電気掃除機
【課題】回転ブラシ用電動機の運転モードの自動的な切り替わりがスムーズに行なわれる電気掃除機を提供する。
【解決手段】回転ブラシ用電動機24を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替わる運転制御を行う制御基板102と、前記負荷状態の判定で前記回転ブラシ用電動機24の負荷電流を検知する電流検知回路108を有する電気掃除機において、前記運転モードは、前記回転ブラシ用電動機24の負荷に応じた強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)を含み、前記弱運転(低速)の運転モードから他の運転モードに移行する際には、前記強運転(高速)を経由する。
【解決手段】回転ブラシ用電動機24を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替わる運転制御を行う制御基板102と、前記負荷状態の判定で前記回転ブラシ用電動機24の負荷電流を検知する電流検知回路108を有する電気掃除機において、前記運転モードは、前記回転ブラシ用電動機24の負荷に応じた強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)を含み、前記弱運転(低速)の運転モードから他の運転モードに移行する際には、前記強運転(高速)を経由する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃吸い込みがよくない絨毯等の掃除に好適な回転ブラシ用電動機を内置する吸口体が備わる電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転ブラシ用電動機を内置する吸口体が備わる電気掃除機は、例えば、特開2000−210234号公報(特許文献1)に掲載されている。
【0003】
また、掃除機本体に備わるモータの出力を段階的に示す表示ランプが設けられた吸口体を備わる電気掃除機は、特開平5−161579号公報(特許文献2)に掲載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−210234号公報
【特許文献2】特開平5−161579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などに記載されている電気掃除機は、回転ブラシ用電動機の運転モード(強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速))が切り替っても、どの運転モードで運転されているのか判断が難しかった。
【0006】
特許文献2に記載されている電気掃除機は、吸口体に設けた表示ランプを駆動するランプ駆動回路に電力を供給する電源供給ワイヤとランプ駆動回路に信号を供給する信号供給ワイヤを別々に延長パイプを這わして掃除機本体と吸口体を電気的に繋いでいる。このため、延長パイプの配線が複雑化して量産に不向きになる。
【0007】
また表示ランプによる表示は、点灯が乱れない安定した表示が求められる。さらに、回転ブラシ用電動機の運転モードが負荷状態に応じて自動的に切り替わる自動切替制御装置を備えた電気掃除機も見られる。
【0008】
この自動切替は回転ブラシ用電動機の負荷電流を電流検知回路で検知して制御するようにしている。しかし、フローリングや畳などの弱運転(低速)の運転モードから浅い絨毯などの中運転(中速)の運転モードに移行する際に、自動的な切り替わがスムーズに行なわれ課題があった。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑み、回転ブラシ用電動機の運転モードの自動的な切り替わるがスムーズに行なわれる電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替わる運転制御を行う制御装置と、前記負荷状態の判定で前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検知する検知手段を有する電気掃除機において、前記運転モードは、前記回転ブラシ用電動機の負荷に応じた強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)を含み、前記弱運転(低速)の運転モードから他の運転モードに移行する際には、前記強運転(高速)を経由することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記弱運転(低速)の運転モードから他の運転モードに移行する際には、前記強運転(高速)を経由することにより、検知手段の負荷電流を用いた負荷状態の判定で迅速に行なわれるので、他の運転モードへの移行が円滑に行なわれる電気掃除機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係るもので、電気掃除機の全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係るもので、吸口体を正面から見た図である。
【図3】本発明の実施例に係るもので、吸口体を分解して示した斜視図である。
【図4】本発明の実施例に係るもので、上ケースを外して吸口体の内部を示した図で ある。
