説明

電気化学セル

【課題】簡易な構成により、内部抵抗を抑制することができ、優れた出力特性を確保することができる電気化学セルを提供する。
【解決手段】正極2と、正極に対して対向配置される負極3と、正極および負極が浸漬される電解液とを備えるハイブリッドキャパシタにおいて、正極および/または負極に、少なくとも一辺を備えるとともに、その厚み方向を貫通する貫通部10と、一辺の一部に形成される集電用タブ11a、11bとを備え、電解液の酸化分解によって発生するガスを除去するための貫通部を、集電用タブに向かってスリット状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関し、詳しくは、電気化学キャパシタ、二次電池などに用いられる電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイブリッド車両や燃料電池車両に搭載される蓄電デバイスとして、リチウムイオン電池などの二次電池、電気二重層キャパシタおよびハイブリッドキャパシタなどの電気化学キャパシタの検討および開発が進められている。
【0003】
このような蓄電デバイスは、一般的に、正極と、負極と、これら電極間に介在されるセパレータと、電極およびセパレータを収容し、これらを浸漬するように電解液が満たされているセル槽とを有している。そして、各電極において、電気二重層および/または酸化還元反応により蓄電されるエネルギーが放電されることにより、蓄電デバイスの充放電が行なわれる。
【0004】
このような蓄電デバイスでは、電解液として、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)などのリチウム塩を、エチレンカーボネート(C)などの有機溶媒に溶解させた有機電解液が用いられている。しかるに、このような有機電解液は、充電時において酸化分解され、ガス(例えば、COなど)を発生させる場合がある。ガスが発生すると、ガスが蓄電デバイスのセル内に滞留し、内部抵抗を向上させることにより、出力特性の低下を惹起する場合がある。
【0005】
このような不具合を解決するため、例えば、正極と、正極に対して対向配置される負極と、正極および負極が浸漬される電解液とを備え、正極および負極のそれぞれの端部には、その長手方向と直交する幅方向の全域において、集電用タブ(集電体の、塗工層が形成されていない領域)が備えられ、正極および/または負極の塗工層が形成されている領域には、電流が流れる方向に沿って、具体的には、正極および/または負極の長手方向に沿って、その厚み方向を貫通する貫通部を備えている電気化学セルが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
このような電気化学セルによれば、電解液の酸化分解によって発生するガスを貫通部によって除去することができるので、内部抵抗の低減、および、出力特性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−066324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電気化学セルの構造によっては、集電用タブが、正極および/または負極の端部の、長手方向と直交する幅方向の一部のみ、例えば、幅方向中央のみに形成される場合がある。
【0009】
このような場合において、特許文献1に記載されるように、正極および/または負極の長手方向に沿うように貫通部を形成すると、正極および/または負極の幅方向両側端部における電子は、貫通部に沿って移動し、集電用タブが形成されていない長手方向一端部に至った後に、集電用タブに向かう。すなわち、電子は、正極および/または負極中において、貫通部を迂回するように移動するため、十分に内部抵抗の低減を図ることができず、十分な出力特性を得ることができないという不具合がある。
【0010】
本発明の目的は、簡易な構成により、内部抵抗を抑制することができ、優れた出力特性を確保することができる電気化学セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の電気化学セルは、正極と、前記正極に対して対向配置される負極と、前記正極および前記負極が浸漬される電解液とを備え、前記正極および/または前記負極は、少なくとも一辺を備えるとともに、その厚み方向を貫通する貫通部と、前記一辺の一部に形成される集電用タブとを備えており、前記貫通部が、前記集電用タブに向かってスリット状に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電気化学セルでは、正極および/または負極の一辺の一部に集電用タブが備えられる場合において、貫通部が、集電用タブに向かってスリット状に形成されている。
【0013】
そのため、貫通部により、電解液の酸化分解によって発生するガスを除去することができるとともに、正極および/または負極中において、電子が、貫通部を迂回することなく移動できる。その結果、本発明の電気化学セルによれば、コストを抑えて内部抵抗を低減することができ、出力特性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電気化学セルの一実施形態を示すハイブリッドキャパシタの概略構成図である。
【図2】図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の一実施形態(集電用タブが幅方向一方側に形成され、貫通部が全て対角線に沿って連続的に設けられる形態)の正面図である。
【図3】図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(集電用タブが幅方向一方側に形成され、貫通部が全て対角線に沿って断続的に設けられる形態)の正面図である。
【図4】図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(集電用タブが正極および負極の幅方向一方側に形成され、貫通部の一部が正極および負極の長手方向に沿って設けられるとともに、残部が対角線に沿って設けられる形態)の正面図である。
