説明

電気化学的測定方法および新規p−フェニレンジアミン化合物

【目的】測定感度が良好で、試料が血液等の妨害物質を含有するものであっても、安定的に再現性の良好な測定を行え、使い捨ての用途にも好適に利用することができる電気化学的測定方法、およびこれに用いる新規p−フェニレンジアミン化合物を提供する。
【構成】酸化還元酵素を用いた電気化学的測定方法において、測定系に酸化還元酵素、電子伝達物質、および前記電子伝達物質と電子移動可能な電極を配し、前記電子伝達物質として、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、ホスホノオキシ基およびスルホ基からなる群より選ばれる1以上の基を有するp−フェニレンジアミン誘導体またはその塩、あるいは、前述の基を有するアルキル基ならびに水素原子を有するp−フェニレンジアミン誘導体またはその塩を用いることにより、前記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子伝達物質を用いた電気化学的測定方法および新規なp−フェニレンジアミン化合物に関する。詳しくは、少なくとも1つの酸化還元酵素、電極、および所定の電子伝達物質(electron mediator)を有する系によって、液性試料中の分析対象物を測定する電気化学的測定方法、例えば、酵素電極法あるいは特異結合分析方法、ならびに、この電気化学的測定方法に利用可能な新規p−フェニレンジアミン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】酵素電極法とは、一般に酵素固定化膜と電極とを組み合わせた装置を使用して、酵素の分子識別能を利用して化学物質を選択的に測定する方法であり、生化学的分析方法の分野では、酵素センサー等を用いた簡便で迅速な測定方法が既に開示されている。一例をあげると、特公平2−59424号、特開昭60−17346号、同60−17347号の各公報に開示される測定方法が例示される。他方、特異結合分析法としては、抗原抗体反応を応用したイムノアッセイ、受容体を用いたレセプターアッセイ、相補的核酸配列のハイブリダイゼーションを用いた核酸プローブアッセイなど多くの方法が知られており、その特異性の高さから、臨床検査をはじめとする広い分野で繁用されている。
【0003】一方、電気化学センサーの特異結合分析方法への応用の試みも積極的に行われている。例えば、特開昭58−58467号公報には、酵素(カタラーゼ)標識抗体を用いた電極表面での特異結合反応が; 特開平2−179461号公報には、酵素(グルコースオキシダーゼ)標識物を用いた電極表面での競合的特異結合反応が; 特開昭60−17360号公報には、酸化還元酵素(グルコースオキシダーゼなど)と電子メディエータ(フェロセン誘導体など)を用いた特異結合反応が; それぞれ開示されている。さらに、これらと同様な技術として、特開平3−25360号、特開昭60−127450号、同60−242361号、同63−139248号、特表昭61−500706号の各公報や、米国特許第4,963,245号、米国特許第5,066,372号の各明細書、さらには、Anal.Chem.,Vol.56,2355-2360(1984) やClin.Chem.,Vol.31,1449-1452(1985) 等に各種の開示がある。
【0004】このような酵素電極法や特異結合分析法のうち、電流計測型の酵素電極法および電気化学センサーを用いた特異結合分析法等においては、酵素などの生物学的な酸化還元反応と電極反応とを媒介する低分子化合物、いわゆる電子伝達物質が汎用されている。すなわち、電子伝達物質とは、少なくとも1つの酸化還元酵素、および系内において電子移動可能な電極を用いる測定系において、酵素反応と電極反応との間の電子の伝達移動を媒介する化合物である。
【0005】このような電子伝達物質は、酵素反応で「還元/酸化」され、電極反応で「酸化/還元」されるものであり、この2つの反応間を循環して、酵素反応から電極反応あるいは電極反応から酵素反応への電子が伝達移動するのを媒介する。そのため、このような電子伝達物質には、■酵素反応によって効率よく酸化あるいは還元される化合物であること;
■電極反応で酸化あるいは還元され、再び、酵素反応が利用できる状態へ戻ること;
■酵素反応あるいは電極反応によって酸化あるいは還元された化合物が安定であること; 等の特性を有することが要求される。
さらに、酵素反応と電極反応との間の電子の移動を媒介する電子伝達物質は、作用極の測定可能範囲内の電位で酸化還元される必要がある。電極の種類や溶液条件で電極の測定可能範囲(電位窓)は異なるが、カーボン電極では通常、−1.2V〜+1.0V(vs.SCE)程度が好ましい。
【0006】これらの電子伝達物質としては、フェロセン誘導体などの有機金属化合物(英国特許8132034号公報)、フェリ(あるいはフェロ)シアン化カリウムなどの無機化合物や、p−フェニレンジアミン(PPD)誘導体などの有機化合物等、多数のものが知られている。例えば、p−フェニレンジアミン(PPD)誘導体であるN,N,N′,N′−テトラメチル−p−フェニレンジアミン(TMPD)は、亜硫酸(sulfite) イオンを硫酸(sulfate) イオンに酸化する反応を触媒するsulfite oxidase と電極との間の電子移動を媒介(メディエート)することが知られている(Anal.Chem.,1993,65,242-246)。また、WO92/07263号公報には、還元型が水に難溶性である電子伝達物質として、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モルフォリニル基、ピペリジル基を1,4位に有するベンゼン誘導体が開示されている。
【0007】一方、PPD誘導体であるN,N,N′,N′−テトラキス−(2′−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン(THEPD)およびN,N,N′,N′−テトラキスカルボキシメチル−p−フェニレンジアミン(TCPD)は、従来、感光材料・キレート剤として用いられていた(Photographic Science and Engineering 1962,vol.6,No.1,p39 ; Nature 1964,vol.204,p180 ; Z.Chem.1964,vol.4,No.11,p436 ; Z.Chem. 1964,vol.4,No.12,p463 ; An.Quin.Ser.B 1963,vol.59,No7-8,p501 ; An.Quin.Ser.B 1965,vol.61,No.5,p717 ; An.Quin.Ser.B 1965,vol.61,No.5,p723 ; An.Quin.Ser.B 1963,vol.59,No.7-8,p493 ; An.Quin.Ser.B 1986,vol.82,No.2,p133 ; Research Disclosure 1981,vol.212,p428 )。また、THEPDは、パーオキシダーゼ、ナフトール誘導体および過酸化水素の存在下で反応させると、そのラジカルとナフトール誘導体とが結合して発色物質を形成することから、パーオキシダーゼ反応の呈色試薬として利用可能であることが知られていた(欧州特許0504663号公報)。しかしながら、THEPDおよびTCPDが前記の特性を有する電子伝達物質として機能することは知られていなかった。
【0008】ところで、電子伝達物質を用いた測定方法において、従来の電子伝達物質の主たる用途は酵素電極であるので、前述のWO92/07263号公報に記載されているように、水に難溶性である電子伝達物質が好まれている。なぜならば、電極に固定化あるいは不溶化された酸化還元酵素と電極との電子移動を媒介する場合において安定な電気化学的信号を得るためには、電子伝達物質を電極近傍に存在させて、試料液中に電子伝達物質が流出しないようにする必要があるからである。また、電子伝達物質が試料中のアスコルビン酸、尿酸、ヘモグロビン、酸素等の妨害物質の影響を受けやすい化合物である場合には、電子伝達物質を水に不溶性の化合物として電極内に存在させ、妨害物質との接触を避ける必要がある。しかしながら、この方法では電子伝達物質が電極内に存在しているので反応の場が限定され、電極内の電子伝達物質と有効に接触できる酵素のみが反応に関与できるに過ぎず、一般に信号強度が小さくなるという欠点を有していた。
【0009】他方、最近では、フェリシアン化カリウムなどの水溶性の電子伝達物質を使用する使い捨て型の酵素電極分析片も開発された(特開平1−156658号公報参照)。水溶性の電子伝達物質は、ある程度電極から離れた位置の酵素と電極との間の電子移動も媒介できるため、有効な酵素分子数が増大し酵素電極の特性向上が可能となる。このような使い捨て型の酵素電極分析片では、電極の動作に必要な成分をあらかじめ分析片の中に組み込んでおき、検体試料を添加するだけで測定が可能であることが望ましい。そのため、電子伝達物質としては、水溶性が高く、かつ、乾燥が容易で乾燥状態で安定であることが望まれる。水溶性のフェロセン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体などの金属錯体の電子伝達物質は、これらの条件をある程度満足する。しかし、これらは酵素との間で電子を交互に伝達し移動する速度が小さく、速度を早くするためには、高濃度の電子伝達物質を必要とするという欠点が残されている。また、水溶性の電子伝達物質は検体試料液中で反応するため、アスコルビン酸、尿酸、ヘモグロビン、酸素等の検体試料中の妨害物質の影響を受けやすい。そのため、妨害物質による影響の少ない化合物の開発が望まれている。
【0010】さらに、最近、酸化還元酵素を標識剤とし、液体試料と共にマトリクス中に展開することにより、液体試料中の分析対象物と特異結合物質との特異結合反応によって標識剤の電極部からの距離分布を形成させ、電子伝達物質の拡散に律速された液体試料中の分析対象物の濃度に対応する電流値を計測し、これによって分析対象物濃度を測定する特異結合分析方法としてMEDIA法(Mediator Diffusion-Controlled Immunoassay) が知られている(特開平5−264552号公報(欧州特許公開公報 0 525 723 A2 号)参照)。このような測定法においても、妨害物質を含有する血液や尿などの試料液中で、酵素と電極間の安定な電子伝達を媒介できる電子伝達物質が望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、水溶性の電子伝達物質を用いた電気化学的な測定方法、例えば、酵素電極法あるいは例えばMEDIA法のような特異結合分析方法等の測定方法において、測定感度(応答性)が良好で、試料が血液や尿等の妨害物質を含有するものであっても、常に安定して再現性の良好な測定を行うことができ、しかも、使い捨ての用途にも好適に利用することができる電気化学的測定方法、およびこの電気化学的測定方法に電子伝達物質として用いることができる新規p−フェニレンジアミン化合物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】電子伝達物質を用いた測定方法、より詳細には、電極と少なくとも1つの酸化還元酵素とを用いて液性試料中の分析対象物を定量する測定方法において、利用される酸化還元酵素の代表例としては以下のようなものがある。
■酸化酵素(オキシダーゼ)
生体中では、酸素を電子受容体としており、フラビン補酵素、金属原子、ヘムなどを含有する。
例:グルコースオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼなど。
■ヒドロペルオキシダーゼ生体中では、過酸化水素を受容体とする。
例:パーオキシダーゼ、カタラーゼなど。
■脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)
生体中では、NAD(H)、NADP(H)を受容体(あるいは供与体)とする。
例:アルコールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼなど。
【0013】これらの酸化還元酵素のうち、グルコースオキシダーゼ(GOD)は血糖値測定用の酵素電極に使用されており、西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRPO)はDNAハイブリダイゼーションや免疫測定法などの特異結合分析方法の標識酵素として使用されている。本発明者らの実験によれば、グルコースオキシダーゼ、西洋ワサビパーオキシダーゼはいずれもハイドロキノン(HQ)/ベンゾキノン(BQ)を電子伝達物質とした時に緩衝液中で良好な電流応答を示し、フェロセン誘導体、無機イオン、金属錯体などの従来の電子伝達物質よりも特性が優れていた。しかし、これらの電子伝達物質は、血液・尿などが存在すると干渉を受け、再現性の良い安定な応答が認められなかった。また、p−フェニレンジアミン(PPD)、TMPD、N,N,N′,N′−テトラエチル−p−フェニレンジアミン(TEPD)など、緩衝液中で良好な電流応答を示すPPD系の電子伝達物質も、血液・尿などの存在下では同様な干渉が認められた。
【0014】さらに、使い捨て型の分析片を製造する目的で、HQ、PPD、TMPDあるいはTEPDの溶液をセルロース濾紙あるいはガラス濾紙などに含浸し、電極上で乾燥(凍結乾燥、減圧乾燥、風乾等)するか、あるいは乾燥後に電極上に設置して、測定時に試料によって溶解するように構成した場合には、電流応答が小さくなり、極めて悪い特性しか示さない。
【0015】本発明者らの詳細な研究の結果、これらの現象の主要な原因として次のような問題点の存在が推定された。
■電子伝達物質となる化合物の酸化型もしくは還元型化合物の水に対する溶解度が低い。
■電子伝達物質となる化合物の蒸気圧が高く、乾燥後の安定性が悪い。
■電子伝達物質となる化合物の酸化型(あるいはラジカル状態)もしくは還元型化合物の生体試料、例えば血液・尿中での安定性が悪い。
【0016】本発明者らは、このような問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、酸化還元酵素と、この酸化還元酵素と電子の伝達が可能な電子伝達物質と、この電子伝達物質との間で電子移動可能な電極とを有する系において、電子伝達物質として下記式[I]または[II]で示される化合物またはその塩を用いることにより、生体成分の各種測定方法に好適に用いることができることを見い出した。すなわち、本発明者らは鋭意検討の結果、式[I]または式[II]の化合物またはその塩は、酵素電極法あるいは例えばMEDIA法のような特異結合分析方法等の電気化学的測定において、優れた電子伝達物質として作用し、しかも、水溶性が高い; 乾燥(凍結乾燥、減圧乾燥、風乾等)が容易でかつ乾燥状態で安定である: 酵素との電子移動速度が大きい; 血液や尿などの検体試料中の妨害物質の影響が少ない電子伝達物質として機能する; 等の優れた特性を有することを見い出し、本発明を成すに至った。
【0017】本発明は、少なくとも1つの酸化還元酵素を用いて液性試料中の分析対象物を測定する測定方法において、その測定系に酸化還元酵素、電子伝達物質、および前記電子伝達物質と電子移動可能な電極を配し、前記電子伝達物質として、下記式[I]または[II]で示される化合物またはその塩を用いることを特徴とする電気化学的測定方法を提供する。
【0018】式[I]は、下記の構造を有するものでる。
【化6】