【図5】本発明の実施例に係るもので、延長管の把手部に設けた手元スイッチを示す 図である。
【図6】本発明の実施例に係るもので、電気掃除機の全体的な電気回路を概略的に纏 めて示した図である。
【図7】本発明の実施例に係るもので、回転ブラシ用電動機に供給される位相時間幅 の異なる電力波形と、吸口体に設けた表示手段の表示切替を行なう矩形波信号を示し た図である。
【図8】本発明の実施例に係るもので、図6に示した交流の電力波形が整流した整流 の脈流波形と逆起電力の影響による矩形波信号の時間幅ばらつきを説明するための図 である。
【図9】本発明の実施例に係るもので、電流検出回路の電流振幅の変化を説明するた めの図である。
【図10】本発明の実施例に係るもので、自動切替モードと、手動切替モードを動作 機能を示すステートチャート(状態遷移)で示した図である。
【図11】本発明の実施例に係るもので、手動切替モードを選択した初期の動作機能 をフローチャートで示した図である。
【図12】本発明の実施例に係るもので、自動切替モードにおける負荷状態の判定に ついて運転モードと検知回路の検知電流との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例について、図面を引用して説明する。
【0014】
まず、図1を引用して電気掃除機の全体的な概要を述べる。
【0015】
図1に示すように、電気掃除機は、掃除機本体1、吸口体2、延長管3、吸い込みホース4を有する。延長管3、吸い込みホース4を含む通風管路は、掃除機本体1と吸口体2を連通するように繋ぐ。
【0016】
掃除機本体1は、空気を吸引する送風機と、送風機を駆動する電動機が一体になった電動送風機を有する。また、電動送風機で吸引された塵埃空気から塵埃を濾過して集塵する集塵フィルタが電動送風機の前側(上流側)に配置される。
【0017】
通風管路の延長管3の先端には、吸口体2が接続され、吸い込みホース4の後端は掃除機本体1に接続される。電動送風機の吸引力で、吸口体2に吸われた塵埃空気は通風管路内を流れて掃除機本体1の集塵フィルタに塵埃が濾過されて溜まる。
【0018】
延長管3は把手部5を有する。この把手部5に手元スイッチ6が設けられる。手元スイッチ6の押圧操作によって電気掃除機の運転が行なわれる。手元スイッチ6については、後で詳しく述べる。
【0019】
吸口体2に関し、図2〜図4を引用して説明する。
【0020】
吸口体2は、吸口本体20と継手21を有する。吸口本体20と継手21は、自在継手で連結されている。吸口本体20は、図3に示すように、上ケース22を外すと内部が覗かれる。
【0021】
横に長く延びた回転ブラシ23は、図3、図4に示すように、吸口本体20に回転自在に置かれる。回転ブラシ23は回りにブラシが植毛されている。吸口本体20に内置された回転ブラシ用電動機24は、ベルトを介して回転動力が回転ブラシ23に伝達される。
【0022】
回転ブラシ23の回転で、絨毯内に存在する塵埃は掻き出され、吸口体2に吸われる。回転ブラシ用電動機24は、複数の運転モードをもつ。運転モードに含まれる強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)は、回転ブラシ用電動機の負荷に応じて自動的、または任意に切り替えが行なわれる。運転モードは、3つのモード以外に設けることは可能である。
【0023】
吸口体2は、回転ブラシ用電動機の運転モードを表示する表示機構(表示手段)を備える。表示手段は、図4、図3、図2に示すように、LED25A.25B、導光部材26、電源回り回路基板27、その他の回路基板28、リード線29、透明窓30を有する。
【0024】
二個対のLED25A.25Bは、左右に対称に置かれる。LED25A.25Bに対向するように置かれた導光部材26は吸口体2の左右に延在するように配置される。LED25A.25Bから照射された光が導光部材26を透過することで、導光部材26は発光する。LED25A.25B、導光部材26、透明窓30は、表示手段の表示部になる。
【0025】
LED25Aが点灯すると、導光部材26は赤色で発光する。LED25Bが点灯すると、導光部材26は緑色で発光する。二つのLED25A.25Bが一緒に点灯すると、導光部材26は橙色になる。このように、LEDの点灯する箇所、点灯の増減で、発光する表示色が変化する。
【0026】
変化する表示色が透明窓30から表示される。吸口体2の長手方向に延在する色変化の表示が吸口体2に齎される良く見える。この色変化の表示と回転ブラシ用電動機の運転モードは決められている。赤色は強運転(高速)の運転モード、橙色は中運転(中速)の運転モード、緑色は弱運転(低速)の運転モードにしているが、これ以外の組み合わせでもよい。照明はLED以外のランプを用いることも可能である。
【0027】
このように回転ブラシ用電動機の運転モードは、吸口体2に設けた表示機構(表示手段)の色彩変化で認識できるので、識別がし易く、使い勝手のよい電気掃除機を提供できる。
【0028】
手元スイッチ6について、図5を引用して説明する。
【0029】
手元スイッチ6は、パワーブラシ入/切の押しボタン60、強/中/弱の押しボタン61、自動の押しボタン62、切の押しボタン63を有する。
【0030】
