説明

電気化学デバイス

【課題】販売価格低減に有用な構造を有する表面実装型の電気化学デバイスを提供する。
【解決手段】表面実装型の電気化学デバイス10の容器11は、凹部11a1を有する第1金属部品11aと、凹部11a1の開口を閉塞するように第1金属部品11aに直接溶接された第2金属部品11bとから構成され、蓄電素子16の一方電極16aは容器11と電気的に絶縁し他方電極16bは容器11と電気的に導通しており、第1端子14は容器11と電気的に絶縁していると共に中継要素13を介して蓄電素子16の一方電極16aと電気的に導通し、第2端子15は容器11と電気的に導通していると共に容器11を介して蓄電素子16の他方電極16bと電気的に導通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に充放電可能な蓄電素子及び電解液を封入した構造を有する電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気化学デバイスの態様は現状において表面実装型(角型)とコイン型と薄型とシリンダ型に大別されるが、これらのうちの特に表面実装型の電気化学デバイス、換言すれば実装面に使用極性が異なる第1端子及び第2端子が設けられた電気化学デバイスは、回路基板等に対してチップコンデンサやチップインダクタ等の表面実装部品と同様の表面実装ができることから各種電子機器への利用頻度が高まり、且つ、需要も増加している。
【0003】
この表面実装型の電気化学デバイスは、下記特許文献1に開示されているように、容器と、容器内に封入された充放電可能な蓄電素子及び電解液と、実装面に相当する容器の下面に設けられた使用極性が異なる第1端子及び第2端子を備えている。
【0004】
容器は、凹部を有する絶縁部品と、絶縁部品の凹部を開口するための金属部品とから構成されており、絶縁部品はセラミックスから成り、金属部品はコバール(Fe−Ni−Co合金)から成る。また、金属部品を絶縁部品に接合するために、絶縁部品には凹部の開口を囲むようにしてコバールから成る溶接用リングが予め設けられている。金属部品はこの溶接用リングに溶接されることによって絶縁部品の凹部の開口を閉塞している。さらに、第1端子を蓄電素子の一方電極に電気的に導通し、且つ、第2端子を蓄電素子の他方電極に電気的に導通するために、絶縁部品には第1端子用配線と第2端子用配線がそれぞれ設けられている。
【0005】
つまり、前記電気化学デバイスにあっては、容器を構成する絶縁部品に溶接用リングと第1端子用配線及び第2端子用配線を設ける必要があることから、電気化学デバイスの製造コストにおいて容器の作製コスト、特に絶縁部品の作製コストが占める割合が高く、そのために電気化学デバイスの製造コスト、即ち、販売価格を下げることが難しい状況下にある。
【0006】
冒頭で述べたように、表面実装型の電気化学デバイスの需要は増加しており、また、この需要増加に伴ってユーザーから販売価格の低減が望まれている近況を考慮すれば、販売価格低減に繋がる構造改良はメーカーにおいて避けることができない重要な技術課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−186691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、販売価格低減に有用な構造を有する表面実装型の電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、容器と、前記容器内に封入された充放電可能な蓄電素子及び電解液と、実装面に相当する前記容器の下面に設けられた使用極性が異なる第1端子及び第2端子を備えた表面実装型の電気化学デバイスであって、前記容器は、凹部を有する第1金属部品と、前記第1金属部品の凹部の開口を閉塞するように該第1金属部品に直接溶接された第2金属部品とから構成されており、前記蓄電素子の一方電極は前記容器と電気的に絶縁し、前記蓄電素子の他方電極は前記容器と電気的に導通しており、前記第1端子は前記容器と電気的に絶縁していると共に前記容器と電気的に絶縁するように該容器に設けられた中継要素を介して前記蓄電素子の一方電極と電気的に導通し、前記第2端子は前記容器と電気的に導通していると共に該容器を介して前記蓄電素子の他方電極と電気的に導通している、ことをその特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容器が、凹部を有する第1金属部品と、第1金属部品の凹部の開口を閉塞するように該第1金属部品に直接溶接された第2金属部品とから構成されているため、従前のような溶接用リングを容器に設ける必要が無い。また、第2端子は容器と電気的に導通していると共に該容器を介して蓄電素子の他方電極と電気的に導通しているため、即ち、第2端子は容器を配線代替物として蓄電素子の他方電極と電気的に導通しているため、従前のような第2端子用配線を容器に設ける必要が無い。さらに、中継要素は第1端子を蓄電素子の一方電極に電気的に導通するための配線的な役割を為しているが、該中継要素の構造は極めて簡素である。つまり、電気化学デバイスの構造を従前の電気化学デバイスに比して簡略化することができ、該簡略化によって製造コスト低減、即ち、販売価格低減に大きく貢献できる。
【0011】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明を適用した電気化学デバイス(第1実施形態)の外観斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した電気化学デバイス(第1実施形態)のS11−S11線に沿う拡大断面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示した電気化学デバイス(第1実施形態)の第1変形形態を示す図2対応の断面図である。
【図4】図4は、図1及び図2に示した電気化学デバイス(第1実施形態)の第2変形形態を示す図2対応の断面図である。
【図5】図5(A)、図5(B)及び図5(C)は、図1及び図2に示した電気化学デバイス、図3に示した第1変形形態及び図4に示した第2変形形態に適用可能な第1部分変形例を示す図である。
【図6】図6は、図1及び図2に示した電気化学デバイス、図3に示した第1変形形態及び図4に示した第2変形形態に適用可能な第2部分変形例を示す図である。
【図7】図7(A)と図7(B)は、図1及び図2に示した電気化学デバイス、図3に示した第1変形形態及び図4に示した第2変形形態に適用可能な第3部分変形例を示す図である。
【図8】図8は、本発明を適用した電気化学デバイス(第2実施形態)の外観斜視図である。
【図9】図9は、図8に示した電気化学デバイス(第2実施形態)のS21−S21線に沿う拡大断面図である。
【図10】図10は、図8及び図9に示した電気化学デバイス(第2実施形態)の第1変形形態を示す図9対応の断面図である。