(上記式[I]中、R1 、R2 、R3 およびR4 は、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1ないし4の直鎖もしくは分枝鎖を有するアルキル基を示す。但し、上記式[I]において、R1 、R2 、R3 およびR4 のうち少なくとも1つは、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、ホスホノオキシ基およびスルホ基からなる群より選ばれる1以上の基を有する。また、R1 、R2 、R3 およびR4 は、同一であっても互いに異なるものであってもよい。)
【0019】ここで上記式[I]において、R1 、R2 、R3 およびR4 のうち少なくとも1つは、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有するのが好ましく、特に、下記に示される化合物の1以上が好ましい。
【化7】


【0020】式[II]は下記の構造を有するものである。
【化8】


(上記式[II]中、R5 、R6 、R7 およびR8 は、水素原子または、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1ないし4の直鎖もしくは分枝鎖を有するアルキル基を示す。但し、上記式[II]において、R5 、R6 、R7 およびR8 は同一であっても互いに異なるものであってもよく、このうち少なくとも1つは、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、ホスホノオキシ基およびスルホ基からなる群より選ばれる1以上の基を有するアルキル基であり、少なくとも1つが水素原子である。)
【0021】ここで上記式[II]で、R5 、R6 、R7 およびR8 のうち少なくとも1つは、ヒドロキシル基を有するのが好ましく、下記の化合物が例示される。
【化9】


【0022】また、前記分析対象物が前記酸化還元酵素の基質、補因子、アクチベータあるいはインヒビターであり、この基質、補因子、アクチベータあるいはインヒビター量に応じて生じる酵素反応の変調を前記電極における電気化学的信号の変調として検出するのが好ましい。
【0023】また、前記分析対象物に対する特異結合物質を少なくとも一種用い、前記酸化還元酵素を標識物質として用いた特異結合反応によって、前記分析対象物を測定するのが好ましい。
【0024】さらに、MEDIA法を利用した例、つまり前記分析対象物を含有することが予想される液性試料が展開される領域であるマトリクス、前記マトリクスに試料を導入する試料導入部、および前記マトリクスに実質的に接した電極を有する装置を用い、試料を前記試料導入部に導入し、前記マトリクス内で、前記試料中の分析対象物と、第1の特異結合物質および電極部で信号を発生する電子伝達物質種を生成できる酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質とを反応させる;あるいは、前記マトリクス外で、前記試料中の分析対象物と、第1の特異結合物質および電極部において信号を発する電子伝達物質種を生成できる酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質とを反応させてから、前記マトリクスに導入する; ことにより、前記酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質と分析対象物との複合体、酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質と分析対象物と第1の特異結合物質との複合体、あるいは複合体を形成していない酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質のうち、少なくとも1つの分子種の分布を変化させ、試料中の分析対象物量に対応する前記分布変化を、酸化還元酵素によって生成する電子伝達物質種の物質移動に律速される電極における信号の変調として検出するのが好ましい。
【0025】また、MEDIA法を利用したもう1つの例、つまり前記分析対象物を含有することが予想される液性試料が展開される領域であるマトリクス、前記マトリクスに試料を導入する試料導入部、および前記マトリクスに実質的に接した電極を有する装置を用い、前記分析対象物に対する特異結合物質、あるいは特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質のいずれか一方が、前記電極で信号を発生する電子伝達物質種を生成できる酸化還元酵素で標識されており、試料を前記試料導入部に導入し、前記マトリクス内で、前記試料中の分析対象物と、特異結合物質および特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質とを競合的に反応させる; あるいは、前記マトリクス外で、前記試料中の分析対象物と、特異結合物質および特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質とを競合的に反応させてから、前記マトリクスに導入する; ことにより、前記特異結合物質と分析対象物との複合体、特異結合物質と特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質との複合体、複合体を形成していない特異結合物質、あるいは複合体を形成していない特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質のうち、少なくとも1つの酸化還元酵素で標識された分子種の分布を変化させ、試料中の分析対象物量に対応する前記分布変化を、酸化還元酵素によって生成する電子伝達物質種の物質移動に律速される電極における信号の変調として検出するのが好ましい。
【0026】以下、本発明の電気化学的測定方法および電気化学的測定方法に利用可能な新規p−フェニレンジアミン化合物についてより詳細に説明する。前述のように、本発明の電気化学的測定方法(以下、測定方法とする)は、少なくとも1つの酸化還元酵素、電子伝達物質、および前記電子伝達物質と電子移動可能な電極を測定系に有するものであり、電子伝達物質として、下記式[I]または[II]で示される化合物またはその塩を用いる。
【0027】
【化10】


【0028】式[I]において、R1 、R2 、R3 およびR4 は、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1ないし4の直鎖もしくは分枝鎖を有するアルキル基を示すものであり、また、R1 、R2 、R3 およびR4 のうち少なくとも1つは、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、ホスホノオキシ基およびスルホ基からなる群より選ばれる1以上の基を有する。式[II]において、R5 、R6 、R7 およびR8 は、水素原子またはそれぞれ置換基を有してもよい炭素数1ないし4の直鎖もしくは分枝鎖を有するアルキル基を示すものであり、また、R5 、R6 、R7 およびR8 のうち少なくとも1つは、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、ホスホノオキシ基およびスルホ基からなる群より選ばれる1以上の基を有するアルキル基であり、少なくとも一つは水素原子である。
【0029】本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記式[I]または式[II]で示される化合物が電気化学的測定で電子伝達物質として良好に作用することを初めて見出した。さらに、上記式[I]または式[II]で示される化合物が、R1 〜R8の少なくとも一つに、ヒドロキシル基・メルカプト基・カルボキシル基・ホスホノオキシ基およびスルホ基からなる群より選ばれた1以上の基を有する場合には、得られる化合物は蒸気圧が低くかつ水に対する溶解性が高いため、乾燥(凍結乾燥、減圧乾燥、風乾等)が容易でかつ乾燥状態で安定で、試料液の添加で直ちに溶解して良好な応答を示すことも見出した。すなわち、この化合物は、各種濾紙等の多孔質材に含浸・乾燥して、使い捨ての用途にも好適に利用可能である;血液や尿などの検体試料中の妨害を低減できる; 酵素との電子移動反応が大きく妨げられず、良好な電流応答を示す: 等の電子伝達物質に要求される特性を良好に有することも同時に見出した。従って、上記式[I]または[II]の化合物を電子伝達物質として利用する本発明の測定方法によれば、測定感度(応答性)が良好で、使い捨ての用途にも好適に利用することができ、しかも、試料が血液や尿等の妨害物質を含有するものであっても、常に安定して再現性の良好な測定を行うことが可能である。
【0030】上記式[I]の化合物において、R1 、R2 、R3 およびR4 としては上記要件を満たす公知の基が全て利用可能であるが、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−(1−ヒドロキシ)プロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−(1,3−ジヒドロキシ)プロピル基、3−ヒドロキシ−2−メチルプロピル基、メルカプトメチル基、カルボキシメチル基、ホスホノオキシメチル基およびスルホメチル基等が好適に例示される。中でも、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−(1−ヒドロキシ)プロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基等が特に好適に例示される。また、R1 、R2 、R3 およびR4 は同一であっても互いに異なるものであってもよい。
【0031】上記式[II]の化合物において、R5 、R6 、R7 およびR8 としては上記要件を満たす公知の基が全て利用可能であるが、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−(1−ヒドロキシ)プロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−(1,3−ジヒドロキシ)プロピル基、3−ヒドロキシ−2−メチルプロピル基、メルカプトメチル基、カルボキシメチル基、ホスホノオキシメチル基およびスルホメチル基等が好適に例示される。中でも、水素原子、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−(1−ヒドロキシ)プロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基等が特に好適に例示される。また、R5 、R6 、R7 およびR8 は同一であっても互いに異なるものであってもよく、少なくとも一つはアルキル基で少なくとも一つは水素原子である。
【0032】本発明の測定方法において、このような式[I]または式[II]に示される化合物としては、具体的には、下記(1)〜(27)の各化合物が例示される。
【0033】
【化11】


