説明

電気化学素子及びその製造方法

【課題】 効率が高く、短時間で起動、且つ停止させることができ、更には低温で作動させることができる固体電解質形燃料電池素子等の電気化学素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の電気化学素子は、空気極体21と、両端部を除く部分が空気極体21に埋設されている外径2mm以下の複数の燃料極・固体電解質層積層管31と、を備え、燃料極・固体電解質層積層管31は、円筒形燃料極管311と、円筒形燃料極管311の外周面のうちの両端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層312とからなり、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成されており、燃料極・固体電解質層積層管31の両端部は空気極体2の同一面側に突出していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、小型で効率が高く、短時間、例えば、数分で起動させ、且つ停止させることができ、更には低温、例えば、500℃程度で作動させることができる固体電解質形燃料電池素子等の電気化学素子及びその製造方法に関する。
本発明は、固体電解質形燃料電池、酸素発生器及び排ガス浄化リアクターなどの技術分野において用いることができる。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子、例えば、固体電解質形燃料電池素子(以下、「SOFC素子」ということもある。)には、より短時間で起動及び停止させること、並びにより低温で作動させること等、が要求されており、改良、開発がなされている。短時間で起動及び停止させるには、熱容量を小さくすることが必要であり、そのためには素子を小型化する必要がある。また、従来は1000℃を越える高温で作動する燃料電池が多かったが、より低温で作動させるため、材料面及び構造面からの改良、開発もなされている。
【0003】
現在、平板形セル、円筒形セル及び楕円体形セル等を用いた種々の構造のSOFC素子が提案されており、外径1〜5mmの円筒形セルを用いたSOFC素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この円筒形セルとしては、一般的には、比較的大径、長尺の、例えば、外径が10〜30mmで、長さが200〜1500mm程度のものが多く、且つその形状は直線状であり、折り曲げられた形状等の屈曲部を有するものはみられない。更に、近年、固体電解質層をできるだけ薄層として内部抵抗を低減し、800℃以下の比較的低温域でSOFC素子を作動させる研究もなされている。
【0004】
【特許文献1】特表2001−518688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これまでに知られている円筒形セル等を用いた比較的大型のSOFC素子では、その熱容量が大きいため、十分に短時間で起動及び停止させることができず、より熱容量の小さい、即ち、より小型のSOFC素子が必要とされている。また、作動温度についても、800℃から更に低温、例えば、500℃程度で作動させることができるSOFC素子が望まれている。このように低温で作動させることができれば、セラミックではなくステンレス鋼等の金属からなる部材を用いることができるばかりでなく、各種構成部材の機能劣化を防止することができ、SOFC素子の長寿命化が可能となるため好ましい。
【0006】
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、外径が小さい円筒形セルを多数集積させることにより、小型で効率が高く、短時間、例えば、数分で起動させ、且つ停止させることができ、更には低温において電解質としての作用に優れる固体電解質を用いること等により、例えば、500℃程度の低温域で作動させることができるSOFC素子等の電気化学素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
1.外径2mm以下の円筒形セル1が複数本集積されてなる構造を備える電気化学素子であって、該円筒形セル1は少なくとも1箇所の屈曲部16を有することを特徴とする電気化学素子。
2.上記円筒形セル1は、燃料極管11と、該燃料極管11の外周面に設けられた固体電解質層131と、該固体電解質層131の外周面に設けられた空気極層15とを備え、該燃料極管11の管壁が、該固体電解質層131及び該空気極層15の各々より厚い燃料極支持型である上記1.に記載の電気化学素子。
3.上記円筒形セル1は、空気極管12と、該空気極管12の外周面に設けられた固体電解質層132と、該固体電解質層132の外周面に設けられた燃料極層15とを備え、該空気極管12の管壁が、該固体電解質層132及び該燃料極層15の各々より厚い空気極支持型である上記1.に記載の電気化学素子。
4.空気極体21と、両端部を除く部分が該空気極体21に埋設されている外径2mm以下の複数の燃料極・固体電解質層積層管31と、を備える電気化学素子であって、該燃料極・固体電解質層積層管31は、円筒形燃料極管311と、該円筒形燃料極管311の外周面のうちの両端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層312とからなり、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成されており、該燃料極・固体電解質層積層管31の該両端部は該空気極体21の同一面側に突出していることを特徴とする電気化学素子。
5.上記4.に記載の電気化学素子の製造方法であって、上記円筒形燃料極管311となる未焼成円筒形燃料極管を成形し、該未焼成円筒形燃料極管を屈曲させて上記蛇腹状且つ平面状又は上記渦巻状且つ平面状に形成する形状付与工程と、該蛇腹状且つ平面状又は該渦巻状且つ平面状の未焼成円筒形燃料極管311’を熱処理する熱処理工程と、熱処理された未焼成円筒形燃料極管の外周面のうちの両端縁部を除く部分に、上記固体電解質層312となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して上記燃料極・固体電解質層積層管31を作製する同時焼成工程と、複数の該燃料極・固体電解質層積層管31の上記両端部を除く部分と、上記空気極体21となる未焼成空気極体とを接触させ、該未焼成空気極体を焼成する焼成工程と、を備える電気化学素子の製造方法。
6.燃料極体41と、両端部を除く部分が該燃料極体41に埋設されている外径2mm以下の複数の空気極・固体電解質層積層管51と、を備える電気化学素子であって、該空気極・固体電解質層積層管51は、円筒形空気極管511と、該円筒形空気極管511の外周面のうちの両端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層512とからなり、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成されており、該空気極・固体電解質層積層管51の該両端部は該燃料極体41の同一面側に突出していることを特徴とする電気化学素子。
7.上記6.に記載の電気化学素子の製造方法であって、上記円筒形空気極管511となる未焼成円筒形空気極管を成形し、該未焼成円筒形空気極管を屈曲させて上記蛇腹状且つ平面状又は上記渦巻状且つ平面状に形成する形状付与工程と、該蛇腹状且つ平面状又は該渦巻状且つ平面状の未焼成円筒形空気極管511’を熱処理する熱処理工程と、熱処理された未焼成円筒形空気極管の外周面のうちの両端縁部を除く部分に、上記固体電解質層512となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して上記空気極・固体電解質層積層管51を作製する同時焼成工程と、複数の該空気極・固体電解質層積層管51の上記両端部を除く部分と、上記燃料極体41となる未焼成燃料極体とを接触させ、該未焼成燃料極体を焼成する焼成工程と、を備える電気化学素子の製造方法。
8.上記固体電解質層は、Ce0.8Gd0.21.9、Ce0.8Sm0.21.9、及び希土類元素により安定化されたZrOのうちの少なくとも1種からなる上記2.、3.、4.又は6.に記載の電気化学素子。
9.蛇腹状且つ平面状に形成された円筒形燃料極管321と、該円筒形燃料極管321の外周面のうちの両端縁部及び該両端縁部の側の屈曲部を除く部分に形成された固体電解質層322とを備え、両端部及び該両端部の側の一方の屈曲部323を除く部分が空気極体22に埋設された複数の燃料極・固体電解質層積層管32の、該両端部及び該一方の屈曲部323のうちの該空気極体22の一面側の表面から離間した部分、並びに該燃料極・固体電解質層積層管32の他方の屈曲部324及び該空気極体22のうちの該燃料極・固体電解質層積層管32の該他方の屈曲部324が埋設されている部分が除去され、該燃料極・固体電解質層積層管32が該空気極体22の該一面側及び他面側において開口されてなることを特徴とする電気化学素子。
10.空気極体22と、一端部を除く部分が該空気極体22に埋設されている外径2mm以下の複数の燃料極・固体電解質層積層管32と、を備え、該燃料極・固体電解質層積層管32は、円筒形燃料極管321と、該円筒形燃料極管321の外周面のうちの一端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層322とからなり、該燃料極・固体電解質層積層管32の該一端部は該空気極体22の一面側に突出し、他端部は該空気極体22の他面側に開口している電気化学素子の製造方法であって、上記円筒形燃料極管321となる未焼成円筒形燃料極管を成形し、該未焼成円筒形燃料極管を屈曲させて蛇腹状且つ平面状に形成する形状付与工程と、該蛇腹状且つ平面状の未焼成円筒形燃料極管321’を熱処理する熱処理工程と、熱処理された未焼成円筒形燃料極管の外周面のうちの両端縁部及び該両端縁部の側の屈曲部を除く部分に、上記固体電解質層322となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して上記燃料極・固体電解質層積層管32を作製する同時焼成工程と、複数の該燃料極・固体電解質層積層管32の両端部及び該両端部の側の一方の屈曲部323を除く部分と、上記空気極体22となる未焼成空気極体とを接触させ、該未焼成空気極体を焼成する焼成工程と、該燃料極・固体電解質層積層管32の該両端部及び該一方の屈曲部323のうちの該空気極体22の該一面側の表面から離間した部分、並びに該燃料極・固体電解質層積層管32の他方の屈曲部324及び該空気極体22のうちの該燃料極・固体電解質層積層管32の該他方の屈曲部324が埋設されている部分を除去し、該燃料極・固体電解質層積層管32を該空気極体22の該一面側及び該他面側において開口させる開口工程と、を備える電気化学素子の製造方法。