【図5】図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(集電用タブが正極および負極の幅方向中央部に形成され、貫通部が全て集電用タブから延びる放射線状に設けられる形態)の正面図である。
【図6】図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(集電用タブが正極および負極の幅方向中央部に形成され、貫通部の一部が正極および負極の長手方向に沿って設けられるとともに、残部が対角線に沿って設けられる形態)の正面図である。
【図7】図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(正極および負極が、正面視半円状に形成される形態)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の電気化学セルの一実施形態を示すハイブリッドキャパシタの概略構成図である。
【0016】
図1において、ハイブリッドキャパシタ1は、正極2と、正極2に対して間隔を隔てて対向配置される負極3と、正極2と負極3との間に介在されるセパレータ4と、正極2、負極3、セパレータ4および必要により設けられる捕捉部材7(後述)を収容するセル槽5と、セル槽5に貯留され、正極2、負極3およびセパレータ4が浸漬される電解液6とを備えている。なお、ハイブリッドキャパシタ1は、ラボスケールで採用される電池セルであって、工業的には、このハイブリッドキャパシタ1を、公知の技術によって適宜スケールアップしたものが採用される。
【0017】
正極2は、分極性カーボンからなる正極材料(分極性カーボン材料)を含有し、例えば、正極材料と、導電剤と、ポリマーバインダとを配合して得られる混合物からなる電極シートを、所定の形状(詳しくは後述)に成形した後、必要により乾燥させることにより形成される。
【0018】
正極材料は、例えば、カーボン材を賦活処理することにより得られる。
【0019】
カーボン材としては、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボンなどが挙げられる。
【0020】
ソフトカーボンは、例えば、不活性雰囲気中での熱処理によって、炭素原子で構成される六角網面が、ハードカーボンの六角網面よりも相対的に規則的な積層構造(黒鉛構造)を形成しやすいカーボンの総称である。具体的には、不活性雰囲気中、2000〜3000℃、好ましくは、2500℃で熱処理されたときに、(002)面の平均面間隔d002が3.40Å以下、好ましくは、3.35〜3.40Åとなる結晶構造を形成するカーボンの総称である。
【0021】
具体的なソフトカーボンとしては、例えば、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、メソフェーズ系ピッチなどのピッチ類、例えば、石油系ニードルコークス、石炭系ニードルコークス、アントラセン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどの易黒鉛化性コークス類などの熱分解物などが挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。
【0022】
また、ハードカーボンは、例えば、不活性雰囲気中、2500℃で熱処理されたときに、(002)面の平均面間隔d002が3.40Åを超える結晶構造を形成するカーボンの総称である。
【0023】
具体的なハードカーボンとしては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フルフラール樹脂、レゾルシノール樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、例えば、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャネルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、例えば、フリュードコークス、ギルソナイトコークスなど易黒鉛化性コークスとは異なる難黒鉛化性コークス、例えば、やしがら、木粉などの植物系原料、例えば、ガラス状炭素などの熱分解物などが挙げられる。
【0024】
これらは、単独使用または併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、ソフトカーボンが挙げられる。
【0025】
賦活処理としては、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)などを賦活剤として用いるアルカリ賦活処理、例えば、塩化亜鉛(ZnCl)、リン酸(HPO)などを賦活剤として用いる薬品賦活処理、例えば、二酸化炭素(CO)、空気などを賦活剤として用いるガス賦活処理、例えば、水蒸気(HO)を賦活剤として用いる水蒸気賦活処理などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、アルカリ賦活処理が挙げられ、さらに好ましくは、水酸化カリウム(KOH)を賦活剤として用いるアルカリ賦活処理(KOH賦活処理)が挙げられる。
【0026】
賦活処理は、例えば、KOH賦活処理の場合、窒素雰囲気下において、カーボン材を、例えば、500〜800℃で予備焼成し、次いで、700〜1000℃でKOHとともに焼成する。用いられるKOHの量は、例えば、カーボン材1重量部に対して、0.5〜5重量部である。
【0027】
上記賦活処理によって得られる正極材料を正極2に用いたハイブリッドキャパシタでは、例えば、正極2の電位が4.23V vs.Li/Li以上となる充放電サイクルにおいて、正極2に比較的大きな不可逆容量を発現させることができる。そのため、放電過程において、より低い電位にまで正極の放電が可能となる。その結果、正極2の電気容量を拡大することができる。
【0028】