【0034】
【化12】


【0035】
【化13】


【0036】中でも特に、(1)に示されるN,N,N′,N′−テトラキス−(2′−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン(THEPD)、(2)に示されるN,N,N′,N′−テトラキスカルボキシメチル−p−フェニレンジアミン(TCPD)、(3)に示されるN,N,N′,N′−テトラキス−(2′,3′−ジヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン(TDHPD)、(11)に示されるN−2′−ヒドロキシエチル−N,N′,N′−トリエチル−p−フェニレンジアミン(HTEPD)、(12)に示されるN,N−ビス−(2′−ヒドロキシエチル)−N,N′−ジエチル−p−フェニレンジアミン(N,N−BHDPD)、(13)に示されるN,N′−ビス−(2′−ヒドロキシエチル)−N,N′−ジエチル−p−フェニレンジアミン(N,N′−BHDPD)等は好適に利用される。また、(21)に示されるN,N′−ビス−(2′−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン(N,N′−BHPD)、および(24)に示されるN−2′−ヒドロキシプロピル−p−フェニレンジアミン(HPPD)も好適に利用される。
【0037】さらに、下記式で示される化合物も好適に利用可能である。
【化14】


【0038】このような式[I]または式[II]で示される電子伝達物質は、公知の各種の方法で合成することができる。合成方法の一例を挙げれば、p−フェニレンジアミンと、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 あるいはR8 に対応する化合物のハロゲン化物とをアルコール等の溶媒に溶解して、加熱下で還流して反応し、得られた目的物を濾過やカラムクロマトグラフィー等によって分離精製する方法が例示される。また、R1 〜R8 の2位の炭素にヒドロキシル基を有する化合物を合成する場合は、p−フェニレンジアミンとエチレンオキサイド誘導体とを溶媒に溶解し、加熱下で還流して反応し、得られた目的物を濾過、カラムクロマトグラフィー等によって分離精製する方法が例示される。
【0039】本発明の測定方法においては、式[I]または式[II]で示される電子伝達物質の塩も好適に利用可能である。具体的には、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等が例示される。また、式[I]または式[II]で示される電子伝達物質がカルボキシル基、ホスホノオキシ基、およびスルホ基からなる群より選ばれる1以上の基を有する場合、そのナトリウム塩やカリウム塩等も好適に使用される。中でも特に、THEPDの塩酸塩、TCPDの塩酸塩、TDHPDの塩酸塩等は好適に使用される。
【0040】式[I]または式[II]で示される電子伝達物質は、酸化還元酵素あるいは電極によって酸化還元されて、酸化状態の電子伝達物質種あるいは還元状態の電子伝達物質種となる。酸化還元酵素による酸化還元反応によって、酸化状態の電子伝達物質種が生成する場合には、生成された酸化状態の電子伝達物質種は電極反応によって還元状態に戻り、その時、電極では還元電流が信号として検出される(図1(a))。逆に、酸化還元酵素による酸化還元反応によって、還元状態の電子伝達物質種が生成する場合には、生成された還元状態の電子伝達物質種は電極反応によって酸化状態に戻り、その時、電極では酸化電流が信号として検出される(図1(b))。すなわち、本発明の測定方法においては、図1R>1(a)および図1(b)のどちらにおいても、酸化状態あるいは還元状態のいずれの電子伝達物質種から反応が始まっても、同等の効果がある。従って、式[I]または式[II]で示される電子伝達物質としては、電子伝達物質が酸化状態の電子伝達物質種、あるいは電子伝達物質が還元状態の電子伝達物質種が含まれる。
【0041】本発明の測定方法において、このような式[I]または式[II]で示される電子伝達物質の使用量には特に限定はなく、使用する電極、酸化還元酵素、測定対象物質の種類や量等に応じて適宜決定すればよい。
【0042】また、本発明の測定方法において、式[I]または式[II]で示される電子伝達物質は各種の状態で使用することができる。例えば、測定系に直接溶解・混合して使用する方法、乾燥あるいは凍結乾燥して測定時に溶解して使用する方法、電極のペースト中に存在させる方法、緩衝液等に溶解して濾紙に含浸して乾燥して測定時に試料溶液等で溶解する方法等が例示される。いずれの場合であっても、この電子伝達物質が有する優れた水溶性、乾燥性および乾燥後の安定性、電流応答性、さらに検体試料中の妨害物質の影響が低いこと等によって、良好な電気化学的測定を実現することが可能である。
【0043】本発明の測定方法は、少なくとも1つの酸化還元酵素を利用した電気化学的測定を行うものである。本発明に利用される酸化還元酵素には特に限定はなく、測定目的物の種類等に応じて、各種の酸化還元酵素が選択・使用される。具体的には、グルコースオキシダーゼ、西洋ワサビパーオキシダーゼ等のパーオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、NAD(P)Hオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ビルビン酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ヌクレオシドオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、ジアフォラーゼ等が好適に使用される。中でも特に、血糖値測定用としてのグルコースオキシダーゼ、特異結合分析方法に用いる標識酵素としての西洋ワサビパーオキシダーゼ等は好適に使用される。また、酸化還元酵素の使用量にも特に限定はなく、使用する電極、電子伝達物質、測定対象物の種類や量等に応じて適宜決定すればよい。
【0044】本発明の測定方法に使用される電極としては、酵素電極法や特異結合分析法などの電気化学的測定に通常使用される各種の電極が例示される。具体的には、グラッシーカーボン(glassy carbon) 電極、パイロリティックグラファイト(pyrolytic graphite)電極、カーボンペースト(carbon paste)電極、カーボンファイバー(carbon fiber)電極などのカーボン電極、白金電極、金電極、ITO電極などの導電性透明電極、TiO2などの酸化物電極、機能性化合物で修飾された修飾電極等が例示される。本発明の測定方法においては、導電性カーボンインクを用いてスクリーン印刷等で基板上にパターン印刷された電極が、その応用性の広さから特に好適に使用される。また、電極の形状(平面電極、多孔性電極など)や大きさにも特に限定はなく、測定対象物質の種類や量、測定試料の量や特性(例えば粘度など)、測定用途や条件等に応じて適宜決定すればよい。
【0045】基本的に、このような酸化還元酵素、電子伝達物質、および電極を有する系で行われる本発明の測定方法は、酵素電極法や特異結合分析法等の、公知の各種の電気化学的な測定に好適に利用可能である。具体的には、電流計測型の酵素センサ、免疫センサ、核酸センサなどに利用可能である。より具体的には、酵素センサを用いた血中グルコース,コレステロール,尿酸,乳酸等の測定、特異結合分析法を用いたヒト絨毛性腺刺激ホルモン(hCG),黄体形成ホルモン(LH),ヒト胎盤ラクトゲン(hPL),エストロゲン等の各種ホルモンの測定、HBs抗体,HBs抗原,HBc抗体,HBe抗原,HCV抗体,HIV抗体等の各種ウイルス関連の抗原・抗体の測定、各種アレルゲンに対応する特異IgE抗体の測定、AFP,CEA等の腫瘍マーカーの測定、β2 m,CRP等の各種血中蛋白,薬物,およびこれらの代謝産物の測定、ウイルスおよび腫瘍関連のポリヌクレチオド配列の測定等が利用例として好適に例示される。
【0046】本発明の測定方法は、周知の酵素電極法や特異結合分析法等の各種の電気化学的な測定を、通常の測定と同様の方法で実施することができる。本発明の測定方法は、式[I]または式[II]で示される電子伝達物質の有する優れた水溶性、乾燥性および乾燥安定性等を生かして、セルロース濾紙やガラス濾紙等に電子伝達物質を含浸させて乾燥させた分析片を作製し、この電子伝達物質を測定時に試料溶液によって溶解してマトリクス内を拡散移動させ、信号である電子を伝達する物質として作用させるような、使い捨ての測定装置には特に好適に利用される。
【0047】図2に、本発明の測定方法を実施する例として、MEDIA法を利用した、使い捨てタイプの特異結合反応測定装置を示す。なお、この測定装置における分析方法の詳細な説明は、特開平5−264552号公報に詳述されている。
【0048】図2に示される測定装置は、上から、上部カバー10、フィルター12、標識抗体含浸部14、電子伝達物質含浸部16、連通部材18、電極部20、マトリクス22、吸収部24、および下部基板26を有して構成され、図3に示されるように、各部材が上記順番で積み重ねられて組み合わされて構成される。また、フィルター12、標識抗体含浸部14、電子伝達物質含浸部16および連通部材18によって試料導入部38が構成される。なお、本発明の測定方法を利用する測定装置は、これらの各部材を全て有するものに限定はされず、前記特開平5−264552号公報に記載される構成も各種利用可能である。
【0049】上部カバー10は、アクリル、ポリ塩化ビニル、ガラス、ポリスチレン、ABS樹脂、エポキシ樹脂等の各種の合成樹脂によって成形されるものであり、中心部分には試料を注入するための試料導入口10aが形成される。フィルター12は、試料に含まれる測定に不要な固形物(妨害物質)を除去すると共に、試料の導入が均一に行えるようにするものであって、通常、織布や不織布等によって形成される。
【0050】標識抗体含浸部14は、ガラス繊維濾紙,セルロース繊維濾紙,不織布等に、本発明の構成要素の一つである酸化還元酵素標識抗体を含浸・乾燥してなるものである。つまり、試料が標識抗体含浸部14を通過することにより、酸化還元酵素標識抗体が溶出して分析対象物と酸化還元酵素標識抗体とが混合され、あるいは反応が開始される。
【0051】電子伝達物質含浸部16は、ガラス繊維濾紙,セルロース繊維濾紙,不織布等に本発明の特徴的な要素である電子伝達物質を含浸・乾燥してなるものである。試料が電子伝達物質含浸部16を通過することにより、電子伝達物質が溶出して試料と混合される。なお、本発明の測定方法においては、電子伝達物質として式[I]または式[II]で示される化合物を使用するので、電子伝達物質の乾燥性および乾燥安定性が良好で、しかも迅速に溶出して混合するのは前述のとおりである。図示例の装置においては、好ましい態様として、電子伝達物質含浸部16の上面中心部分には水が通過不可能なシール部16aが形成される。このシール部16aを有することにより、標識抗体含浸部14までは鉛直方向であった試料の流れを水平方向に変更することができ、試料の流れ時間を長くして反応時間を十分に確保することが可能になると共に、混合効果によって反応効率が上り、より正確な測定を行うことができる。シール部16aの形成材料および形成方法には特に限定はなく、塩化ビニルやセルロースアセテート等の各種の水不透性材料を、接着剤、例えばアクリル系接着剤等の手段を用いて電子伝達物質含浸部16の中心部分に貼着すればよい。
【0052】図示例の測定装置においては、酸化還元酵素標識抗体を保持する標識抗体含浸部14、および電子伝達物質を保持する電子伝達物質含浸部16が別々に形成されるものであるが、本発明に利用される測定装置は、この構成以外にも、酸化還元酵素標識抗体と電子伝達物質の両者を保持する試薬含浸部とする構成であってもよい。また、図示例の測定装置においては、電子伝達物質は電子伝達物質含浸部16に保持されているが、前述のように、式[I]または式[II]で示される電子伝達物質は、良好な乾燥性および水溶性を有するので、これ以外、例えば、後述するマトリクス22や吸収部24等に保持されていても、良好な測定が可能である。
【0053】連通部材18は、電子伝達物質含浸部16を通過した試料等を電極部20の所定位置を通過させてマトリクス22に導入するものであり、ガラス繊維濾紙やセルロース繊維濾紙等より形成される。このような連通部材18は、後述する電極部20の貫通孔30に挿入されて配置される。
【0054】電極部20は、本発明の構成要素の一つである測定用の電極を有するものであり、図示例の装置においては、図2および図4に示されるように、絶縁性の基板28に円形の貫通孔30を形成し、基板28上面の貫通孔30周囲に参照極(対極)32およびその端子32aが、基板28下面の貫通孔30周囲に検出用電極である作用極34およびその端子34aが、それぞれ形成される。測定時には両極の端子は外部の測定器に接続されている。また、参照極32および作用極34以外の電子伝達物質含浸部16および後述するマトリクス22が接触する部分には、電極部20の基板28の上下面共に、図4に斜線で示されるように絶縁層36が形成されている。
【0055】検出用電極である作用極34は前述の各種の材料によって形成される。参照極32は、銀/塩化銀電極等である。基板28は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエステル等の公知の各種の絶縁性材料で形成される。絶縁層36は、アクリル系樹脂、ポリエステル等の公知の各種の絶縁性インク材料で形成される。なお、図示例の装置において、作用極34、参照極32および絶縁層36は、共に、スクリーン印刷やドクターナイフ等の厚膜形成技術、スパッタリングやCVD等の薄膜形成技術等の公知の膜形成技術によって形成すればよい。
【0056】マトリクス22は、液体試料中の分析対象物と酸化還元酵素標識抗体との特異結合で生じた酵素標識体を分布させる場であり、この標識体の作用極34からの距離分布が、前述の電子伝達物質を介して電流値として測定される。このようなマトリクス22は、例えば、メンブレン等の多孔質膜に、特異結合反応のための抗体や抗原、核酸等を、不溶化して保持・乾燥してなるものである。試料がこのマトリクス22に流入し、不溶化抗体と分析対象物との間の特異結合反応がおこり、酵素標識体の分布が変化すると、酵素反応によって生成する電子伝達物質種が拡散移動し、作用極34によって反応に対応した電気化学的変調として検出される。また、余剰の試料は、このマトリクス22を通過して後述の吸収部24で吸収される。
【0057】吸収部24は、前述のようにマトリクス22を通過した余剰の試料を吸収するもので、例えば、クロマトグラフ濾紙などのセルロース濾紙、高吸水性ポリマーで形成される。なお、図示例の装置においては、この吸収部24は酵素反応の基質含浸部としても機能し、上述の材料に過酸化水素−尿素乾燥体等の酵素反応基質を保持してなるものである。図示例の装置においては、好ましい態様として吸収部24の上面中心部分に水が通過不可能なシール部24aが形成される。前述のシール部16aと同様、シール部24aを有することにより、鉛直方向であった試料の流れを水平方向に変更することができ、試料の流れ時間を長くして、特異結合反応の効率を向上させると共に、マトリクス内の標識体分布が明瞭になり、より正確な測定を実現することができる。なお、シール部24aは、前述のシール部16aと同様に形成される。
【0058】図示例の測定装置は、これらの各部材を図2R>2および図3に示される順序で、下部基板26上に積層して構成される。下部基板26は、上部カバー10と同様、アクリル等の各種の樹脂材料によって形成される。
【0059】このような測定装置においては、試料は上部カバー10に形成される試料導入口10aより注入される。試料導入口10aより注入された試料は、フィルター12を通過して異物等を除去され、標識抗体含浸部14に流入する。標識抗体含浸部14においては、試料が流入することによって乾燥・保持された酸化還元酵素標識抗体が溶出して試料と混合され、あるいは分析対象物と酸化還元酵素標識抗体との特異結合反応が開始される。
