装置の体内への植え込みを容易に行うことができるとともに、刺激電極の生体内への配置の正確性をより向上させることができる。
【0082】
<本発明の第三の実施形態例の説明>
次に、本発明の第三の実施形態の例を、図15から図17を参照して説明する。図15から図17に示す第三の実施形態に係る電気刺激装置701は、第一および第二の実施形態に係る電気刺激装置101、501とその構成はほとんど変わらないので、共通部分については同一符号を付して、説明を省略することにする。
【0083】
[1.電気刺激装置の構成]
まず、第三の実施形態に係る電気刺激装置の大まかな構成について図15および図16を参照して説明する。
図15は、第三の実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
図16は、図15に示す電気刺激装置を上面から見た分解外観図である。
【0084】
電気刺激装置701は、電気刺激装置101,501と同様に、電気的な刺激信号を生成し、その刺激信号で生体内の神経等を刺激するものである。この電気刺激装置701は、ガイドワイヤ726を挿入するための円筒状の穴(以下、「ガイドワイヤ用ルーメン」)を軸上に有するため、中空の略円筒形状に形成されている。ただし、ガイドワイヤ用ルーメンは、基端部725に開口し、先端部712においても開口する貫通孔として設けられている。そのため、電気刺激装置701は、第二の実施形態の電気刺激装置501の回路ブロック502を、軸方向に連通する中空(図16(a)を参照)が形成された略円筒形状の回路ブロック702に置き換えた構成をしている。なお、回路ブロック702の内部構成については図17にて説明する。
【0085】
次に、第三の実施形態に係る電気刺激装置の内部構成について図17および前述の図14を参照して説明する。
図17は、本発明の第三の実施形態に係る電気刺激装置およびその軸方向の内部構造を示す拡大図である。
図17(a)は、図15に示す電気刺激装置を上面から見た拡大外観図である。
図17(b)は、図17(a)に示す電気刺激装置のP―P’断面を示す断面図である。
【0086】
また、図14は、前述したように、本発明の第二の実施形態に係る電気刺激装置501の径方向の所定箇所の内部構造を示す断面図であるが、第三の実施形態に係る電気刺激装置701の径方向の内部構造を示す断面図でもある。
【0087】
前述したように、第三の実施形態に係る電気刺激装置701は、第二の実施形態に係る電気刺激装置501の回路ブロック502の代わりに回路ブロック702を設けたものであるので、ここでは回路ブロック702の内部構成のみを説明する。
【0088】
パイプ802,803は、パイプ604〜607と、軸方向の長さ以外は同じである。パイプ802およびパイプ803の軸方向の間に弁体804が設けられている。
【0089】
弁体804は、弁体608と同じものであり、例えばシリコーンゴム等のように、生体適合性のある弾性材料(特に軟質な材料が好ましい)で作られている。この弁体804は、パイプ802側にある一方の端面に開口し、他方の端面に開口しない第一の切り込みと、この第一の切り込みと内部において交差し、パイプ803側にある一方の端面に開口し、他方の端面に開口しない第二の切り込みとを有している。この弁体804を介してガイドワイヤ726を抜き差ししたとしても、回路ブロック702、電極ブロック503およびコイルブロック504の内部に、体液等の液体がボディ713の先端部712に設けられた穴から侵入することを防止することができる
【0090】

これらのパイプ802,803および弁体804は、ボディ713およびコネクタ部506よりなる外層部内に収納・固定される(図17(b)を参照)。
【0091】
回路ブロック702のボディ713は、例えば、シリコーンやポリウレタン等の素材でできているが、その先端部712に、略円筒形状の穴を有するものである。この穴の直径は、パイプ802の外径とほぼ等しい。なお、ボディ713の外径は、第二の実施形態例のボディ513(図11参照)のそれと同一である。なお、コネクタ部506は、第二の実施形態にて説明したとおりであるので、説明は省略する。
【0092】
以上のように、ガイドワイヤ用ルーメンは、パイプ604〜607,802,803、および弁体608,804により形成されている。
【0093】
次に、電気刺激装置701で脊髄の神経の電気刺激を行う際の、電気刺激装置701を植え込む手順について簡単に説明しておく。
まず、硬膜外針402を硬膜外腔405まで挿入し(図6参照)、硬膜外針402を通してガイドワイヤ726を硬膜外腔405に挿入する。そして、ガイドワイヤ726の先端を目標とする刺激部位まで進める。続いて、ガイドワイヤ726の基端を電気刺激装置701の先端部712へ挿入し、ガイドワイヤ726上に電気刺激装置701を這わせるようにホルダ部523を押して、当該電気刺激装置701の刺激電極105を目標とする刺激部位まで移動させる。そして、不図示の体外のコントローラを操作して最適な刺激電極105の位置を決定したら、電気刺激装置701からガイドワイヤ726を抜き去る。それ以降の手順は、図8から図10で説明した手順と同じなので説明を省略する。
【0094】
このように、本発明の第三の実施形態では、回路ブロック、電極ブロック、コイルブロックおよび支持体に連通するガイドワイヤ用ルーメンを備えることで、電気刺激装置を生体内に植え込んだ際に、ガイドワイヤを利用できる。そのため、電気刺激装置の体内への植え込みを容易に行うことができるとともに、刺激電極の生体内への配置の正確性をより向上させることができる。
【0095】