【図11】図11は、図8及び図9に示した電気化学デバイス(第2実施形態)及び図10に示した第1変形形態に適用可能な第1部分変形例を示す図である。
【図12】図12(A)及び図12(B)は、図8及び図9に示した電気化学デバイス(第2実施形態)及び図10に示した第1変形形態に適用可能な第2部分変形例を示す図である。
【図13】図13は、図8及び図9に示した電気化学デバイス(第2実施形態)及び図10に示した第1変形形態に適用可能な第3部分変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《第1実施形態》
図1及び図2は、本発明を適用した電気化学デバイス(第1実施形態)を示す。同図に示した電気化学デバイス10は、略直方体形状の容器11と、容器11内に封入された蓄電素子16及び電解液(図示省略)と、実装面に相当する容器11の下面に設けられた使用極性が異なる第1端子14及び第2端子15を備えている。
【0014】
容器11は、横断面輪郭が略矩形で上面側を開口した凹部11a1を有する略直方体形状の第1金属部品11aと、第1金属部品11aの凹部11a1の開口を閉塞するように該第1金属部品11aに直接溶接された平板状の第2金属部品11bとから構成されている。第2金属部品11bの下面輪郭は略矩形で、該下面輪郭は第1金属部品11aの上面輪郭と略一致している。
【0015】
第1金属部品11aはSUS304やSUS316等のステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属材料から成り、底板部に横断面輪郭が略円形の貫通孔11a2を有している。第1金属部品11aの厚さは好ましくは100〜150μmの範囲内にあり、貫通孔11a2の内径は好ましくは100〜300μmの範囲内にある。
【0016】
また、第1金属部品11aの表面の所定区域、具体的には、4つの外側面、第1端子接続口12a及び第2端子接続口12bを除く下面、貫通孔11a2の内周面、4つの内側面、第1端子接続口12aを除く内底面は、アルミナ、チタニア、シリカ、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の絶縁材料から成る絶縁膜12によって覆われている。絶縁膜12の厚さは好ましくは10〜50μmの範囲内にある。
【0017】
因みに、第1端子接続口12aは貫通孔11a2の内周面を覆う絶縁膜12によって画成された貫通孔部分を指し、また、第2端子接続口12bは第1金属部品11aの下面を覆う絶縁膜12に形成された孔部分を指す。
【0018】
さらに、第1金属部品11aには、蓄電素子16の一方電極16aを第1端子14に電気的に導通させるための中継要素13が形成されている。この中継要素13は、第1金属部品11aの凹部11a1の内底面を覆う絶縁膜12の上面に形成された膜状部13aと、第1端子接続口12aに充填された柱状部13bを有しており、膜状部13aの上面輪郭は蓄電素子16の一方電極16aの下面輪郭と略一致している。膜状部13aは銅、ニッケル、チタン、金、パラジウム等の金属材料から成り、その厚さは好ましくは10〜100μmの範囲内にある。膜状部13aは単層構造と多層構造の何れでも構わないが、何れも場合も電解液に対する耐蝕性向上のために最外層にアルミニウム膜やアルミニウムを含有した合金膜等を形成することが望ましい。柱状部13bは銅、ニッケル、チタン、金、パラジウム等の金属材料から成り、その外径は先に述べた貫通孔11a2の内径から絶縁膜12の厚さの2倍値を減じた数値範囲内にある。
【0019】
一方、第2金属部品11bはSUS304やSUS316等のステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属材料、好ましくは第1金属部品11aと同じ金属材料から成り、その厚さは好ましくは100〜150μmの範囲内にある。
【0020】
この第2金属部品11bはその下面外周部分11b1をレーザ溶接、シーム溶接等の溶接手法によって第1金属部品11aの上面外周部分11a3に水密、且つ、気密に接合されている。
【0021】
第1端子14は第1金属部品11aの下面を覆う絶縁膜12の下面にその下面輪郭が略矩形を成すように膜状に形成されており、その上面は中継要素13の柱状部13bの下面と電気的に導通している。図面には第1端子14としてその端部が第1金属部品11aの側面に回り込む態様を示してあるが、該回り込み部分は必ずしも必要ではない。
【0022】
この第1端子14は銅、ニッケル、チタン、金、パラジウム等の金属材料から成り、その厚さは好ましくは10〜100μmの範囲内にある。第1端子14は単層構造と多層構造の何れでも構わないが、何れも場合もハンダ付け性向上のために最外層にスズ膜やスズを含有した合金膜等を形成することが望ましい。
【0023】
一方、第2端子15は第1金属部品11aの下面を覆う絶縁膜12の下面にその下面輪郭が略矩形を成すように膜状に形成されており、第2端子接続口12bに入り込んだ第2端子15の一部15aを介して第1金属部品11aの下面と電気的に導通している。図面には第2端子15としてその端部が第1金属部品11aの側面に回り込む態様を示してあるが、該回り込み部分は必ずしも必要ではない。
【0024】
この第2端子15は銅、ニッケル、チタン、金、パラジウム等の金属材料から成り、その厚さは好ましくは10〜100μmの範囲内にある。第2端子15は単層構造と多層構造の何れでも構わないが、何れも場合もハンダ付け性向上のために最外層にスズ膜やスズを含有した合金膜等を形成することが望ましい。
【0025】
蓄電素子16は、使用極性が異なる一対の電極16a及び16bと、一対の電極16a及び16bの間に介装されたセパレータ16cとから構成されている。両電極16a及び16bは矩形輪郭と所定厚さを有し、セパレータ16cは両電極16a及び16bよりも僅かに大きな矩形輪郭と所定厚さを有する。両電極16a及び16bの厚さは第1金属部品11aの凹部11a1の内底面と第2金属部品11bの下面との間隔に応じて適宜設定されている。セパレータ26cはガラス繊維シートやセルロース繊維シートやプラチック繊維シート等のイオン透過性多孔質シートから成り、その厚さは好ましくは50〜200μmである。
【0026】
この蓄電素子16の一方電極16a(ここでは正極)の下面は導電性接着膜17を介して中継要素13の膜状部13aの上面に接着され、且つ、該中継要素13と電気的に導通しており、他方電極16b(ここでは負極)の上面は導電性接着膜18を介して第2金属部品11bの下面に接着され、且つ、該第2金属部品11bと電気的に導通している。
【0027】
因みに、導電性接着膜17及び18は導電性接着剤の硬化物であり、該導電性接着剤には導電性粒子を含有した熱硬化性接着剤(例えば炭素粒子(カーボンブラック)や黒鉛粒子(グラファイト粒子)等を含有したフェノール系接着剤)が用いられている。各導電性接着膜17及び18の厚さは好ましくは10〜100μmの範囲内にある。