【0060】試料は、次いで、電子伝達物質含浸部16に流入する。前述のように、電子伝達物質含浸部16には電子伝達物質が乾燥・保持されているので、試料の流入によって、電子伝達物質が溶出して試料と混合される。なお、図示例の装置においては、電子伝達物質含浸部16の上面にはシール部16aが形成されるので、試料の流れ方向が鉛直方向から水平方向に変更され、十分な反応時間が確保できるのは前述のとおりである。
【0061】電子伝達物質含浸部16を通過した試料は、連通部材18を通って電極部20の貫通孔30を通過して、マトリクス22に流入する。マトリクス22に試料が流入すると、液体試料中の分析対象物と不溶化抗体との特異結合によってマトリクス22内における酸化還元酵素標識体の分布が決まり、酸化還元酵素標識体の酵素反応によって生成する電極反応可能な電子伝達物質種が拡散によって作用極34に到達する。すなわち、分析対象物の作用極34半径方向の分布が酵素反応に対応した電気化学的変調として作用極34で検出される。余剰の試料は、マトリクス22を通過して吸収部24で吸収される。
【0062】従って、上記測定装置によれば、マトリクス22内における分析対象物と不溶化抗体との特異結合反応の結果、試料に含有される分析対象物の量に応じて前記特異結合反応によって生じる酵素標識体のマトリクス22内における分布が決り、この酵素標識体によって生成される電子伝達物質種の拡散移動を介して作用極34で電子の授受が行われ、電極反応による電子移動が電気化学的変調として検出される。その結果、マトリクス22の半径方向の特異結合反応の分布を測定して、試料中の分析対象物を測定できる。
【0063】以上、本発明のMEDIA法を利用した電気化学的測定方法および新規p−フェニレンジアミン化合物について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の変更および改良を行ってもよいのはもちろんである。
【0064】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明についてより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0065】<合成例1>(従来技術に対応)
N,N,N′,N′−テトラエチル−p−フェニレンジアミン2塩酸塩(TEPD・2HCl)の合成p−フェニレンジアミン(1g)、ヨウ化エチル(10.7g)、および炭酸ナトリウム(4.4g)をメタノ−ル(10mL)に溶解し、加熱下で1晩還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を留去し、残分にアセトンを加え不溶物を濾別した。得られた濾液から減圧下で溶媒を留去し、残分を酢酸エチル−エ−テル混合液で再結晶し、4級アンモニウム塩6.8gを得た。
【0066】次いで、この4級アンモニウム塩6.8gと、チオ硫酸ナトリウム5水和物12.5gとをジメチルホルムアミド50mLに溶解し、加熱下で1晩還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、蒸留水を加えてトルエンで抽出を行い、抽出層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去しTEPDを1.0g得た。さらに、このTEPDにエタノ−ル10mLを加え、4N塩酸/酢酸エチル5mLを氷冷下で滴下し、さらに、5℃で1時間攪拌した。生じた沈殿を濾過し、得られた沈殿をエタノ−ルおよびエ−テルで洗浄し、TEPD・2HClを1.3g得た。
【0067】下記に示す 1HNMR、IR(赤外吸光分析)およびMS(マススペクトル)での分析結果より、目的とするTEPD・2HClであることが確認された。
1HNMR:δ 1.2(12H,t,J=7Hz) 3.7(8H,q,J=7Hz) 7.9(4H,S)
IR(cm-1):715,840,1020,1276,1516,2420MS:M+ −2HCl+1 221
【0068】<合成例2>(本発明に対応)
N,N,N′,N′−テトラキスカルボキシメチル−p−フェニレンジアミン(TCPD)の合成p−フェニレンジアミン(1g)、クロロ酢酸(3.5g)、水酸化ナトリウム(3.1g)およびヨウ化カリウム(460mg)を蒸留水(46mL)に溶解し、加熱下で1時間還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、濃塩酸3.7mLを氷冷下で滴下し、生じた沈殿を濾過した。沈殿をメタノール−エタノール混合液で再結晶して、TCPDを700mg得た。
【0069】下記に示す 1HNMR、IRおよびMSによる分析結果より、目的とするTCPDであることが確認された。
1HNMR:δ 3.9(8H,S) 6.3(4H,S) 11.2(4H,S)
IR(cm-1):700,820,1030,1514,1720,2700,3300MS:M+ +1 341
【0070】<合成例3>(本発明に対応)
N,N,N′,N′−テトラキス−(2′−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン2塩酸塩(THEPD・2HCl)の合成p−フェニレンジアミン(1g)、2−クロロエタノール(3.0g)、および水酸化ナトリウム(1.5g)を蒸留水6mLに溶解し、加熱下に2時間還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を留去し、残分にエタノールを加え不溶物を濾別した。得られた濾液から、減圧下で溶媒を留去し、残分をクロロホルム−メタノール混合液を溶離液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、THEPDを1.5g得た。
【0071】次いで、このTHEPD1.5gをエタノール10mLに溶解し、この溶液に4N塩酸/酢酸エチル5mLを氷冷下で滴下し、さらに5℃で1時間攪拌した。生じた沈殿を濾過し、得られた沈殿をエタノールで洗浄し、THEPD・2HClを1.1g得た。
【0072】下記に示す 1HNMR、IRおよびMSによる分析結果より、目的とするTHEPD・2HClであることが確認された。
1HNMR:δ 3.5(16H,brS) 7.0(4H,m) 7.1(4H,S)
IR(cm-1):720,890,1020,1210,1390,1500,2700,3300MS:M+ −2HCl+1 285
【0073】<合成例4>(本発明に対応)
N,N,N′,N′−テトラキス−(2′,3′−ジヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン2塩酸塩(TDHPD・2HCl)の合成p−フェニレンジアミン(1.0g)、3−クロロ−1,2−プロパンジオール(4.6g)および水酸化ナトリウム(1.6g)を蒸留水30mLに溶解し、加熱下で2時間還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を留去し、残分にエタノールを加え不溶物を濾別した。減圧下において得られた濾液から溶媒を留去し、残分をクロロホルム−メタノールを溶離液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、TDHPDを1.1g得た。
【0074】次いで、このTDHPD1.1gをエタノール10mLに溶解し、この溶液に4N塩酸/酢酸エチル5mLを氷冷下で滴下し、さらに5℃で1時間攪拌した。次いで生じた沈殿を濾過し、得られた沈殿をエタノールで洗浄し、TDHPD・2HClを820mg得た。
【0075】下記に示す 1HNMR、IRおよびMSによる分析結果より、目的とするTDHPD・2HClであることが確認された。
1HNMR:δ 3.7(20H,m) 7.1(4H,S)
IR(cm-1):720,870,1040,1260,1370,1520,3300MS:M+ −2HCl+1 405
【0076】<合成例5>(本発明に対応)
N−2′−ヒドロキシエチル−N,N′,N′−トリエチル−p−フェニレンジアミン2塩酸塩(HTEPD・2HCl)の合成p−フェニレンジアミン(5g)のメタノール溶液(100mL)に炭酸カリウム(12.8g)を加え、この溶液にヨウ化エチル(14.4g)を室温にて10分で滴下した。反応液を50℃で撹拌し、原料の消失を薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)で確認後、減圧濃縮を行なった。次いで、濃縮物をn−ヘキサン:酢酸エチル=1:1に溶解し、析出した結晶を濾別し、濾液を減圧濃縮した。ついで、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製し、N,N′,N′−トリエチル−p−フェニレンジアミン1.5gを得た。
【0077】次いで、N,N′,N′−トリエチル−p−フェニレンジアミン1.5gをn−ブタノール(20mL)に溶解し、水酸化ナトリウム(2.2g)を添加した溶液に2−クロロエタノール(4.4g)を室温にて5分で滴下し、1時間還流した。薄層クロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で原料の消失を確認した後、反応液を室温まで冷却し、析出した結晶を濾別した。その後残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製しHTEPDを得た。次いで、HTEPDをエタノール15mLに溶解し、氷冷下にて4N塩酸/酢酸エチル(2.4mL)を滴下し、生じた析出結晶をエタノールにて洗浄しHTEPD・2HClを1.0g得た。
【0078】下記に示す 1HNMR、IRおよびMSによる分析結果より、目的とするHTEPD・2HClであることが確認された。
1HNMR:δ 1.1(9H,t,J=7Hz) 3.5(10H,m)
7.4(4H,m)
IR(cm-1):700,830,1060,1370,1450,1500,2350,2900,3350MS:M+ −2HCl+1 237
【0079】<合成例6>(本発明に対応)
N,N−ビス−(2′−ヒドロキシエチル)−N′,N′−ジエチル−p−フェニレンジアミン・2塩酸塩(N,N−BHDPD・2HCl)の合成N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(5g)のn−ブタノール溶液(30mL)に、水酸化ナトリウム3.7gを加え、さらに2−クロロエタノール(7.3g)を室温にて10分で滴下した。この溶液を4時間還流し、原料の消失を薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)で確認後、室温まで冷却した。析出結晶を濾別して濾液を減圧濃縮し、その残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)にて精製しN,N−BHDPDを得た。
【0080】次いで、N,N−BHDPDをエタノール(20mL)に溶解し、氷冷下にて4N塩酸/酢酸エチル(2.74mL)を滴下し、生じた析出結晶をエタノールにて洗浄しN,N−BHDPD・2HClを1.22g得た。
【0081】下記に示す 1HNMR、IRおよびMSによる分析結果より、目的とするN,N−BHDPD・2HClであることが確認された。
1HNMR:δ 1.0(6H,t,J=7Hz) 3.5(12H,m)
6.7(2H,d,J=9Hz) 7.5(2H,d,J=9Hz)
IR(cm-1):700,830,1050,1380,1450,1500,2480,2900,3300MS:M+ −2HCl+1 253
【0082】<合成例7>(本発明に対応)
N,N′−ビス−(2′−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン(N,N′−BHPD)の合成p−フェニレンジアミン(5g)のエタノール溶液(100mL)に水酸化ナトリウム4.4gを加え、55℃に加温した。さらに、この溶液に2−クロロエタノール8.9gを10分で滴下した。1晩還流し、原料の消失を薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)で確認後、室温まで冷却した。析出結晶を濾別し、その濾液を減圧濃縮した後、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)にて精製しN,N′−BHPD5.0gを得た。
【0083】<合成例8>(本発明に対応)
N,N′−ビス−(2′−ヒドロキシエチル)−N,N′−ジエチル−p−フェニレンジアミン・2塩酸塩(N,N′−BHDPD・2HCl)の合成N,N′−BHPD4.5gのエタノール溶液(100mL)に炭酸カリウム8.9gおよびヨウ化エチル9.5gを加え、1晩還流した。原料の消失を薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=5:1)で確認後室温まで冷却した。析出結晶を濾別し、その濾液を減圧濃縮した後、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル100%)にて精製し、N,N′−BHDPDを233mg得た。次いで、N,N′−BHDPDをエタノール5mLに溶解後、氷冷下にて10%塩化水素/メタノールを滴下し、生じた析出結晶を濾別し、N,N′−BHDPD・2HClを266mg得た。
【0084】下記に示す 1HNMR、IRおよびMSによる分析結果より、目的とするN,N′−BHDPD・2HClであることが確認された。
1HNMR:δ 1.1(6H,t,J=7Hz) 3.5(12H,m)
7.4(4H,s)
IR(cm-1):670,830,1070,1500,2500,2900,3350MS:M+ −2HCl+1 253
【0085】<合成例9>(本発明に対応)
p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応によるN原子上の各置換体の合成p−フェニレンジアミン(5g)のメタノール溶液(100mL)に水酸化ナトリウム1.3gを加え、さらにプロピレンオキサイド1.1gを滴下した。30℃にて1晩撹拌した後、減圧濃縮を行った。その後、濃縮物にクロロホルムを添加し、クロロホルム抽出物7gを得た。次いで、溶離液としてアセトニトリル:50mM酢酸アンモニウム=15.6:84.4を用い、ODSカラム(YMC−Pack ODS、20mmφ×250mm、YMC社製)にて、クロロホルム抽出物のHPLC分取を行った。この際、流速は15mL/minとし、254nmを検出波長とした。この分取により、p−フェニレンジアミンN原子上の1、2および3置換体を各々分離した。下記に示す 1HNMRおよびMSによる分析結果より、目的物であることが確認された。なお、各置換数は、質量スペクトルにて決定した。
1置換体 1HNMR:δ 1.1(3H,d,J=6Hz) 2.8(2H,m) 3.8(1H,m) 4.9(3H,brs) 6.4(4H,m)
MS:167(M+1)
2置換体 MS:225(M+1)
3置換体 MS:283(M+1)
また、 1HNMRおよびMSによる分析結果より、1置換体はN−2′−ヒドロキシプロピル−p−フェニレンジアミン(HPPD)であることが確認された。
【0086】<実験例1>p−フェニレンジアミン(PPD)、N,N,N′,N′−テトラメチル−p−フェニレンジアミン(TMPD)、TEPD、TCPD、THEPDおよびTDHPDの蒸気圧測定PPD(和光純薬社製)、TMPD(東京化成社製)および前述の合成例1〜4の途中で得られたTEPD、TCPD、THEPDおよびTDHPDについて蒸気圧を測定した。一定温度の固体試料(PPD,TMPD,TEPD,TCPD,THEPDおよびTDHPD)と接触するようにキャリアガス(窒素ガス)を流し、試料の蒸気を飽和させて蒸気密度(蒸発量/体積)を測定し、蒸気が理想気体の法則に従うと仮定して各化合物の蒸気圧を求めた(気体流通法)。試料の蒸発速度(減量速度)は電気天秤を、またキャリアガス流量は流量計を用いて測定し、試料の蒸気密度を求めた。蒸気密度から蒸気圧を求めるために、次式を用いた。