11.蛇腹状且つ平面状に形成された円筒形空気極管521と、該円筒形空気極管521の外周面のうちの両端縁部及び該両端縁部の側の屈曲部を除く部分に形成された固体電解質層522とを備え、両端部及び該両端部の側の一方の屈曲部523を除く部分が燃料極体42に埋設された複数の空気極・固体電解質層積層管52の、該両端部及び該一方の屈曲部523のうちの該燃料極体42の一面側の表面から離間した部分、並びに該空気極・固体電解質層積層管52の他方の屈曲部524及び該燃料極体42のうちの該空気極・固体電解質層積層管52の該他方の屈曲部524が埋設されている部分が除去され、該空気極・固体電解質層積層管52が該燃料極体42の該一面側及び他面側において開口されてなることを特徴とする電気化学素子。
12.燃料極体42と、一端部を除く部分が該燃料極体42に埋設されている外径2mm以下の複数の空気極・固体電解質層積層管52と、を備え、該空気極・固体電解質層積層管52は、円筒形空気極管521と、該円筒形空気極管521の外周面のうちの一端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層522とからなり、該空気極・固体電解質層積層管52の該一端部は該燃料極体42の一面側に突出し、他端部は該燃料極体42の他面側に開口している電気化学素子の製造方法であって、上記円筒形空気極管521となる未焼成円筒形空気極管を成形し、該未焼成円筒形空気極管を屈曲させて蛇腹状且つ平面状に形成する形状付与工程と、該蛇腹状且つ平面状の未焼成円筒形空気極管521’を熱処理する熱処理工程と、熱処理された未焼成円筒形空気極管の外周面のうちの両端縁部及び該両端縁部の側の屈曲部を除く部分に、上記固体電解質層522となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して上記空気極・固体電解質層積層管52を作製する同時焼成工程と、複数の該空気極・固体電解質層積層管52の両端部及び該両端部の側の一方の屈曲部523を除く部分と、上記燃料極体42となる未焼成燃料極体とを接触させ、該未焼成燃料極体を焼成する焼成工程と、該空気極・固体電解質層積層管52の該両端部及び該一方の屈曲部523のうちの該燃料極体42の該一面側の表面から離間した部分、並びに該空気極・固体電解質層積層管52の他方の屈曲部524及び該燃料極体42のうちの該空気極・固体電解質層積層管52の該他方の屈曲部524が埋設されている部分を除去し、該空気極・固体電解質層積層管52を該燃料極体42の該一面側及び該他面側において開口させる開口工程と、を備える電気化学素子の製造方法。
13.上記固体電解質層は、Ce0.8Gd0.21.9、Ce0.8Sm0.21.9及び希土類元素により安定化されたZrOのうちの少なくとも1種を用いて設けられた上記10.又は12.に記載の電気化学素子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
外径2mm以下の円筒形セルが複数本集積されてなる構造を備える本発明の電気化学素子は、効率が高く、小型化することができるため、短時間で起動及び停止させることができる。
また、燃料極支持型又は空気極支持型である場合は、より低温で作動させ得る電気化学素子とすることができる。
空気極体と、外径2mm以下の複数の燃料極・固体電解質層積層管と、を備える、又は燃料極体と、外径2mm以下の複数の空気極・固体電解質層積層管と、を備える本発明の他の電気化学素子は、効率が高く、小型化することができるため、短時間で起動及び停止させることができる。
空気極体と、外径2mm以下の複数の燃料極・固体電解質層積層管と、を用いる、又は燃料極体と、外径2mm以下の複数の空気極・固体電解質層積層管と、を用いる本発明の電気化学素子の製造方法によれば、効率が高く、短時間で起動及び停止させることができる本発明の他の電気化学素子を容易に製造することができる。
燃料極・固体電解質層積層管の一端部は空気極体の一面側に突出し、他端部は空気極体の他面側に開口している電気化学素子、又は空気極・固体電解質層積層管の一端部は燃料極体の一面側に突出し、他端部は燃料極体の他面側に開口している電気化学素子、及び各々の電気化学素子の製造方法によれば、効率が高く、短時間で起動及び停止させることができ、且つ特定の構造を有する電気化学素子とすることができ、これらの素子を容易に製造することができる。
更に、Ce0.8Gd0.21.9、Ce0.8Sm0.21.9及び希土類元素により安定化されたZrOのうちの少なくとも1種からなる固体電解質層とした場合は、より低温で作動させ得る電気化学素子とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、例えば、図1〜17を用いて電気化学素子が固体電解質形燃料電池素子である場合について本発明を詳細に説明する。
[1]外径2mm以下の円筒形セルが複数本集積されてなる構造を備えるSOFC素子
上記「電気化学素子」は、図1のような、固体電解質形燃料電池素子101であり、上記「円筒形セル1」が複数本集積されてなる。また、この円筒形セル1は少なくとも1箇所の屈曲部16を有する。
【0010】
円筒形セル1の外径は2mm以下であり、1mm以下、特に0.7mm以下(通常、0.1mm以上)であることが好ましい。更に、円筒形セル1の管壁の厚さは特に限定されないが、20〜500μm、特に50〜200μmであることが好ましい。このような外径と管壁の厚さとを有する円筒形セル1であれば、効率が高く、小型のSOFC素子とすることができ、短時間で起動及び停止させることができる。この円筒形セル1が集積される本数も特に限定されず、通常、5〜200本、特に50〜150本とすることができる。
【0011】
円筒形セル1は、図1のように、少なくとも1箇所の屈曲部16を有する。このように屈曲させることにより、単位体積あたりにより多くの円筒形セル1を容易に集積させることができ、より短時間で起動及び停止させ得るSOFC素子とすることができる。この屈曲部16を有する円筒形セル1の形状は特に限定されないが、蛇腹状且つ平面状及び渦巻状且つ平面状等とすることができる。蛇腹状のときの折り曲げる回数、渦巻状のときの渦巻回数は、円筒形セル1の外径及びSOFC素子の大きさ等により適宜の回数とすることができる。
【0012】
円筒形セル1は、燃料極管11と、その外周面に設けられた固体電解質層131と、その外周面に設けられた空気極層14とを備え、燃料極管11の管壁が、固体電解質層131及び空気極層14の各々より厚い燃料極支持型とすることができる。更に、円筒形セル1は、空気極管12と、その外周面に設けられた固体電解質層132と、その外周面に設けられた燃料極層15とを備え、空気極管12の管壁が、固体電解質層132及び燃料極層15の各々より厚い空気極支持型とすることができる。また、燃料極管11の管壁は、固体電解質層131と空気極層14との合計より厚いことがより好ましく、空気極管12の管壁は、固体電解質層132と燃料極層15との合計より厚いことがより好ましい。
【0013】
円筒形セル1における燃料極管11及び空気極管12の各々の管壁の厚さは、20〜500μm、特に50〜200μmとすることができ、固体電解質層131、132の各々の厚さは2〜100μm、特に10〜50μmとすることができ、空気極層14及び燃料極層15の各々の厚さは、それぞれ5〜100μm、特に10〜50μmとすることができる。更に、燃料極管11の管壁の厚さは、固体電解質層131と空気極層14との合計厚さの2〜10倍、特に3〜8倍であることが好ましく、空気極管12の管壁の厚さは、固体電解質層132と燃料極層15との合計厚さの2〜10倍、特に3〜8倍であることが好ましい。
【0014】
燃料極管11及び燃料極層15の形成に用いる材料はSOFC素子の使用条件等により適宜選択することができる。この材料としては、例えば、Ni及びFe等の金属と、CeO系セラミック、Sc、Y等により安定化されたZrO系セラミック及び酸化マンガン等のセラミックのうちの少なくとも1種との混合物などが挙げられる。また、Ni及びFe等の金属の酸化物と、上記それぞれのセラミックの少なくとも1種との混合物などが挙げられる。これらの材料のうちでは、Ni及びFe等の金属と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物が好ましく、NiとCeO系セラミックとの混合物がより好ましい。このCeO系セラミックとしては、一般式Ce1−xLn2−δ(Lnは、希土類元素、つまりSm、Gd、Sc及びY等からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、Sm及びGdが好ましい。xは0.05≦x≦0.3である。)で表されるものが好ましく、Ce0.8Gd0.21.9(以下、「GDC」という。)及びCe0.8Sm0.21.9(以下、「SDC」という。)がより好ましい。
【0015】
固体電解質層131、132は、燃料電池の作動時に燃料極に導入される燃料ガス又は空気極に導入される支燃性ガスのうちの一方の一部をイオンとして移動させることができるイオン伝導性を有する。どのようなイオンを伝導することができるかは特に限定されないが、このイオンとしては、例えば、酸素イオン及び水素イオン等が挙げられる。この固体電解質層131、132の形成に用いる材料はSOFC素子の使用条件等により適宜選択することができる。この材料としては、例えば、CeO系セラミック、ZrO系セラミック、LaGaO系セラミック、BaCeO系セラミック、SrCeO系セラミック、SrZrO系セラミック及びCaZrO系セラミック等の固体電解質が挙げられる。これらの材料のうちでは、CeO系セラミックが好ましく、上記GDC及びSDCが特に好ましい。更に、希土類元素により安定化されたZrOも好ましい。この希土類元素は1種でもよく、2種以上でもよい。希土類元素は特に限定されないが、Y、Scがより好ましい。
【0016】
空気極管12及び空気極層14の形成に用いる材料もSOFC素子の使用条件等により適宜選択することができる。この材料としては、例えば、各種の金属、金属の酸化物、金属の複酸化物等を用いることができる。金属としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。また、金属の酸化物としては、La、Sr、Ce、Co、Mn及びFe等の酸化物(La、SrO、Ce、Co、MnO及びFeO等)が挙げられる。更に、複酸化物としては、少なくともLa、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe及びMn等を含有する複酸化物(La1−xSrCoO系複酸化物、La1−xSrFeO系複酸化物、La1−xSrCo1−yFe系複酸化物、La1−xSrMnO系複酸化物、Pr1−xBaCoO系複酸化物及びSm1−xSrCoO系複酸化物等)が挙げられる。
【0017】