正極材料は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が70〜99重量%の割合となるように配合される。
【0029】
導電剤としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0030】
また、導電剤は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が0〜20重量%の割合となるように配合される。つまり、導電剤は、配合しても配合しなくてもよい。
【0031】
ポリマーバインダとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体架橋ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、PVdFが挙げられる。
【0032】
また、ポリマーバインダは、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が1〜20重量%の割合となるように配合される。
【0033】
そして、正極2を形成するには、正極材料、導電剤およびポリマーバインダを配合した混合物を、溶媒中で攪拌してスラリー(固形分:10〜60重量%)を得る。次いで、スラリーを正極側集電体8aの表面に塗工し、正極側塗工層9aを形成した後、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して電極シートを得る。次いで、電極シートを所定の形状(詳しくは後述)に裁断した後、必要によりさらに乾燥させる。これにより、正極2が得られる。
【0034】
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性極性溶媒、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、水などのプロトン性極性溶媒、例えば、トルエン、キシレン、イソホロン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、フタル酸ジメチルなどの低極性溶媒が挙げられる。これらのうち、好ましくは、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、さらに好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。
【0035】
正極側集電体8aとしては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔などの金属箔が挙げられる。
【0036】
正極側集電体8aの厚さは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、ラボスケールでは、例えば、10〜50μmであり、正極側塗工層9aの厚さが、例えば、10〜140μmμmであり、正極2の厚さ(正極側集電体8aおよび正極側塗工層9aの合計厚さ)が、例えば、30〜150μmである。
【0037】
負極3は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出する電極であって、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な負極材料を含有している。
【0038】
より具体的には、負極3は、例えば、負極材料と、ポリマーバインダとを配合して得られる混合物からなる電極シートを、所定の形状(詳しくは後述)に成形した後、必要により乾燥させることにより形成される。
【0039】
負極材料としては、特に制限されないが、例えば、上記したハードカーボン、上記したソフトカーボン、グラファイトなどが挙げられる。
【0040】
グラファイトとしては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン小球体、黒鉛化メソフェーズカーボン繊維、黒鉛ウィスカ、黒鉛化炭素繊維、ピッチ、コークスなどの縮合多環炭化水素化合物の熱分解物などのグラファイト系炭素材料が挙げられる。
【0041】
これらは単独使用または2種以上併用することができる。また、グラファイトは、粉末状のもの(例えば、平均粒径が25μm以下のもの)が好ましく用いられる。
【0042】
そして、上記のような負極材料は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が80〜99重量%の割合となるように配合される。
【0043】
ポリマーバインダとしては、例えば、上記したポリマーバインダが挙げられ、好ましくは、PVdFが挙げられる。また、ポリマーバインダは、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が1〜10重量%の割合となるように配合される。
【0044】
また、負極の製造においては、必要により、さらに、導電剤を配合することもできる。
【0045】
導電剤としては、例えば、上記した導電剤が挙げられる。また、導電剤は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が0〜20重量%の割合となるように配合される。
【0046】
そして、負極3を形成するには、例えば、まず、負極材料およびポリマーバインダを配合した混合物を、溶媒中で攪拌してスラリー(固形分:10〜60重量%)を得る。次いで、スラリーを負極側集電体8bの表面に塗工し、負極側塗工層9bを形成した後、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して電極シートを得る。次いで、電極シートを所定の形状(詳しくは後述)に裁断した後、必要によりさらに乾燥させる。これにより、負極3が得られる。
【0047】
溶媒としては、例えば、上記した溶媒が挙げられ、好ましくは、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、さらに好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。