P=(k/v)Vπ/M上記式において、P:蒸気圧[mmHg]、k:蒸発速度[mg/min]、v:キャリアガス流量[mL/min]、k/v:蒸気密度[mg/mL] 、M:試料の分子量、π:系の圧力[mmHg]、V:キャリアガスのモル体積[L/mol] である。
【0087】図5に、各温度におけるTEPDおよびTHEPDの蒸気圧曲線を1例として示した。また、25℃における各化合物の蒸気圧を図24に示した。図5および図24に示されるように、PPD,TMPDおよびTEPDに比してTCPD,THEPDおよびTDHPDの蒸気圧は低く、具体的には、25℃でのTEPD,TCPD,THEPDおよびTDHPDの蒸気圧はそれぞれ4.2×10-4mmHg、8.7×10-9mmHg、1.3×10-6mmHgおよび1.0×10-9mmHgでありTCPD,THEPDおよびTDHPDの蒸気圧はTEPDの蒸気圧に比べ、それぞれ、約1/50000、約1/300、約1/420000である。この結果より、TCPD,THEPDおよびTDHPDはPPD,TMPDおよびTEPDに比べ、乾燥(凍結乾燥、減圧乾燥、風乾等)性および乾燥体の安定性に優れることが解る。
【0088】<実験例2>TEPD・2HCl、TCPD、THEPD・2HCl、TDHPD・2HCl、HTEPD・2HCl、N,N−BHDPD・2HCl、N,N′−BHDPD・2HClおよびp−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の各置換体(以下、2HClは省略)のサイクリックボルタンメトリー(CV)の測定前述の合成例1〜9で作製したTEPD、TCPD、THEPD、TDHPD、HTEPD、N,N−BHDPD、N,N′−BHDPDおよびp−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の各置換体を、pH6.0の0.1M NaCl含有0.1Mリン酸緩衝液に溶解し、5.0×10-4Mの溶液を調製し、これらのCVを測定した。作用電極としてグラッシーカーボン電極(BIOANALYTICAL SYSTEMS 社製、MF2012)、参照電極としてAg/AgCl電極(BIOANALYTICAL SYSTEMS 社製、MF2020)、対向電極として白金線(BIOANALYTICAL SYSTEMS 社製)を、それぞれ用い、これらをポテンショスタットHA−150(北斗電工社製)に接続した。さらに電極電位設定のためのファンクションジェネレーターHB−104(北斗電工社製)および記録計を接続した。記録計からGPIBラインを通じてコンピュータへ接続し、計測およびデータ処理を行った。CV測定は、初期電位−500mV(vs Ag/AgCl、以下同様)〜反転電位+800mV、あるいは初期電位−200mV〜反転電位+300mVに設定し、いずれも50mV/secの速度で電位掃引を行った。
【0089】TEPDの−500mV〜+800mVの結果を図6に、−200mV〜+300mVの結果を図7に、以下同様に、TCPDの結果を図8および図9に、THEPDの結果を図10および図11に、TDHPDの結果を図12および図13に、それぞれ示す。また、HTEPDの結果を図25および図26に、N,N−BHDPDの結果を図27および図28に、N,N′−BHDPDの結果を図29および図30に、p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の1置換体(HPPD)の結果を図31および図32に、同じく2置換体の結果を図33および図34に、同じく3置換体の結果を図35および図36に、それぞれ示す。
【0090】図8〜図13および図25〜図36のCVに示される様に、本発明の測定方法に使用されるTCPD、THEPD、TDHPD、HTEPD、N,N−BHDPD、N,N′−BHDPDおよびp−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の各置換体も、前述のTEPD(図6および図7R>7)と同様に電極上で酸化還元可能な物質であることが示唆され、電気化学的な測定方法において、電子伝達物質として好適に利用可能であることが解る。さらに、図9R>9、図11、図13、図26、図28、図30、図32R>2、図34および図36に示されるように、これらの物質によれば、−200mVから+300mVの電位幅で可逆的な酸化還元反応が行われていると考えられる。
【0091】<実験例3>TEPD、TCPD、THEPD、TDHPD、HTEPD、N,N−BHDPD、N,N′−BHPD、N,N′−BHDPDおよびp−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の各置換体の電子伝達活性の測定1グルコ−スオキシダ−ゼ(GOD、ベ−リンガ−マンハイム社製)を、pH6.0の0.1MNaCl含有0.1Mリン酸緩衝液に溶解し、0Mおよび4.0×10-4Mの溶液を調製した。また、グルコース(純正化学社製)を同様の緩衝液に溶解し、1.5Mの溶液を調製した。さらに、合成例1〜9で合成したTEPD、TCPD、THEPD、TDHPD、HTEPD、N,N−BHDPD、N,N′−BHPD、N,N′−BHDPDおよびp−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の各置換体の各化合物を同様の緩衝液に溶解し、5.0×10-3Mの溶液を調製した。これらの各溶液を、測定直前に下記の量比でpH6.0の0.1M NaCl含有0.1Mリン酸緩衝液中で混合し、下記に示される組成Aおよび組成Bで示される溶液を作製し、GOD存在下(組成A)あるいは非存在下(組成B)での電流値を連続的に測定した。
【0092】
組成A────────────────────────────────── GOD 4.0×10-4M 100μL グルコ−ス 1.5M 1.0mL 化合物溶液 5.0×10-3M 1.0mL 0.1M NaCl含有 0.1M リン酸緩衝液 pH6.0 7.9mL────────────────────────────────── 組成B────────────────────────────────── GOD 0M 100μL グルコ−ス 1.5M 1.0mL 化合物溶液 5.0×10-3M 1.0mL 0.1M NaCl含有 0.1M リン酸緩衝液 pH6.0 7.9mL──────────────────────────────────
【0093】測定は、前述の実験例2と同様の装置で行い、測定時には+300mV(vs Ag/AgCl)の電位を作用極に印加し、GOD存在下(組成A)およびGOD非存在下(組成B)の電流値を電位印加後10分間測定した。
【0094】TEPDの測定結果(GOD−グルコ−ス−TEPD)を図14に、TCPDの測定結果(GOD−グルコ−ス−TCPD)を図15に、THEPDの測定結果(GOD−グルコ−ス−THEDP)を図16に、TDHPDの測定結果(GOD−グルコ−ス−TDHPD)を図17に、それぞれ示す。また、HTEPDの測定結果を図37に、N,N−BHDPDの測定結果を図38に、N,N′−BHDPDの測定結果を図39に、p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の1置換体(HPPD)の測定結果を図40に、同じく2置換体の測定結果を図41に、同じく3置換体の測定結果を図42に、それぞれ示す。
【0095】図14〜図17および図37〜図42に示されるように、いずれの物質による測定でも、GODを含有する場合(組成A)には、含有しない場合(組成B)に比して酸化電流値が増大するので、本発明例のTCPD、THEPD、TDHPD、HTEPD、N,N−BHDPD、N,N′−BHDPDおよびp−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の各置換体は共に、従来例のTEPDと同様、GODと電極間の可逆的な電子伝達物質としての機能を有することが明らかである。また、N,N′−BHPDも、GODと電極間の可逆的な電子伝達物質としての機能を有していた。
【0096】<実験例4>TEPD、TCPD、THEPD、TDHPD、HTEPD、N,N−BHDPD、N,N′−BHPD、N,N′−BHDPDおよびp−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の各置換体の電子伝達活性の測定2西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRPO、東洋紡社製)を、pH6.0の0.1MNaCl含有0.1Mリン酸緩衝液に溶解し、0Mおよび5.0×10-7Mの溶液を調製した。また、過酸化水素(和光純薬社製)を同様の緩衝液に溶解し、1.0×10-1Mの溶液を調製した。さらに、合成例1〜9で合成したTEPD、TCPD、THEPD、TDHPD、HTEPD、N,N−BHDPD、N,N′−BHPD、N,N′−BHDPDおよびp−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の各置換体の各化合物を同様の緩衝液に溶解し、5.0×10-3Mの溶液を調製した。これらの各溶液を、測定直前に下記の量比でpH6.0の0.1M NaCl含有0.1Mリン酸緩衝液中で混合し、下記に示される組成Aおよび組成Bで示される溶液を作製し、HRPO存在下(組成A)あるいは非存在下(組成B)での電流値を連続的に測定した。
【0097】
────────────────────────────────── HRPO 5.0×10-7M 100μL 過酸化水素 1.0×10-1M 100μL 化合物溶液 5.0×10-3M 1.0mL 0.1M NaCl含有 0.1M リン酸緩衝液 pH6.0 8.8mL────────────────────────────────── 組成B────────────────────────────────── HRPO 0M 100μL 過酸化水素 1.0×10-1M 100μL 化合物溶液 5.0×10-3M 1.0mL 0.1M NaCl含有 0.1M リン酸緩衝液 pH6.0 8.8mL──────────────────────────────────
【0098】測定は、前述の実験例2と同様の装置で行い、測定時には、TEPD、THEPDおよびTDHPDの場合−80mV(vs Ag/AgCl 以下同様)の電位を、TCPD、HTEPD、N,N−BHDPD、N,N′−BHDPDおよびp−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の各置換体の場合−150mVの電位を、それぞれ作用極に印加し、HRPO存在下(組成A)およびHRPO非存在下(組成B)の電流値を電位印加後10分間もしくは5分間測定した。
【0099】TEPDの測定結果(HRPO−過酸化水素−TEPD)を図18に、TCPDの測定結果(HRPO−過酸化水素−TCPD)を図19に、THEPDの測定結果(HRPO−過酸化水素−THEPD)を図2020に、TDHPDの測定結果(HRPO−過酸化水素−TDHPD)を図21に、それぞれ示す。また、HTEPDの測定結果を図43に、N,N−BHDPDの測定結果を図44に、N,N′−BHDPDの測定結果を図45に、p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の1置換体(HPPD)の測定結果を図46に、同じく2置換体の測定結果を図47に、同じく3置換体の測定結果を図48に、それぞれ示す。
【0100】図18〜図21および図43〜図48に示されるように、いずれの物質もHRPOを含有する場合(組成A)には、含有しない場合(組成B)に比して還元電流値が増大しており、本発明例のTCPD、THEPD、TDHPD、HTEPD、N,N−BHDPD、N,N′−BHDPDおよびp−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の各置換体は共に、従来例のTEPDと同様、HRPOと電極間の可逆的な電子伝達物質としての機能を有することが明らかである。また、N,N′−BHPDも、HRPOと電極間の可逆的な電子伝達物質としての機能を有していた。
【0101】<実施例>図2および図3に示される特異結合分析装置を作製し、それを用いて試料中のhCG濃度を測定した。まず、特異結合分析装置を作製するために、下記の各部材を作製した。
【0102】■ 抗hCG抗体と西洋ワサビパーオキシダーゼとの結合体(標識抗体)の作製hCGを認識するマウス単クローン性抗体HM81(持田製薬社製)を100mM塩化ナトリウム−1mMEDTA−60mMトリエタノールアミン緩衝液(pH8.0 TEA緩衝液)に8.3mg/mL 濃度となるように溶解し、窒素ガス置換したTEA緩衝液に十分に透析した。この抗体溶液1.1mLに対して、TEA緩衝液中に調製した50mMの2−イミノチオラン塩酸塩(Pierce社製)溶液61μLを添加し、撹拌後、窒素ガス雰囲気下、4℃で1.5時間静置した。その後、窒素ガス置換した100mM塩化ナトリウム−1mMEDTA−100mMリン酸緩衝液(pH7.0 EDTA−PB)で十分に透析し、SH基が導入された抗hCG抗体HM81を得た。
【0103】一方、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で20mg/mL 濃度に調製された西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRPO,東洋紡社製)溶液500μLを30℃でゆっくり撹拌しながら、50mMのスルホSMCC(Pierce社製)500μLを添加して20分間反応させた。反応後、窒素ガス置換したEDTA−PBで平衡化した Sephadex G−25(ファルマシア社製)カラム(2.6φ×15cm)を通して未反応のスルホSMCCを除去し、濃縮器CENTRIPREP−10(Amicon社製)を用いて濃縮し、マレイミド化HRPOを得た。得られたマレイミド化HRPOの濃度は、403nmの吸光度から求めた。
【0104】1.25×10-8モルもしくは1.56×10-8モルのマレイミド化HRPO溶液に、それぞれ3倍モル量もしくは1/3倍モル量のSH基導入抗hCG抗体HM81を添加混合後、窒素ガス雰囲気下、4℃で12時間反応させた。次いで、それぞれ50mMのシステアミン溶液50μLを添加し、窒素ガス雰囲気下、4℃にて60分間反応させ、その後、窒素ガス置換したEDTA−PBで平衡化した ULTROGEL AcA34(IBF Biotechnics社製)カラムを用いてゲル濾過クロマトグラフィーを行った。280nmおよび403nmにおける吸光度測定を、ゲル濾過クロマトグラフィーの溶出分画について行い、遊離の酵素を含まないHM81とHRPOとの結合体の分画を集めて濃縮した。得られた濃縮品(以下、HRPO−HM81とする)は、Phast システムによる電気泳動(ファルマシア社製)で分子量を確認後、吸光度と酵素活性から含有される抗体および酵素量を決定し、後記する測定において酸化還元酵素標識抗体として用いた。
【0105】■ 西洋ワサビパーオキシターゼ標識抗hCG抗体(HRPO−HM81)を含浸させた乾燥体の作製前記■で作製したHRPO−HM81を5%正常ウサギ血清(NRS)−10%サッカロ−ス/pH6.0の0.1M NaCl含有リン酸緩衝液で希釈し、パーオキシターゼ活性0.63U/mL溶液を調製した。次いで、ガラス繊維濾紙(GA100、アドバンテック東洋社製)からパンチングして作製した直径12mmの円形濾紙に上記溶液を140μL点着し凍結乾燥して、標識抗体含浸部14となるHRPO−HM81の乾燥体を作製した。
【0106】■ THEPDを含浸させた乾燥体の作製(本発明例に対応)
前述の合成例3で合成したTHEPDをpH 6.0の0.1M NaCl含有リン酸緩衝液に溶解し、5.0mMの溶液を調製した。次いで、ガラス繊維濾紙(GA100、アドバンテック東洋社製)からパンチングして作製した直径12mmの円形濾紙に上記溶液を140μL点着し、凍結乾燥を行い、本発明に対応する電子伝達物質含浸部16となるTHEPDの乾燥体を作製した。
【0107】■ TEPDを含浸させた乾燥体の作製(比較例に対応)