【0028】
両電極16a及び16bに同種材料を用いた電気化学デバイス10、例えばPASキャパシタや活性炭キャパシタの場合、両電極16a及び16bは活性炭等の炭素系材料、または、ポリアセン系有機半金属(PAS)等の導電性高分子から成る。また、この場合の電解液(溶媒に電解質が溶解したもの)の溶媒にはプロピレンカーボネート、プロピレンカーボネート+スルホラン(混合溶媒)、プロピレンカーボネート+エチルイソプロピルスルホン(混合溶媒)、プロピレンカーボネート+スルホラン+プロピオン酸メチル(混合溶媒)、スルホラン+エチルメチルスルホン(混合溶媒)が好ましく使用でき、電解質には5−アゾニアスピロ[4,4]ノナン・BF4、TEMA・BF4、TEA・BF4、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・BF4、1−エチル−3−ジメチルイミダゾリウム・BF4が好ましく使用できる。
【0029】
また、両電極16a及び16bに異種材料を用いた電気化学デバイス10、例えばリチウムイオンキャパシタの場合、一方電極16a(ここでは正極)は例えば炭素系材料のうちの活性炭から成り、他方電極16b(ここでは負極)はリチウムイオンの吸蔵と脱離が可能な材料、例えば炭素系材料のうちの難黒鉛化炭素(ハードカーボン)や黒鉛(グラファイト)から成る。また、この場合の電解液(溶媒に電解質が溶解したもの)の溶媒にはプロピレンカーボネートやエチレンカーボネートやスルホランが好ましく使用でき、電解質にはLiPF6やLiBF4やLiClO4等のリチウム塩が好ましく使用できる。
【0030】
ここで、前記電気化学デバイス10の好ましい製造方法について説明する。製造に際しては、容器11を構成する第1金属部品11a及び第2金属部品11bと、蓄電素子16を構成する両電極16a及び16bとセパレータ16cを予め作製しておく。
【0031】
第1金属部品11aの作製には主に2通りの方法が採用できる。第1の作製方法としては、先ず、予め用意された金属プレートに貫通孔11a2に相当する貫通孔を打ち抜き加工やレーザ加工等の手法によって形成し、該金属プレートを所定サイズに切断する。次に、切断後の金属プレートの表面全体(貫通孔11a2の内周面を含む)に絶縁膜を形成し、該絶縁膜の一部(上面外周部分11a3と第2端子接続口12bに相当する部分)を除去する。絶縁膜の形成には陽極酸化、CVD、溶射、電着塗装等の手法が利用でき、絶縁膜の一部除去には化学エッチング、ブラスト加工等の手法が利用できる。勿論、絶縁膜の形成と一部除去の作業は、切断後の金属プレートの表面に予めマスキングを施してから絶縁膜を形成して、この後に該マスキングを除去する方法で代用できる。次に、絶縁膜を形成した後の金属プレートの所定領域に中継要素13の膜状部13aに相当する金属膜と第1端子14及び第2端子15に相当する金属膜をそれぞれ形成し、第1端子接続口12aに相当する貫通孔内に中継要素13の柱状部13bに相当する金属部分を充填し、第2端子接続口12bに相当する孔内に第2端子15の一部15aに相当する金属部分を充填する。膜状部13a、第1端子14及び第2端子15の形成には、金属ペーストの塗布及び焼付け、蒸着、メッキ等の手法が利用できる。膜状部13aまたは第1端子14に相当する金属膜を形成するときに、第1端子接続口12aに相当する貫通孔内に柱状部13bに相当する金属部分を充填できる場合には、該金属部分を充填する個別作業を省略できる。また、第2端子15に相当する金属膜を形成するときに、第2端子接続口12bに相当する孔内に一部15aに相当する金属部分を充填できる場合には、該金属部分を充填する個別作業を省略できる。次に、金属膜を形成し、且つ、金属部分を充填した後の金属プレートをプレス加工によって第1金属部品11aに対応した直方体形状に整形する。
【0032】
第2の作製方法としては、先ず、予め用意された金属プレートに貫通孔11a2に相当する貫通孔を打ち抜き加工やレーザ加工等の手法によって形成し、該金属プレートを所定サイズに切断する。次に、切断後の金属プレートをプレス加工によって第1金属部品11aに対応した直方体形状に整形してから、前記と同様に、絶縁膜を形成し、この後に金属膜を形成し、且つ、金属部分を充填する。
【0033】
第2金属部品11bの作製するに際しては、予め用意された金属プレートを所定サイズに切断する。
【0034】
両電極16a及び16bを作製するに際しては、各電極16a及び16bにそれぞれ適合した電極主材とバインダを少なくとも含む混合物を所定厚さに圧延したものを所定サイズに切断する。セパレータ16cを作製するに際しては、セパレータ用シート材を所定サイズに切断する。
【0035】
そして、予め作製された第1金属部品11a及び第2金属部品11bと両電極16a及び16bとセパレータ16cを用いて、前記電気化学デバイス10の組み立てを行う。
【0036】
組み立てに際しては、第1金属部品11aをその凹部11a1の開口が上を向くように載置し、中継要素13の膜状部13aの上面に導電性接着剤を塗布し、該導電性接着剤に一方電極16aの下面を相対的に押し当てて密着させ、この後に加熱処理によって導電性接着剤を硬化させると共に一方電極16aを乾燥し、該一方電極16aに電解液を注液する。そして、一方電極16aの上面にセパレータ16cを載置し、必要に応じて該セパレータ16cに電解液を注液する。
【0037】
これとは別に、第2金属部品11bの上面に導電性接着剤を塗布し、該導電性接着剤に他方電極16bの下面を相対的に押し当てて密着させ、この後に加熱処理によって導電性接着剤を硬化させると共に他方電極16bを乾燥し、該他方電極16bに電解液を注液する。
【0038】
続いて、第2金属部品11bを上下反転させてから、他方電極16bの下面をセパレータ16cの上面に載置すると共に、第2金属部品11bの下面外周部分11b1を第1金属部品11aの上面外周部分11a3に載置する。続いて、第1金属部品11aに対して第2金属部品11bを相対的に押し付けた状態で、第1金属部品11aの上面外周部分11a3と第2金属部品11bの下面外周部分11b1とを溶接する。
【0039】
前記電気化学デバイス10によれば、以下の効果(E11)及び(E12)を発揮することができる。
【0040】
(E11)容器11が、凹部11a1を有する第1金属部品11aと、第1金属部品11aの凹部11a1の開口を閉塞するように該第1金属部品11aに直接溶接された第2金属部品11bとから構成されているため、従前のような溶接用リングを容器11に設ける必要が無い。また、第2端子15は容器11と電気的に導通していると共に該容器11を介して蓄電素子16の他方電極16bと電気的に導通しているため、即ち、第2端子15は容器11を配線代替物として蓄電素子16の他方電極16bと電気的に導通しているため、従前のような第2端子用配線を容器11に設ける必要が無い。さらに、中継要素13は第1端子14を蓄電素子16の一方電極16aに電気的に導通するための配線的な役割を為しているが、該中継要素13の構造は極めて簡素である。つまり、電気化学デバイス10の構造を従前の電気化学デバイスに比して簡略化することができ、この構造簡略化によって製造コスト低減、即ち、販売価格低減に大きく貢献できる。