【0048】
また、負極側集電体8bとしては、例えば、上記した金属箔が挙げられる。
【0049】
負極側集電体8bの厚さは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、ラボスケールでは、例えば、10〜50μmであり、負極側塗工層9bの厚さが、例えば、5〜60μmであり、負極3の厚さ(負極側集電体8bおよび負極側塗工層9bの合計厚さ)が、例えば、15〜70μmである。
【0050】
セパレータ4としては、例えば、ガラス繊維、セラミックス繊維、ウィスカなどの無機繊維、例えば、セルロースなどの天然繊維、例えば、ポリオレフィン、ポリエステルなどの有機繊維などからなるセパレータが挙げられる。
【0051】
また、セパレータ4の厚さおよび大きさは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、ラボスケールでは、厚さが、例えば、15〜150μmであり、大きさが、例えば、矩形状の場合には、長手方向長さが、例えば、55〜115mmであり、長手方向と直交する方向(幅方向)長さが、例えば、50〜100mmである。
【0052】
電解液6は、リチウム塩を含む有機溶媒を含有しており、具体的には、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解させることにより調製される。
【0053】
リチウム塩としては、ハロゲンを含むアニオン成分を有し、例えば、LiClO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiCSO、LiC17SO、LiB[C(CF−3,5]、LiB(C、LiB[C(CF)−4]、LiBF、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFCO、LiN(CFSOなどが挙げられる。なお、上式中[C(CF−3,5]は、フェニル基の3位と5位に、[C(CF)−4]はフェニル基の4位に、それぞれ−CFが置換されているものを意味する。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0054】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、プロピレンカーボネート誘導体、エチレンカーボネート、エチレンカーボネート誘導体、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジオキソラン、リン酸トリエステル、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、1,3−プロパンスルトン、4,5−ジヒドロピラン誘導体、ニトロベンゼン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン誘導体、シドノン化合物、アセトニトリル、ニトロメタン、アルコキシエタン、トルエンなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0055】
そして、電解液6を調製するには、例えば、リチウム塩の濃度が、例えば、0.5〜5mol/L、好ましくは、1〜3mol/Lとなるように、また、電解液6中の水分量が、例えば、50ppm以下、好ましくは、10ppm以下となるように、リチウム塩を有機溶媒に溶解する。
【0056】
図2は、図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の一実施形態(集電用タブが幅方向一方側に形成され、貫通部が全て対角線に沿って連続的に設けられる形態)の正面図である。
【0057】
このハイブリッドキャパシタ1において、正極2および/または負極3は、少なくとも一辺を備える形状、例えば、正面視略矩形状(略矩形板形状)に形成されている。
【0058】
より具体的には、このハイブリッドキャパシタ1では、正極2は、正面視略矩形状に形成された正極側集電体8aの一方側表面に、正極側塗工層9aが積層されることによって(図1参照)、正面視略矩形状に形成されている。
【0059】
正極側集電体8aのサイズは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、長手方向長さが、例えば、46〜97mm、好ましくは、67〜97mm、幅方向長さが、例えば、41〜73mm、好ましくは、53〜73mmである。
【0060】
このような正極2は、その一辺の一部、具体的には、長手方向一方側の一辺において、幅方向一方側端部のみに、正極側集電用タブ11aを備えている。
【0061】
正極側集電用タブ11aは、正極2の一辺の幅方向の一方側端部において、その長手方向に沿って突出するように形成される正面視略矩形状の金属箔であって、例えば、上記した正極側集電体8aと同様の材料から、正極側集電体8aから連続するように、正極側集電体8aと一体的に形成されている。
【0062】
正極側集電用タブ11aのサイズは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、長手方向長さが、例えば、12〜39mm、好ましくは、22〜39mm、幅方向長さが、例えば、21mm以上であり、例えば、73mm未満、好ましくは、37mm以下である。
【0063】
また、正極側集電用タブ11aの幅方向長さは、正極2の幅方向長さに対して、例えば、28%以上であり、例えば、100%未満、好ましくは、50%以下である。
【0064】
また、負極3は、正面視略矩形状に形成された負極側集電体8bの一方側表面に、負極側塗工層9bが積層されることによって(図1参照)、正面視略矩形状に形成されている。
【0065】
負極側集電体8bのサイズは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、長手方向長さが、例えば、50〜105mm、好ましくは、75〜105mm、幅方向長さが、例えば、45〜80mm、好ましくは、60〜80mmである。
