電気化学装置
【課題】セラミック製の電気化学セルをスタックするときにセルに加わる機械的応力を低減し、またガスの利用効率を向上させるとともに、稼働時のセルとインターコネクターとの間の接触抵抗の増大による出力低下を防止する。
【解決手段】電気化学セル10が、第一のガスを流すガス流路を内蔵しており、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質層、セルの主面に露出して第二のガスと接触する第二の電極15、およびセルの主面に露出して第一の電極と電気的に導通する導電部9を備える。インターコネクター11A、11Bが、セルの一部を収容する収容部と、収容部から突出する接続部14とを備える。各セル10が、それぞれ、互いに直交する二方向に向かって複数のインターコネクター11A、11Bの収容部内に収容されている。収容部とセル10との間に第二のガスの流路33が形成される。
【解決手段】電気化学セル10が、第一のガスを流すガス流路を内蔵しており、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質層、セルの主面に露出して第二のガスと接触する第二の電極15、およびセルの主面に露出して第一の電極と電気的に導通する導電部9を備える。インターコネクター11A、11Bが、セルの一部を収容する収容部と、収容部から突出する接続部14とを備える。各セル10が、それぞれ、互いに直交する二方向に向かって複数のインターコネクター11A、11Bの収容部内に収容されている。収容部とセル10との間に第二のガスの流路33が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池などの電気化学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池1 枚当たりの電圧は1V程度であるので、大出力を得るには複数枚積層( スタック) しなければならない。そこで、いかに小型で積層数を増やし大出力を得ることができるかが問題となってくる。
【0003】
特許文献1の特に図14では、セラミック製電気化学セルの例えば燃料極の内部に燃料流路を形成し、燃料極の上に固体電解質膜、空気極膜を形成する。そしてセルそのものにガス供給孔とガス排出孔とを設け、セルを直接に複数枚積層してスタックを形成する。このスタック形成のさいに、隣接する各セルのガス供給孔を連続させてガス供給路を形成し、各セルのガス排出孔を連続させることでガス排出路を形成する。
【特許文献1】WO 2007/029860 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のようなスタック(集合電池)では、ガス流路を内部に持つセルを固定部材に取り付け、これらをスタックする。しかし、この構造でのセルは構造部材としての役割も持つので、応力が加わりやすい。特にガス流路を内部に持つセルはガス流路を持たないセルよりも構造強度が弱いことから、セルに応力が加わらない構造が望ましい。
【0005】
本出願人は、特許文献2において、電気化学セルの内部に燃料ガス流路を形成し、複数の電気化学セルを互いに離間された状態でガス供給部材およびガス排出部材によって支持することを開示した。
【特許文献2】PCT JP2008/056636
【0006】
しかし、この場合には、セル外を流れる空気の流量が多く、セルの表面で発電に利用できる空気量が少なく、利用効率が低い。また、隣接するセルを導電性のガス供給部材や排出部材で導通させるが、電流の流れる距離が長くなる傾向があり、この点から電流損失が大きくなる傾向があった。
【0007】
また、本出願人は、特許文献3において、インターコネクターの中に各流路内蔵セルを収容し、この状態で複数のインターコネクターを積層してスタックを作ることを開示した。各セルの表面に導電部を形成し、各セルの導電部を、隣接するインターコネクターに対して電気的に直列接続する。
【特許文献3】特願2007−324508
【0008】
このタイプの電気化学装置では、インターコネクターと、その中に収容されるセル表面の電極とを電気的に接触させる必要があり、この際に接触抵抗を最小限とする必要がある。しかし、電気化学装置のスタックを組み立てた後、稼働時に温度を上昇させると、セルとインターコネクターとの間の電気的な接触抵抗が増大し、全体の出力が低下することがあった。
【0009】
本発明の課題は、セラミック製の電気化学セルをスタックするときにセルに加わる機械的応力を低減し、またガスの利用効率を向上させるとともに、稼働時のセルとインターコネクターとの間の接触抵抗の増大による出力低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のセラミックス製電気化学セルおよび複数のインターコネクターを備えている電気化学装置であって、
電気化学セルが、第一のガスを流すガス流路を内蔵しており、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質層、セルの主面に露出して第二のガスと接触する第二の電極、およびセルの主面に露出して第一の電極と電気的に導通する導電部を備えており、
インターコネクターが、セルの一部を収容する収容部と、収容部から突出する接続部とを備えており、
各セルが、それぞれ、互いに直交する二方向に向かって複数のインターコネクターの収容部内に収容されており、収容部とセルとの間に第二のガスの流路が形成されており、第二のガスが流路を通過する間に第二の電極と接触し、接続部が、隣接するセルの導電部に対して電気的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、電気化学セル内に第一のガスの流路を形成すると共に、インターコネクターによって、電気化学セルの一部を収容し、インターコネクターとセルとの間に第二のガスの流路を形成する。第二のガスは、この流路を通過する間に第二の電極と接触し、電気化学反応に寄与する。従って、インターコネクター内にセルを収容して第二のガス流路を形成しているので、第二のガス流路を幅の狭い流路として形成でき、第二のガスの利用効率を向上させることができる。
【0012】
これと共に、インターコネクターに接続部を設け、あるセルを収容するインターコネクターの接続部を、隣接するセルの導電部に対して電気的に接続する。これによって、隣接するセルは、インターコネクターの収容部から延びる接続部を介して、隣接するセルに対して接続される。この構造によって、スタック全体に加わる圧縮応力は、各インターコネクターの各収容部で受けられ、各接続部で応力分散される。従って、セルに過大な応力が加わることによる破損を防止できる。
【0013】
更に、各セルが、互いに直交する二方向に向かって見たときに、それぞれ、複数のインターコネクターの収容部内に収容されている。これによって、稼働時の温度上昇に伴うセルとインターコネクターとの接触抵抗の増大を防止できることを発見した。
【0014】
即ち、本発明者は、前記した稼働時の温度上昇に伴うセルとインターコネクターとの接触抵抗の増大の原因を検討し、以下の知見を得た。即ち、図12に模式的に示すように、稼働時には、セル10とインターコネクター30Aとが、それぞれ矢印J、Hのように熱膨張する。このとき、インターコネクターの熱膨張の方がセルの熱膨張よりも大きく、この結果としてKに示すように、セル10とインターコネクター30Aの接点が平面的に位置ずれし、場所によっては接触が失われる。これがセルとインターコネクターとの間の接触抵抗の増大の原因であることを発見した。