【0041】
(E12)従前のような溶接用リングを容器11に設ける必要が無いため、該溶接用リングの部品コストに加えて、該溶接用リングをろう付けするための作業コスト及びろう付け部分に保護メッキ膜を形成するための作業コスト等も不要になる。つまり、電気化学デバイス10の製造コストをより一層低減して販売価格低減を確実に図れる。
【0042】
〈第1変形形態〉
図3は、前記電気化学デバイス10の第1変形形態を示す。同図に示した電気化学デバイス10-1が前記電気化学デバイス10と構造面で異なるところは、容器11の第2金属部品11b’が下面外周部分11b1の内側に上側張り出し部11b2が形成された形状を有する点にある。他の構造は前記電気化学デバイス10と同じであるため、同一符号を引用してその説明を省略する。
【0043】
第2金属部品11b’の厚さは上側張り出し部11b2を含み略一定で、該厚さは好ましくは100〜150μmの範囲内にある。また、上側張り出し部11b2の下面は他方電極16bの上面輪郭と略一致した輪郭を有し、該他方電極16bの上面は導電性接着膜18を介して上側張り出し部11b2の下面に接着され、且つ、第2金属部品11b’と電気的に導通している。図3から分かるように、第2金属部品11b’の下面には上側張り出し部11b2による凹部が形成されていて、該凹部に蓄電素子16の他方電極16bが若干入り込んでいる。
【0044】
因みに、この第2金属部品11b’は、先に述べた所定サイズの金属プレートをプレス加工によって部分変形させることによって作製できる。
【0045】
この電気化学デバイス10-1によれば、前記効果(E11)及び(E12)に加えて以下の効果(E13)及び(E14)を発揮することができる。
【0046】
(E13)容器11の第2金属部品11b’が下面外周部分11b1の内側に上側張り出し部11b2が形成された形状を有しているため、第2金属部品11b’自体の機械的強度を前記電気化学デバイス10の第2金属部品11bに比べて向上できると共に容器11自体の機械的強度向上も図れる。
【0047】
(E14)第2金属部品11b’の下面の凹部に蓄電素子16の他方電極16bが若干入り込んだ構造となるため、該凹部の内周壁を利用して他方電極16bを第2金属部品11b’に接着する際の相互位置決めを的確に行えると共に接着後の他方電極16bの位置ずれ防止も図れる。
【0048】
〈第2変形形態〉
図4は、前記電気化学デバイス10の第2変形形態を示す。同図に示した電気化学デバイス10-2が前記電気化学デバイス10と構造面で異なるところは、容器11の第2金属部品11b”が下面外周部分11b1の内側に下側張り出し部11b3が形成された形状を有する点にある。他の構造は前記電気化学デバイス10と同じであるため、同一符号を引用してその説明を省略する。
【0049】
第2金属部品11b”の厚さは下側張り出し部11b3を含み略一定で、該厚さは好ましくは100〜150μmの範囲内にある。また、下側張り出し部11b3の下面は他方電極16bの上面輪郭と略一致した輪郭を有し、該他方電極16bの上面は導電性接着膜18を介して下側張り出し部11b3の下面に接着され、且つ、第2金属部品11b”と電気的に導通している。図4から分かるように、第1金属部品11aに溶接された第2金属部品11b”の下側張り出し部11b3は、該第1金属部品11aの凹部11a1に入り込んでいる。
【0050】
因みに、この第2金属部品11b”は、先に述べた所定サイズの金属プレートをプレス加工によって部分変形させることによって作製できる。
【0051】
この電気化学デバイス10-2によれば、前記効果(E11)及び(E12)に加えて以下の効果(E15)及び(E16)を発揮することができる。
【0052】
(E15)容器11の第2金属部品11b”が下面外周部分11b1の内側に下側張り出し部11b3が形成された形状を有しているため、第2金属部品11b”自体の機械的強度を前記電気化学デバイス10の第2金属部品11bに比べて向上できると共に容器11自体の機械的強度向上も図れる。
【0053】
(E16)第1金属部品11aの凹部11a1に第2金属部品11b”の下側張り出し部11b3が入り込んだ構造となるため、該下側張り出し部11b3の外周壁を利用して第2金属部品11b”を第1金属部品11aに溶接する際の相互位置決めを的確に行える。
【0054】
〈第1部分変形例〉
図5(A)、図5(B)及び図5(C)は、前記電気化学デバイス10、前記第1変形形態10-1及び前記第2変形形態10-2に適用可能な第1部分変形例を示す。図5(A)は前記電気化学デバイス10に対応する部分変形例図であって、第2金属部品11bの下面に、該下面露出部分(電解液が直接接触する部分)を覆うように、且つ、第1金属部品11aの絶縁膜12のうちの4つの内側面の上端と連続するように絶縁膜19aが設けられている。図5(B)は前記第1変形形態10-1に対応する部分変形例図であって、第2金属部品11b’の下面に、該下面露出部分(電解液が直接接触する部分)を覆うように、且つ、第1金属部品11aの絶縁膜12のうちの4つの内側面の上端と連続するように絶縁膜19bが設けられている。図5(C)は前記第2変形形態10-2に対応する部分変形例図であって、第2金属部品11b”の下面に、該下面露出部分(電解液が直接接触する部分)を覆うように、且つ、第1金属部品11aの絶縁膜12のうちの4つの内側面の上端と連続するように絶縁膜19bが設けられている。
【0055】
この第1部分変形例を採用すれば、第2金属部品11b、11b’及び11b”が電解液と直接接触することを絶縁膜19a〜19cによって完全に防止できるので、電解液の直接接触によって第2金属部品11b、11b’及び11b”に腐食を生じる恐れがある場合でも該恐れを確実に回避できる。
【0056】
〈第2部分変形例〉
図6は、前記電気化学デバイス10、前記第1変形形態10-1及び前記第2変形形態10-2に適用可能な第2部分変形例を示す。図6は前記電気化学デバイス10、前記第1変形形態10-1及び前記第2変形形態10-2で共通の部分変形例図であって、容器11の第1金属部品11a’としてその底板部の略中央に上側張り出し部11a4が設けられている。
【0057】
この第2部分変形例を採用すれば、第1金属部品11b’自体の機械的強度を前記第1金属部品11aに比べて向上できると共に容器11自体の機械的強度向上も図れる。図6には上側張り出し部11a4の上面面積が一方電極16aの下面面積よりも小さいものを示してあるが、第1端子接続口12a、第2端子接続口12b、柱状部13b、第1端子14及び第2端子15等を図中左右両側に寄せれば、上側張り出し部11a4の上面面積を一方電極16aの下面面積と略同じにすることもできる。