これらのうちでは複酸化物が好ましく、Ln1−xCoO系複酸化物、Ln1−xFeO系複酸化物及びLn1−xCo1−yFe系複酸化物(Lnは希土類元素であり、MはSr又はBaである。)がより好ましい。これらのCo及び/又はFeを含有する複酸化物、特にCo及びFeを含有する複酸化物からなる空気極13は、SOFCを500〜850℃、更に500〜750℃の温度範囲で低温作動させた場合でも、電極として優れた性能を有する。
【0018】
上記の複酸化物は、Ln元素及びM元素の他に、更にその他の置換元素を有していてもよい。これらのLn1−xCoO系複酸化物、Ln1−xFeO系複酸化物及びLn1−xCo1−yFe系複酸化物のうちでも、Ln1−xCoO3±δ、Ln1−xFeO3±δ及びLn1−xCo1−yFe3±δで表され、0.2≦x≦0.8、0.5≦y≦0.9、且つ0≦δ<1(δは酸素過剰量又は酸素欠損量である。)である複酸化物が特に好ましく、LnはLa、Pr及びSmのうちの少なくとも1種であることが更に好ましい。このようなLn1−xCoO系複酸化物としては、例えば、La0.6Sr0.4CoO3±δ、Pr0.5Ba0.5CoO3±δ及びSm0.5Sr0.5CoO3±δ等が挙げられる。また、Ln1−xFeO系複酸化物としては、例えば、La0.6Sr0.4FeO3±δ、Pr0.5Ba0.5FeO3±δ及びSm0.5Sr0.5FeO3±δ等が挙げられる。更に、Ln1−xCo1−yFe系複酸化物としては、例えば、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83±δ、Pr0.5Ba0.5Co0.2Fe0.83±δ及びSm0.5Sr0.5Co0.2Fe0.83±δ等が挙げられる。
【0019】
[2]蛇腹状又は渦巻状の燃料極・固体電解質層積層管又は空気極・固体電解質層積層管を備えるSOFC素子
(1)SOFC素子の構造
(A)空気極体に燃料極・固体電解質層積層管が埋設されたSOFC素子
このSOFC素子は、空気極体21と、両端部を除く部分が空気極体21に埋設されている外径2mm以下の複数の燃料極・固体電解質層積層管31と、を備え、燃料極・固体電解質層積層管31は、円筒形燃料極管311と、その外周面のうちの両端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層312とからなり、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成されており、燃料極・固体電解質層積層管31の両端部は空気極体21の同一面側に突出している。
【0020】
上記「空気極体21」には、複数の上記「燃料極・固体電解質層積層管31」が埋設されている。空気極体21は、複数のSOFC素子が接続されて固体電解質形燃料電池(以下、「SOFC」ということもある。)とされる場合に、無用な空間が形成されることのないように、通常、立方体及び直方体等の外形を有する。空気極体21の大きさは特に限定されないが、例えば、立方体である場合、一辺が5〜50mm、特に5〜15mmの大きさとすることができる。また、直方体である場合、長辺が10〜100mm、特に15〜30mm、短辺が5〜50mm、特に5〜15mmの大きさとすることができる。尚、直方体であるときは、燃料極・固体電解質層積層管31の長さ方向が、直方体の長辺の方向となることが好ましい。この空気極体21は、前記[1]における空気極管12及び空気極層14の各々の形成に用いられる材料を用いて形成することができる。
【0021】
燃料極・固体電解質層積層管31は、上記「円筒形燃料極管311」と、上記「固体電解質層312」とからなり、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成されている。
固体電解質層312は、円筒形燃料極管311の外周面のうちの両端縁部を除く部分に設けられており、この固体電解質層312が設けられていない円筒形燃料極管311の両端縁部から電力が取り出される。この両端縁部の長さは特に限定されず、円筒形燃料極管311の作製時及びSOFC素子の製造時等における操作性などを考慮して適宜の長さ、例えば、100〜3000μm、特に200〜1500μmとすることができる。
【0022】
燃料極・固体電解質層積層管31は、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成されている。蛇腹状且つ平面状である場合、その平面方向における寸法、即ち、折り曲げられた燃料極・固体電解質層積層管31の長さ方向における寸法及び折り曲げられた燃料極・固体電解質層積層管31が並列に並んでいる幅方向の寸法は、いずれも限定されず、SOFC素子の大きさにより設定することができる。また、渦巻状且つ平面状である場合、複数の燃料極・固体電解質層積層管31を空気極体21に埋設したときに、無用な空間が形成されることのないように、通常、その平面形状を正方形及び長方形等とすることが好ましい。この渦巻状且つ平面状であるときも、その平面方向における寸法は限定されず、SOFC素子の大きさにより設定することができる。
【0023】
燃料極・固体電解質層積層管31の外径は2mm以下であり、1mm以下、特に0.7mm以下(通常、0.1mm以上)であることが好ましい。更に、燃料極・固体電解質層積層管31の管壁の厚さは特に限定されないが、20〜500μm、特に50〜200μmであることが好ましい。また、円筒形燃料極管311の管壁の厚さは、20〜500μm、特に50〜200μmとすることができ、固体電解質層312の厚さは2〜100μm、特に10〜50μmとすることができる。このような燃料極・固体電解質層積層管31であれば、効率が高く、小型のSOFC素子とすることができ、短時間で起動及び停止させることができる。燃料極・固体電解質層積層管31の折り曲げ回数も特に限定されず、通常、1〜50回、特に5〜30回とすることができる。
【0024】
この固体電解質形燃料電池素子102−11では、図7のように、燃料極・固体電解質層積層管31の両端部を除く部分が空気極体21に埋設されており、両端部は空気極体21の同一面側に突出している。この突出している両端部の長さは特に限定されず、SOFC素子の製造時等における操作性などを考慮して適宜の長さ、例えば、500〜3000μm、特に500〜1500μmとすることができる。このSOFC素子は、空気極体21の側面に空気極側集電膜6が積層され、空気極体21の、燃料極・固体電解質層積層管31の両端部が突出している一面側に絶縁膜8が積層され、更にこの絶縁膜8の表面のうちの燃料極・固体電解質層積層管31の両端部が突出している部分の近縁に帯状に燃料極側集電膜7が積層された固体電解質形燃料電池素子102−12とすることができる(図8参照)。更に、各々の燃料極・固体電解質層積層管31のそれぞれ一方の端部を覆って、燃料極側集電膜7と導通するように燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911が配設され、それぞれ他方の端部を覆って、燃料極側集電膜7と導通するように燃料ガス排出用マニホールド912が配設されて形成された固体電解質形燃料電池素子102−13とすることができる(図9参照)。
【0025】
(B)燃料極体に空気極・固体電解質層積層管が埋設されたSOFC素子
このSOFC素子は、燃料極体41と、両端部を除く部分が燃料極体41に埋設されている外径2mm以下の複数の空気極・固体電解質層積層管と51、を備え、空気極・固体電解質層積層管51は、円筒形空気極管511と、その外周面のうちの両端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層512とからなり、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成されており、空気極・固体電解質層積層管51の両端部は燃料極体41の同一面側に突出している。
【0026】
上記「燃料極体41」には、複数の上記「空気極・固体電解質層積層管51」が埋設されている。燃料極体41は、複数のSOFC素子が接続されてSOFCとされる場合に、無用な空間が形成されることのないように、通常、立方体及び直方体等の外形を有する。燃料極体41の大きさは特に限定されないが、例えば、立方体である場合、一辺が5〜50mm、特に5〜15mmの大きさとすることができる。また、直方体である場合、長辺が10〜100mm、特に15〜30mm、短辺が5〜50mm、特に5〜15mmの大きさとすることができる。尚、直方体であるときは、空気極・固体電解質層積層管51の長さ方向が、直方体の長辺の方向となることが好ましい。この燃料極体41は、前記[1]における燃料極管11及び燃料極層15の各々の形成に用いられる材料を用いて形成することができる。
【0027】
空気極・固体電解質層積層管51は、上記「円筒形空気極管511」と、上記「固体電解質層512」とからなり、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成されている。
固体電解質層512は、円筒形空気極管511の外周面のうちの両端縁部を除く部分に設けられており、この固体電解質層512が設けられていない円筒形空気極管511の両端縁部から電力が取り出される。この両端縁部の長さは特に限定されず、円筒形空気極管511の作製時及びSOFC素子の製造時等における操作性などを考慮して適宜の長さ、例えば、100〜3000μm、特に200〜1500μmとすることができる。
【0028】
空気極・固体電解質層積層管51は、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成されている。蛇腹状且つ平面状である場合、その平面方向における寸法、即ち、折り曲げられた空気極・固体電解質層積層管51の長さ方向における寸法及び折り曲げられた空気極・固体電解質層積層管51が並列に並んでいる幅方向の寸法は、いずれも限定されず、SOFC素子の大きさにより設定することができる。また、渦巻状且つ平面状である場合、複数の空気極・固体電解質層積層管51を燃料極体41に埋設したときに、無用な空間が形成されることのないように、通常、その平面形状を正方形及び長方形等とすることが好ましい。この渦巻状且つ平面状であるときも、その平面方向における寸法は限定されず、SOFC素子の大きさにより設定することができる。
【0029】
空気極・固体電解質層積層管51の外径は2mm以下であり、1mm以下、特に0.7mm以下(通常、0.1mm以上)であることが好ましい。更に、空気極・固体電解質層積層管51の管壁の厚さは特に限定されないが、20〜500μm、特に50〜200μmであることが好ましい。また、円筒形空気極管511の管壁の厚さは、20〜500μm、特に50〜200μmとすることができ、固体電解質層512の厚さは2〜100μm、特に10〜50μmとすることができる。このような空気極・固体電解質層積層管51であれば、効率が高く、小型のSOFC素子とすることができ、短時間で起動及び停止させることができる。空気極・固体電解質層積層管51の折り曲げ回数も特に限定されず、通常、1〜50回、特に5〜30回とすることができる。