【0015】
本発明者は、この発見に基づき、直交する二方向に見てセルが複数のインターコネクターによって収容されるような構造を採用した。つまり、インターコネクターを平面的に見て、縦横ともに複数に分割したことを意味する。これによって、図9に模式的に示すように、セルとインターコネクターとの熱膨張J、Hの偏差を小さくし、両者の間の接触が破損、喪失にいたるのを防止できることを確認した。この結果、稼働時の温度上昇によるセルとインターコネクターとの接触抵抗の増大を防止できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、電気化学セルは板状であることが好ましい。ただし、平板状には限らず、湾曲した板や円弧状の板でもよい。電気化学セルは、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質膜、第二のガスと接触する第二の電極、および第一の電極と接続された導電部を備えている。
【0017】
ここで、第一の電極、第二の電極は、アノードまたはカソードから選択する。これらのうち一方がアノードである場合には、他方はカソードである。これと同様に、第一のガス、第二のガスは、酸化性ガス、還元性ガスから選択する。
【0018】
酸化性ガスは、酸素イオンを固体電解質膜へと供給可能なガスであれば特に限定されないが、空気、希釈空気、酸素、希釈酸素が挙げられる。還元性ガスとしては、H2、CO、CH4とこれらの混合ガスを例示できる。
【0019】
本発明が対象とする電気化学セルは、電気化学反応を生じさせるためのセル一般を意味している。例えば、電気化学セルは、酸素ポンプ、高温水蒸気電解セルとして使用できる。高温水蒸気電解セルは、水素の製造装置に使用でき、また水蒸気の除去装置に使用できる。また、電気化学セルを、NOx、SOxの分解セルとして使用できる。この分解セルは、自動車、発電装置からの排ガスの浄化装置として使用できる。この場合には、固体電解質膜を通して排ガス中の酸素を除去するのと共に、NOxを電解してN2とO2−とに分解し、この分解によって生成した酸素をも除去できる。また、このプロセスと共に、排ガス中の水蒸気が電解されて水素と酸素とを生じ、この水素がNOxをN2へと還元する。また、好適な実施形態では、電気化学セルが、固体酸化物形燃料電池である。
【0020】
固体電解質の材質は特に限定されず、あらゆる酸素イオン伝導体を利用できる。例えば、イットリア安定化ジルコニア又はイットリア部分安定化ジルコニアであってよく、NOx分解セルの場合には、酸化セリウムも好ましい。
【0021】
カソードの材質は、ランタンを含有するペロブスカイト型複合酸化物であることが好ましく、ランタンマンガナイト又はランタンコバルタイトであることが更に好ましく、ランタンマンガナイトが一層好ましい。ランタンコバルタイト及びランタンマンガナイトは、ストロンチウム、カルシウム、クロム、コバルト(ランタンマンガナイトの場合)、鉄、ニッケル、アルミニウム等をドープしたものであってよい。
【0022】
アノードの材質としては、ニッケル−マグネシアスピネル、ニッケル−ニッケルアルミナスピネル、ニッケル−ジルコニア、白金−酸化セリウム、ルテニウム−ジルコニア等が好ましい。
【0023】
各電気化学セルの形態は特に限定されない。電気化学セルは、アノード、カソードおよび固体電解質層の3層からなっていてよい。あるいは、電気化学セルは、アノード、カソードおよび固体電解質層以外に、例えば多孔質体層を有していて良い。
【0024】
本発明においては、第一のガスを流すガス流路が電気化学セルに設けられている。ガス流路の形態、個数および場所は特に限定されない。
【0025】
好適な実施形態においては、隣接する電気化学セルが、貫通孔を有する結合部材によって連結されている。
【0026】
この実施形態において、第一のガス流路と連通する第一の貫通孔、第二の貫通孔をセルに形成できる。各貫通孔の形態、個数および場所は特に限定されない。
【0027】
本発明では、結合部材と電気化学セルとを連結する方法は、特に限定されない。この連結には、例えば、ガラスやセラミックス製接着剤や、機械的結合法を利用できる。また、連結部材と電気化学セルとを気密にシールする方法は、特に限定されないが、シール材を用いることが好ましい。このようなシール部材の材質は特に限定されないが、電気化学セルの作動温度において耐酸化性と耐還元性を有する必要がある。具体的には、シリカを主成分とするガラス及び結晶化ガラス、金属ろうなどを例示できる。また、O リング、C リング、E リングやメタルジャケットガスケット、マイカガスケットなどのコンプレッションシールも例示できる。
【0028】
連結部材が管状体または環状体である場合には、管状部の具体的形態は限定されない。管状部の横断面形状は、例えば、真円形、楕円形、三角形、四角形、六角形などの多角形であってよい。
【0029】
好適な実施形態においては、第一の電極と電気的に導通する導電部を複数設け、セル主面の外縁部にそれぞれ位置させる。そして、各接続部が、隣接するセルの各導電部に対して電気的に接続されるようにする。これによって、セルの接続部側の主面における導通距離と、接続部のない側のセル主面における導通距離との偏差が小さくなり、両主面における内部抵抗の偏差が小さくなる。この結果、出力密度が全体として向上するとともに、両主面における出力密度の偏差によるセル耐久性の低下を防止できる。
【0030】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明で使用可能な電気化学セル10を示す斜視図であり、図2は、本発明で使用可能な電気化学セル1を示す斜視図である。図3は、図2のセル1を分解して示す分解斜視図である。
【0031】
図1のセル、図2のセルのいずれにおいても、図3に示すように、セルの第一の電極16の内部に、第一のガスを流すためのガス流路7が形成されている。第一の電極16は平板状をなしており、第一の電極16を覆うように固体電解質層6が設けられている。
【0032】
図1のセル10の両側の主面10a、10b上(図8参照)には、それぞれ、第二の電極15が形成されており、第二の電極15が露出する。図2のセル1の両側の主面には、それぞれ、第二の電極2A、2Bが形成されており、露出している。
【0033】
また、セル1、10には、それぞれ、所定箇所に、第一の貫通孔3および第二の貫通孔4が形成されている。図3に示すように、貫通孔3からセル内に流入した第一のガスは、矢印A、B、Cのようにガス流路7内を流れ、第二の貫通孔4から排出される。第一のガスは、流路7を流れる間に電気化学反応に寄与する。
【0034】
なお、図2の例では、セル1の中央部に、セル内側の第一の電極16に電気的に導通する導電部5が露出している。図1の例では、セル10の主面の外周縁部に、たとえば4箇所に、導電部9が設けられている。そして、インターコネクターには、後述のように、それぞれ導電部に対応する貫通孔12が形成されており(図4参照)、この貫通孔12を通じて、各導電部9が、対応する各接続部14に対して電気的に接続される。
【0035】