【0058】
〈第3部分変形例〉
図7(A)と図7(B)は、前記電気化学デバイス10、前記第1変形形態10-1及び前記第2変形形態10-2に適用可能な第2部分変形例を示す。図7(A)は前記電気化学デバイス10、前記第1変形形態10-1及び前記第2変形形態10-2で共通の部分変形例図であって、第1金属部品11aの上面外周部分11a3’が斜面によって構成され、且つ、第2金属部品11bの下面外周部分11b1’が略同一角度の斜面によって構成されている。また、図7(B)は前記電気化学デバイス10、前記第1変形形態10-1及び前記第2変形形態10-2で共通の部分変形例図であって、第1金属部品11aの上面外周部分11a3”が斜面を有する鍔によって構成され、且つ、第2金属部品11bの下面外周部分11b1”が略同一角度の斜面を有する鍔によって構成されている。
【0059】
この第3部分変形例を採用すれば、第1金属部品11aの上面外周部分11a3’及び11a3”と第2金属部品11bの下面外周部分11b1’及び11b”との接触面積を拡大して、溶接手法による接合面積増加を図ることができると共に、第1金属部品11aと第2金属部品11bの位置決めを両者の斜面を利用して的確に行うことができる。
【0060】
《第2実施形態》
図8及び図9は、本発明を適用した電気化学デバイス(第2実施形態)を示す。同図に示した電気化学デバイス20は、略直方体形状の容器21と、容器21内に封入された蓄電素子26及び電解液(図示省略)と、実装面に相当する容器21の下面に設けられた使用極性が異なる第1端子24及び第2端子25を備えている。
【0061】
容器21は、横断面輪郭が略矩形で下面側を開口した凹部21a1を有する略直方体形状の第1金属部品21aと、第1金属部品21aの凹部21a1の開口を閉塞するように該第1金属部品21aに直接溶接された平板状の第2金属部品21bとから構成されている。第2金属部品21bの上面輪郭は略矩形で、該上面輪郭は第1金属部品21aの下面輪郭と略一致している。
【0062】
第1金属部品21aはSUS304やSUS316等のステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属材料から成り、その厚さは好ましくは100〜150μmの範囲内にある。
【0063】
また、第1金属部品21aの表面の所定区域、具体的には、4つの外側面、上面、4つの内側面は、アルミナ、チタニア、シリカ、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の絶縁材料から成る絶縁膜22a及び22bによって覆われている。絶縁膜22a及び22bの厚さは好ましくは10〜50μmの範囲内にある。
【0064】
一方、第2金属部品21bはSUS304やSUS316等のステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属材料、好ましくは第1金属部品21aと同じ金属材料から成り、横断面輪郭が略円形の貫通孔21b1を有している。第2金属部品21bの厚さは好ましくは100〜150μmの範囲内にあり、貫通孔21b1の内径は好ましくは100〜300μmの範囲内にある。
【0065】
また、第2金属部品21bの表面の所定区域、具体的には、第1端子接続口22c1及び第2端子接続口22c2を除く下面、貫通孔21b1の内周面、上面外周部分21b2及び第1端子接続口22c1を除く上面は、アルミナ、チタニア、シリカ、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の絶縁材料から成る絶縁膜22cによって覆われている。絶縁膜23cの厚さは好ましくは10〜50μmの範囲内にある。
【0066】
因みに、第1端子接続口22c1は貫通孔21b1の内周面を覆う絶縁膜22によって画成された貫通孔部分を指し、また、第2端子接続口22c2は第2金属部品21bの下面を覆う絶縁膜23cに形成された孔部分を指す。
【0067】
さらに、第2金属部品21bには、蓄電素子26の一方電極26aを第1端子24に電気的に導通させるための中継要素23が形成されている。この中継要素23は、第2金属部品21bの上面を覆う絶縁膜23cの上面に形成された膜状部23aと、第1端子接続口22c1に充填された柱状部23bを有しており、膜状部23aの上面輪郭は蓄電素子26の一方電極26aの下面輪郭と略一致している。膜状部23aは銅、ニッケル、チタン、金、パラジウム等の金属材料から成り、その厚さは好ましくは10〜100μmの範囲内にある。膜状部23aは単層構造と多層構造の何れでも構わないが、何れも場合も電解液に対する耐蝕性向上のために最外層にアルミニウム膜やアルミニウムを含有した合金膜等を形成することが望ましい。柱状部23bは銅、ニッケル、チタン、金、パラジウム等の金属材料から成り、その外径は先に述べた貫通孔21b1の内径から絶縁膜23cの厚さの2倍値を減じた数値範囲内にある。
【0068】
この第2金属部品21bはその上面外周部分21b2をレーザ溶接、シーム溶接等の溶接手法によって第1金属部品21aの下面外周部分21a2に水密、且つ、気密に接合されている。
【0069】
第1端子24は第2金属部品21bの下面を覆う絶縁膜23cの下面にその下面輪郭が略矩形を成すように膜状に形成されており、その上面は中継要素23の柱状部23bの下面と電気的に導通している。
【0070】
この第1端子24は銅、ニッケル、チタン、金、パラジウム等の金属材料から成り、その厚さは好ましくは10〜100μmの範囲内にある。第1端子24は単層構造と多層構造の何れでも構わないが、何れも場合もハンダ付け性向上のために最外層にスズ膜やスズを含有した合金膜等を形成することが望ましい。
【0071】
一方、第2端子25は第2金属部品21bの下面を覆う絶縁膜23cの下面にその下面輪郭が略矩形を成すように膜状に形成されており、第2端子接続口22c2に入り込んだ第2端子25の一部25aを介して第2金属部品21bの下面と電気的に導通している。
【0072】
この第2端子25は銅、ニッケル、チタン、金、パラジウム等の金属材料から成り、その厚さは好ましくは10〜100μmの範囲内にある。第2端子25は単層構造と多層構造の何れでも構わないが、何れも場合もハンダ付け性向上のために最外層にスズ膜やスズを含有した合金膜等を形成することが望ましい。
【0073】
蓄電素子26は、使用極性が異なる一対の電極26a及び26bと、一対の電極26a及び26bの間に介装されたセパレータ26cとから構成されている。両電極26a及び26bは矩形輪郭と所定厚さを有し、セパレータ26cは両電極26a及び26bよりも僅かに大きな矩形輪郭と所定厚さを有する。両電極26a及び26bの厚さは第1金属部品21aの凹部21a1の内底面と第2金属部品21bの上面との間隔に応じて適宜設定されている。セパレータ26cはガラス繊維シートやセルロース繊維シートやプラチック繊維シート等のイオン透過性多孔質シートから成り、その厚さは好ましくは50〜200μmである。