【0066】
このような負極3は、その一辺の一部、具体的には、長手方向一方側の一辺において、幅方向一方側端部のみに、負極側集電用タブ11bを備えている。
【0067】
負極側集電用タブ11bは、負極3の一辺の幅方向の一方側端部において、その長手方向に沿って突出するように形成される正面視略矩形状の金属箔であって、例えば、上記した負極側集電体8bと同様の材料から、負極側集電体8bから連続するように、負極側集電体8bと一体的に形成されている。
【0068】
負極側集電用タブ11bのサイズは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、長手方向長さが、例えば、10〜44m、好ましくは、20〜44mm、幅方向長さが、例えば、25mm以上であり、例えば、80mm未満、好ましくは、40mm以下である。
【0069】
また、負極側集電用タブ11bの幅方向長さは、負極3の幅方向長さに対して、例えば、31%以上であり、例えば、100%未満、好ましくは、50%以下である。
【0070】
また、このハイブリッドキャパシタ1において、正極2および/または負極3は、その厚み方向を貫通する貫通部10を備えている。
【0071】
より具体的には、このハイブリッドキャパシタ1では、上記により得られた正極2、および、上記により得られた負極3のいずれか、または、それらの両方の、塗工層9(正極側塗工層9aおよび/または負極側塗工層9b)が形成される領域に、塗工層9および集電体8(正極側集電体8aおよび/または負極側集電体8b)の厚み方向を貫通する貫通部10が、形成されている。好ましくは、正極2および負極3の両方に、貫通部10が形成されている。
【0072】
このような貫通部10は、正極2および/または負極3において、集電用タブ11(正極側集電用タブ11aおよび/または負極側集電用タブ11b)に向かうように、正極2および/または負極3の長手方向および幅方向と交差する交差方向に沿って、スリット状に形成されている。
【0073】
より具体的には、貫通部10は、正極2および/または負極3の、長手方向一方側および幅方向一方側の頂点(集電用タブ11が形成される側における頂点)と、長手方向他方側および幅方向他方側の頂点(集電用タブ11が形成される側の頂点に対向する頂点)とを結ぶ対角線Dが延びる方向(図2における仮想線参照)に沿って、連続的に延びるスリット状に形成されている。
【0074】
正極2および/または負極3にスリット状の貫通部10が形成される場合において、正極2および/または負極3の長手方向に沿うように貫通部10を形成すると、正極2および/または負極3の幅方向他方側端部における電子は、貫通部10に沿って移動し、集電用タブ11が形成されていない長手方向一端部に至った後に、長手方向一方側端部において、幅方向一方側の集電用タブ11に向かう。すなわち、電子が、正極2および/または負極3中において、貫通部10を迂回するように移動するため、十分に内部抵抗の低減を図ることができず、十分な出力特性を得ることができないという不具合がある。
【0075】
一方、正極2および/または負極3の一辺の一部、具体的には、幅方向一方側端部に集電用タブ11が備えられる場合において、貫通部10が、集電用タブ11に向かってスリット状に形成されていれば、正極2および/または負極3中において、電子が、貫通部10を迂回することなく移動できる。その結果、このハイブリッドキャパシタ1によれば、コストを抑えて内部抵抗を低減することができ、出力特性の向上を図ることができる。
【0076】
なお、貫通部10がスリット状に形成される場合において、貫通部10の大きさ(長手方向長さおよび幅方向長さ)および数は、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なり、目的および用途に応じて適宜設定される。
【0077】
また、貫通部10が複数形成される場合において、各貫通部10の間隔(貫通部10が延びる方向と直交する方向における間隔)は、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なり、目的および用途に応じて適宜設定される。
【0078】
また、貫通部10は、好ましくは、正極2および/または負極3の、塗工層9が形成される領域の全体において、均一に形成される。
【0079】
このようなスリット状の貫通部10は、特に制限されないが、例えば、金属製の刃物によって、正極2および/または負極3を、その厚み方向を貫通するように切り込むことにより、形成される。
【0080】
このようにして、正極2および/または負極3に貫通部10を形成することにより、電解液6の酸化分解によって発生するガスを、その貫通部10を介して除去することができる。
【0081】
すなわち、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、ハイブリッドキャパシタ1を、公知の方法によってラミネートセルとして形成した後、充電させ、その後、ラミネートセルを一度開封することにより、充電時(とりわけ、初回の充電時)に発生するガスを除去することができる。
【0082】
具体的には、例えば、上記した正極2、負極3およびセパレータ4を積層し、得られた積層体を、セル槽5(例えば、アルミニウム製のラミネートフィルムなど)に収容する。その後、セル槽5に電解液6を注入することにより、ラミネートセルとしてハイブリッドキャパシタ1を形成する。
【0083】
そして、この方法では、得られたハイブリッドキャパシタ1を、製品として出荷する前に、1回以上(数回〜数百回)充電させ(プレサイクル)、電解液6を酸化分解させることにより、ガスを発生させる。次いで、ハイブリッドキャパシタ1のラミネートセルを一旦開封して、貫通部10を介してガスを除去し、その後、ラミネートセルを再度封止する。
【0084】
これにより、電解液6の酸化分解によって発生するガスを、ハイブリッドキャパシタ1から、貫通部10によって良好に除去することができる。
【0085】