パワーブラシ入/切の押しボタン60は、回転ブラシ用電動機24の運転操作を手動でする押しボタンである。この手動切替モードを設定するパワーブラシ入/切の押しボタン60が押されると、回転ブラシ用電動機24の運転が行なわれる。更にパワーブラシ入/切の押しボタン60が押されると、回転ブラシ用電動機24の運転は停止するようになっている。
【0031】
強/中/弱の押しボタン61は、回転ブラシ用電動機24の運転モードと、掃除機本体1の電動送風機を運転モードを一緒に切り替える押しボタンである。強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)、強運転(高速)の順番で、強/中/弱の押しボタン61は、運転モードを切り替える。
【0032】
自動の押しボタン62は、回転ブラシ用電動機24の運転モードの切り替えを自動に設定する押しボタンである。自動の押しボタン62を押すと、自動切替モードに設定され、さらに押すと、自動切替モードの設定が解除される。
【0033】
切の押しボタン63が押されると、待機状態になる。上記押しボタンによる設定を解除したり、回転ブラシ用電動機24がロックした場合に利用する。
【0034】
自動の押しボタン62を押した初期の移り変わり形態について、図11を引用して述べる。
【0035】
ステップ620で自動の押しボタン62が押し下げられる。直ちに回転ブラシ用電動機24が強運転(高速)の運転モードを基軸とした速度変動(増減)が繰り返される(ステップ621)。10パーセントの増減率で、3秒間ぐらい(622)、その速度変動の運転が行なわれてから所定の強運転(高速)に移行する(ステップ623)。
【0036】
このように、自動の押しボタン62で、自動切替モードが選択されると、強運転(高速)の設定に先立ち、強運転(高速)の運転モードを基軸とした回転ブラシ用電動機の速度増減が数秒にわたり実行される。これにより、速度変動に伴う変動で自動切替モードが選択されたことを実感ができる。
【0037】
この速度変動に加え、回転ブラシ用電動機24の供給電力の変化で表示手段のLEDの点灯切替で、表示色を変化させたり(代案1)、ブザー等の音声による報知手段を併用することにより(代案2)、自動切替モードが選択されたことを更に実感することができる。
【0038】
なお、所定の強運転(高速)に移行する(ステップ623)に代えて、中運転(中速)または弱運転(低速)にしてもよい。
【0039】
回転ブラシ用電動機24の運転モード、表示機構(表示手段)の表示について、図6〜図8を引用して説明する。
【0040】
図6に示す電気掃除機の全体的な電気回路は、掃除機本体側電気回路100と、吸口体側電気回路300と、両電気回路を接続する二本の電線200を有する。二本の電線200は吸口体側電気回路300に電力を供給するもので、延長管3、吸い込みホース4を含む通風管路に這わされる。
【0041】
掃除機本体側電気回路100は、電動送風機の電動機101を除いて大部分が制御基板102で占められる。
【0042】
制御基板102は、種々の制御手段を備えている。主なものを挙げると、制御手段の主要部になるマイコン103、電動機101の駆動回路104、電動機101を駆動するトライアック105を含む半導体スイッチング素子、回転ブラシ用電動機24の駆動回路106、回転ブラシ用電動機24を駆動するトライアック107を含む半導体スイッチング素子、回転ブラシ用電動機24の負荷電流を検知する電流検知回路108(検知手段)を有する。
【0043】
電動機101、回転ブラシ用電動機24は、整流子電動機が使われる。また整流子電動機に代えてブラシレスモータを用いることが可能である。電動機101、回転ブラシ用電動機24は速度制御により運転モードの切替が行なわれる。速度制御は、位相制御で電動機101、回転ブラシ用電動機24に供給される交流電力の位相時間幅に変えることにより行なわれる。
【0044】
駆動回路104、駆動回路106がトライアック105、トライアック107の通電位相時間幅を調整することにより、電動機101、回転ブラシ用電動機24は種々の運転モードの速度で回転するのである。
【0045】
吸口体側電気回路300は、回転ブラシ用電動機24を除いて大部分が吸口制御基板301で占められる。この吸口制御基板301は、前述した電源回り回路基板27、その他の回路基板28を一つに纏めて示した。
【0046】
吸口制御基板301は、前述した表示手段の電気回路で占められる。表示手段の電気回路は、整流回路302、分圧回路303、定電圧電源回路304、矩形波整形回路305、波形比較回路306を有する。更に表示手段の電気回路は、前述したLED25A.25BであるLED1、LED2、LED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308を有する。
【0047】
LED1、LED2、LED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308は、前述した表示手段の表示部に含まれる。
【0048】
波形比較回路306は、LED1、LED2の点灯の増減や点灯箇所を切り替える切替部(切替手段)として機能する。
【0049】
この表示手段の電気回路は、回転ブラシ用電動機24に並列接続されるので、回転ブラシ用電動機24に供給される交流電力と同位相で同波形の交流電力が供給される。