【0074】
この蓄電素子26の一方電極26a(ここでは正極)の下面は導電性接着膜27を介して中継要素23の膜状部23aの上面に接着され、且つ、該中継要素23と電気的に導通しており、他方電極26b(ここでは負極)の上面は導電性接着膜28を介して第1金属部品の21aの凹部21a1の内底面に接着され、且つ、該第1金属部品21aと電気的に導通している。
【0075】
因みに、導電性接着膜27及び28は導電性接着剤の硬化物であり、該導電性接着剤には導電性粒子を含有した熱硬化性接着剤(例えば炭素粒子(カーボンブラック)や黒鉛粒子(グラファイト粒子)等を含有したフェノール系接着剤)が用いられている。各導電性接着膜27及び28の厚さは好ましくは10〜100μmの範囲内にある。
【0076】
両電極26a及び26bに同種材料を用いた電気化学デバイス20、例えばPASキャパシタや活性炭キャパシタの場合、両電極26a及び26bは活性炭等の炭素系材料、または、ポリアセン系有機半金属(PAS)等の導電性高分子から成る。また、この場合の電解液(溶媒に電解質が溶解したもの)の溶媒にはプロピレンカーボネート、プロピレンカーボネート+スルホラン(混合溶媒)、プロピレンカーボネート+エチルイソプロピルスルホン(混合溶媒)、プロピレンカーボネート+スルホラン+プロピオン酸メチル(混合溶媒)、スルホラン+エチルメチルスルホン(混合溶媒)が好ましく使用でき、電解質には5−アゾニアスピロ[4,4]ノナン・BF4、TEMA・BF4、TEA・BF4、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・BF4、1−エチル−3−ジメチルイミダゾリウム・BF4が好ましく使用できる。
【0077】
また、両電極26a及び26bに異種材料を用いた電気化学デバイス20、例えばリチウムイオンキャパシタの場合、一方電極26a(ここでは正極)は例えば炭素系材料のうちの活性炭から成り、他方電極26b(ここでは負極)はリチウムイオンの吸蔵と脱離が可能な材料、例えば炭素系材料のうちの難黒鉛化炭素(ハードカーボン)や黒鉛(グラファイト)から成る。また、この場合の電解液(溶媒に電解質が溶解したもの)の溶媒にはプロピレンカーボネートやエチレンカーボネートやスルホランが好ましく使用でき、電解質にはLiPF6やLiBF4やLiClO4等のリチウム塩が好ましく使用できる。
【0078】
ここで、前記電気化学デバイス20の好ましい製造方法について説明する。製造に際しては、容器21を構成する第1金属部品21a及び第2金属部品21bと、蓄電素子26を構成する両電極26a及び26bとセパレータ26cを予め作製しておく。
【0079】
第1金属部品21aの作製には主に2通りの方法が採用できる。第1の作製方法としては、先ず、予め用意された金属プレートを所定サイズに切断する。次に、切断後の金属プレートの表面全体に絶縁膜を形成し、該絶縁膜の一部(凹部21a1の内底面と下面外周部分21a2に相当する部分)を除去する。絶縁膜の形成には陽極酸化、CVD、溶射、電着塗装等の手法が利用でき、絶縁膜の一部の除去には化学エッチング、ブラスト加工等の手法が利用できる。勿論、絶縁膜の形成と一部除去の作業は、切断後の金属プレートの表面に予めマスキングを施してから絶縁膜を形成して、この後に該マスキングを除去する方法で代用できる。次に、絶縁膜を形成した後の金属プレートをプレス加工によって第1金属部品21aに対応した直方体形状に整形する。
【0080】
第2の作製方法としては、所定サイズの平板状母材をプレス加工によって第1金属部品21aに対応した直方体形状に整形してから、前記と同様に、絶縁膜を形成する。
【0081】
第2金属部品21bの作製するに際しては、先ず、予め用意された金属プレートに貫通孔21b1に相当する貫通孔を打ち抜き加工やレーザ加工等の手法によって形成し、該金属プレートを所定サイズに切断する。次に、切断後の金属プレートの表面全体(貫通孔21b1の内周面を含む)に絶縁膜を形成し、該絶縁膜の一部(上面外周部分21b2と第2端子接続口22c2に相当する部分)を除去する。絶縁膜の形成には陽極酸化、CVD、溶射、電着塗装等の手法が利用でき、絶縁膜の一部除去には化学エッチング、ブラスト加工等の手法が利用できる。勿論、絶縁膜の形成と一部除去の作業は、切断後の金属プレートの表面に予めマスキングを施してから絶縁膜を形成して、この後に該マスキングを除去する方法で代用できる。次に、絶縁膜を形成した後の金属プレートの所定領域に中継要素23の膜状部23aに相当する金属膜と第1端子24及び第2端子25に相当する金属膜をそれぞれ形成し、第1端子接続口22c1に相当する貫通孔内に中継要素23の柱状部23bに相当する金属部分を充填し、第2端子接続口22c2に相当する孔内に第2端子15の一部15aに相当する金属部分を充填する。膜状部23a、第1端子24及び第2端子25の形成には、金属ペーストの塗布及び焼付け、蒸着、メッキ等の手法が利用できる。膜状部23aまたは第1端子24に相当する金属膜を形成するときに、第1端子接続口22c1に相当する貫通孔内に柱状部23bに相当する金属部分を充填できる場合には、該金属部分を充填する個別作業を省略できる。また、第2端子25に相当する金属膜を形成するときに、第2端子接続口22c2に相当する孔内に一部25aに相当する金属部分を充填できる場合には、該金属部分を充填する個別作業を省略できる。
【0082】
両電極26a及び26bを作製するに際しては、各電極26a及び26bにそれぞれ適合した電極主材とバインダを少なくとも含む混合物を所定厚さに圧延したものを所定サイズに切断する。セパレータ26cを作製するに際しては、セパレータ用シート材を所定サイズに切断する。
【0083】
そして、予め作製された第1金属部品21a及び第2金属部品21bと両電極26a及び26bとセパレータ16cを用いて、前記電気化学デバイス20の組み立てを行う。
【0084】
組み立てに際しては、第1金属部品21aを上下反転させてその凹部21a1の開口が上を向くように載置し、凹部21a1の内底面に導電性接着剤を塗布し、該導電性接着剤に他方電極26bの下面を相対的に押し当てて密着させ、この後に加熱処理によって導電性接着剤を硬化させると共に他方電極26bを乾燥し、該他方電極26bに電解液を注液する。そして、他方電極26bの上面にセパレータ16cを載置し、必要に応じて該セパレータ26cに電解液を注液する。
【0085】
これとは別に、第2金属部品11bの中継要素23の膜状部23aの上面に導電性接着剤を塗布し、該導電性接着剤に一方電極26aの下面を相対的に押し当てて密着させ、この後に加熱処理によって導電性接着剤を硬化させると共に一方電極26aを乾燥し、該一方電極26aに電解液を注液する。