図1のような実施形態においては、複数の導電部9が、セル主面10aの外縁部に設けられている。ここで、セル主面とは、セルのうち面積の大きい面を指し、通常は相対向する2面である。主面の外縁部とは、主面の外縁エッジから10mm以内の領域を指す。本発明の導電部は、この外縁部に、全体が包含されている必要はなく、導電部の一部が外縁部に包含されていればよい。
【0036】
この実施形態においては、セルごとの導電部の個数は2個以上が好ましいが、3個以上が好ましく、4個以上がさらに好ましい。導電部の個数の上限は特にないが、8個以下が実用的である。
【0037】
本発明のインターコネクターは、電気化学セルの一部を収容する収容部と、収容部から突出する接続部とを備えている。収容部は、セルの外側から挿入することができ、セルをその両面側から挟み、セルと収容部との間に第二ガスの流路を形成するものである。また、収容部には、セルの導電部に対応する位置に貫通孔を形成する。
【0038】
インターコネクターの材質は導電性である必要があり、また第二のガスに対してセルの稼働温度で耐久性でなければならない。具体的には、純金属であっても合金であってもよいが、ニッケル、インコネル、ニクロムなどのニッケル基合金、ステンレスなどの鉄基合金、ステライトなどのコバルト基合金が好ましい。
【0039】
接続部は、弾性変形可能であることが好ましく、金属板から形成されていることが特に好ましい。金属の材質は、上記したインターコネクター用材料を例示できる。
【0040】
図4(b)は、一実施形態に係る4個のインターコクネター11A〜11Dの平面図である。図4(a)は、インターコクネター11A、11Cを矢印IVa側から見た側面図である。図4(c)は、インターコクネター11C、11Dを矢印IVc側から見た側面図である。
【0041】
本例では、セル1個に対して、セルを収容するべきインターコネクターを4個に分割している。すなわち、セルの主面上の互いに直交する2方向X、Yに向かって、それぞれ、複数のインターコネクターが設けられている。具体的には、方向Xに向かって2つのインターコネクター11Aと11C、あるいは11Bと11Dが設けられており、方向Yに向かって2つのインターコネクター11Aと11B、あるいは11Cと11Dが設けられている。
【0042】
各インターコネクターは、収容部31を備えており、各収容部31は、上側板11a、下側板11bを備えている。上側板11aと下側板11bとの間に空間13が形成されている。下側板11bから接続部14が突出している。本例では、接続部14は、複数の細長い平板を組み合わせたものである。このような接続部14は、金属平板の加工によって形成されている。
【0043】
また、図4(b)に示すように、上側板11aには、導電部に対応する位置に貫通孔12が形成されている。本例では、1枚のインターコネクターに貫通孔12を1つごと形成し、一つのセルを4枚のインターコネクター内に収容する。これによって、各セルの4つの導電部を、それぞれ、各貫通孔12に位置合わせすることができる。
【0044】
複数のセルを積層し、スタックを形成するとともに、上述したようなインターコネクター11A〜11Dを各セル10に被せ、固定する。すなわち、複数のセル10を積層するのに際して、隣接するセル10間に、図5に示す連結部材18を矢印Dのように介在させることで、隣接するセルの各貫通孔3、4をそれぞれ連結する。各連結部材18には貫通孔18aが形成されている。各貫通孔18aと各貫通孔3が連通することによって、ガス供給路が形成される。また、各貫通孔18aと各貫通孔4とが連通することによって、ガス排出路が形成される。
【0045】
連結部材の材質は、セルを構成するセラミックスよりも機械的強度が高ければ特に限定されないが、セルとの熱膨張係数差が2×10−6 (/K)の材料、例えばジルコニア、マグネシア、スピネルセラミックス、さらにこれらを複合した材料などを例示できる。また、電気化学セルの作動温度において耐酸化性および耐還元性を有していれば金属であってもよく、純金属であっても合金であってもよいが、ニッケル、インコネル、ニクロムなどのニッケル基合金、ステンレスなどの鉄基合金、ステライトなどのコバルト基合金が好ましい。
【0046】
また、図6に示すように、各セル10の各電極15を被覆するように、4つのインターコネクター11A〜11Dの各収容部を横からはめ込み、固定する。この状態では、方向Xに向かって2つのインターコネクター11Aと11C、あるいは11Bと11Dが設けられており、方向Yに向かって2つのインターコネクター11Aと11B、あるいは11Cと11Dが設けられている。
【0047】
図7に示すようにスタックを形成すると、最上部のセル10の導電部9と、最下部のセル10のインターコネクターの接続部14とを結線する。これによって、複数のセルが直列接続される。第一のガスは矢印E、Fのように流し、第二のガスは矢印Gのようにスタックの横から供給する。
【0048】
この際、図8に示すように、各インターコネクター11A〜11Dと、対向する電極15との間には、第二のガスの流路33が形成される。このガス流路33内においてセルの電極15とインターコネクターとを電気的に接続する。また、インターコネクターの接続部14と、隣接するセルの導電部9とは、導電ペースト23によって接合されている。
【0049】
電極15とインターコネクターとの電気的接続の方法は特に限定されず、通常法を利用できる。たとえば、通気性の導電性接続部材、たとえばフェルトやメッシュを流路33に配置することで、セル電極とインターコネクターとを電気的に接続できる。しかし、好ましくは、インターコネクターに導電性突起20を設け、導電性突起20の先端をセル電極15に対して導電剤22を介して接触させることができる。
【0050】
ここで、本発明では、各セルが、それぞれ、互いに直交する二方向X、Yに向かって複数のインターコネクターの収容部内に収容されている。これによって、稼働時の温度上昇に伴うセルとインターコネクターとの接触抵抗の増大を防止できる。
【0051】
一方、図10、図11に示すような形態では、方向Yには2つのインターコネクター30A、30Bが存在するが、方向Xに向かってみると、一つのインターコネクターしかない。ここで、常温では、図11に示すように、インターコネクターとセルとが導電性突起20および接合剤22を通して電気的に接続されているものとする。
【0052】
ところが、稼働時には、温度が上昇するので、図12に模式的に示すように、セル10とインターコネクター30Aとが、それぞれ矢印J、Hのように熱膨張する。このとき、インターコネクターの熱膨張Hの方がセルの熱膨張Jよりも大きく、この結果としてKに示すように、導電性突起20と接合剤22との接点が平面的に位置ずれし、接触が失われる。これがセルとインターコネクターとの間の接触抵抗の増大の原因であることを発見した。
【0053】
これに対して、本発明では、稼働時に、セルとインターコネクターとの熱膨張J、Hの偏差が小さくなる(図9参照)。したがって、セルとインターコネクターとの間の接触が破損、喪失にいたるのを防止できる。この結果、稼働時の温度上昇によるセルとインターコネクターとの接触抵抗の増大を防止できる。
【実施例】
【0054】
(実施例)
燃料極を基板とする固体酸化物形燃料電池(セル)を作製した(図1、3、5参照)。
(燃料極基板の作製)
酸化ニッケル粉末とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を混合し、燃料極基板用粉末を得た。この粉末を金型プレス成形し、燃料極基板成形体を2枚製作した。