以上説明したように、各実施形態では、回路ブロックとコイルブロックの間に電極ブロックが設けられているので、回路ブロックとコイルブロックを離して配置することができる。外部装置(体外のコントローラ)から通信/給電を行うための電磁波がコイルブロックのコイル部に送信された際に、回路ブロックの刺激回路に対する電磁波の影響を低減することができるので、装置の誤動作・故障等の発生確率を下げることができる。
【0096】
なお、上述した各実施形態では、コネクタにより回路ブロック、電極ブロック、コネクタブロックおよび支持体をそれぞれ着脱可能とした。しかしながら、回路ブロックとコネクタブロックとが離れてさえいれば、各ブロックが所定の順序および組み合わせで一体化されていてもよい。また、上述した各実施例では電源として充電池を用いたが、充電池の代わりに一次電池を用いても良いし、あるいは、充電池の代わりにキャパシタを用いて、体外のコントローラから常に給電を受けながら作動させても良い。
【0097】
また、上述した各実施形態では、先端部側から、回路ブロック、電極ブロック、コイルブロックそして支持体の順で接続した。しかしながら、先端部側から、コイルブロック、電極ブロック、回路ブロックそして支持体の順で接続しても、コイルブロックと回路ブロックは離れているので、上述したような効果が得られることはいうまでもない。
【0098】
また、上述した各実施形態では、コイルブロックにコイル部だけを備えるようにしたが、充電部の一部、例えば整流回路を内蔵するようにしてもよいし、コイル部の一部(コイル以外)を回路ブロックに内蔵するようにしてもよい。
【0099】
以上、本発明の各実施形態の例について説明したが、本発明は上記各実施形態例に限定
されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0100】
101,501,701…電気刺激装置、102,502,702…回路ブロック、103,503…電極ブロック、104,504…コイルブロック、105,505…支持体、106〜111,506〜511…コネクタ部、112,117,120,124,512,706,712…先端部、113,116,119,122,513,516,519,522,713…ボディ、114,118,121,125,514,525,725…基端部、115…刺激電極、123,523…ホルダ部、202,209,220…導線、204…刺激回路、211,224…電気的接続部、221〜223…コネクタピン、225…コイル部、302…通信部、303…制御部、304…刺激パラメータ設定部、305…電極構成設定部、306…発振部、307…スイッチ部、308…充電部、309…充電池、402…硬膜外針、404…生体、405…硬膜外腔、406…糸、526…スタイレット、602…受け部、603〜607,802,803…パイプ、608,804…弁体、726…ガイドワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状導入具を介して生体内に植え込まれる電気刺激装置であって、
前記生体内の神経または筋肉を電気的に刺激するための刺激電極を有する電極ブロックと、
外部装置から送信される電磁波を利用して電磁誘導により通信を行うコイルを含むコイルブロックと、
前記通信に応じた刺激信号を生成し、生成した前記刺激信号を前記刺激電極に印加する電子回路を有する回路ブロックと、
前記刺激電極の生体内の植え込み位置を保持する切断可能な支持体と、を有し、
前記電極ブロックは、前記コイルブロックと前記回路ブロックの間に介在するように、前記コイルブロックおよび前記回路ブロックとそれぞれ接続される
ことを特徴とする電気刺激装置。
【請求項2】
前記回路ブロック、前記電極ブロック、前記コイルブロックおよび支持体が、略円筒形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の電気刺激装置。
【請求項3】
前記支持体は、前記コイルブロックの端部に結合される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気刺激装置。
【請求項4】
前記支持体は、前記回路ブロックの端部に結合される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気刺激装置。
【請求項5】
前記コイルブロックの前記コイルは、前記外部装置から送信される電磁波を利用して電磁誘導により受電を行い、
前記刺激信号は、前記コイルで受電した電力を利用して、前記通信に応じて生成される
ことを特徴とする請求項1〜4に記載の電気刺激装置。
【請求項6】
前記回路ブロックは、前記コイルと接続して電力を得る電源部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項7】
前記電源部の一部は、前記コイルブロックに備えられる
ことを特徴とする請求項6に記載の電気刺激装置。
【請求項8】
前記コイルブロックは、前記コイルと接続して電力を得る電源部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項9】
前記電源部の一部は、前記回路ブロックに備えられる
ことを特徴とする請求項8に記載の電気刺激装置。
【請求項10】
前記コイルは、前記コイルブロックの長手方向を軸として巻回される
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項11】
前記刺激電極が脊髄硬膜外腔に留置され、前記刺激電極により脊髄神経を刺激する
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電気刺激装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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