【0086】
続いて、第2金属部品21bを上下反転させてから、一方電極26aの下面をセパレータ26cの上面に載置すると共に、第2金属部品21bの下面外周部分(上面外周部分21b2に相当)を第1金属部品21aの上面外周部分(下面外周部分21a2に相当)に載置する。続いて、第1金属部品21aに対して第2金属部品21bを相対的に押し付けた状態で、第1金属部品21aの上面外周部分(下面外周部分21a2に相当)と第2金属部品21bの下面外周部分(上面外周部分21b2に相当)とを溶接し、溶接後に全体を上下反転させる。
【0087】
前記電気化学デバイス20によれば、以下の効果(E21)及び(E22)を発揮することができる。
【0088】
(E21)容器21が、凹部21a1を有する第1金属部品21aと、第1金属部品21aの凹部21a1の開口を閉塞するように該第1金属部品21aに直接溶接された第2金属部品21bとから構成されているため、従前のような溶接用リングを容器21に設ける必要が無い。また、第2端子25は容器21と電気的に導通していると共に該容器21を介して蓄電素子26の他方電極26bと電気的に導通しているため、即ち、第2端子25は容器21を配線代替物として蓄電素子26の他方電極26bと電気的に導通しているため、従前のような第2端子用配線を容器21に設ける必要が無い。さらに、中継要素23は第1端子24を蓄電素子26の一方電極26aに電気的に導通するための配線的な役割を為しているが、該中継要素23の構造は極めて簡素である。つまり、電気化学デバイス20の構造を従前の電気化学デバイスに比して簡略化することができ、この構造簡略化によって製造コスト低減、即ち、販売価格低減に大きく貢献できる。
【0089】
(E22)従前のような溶接用リングを容器21に設ける必要が無いため、該溶接用リングの部品コストに加えて、該溶接用リングをろう付けするための作業コスト及びろう付け部分に保護メッキ膜を形成するための作業コスト等も不要になる。つまり、電気化学デバイス20の製造コストをより一層低減して販売価格低減を確実に図れる。
【0090】
〈第1変形形態〉
図10は、前記電気化学デバイス20の第1変形形態を示す。同図に示した電気化学デバイス20-1が前記電気化学デバイス20と構造面で異なるところは、容器21の第2金属部品21b’が上面外周部分21b2の内側に下側張り出し部21b3が形成された形状を有する点にある。他の構造は前記電気化学デバイス20と同じであるため、同一符号を引用してその説明を省略する。
【0091】
第2金属部品21b’の厚さは下側張り出し部21b3を含み略一定で、該厚さは好ましくは100〜150μmの範囲内にある。また、下側張り出し部21b3の上面は一方電極26aの下面輪郭と略一致した輪郭を有し、該一方電極26aの下面は導電性接着膜27を介して中継要素23の膜状部23aの上面に接着され、且つ、該中継要素23と電気的に導通している。図7から分かるように、第2金属部品21b’の上面には下側張り出し部21b3による凹部が形成されていて、該凹部に蓄電素子26の一方電極26aが若干入り込んでいる。
【0092】
因みに、この第2金属部品21b’は、先に述べた所定サイズの貫通孔付き金属プレートに絶縁膜22c、中継要素23、第1端子24及び第2端子25を前記同様に形成した後に、これをプレス加工によって部分変形させることによって作製できる他、所定サイズの貫通孔付き金属プレートをプレス加工によって部分変形させた後に、これに絶縁膜22c、中継要素23、第1端子24及び第2端子25を前記同様に形成することによって作製できる。
【0093】
この電気化学デバイス20-1によれば、前記効果(E21)及び(E22)に加えて以下の効果(E23)及び(E24)を発揮することができる。
【0094】
(E23)容器21の第2金属部品21b’が上面外周部分21b2の内側に下側張り出し部21b3が形成された形状を有しているため、第2金属部品21b’自体の機械的強度を前記電気化学デバイス20の第2金属部品21bに比べて向上できると共に容器21自体の機械的強度向上も図れる。
【0095】
(E24)第2金属部品21b’の上面の凹部に蓄電素子26の一方電極26aが若干入り込んだ構造となるため、該凹部の内周壁を利用して一方電極26aを第2金属部品11b’に接着する際の相互位置決めを的確に行えると共に接着後の一方電極26aの位置ずれ防止も図れる。
【0096】
〈第1部分変形例〉
図11は、前記電気化学デバイス20及び前記第1変形形態20-1に適用可能な第1部分変形例を示す。図11は前記電気化学デバイス20及び前記第1変形形態10-1で共通の部分変形例図であって、第1金属部品21aの内側上面に、該上面露出部分(電解液が直接接触する部分)を覆うように、且つ、第1金属部品21aの絶縁膜22bの上端から内側上面に延びる延長部分22b1が設けられている。
【0097】
この第1部分変形例を採用すれば、第2金属部品21aが電解液と直接接触することを絶縁膜22bの延長部分21b1によって完全に防止できるので、電解液の直接接触によって第2金属部品21aに腐食を生じる恐れがある場合でも該恐れを確実に回避できる。
【0098】
〈第2部分変形例〉
図12(A)と図12(B)は、前記電気化学デバイス20及び前記第1変形形態20-1に適用可能な第2部分変形例を示す。図12(A)は前記電気化学デバイス20及び前記第1変形形態20-1で共通の部分変形例図であって、容器21の第1金属部品21a’としてその上板部の略中央に上側張り出し部21a3が設けられている。図12(B)は前記電気化学デバイス20及び前記第1変形形態20-1で共通の部分変形例図であって、容器21の第1金属部品21a”としてその上板部の略中央に下側張り出し部21a3が設けられている。
【0099】
この第2部分変形例を採用すれば、第2金属部品21a’及び21a”自体の機械的強度を前記第1金属部品21aに比べて向上できると共に容器11自体の機械的強度向上も図れる。
【0100】
〈第3部分変形例〉
図13は、前記電気化学デバイス20及び前記第1変形形態20-1に適用可能な第3部分変形例を示す。図13は前記電気化学デバイス20及び前記第1変形形態20-1で共通の部分変形例図であって、第1金属部品21aの下面外周部分21a2’が斜面によって構成され、且つ、第2金属部品21bの上面外周部分21b2’が略同一角度の斜面によって構成されている。図示を省略したが、図7(B)に示した部分変形例と同様に、第1金属部品21aの下面外周部分21a2’が斜面を有する鍔によって構成され、且つ、第2金属部品21bの上面外周部分21b2’が略同一角度の斜面を有する鍔によって構成されていても良い。
【0101】
この第3部分変形例を採用すれば、第1金属部品21aの下面外周部分21a2’と第2金属部品21bの上面外周部分21b2’との接触面積を拡大して、溶接手法による接合面積増加を図ることができると共に、第1金属部品21aと第2金属部品21bの位置決めを両者の斜面を利用して的確に行うことができる。