さらに、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、ガス捕集部(図示せず)をハイブリッドキャパシタ1に連通するように形成し、充電時に発生するガスを、そのガス捕集部とともに、ハイブリッドキャパシタ1から除去することもできる。
【0086】
すなわち、この方法では、例えば、上記したハイブリッドキャパシタ1を形成するとともに、その内部と連通するガス捕集部を設ける。次いで、そのハイブリッドキャパシタ1を、製品として出荷する前に、1回以上(数回〜数百回)充電させ(プレサイクル)、電解液6を酸化分解させることにより、ガスを発生させ、そのガスを、正極2および/または負極3に形成されている貫通部10を介して、ガス捕集部に導入する。そして、この方法では、ハイブリッドキャパシタ1からガスが捕集されたガス捕集部を切り離すとともに、その切り離された部分を、再度封止する。
【0087】
これにより、電解液6の酸化分解によって発生するガスを、貫通部10およびガス捕集部(図示せず)によって、簡易かつ確実に除去することができる。
【0088】
そのため、このようなハイブリッドキャパシタ1によれば、良好にエネルギー密度を維持することができ、さらには、内部抵抗を低減することができ、その結果、出力特性の向上を図ることができる。
【0089】
そして、このハイブリッドキャパシタ1では、正極2の電位が、好ましくは、4.23V vs Li/Li以上とされる。
【0090】
正極2の電位を4.23V vs Li/Li以上とするには、例えば、負極3にソフトカーボンおよび/またはハードカーボンを用いた場合には、セル電圧を3V以上で印加する。
【0091】
正極2の電位を4.23V vs Li/Li以上とすれば、ハイブリッドキャパシタ1のエネルギー密度の向上を図ることができる。
【0092】
一方、このハイブリッドキャパシタ1では、正極2の電位を4.23V vs Li/Li以上などの高電位とした場合に、正極2の不可逆容量の発現に起因して、電解液6に含まれるアニオン(例えば、LiPFに含まれるPFなど)から誘導される負極活性阻害物質が生成する場合がある。
【0093】
負極活性阻害物質が生成する過程、例えば、正極2の不可逆容量の発現に起因してHFが生成する過程は、以下のように推考される。
【0094】
まず、正極2および負極3に上記した所定電圧(すなわち、4.23V vs Li/Li以上)を印加すると、電解液6内では、例えば、正極2や電解液6に含まれる水分や有機物から、下記式(1)(2)に示すように、プロトン(H)が生成する。
(1) 2HO→O+4H+4e
(2) R−H→R+H+e(Rは、アルキル基)
そして、生成したプロトンが、電解液6に含まれるアニオン(例えば、LiPFに含まれるPFなど)と反応し、HFが生成する(下記式(3)参照)。
(3) PF+H→PF+HF
HFのような負極活性阻害物質は、負極3の電気容量を低下させて、ハイブリッドキャパシタ1のエネルギー密度を低下させるおそれがある。
【0095】
そのため、このハイブリッドキャパシタ1では、好ましくは、正極2と負極3との間、正極2内部および負極3内部の少なくともいずれかに、電解液6に含まれるアニオンから誘導される負極活性阻害物質を捕捉する捕捉剤を含有させる。
【0096】
ハイブリッドキャパシタ1に捕捉剤を含有させることにより、例えば、正極2の不可逆容量の発現に起因して負極活性阻害物質が生成しても、その負極活性阻害物質を捕捉剤で捕捉することができる。
【0097】
捕捉剤としては、例えば、炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)など、アルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。これらは、単独または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、炭酸リチウムが挙げられる。
【0098】
より具体的には、例えば、捕捉剤が、正極2と負極3との間に含有(配置)される場合には、捕捉剤は、好ましくは、捕捉部材7として形成される。
【0099】
捕捉部材7は、例えば、負極活性阻害物質を捕捉するための捕捉剤と、ポリマーバインダとを加圧延伸することにより得られるシートである。
【0100】
ポリマーバインダとしては、例えば、上記したポリマーバインダが挙げられ、好ましくは、PTFEが挙げられる。
【0101】
そして、捕捉部材7を形成するには、例えば、まず、捕捉剤と、ポリマーバインダとを、例えば、捕捉剤:ポリマーバインダの配合割合が、固形分の重量割合で20:80〜98:2、好ましくは、50:50〜90:10となるように配合して、混合物を調製する。次いで、混合物を、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して捕捉剤含有シートを得る。
【0102】
そして、捕捉剤含有シートを所定の形状(例えば、矩形状)に打ち抜いた後、必要により乾燥させる。これにより、捕捉部材7が得られる。
【0103】
そして、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、図1に示されるように、セパレータ4として、正極2側に配置されるセパレータ4aと負極3側に配置されるセパレータ4bとを設け、これらセパレータ4aと4bとの間に、捕捉部材7を設ける。
【0104】
捕捉部材7を設けることによって、例えば、正極2の不可逆容量の発現に起因して負極活性阻害物質が生成しても、その負極活性阻害物質を捕捉部材7で捕捉することができる。また、このような捕捉部材7は、捕捉剤含有セパレータとして、セパレータを兼ねることができる。
【0105】
また、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、捕捉部材7を形成することなく、捕捉剤として、上記の炭酸塩を、セパレータ4aとセパレータ4bとの間に配置することもできる。
【0106】
炭酸塩をセパレータ4aとセパレータ4bとの間に配置するには、例えば、粉末状の炭酸塩をセパレータ4aまたはセパレータ4bの一方の表面に添加し、当該表面と他方のセパレータ4a(4b)の表面とで、炭酸塩を挟み込む。