【0050】
整流回路302は、位相制御された交流電力を脈流の直流に変換する。脈流の直流は、分圧回路303で分圧される。分圧された10Vの脈流の直流が矩形波整形回路304に供給される。定電圧電源回路304は、電圧変動の大きい脈流の直流を10Vの直流定電圧に作り変え、LED1、LED2、LED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308の駆動電力を供給する。
【0051】
矩形波整形回路305は、波形比較回路306に供給する矩形波信号を作る。波形比較回路306は、その矩形波信号に応じてLED駆動回路(A)307を駆動したり、LED駆動回路(B)308を駆動したり、あるいは双方を同時に駆動する。
【0052】
LED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308の駆動により、LED1、LED2が点灯する。
【0053】
LED1、LED2の点灯は、前述したように回転ブラシ用電動機24の運転モードと対応し、運転モードに応じて表示手段の表示部に色別の表示が行なわれるので、運転モードを容易に知ることができる。
【0054】
矩形波信号の生成、および矩形波信号と運転モードとの関係について、図7を引用して説明する。
【0055】
図7は回転ブラシ用電動機24に供給されるところの位相制御された交流電力の波形401、402、403(上側)と、矩形波整形回路305が生成した矩形波信号501、502、503(下側)を示す。
【0056】
波形401は100%通電の位相時間(長い)、波形402は70%通電の位相時間(中程)、波形402は60%通電の位相時間(短い)になっている。この位相時間に見合うように矩形波信号501、502、503は生成されている。このため、矩形波信号501は強運転(高速)の運転モードに、矩形波信号502は中運転(中速)の運転モードに、矩形波信号503は弱運転(低速)の運転モードに対応する。
【0057】
波形比較回路306は、矩形波信号501の入力を読んだときはLED駆動回路(A)307が駆動されるように出力する。矩形波信号503の入力を読んだときには、波形比較回路306はLED駆動回路(B)307が駆動されるように出力する。矩形波信号502の入力を読んだときには、波形比較回路306はLED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308の双方が駆動されるように出力する。
【0058】
これにより、表示手段の表示部には、強運転(高速)、中運転(中速)、および弱運転(低速)の運転モードに応じた色別の表示が行なわれるので、その時々の運転モードを容易に知ることができる。
【0059】
この回転ブラシ用電動機24の運転モードに応じた表示手段による夫々の表示は、回転ブラシ用電動機24に供給する位相制御された交流電力の位相時間幅に見合う矩形波信号を生成した実現するので、交流電力を供給する以外の電線を必要としない。
【0060】
このため、掃除機本体と吸口体とを繋ぐ延長管に、特許文献2に記載されているような掃除機本体と吸口体を電気的に繋ぐ信号線を設ける必要がなく、延長管の配線が複雑化せず、量産に好適である。
【0061】
上記実施例では、位相制御された交流電力の位相時間幅に見合う矩形波信号を用いたが、回転ブラシ用電動機24に供給されるところに位相制御される交流電力の電力量、位相時間幅、交流波形のいずれを読んで運転モードに応じた表示をするようにしてもよい。
【0062】
この中で、位相時間幅に見合う矩形波信号を用いるのが、回路構成が複雑化せず、量産に好適である。
【0063】
次に矩形波信号に対する回転ブラシ用電動機の逆起電力の影響回避について、図8を引用して述べる。
【0064】
図8に示す脈流の直流波形402A,402Bは、分圧回路303から矩形波整形回路304に取り込まれる波形である。図7の(2)に示す交流電力の波形402に対応する。
【0065】
矩形波整形回路304は、この脈流の直流波形402A,402Bを用いて矩形波信号502を生成する。
【0066】
矩形波信号502は、脈流の直流波形の電圧が閾値1(開始時点を決める開始規定電圧の閾値)に達したら立ち上がり(オン)、脈流の直流波形の電圧が閾値2(終了時点を決める終了規定電圧の閾値)より下がると立ち下がる(オフ)。
【0067】
脈流の直流波形の終端には、図8に示すように回転ブラシ用電動機24の逆起電力の成分4020の影響が生じる。閾値2を閾値1と同様に低い値にすると、矩形波信号502の終了時点が斜線5020で示すように延びる。しかも、延び時間は一定ではなく、不定である。
【0068】
このため、矩形波信号502の位相時間幅が定まらず、波形比較回路305が誤判断を繰り返し、LED1、LED2の点灯が乱れる。
【0069】
そこで、閾値2を交流電力に対する回転ブラシ用電動機の逆起電力が影響しないところに設定した。これにより、矩形波信号502の終了時点を安定化でき、LED1、LED2の点灯乱れが解消された。
【0070】
一方、閾値1はできるだけ低い方が望ましい。矩形波信号の時間幅が位相制御された交流電力の位相時間幅に近づくからである。そこで、閾値1を閾値2よりも低く設定した。