【0055】
(流路形成部材の設置と燃料極基板との一体化+電解質膜形成)
流路形成部材を燃料極基板成形体の間に挟み、プレスによって一体化した。電解質にはYSZ粉末にバインダーを添加したスラリーを用い、燃料極基板成形体上に塗布、乾燥後、電気炉で空気中1400℃2時間焼成して、固体電解質6/燃料極支持基板16を得た。
【0056】
(空気極および導電板の形成)
LaMnO3 粉末にバインダーと溶剤を加えペーストを作製した。このペーストを前記基板の2主面上にスクリーン印刷、乾燥後、電気炉で空気中1200℃1時間焼成して、空気極15を形成した。また、電解質6の一部を剥離し、燃料極基板16を表面に露出させ、この露出部に別途製作しておいたランタンクロマイト厚み0.3mmの導電板9を導電性ペーストにて貼り付け、導電板の周囲をシール材で固定した。
こうして得られた焼結体に燃料供給孔、排出孔を加工によって形成し、発電用セルを得た。作製したセルの形状は、長さ55mm、幅100mm、厚さ3mmであった。
【0057】
(金属製インターコネクタの作製)
材質SUS430の板を図4の形状に加工し、インターコネクター11A〜11Dを作製した。各インターコネクターの寸法は、縦長さ60mm、幅55mm、厚さ0.3mmである。
【0058】
(スタックの作製)
セルと金属インターコネクターから成る20段スタックを作製した。
(セルとセラミック連結部品の接合)
上で作製したセルの燃料供給孔3、排出孔4に、外径φ24mm、内径φ9mm、厚み2mmのセラミック連結部品18を、1000℃で軟化するガラスペーストを用いて取り付け、20段積層し、電気炉で空気中1000℃、1時間加熱して接合した。
【0059】
(金属インターコネクターの取り付け)
上で作製された金属インターコネクター11A〜11Dの突起14に導電性ペーストを塗布し、20段積層された各セルの4方向からはめ込んだ (図7、図8参照)。
【0060】
(比較例)
比較の為、材質SUS430の板を、長さ60mm幅110mm厚さ0.3mmの図10のように作製し、金属インターコネクター30A、30Bを作製した。これらインターコネクター内に突起加工された箇所と金属インターコネクターの突起部に導電性ペーストを塗布し、20段積層された各セルの2方向からはめ込んだ。
【0061】
(発電性能評価)
性能評価をするため電気炉に前記スタックをセットし、最上のセルの導電部9と最下のインターコネクターの接続部14とに電圧線および電流線をそれぞれ接続した。燃料極側にN2,空気極側にAirを流しながら800℃まで昇温し、800℃に達した時点で燃料極側にH2を流して還元処理を行った。3時間の還元処理後、スタックの電流-電圧特性評価を実施した。
【0062】
800℃での発電特性を表1に示す。発電出力はスタックの単位体積当たりの出力と1セル当たりの出力を示している。
【0063】
【表1】
【0064】
本発明では比較例よりオーミック抵抗の低減が見られ、単位体積当たりの出力は348W/L以上と大幅に向上した。これは本発明では金属インターコネクターが4分割してあることにより、セルと金属インターコネクターの熱膨張差による歪みの影響が少なくてすむため、インターコネクター内に突起加工された箇所が800℃に昇温後も外れず全点よく接続が取れていたためと考えられる。
【0065】
このように、本発明は金属インターコネクターを4分割にすることにより、セルと金属インターコネクターの熱膨張差による歪みを少なくし、800℃に昇温後も金属インターコネクター内に突起加工された箇所が全点接続をとることが可能な形状である。
【0066】
また、金属インターコネクターの分割数を変更することにより、セルと金属の熱膨張差に関係なく、接触点を全点取ることが可能な形状である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気化学セル10の斜視図である。
【図2】他の実施形態に係るセル1の斜視図である。
【図3】図2のセル1の分解斜視図である。
【図4】(a)は、インターコネクター11A、11Cを矢印IVa側から見た側面図であり、(b)は、インターコネクター11A〜11Dを示す平面図であり、(c)は、インターコネクター11C、11Dを矢印IVc側から見た側面図である。
【図5】セル10に結合部材18をはめ込んでいる状態を示す斜視図である。
【図6】セル10にインターコネクター11A〜11Dをはめ込んだ状態を示す斜視図である。
【図7】図7のセルを積層している状態を模式的に示す斜視図である。
【図8】図7のスタックの作製後の状態を模式的に示す断面図である。
【図9】図8のスタックを稼働させたときの熱膨張を示す断面図である。
【図10】セルを積層して得られた比較例のスタックを示す斜視図である。
【図11】図10のスタックの作製後の状態を模式的に示す断面図である。
【図12】図10のスタックを稼働させたときの熱膨張を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1、10 電気化学セル 2A、2B、15 第二の電極 3 ガス供給口 4 ガス排出口 6 固体電解質 7 第一のガスの流路 9 導電部 10a、10b セルの主面 11A、11B、11C、11D インターコネクター 12 貫通孔 14 接続部 18 結合部材 33 第二のガスの流路 A、B、C、E、F 第一のガスの流れ G 第二のガスの流れ H インターコネクターの熱膨張 J セルの熱膨張 X、Y セルの主面上の互いに直交する二つの方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池などの電気化学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池1 枚当たりの電圧は1V程度であるので、大出力を得るには複数枚積層( スタック) しなければならない。そこで、いかに小型で積層数を増やし大出力を得ることができるかが問題となってくる。
【0003】
特許文献1の特に図14では、セラミック製電気化学セルの例えば燃料極の内部に燃料流路を形成し、燃料極の上に固体電解質膜、空気極膜を形成する。そしてセルそのものにガス供給孔とガス排出孔とを設け、セルを直接に複数枚積層してスタックを形成する。このスタック形成のさいに、隣接する各セルのガス供給孔を連続させてガス供給路を形成し、各セルのガス排出孔を連続させることでガス排出路を形成する。
【特許文献1】WO 2007/029860 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のようなスタック(集合電池)では、ガス流路を内部に持つセルを固定部材に取り付け、これらをスタックする。しかし、この構造でのセルは構造部材としての役割も持つので、応力が加わりやすい。特にガス流路を内部に持つセルはガス流路を持たないセルよりも構造強度が弱いことから、セルに応力が加わらない構造が望ましい。
【0005】
本出願人は、特許文献2において、電気化学セルの内部に燃料ガス流路を形成し、複数の電気化学セルを互いに離間された状態でガス供給部材およびガス排出部材によって支持することを開示した。
【特許文献2】PCT JP2008/056636
【0006】
