説明

電気回路、差動信号送信装置および差動信号受信装置

【課題】ディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスが異なる差動配線を接続する場合に、双方のモードにおけるインピーダンスを共に整合させること。
【解決手段】本発明の実施形態に係る電気回路は、送信回路から出力される差動信号を伝送する2本の配線を有する第1差動配線と、差動信号を受信回路に伝送する2本の配線を有しディファレンシャルモードインピーダンスおよびコモンモードインピーダンスが第1差動配線より小さい第2差動配線とを接続し、第1差動配線および第2差動配線のディファレンシャルモードインピーダンスおよびコモンモードインピーダンスを共に整合させるように抵抗体が配置された接続部を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路、差動信号送信装置および差動信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの画像形成装置をはじめ、様々な電気信号を低電流の差動信号で伝送する装置がある。電気回路が形成されたプリント配線基板に接続され、差動信号を伝送するためのFFC(フレキシブルフラットケーブル)については、EMI(Electromagnetic interference)の要求から1層に広いグランドパターン、他の層に差動配線に用いられる配線など細かい信号伝送パターンが形成された2層構造であるものが用いられる。このように構成されたFFCと、プリント配線基板とを接続したときに、インピーダンスの不整合により伝送する信号の反射を抑えるため、プリント基板における差動配線と、FFCにおける差動配線とのディファレンシャルモードインピーダンス(差動インピーダンス)が整合するように、プリント配線基板上の回路設計などが行われる(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】坂口征治,外5名,「FPCにおけるインピーダンス制御の一考察」,フジクラ技報,2005年10月,第109号,p.27−30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスが異なる差動配線を接続する場合に、双方のモードにおけるインピーダンスを共に整合させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る電気回路は、送信回路から出力される差動信号を伝送する2本の配線を有する第1差動配線と、前記差動信号を受信回路に伝送する2本の配線を有しディファレンシャルモードインピーダンスおよびコモンモードインピーダンスが第1差動配線より小さい第2差動配線とを接続し、当該第1差動配線および当該第2差動配線のディファレンシャルモードインピーダンスおよびコモンモードインピーダンスを共に整合させるように抵抗体が配置された接続部を具備することを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る電気回路は、請求項1の構成において、前記接続部は、前記第1差動配線における一方の配線と前記第2差動配線における一方の配線とを接続する第1直列抵抗体と、当該第1差動配線における他方の配線と当該第2差動配線における他方の配線とを接続する第2直列抵抗体と、前記第1直列抵抗体および前記第2直列抵抗体より前記第1差動配線側に設けられ、前記第1差動配線の2本の配線を接続するブリッジ抵抗体とが配置され、前記第1直列抵抗体および前記第2直列抵抗体の抵抗値は、前記第1差動配線のディファレンシャルモードインピーダンスおよび前記第2差動配線のディファレンシャルモードインピーダンスに応じて設定され、前記ブリッジ抵抗体の抵抗値は、前記第1直列抵抗体および前記第2直列抵抗体の抵抗値、前記第1差動配線のコモンモードインピーダンスおよび前記第2差動配線のコモンモードインピーダンスに応じて設定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る電気回路は、請求項2の構成において、前記第1差動配線のディファレンシャルモードインピーダンスの1/2である奇モードインピーダンスをZo1、前記第2差動配線のディファレンシャルモードインピーダンスの1/2である奇モードインピーダンスをZo2、前記第1差動配線のコモンモードインピーダンスの2倍である偶モードインピーダンスをZe1、前記第2差動配線のコモンモードインピーダンスの2倍である偶モードインピーダンスをZe2とした場合に、前記第1直列抵抗体および前記第2直列抵抗体の抵抗値R1は、R1=(Ze1−Ze2)、前記ブリッジ抵抗体の抵抗値R2は、R2=2/((1/Zo1)−(1/(R1+Zo2)))、となるように決められていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る差動信号送信装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電気回路と、前記送信回路と、前記第1差動配線とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る差動信号受信装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電気回路と、前記受信回路と、前記第2差動配線とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1、4、5に記載の発明によれば、ディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスが異なる差動配線を接続する場合に、抵抗体を用いない場合に比べて、簡易的な構成により双方のモードにおけるインピーダンスを共に整合させるようにすることができる。