【0071】
定電圧電源回路304は、電圧変動の大きい脈流の直流を10Vの直流定電圧に作り変える。この安定した直流定電圧で、LED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308、LED1、LED2が駆動されるので、LED1、LED2の点灯表示が安定する。
【0072】
次に回転ブラシ用電動機の運転モードの自動的切り替えと、スムーズな運転モードの切替わりについて、図9、図10、図11を引用して説明する。
【0073】
まず、図9を引用して回転ブラシ用電動機が床面の負荷判定をする電流検知回路108(検知手段)の電流検知から述べる。
【0074】
図9は、縦に電流、横に時間を示す。ここに示す弱判定、中判定、強判定は、吸口体を前後に往復移動させて回転ブラシ用電動機に流れる負荷電流900の測定値である。負荷電流900の振幅Hは弱判定で小さく、中判定、強判定へと段階的に大きくなる。
【0075】
負荷電流900の周期幅Lは吸口体の前後移動を速度を変えることで多少変化する。
【0076】
床がたたみ、フローリングでは、負荷電流900の振幅Hが小さく弱判定になる。逆に目の深い絨毯などでは、負荷電流900の振幅Hが大きく強判定になる。目の浅い絨毯などでは、中判定になる。
【0077】
このように電流検知回路108(検知手段)が検知する回転ブラシ用電動機の負荷電流を見ることにより、回転ブラシ用電動機24に対する負荷状態(掃除する床面の種類/状況)を判定できる。この判定を基に、負荷状態に応じた回転ブラシ用電動機24の運転が実行されるように図6に示すマイコン103にプログラムされている。
【0078】
プログラムの内容を図10に示すステートチャート(状態遷移)を引用して述べる。
【0079】
さて、図9に示す手元スイッチ6のパワーブラシ入/切の押しボタン60が押されると、手動切替モード1000が選ばれる。自動の押しボタン62が押されると、自動切替モード2000が選ばれる。
【0080】
ステップ3000では電源がオフになっている。電源投入により、待機状態3001になる。この待機状態3001から手動切替モード1000または自動切替モード2000が選ばれ、切の押しボタン63を押すことにより、待機状態3001に戻る。
【0081】
手動切替モード1000では、開始のステップ1001から運転モードのステップ1002、1003,1004に移る。ステップ1002は強運転(高速)の運転モード、ステップ1003は中運転(中速)の運転モード、ステップ1004は弱運転(低速)の運転モードである。
【0082】
運転モードの切り替えは、強/中/弱の押しボタン61で行なう。強運転(高速)運転モード、中運転(中速)、弱運転(低速)、強運転(高速)の順番で切り替わる。
【0083】
自動切替モード2000では、開始のステップ2001からステップ2002に自動的に移る。ステップ2002は強運転(高速)の運転モードである。運転モードの最初のステップを強運転(高速)にしたのは、一般的に強運転(高速)から開始する傾向が多いからである。また、後述するように、負荷状態の自動的な判定に好都合であるからである。
【0084】
ステップ2003は中運転(中速)の運転モード、ステップ2004は弱運転(低速)の運転モードである。強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)を含めた運転モードは、上記負荷状態の判定によって自動的に切り替えが行なわれる。
【0085】
この自動切替モード2000の運転では、図9に示すように、ステップ2004(弱運転(低速)の運転モード)から他の運転モードに移行するときには、強運転(高速)の運転モードを経由するプログラム構成にした。
【0086】
これは、負荷状態の判定が電流検知回路108(検知手段)に検知される電流に依存するため、弱運転(低速)の運転モードでは電流変化が小さくて迅速な判定できない。図9の記述からも理解できるように、弱運転(低速)の運転モードでの電流検知回路108(検知手段)の検知電流は小さく、判定に困難を来たす。
【0087】
この結果、負荷状態(掃除する床面の種類/状況)が変わったにもかかわらず、それに追随した運転モードの移行がスムーズに行なわれないので、使い勝手が良くない。
【0088】
そこで、弱運転(低速)の運転モードでの運転中に負荷状態の変動が気配する場合は、一旦、強運転(高速)の運転モードにして電流変化を拡大することにより、負荷状態の判定が誤りなく迅速に行なわれる。このため、負荷状態(掃除する床面の種類/状況)に応じた運転モードの移行がスムーズに行なわれる使い勝手の良い電気掃除機を提供できる。
【0089】
図12は、夫々の運転モードでの各判定と検知電流をグラフに示している。
【0090】
このグラフ、および図12の記述から理解できるように、弱運転(低速)の運転モード時は、弱判定から強判定に亘って検知電流が小さく、電流変化が少ない。これに反し、強運転(高速)の運転モード時は、弱判定から強判定に亘って検知電流が大きく、電流変化も多い。
【0091】
そこで、弱運転(低速)の運転モード時に、負荷状態の変動(電流の振幅が弱判定より大きい)が気配する場合は強運転(高速)の運転モードに移行させ、この強運転(高速)の運転モードで判定をする。電流変化が拡大するので、誤りのない的確な判定が迅速に行なわれる。