しかし、この場合には、セル外を流れる空気の流量が多く、セルの表面で発電に利用できる空気量が少なく、利用効率が低い。また、隣接するセルを導電性のガス供給部材や排出部材で導通させるが、電流の流れる距離が長くなる傾向があり、この点から電流損失が大きくなる傾向があった。
【0007】
また、本出願人は、特許文献3において、インターコネクターの中に各流路内蔵セルを収容し、この状態で複数のインターコネクターを積層してスタックを作ることを開示した。各セルの表面に導電部を形成し、各セルの導電部を、隣接するインターコネクターに対して電気的に直列接続する。
【特許文献3】特願2007−324508
【0008】
このタイプの電気化学装置では、インターコネクターと、その中に収容されるセル表面の電極とを電気的に接触させる必要があり、この際に接触抵抗を最小限とする必要がある。しかし、電気化学装置のスタックを組み立てた後、稼働時に温度を上昇させると、セルとインターコネクターとの間の電気的な接触抵抗が増大し、全体の出力が低下することがあった。
【0009】
本発明の課題は、セラミック製の電気化学セルをスタックするときにセルに加わる機械的応力を低減し、またガスの利用効率を向上させるとともに、稼働時のセルとインターコネクターとの間の接触抵抗の増大による出力低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のセラミックス製電気化学セルおよび複数のインターコネクターを備えている電気化学装置であって、
電気化学セルが、第一のガスを流すガス流路を内蔵しており、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質層、セルの主面に露出して第二のガスと接触する第二の電極、およびセルの主面に露出して第一の電極と電気的に導通する導電部を備えており、
インターコネクターが、セルの一部を収容する収容部と、収容部から突出する接続部とを備えており、
各セルが、それぞれ、互いに直交する二方向に向かって複数のインターコネクターの収容部内に収容されており、収容部とセルとの間に第二のガスの流路が形成されており、第二のガスが流路を通過する間に第二の電極と接触し、接続部が、隣接するセルの導電部に対して電気的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、電気化学セル内に第一のガスの流路を形成すると共に、インターコネクターによって、電気化学セルの一部を収容し、インターコネクターとセルとの間に第二のガスの流路を形成する。第二のガスは、この流路を通過する間に第二の電極と接触し、電気化学反応に寄与する。従って、インターコネクター内にセルを収容して第二のガス流路を形成しているので、第二のガス流路を幅の狭い流路として形成でき、第二のガスの利用効率を向上させることができる。
【0012】
これと共に、インターコネクターに接続部を設け、あるセルを収容するインターコネクターの接続部を、隣接するセルの導電部に対して電気的に接続する。これによって、隣接するセルは、インターコネクターの収容部から延びる接続部を介して、隣接するセルに対して接続される。この構造によって、スタック全体に加わる圧縮応力は、各インターコネクターの各収容部で受けられ、各接続部で応力分散される。従って、セルに過大な応力が加わることによる破損を防止できる。
【0013】
更に、各セルが、互いに直交する二方向に向かって見たときに、それぞれ、複数のインターコネクターの収容部内に収容されている。これによって、稼働時の温度上昇に伴うセルとインターコネクターとの接触抵抗の増大を防止できることを発見した。
【0014】
即ち、本発明者は、前記した稼働時の温度上昇に伴うセルとインターコネクターとの接触抵抗の増大の原因を検討し、以下の知見を得た。即ち、図12に模式的に示すように、稼働時には、セル10とインターコネクター30Aとが、それぞれ矢印J、Hのように熱膨張する。このとき、インターコネクターの熱膨張の方がセルの熱膨張よりも大きく、この結果としてKに示すように、セル10とインターコネクター30Aの接点が平面的に位置ずれし、場所によっては接触が失われる。これがセルとインターコネクターとの間の接触抵抗の増大の原因であることを発見した。
【0015】
本発明者は、この発見に基づき、直交する二方向に見てセルが複数のインターコネクターによって収容されるような構造を採用した。つまり、インターコネクターを平面的に見て、縦横ともに複数に分割したことを意味する。これによって、図9に模式的に示すように、セルとインターコネクターとの熱膨張J、Hの偏差を小さくし、両者の間の接触が破損、喪失にいたるのを防止できることを確認した。この結果、稼働時の温度上昇によるセルとインターコネクターとの接触抵抗の増大を防止できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、電気化学セルは板状であることが好ましい。ただし、平板状には限らず、湾曲した板や円弧状の板でもよい。電気化学セルは、第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質膜、第二のガスと接触する第二の電極、および第一の電極と接続された導電部を備えている。
【0017】
ここで、第一の電極、第二の電極は、アノードまたはカソードから選択する。これらのうち一方がアノードである場合には、他方はカソードである。これと同様に、第一のガス、第二のガスは、酸化性ガス、還元性ガスから選択する。
【0018】
酸化性ガスは、酸素イオンを固体電解質膜へと供給可能なガスであれば特に限定されないが、空気、希釈空気、酸素、希釈酸素が挙げられる。還元性ガスとしては、H2、CO、CH4とこれらの混合ガスを例示できる。
【0019】
本発明が対象とする電気化学セルは、電気化学反応を生じさせるためのセル一般を意味している。例えば、電気化学セルは、酸素ポンプ、高温水蒸気電解セルとして使用できる。高温水蒸気電解セルは、水素の製造装置に使用でき、また水蒸気の除去装置に使用できる。また、電気化学セルを、NOx、SOxの分解セルとして使用できる。この分解セルは、自動車、発電装置からの排ガスの浄化装置として使用できる。この場合には、固体電解質膜を通して排ガス中の酸素を除去するのと共に、NOxを電解してN2とO2−とに分解し、この分解によって生成した酸素をも除去できる。また、このプロセスと共に、排ガス中の水蒸気が電解されて水素と酸素とを生じ、この水素がNOxをN2へと還元する。また、好適な実施形態では、電気化学セルが、固体酸化物形燃料電池である。
【0020】
固体電解質の材質は特に限定されず、あらゆる酸素イオン伝導体を利用できる。例えば、イットリア安定化ジルコニア又はイットリア部分安定化ジルコニアであってよく、NOx分解セルの場合には、酸化セリウムも好ましい。
【0021】
カソードの材質は、ランタンを含有するペロブスカイト型複合酸化物であることが好ましく、ランタンマンガナイト又はランタンコバルタイトであることが更に好ましく、ランタンマンガナイトが一層好ましい。ランタンコバルタイト及びランタンマンガナイトは、ストロンチウム、カルシウム、クロム、コバルト(ランタンマンガナイトの場合)、鉄、ニッケル、アルミニウム等をドープしたものであってよい。
【0022】
アノードの材質としては、ニッケル−マグネシアスピネル、ニッケル−ニッケルアルミナスピネル、ニッケル−ジルコニア、白金−酸化セリウム、ルテニウム−ジルコニア等が好ましい。