本発明の請求項2に記載の発明によれば、抵抗体を特定の配置としない場合に比べて、ディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスをより精度よく整合させるようにすることができる。
本発明の請求項3に記載の発明によれば、特定の抵抗値を有する抵抗体を用いない場合に比べてディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスをより精度よく整合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る差動信号送信装置とFFCとの接続関係を説明する図である。
【図2】実施形態に係る差動信号送信装置とFFCとの回路構成を説明する図である。
【図3】実施形態に係る差動信号のコモンモードについて、従来例との比較結果を説明する図である。
【図4】変形例1に係る差動信号受信装置とFFCとの接続関係を説明する図である。
【図5】変形例1に係る差動信号受信装置とFFCとの回路構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
[構成]
図1は、実施形態に係る差動信号送信装置10とFFC20との接続関係を説明する図である。本発明の実施形態に係る差動信号送信装置10は、プリント配線基板に設けられた金属配線100a、100b(それぞれをまとめて第1差動配線100という)、接地配線100g、半導体集積回路150、および接続部40を有する。
半導体集積回路150は、様々な演算処理などにより得られる演算結果などを示す情報を差動信号として第1差動配線100に出力する送信回路151(図2参照)を有する。接地配線100gは、第1差動配線100と同じ側の面に設けられたコプレナ構造になっている。第1差動配線100は、ディファレンシャルモードのインピーダンスZd1、コモンモードのインピーダンスZc1を有する。
【0013】
接続部40は、抵抗体群400とコネクタ450とを有する。接続部40は、コネクタ450にFFC20が接続されることにより、FFC20と差動信号送信装置10とを接続する。
コネクタ450は、接続端子450a、450bおよび450gを有する。接続端子450aは、金属配線100aの電気信号をFFC20における金属配線200aに伝送するための端子である。接続端子450bは、金属配線100bの電気信号をFFC20における金属配線200bに伝送するための端子である。接続端子450gは、接地配線100gとFFC20における接地配線とを接続するための端子である。
【0014】
抵抗体群400は、直列抵抗体400a、400bおよびブリッジ抵抗体400cを有する。直列抵抗体400aは、金属配線100aと接続端子450aとを接続する位置に設けられている。これにより、金属配線100a、直列抵抗体400aおよび接続端子450aが直列に接続される。直列抵抗体400bは、金属配線100bと接続端子450bとを接続する位置に設けられている。これにより、金属配線100b、直列抵抗体400bおよび接続端子450bが直列に接続される。この例においては、直列抵抗体400aおよび直列抵抗体400bの抵抗値は、それぞれ抵抗値R1である。
ブリッジ抵抗体400cは、金属配線100aと金属配線100bとを接続する位置に配置されている。このように、ブリッジ抵抗体400cが金属配線100aおよび金属配線100bに接続する部分は、直列抵抗体400a、400bよりも差動信号の伝送経路上流側(送信回路151側)になっている。ブリッジ抵抗体400cの抵抗値は、抵抗値R2である。
【0015】
FFC20は、フレキシブルフラットケーブルであり、金属配線が2層に設けられた構造になっている。FFC20は、1層に金属配線200a、200b(それぞれをまとめて第2差動配線200という)を有し、他の層に接地配線が形成されている。接地配線は他の層に存在するため、図1には示されていない。第2差動配線200は、差動信号送信装置10から伝送される差動信号を、他の装置に伝送する。この例においては、他の装置は、差動信号を受信する受信回路を有する半導体集積回路500である。半導体集積回路500は、プリント配線基板上に形成されていていもよいし、FFC20に形成されていてもよい。また、差動信号が受信回路に入力される部分には、終端抵抗が形成されていてもよい。