【符号の説明】
【0092】
1…掃除機本体、2…吸口体、3…延長管、4吸い込みホース、5…把手部、6…手元スイッチ、20…吸口本体、21…継手、22…上ケース、23…回転ブラシ、24…回転ブラシ用電動機、25A…LED1、25B…LED、26…導光部材、27…電源回り回路基板、28…回路基板、29…リード線、30…透明窓、60…ボタン、61…ボタン、62…ボタン、63…ボタン、100…掃除機本体側電気回路、101…電動機、102…制御基板、103…マイコン、104…駆動回路、105…トライアック、106…駆動回路、107…トライアック、108…電流検知回路、200…電線、300…吸口体側電気回路、301…吸口制御基板、302…整流回路、303…分圧回路、304…定電圧電源回路、305…矩形波整形回路、306…波形比較回路、401…波形、402…波形、403…波形、402A…直流波形、402B…直流波形、501…矩形波信号、502…矩形波信号、503…矩形波信号、900…負荷電流、1000…手動切替モード、2000…自動切替モード、3001…待機状態、4020…成分、5020…斜線、620…ステップ、621…ステップ、622…ステップ、623…ステップ、3000…ステップ、1001…ステップ、1002…ステップ(強運転(高速)の運転モード)、1003…ステップ(中運転(中速)の運転モード)、1004…ステップ(弱運転(低速)の運転モード)、2001…ステップ、2002…ステップ(強運転(高速)の運転モード)、2003…ステップ(中運転(中速)の運転モード)、2004…ステップ(弱運転(低速)の運転モード)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃吸い込みがよくない絨毯等の掃除に好適な回転ブラシ用電動機を内置する吸口体が備わる電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転ブラシ用電動機を内置する吸口体が備わる電気掃除機は、例えば、特開2000−210234号公報(特許文献1)に掲載されている。
【0003】
また、掃除機本体に備わるモータの出力を段階的に示す表示ランプが設けられた吸口体を備わる電気掃除機は、特開平5−161579号公報(特許文献2)に掲載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−210234号公報
【特許文献2】特開平5−161579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などに記載されている電気掃除機は、回転ブラシ用電動機の運転モード(強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速))が切り替っても、どの運転モードで運転されているのか判断が難しかった。
【0006】
特許文献2に記載されている電気掃除機は、吸口体に設けた表示ランプを駆動するランプ駆動回路に電力を供給する電源供給ワイヤとランプ駆動回路に信号を供給する信号供給ワイヤを別々に延長パイプを這わして掃除機本体と吸口体を電気的に繋いでいる。このため、延長パイプの配線が複雑化して量産に不向きになる。
【0007】
また表示ランプによる表示は、点灯が乱れない安定した表示が求められる。さらに、回転ブラシ用電動機の運転モードが負荷状態に応じて自動的に切り替わる自動切替制御装置を備えた電気掃除機も見られる。
【0008】
この自動切替は回転ブラシ用電動機の負荷電流を電流検知回路で検知して制御するようにしている。しかし、フローリングや畳などの弱運転(低速)の運転モードから浅い絨毯などの中運転(中速)の運転モードに移行する際に、自動的な切り替わがスムーズに行なわれ課題があった。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑み、回転ブラシ用電動機の運転モードの自動的な切り替わるがスムーズに行なわれる電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替わる運転制御を行う制御装置と、前記負荷状態の判定で前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検知する検知手段を有する電気掃除機において、前記運転モードは、前記回転ブラシ用電動機の負荷に応じた強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)を含み、前記弱運転(低速)の運転モードから他の運転モードに移行する際には、前記強運転(高速)を経由することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記弱運転(低速)の運転モードから他の運転モードに移行する際には、前記強運転(高速)を経由することにより、検知手段の負荷電流を用いた負荷状態の判定で迅速に行なわれるので、他の運転モードへの移行が円滑に行なわれる電気掃除機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係るもので、電気掃除機の全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係るもので、吸口体を正面から見た図である。