【0030】
この固体電解質形燃料電池素子102−21では、図7のように、空気極・固体電解質層積層管51の両端部を除く部分が燃料極体41に埋設されており、両端部は燃料極体41の同一面側に突出している。この突出している両端部の長さは特に限定されず、SOFC素子の製造時等における操作性などを考慮して適宜の長さ、例えば、500〜3000μm、特に500〜1500μmとすることができる。このSOFC素子は、燃料極体41の側面に燃料極側集電膜7が積層され、燃料極体41の、空気極・固体電解質層積層管51の両端部が突出している一面側に絶縁膜8が積層され、更にこの絶縁膜8の表面のうちの空気極・固体電解質層積層管51の両端部が突出している部分の近縁に帯状に空気極側集電膜6が積層された固体電解質形燃料電池素子102−22とすることができる(図8参照)。更に、各々の空気極・固体電解質層積層管51のそれぞれ一方の端部を覆って、空気極側集電膜6と導通するように支燃性ガス導入用マニホールド兼空気極側端子921が配設され、それぞれ他方の端部を覆って、空気極側集電膜6と導通するように支燃性ガス排出用マニホールド922が配設されて形成された固体電解質形燃料電池素子102−23とすることができる(図9参照)。
【0031】
(2)SOFC素子の製造方法
上記(1)に記載のSOFC素子を製造する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の固体電解質形燃料電池素子の製造方法により製造することができる。
空気極体に燃料極・固体電解質層積層管が埋設されたSOFC素子の製造方法は、円筒形燃料極管311となる未焼成円筒形燃料極管を成形し、屈曲させて蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成する形状付与工程と、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状の未焼成円筒形燃料極管311’を熱処理する熱処理工程と、熱処理された未焼成円筒形燃料極管の外周面のうちの両端縁部を除く部分に、固体電解質層312となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して燃料極・固体電解質層積層管31を作製する同時焼成工程と、複数の燃料極・固体電解質層積層管31の両端部を除く部分と、空気極体21となる未焼成空気極体とを接触させ、未焼成空気極体を焼成する焼成工程と、を備える。
【0032】
また、燃料極体に空気極・固体電解質層積層管が埋設されたSOFC素子の製造方法は、円筒形空気極管511となる未焼成円筒形空気極管を成形し、屈曲させて蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成する形状付与工程と、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状の未焼成円筒形空気極管511’を熱処理する熱処理工程と、熱処理された未焼成円筒形空気極管の外周面のうちの両端縁部を除く部分に、固体電解質層512となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して空気極・固体電解質層積層管51を作製する同時焼成工程と、複数の空気極・固体電解質層積層管51の両端部を除く部分と、燃料極体41となる未焼成燃料極体とを接触させ、未焼成燃料極体を焼成する焼成工程と、を備える。
【0033】
(a)形状付与工程
未焼成円筒形燃料極管P1及び未焼成円筒形空気極管P2の形成方法は特に限定されない。未焼成円筒形燃料極管は、例えば、Ni及びFe等の金属粉末とCeO系セラミック等のセラミック粉末との混合粉末、各種の金属粉末、及び金属酸化物粉末とセラミック粉末との混合粉末などを含有する燃料極ペーストを用いて、先端に環状ダイが取り付けられた押出成形機E等により管状体を成形し(図2参照)、その後、乾燥することにより形成することができる。また、未焼成円筒形空気極管は、例えば、各種の金属粉末、金属酸化物粉末、金属複酸化物粉末等を含有する空気極ペーストを用いて、同様に押出成形機E等により管状体とし(図2参照)、その後、乾燥することにより形成することができる。この未焼成円筒形燃料極管P1及び未焼成円筒形空気極管P2は、十分に柔軟であって、所定の蛇腹形状又は渦巻形状の溝部を有する成形型を使用し、この溝部に未焼成円筒形燃料極管P1及び未焼成円筒形空気極管P2を嵌め込む等の方法により屈曲させることができる。これにより、所定の蛇腹状且つ平面状の未焼成円筒形燃料極管311’若しくは未焼成円筒形空気極管511’(図3参照)、又は所定の渦巻状且つ平面状の未焼成円筒形燃料極管313’若しくは未焼成円筒形空気極管513’(図10参照)とすることができる。
【0034】
(b)熱処理工程
燃料極ペースト及び空気極ペーストには有機バインダ等が含有されているため、この有機バインダ等を除去するため、形状付与された未焼成円筒形燃料極管311’、313’及び未焼成円筒形空気極管511’、513’を加熱して熱処理する。熱処理温度及び熱処理時間は用いる原料粉末の種類等により設定することができる。また、熱処理雰囲気は、大気雰囲気等の酸化雰囲気とすることができる。
【0035】
(c)同時焼成工程
熱処理された未焼成円筒形燃料極管311’、313’の外周面のうちの両端縁部を除く部分に未焼成固体電解質層を形成する方法、及び未焼成円筒形空気極管511’、513’の外周面のうちの両端縁部を除く部分に未焼成固体電解質層を形成する方法は、特に限定されない。例えば、前記の固体電解質を含有する固体電解質ペーストS2が投入された容器に、未焼成円筒形燃料極管311’又は未焼成円筒形空気極管511’の各々の両端縁部を除く部分を浸漬し、その後、乾燥する方法(図4参照)、及び未焼成円筒形燃料極管又は未焼成円筒形空気極管の各々の両端縁部を除く部分に、固体電解質ペーストを吹付け塗布する方法等により未焼成固体電解質層を形成することができる。これらの方法のうちでは、より正確に所定の両端縁部を除く部分に未焼成固体電解質層を形成することができる浸漬法が好ましい。
【0036】
未焼成固体電解質層と、未焼成円筒形燃料極管又は未焼成円筒形空気極管との同時焼成により、燃料極・固体電解質層積層管31又は空気極・固体電解質層積層管51が作製される(図5参照)。この同時焼成の焼成温度は用いるセラミック粉末の種類等にもよるが、前記の各種の原料を用いる場合、未焼成円筒形燃料極管のときは、1250〜1500℃、特に1250〜1450℃、更に1300〜1450℃とすることが好ましい。一方、未焼成円筒形空気極管のときは、1200〜1400℃、特に1200〜1350℃、更に1200〜1300℃とすることが好ましい。この温度範囲において各々を焼成することで、それぞれの未焼成体を十分に焼結させることができる。
尚、焼成温度を保持する時間は、焼成温度にもよるが、30分〜5時間、特に30分〜3時間とすることができる。また、焼成雰囲気は、通常、大気雰囲気等の酸化雰囲気である。
【0037】
(d)焼成工程
燃料極・固体電解質層積層管31の両端部を除く部分と、未焼成空気極体とを接触させる方法、及び空気極・固体電解質層積層管51の両端部を除く部分と、未焼成燃料極体とを接触させる方法は、特に限定されない。例えば、(1)空気極ペーストS3又は燃料極ペーストS1が投入された容器に、燃料極・固体電解質層積層管31又は空気極・固体電解質層積層管51の各々の両端部を除く部分を浸漬する方法(図6参照)、及び(2)空気極ペーストS3又は燃料極ペーストS1が投入された容器に、燃料極・固体電解質層積層管31又は空気極・固体電解質層積層管51の各々の両端部を除く部分を浸漬し、その後、取り出して乾燥させ、次いで、他の容器に充填された空気極用粉体又は燃料極用粉体に埋設する方法等により未焼成空気極体又は未焼成燃料極体を形成することができる。これらの方法のうちでは、(1)の方法が、より正確に所定の両端部を除く部分に未焼成空気極体又は未焼成燃料極体を形成することができ、且つ燃料極・固体電解質層積層管31と未焼成空気極体、及び空気極・固体電解質層積層管51と未焼成燃料極体とを密着させることができるため好ましい。
【0038】
上記の浸漬方法では、容器内で空気極ペーストS3又は燃料極ペーストS1を乾燥させ、その後、容器から取り出し、次いで、焼成する。この焼成により、空気極体21又は燃料極体41が形成され、固体電解質形燃料電池素子102−11又は固体電解質形燃料電池素子102−21を製造することができる(図7参照)。焼成温度は用いるセラミック粉末の種類等にもよるが、前記の各種の原料を用いる場合、未焼成空気極体のときは、800〜1300℃、特に800〜1250℃、更に800〜1200℃とすることが好ましい。一方、未焼成燃料極体のときは、1200〜1400℃、特に1200〜1350℃、更に1200〜1300℃とすることが好ましい。
尚、焼成温度を保持する時間は、焼成温度にもよるが、30分〜5時間、特に30分〜3時間とすることができる。また、焼成雰囲気は、通常、大気雰囲気等の酸化雰囲気である。
【0039】
空気極側集電膜6は、空気極体21の側面、及び燃料極体41の一面側に形成された絶縁膜8の表面の所定部分に白金又は銀等のペーストを塗布し、加熱する等の方法により形成することができる。更に、燃料極側集電膜7は、燃料極体41の側面、及び空気極体21の一面側に形成された絶縁膜8の表面の所定部分に白金又は銀等のペーストを塗布し、加熱する等の方法により形成することができ、固体電解質形燃料電池素子102−12又は固体電解質形燃料電池素子102−22を製造することができる(図8参照)。
【0040】
また、燃料極側集電膜7と、燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911及び燃料ガス排出用マニホールド912、又は空気極側集電膜6と、支燃性ガス導入用マニホールド兼空気極側端子921及び支燃性ガス排出用マニホールド922とは、未加熱燃料極側集電膜又は未加熱空気極側集電膜と、燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911及び燃料ガス排出用マニホールド912、又は支燃性ガス導入用マニホールド兼空気極側端子921及び支燃性ガス排出用マニホールド922とを接触させ、その後、未加熱燃料極側集電膜又は未加熱空気極側集電膜を加熱することで接合することができる。更に、燃料極側集電膜7又は空気極側集電膜6を予め形成しておき(図8参照)、燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911及び燃料ガス排出用マニホールド912の接合面に金属ロウ材などを塗布し、又は支燃性ガス導入用マニホールド兼空気極側端子921及び支燃性ガス排出用マニホールド922の接合面に金属ロウ材などを塗布し、この塗布面と、燃料極側集電膜7又は空気極側集電膜6とを接触させ、加熱することで接合することができる。このようにして、固体電解質形燃料電池素子102−13又は固体電解質形燃料電池素子102−23を製造することができる(図9参照)。