第2差動配線200は、ディファレンシャルモードのインピーダンスZd2、コモンモードのインピーダンスZc2を有する。この例においては、Zd2、Zc2は、共に、Zd1、Zc1よりも小さくなる。フレキシブルフラットケーブルは、構造の性質上、差動配線と接地配線とがポリエステルフィルムなどの薄い膜を介して配置されているため、一般的なプリント配線基板における差動配線に比べて、インピーダンスが小さくなるためである。
FFC20がコネクタ450に接続された状態において、金属配線200aは接続端子450aに接続され、金属配線200bは接続端子450bに接続される。また、FFC20は、FFC20の接地配線が接続端子450gに電気的に接続されるように構成されている。
【0016】
図2は、実施形態に係る差動信号送信装置10とFFC20との回路構成を説明する図である。図2においては、接地配線100g、FFC20の接地配線、およびこれらを接続する接続端子450gについては記載を省略している。
信号Scは、半導体集積回路150における演算結果を示す信号であり、送信回路151に入力される信号である。信号Scは、送信回路151において差動信号に変換され、第1差動配線100に出力される。すなわち、第1差動配線100を構成する金属配線100aおよび金属配線100bには、それぞれ位相が反転した信号が出力される。送信回路151から出力された差動信号は、接続部40を介してFFC20側の第2差動配線200に伝送される。第2差動配線200に伝送された差動信号Sdは、さらに半導体集積回路500に伝送される。これにより、半導体集積回路150における演算結果を示す信号が半導体集積回路500に伝送される。
このとき、抵抗体群400における各抵抗体の抵抗値は、第1差動配線100と第2差動配線200におけるディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスに基づいて、それぞれのモードにおいてインピーダンス整合がなされるように、以下のように設定される。
【0017】
[抵抗値の設定]
まず、以下に説明する抵抗値の設定に用いる算出方法において使用するパラメータについて説明する。Zd1、Zd2、Zc1、Zc2については、上述したとおりである。
Zo1:第1差動配線100の金属配線100a、100bにおける奇モードインピーダンス(Zo1=Zd1×(1/2))
Zo2:第2差動配線200の金属配線200a、200bにおける奇モードインピーダンス(Zo2=Zd2×(1/2))
Ze1:第1差動配線100の金属配線100a、100bにおける偶モードインピーダンス(Ze1=Zc1×2)
Ze2:第2差動配線200の金属配線200a、200bにおける偶モードインピーダンス(Ze2=Zc2×2)
【0018】
まず、コモンモードにおけるインピーダンスの整合は、差動配線が接地されていなければ、ブリッジ抵抗体400cは存在しないのと同じであるから、以下の式(1)の条件を満たす必要がある。
Ze1=R1+Ze2・・・(1)
すなわち、直列抵抗体400a、400bの抵抗値R1は、式(2)により算出される。
R1=Ze1−Ze2・・・(2)
【0019】
一方、ディファレンシャルモードのインピーダンスは、ブリッジ抵抗体400cにおける中心部(抵抗値がR2/2となる部分)において差動信号の基準電位となるから、以下の式(3)の条件を満たすと整合する。
Zo1=1/((1/(R1+Zo2))+(2/R2))・・・(3)
すなわち、ブリッジ抵抗体400cの抵抗値R2は、式(4)により算出される。
R2=2/((1/Zo1)−(1/(R1+Zo2)))・・・(4)
【0020】
このようにして直列抵抗体400a、400bおよびブリッジ抵抗体400cにおいて設定される抵抗値R1、R2は、上記式(2)、(4)を満たすように決められている。
ここで、差動信号送信装置10の具体例として、厚さ1mmのFR4(Flame Retardant Type 4)両面プリント配線基板に、典型的差動配線としてライン/スペースが200μm/200μmの配線を構成した場合とすると、各モードのインピーダンスは、Zd1=116Ω、Zc1=88Ωとなる。一方、FFC20の具体例として、一般的に用いられるフレキシブルフラットケーブルを用いた場合とすると、各モードのインピーダンスは、Zd2=76Ω、Zc2=24Ωとなる。
これらのパラメータを用いて、式(2)、(4)により直列抵抗体400a、400bおよびブリッジ抵抗体400cの抵抗値を算出すると、R1=128Ω、R2=178.3Ωとなる。
【0021】
[従来例との比較]
従来においては、上述した説明におけるブリッジ抵抗体400cを用いていない構成は存在していた。そこで、上述した説明における具体例のように設定された本発明の実施形態における構成と、ブリッジ抵抗体400cが設けられていない従来の構成とについて、送信回路151から差動信号が出力された場合における挙動を比較して説明する。この説明は、図3を用いて説明する。
【0022】
図3は、実施形態に係る差動信号のコモンモードについて、従来例との比較結果を説明する図である。
この例において用いられる差動信号は、図3(a)に示す信号であり、以下の条件になっている。
周波数:500MHz(周期Tc=2nsec.)
信号の立ち上がり:Tr=0.2nsec.
信号の立ち下がり:Tf=0.2nsec.
スキュー:2%(Ts=0.04nsec.)