【0023】
各電気化学セルの形態は特に限定されない。電気化学セルは、アノード、カソードおよび固体電解質層の3層からなっていてよい。あるいは、電気化学セルは、アノード、カソードおよび固体電解質層以外に、例えば多孔質体層を有していて良い。
【0024】
本発明においては、第一のガスを流すガス流路が電気化学セルに設けられている。ガス流路の形態、個数および場所は特に限定されない。
【0025】
好適な実施形態においては、隣接する電気化学セルが、貫通孔を有する結合部材によって連結されている。
【0026】
この実施形態において、第一のガス流路と連通する第一の貫通孔、第二の貫通孔をセルに形成できる。各貫通孔の形態、個数および場所は特に限定されない。
【0027】
本発明では、結合部材と電気化学セルとを連結する方法は、特に限定されない。この連結には、例えば、ガラスやセラミックス製接着剤や、機械的結合法を利用できる。また、連結部材と電気化学セルとを気密にシールする方法は、特に限定されないが、シール材を用いることが好ましい。このようなシール部材の材質は特に限定されないが、電気化学セルの作動温度において耐酸化性と耐還元性を有する必要がある。具体的には、シリカを主成分とするガラス及び結晶化ガラス、金属ろうなどを例示できる。また、O リング、C リング、E リングやメタルジャケットガスケット、マイカガスケットなどのコンプレッションシールも例示できる。
【0028】
連結部材が管状体または環状体である場合には、管状部の具体的形態は限定されない。管状部の横断面形状は、例えば、真円形、楕円形、三角形、四角形、六角形などの多角形であってよい。
【0029】
好適な実施形態においては、第一の電極と電気的に導通する導電部を複数設け、セル主面の外縁部にそれぞれ位置させる。そして、各接続部が、隣接するセルの各導電部に対して電気的に接続されるようにする。これによって、セルの接続部側の主面における導通距離と、接続部のない側のセル主面における導通距離との偏差が小さくなり、両主面における内部抵抗の偏差が小さくなる。この結果、出力密度が全体として向上するとともに、両主面における出力密度の偏差によるセル耐久性の低下を防止できる。
【0030】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明で使用可能な電気化学セル10を示す斜視図であり、図2は、本発明で使用可能な電気化学セル1を示す斜視図である。図3は、図2のセル1を分解して示す分解斜視図である。
【0031】
図1のセル、図2のセルのいずれにおいても、図3に示すように、セルの第一の電極16の内部に、第一のガスを流すためのガス流路7が形成されている。第一の電極16は平板状をなしており、第一の電極16を覆うように固体電解質層6が設けられている。
【0032】
図1のセル10の両側の主面10a、10b上(図8参照)には、それぞれ、第二の電極15が形成されており、第二の電極15が露出する。図2のセル1の両側の主面には、それぞれ、第二の電極2A、2Bが形成されており、露出している。
【0033】
また、セル1、10には、それぞれ、所定箇所に、第一の貫通孔3および第二の貫通孔4が形成されている。図3に示すように、貫通孔3からセル内に流入した第一のガスは、矢印A、B、Cのようにガス流路7内を流れ、第二の貫通孔4から排出される。第一のガスは、流路7を流れる間に電気化学反応に寄与する。
【0034】
なお、図2の例では、セル1の中央部に、セル内側の第一の電極16に電気的に導通する導電部5が露出している。図1の例では、セル10の主面の外周縁部に、たとえば4箇所に、導電部9が設けられている。そして、インターコネクターには、後述のように、それぞれ導電部に対応する貫通孔12が形成されており(図4参照)、この貫通孔12を通じて、各導電部9が、対応する各接続部14に対して電気的に接続される。
【0035】
図1のような実施形態においては、複数の導電部9が、セル主面10aの外縁部に設けられている。ここで、セル主面とは、セルのうち面積の大きい面を指し、通常は相対向する2面である。主面の外縁部とは、主面の外縁エッジから10mm以内の領域を指す。本発明の導電部は、この外縁部に、全体が包含されている必要はなく、導電部の一部が外縁部に包含されていればよい。
【0036】
この実施形態においては、セルごとの導電部の個数は2個以上が好ましいが、3個以上が好ましく、4個以上がさらに好ましい。導電部の個数の上限は特にないが、8個以下が実用的である。
【0037】
本発明のインターコネクターは、電気化学セルの一部を収容する収容部と、収容部から突出する接続部とを備えている。収容部は、セルの外側から挿入することができ、セルをその両面側から挟み、セルと収容部との間に第二ガスの流路を形成するものである。また、収容部には、セルの導電部に対応する位置に貫通孔を形成する。
【0038】
インターコネクターの材質は導電性である必要があり、また第二のガスに対してセルの稼働温度で耐久性でなければならない。具体的には、純金属であっても合金であってもよいが、ニッケル、インコネル、ニクロムなどのニッケル基合金、ステンレスなどの鉄基合金、ステライトなどのコバルト基合金が好ましい。
【0039】
接続部は、弾性変形可能であることが好ましく、金属板から形成されていることが特に好ましい。金属の材質は、上記したインターコネクター用材料を例示できる。
【0040】
図4(b)は、一実施形態に係る4個のインターコクネター11A〜11Dの平面図である。図4(a)は、インターコクネター11A、11Cを矢印IVa側から見た側面図である。図4(c)は、インターコクネター11C、11Dを矢印IVc側から見た側面図である。
【0041】
本例では、セル1個に対して、セルを収容するべきインターコネクターを4個に分割している。すなわち、セルの主面上の互いに直交する2方向X、Yに向かって、それぞれ、複数のインターコネクターが設けられている。具体的には、方向Xに向かって2つのインターコネクター11Aと11C、あるいは11Bと11Dが設けられており、方向Yに向かって2つのインターコネクター11Aと11B、あるいは11Cと11Dが設けられている。
【0042】
各インターコネクターは、収容部31を備えており、各収容部31は、上側板11a、下側板11bを備えている。上側板11aと下側板11bとの間に空間13が形成されている。下側板11bから接続部14が突出している。本例では、接続部14は、複数の細長い平板を組み合わせたものである。このような接続部14は、金属平板の加工によって形成されている。
【0043】
また、図4(b)に示すように、上側板11aには、導電部に対応する位置に貫通孔12が形成されている。本例では、1枚のインターコネクターに貫通孔12を1つごと形成し、一つのセルを4枚のインターコネクター内に収容する。これによって、各セルの4つの導電部を、それぞれ、各貫通孔12に位置合わせすることができる。
【0044】
複数のセルを積層し、スタックを形成するとともに、上述したようなインターコネクター11A〜11Dを各セル10に被せ、固定する。すなわち、複数のセル10を積層するのに際して、隣接するセル10間に、図5に示す連結部材18を矢印Dのように介在させることで、隣接するセルの各貫通孔3、4をそれぞれ連結する。各連結部材18には貫通孔18aが形成されている。各貫通孔18aと各貫通孔3が連通することによって、ガス供給路が形成される。また、各貫通孔18aと各貫通孔4とが連通することによって、ガス排出路が形成される。