【0107】
また、このハイブリッドキャパシタ1において、炭酸塩は、正極2および/または負極3の表面にコーティングされていてもよい。
【0108】
炭酸塩を正極2および/または負極3の表面にコーティングするには、例えば、炭酸塩および結合剤を配合した混合物を、溶媒中で攪拌混合し、それを正極2および/または負極3上に塗布後、乾燥させる。
【0109】
結合剤としては、例えば、上記したポリマーバインダなどが挙げられる。
【0110】
溶媒としては、例えば、上記した溶媒が挙げられ、好ましくは、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)や水が挙げられる。
【0111】
さらに、このハイブリッドキャパシタ1では、捕捉剤として、リチウム箔を用いることもできる。
【0112】
リチウム箔としては、公知のリチウム箔を用いることができ、例えば、円形状、矩形状に形成される。
【0113】
また、リチウム箔は、好ましくは、その表面積が正極2および負極3の表面積と略同一面積、または、より広い面積となるように形成される。リチウム箔の表面積がこのような面積であると、負極活性阻害物質(例えば、HFなど)を、効率よく捕捉することができる。
【0114】
さらに、その厚みは、例えば、0.01〜0.1mmであり、好ましくは、0.01〜0.05mmである。
【0115】
また、リチウム箔には、その厚み方向に複数の孔が形成されている。このような孔が形成されることによって、電解液6が、セパレータ4aとセパレータ4bとの間を通過することができ、充放電することができる。
【0116】
なお、リチウム箔は、リチウム金属であればよく、例えば、捕捉剤として、リチウム粉末やペースト状のリチウムを設けることもできる。
【0117】
また、上記したリチウム金属のほか、Si−N結合を有する化合物(例えば、ペルヒドロポリシラザン、メチルポリシラザンなど)をセル槽5内に含めることによっても、負極活性阻害物質を捕捉することができる。この場合、負極活性阻害物質は、Si−N結合を有する化合物に捕捉されて安定化する。
【0118】
また、捕捉剤が、正極2内部および/または負極3内部に含有される場合には、捕捉剤は、例えば、正極2および/または負極3の材料成分として用いられる。
【0119】
すなわち、このような場合には、捕捉剤(例えば、炭酸塩、リチウム粉末など)が、正極2および/または負極3の製造工程において、正極材料または負極材料とともに配合される。これにより、捕捉剤が、正極2内部および/または負極3内部に含有される。
【0120】
そして、このような捕捉剤(捕捉部材7)は、正極2で発現する不可逆容量1mAhに対して、好ましくは、2×10−5mol〜175×10−5molの割合で含まれる。
【0121】
捕捉剤の量が、このような範囲であると、より一層優れたエネルギー密度を発現することができる。
【0122】
例えば、上記式(1)〜(3)を参照すると、電子1molの流れに伴い、HFが1mol生成する。すなわち、正極2で発現する不可逆容量をQ(mAh)とし、ファラデー定数を96500(C/mol)すると、ハイブリッドキャパシタ1で発生するHFの発生量MHFは、MHF=3.6×Q×F−1(mol)となる。
【0123】
また、LiCOを捕捉剤として用いた場合、下記式(4)に示すように、HFがLiCOに捕捉されて(LiCOと反応して)、LiFおよびHCOが生成する。
(4) LiCO+2HF→2LiF+HCO
上記式(4)に示すように、1molのHFを捕捉するためには、0.5molのLiCOが必要である。より具体的には、LiCOの必要量MLi2CO3は、MLi2CO3=0.5MHF=1.8×Q×F−1(mol)であり、F=96500を代入すると、MLi2CO3=2×10−5×Q(mol)である。すなわち、LiCOが、不可逆容量Q(mAh)に対して2×10−5×Qmol以上含まれることによって、HFを十分捕捉することができる。その結果、負極活性阻害物質(HF)に起因するエネルギー密度の低下を抑制できるので、より一層優れたエネルギー密度を発現することができる。
【0124】
そして、このハイブリッドキャパシタ1では、正極2および/または負極3の一辺の一部に集電用タブ11が備えられる場合において、貫通部10が、集電用タブ11に向かってスリット状に形成されている。
【0125】
そのため、貫通部10によって、電解液6の酸化分解によって発生するガスを除去することができるとともに、正極2および/または負極3中において、電子が、貫通部を迂回することなく移動できる。その結果、このハイブリッドキャパシタ1によれば、コストを抑えて内部抵抗を低減することができ、出力特性の向上を図ることができる。
【0126】
図3は、図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(集電用タブが幅方向一方側に形成され、貫通部が全て対角線に沿って断続的に設けられる形態)の正面図、図4は、図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(集電用タブが正極および負極の幅方向一方側に形成され、貫通部の一部が正極および負極の長手方向に沿って設けられるとともに、残部が対角線に沿って設けられる形態)の正面図、図5は、図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(集電用タブが正極および負極の幅方向中央部に形成され、貫通部が全て放射線状に設けられる形態)の正面図、図6は、図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(集電用タブが正極および負極の幅方向中央部に形成され、貫通部一部が正極および負極の長手方向に沿って設けられるとともに、残部が対角線に沿って設けられる形態)の正面図、図7は、図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(正極および負極が、正面視半円状に形成される形態)の正面図である。