前述の合成例1で合成したTEPDをpH6.0の1M NaCl含有リン酸緩衝液に溶解し、5.0mMの溶液を調製した。次いで、ガラス繊維濾紙(GA100、アドバンテック東洋社製)からパンチングして作製した直径12mmの円形濾紙に上記溶液を140μL点着し、凍結乾燥を行い、電子伝達物質含浸部16となるTEPDの乾燥体を作製した。
【0108】■ 過酸化水素を含浸させた乾燥体の作製過酸化水素(和光純薬工業社製)および尿素(和光純薬工業社製)を蒸留水に溶解し、0.5M過酸化水素−0.5M尿素溶液を調製した。次いで、クロマトグラフ濾紙(17Chr 、Whatman 社製)からパンチングして作製した直径12mmの円形濾紙に上記溶液を120μL点着し、凍結乾燥を行い、吸収部24となる過酸化水素−尿素の乾燥体を作製した。
【0109】■ 抗hCG抗体不溶化多孔性セルロース混合エステル膜の作製ウシγグロブリン(製品コードG7516、シグマ社製)の1.0%(W/V) PBS溶液200mLを入れたビーカー中に、ポアサイズ8.0μm、直径13mmの円形の酢酸セルロース/硝酸セルロース混合エステル多孔性膜(カタログ番号SCWP01300、日本ミリポア工業社製)200枚を入れ、ゆっくり撹拌しながら60℃で2時間加熱した。上澄みを除去し、残液を吸引除去した後、洗浄液として十分量の0.076Mリン酸緩衝生理食塩水pH6.4(PBS)を加えてよく撹拌し、再度内容液を除去して洗浄を行った。PBSの洗浄をさらに2回行い、その後、蒸留水での洗浄を7回繰り返した。洗浄終了後、1.0%グルタルアルデヒド水溶液200mLを添加し、ゆっくり撹拌しながら25℃で3時間反応させた。反応後、蒸留水で10回洗浄を行い、ガラス板の上に多孔性膜を1枚ずつ並べて乾燥した。
【0110】hCGを認識するマウス単クローン性抗体HM21(持田製薬社製)を0.05M炭酸水素ナトリウム−0.05M塩化ナトリウム水溶液に溶解して、濃度を1.0mg/mL に調製した。この溶液を、ガラス板上で乾燥させた多孔性膜(13mmφ)当たり25μLを中央部分から浸潤させた。室温で1時間反応させた後、多孔性膜を0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)/PBS溶液200mLに移し、振とう撹拌しながら、4℃で2日間ブロッキング反応した。その後、0.1%Tween20/PBS溶液で3回洗浄し、さらにPBSで7回洗浄し、乾燥して、マトリクス22となる抗hCG抗体(HM21)不溶化多孔性セルロース混合エステル膜を得た。
【0111】■ 検出部(電極)20の作製長さ50mm、幅20mm、厚さ0.25mmの透明PETフィルムの裏側および表側に、図4に示されるように、導電性カーボンインク(400−CT、アサヒ化研社製)でスクリーン印刷した。また、表側中心部の円形部の上層に、導電性銀インク(LS411N、アサヒ化研社製)で参照極32をスクリーン印刷した。さらに電極裏側および表側の絶縁層36を絶縁インク(XB−101G 藤倉化成社製)でスクリーン印刷した。次いで、円形部の中央をパンチングし、直径3mmの孔を開けて貫通口30とし、貫通口30の表側表面および裏側表面に環状の電極が残るようにした。また、開口後、表側と裏側の電極が互いに電気的に独立していることを確認した。次に、導電性銀インクを重層スクリーン印刷した部分について、0.1M塩化ナトリウム水溶液中で電解反応(+1.0V vs Ag/AgCl)を10分間行ない、表面に塩化銀層を形成させた。露出している環状部の内、銀/塩化銀層が重層されている側を参照極32(および対極)、カーボンのみの側を検出用の作用極34として用いた。
【0112】[発明例用装置の作製]以上のようにして作製した各部材を用い、MEDIA法を利用した本発明の測定方法を実施するための図2および図3に示される測定装置を作製した。すなわち、アクリル製の下部基板26に、前記■で作製した吸収部24を載せ、上面中央にメンディングテープ(住友スリーエム社製)からパンチングして作製した直径6mmのシールを貼り付け、シール部24aとした。この上部に、前記■で作製したマトリクス22を、吸収部24のシール部24aに中心位置を合わせて積層した。次いで、マトリクス22上に、参照極32を上面としてマトリクス22の中心と貫通孔30とを一致させて、前記■で作製した電極部20を重ね、ガラス繊維濾紙(GA55、アドバンテック東洋社製)からパンチングして作製した直径3mmの円形濾紙を、貫通口30に嵌入して連通部材18とした。次に、前記■で作製したTHEPDを含浸・乾燥した電子伝達物質含浸部16を、その中心が電極部20の貫通口30の中心と一致するように重積した。この電子伝達物質含浸部16の上面中央には、メンディングテープからパンチングして作製した直径6mmのシールを貼り付け、シール部16aとした。その上に、前記■で作製した標識抗体含浸部14を重積して、界面活性剤処理をしたエルタス(カタログ番号A05070、旭化成社製)からパンチングして作製した直径12mmの円形部材を重積してフィルター12とした。その上に、厚さ5mmのアクリル板によって作製した、直径6mmの試料導入口10aを有する上部カバー10を、試料導入口10aの中心が電極部20の貫通口30の中心と一致するように積層して、hCG濃度測定用の特異結合分析装置を作製した。なお、この装置においては、上部板の下面と下部支持体の上面とは、3400μmの間隔を維持するようにした。
【0113】[比較例用装置の作製]前記■で作製したTHEPDを含浸・乾燥した電子伝達物質含浸部16を用いないで、前記■で作製したTEPDを含浸・乾燥した電子伝達物質含浸部16を用いた以外は、前記発明例と全く同様にしてhCG濃度測定用の特異結合分析装置を作製した。
【0114】[全血中でのhCG測定]前述のように作製した前記発明例および比較例のhCG濃度測定用の特異結合分析装置を、前記実験例2と同様にしてポテンショスタット等の測定装置を接続した。他方、ヘパリン添加健常男性血液にhCGを添加して、hCG 0IU/L全血(A)およびhCG 1000IU/L全血(B)を調製した。前記発明例および比較例で作製した特異結合分析装置のそれぞれに付き、溶液(A)および溶液(B)のいずれかを、上部カバー10の試料導入口10aを通じて、試料導入部38に260μL導入した。試料点着時から30秒経過後に、作用極を対極・参照極に対して−150mVとなるように電位設定し、電流値を記録した。発明例の結果を図22に、比較例の結果を図23に、それぞれ示す。
【0115】図22に示されるように、電子伝達物質を保持する電子伝達物質含浸部16としてTHEPD乾燥体を導入した発明例にかかる特異結合分析装置ではhCG濃度に依存して電流値は大きくなった。これに対し、電子伝達物質含浸部16としてTEPD乾燥体を導入した比較例の特異結合分析装置では、図23に示されるように、hCG濃度を高めても電流値は大きくはならなかった。これは、前述の実験例1でも示されたように、TEPDは乾燥性および乾燥安定性が悪く、さらに試料中の妨害物質の影響を受けやすく、試料中での安定性が悪いために、上記態様では測定時に良好な電子伝達物質として作用することができなかったためであると考えられる。
【0116】この結果から、本発明の電子伝達物質を用いた装置によって試料中のhCG濃度の定量を簡便、迅速に行え、本発明の効果が明らかとなった。
【0117】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の電気化学的測定方法および新規p−フェニレンジアミン化合物によれば、酵素電極法あるいは例えばMEDIA法のような特異結合分析方法等の測定において、測定感度(応答性)が良好で、使い捨ての用途にも好適に利用することができ、しかも、試料が血液や尿等の妨害物質を含有するものであっても、常に安定して再現性の良好な測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)および(b)は、それぞれ電子伝達物質の作用を説明するための模式図である。
【図2】本発明の電気化学的測定方法を実施する(特異結合)分析装置の一例を示す概略分解斜視図である。
【図3】図2に示される(特異結合)分析装置の組み立て状態の断面を概念的に示す図である。
【図4】図2に示される(特異結合)分析装置の電極部の概略平面図である。
【図5】TEPDおよびTHEPDの蒸気圧を示すグラフである。
【図6】TEPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−500mV〜+800mV)を示すグラフである。
【図7】TEPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−200mV〜+300mV)を示すグラフである。
【図8】TCPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−500mV〜+800mV)を示すグラフである。
【図9】TCPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−200mV〜+300mV)を示すグラフである。
【図10】THEPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−500mV〜+800mV)を示すグラフである。
【図11】THEPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−200mV〜+300mV)を示すグラフである。
【図12】TDHPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−500mV〜+800mV)を示すグラフである。
【図13】TDHPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−200mV〜+300mV)を示すグラフである。
【図14】TEPDの電子伝達活性を示すグラフである。
【図15】TCPDの電子伝達活性を示すグラフである。
【図16】THEPDの電子伝達活性を示すグラフである。
【図17】TDHPDの電子伝達活性を示すグラフである。
【図18】TEPDの電子伝達活性の別の例を示すグラフである。
【図19】TCPDの電子伝達活性の別の例を示すグラフである。
【図20】THEPDの電子伝達活性の別の例を示すグラフである。
【図21】TDHPDの電子伝達活性の別の例を示すグラフである。
【図22】本発明の電子伝達物質を用いた実施例による測定結果を示すグラフである。
【図23】従来の電子伝達物質を用いた測定方法による測定結果を示すグラフである。
【図24】PPD,TMPD,TEPD,TCPD,THEPD,TDHPDの25℃における蒸気圧を示すグラフである。
【図25】HTEPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−500mV〜+800mV)を示すグラフである。
【図26】HTEPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−200mV〜+300mV)を示すグラフである。
【図27】N,N−BHDPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−500mV〜+800mV)を示すグラフである。
【図28】N,N−BHDPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−200mV〜+300mV)を示すグラフである。
【図29】N,N′−BHDPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−500mV〜+800mV)を示すグラフである。
【図30】N,N′−BHDPDのサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−200mV〜+300mV)を示すグラフである。
【図31】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の1置換体(HPPD)のサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−500mV〜+800mV)を示すグラフである。
【図32】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の1置換体(HPPD)のサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−200mV〜+300mV)を示すグラフである。
【図33】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の2置換体のサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−500mV〜+800mV)を示すグラフである。
【図34】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の2置換体のサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−200mV〜+300mV)を示すグラフである。
【図35】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の3置換体のサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−500mV〜+800mV)を示すグラフである。
【図36】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の3置換体のサイクリックボルタンメトリー(電位走査範囲−200mV〜+300mV)を示すグラフである。
【図37】HTEPDの電子伝達活性を示すグラフである。
【図38】N,N−BHDPDの電子伝達活性を示すグラフである。
【図39】N,N′−BHDPDの電子伝達活性を示すグラフである。
【図40】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の1置換体(HPPD)の電子伝達活性を示すグラフである。
【図41】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の2置換体の電子伝達活性を示すグラフである。
【図42】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の3置換体の電子伝達活性を示すグラフである。
【図43】HTEPDの電子伝達活性の別の例を示すグラフである。
【図44】N,N−BHDPDの電子伝達活性の別の例を示すグラフである。
【図45】N,N′−BHDPDの電子伝達活性の別の例を示すグラフである。
【図46】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の1置換体(HPPD)の電子伝達活性の別の例を示すグラフである。
【図47】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の2置換体の電子伝達活性の別の例を示すグラフである。
【図48】p−フェニレンジアミンとプロピレンオキサイドとの反応で生成したN原子上の3置換体の電子伝達活性の別の例を示すグラフである。
【符号の説明】
10 上部カバー
10a 試料導入口
12 フィルター
14 標識体含浸部
16 電子伝達物質含浸部
16a,24a シール部
18 連通部材
20 電極部
22 マトリクス
24 シール部
26 下部基板
28 基板
30 貫通孔
32 参照極
34 作用極
36 絶縁部
38 試料導入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも1つの酸化還元酵素を用いて液性試料中の分析対象物を測定する測定方法において、その測定系に酸化還元酵素、電子伝達物質、および前記電子伝達物質と電子移動可能な電極を配し、前記電子伝達物質として、下記式[I]で示される化合物またはその塩を用いることを特徴とする電気化学的測定方法。
【化1】