【0041】
[3]直線状の燃料極・固体電解質層積層管又は空気極・固体電解質層積層管を備えるSOFC素子
(1)SOFC素子の構造
(A)空気極体に燃料極・固体電解質層積層管が埋設されたSOFC素子
このSOFC素子は、空気極体22と、一端部を除く部分が空気極体22に埋設されている外径2mm以下の複数の燃料極・固体電解質層積層管32と、を備え、燃料極・固体電解質層積層管32は、円筒形燃料極管321と、その外周面のうちの一端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層322とからなり、燃料極・固体電解質層積層管32の一端部は空気極体22の一面側に突出し、他端部は空気極体22の他面側に開口している。
【0042】
上記「空気極体22」には、複数の上記「燃料極・固体電解質層積層管32」が埋設されている。空気極体22は、前記[2]、(1)、(A)における空気極体21の場合と同様の理由で、通常、立方体及び直方体等の外形を有し、その大きさも空気極体21と同様とすることができる。この空気極体22は、前記[1]における空気極管12及び空気極層14の各々の形成に用いられる材料を使用して形成することができる。
【0043】
燃料極・固体電解質層積層管32は、上記「円筒形燃料極管321」と、上記「固体電解質層322」とからなり、蛇腹状且つ平面状に形成されている。固体電解質層322は、円筒形燃料極管321の外周面のうちの一端縁部を除く部分に設けられており、この固体電解質層322が設けられていない円筒形燃料極管321の一端縁部から電力が取り出される。この一端縁部の長さは特に限定されず、円筒形燃料極管321の作製時及びSOFC素子の製造時等における操作性などを考慮して適宜の長さ、例えば、100〜3000μm、特に200〜1500μmとすることができる。
【0044】
燃料極・固体電解質層積層管32は、その一端部が空気極体22の一面側に突出し、他端部が空気極体22の他面側に開口しておればよく、空気極体22に埋設されている部分の形状は特に限定されない。この部分の形状は、直線状でもよく、蛇行していてもよいが、通常、直線状である。直線状であれば、複数の燃料極・固体電解質層積層管32を空気極体22に埋設したときに、無用な空間が形成されないように、密に集積させて埋設することができる。
【0045】
燃料極・固体電解質層積層管32の外径は2mm以下であり、1mm以下、特に0.7mm以下(通常、0.1mm以上)であることが好ましい。更に、燃料極・固体電解質層積層管32の管壁の厚さ、円筒形燃料極管321の管壁の厚さ、及び固体電解質層322の厚さは、それぞれ前記[2]、(1)、(A)における燃料極・固体電解質層積層管31の管壁の厚さ、円筒形燃料極管311の管壁の厚さ、及び固体電解質層312の厚さと同様とすることができる。このような燃料極・固体電解質層積層管32であれば、効率が高く、小型のSOFC素子とすることができ、短時間で起動及び停止させることができる。この燃料極・固体電解質層積層管32が埋設される本数も特に限定されず、通常、5〜200本、特に50〜150本とすることができる。
【0046】
この固体電解質形燃料電池素子103−11では、図15のように、燃料極・固体電解質層積層管32の一端部を除く部分が空気極体22に埋設されている。即ち、一端部は空気極体22の一面側に突出し、他端部は空気極体22の他面側に開口している。この一面側に突出している一端部の長さは特に限定されず、SOFC素子の製造時等における操作性などを考慮して適宜の長さ、例えば、500〜3000μm、特に500〜1500μmとすることができる。このSOFC素子は、空気極体22の側面に空気極側集電膜6が積層され、空気極体22の、燃料極・固体電解質層積層管32の一端部が突出している一面側に絶縁膜8が積層され、この絶縁膜8の表面に、円筒形燃料極管311と燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911とが導通するように燃料極側集電膜7が積層された固体電解質形燃料電池素子103−12とすることができる(図16参照)。更に、この一面側の燃料極・固体電解質層積層管32の一端部を覆って燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911が配設され、他面側の燃料極・固体電解質層積層管32の他端部の開口部を覆って燃料ガス排出用マニホールド912が配設されて形成された固体電解質形燃料電池素子103−13とすることができる(図17参照)。
【0047】
(B)燃料極体に空気極・固体電解質層積層管が埋設されたSOFC素子
このSOFC素子は、燃料極体42と、一端部を除く部分が該燃料極体42に埋設されている外径2mm以下の複数の空気極・固体電解質層積層管52と、を備え、空気極・固体電解質層積層管52は、円筒形空気極管521と、その外周面のうちの一端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層522とからなり、空気極・固体電解質層積層管52の一端部は燃料極体42の一面側に突出し、他端部は燃料極体42の他面側に開口している。
【0048】
上記「燃料極体42」には、複数の上記「空気極・固体電解質層積層管52」が埋設されている。燃料極体42は、前記[2]、(1)、(B)における燃料極体41の場合と同様の理由で、通常、立方体及び直方体等の外形を有し、その大きさも燃料極体41と同様とすることができる。この燃料極体42は、前記[1]における燃料極管11及び燃料極層15の各々の形成に用いられる材料を使用して形成することができる。
【0049】
空気極・固体電解質層積層管52は、上記「円筒形空気極管521」と、上記「固体電解質層522」とからなり、蛇腹状且つ平面状に形成されている。固体電解質層522は、円筒形空気極管521の外周面のうちの一端縁部を除く部分に設けられており、この固体電解質層522が設けられていない円筒形空気極管521の一端縁部から電力が取り出される。この一端縁部の長さは特に限定されず、円筒形空気極管521の作製時及びSOFC素子の製造時等における操作性などを考慮して適宜の長さ、例えば、100〜3000μm、特に200〜1500μmとすることができる。
【0050】
空気極・固体電解質層積層管52は、その一端部が燃料極体42の一面側に突出し、他端部が燃料極体42の他面側に開口しておればよく、燃料極体42に埋設されている部分の形状は特に限定されない。この部分の形状は、直線状でもよく、蛇行していてもよいが、通常、直線状である。直線状であれば、複数の燃料極・固体電解質層積層管52を燃料極体42に埋設したときに、無用な空間が形成されないように、密に集積させて埋設することができる。
【0051】
空気極・固体電解質層積層管52の外径は2mm以下であり、1mm以下、特に0.7mm以下(通常、0.1mm以上)であることが好ましい。更に、空気極・固体電解質層積層管52の管壁の厚さ、円筒形空気極管521の管壁の厚さ、及び固体電解質層522の厚さは、それぞれ前記[2]、(1)、(B)における空気極・固体電解質層積層管51の管壁の厚さ、円筒形空気極管511の管壁の厚さ、及び固体電解質層512の厚さと同様とすることができる。このような空気極・固体電解質層積層管52であれば、効率が高く、小型のSOFC素子とすることができ、短時間で起動及び停止させることができる。この空気極・固体電解質層積層管52が埋設される本数も特に限定されず、通常、5〜200本、特に50〜150本とすることができる。
【0052】
この固体電解質形燃料電池素子103−21では、図15のように、空気極・固体電解質層積層管52の一端部を除く部分が燃料極体42に埋設されている。即ち、一端部は燃料極体42の一面側に突出し、他端部は燃料極体42の他面側に開口している。この一面側に突出している一端部の長さは特に限定されず、SOFC素子の製造時等における操作性などを考慮して適宜の長さ、例えば、500〜3000μm、特に500〜1500μmとすることができる。このSOFC素子は、燃料極体42の側面に燃料極側集電膜7が積層され、燃料極体42の、空気極・固体電解質層積層管52の一端部が突出している一面側に絶縁膜8積層され、この、絶縁膜8の表面に、円筒形空気極管511と支燃性ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子921とが導通するように空気極側集電膜6が積層された固体電解質形燃料電池素子103−22とすることができる(図16参照)。更に、この一面側の空気極・固体電解質層積層管52の一端部を覆って支燃性ガス導入用マニホールド兼空気極側端子921が配設され、他面側の空気極・固体電解質層積層管52の他端部の開口部を覆って支燃性ガス排出用マニホールド922が配設されて形成された固体電解質形燃料電池素子103−23とすることができる(図17参照)。
【0053】
(2)SOFC素子の製造方法
上記(1)に記載のSOFC素子を製造する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の他の固体電解質形燃料電池素子の製造方法により製造することができる。
空気極体に燃料極・固体電解質層積層管が埋設された燃料電池素子の製造方法は、円筒形燃料極管321となる未焼成円筒形燃料極管を成形し、屈曲させて蛇腹状且つ平面状に形成する形状付与工程と、蛇腹状且つ平面状の未焼成円筒形燃料極管321’を熱処理する熱処理工程と、熱処理された未焼成円筒形燃料極管の外周面のうちの両端縁部及び両端縁部の側の屈曲部を除く部分に、固体電解質層322となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して燃料極・固体電解質層積層管32を作製する同時焼成工程と、複数の燃料極・固体電解質層積層管32の両端部及び両端部の側の一方の屈曲部323を除く部分と、空気極体22となる未焼成空気極体とを接触させ、未焼成空気極体を焼成する焼成工程と、燃料極・固体電解質層積層管32の両端部及び一方の屈曲部323のうちの空気極体22の一面側の表面から離間した部分、並びに燃料極・固体電解質層積層管32の他方の屈曲部324及び空気極体22のうちの燃料極・固体電解質層積層管32の他方の屈曲部324が埋設されている部分を除去し、燃料極・固体電解質層積層管32を空気極体22の一面側及び他面側において開口させる開口工程と、を備える。
【0054】