【0127】
ハイブリッドキャパシタ1では、貫通部10が集電用タブ11に向かって形成されていれば、それらの形状および配置は、特に制限されず、種々の配置とすることができる。
【0128】
例えば、上記した説明では、貫通部10の延びる方向に沿う1つの線上に、1つの貫通部10が、連続的に形成されているが、例えば、図3に示すように、貫通部10を、その延びる方向に間隔を隔てて、複数、断続的に形成することができる。
【0129】
また、上記した説明では、全ての貫通部10を交差方向(対角線)に沿って連続的に設けたが、少なくとも一部が交差方向に沿って設けられていれば、例えば、図4に示すように、貫通部10の一部を、正極2および負極3の長手方向に沿って設けるとともに、残部を、交差方向(対角線)に沿って設けることもできる。
【0130】
具体的には、集電用タブ11を、正極2および負極3の一辺の幅方向の一方側端部において、その長手方向に沿って突出するように設け、正極2および負極3の幅方向一方側、詳しくは、集電用タブ11と長手方向に重複する領域では、貫通部10を長手方向に沿って設けるとともに、幅方向中央および幅方向他方側、詳しくは、集電用タブ11と長手方向に重複しない領域では、貫通部10を、交差方向に沿って設けることができる。
【0131】
また、上記した説明では、正極2および負極3の幅方向一方側端部に集電用タブ11を形成したが、例えば、図5に示すように、集電用タブ11を、正極2および負極3の幅方向中央部に形成することができる。また、このような場合には、貫通部10全てを、集電用タブ11を中心として延びる放射線状に設けることができる。
【0132】
また、集電用タブ11を、正極2および負極3の幅方向中央部に形成する場合には、例えば、図6に示すように、貫通部10の一部を正極2および負極3の長手方向に沿って設けるとともに、残部を、交差方向(対角線)に沿って設けることもできる。
【0133】
具体的には、集電用タブ11を、正極2および負極3の一辺の幅方向の中央部において、その長手方向に沿って突出するように設け、正極2および負極3の幅方向中央部、詳しくは、集電用タブ11と長手方向に重複する領域では、貫通部10を長手方向に沿って設けるとともに、幅方向一方側および幅方向他方側、詳しくは、集電用タブ11と長手方向に重複しない領域では、貫通部10を、交差方向に沿って設けることができる。
【0134】
さらに、上記した説明では、正極2および負極3を、正面視略矩形状に形成したが、正極2および負極3の形状は、少なくとも一辺を備えていれば、特に制限されず、種々の形状とすることができる。具体的には、図7に示すように、正極2および負極3を、正面視において一部が欠けた円状(半円状など)に形成することができる。なお、このような場合には、集電用タブ11は、一辺の幅方向中央部に設けることができ、また、図示しないが、幅方向一方側端部に設けることもできる。また、このような場合において、貫通部10は、集電用タブ11に向かうように、例えば、集電用タブ11を中心として延びる放射線状に形成することができる。
【0135】
また、上記した貫通部10および集電用タブ11の配置および形状を、種々組み合わせて採用することもできる。
【0136】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、ハイブリッドキャパシタ1を、電気二重層キャパシタやリチウムイオン電池に変更することができる。
【0137】
例えば、電気二重層キャパシタの場合には、負極および負極の材料として、例えば、活性炭が用いられる。
【0138】
一方、リチウムイオン電池の場合には、正極の材料として、上記した正極2に用いられる材料の代わりに、種々の酸化物、硫化物が用いられ、例えば、二酸化マンガン(MnO)、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn,LiMnOなど)、リチウムニッケル複合酸化物(例えば、LiNiOなど)、リチウムコバルト複合酸化物(例えば、LiCoOなど)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、バナジウム酸化物(例えば、Vなど)などが用いられる。また、導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料などの有機材料も用いることができる。
【0139】
そして、本発明の電気化学セルは、例えば、自動車(ハイブリッド車両など)に搭載される駆動用電池、ノートパソコン、携帯電話などのメモリバックアップ電源などの各種工業製品として、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0140】
1 ハイブリッドキャパシタ
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 セル槽
6 電解液
7 捕捉部材
8a 正極側集電体
8b 負極側集電体
9a 正極側塗工層
9b 負極側塗工層
10 貫通部
11a 正極側集電用タブ
11b 負極側集電用タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
前記正極に対して対向配置される負極と、
前記正極および前記負極が浸漬される電解液とを備え、
前記正極および/または前記負極は、少なくとも一辺を備えるとともに、その厚み方向を貫通する貫通部と、前記一辺の一部に形成される集電用タブとを備えており、
前記貫通部が、前記集電用タブに向かってスリット状に形成されていることを特徴とする、電気化学セル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−74164(P2013−74164A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212719(P2011−212719)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】