【0045】
連結部材の材質は、セルを構成するセラミックスよりも機械的強度が高ければ特に限定されないが、セルとの熱膨張係数差が2×10−6 (/K)の材料、例えばジルコニア、マグネシア、スピネルセラミックス、さらにこれらを複合した材料などを例示できる。また、電気化学セルの作動温度において耐酸化性および耐還元性を有していれば金属であってもよく、純金属であっても合金であってもよいが、ニッケル、インコネル、ニクロムなどのニッケル基合金、ステンレスなどの鉄基合金、ステライトなどのコバルト基合金が好ましい。
【0046】
また、図6に示すように、各セル10の各電極15を被覆するように、4つのインターコネクター11A〜11Dの各収容部を横からはめ込み、固定する。この状態では、方向Xに向かって2つのインターコネクター11Aと11C、あるいは11Bと11Dが設けられており、方向Yに向かって2つのインターコネクター11Aと11B、あるいは11Cと11Dが設けられている。
【0047】
図7に示すようにスタックを形成すると、最上部のセル10の導電部9と、最下部のセル10のインターコネクターの接続部14とを結線する。これによって、複数のセルが直列接続される。第一のガスは矢印E、Fのように流し、第二のガスは矢印Gのようにスタックの横から供給する。
【0048】
この際、図8に示すように、各インターコネクター11A〜11Dと、対向する電極15との間には、第二のガスの流路33が形成される。このガス流路33内においてセルの電極15とインターコネクターとを電気的に接続する。また、インターコネクターの接続部14と、隣接するセルの導電部9とは、導電ペースト23によって接合されている。
【0049】
電極15とインターコネクターとの電気的接続の方法は特に限定されず、通常法を利用できる。たとえば、通気性の導電性接続部材、たとえばフェルトやメッシュを流路33に配置することで、セル電極とインターコネクターとを電気的に接続できる。しかし、好ましくは、インターコネクターに導電性突起20を設け、導電性突起20の先端をセル電極15に対して導電剤22を介して接触させることができる。
【0050】
ここで、本発明では、各セルが、それぞれ、互いに直交する二方向X、Yに向かって複数のインターコネクターの収容部内に収容されている。これによって、稼働時の温度上昇に伴うセルとインターコネクターとの接触抵抗の増大を防止できる。
【0051】
一方、図10、図11に示すような形態では、方向Yには2つのインターコネクター30A、30Bが存在するが、方向Xに向かってみると、一つのインターコネクターしかない。ここで、常温では、図11に示すように、インターコネクターとセルとが導電性突起20および接合剤22を通して電気的に接続されているものとする。
【0052】
ところが、稼働時には、温度が上昇するので、図12に模式的に示すように、セル10とインターコネクター30Aとが、それぞれ矢印J、Hのように熱膨張する。このとき、インターコネクターの熱膨張Hの方がセルの熱膨張Jよりも大きく、この結果としてKに示すように、導電性突起20と接合剤22との接点が平面的に位置ずれし、接触が失われる。これがセルとインターコネクターとの間の接触抵抗の増大の原因であることを発見した。
【0053】
これに対して、本発明では、稼働時に、セルとインターコネクターとの熱膨張J、Hの偏差が小さくなる(図9参照)。したがって、セルとインターコネクターとの間の接触が破損、喪失にいたるのを防止できる。この結果、稼働時の温度上昇によるセルとインターコネクターとの接触抵抗の増大を防止できる。
【実施例】
【0054】
(実施例)
燃料極を基板とする固体酸化物形燃料電池(セル)を作製した(図1、3、5参照)。
(燃料極基板の作製)
酸化ニッケル粉末とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を混合し、燃料極基板用粉末を得た。この粉末を金型プレス成形し、燃料極基板成形体を2枚製作した。
【0055】
(流路形成部材の設置と燃料極基板との一体化+電解質膜形成)
流路形成部材を燃料極基板成形体の間に挟み、プレスによって一体化した。電解質にはYSZ粉末にバインダーを添加したスラリーを用い、燃料極基板成形体上に塗布、乾燥後、電気炉で空気中1400℃2時間焼成して、固体電解質6/燃料極支持基板16を得た。
【0056】
(空気極および導電板の形成)
LaMnO3 粉末にバインダーと溶剤を加えペーストを作製した。このペーストを前記基板の2主面上にスクリーン印刷、乾燥後、電気炉で空気中1200℃1時間焼成して、空気極15を形成した。また、電解質6の一部を剥離し、燃料極基板16を表面に露出させ、この露出部に別途製作しておいたランタンクロマイト厚み0.3mmの導電板9を導電性ペーストにて貼り付け、導電板の周囲をシール材で固定した。
こうして得られた焼結体に燃料供給孔、排出孔を加工によって形成し、発電用セルを得た。作製したセルの形状は、長さ55mm、幅100mm、厚さ3mmであった。
【0057】
(金属製インターコネクタの作製)
材質SUS430の板を図4の形状に加工し、インターコネクター11A〜11Dを作製した。各インターコネクターの寸法は、縦長さ60mm、幅55mm、厚さ0.3mmである。
【0058】
(スタックの作製)
セルと金属インターコネクターから成る20段スタックを作製した。
(セルとセラミック連結部品の接合)
上で作製したセルの燃料供給孔3、排出孔4に、外径φ24mm、内径φ9mm、厚み2mmのセラミック連結部品18を、1000℃で軟化するガラスペーストを用いて取り付け、20段積層し、電気炉で空気中1000℃、1時間加熱して接合した。
【0059】
(金属インターコネクターの取り付け)
上で作製された金属インターコネクター11A〜11Dの突起14に導電性ペーストを塗布し、20段積層された各セルの4方向からはめ込んだ (図7、図8参照)。
【0060】
(比較例)
比較の為、材質SUS430の板を、長さ60mm幅110mm厚さ0.3mmの図10のように作製し、金属インターコネクター30A、30Bを作製した。これらインターコネクター内に突起加工された箇所と金属インターコネクターの突起部に導電性ペーストを塗布し、20段積層された各セルの2方向からはめ込んだ。
【0061】
(発電性能評価)
性能評価をするため電気炉に前記スタックをセットし、最上のセルの導電部9と最下のインターコネクターの接続部14とに電圧線および電流線をそれぞれ接続した。燃料極側にN2,空気極側にAirを流しながら800℃まで昇温し、800℃に達した時点で燃料極側にH2を流して還元処理を行った。3時間の還元処理後、スタックの電流-電圧特性評価を実施した。
【0062】
800℃での発電特性を表1に示す。発電出力はスタックの単位体積当たりの出力と1セル当たりの出力を示している。
【0063】
【表1】
【0064】
本発明では比較例よりオーミック抵抗の低減が見られ、単位体積当たりの出力は348W/L以上と大幅に向上した。これは本発明では金属インターコネクターが4分割してあることにより、セルと金属インターコネクターの熱膨張差による歪みの影響が少なくてすむため、インターコネクター内に突起加工された箇所が800℃に昇温後も外れず全点よく接続が取れていたためと考えられる。