【0023】
この差動信号が送信回路151から出力されると、FFC20の第2差動配線200へ伝送される差動信号の品質には概ね差異が見られなかった。一方、差動信号送信装置10における第1差動配線100の信号において、従来の構成の場合とコモンモードを比較したところ、図3(b)、(c)に示すように違いが現れた。図3(b)は、本発明の実施形態における場合における信号のコモンモードを示し、図3(c)は、従来の構成における場合における信号のコモンモードを示している。本発明の実施形態における場合は、図3(b)に示すように、差動信号のスキューにより生じる位相差に起因した電流成分が見られる。一方、従来の構成における場合は、図3(c)に示すように、位相差に起因した電流成分の他、インピーダンス不整合によるコモンモードの反射に起因する電流成分も見られる。
このように、ブリッジ抵抗体400cを用いない従来の構成においては、コモンモードの反射に起因する電流成分が生じるため、コモンモード放射によるノイズが生じる。一方、本発明の実施形態における構成においては、コモンモード放射によるノイズが抑制される。
【0024】
<変形例>
以上、本発明の実施形態およびその実施例について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
[変形例1]
上述した実施形態においては、送信回路151を有する差動信号送信装置10における第1差動配線100から、第1差動配線100よりディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスが小さい第2差動配線200を有するFFC20に差動信号が伝送される場合を示した。変形例1においては、FFC20Aにおける第2差動配線200Aから、第2差動配線200Aよりディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスが小さい第3差動配線300を有する差動信号受信装置30に差動信号が伝送されるようにした。この場合における構成について図4、図5を用いて説明する。
【0025】
図4は、変形例1に係る差動信号受信装置30とFFC20Aとの接続関係を説明する図である。図5は、変形例1に係る差動信号受信装置30とFFC20Aとの回路構成を説明する図である。FFC20Aおよび接続部40Aにおける各構成については、抵抗体群400A以外については、実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。なお、第2差動配線200Aは、ディファレンシャルモードのインピーダンスZdA2、コモンモードのインピーダンスZcA2を有するものとする。
【0026】
差動信号受信装置30は、プリント配線基板に設けられた金属配線300a、300b(それぞれをまとめて、第3差動配線300という)、接地配線(図示せず)、半導体集積回路350、および接続部40Aを有する。
第3差動配線300は、接続部40Aを介して第2差動配線200Aから差動信号が伝送され、半導体集積回路350に出力する。第3差動配線300は、ディファレンシャルモードのインピーダンスZdA3、コモンモードのインピーダンスZcA3を有する。この例においては、ZdA3、ZcA3は、共に、ZdA2、ZcA2よりも小さい。プリント配線基板における第3差動配線300と接地配線との関係、およびFFC20Aにおける第2差動配線200Aと接地配線との関係によっては、プリント配線基板に形成された差動配線の各モードのインピーダンスがFFCに形成された差動配線の各モードのインピーダンスより小さくなる場合もある。
半導体集積回路350は、第3差動配線300から伝送される差動信号を受信する受信回路351、および終端抵抗体352を有する。受信回路351は、差動信号を受信し、半導体集積回路350で演算するための信号Scへ変換する。
【0027】
接続部40Aにおける抵抗体群400Aは、直列抵抗体400Aa、400Abおよびブリッジ抵抗体400Acを有する。直列抵抗体400Aaは、金属配線300aと接続端子450Aaとを接続する位置に設けられている。これにより、金属配線300a、直列抵抗体400Aaおよび接続端子450Aaが直列に接続される。直列抵抗体400Abは、金属配線300bと接続端子450Abとを接続する位置に設けられている。これにより、金属配線300b、直列抵抗体400Abおよび接続端子450Abが直列に接続される。この例においては、直列抵抗体400Aaおよび直列抵抗体400Abの抵抗値は、それぞれ抵抗値R1である。
ブリッジ抵抗体400Acは、接続端子450Aaと直列抵抗体400Aaとをつなぐ配線と、接続端子450Abと直列抵抗体400Abとをつなぐ配線とを接続する位置に配置されている。このように、ブリッジ抵抗体400Acが上記配線に接続する部分は、直列抵抗体400Aa、400Abよりも差動信号の伝送経路上流側(受信回路351とは反対側)になっている。ブリッジ抵抗体400Acの抵抗値は、抵抗値R2である。
【0028】
これらの抵抗値R1、R2は、実施形態において述べた方法を用いて算出すればよい。このとき、第3差動配線300Aにおける各モードのインピーダンスZdA3、ZcA3は、第2差動配線200Aにおける各モードのインピーダンスZdA2、ZcA2より小さいため、置き換えが必要である。変形例1における各構成を実施形態における各構成に置き換えると、第3差動配線300Aは、第2差動配線200に対応し、第2差動配線200Aは、第1差動配線100に対応する。したがって、直列抵抗体400Aa、400Abの抵抗値R1、およびブリッジ抵抗体400Acの抵抗値R2は、Zd1=ZdA2、Zc1=ZcA2、Zd2=ZdA3、Zc2=ZcA3として置き換えて、実施形態における方法を用いて算出すればよい。