また、燃料極体に空気極・固体電解質層積層管が埋設された燃料電池素子の製造方法は、円筒形空気極管521となる未焼成円筒形空気極管を成形し、屈曲させて蛇腹状且つ平面状に形成する形状付与工程と、蛇腹状且つ平面状の未焼成円筒形空気極管521’を熱処理する熱処理工程と、熱処理された未焼成円筒形空気極管の外周面のうちの両端縁部及び両端縁部の側の屈曲部を除く部分に、固体電解質層522となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して空気極・固体電解質層積層管52を作製する同時焼成工程と、複数の空気極・固体電解質層積層管52の両端部及び両端部の側の一方の屈曲部523を除く部分と、燃料極体42となる未焼成燃料極体とを接触させ、未焼成燃料極体を焼成する焼成工程と、空気極・固体電解質層積層管52の両端部及び一方の屈曲部523のうちの燃料極体42の一面側の表面から離間した部分、並びに空気極・固体電解質層積層管52の他方の屈曲部524及び燃料極体42のうちの空気極・固体電解質層積層管52の他方の屈曲部524が埋設されている部分を除去し、空気極・固体電解質層積層管52を燃料極体42の一面側及び他面側において開口させる開口工程と、を備える。
【0055】
(a)形状付与工程
未焼成円筒形燃料極管及び未焼成円筒形空気極管の形成方法は特に限定されず、付与される形状が蛇腹形状のみであることを除いて、前記[2]、(2)、(a)の記載をそのまま適用することができる。この工程において、未焼成円筒形燃料極管321’若しくは未焼成円筒形空気極管521’(図11参照)が形成される。
【0056】
(b)熱処理工程
この熱処理工程については前記[2]、(2)、(b)の記載をそのまま適用することができる。
【0057】
(c)同時焼成工程
熱処理された未焼成円筒形燃料極管321’の外周面のうちの両端縁部及びこの両端縁部の側の屈曲部を除く部分に未焼成固体電解質層を形成する方法、並びに未焼成円筒形空気極管521’の外周面のうちの一端縁部及びこの一端縁部の側の屈曲部を除く部分に未焼成固体電解質層を形成する方法は特に限定されず、前記[2]、(2)、(c)の記載の方法と同様にして形成することができる(図12参照)。また、未焼成固体電解質層と、未焼成円筒形燃料極管321’又は未焼成円筒形空気極管521’との同時焼成については、前記[2]、(2)、(c)の記載をそのまま適用することができる(図13参照)。
【0058】
(d)焼成工程
燃料極・固体電解質層積層管32の一端縁部及びこの一端縁部の側の屈曲部を除く部分と、未焼成空気極体とを接触させる方法、並びに空気極・固体電解質層積層管の一端縁部及びこの一端縁部の側の屈曲部を除く部分と、未焼成燃料極体とを接触させる方法は、特に限定されず、前記[2]、(2)、(d)の方法と同様にして接触させることができる(図14参照)。また、焼成については、前記[2]、(2)、(d)の記載をそのまま適用することができる。
【0059】
(e)開口工程
燃料極・固体電解質層積層管32の、両端部と一方の屈曲部323のうちの空気極体22の一面側の表面から離間した部分、及び他方の屈曲部324と空気極体22のうちの他方の屈曲部324が埋設されている部分、並びに空気極・固体電解質層積層管52の、両端部と一方の屈曲部523のうちの燃料極体42の一面側の表面から離間した部分、及び他方の屈曲部524と燃料極体42のうちの他方の屈曲部524が埋設されている部分を除去する方法は特に限定されない。例えば、これらの部分を平面研削盤等により研削する方法、及び切断機で切断する方法などにより除去することができる。このように所定部分を除去することにより、燃料極・固体電解質層積層管32を空気極体22の一面側及び他面側において開口させることができ、空気極・固体電解質層積層管52を燃料極体42の一面側及び他面側において開口させ、固体電解質形燃料電池素子103−11又は固体電解質形燃料電池素子103−21を製造することができる(図15参照)。
【0060】
空気極側集電膜6は、空気極体22の側面、及び燃料極体42の一面側に形成された絶縁膜8の表面の所定部分に白金又は銀等のペーストを塗布し、加熱する等の方法により形成することができる。更に、燃料極側集電膜7は、燃料極体42の側面、及び空気極体22の一面側に形成された絶縁膜8の表面の所定部分に白金又は銀等のペーストを塗布し、加熱する等の方法により形成することができる。また、空気極体22の他面側の燃料ガス排出用マニホールド912が接合される部分、又は燃料極体42の他面側の支燃性ガス排出用マニホールド922が接合される部分、に絶縁膜8を形成し、固体電解質形燃料電池素子103−12又は固体電解質形燃料電池素子103−22を製造することができる(図16参照)。
【0061】
また、燃料極側集電膜7と燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911、及び空気極側集電膜6と支燃性ガス導入用マニホールド兼空気極側端子921とは、未加熱燃料極側集電膜と燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911、及び未加熱空気極側集電膜と支燃性ガス導入用マニホールド兼空気極側端子921、とを接触させ、その後、未加熱燃料極側集電膜及び未加熱空気極側集電膜を加熱することで接合することができる。更に、燃料極側集電膜7又は空気極側集電膜6を予め形成しておき(図16参照)、燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911の燃料極側集電膜7と接合させる面に金属ロウ材などを塗布し、及び支燃性ガス導入用マニホールド兼空気極側端子921の空気極側集電膜6と接合させる面に金属ロウ材などを塗布し、この塗布面と、燃料極側集電膜7又は空気極側集電膜6とを接触させ、加熱して、ロウ付けすることで接合することができる。
【0062】
一方、空気極体22と燃料ガス排出用マニホールド912、及び燃料極体42と支燃性ガス排出用マニホールド922とは、燃料ガス排出用マニホールド912の、空気極体22の他面側に形成された絶縁膜8と接合される面に金属ロウ材などを塗布し、及び支燃性ガス排出用マニホールド922の、燃料極体42の他面側に形成された絶縁膜8と接合される面に金属ロウ材などを塗布し、この塗布面と、絶縁膜8とを接触させ、加熱して、ロウ付けすることで接合することができる。このようにして、固体電解質形燃料電池素子103−13又は固体電解質形燃料電池素子103−23を製造することができる(図17参照)。
【0063】
[4]燃料ガス及び支燃性ガス
固体電解質形燃料電池を用いて発電させる場合、燃料極側には燃料ガスを導入し、空気極側には支燃性ガスを導入する。燃料ガスとしては、水素、水素源となる炭化水素(改質により水素とする。)、水素と炭化水素との混合ガス、及びこれらのガスを所定温度の水中を通過させ加湿した燃料ガス、これらのガスに水蒸気を混合させた燃料ガス等が挙げられる。炭化水素は特に限定されず、例えば、天然ガス、ナフサ、石炭ガス化ガス等が挙げられる。更に、メタン、エタン、プロパン、ブタン及びペンタン等の炭素数が1〜10、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜4の飽和炭化水素、並びにエチレン及びプロピレン等の不飽和炭化水素を主成分とするものが好ましく、飽和炭化水素を主成分とするものが更に好ましい。この燃料ガスとしては水素が好ましい。これらの燃料ガスは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。また、50体積%以下の窒素及びアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。
【0064】
支燃性ガスとしては、酸素と他の気体との混合ガス等が挙げられる。また、この混合ガスには80体積%以下の窒素及びアルゴン等の不活性ガスが含有されていてもよい。これらの支燃性ガスのうちでは安全であって、且つ安価であるため空気(約80体積%の窒素が含まれている。)が好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(1)空気極体に蛇腹状の燃料極・固体電解質層積層管が埋設された燃料電池素子
実施例1
酸化ニッケル(NiO)粉末と、前記GDC粉末とを混合し、その後、造孔材として人造黒鉛粉末を配合し、更に混合し、次いで、バインダとしてポリウレタン系樹脂を配合し、更に混合して調製した燃料極ペーストを、先端に環状ダイが取り付けられた押出成形機Eを用いて押出成形し(図2参照)、次いで、乾燥し、未焼成円筒形燃料極管P1を成形した。その後、所定の蛇腹形状の溝部を有する成形型に嵌め込んで屈曲させ、両端縁部が他の部分より長い蛇腹状且つ平面状の未焼成円筒形燃料極管311’(図3参照)を形成した。
【0066】
次いで、未焼成円筒形燃料極管311’を、大気雰囲気下、1100℃で1時間加熱した。この熱処理は、所謂、仮焼といわれる工程であり、これによりバインダと人造黒鉛粉末とが除去される。
【0067】
その後、熱処理された未焼成円筒形燃料極管311’を、GDC粉末に、溶媒としてエタノール、バインダとしてアクリル系共重合体(水溶液)を配合して調製した固体電解質ペーストS2が投入された容器に、その外周面のうちの両端部から1000μmの両端縁部を除く部分が固体電解質ペーストS2に接触するようにして浸漬して(図4参照)、未焼成固体電解質層を形成し、次いで、室温で1時間乾燥した。その後、大気雰囲気下、1400℃で1時間保持して、未焼成円筒形燃料極管311’と未焼成固体電解質層とを同時焼成し、燃料極・固体電解質層積層管31を作製した(図5参照)。この燃料極・固体電解質層積層管31の外径は540μmであった。また、円筒形燃料極管311の外径は500μm、管壁の厚さは75μmであった。従って、固体電解質層312の厚さは20μmとなる。また、蛇腹状に折り曲げられた部分の長さは11mm(屈曲部を含む長さである。)であり、全幅は8mmであった。
【0068】
次いで、燃料極・固体電解質層積層管31を、La0.8Sr0.2FeO粉末に、溶媒としてブチルカルビトールを配合して調製した空気極ペーストS3が投入された容器に、その外周面のうちの両端部を除く部分が空気極ペーストS3に浸漬されるように投入した(図6参照)。その後、乾燥し、次いで、容器から取り出し、大気雰囲気下、1000℃で1時間保持して焼成し、空気極体21を形成した。この空気極体21は、一辺が10mmの立方体であり、その一面に燃料極・固体電解質層積層管31の両端部が突出している。このようにして固体電解質形燃料電池素子102−11を製造した(図7参照)。
【0069】