(上記式[I]中、R1 、R2 、R3 およびR4 は、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1ないし4の直鎖もしくは分枝鎖を有するアルキル基を示す。但し、上記式[I]において、R1 、R2 、R3 およびR4 のうち少なくとも1つは、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、ホスホノオキシ基およびスルホ基からなる群より選ばれる1以上の基を有する。また、R1 、R2 、R3 およびR4 は、同一であっても互いに異なるものであってもよい。)
【請求項2】前記式[I]が、R1 、R2 、R3 およびR4 のうち少なくとも1つは、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する請求項1に記載の電気化学的測定方法。
【請求項3】前記式[I]が下記化合物およびその塩より選ばれる少なくとも1つである請求項1または2に記載の電気化学的測定方法。
【化2】


【請求項4】前記分析対象物が前記酸化還元酵素の基質、補因子、アクチベータあるいはインヒビターであり、この基質、補因子、アクチベータあるいはインヒビター量に応じて生じる酵素反応の変調を前記電極における電気化学的信号の変調として検出する請求項1〜3のいずれかに記載の電気化学的測定方法。
【請求項5】前記分析対象物に対する特異結合物質を少なくとも一種用い、前記酸化還元酵素を標識物質として用いた特異結合反応によって、前記分析対象物を測定する請求項1〜3のいずれかに記載の電気化学的測定方法。
【請求項6】前記分析対象物を含有することが予想される液性試料が展開される領域であるマトリクス、前記マトリクスに試料を導入する試料導入部、および前記マトリクスに実質的に接した電極を有する装置を用い、試料を前記試料導入部に導入し、前記マトリクス内で、前記試料中の分析対象物と、第1の特異結合物質および電極部で信号を発生する電子伝達物質種を生成できる酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質とを反応させる;あるいは、前記マトリクス外で、前記試料中の分析対象物と、第1の特異結合物質および電極部において信号を発する電子伝達物質種を生成できる酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質とを反応させてから、前記マトリクスに導入する;ことにより、前記酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質と分析対象物との複合体、酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質と分析対象物と第1の特異結合物質との複合体、あるいは複合体を形成していない酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質のうち、少なくとも1つの分子種の分布を変化させ、試料中の分析対象物量に対応する前記分布変化を、酸化還元酵素によって生成する電子伝達物質種の物質移動に律速される電極における信号の変調として検出する請求項5に記載の電気化学的測定方法。
【請求項7】前記分析対象物を含有することが予想される液性試料が展開される領域であるマトリクス、前記マトリクスに試料を導入する試料導入部、および前記マトリクスに実質的に接した電極を有する装置を用い、前記分析対象物に対する特異結合物質、あるいは特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質のいずれか一方が、前記電極で信号を発生する電子伝達物質種を生成できる酸化還元酵素で標識されており、試料を前記試料導入部に導入し、前記マトリクス内で、前記試料中の分析対象物と、特異結合物質および特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質とを競合的に反応させる;あるいは、前記マトリクス外で、前記試料中の分析対象物と、特異結合物質および特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質とを競合的に反応させてから、前記マトリクスに導入する;ことにより、前記特異結合物質と分析対象物との複合体、特異結合物質と特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質との複合体、複合体を形成していない特異結合物質、あるいは複合体を形成していない特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質のうち、少なくとも1つの酸化還元酵素で標識された分子種の分布を変化させ、試料中の分析対象物量に対応する前記分布変化を、酸化還元酵素によって生成する電子伝達物質種の物質移動に律速される電極における信号の変調として検出する請求項5に記載の電気化学的測定方法。
【請求項8】下記化学式で示される化合物またはその塩。
【化3】