【図3】本発明の実施例に係るもので、吸口体を分解して示した斜視図である。
【図4】本発明の実施例に係るもので、上ケースを外して吸口体の内部を示した図で ある。
【図5】本発明の実施例に係るもので、延長管の把手部に設けた手元スイッチを示す 図である。
【図6】本発明の実施例に係るもので、電気掃除機の全体的な電気回路を概略的に纏 めて示した図である。
【図7】本発明の実施例に係るもので、回転ブラシ用電動機に供給される位相時間幅 の異なる電力波形と、吸口体に設けた表示手段の表示切替を行なう矩形波信号を示し た図である。
【図8】本発明の実施例に係るもので、図6に示した交流の電力波形が整流した整流 の脈流波形と逆起電力の影響による矩形波信号の時間幅ばらつきを説明するための図 である。
【図9】本発明の実施例に係るもので、電流検出回路の電流振幅の変化を説明するた めの図である。
【図10】本発明の実施例に係るもので、自動切替モードと、手動切替モードを動作 機能を示すステートチャート(状態遷移)で示した図である。
【図11】本発明の実施例に係るもので、手動切替モードを選択した初期の動作機能 をフローチャートで示した図である。
【図12】本発明の実施例に係るもので、自動切替モードにおける負荷状態の判定に ついて運転モードと検知回路の検知電流との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例について、図面を引用して説明する。
【0014】
まず、図1を引用して電気掃除機の全体的な概要を述べる。
【0015】
図1に示すように、電気掃除機は、掃除機本体1、吸口体2、延長管3、吸い込みホース4を有する。延長管3、吸い込みホース4を含む通風管路は、掃除機本体1と吸口体2を連通するように繋ぐ。
【0016】
掃除機本体1は、空気を吸引する送風機と、送風機を駆動する電動機が一体になった電動送風機を有する。また、電動送風機で吸引された塵埃空気から塵埃を濾過して集塵する集塵フィルタが電動送風機の前側(上流側)に配置される。
【0017】
通風管路の延長管3の先端には、吸口体2が接続され、吸い込みホース4の後端は掃除機本体1に接続される。電動送風機の吸引力で、吸口体2に吸われた塵埃空気は通風管路内を流れて掃除機本体1の集塵フィルタに塵埃が濾過されて溜まる。
【0018】
延長管3は把手部5を有する。この把手部5に手元スイッチ6が設けられる。手元スイッチ6の押圧操作によって電気掃除機の運転が行なわれる。手元スイッチ6については、後で詳しく述べる。
【0019】
吸口体2に関し、図2〜図4を引用して説明する。
【0020】
吸口体2は、吸口本体20と継手21を有する。吸口本体20と継手21は、自在継手で連結されている。吸口本体20は、図3に示すように、上ケース22を外すと内部が覗かれる。
【0021】
横に長く延びた回転ブラシ23は、図3、図4に示すように、吸口本体20に回転自在に置かれる。回転ブラシ23は回りにブラシが植毛されている。吸口本体20に内置された回転ブラシ用電動機24は、ベルトを介して回転動力が回転ブラシ23に伝達される。
【0022】
回転ブラシ23の回転で、絨毯内に存在する塵埃は掻き出され、吸口体2に吸われる。回転ブラシ用電動機24は、複数の運転モードをもつ。運転モードに含まれる強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)は、回転ブラシ用電動機の負荷に応じて自動的、または任意に切り替えが行なわれる。運転モードは、3つのモード以外に設けることは可能である。
【0023】
吸口体2は、回転ブラシ用電動機の運転モードを表示する表示機構(表示手段)を備える。表示手段は、図4、図3、図2に示すように、LED25A.25B、導光部材26、電源回り回路基板27、その他の回路基板28、リード線29、透明窓30を有する。
【0024】
二個対のLED25A.25Bは、左右に対称に置かれる。LED25A.25Bに対向するように置かれた導光部材26は吸口体2の左右に延在するように配置される。LED25A.25Bから照射された光が導光部材26を透過することで、導光部材26は発光する。LED25A.25B、導光部材26、透明窓30は、表示手段の表示部になる。
【0025】
LED25Aが点灯すると、導光部材26は赤色で発光する。LED25Bが点灯すると、導光部材26は緑色で発光する。二つのLED25A.25Bが一緒に点灯すると、導光部材26は橙色になる。このように、LEDの点灯する箇所、点灯の増減で、発光する表示色が変化する。
【0026】
変化する表示色が透明窓30から表示される。吸口体2の長手方向に延在する色変化の表示が吸口体2に齎される良く見える。この色変化の表示と回転ブラシ用電動機の運転モードは決められている。赤色は強運転(高速)の運転モード、橙色は中運転(中速)の運転モード、緑色は弱運転(低速)の運転モードにしているが、これ以外の組み合わせでもよい。照明はLED以外のランプを用いることも可能である。
【0027】
このように回転ブラシ用電動機の運転モードは、吸口体2に設けた表示機構(表示手段)の色彩変化で認識できるので、識別がし易く、使い勝手のよい電気掃除機を提供できる。