また、空気極体21の側面に、白金ペーストを塗布し、この側面と同寸法で厚さが20μmである空気極側集電膜6を形成し、空気極体21の、燃料極・固体電解質層積層管31の両端部が突出している一面側に、この一面側と同寸法で厚さが100μmのMgO−MgAl焼結体からなる絶縁膜8を積層した。その後、絶縁膜8の表面のうちの各々の燃料極・固体電解質層積層管31のそれぞれ一端部近縁に、円筒形燃料極管311と下記の燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911とが導通するように、及び他端部近縁に、円筒形燃料極管311と下記の燃料ガス排出用マニホールド912とが導通するように、銀ペーストを帯状に塗布した。次いで、ステンレス鋼からなり、内面側に燃料ガスの導入用流路を有する燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911の、燃料極側集電膜7と接合される面に銀ロウ材を塗布し、各々の燃料極・固体電解質層積層管31のそれぞれ一端部を覆うように配設し、また、ステンレス鋼からなり、内面側に燃料ガスの排出用流路を有する燃料ガス排出用マニホールド912の、燃料極側集電膜7と接合される面に銀ロウ材を塗布し、各々の燃料極・固体電解質層積層管31のそれぞれ他端部を覆うように配設し、その後、加熱して、厚さが20μmの燃料極側集電膜7を形成するとともに、燃料極側集電膜7と、燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911及び燃料ガス排出用マニホールド912とを接合させ、固体電解質形燃料電池素子102−13を製造した(図9参照)。
【0070】
実施例2
図10のような、渦巻状且つ平面状の未焼成円筒形燃料極管313’を用いた他は、実施例1と同様にして固体電解質形燃料電池素子を製造した。
【0071】
(2)空気極体に直線状の燃料極・固体電解質層積層管が埋設された燃料電池素子
実施例3
実施例1の場合と同様にして、両端縁部が他の部分と同じ長さである他は、未焼成円筒形燃料極管311’と同様の蛇腹状且つ平面状の未焼成円筒形燃料極管321’(図11参照)を形成した。その後、この未焼成円筒形燃料極管321’を、実施例1の場合と同様にして熱処理した。次いで、熱処理された未焼成円筒形燃料極管321’を、固体電解質ペーストS2が投入された容器に、その外周面のうちの一方の側の屈曲部の端縁部を除く部分が固体電解質ペーストS2に浸漬されるようにして投入して(図12参照)、未焼成固体電解質層を形成し、実施例1と同様にして乾燥し、同様にして、未焼成円筒形燃料極管321’と未焼成固体電解質層とを同時焼成し、燃料極・固体電解質層積層管32を作製した(図13参照)。この燃料極・固体電解質層積層管32の外径、円筒形燃料極管321の外径、管壁の厚さ、及び固体電解質層322の厚さは実施例1の場合と同じであり、蛇腹状に折り曲げられた部分の長さは15.4mm(屈曲部を含む長さである。)であり、全幅は10mmであった。
【0072】
その後、燃料極・固体電解質層積層管32を、空気極ペーストS3が投入された容器に、その外周面のうちの一方の側の屈曲部から2200μmの端縁部を除く部分を除いて空気極ペーストS3に浸漬されるように投入した(図14参照)。次いで、実施例1と同様にして乾燥し、同様にして、空気極ペーストを焼成し、空気極体22を形成した。その後、燃料極・固体電解質層積層管32の、両端部と一方の屈曲部323のうちの空気極体22の一面側の表面から1000μm離間した部分、及び他方の屈曲部324が埋設された側の空気極体22の他面側の表面から1200μmの部分を平面研削盤により研削し、燃料極・固体電解質層積層管32を空気極体22の一面側及び他面側において開口させた。この空気極体22は、一辺が12mmの立方体であり、その一面側に燃料極・固体電解質層積層管32の一端部が突出し、他面側に他端部が開口している。このようにして固体電解質形燃料電池素子103−11を製造した(図15参照)。
【0073】
また、空気極体22の側面に、白金ペーストを塗布し、この側面と同寸法で厚さが20μmである空気極側集電膜6を形成し、空気極体22の、燃料極・固体電解質層積層管32の一端部が突出している一面側、及び燃料極・固体電解質層積層管32の他端部が開口している他面側に、これら一面側及び他面側と同寸法で厚さが100μmのMgO−MgAl焼結体からなる絶縁膜8を積層した。その後、空気極体22の一面側に形成された絶縁膜8の表面に、銀ペーストを塗布し、円筒形燃料極管321と下記の燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911とが導通するように、且つ空気極側集電膜6と接触しないように、厚さが20μmの燃料極側集電膜7を形成し、固体電解質形燃料電池素子103−12を製造した(図16参照)。更に、ステンレス鋼からなり、内面側に燃料ガスの導入用流路を有する燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911の、燃料極側集電膜7と接合される面に銀ロウ材を塗布し、各々の燃料極・固体電解質層積層管32の空気極体22の一面側におけるそれぞれの一端部を覆うように配設し、また、ステンレス鋼からなり、内面側に燃料ガスの排出用流路を有する燃料ガス排出用マニホールド912の、空気極体22の他面側に形成された絶縁膜8と接合される面に銀ロウ材を塗布し、各々の燃料極・固体電解質層積層管32の空気極体22の他面側におけるそれぞれの他端部の開口部を覆うように配設し、次いで、加熱して、燃料極側集電膜7と燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子911、及び空気極体22の他面側に形成された絶縁膜8と燃料ガス排出用マニホールド912とをロウ付けし、固体電解質形燃料電池素子103−13を製造した(図17参照)。
【0074】
尚、本発明では上記の実施例に限られず、目的、用途等によって本発明の範囲内において種々変更した実施例とすることができる。例えば、立方体等の形状の空気極体又は燃料極体に代えて空気極シート又は燃料極シートを用いてもよい。即ち、蛇腹状且つ平面状に形状付与され、未焼成固体電解質層と同時焼成された燃料極・固体電解質層積層管と、未焼成空気極シートとを交互に積層し、又は蛇腹状且つ平面状に形状付与され、未焼成固体電解質層と同時焼成された空気極・固体電解質層積層管と、未焼成燃料極シートとを交互に積層し、その後、未焼成空気極シート又は未焼成燃料極シートを焼成し、空気極シート間に燃料極・固体電解質層積層管が密着して介装された構造、又は燃料極シート間に空気極・固体電解質層積層管が密着して介装された構造を備えるSOFC素子とすることもできる。
【0075】
また、酸素発生器では、両方の電極をSOFC素子の空気極に相当する材料により形成し、両電極間に直流電流を流すことで、SOFC素子のときの燃料ガス用マニホールド内に酸素が発生する。更に、排ガスリアクターでは、両方の電極をSOFC素子の燃料極に相当する材料により形成し、両電極間に直流電流を流すことで、SOFC素子の場合の燃料ガス用マニホールド内を流通する排ガスに含まれるNOxが還元されて窒素に変化し、無害化される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】円筒形セルが複数本集積されてなる構造体の模式的な斜視図である。
【図2】未焼成円筒形燃料極管(又は未焼成円筒形空気極管)を成形している様子を示す模式図である。
【図3】蛇腹状且つ平面状に形成された未焼成円筒形燃料極管(又は未焼成円筒形空気極管)を示す模式図である。
【図4】固体電解質ペーストが投入された容器に、図3の蛇腹状且つ平面状に形成された未焼成円筒形燃料極管(又は未焼成円筒形空気極管)を浸漬している様子を示す模式図である。
【図5】円筒形燃料極管(又は円筒形空気極管)の外周面のうちの両端縁部を除く部分に固体電解質層が形成されてなる燃料極・固体電解質層積層管(又は空気極・固体電解質層積層管)を示す模式図である。
【図6】容器に図5の燃料極・固体電解質層積層管(又は空気極・固体電解質層積層管)を複数並列に収容し、空気極ペースト(又は燃料極ペースト)を投入している様子を示す模式図である。
【図7】空気極体(又は燃料極体)に、複数の燃料極・固体電解質層積層管(又は空気極・固体電解質層積層管)の両端部を除く部分が埋設されてなる固体電解質形燃料電池素子の外観を示す斜視図である。
【図8】更に側面に空気極側集電膜(又は燃料極側集電膜)が付設され、上面に絶縁膜及び燃料極側集電膜(又は空気極側集電膜)が付設された固体電解質形燃料電池素子の外観を示す斜視図である。
【図9】更に燃料極側集電膜(空気極側集電膜)の上面に、燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子(又は支燃性ガス導入用マニホールド兼空気極側端子)及び燃料ガス排出用マニホールド(又は支燃性ガス排出用マニホールド)が付設された固体電解質形燃料電池素子の外観を示す斜視図である。
【図10】渦巻状且つ平面状に形成された未焼成円筒形燃料極管(又は未焼成円筒形空気極管)を示す模式図である。
【図11】蛇腹状且つ平面状に形成された、図3とは異なる他の態様の未焼成円筒形燃料極管(又は未焼成円筒形空気極管)を示す模式図である。
【図12】固体電解質ペーストが投入された容器に、図11の蛇腹状且つ平面状に形成された未焼成円筒形燃料極管(又は未焼成円筒形空気極管)を浸漬している様子を示す模式図である。
【図13】円筒形燃料極管(又は円筒形空気極管)の外周面のうちの両端縁部及び一方の屈曲部を除く部分に固体電解質層が形成されてなる燃料極・固体電解質層積層管(又は空気極・固体電解質層積層管)を示す模式図である。
【図14】容器に図13の燃料極・固体電解質層積層管(又は空気極・固体電解質層積層管)を複数並列に収容し、空気極ペースト(又は燃料極ペースト)を投入している様子を示す模式図である。
【図15】空気極体(又は燃料極体)の一面側及び他面側で、複数の燃料極・固体電解質層積層管(又は空気極・固体電解質層積層管)が開口している固体電解質形燃料電池素子の外観を示す斜視図である。
【図16】更に側面に空気極側集電膜(又は燃料極側集電膜)が付設され、上面に絶縁膜及び燃料極側集電膜(空気極側集電膜)が付設された固体電解質形燃料電池素子の外観を示す斜視図である。
【図17】更に燃料極側集電膜(又は空気極側集電膜)の上面に、燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子(又は支燃性ガス導入用マニホールド兼空気極側端子)が付設され、空気極体(又は燃料極体)の下面に燃料ガス排出用マニホールド(又は支燃性ガス排出用マニホールド)が付設された固体電解質形燃料電池セルの外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