【請求項9】下記化学式で示される化合物またはその塩。
【化4】


【請求項10】少なくとも1つの酸化還元酵素を用いて液性試料中の分析対象物を測定する測定方法において、その測定系に酸化還元酵素、電子伝達物質、および前記電子伝達物質と電子移動可能な電極を配し、前記電子伝達物質として、下記式[II]で示される化合物またはその塩を用いることを特徴とする電気化学的測定方法。
【化5】


(上記[II]中、R5 、R6 、R7 およびR8 は、水素原子または、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1ないし4の直鎖もしくは分枝鎖を有するアルキル基を示す。但し、上記式[II]において、R5 、R6 、R7 およびR8 は同一でも異なってもよいが、そのうち少なくとも1つは、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、ホスホノオキシ基およびスルホ基からなる群より選ばれる1以上の基を有するアルキル基であり、少なくとも一つは水素原子である。)
【請求項11】前記式[II]が、R5 、R6 、R7 およびR8 のうち少なくとも1つは、ヒドロキシル基を有する請求項10に記載の電気化学的測定方法。
【請求項12】前記分析対象物が前記酸化還元酵素の基質、補因子、アクチベータあるいはインヒビターであり、この基質、補因子、アクチベータあるいはインヒビター量に応じて生じる酵素反応の変調を前記電極における電気化学的信号の変調として検出する請求項10〜11のいずれかに記載の電気化学的測定方法。
【請求項13】前記分析対象物に対する特異結合物質を少なくとも一種用い、前記酸化還元酵素を標識物質として用いた特異結合反応によって、前記分析対象物を測定する請求項10〜11のいずれかに記載の電気化学的測定方法。
【請求項14】前記分析対象物を含有することが予想される液性試料が展開される領域であるマトリクス、前記マトリクスに試料を導入する試料導入部、および前記マトリクスに実質的に接した電極を有する装置を用い、試料を前記試料導入部に導入し、前記マトリクス内で、前記試料中の分析対象物と、第1の特異結合物質および電極部で信号を発生する電子伝達物質種を生成できる酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質とを反応させる;あるいは、前記マトリクス外で、前記試料中の分析対象物と、第1の特異結合物質および電極部において信号を発する電子伝達物質種を生成できる酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質とを反応させてから、前記マトリクスに導入する;ことにより、前記酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質と分析対象物との複合体、酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質と分析対象物と第1の特異結合物質との複合体、あるいは複合体を形成していない酸化還元酵素で標識された第2の特異結合物質のうち、少なくとも1つの分子種の分布を変化させ、試料中の分析対象物量に対応する前記分布変化を、酸化還元酵素によって生成する電子伝達物質種の物質移動に律速される電極における信号の変調として検出する請求項13に記載の電気化学的測定方法。
【請求項15】前記分析対象物を含有することが予想される液性試料が展開される領域であるマトリクス、前記マトリクスに試料を導入する試料導入部、および前記マトリクスに実質的に接した電極を有する装置を用い、前記分析対象物に対する特異結合物質、あるいは特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質のいずれか一方が、前記電極で信号を発生する電子伝達物質種を生成できる酸化還元酵素で標識されており、試料を前記試料導入部に導入し、前記マトリクス内で、前記試料中の分析対象物と、特異結合物質および特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質とを競合的に反応させる;あるいは、前記マトリクス外で、前記試料中の分析対象物と、特異結合物質および特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質とを競合的に反応させてから、前記マトリクスに導入する;ことにより、前記特異結合物質と分析対象物との複合体、特異結合物質と特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質との複合体、複合体を形成していない特異結合物質、あるいは複合体を形成していない特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質のうち、少なくとも1つの酸化還元酵素で標識された分子種の分布を変化させ、試料中の分析対象物量に対応する前記分布変化を、酸化還元酵素によって生成する電子伝達物質種の物質移動に律速される電極における信号の変調として検出する請求項13に記載の電気化学的測定方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図12】
image rotate


【図13】
image rotate


【図14】
image rotate


【図15】
image rotate


【図26】
image rotate


【図28】
image rotate


【図16】
image rotate


【図17】
image rotate


【図18】
image rotate


【図22】
image rotate


【図34】
image rotate


【図36】
image rotate


【図19】
image rotate


【図20】
image rotate


【図21】
image rotate


【図23】
image rotate


【図30】
image rotate


【図32】
image rotate


【図24】
image rotate


【図25】
image rotate


【図27】
image rotate


【図29】
image rotate


【図31】
image rotate


【図33】
image rotate


【図35】
image rotate


【図37】
image rotate


【図38】
image rotate


【図39】
image rotate


【図40】
image rotate


【図41】
image rotate


【図42】
image rotate


【図43】
image rotate


【図44】
image rotate


【図45】
image rotate


【図46】
image rotate


【図47】
image rotate


【図48】
image rotate