【0102】
《他の部分変形例》
(1)前記の第1実施形態、第1変形形態及び第2変形形態と、前記の第2実施形態及び第1変形形態では、中継要素13及び23の膜状部13a及び23aとしてその上面輪郭が蓄電素子16及び26の一方電極16a及び26aの下面輪郭と略一致したものを示したが、膜状部13a及び23aの上面輪郭は、一方電極16a及び26aの下面輪郭よりも小さくても良いし、一方電極16a及び26aの下面輪郭(矩形)と異なる形、例えば略楕円形や略円形であっても良い。
【0103】
(2)前記の第1実施形態、第1変形形態及び第2変形形態と、前記の第2実施形態及び第1変形形態では、第2端子15及び25の一部15a及び25aを第2端子接続口12b及び22c2に入り込ませたものを示したが、第2端子接続口12b及び22c2の大きさを第2端子15及び25の形成領域に対応する大きさ以上に拡大して、第2端子15の第1金属部品11aと向き合う面全体を該第2金属容器11aに密着させても良いし、第2端子25の第2金属容器21b及び21b’と向き合う面全体を該第2金属容器21b及び21b’に密着させても良い。
【0104】
(3)前記の第1実施形態、第1変形形態及び第2変形形態と、前記の第2実施形態及び第1変形形態では、表面実装型の電気化学デバイス10、10-1、10-2、20及び20-1として容器11及び21が略直方体形状を成すものを示したが、容器の形状を略直方体形状(略四角柱形状)以外の形状、例えば略円柱形状や略楕円柱形状に変えても前記同様の効果を得ることができる。
【0105】
因みに、前記電気化学デバイス10の容器11を略円柱形状とする場合、該容器11は、横断面が略矩形で上面側を開口した凹部11a1を有する略円柱形状の第1金属部品11aと、第1金属部品11aの凹部11a1の開口を閉塞するように該第1金属部品11aに直接溶接された略円板状の第2金属部品11bとから構成されることになる。また、前記電気化学デバイス10の容器11を略楕円柱形状とする場合、該容器11は、横断面が略矩形で上面側を開口した凹部11a1を有する略楕円柱形状の第1金属部品11aと、第1金属部品11aの凹部11a1の開口を閉塞するように該第1金属部品11aに直接溶接された略楕円板状の第2金属部品11bとから構成されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、先に述べた電気化学デバイスに限らず、容器内に充放電可能な蓄電素子及び電解液を封入した構造を有する他の電気化学デバイスに幅広く適用でき、該適用によって前記[発明を解決しようとする課題]に記した目的を達成できる。
【符号の説明】
【0107】
10,10-1,10-2…電気化学デバイス、11…容器、11a…第1金属部品、11a1…凹部、11a2…貫通孔、11a3…上面外周部分、11b,11b’,11b”…第2金属部品、11b1…下面外周部分、11b2…上側張り出し部、11b3…下側張り出し部、12…絶縁膜、13…中継要素、13a…膜状部、13b…柱状部、14……第1端子、15…第2端子、16…蓄電素子、16a…一方電極、16b…他方電極、16c…セパレータ、20,20-1…電気化学デバイス、21…容器、21a…第1金属部品、21a1…凹部、21a2…下面外周部分、21b,21b’…第2金属部品、21b1…貫通孔、21b2…上面外周部分、21b3…下側張り出し部、22a,22b,22c…絶縁膜、23…中継要素、23a…膜状部、23b…柱状部、24……第1端子、25…第2端子、26…蓄電素子、26a…一方電極、26b…他方電極、26c…セパレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、前記容器内に封入された充放電可能な蓄電素子及び電解液と、実装面に相当する前記容器の下面に設けられた使用極性が異なる第1端子及び第2端子を備えた表面実装型の電気化学デバイスであって、
前記容器は、凹部を有する第1金属部品と、前記第1金属部品の凹部の開口を閉塞するように該第1金属部品に直接溶接された第2金属部品とから構成されており、
前記蓄電素子の一方電極は前記容器と電気的に絶縁し、前記蓄電素子の他方電極は前記容器と電気的に導通しており、
前記第1端子は前記容器と電気的に絶縁していると共に前記容器と電気的に絶縁するように該容器に設けられた中継要素を介して前記蓄電素子の一方電極と電気的に導通し、前記第2端子は前記容器と電気的に導通していると共に該容器を介して前記蓄電素子の他方電極と電気的に導通している、
ことを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記蓄電素子の一方電極と前記容器との電気的絶縁と、前記中継要素と前記容器との電気的絶縁が、前記容器の表面の所定区域に形成された絶縁膜によって為されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記第1金属部品はその上面側に凹部の開口を有し、前記第2金属部品はその下面外周部分を第1金属部品の上面外周部分に溶接されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記第2金属部品は平板状である、
ことを特徴とする請求項3に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記第2金属部品は下面外周部分の内側に上側張り出し部が形成された形状を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記第2金属部品は下面外周部分の内側に下側張り出し部が形成された形状を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記第1金属部品はその下面側に凹部の開口を有し、前記第2金属部品はその上面外周部分を第1金属部品の下面外周部分に溶接されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
前記第2金属部品は平板状である、
ことを特徴とする請求項7に記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
前記第2金属部品は上面外周部分の内側に下側張り出し部が形成された形状を有する、
ことを特徴とする請求項7に記載の電気化学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−58665(P2013−58665A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196858(P2011−196858)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】