1;円筒形セル、11;燃料極管、12;空気極管、131、132;固体電解質層、14;空気極層、15;燃料極層、16;屈曲部、21、22;空気極体、31、32;燃料極・固体電解質層積層管、311、321;円筒形燃料極管、311’、321’;蛇腹状且つ平面状に形成された未焼成円筒形燃料極管、312、322;固体電解質層、313’;渦巻状且つ平面状に形成された未焼成円筒形燃料極管、323;一方の屈曲部、324;他方の屈曲部、41、42;燃料極体、51、52;空気極・固体電解質層積層管、511、521;円筒形空気極管、511’、521’;蛇腹状且つ平面状に形成された未焼成円筒形空気極管、512、522;固体電解質層、513’;渦巻状且つ平面状に形成された未焼成円筒形空気極管、523;一方の屈曲部、524;他方の屈曲部、6;空気極側集電膜、7;燃料極側集電膜、8;絶縁膜、911;燃料ガス導入用マニホールド兼燃料極側端子、912;燃料ガス排出用マニホールド、921;支燃性ガス導入用マニホールド兼空気極側端子、922;支燃性ガス排出用マニホールド、P1;未焼成円筒形燃料極管、E;押出成形機、P2;未焼成円筒形空気極管、S1;燃料極ペースト、S2;固体電解質ペースト、S3;空気極ペースト、101、102−11、102−12、102−13、102−21、102−22、102−23、103−11、103−12、103−13、103−21、103−22、103−23;固体電解質形燃料電池素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径2mm以下の円筒形セル1が複数本集積されてなる構造を備える電気化学素子であって、
該円筒形セル1は少なくとも1箇所の屈曲部16を有することを特徴とする電気化学素子。
【請求項2】
上記円筒形セル1は、燃料極管11と、該燃料極管11の外周面に設けられた固体電解質層131と、該固体電解質層131の外周面に設けられた空気極層14とを備え、該燃料極管11の管壁が、該固体電解質層131及び該空気極層14の各々より厚い燃料極支持型である請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項3】
上記円筒形セル1は、空気極管12と、該空気極管12の外周面に設けられた固体電解質層132と、該固体電解質層132の外周面に設けられた燃料極層15とを備え、該空気極管12の管壁が、該固体電解質層132及び該燃料極層15の各々より厚い空気極支持型である請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項4】
空気極体21と、両端部を除く部分が該空気極体21に埋設されている外径2mm以下の複数の燃料極・固体電解質層積層管31と、を備える電気化学素子であって、
該燃料極・固体電解質層積層管31は、円筒形燃料極管311と、該円筒形燃料極管311の外周面のうちの両端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層312とからなり、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成されており、該燃料極・固体電解質層積層管31の該両端部は該空気極体21の同一面側に突出していることを特徴とする電気化学素子。
【請求項5】
請求項4に記載の電気化学素子の製造方法であって、
上記円筒形燃料極管311となる未焼成円筒形燃料極管を成形し、該未焼成円筒形燃料極管を屈曲させて上記蛇腹状且つ平面状又は上記渦巻状且つ平面状に形成する形状付与工程と、
該蛇腹状且つ平面状又は該渦巻状且つ平面状の未焼成円筒形燃料極管311’を熱処理する熱処理工程と、
熱処理された未焼成円筒形燃料極管の外周面のうちの両端縁部を除く部分に、上記固体電解質層312となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して上記燃料極・固体電解質層積層管31を作製する同時焼成工程と、
複数の該燃料極・固体電解質層積層管31の上記両端部を除く部分と、上記空気極体21となる未焼成空気極体とを接触させ、該未焼成空気極体を焼成する焼成工程と、を備えることを特徴とする電気化学素子の製造方法。
【請求項6】
燃料極体41と、両端部を除く部分が該燃料極体41に埋設されている外径2mm以下の複数の空気極・固体電解質層積層管51と、を備える電気化学素子であって、
該空気極・固体電解質層積層管51は、円筒形空気極管511と、該円筒形空気極管511の外周面のうちの両端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層512とからなり、蛇腹状且つ平面状又は渦巻状且つ平面状に形成されており、該空気極・固体電解質層積層管51の該両端部は該燃料極体41の同一面側に突出していることを特徴とする電気化学素子。
【請求項7】
請求項6に記載の電気化学素子の製造方法であって、
上記円筒形空気極管511となる未焼成円筒形空気極管を成形し、該未焼成円筒形空気極管を屈曲させて上記蛇腹状且つ平面状又は上記渦巻状且つ平面状に形成する形状付与工程と、
該蛇腹状且つ平面状又は該渦巻状且つ平面状の未焼成円筒形空気極管511’を熱処理する熱処理工程と、
熱処理された未焼成円筒形空気極管の外周面のうちの両端縁部を除く部分に、上記固体電解質層512となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して上記空気極・固体電解質層積層管51を作製する同時焼成工程と、
複数の該空気極・固体電解質層積層管51の上記両端部を除く部分と、上記燃料極体41となる未焼成燃料極体とを接触させ、該未焼成燃料極体を焼成する焼成工程と、を備えることを特徴とする電気化学素子の製造方法。
【請求項8】
上記固体電解質層は、Ce0.8Gd0.21.9、Ce0.8Sm0.21.9及び希土類元素により安定化されたZrOのうちの少なくとも1種からなる請求項2、3、4又は6に記載の電気化学素子。
【請求項9】
蛇腹状且つ平面状に形成された円筒形燃料極管321と、該円筒形燃料極管321の外周面のうちの両端縁部及び該両端縁部の側の屈曲部を除く部分に形成された固体電解質層322とを備え、両端部及び該両端部の側の一方の屈曲部323を除く部分が空気極体22に埋設された複数の燃料極・固体電解質層積層管32の、該両端部及び該一方の屈曲部323のうちの該空気極体22の一面側の表面から離間した部分、並びに該燃料極・固体電解質層積層管32の他方の屈曲部324及び該空気極体22のうちの該燃料極・固体電解質層積層管32の該他方の屈曲部324が埋設されている部分が除去され、該燃料極・固体電解質層積層管32が該空気極体22の該一面側及び他面側において開口されてなることを特徴とする電気化学素子。
【請求項10】
空気極体22と、一端部を除く部分が該空気極体22に埋設されている外径2mm以下の複数の燃料極・固体電解質層積層管32と、を備え、該燃料極・固体電解質層積層管32は、円筒形燃料極管321と、該円筒形燃料極管321の外周面のうちの一端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層322とからなり、該燃料極・固体電解質層積層管32の該一端部は該空気極体22の一面側に突出し、他端部は該空気極体22の他面側に開口している電気化学素子の製造方法であって、
上記円筒形燃料極管321となる未焼成円筒形燃料極管を成形し、該未焼成円筒形燃料極管を屈曲させて蛇腹状且つ平面状に形成する形状付与工程と、
該蛇腹状且つ平面状の未焼成円筒形燃料極管321’を熱処理する熱処理工程と、
熱処理された未焼成円筒形燃料極管の外周面のうちの両端縁部及び該両端縁部の側の屈曲部を除く部分に、上記固体電解質層322となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して上記燃料極・固体電解質層積層管32を作製する同時焼成工程と、
複数の該燃料極・固体電解質層積層管32の両端部及び該両端部の側の一方の屈曲部323を除く部分と、上記空気極体22となる未焼成空気極体とを接触させ、該未焼成空気極体を焼成する焼成工程と、
該燃料極・固体電解質層積層管32の該両端部及び該一方の屈曲部323のうちの該空気極体22の該一面側の表面から離間した部分、並びに該燃料極・固体電解質層積層管32の他方の屈曲部324及び該空気極体22のうちの該燃料極・固体電解質層積層管32の該他方の屈曲部324が埋設されている部分を除去し、該燃料極・固体電解質層積層管32を該空気極体22の該一面側及び該他面側において開口させる開口工程と、を備えることを特徴とする電気化学素子の製造方法。
【請求項11】
蛇腹状且つ平面状に形成された円筒形空気極管521と、該円筒形空気極管521の外周面のうちの両端縁部及び該両端縁部の側の屈曲部を除く部分に形成された固体電解質層522とを備え、両端部及び該両端部の側の一方の屈曲部523を除く部分が燃料極体42に埋設された複数の空気極・固体電解質層積層管52の、該両端部及び該一方の屈曲部523のうちの該燃料極体42の一面側の表面から離間した部分、並びに該空気極・固体電解質層積層管52の他方の屈曲部524及び該燃料極体42のうちの該空気極・固体電解質層積層管52の該他方の屈曲部524が埋設されている部分が除去され、該空気極・固体電解質層積層管52が該燃料極体42の該一面側及び他面側において開口されてなることを特徴とする電気化学素子。
【請求項12】
燃料極体42と、一端部を除く部分が該燃料極体42に埋設されている外径2mm以下の複数の空気極・固体電解質層積層管52と、を備え、該空気極・固体電解質層積層管52は、円筒形空気極管521と、該円筒形空気極管521の外周面のうちの一端縁部を除く部分に設けられた固体電解質層522とからなり、該空気極・固体電解質層積層管52の該一端部は該燃料極体42の一面側に突出し、他端部は該燃料極体42の他面側に開口している電気化学素子の製造方法であって、
上記円筒形空気極管521となる未焼成円筒形空気極管を成形し、該未焼成円筒形空気極管を屈曲させて蛇腹状且つ平面状に形成する形状付与工程と、
該蛇腹状且つ平面状の未焼成円筒形空気極管521’を熱処理する熱処理工程と、
熱処理された未焼成円筒形空気極管の外周面のうちの両端縁部及び該両端縁部の側の屈曲部を除く部分に、上記固体電解質層522となる未焼成固体電解質層を形成し、一体に焼成して上記空気極・固体電解質層積層管52を作製する同時焼成工程と、
複数の該空気極・固体電解質層積層管52の両端部及び該両端部の側の一方の屈曲部523を除く部分と、上記燃料極体42となる未焼成燃料極体とを接触させ、該未焼成燃料極体を焼成する焼成工程と、
該空気極・固体電解質層積層管52の該両端部及び該一方の屈曲部523のうちの該燃料極体42の該一面側の表面から離間した部分、並びに該空気極・固体電解質層積層管52の他方の屈曲部524及び該燃料極体42のうちの該空気極・固体電解質層積層管52の該他方の屈曲部524が埋設されている部分を除去し、該空気極・固体電解質層積層管52を該燃料極体42の該一面側及び該他面側において開口させる開口工程と、を備えることを特徴とする電気化学素子の製造方法。
【請求項13】
上記固体電解質層は、Ce0.8Gd0.21.9、Ce0.8Sm0.21.9及び希土類元素により安定化されたZrOのうちの少なくとも1種を用いて設けられた請求項10又は12に記載の電気化学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−221878(P2006−221878A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32293(P2005−32293)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】