【0029】
このように、本発明は、特定のディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスを有する第1差動配線から、この差動配線よりディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスが小さい第2差動配線に差動信号を伝送する構成において、第1差動配線と第2差動配線とを接続する場合に適用される。
【0030】
[変形例2]
上述した実施形態において、接続部40は、正の抵抗値を有する抵抗体(直列抵抗体400a、400bおよびブリッジ抵抗体400c)を用いて、ディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスが整合するように、第1差動配線100と第2差動配線200と接続していたが、他の抵抗体がさらに含まれていてもよいし、抵抗体以外の構成を含んでいてもよい。すなわち、接続部40において第1差動配線100と第2差動配線200とを接続する場合に、ディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスが共に整合するように構成されていればよい。
【0031】
[変形例3]
上述した実施形態においては、直列抵抗体400a、400bの抵抗値R1およびブリッジ抵抗体400cの抵抗値R2は、式(2)、(4)を満たすように決められていたが、これは、望ましい一例を示すものであり、必ずしも式(2)、(4)を満たすものでなくてもよい。すなわち、ブリッジ抵抗体400cを設けることにより、ブリッジ抵抗体400cを設けない場合に比べて、ディファレンシャルモードおよびコモンモードのインピーダンスが共に整合する状態に近づくように、接続部40を構成する各抵抗体の抵抗値が決められていればよい。
【符号の説明】
【0032】
10…差動信号送信装置、100…第1差動配線、100a,100b…金属配線、100g…接地配線、150…半導体集積回路、151…送信回路、20,20A…FFC、200,200A…第2差動配線、200a,200b,200Aa,200Ab…金属配線、30…差動信号受信装置、300…第3差動配線、300a,300b…金属配線、350…半導体集積回路、351…受信回路、352…終端抵抗体、40,40A…接続部、400,400A…抵抗体群、400a,400b,400Aa,400Ab…直列抵抗体、400c,400Ac…ブリッジ抵抗体、450,450A…コネクタ、450a,450b,450g,450Aa,450Ab…接続端子、500…半導体集積回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信回路から出力される差動信号を伝送する2本の配線を有する第1差動配線と、前記差動信号を受信回路に伝送する2本の配線を有しディファレンシャルモードインピーダンスおよびコモンモードインピーダンスが第1差動配線より小さい第2差動配線とを接続し、当該第1差動配線および当該第2差動配線のディファレンシャルモードインピーダンスおよびコモンモードインピーダンスを共に整合させるように抵抗体が配置された接続部
を具備することを特徴とする電気回路。
【請求項2】
前記接続部は、前記第1差動配線における一方の配線と前記第2差動配線における一方の配線とを接続する第1直列抵抗体と、当該第1差動配線における他方の配線と当該第2差動配線における他方の配線とを接続する第2直列抵抗体と、前記第1直列抵抗体および前記第2直列抵抗体より前記第1差動配線側に設けられ、前記第1差動配線の2本の配線を接続するブリッジ抵抗体とが配置され、
前記第1直列抵抗体および前記第2直列抵抗体の抵抗値は、前記第1差動配線のディファレンシャルモードインピーダンスおよび前記第2差動配線のディファレンシャルモードインピーダンスに応じて設定され、
前記ブリッジ抵抗体の抵抗値は、前記第1直列抵抗体および前記第2直列抵抗体の抵抗値、前記第1差動配線のコモンモードインピーダンスおよび前記第2差動配線のコモンモードインピーダンスに応じて設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気回路。
【請求項3】
前記第1差動配線のディファレンシャルモードインピーダンスの1/2である奇モードインピーダンスをZo1、前記第2差動配線のディファレンシャルモードインピーダンスの1/2である奇モードインピーダンスをZo2、前記第1差動配線のコモンモードインピーダンスの2倍である偶モードインピーダンスをZe1、前記第2差動配線のコモンモードインピーダンスの2倍である偶モードインピーダンスをZe2とした場合に、
前記第1直列抵抗体および前記第2直列抵抗体の抵抗値R1は、
R1=(Ze1−Ze2)、
前記ブリッジ抵抗体の抵抗値R2は、
R2=2/((1/Zo1)−(1/(R1+Zo2)))、
となるように決められている
ことを特徴とする請求項2に記載の電気回路。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電気回路と、
前記送信回路と、
前記第1差動配線と
を具備することを特徴とする差動信号送信装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電気回路と、
前記受信回路と、
前記第2差動配線と
を具備することを特徴とする差動信号受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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