【0065】
このように、本発明は金属インターコネクターを4分割にすることにより、セルと金属インターコネクターの熱膨張差による歪みを少なくし、800℃に昇温後も金属インターコネクター内に突起加工された箇所が全点接続をとることが可能な形状である。
【0066】
また、金属インターコネクターの分割数を変更することにより、セルと金属の熱膨張差に関係なく、接触点を全点取ることが可能な形状である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気化学セル10の斜視図である。
【図2】他の実施形態に係るセル1の斜視図である。
【図3】図2のセル1の分解斜視図である。
【図4】(a)は、インターコネクター11A、11Cを矢印IVa側から見た側面図であり、(b)は、インターコネクター11A〜11Dを示す平面図であり、(c)は、インターコネクター11C、11Dを矢印IVc側から見た側面図である。
【図5】セル10に結合部材18をはめ込んでいる状態を示す斜視図である。
【図6】セル10にインターコネクター11A〜11Dをはめ込んだ状態を示す斜視図である。
【図7】図7のセルを積層している状態を模式的に示す斜視図である。
【図8】図7のスタックの作製後の状態を模式的に示す断面図である。
【図9】図8のスタックを稼働させたときの熱膨張を示す断面図である。
【図10】セルを積層して得られた比較例のスタックを示す斜視図である。
【図11】図10のスタックの作製後の状態を模式的に示す断面図である。
【図12】図10のスタックを稼働させたときの熱膨張を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1、10 電気化学セル 2A、2B、15 第二の電極 3 ガス供給口 4 ガス排出口 6 固体電解質 7 第一のガスの流路 9 導電部 10a、10b セルの主面 11A、11B、11C、11D インターコネクター 12 貫通孔 14 接続部 18 結合部材 33 第二のガスの流路 A、B、C、E、F 第一のガスの流れ G 第二のガスの流れ H インターコネクターの熱膨張 J セルの熱膨張 X、Y セルの主面上の互いに直交する二つの方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミックス製電気化学セルおよび複数のインターコネクターを備えている電気化学装置であって、
前記電気化学セルが、第一のガスを流すガス流路を内蔵しており、前記第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質層、前記電気化学セルの主面に露出して第二のガスと接触する第二の電極、および前記電気化学セルの前記主面に露出して前記第一の電極と電気的に導通する導電部を備えており、
前記インターコネクターが、前記電気化学セルの一部を収容する収容部と、この収容部から突出する接続部とを備えており、
前記各電気化学セルが、それぞれ、前記主面上で互いに直交する二方向に向かって複数の前記インターコネクターの前記収容部内に収容されており、前記収容部と前記電気化学セルとの間に前記第二のガスの流路が形成されており、前記接続部が、隣接する前記電気化学セルの前記導電部に対して電気的に接続されていることを特徴とする、電気化学装置。
【請求項2】
前記電気化学セルの前記主面の外縁部に複数の導電部を備えており、前記接続部が、隣接する前記電気化学セルの前記導電部に対して電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記収容部の前記各導電部に対応する位置にそれぞれ貫通孔が設けられており、前記導電部と前記接続部とが前記貫通孔を通して電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1または2記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記接続部が、隣接する前記電気化学セルへと向かって突出する突起であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記接続部と前記導電部とが導電性ペーストによって接続されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の電気化学装置。
【請求項6】
隣接する前記電気化学セルが、貫通孔を有する結合部材によって連結されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の電気化学装置。
【請求項1】
複数のセラミックス製電気化学セルおよび複数のインターコネクターを備えている電気化学装置であって、
前記電気化学セルが、第一のガスを流すガス流路を内蔵しており、前記第一のガスと接触する第一の電極、固体電解質層、前記電気化学セルの主面に露出して第二のガスと接触する第二の電極、および前記電気化学セルの前記主面に露出して前記第一の電極と電気的に導通する導電部を備えており、
前記インターコネクターが、前記電気化学セルの一部を収容する収容部と、この収容部から突出する接続部とを備えており、
前記各電気化学セルが、それぞれ、前記主面上で互いに直交する二方向に向かって複数の前記インターコネクターの前記収容部内に収容されており、前記収容部と前記電気化学セルとの間に前記第二のガスの流路が形成されており、前記接続部が、隣接する前記電気化学セルの前記導電部に対して電気的に接続されていることを特徴とする、電気化学装置。
【請求項2】
前記電気化学セルの前記主面の外縁部に複数の導電部を備えており、前記接続部が、隣接する前記電気化学セルの前記導電部に対して電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記収容部の前記各導電部に対応する位置にそれぞれ貫通孔が設けられており、前記導電部と前記接続部とが前記貫通孔を通して電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1または2記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記接続部が、隣接する前記電気化学セルへと向かって突出する突起であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記接続部と前記導電部とが導電性ペーストによって接続されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の電気化学装置。
【請求項6】
隣接する前記電気化学セルが、貫通孔を有する結合部材によって連結されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の電気化学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−153212(P2010−153212A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330125(P2008−330125)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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