【0028】
手元スイッチ6について、図5を引用して説明する。
【0029】
手元スイッチ6は、パワーブラシ入/切の押しボタン60、強/中/弱の押しボタン61、自動の押しボタン62、切の押しボタン63を有する。
【0030】
パワーブラシ入/切の押しボタン60は、回転ブラシ用電動機24の運転操作を手動でする押しボタンである。この手動切替モードを設定するパワーブラシ入/切の押しボタン60が押されると、回転ブラシ用電動機24の運転が行なわれる。更にパワーブラシ入/切の押しボタン60が押されると、回転ブラシ用電動機24の運転は停止するようになっている。
【0031】
強/中/弱の押しボタン61は、回転ブラシ用電動機24の運転モードと、掃除機本体1の電動送風機を運転モードを一緒に切り替える押しボタンである。強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)、強運転(高速)の順番で、強/中/弱の押しボタン61は、運転モードを切り替える。
【0032】
自動の押しボタン62は、回転ブラシ用電動機24の運転モードの切り替えを自動に設定する押しボタンである。自動の押しボタン62を押すと、自動切替モードに設定され、さらに押すと、自動切替モードの設定が解除される。
【0033】
切の押しボタン63が押されると、待機状態になる。上記押しボタンによる設定を解除したり、回転ブラシ用電動機24がロックした場合に利用する。
【0034】
自動の押しボタン62を押した初期の移り変わり形態について、図11を引用して述べる。
【0035】
ステップ620で自動の押しボタン62が押し下げられる。直ちに回転ブラシ用電動機24が強運転(高速)の運転モードを基軸とした速度変動(増減)が繰り返される(ステップ621)。10パーセントの増減率で、3秒間ぐらい(622)、その速度変動の運転が行なわれてから所定の強運転(高速)に移行する(ステップ623)。
【0036】
このように、自動の押しボタン62で、自動切替モードが選択されると、強運転(高速)の設定に先立ち、強運転(高速)の運転モードを基軸とした回転ブラシ用電動機の速度増減が数秒にわたり実行される。これにより、速度変動に伴う変動で自動切替モードが選択されたことを実感ができる。
【0037】
この速度変動に加え、回転ブラシ用電動機24の供給電力の変化で表示手段のLEDの点灯切替で、表示色を変化させたり(代案1)、ブザー等の音声による報知手段を併用することにより(代案2)、自動切替モードが選択されたことを更に実感することができる。
【0038】
なお、所定の強運転(高速)に移行する(ステップ623)に代えて、中運転(中速)または弱運転(低速)にしてもよい。
【0039】
回転ブラシ用電動機24の運転モード、表示機構(表示手段)の表示について、図6〜図8を引用して説明する。
【0040】
図6に示す電気掃除機の全体的な電気回路は、掃除機本体側電気回路100と、吸口体側電気回路300と、両電気回路を接続する二本の電線200を有する。二本の電線200は吸口体側電気回路300に電力を供給するもので、延長管3、吸い込みホース4を含む通風管路に這わされる。
【0041】
掃除機本体側電気回路100は、電動送風機の電動機101を除いて大部分が制御基板102で占められる。
【0042】
制御基板102は、種々の制御手段を備えている。主なものを挙げると、制御手段の主要部になるマイコン103、電動機101の駆動回路104、電動機101を駆動するトライアック105を含む半導体スイッチング素子、回転ブラシ用電動機24の駆動回路106、回転ブラシ用電動機24を駆動するトライアック107を含む半導体スイッチング素子、回転ブラシ用電動機24の負荷電流を検知する電流検知回路108(検知手段)を有する。
【0043】
電動機101、回転ブラシ用電動機24は、整流子電動機が使われる。また整流子電動機に代えてブラシレスモータを用いることが可能である。電動機101、回転ブラシ用電動機24は速度制御により運転モードの切替が行なわれる。速度制御は、位相制御で電動機101、回転ブラシ用電動機24に供給される交流電力の位相時間幅に変えることにより行なわれる。
【0044】
駆動回路104、駆動回路106がトライアック105、トライアック107の通電位相時間幅を調整することにより、電動機101、回転ブラシ用電動機24は種々の運転モードの速度で回転するのである。
【0045】
吸口体側電気回路300は、回転ブラシ用電動機24を除いて大部分が吸口制御基板301で占められる。この吸口制御基板301は、前述した電源回り回路基板27、その他の回路基板28を一つに纏めて示した。
【0046】
吸口制御基板301は、前述した表示手段の電気回路で占められる。表示手段の電気回路は、整流回路302、分圧回路303、定電圧電源回路304、矩形波整形回路305、波形比較回路306を有する。更に表示手段の電気回路は、前述したLED25A.25BであるLED1、LED2、LED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308を有する。
【0047】
LED1、LED2、LED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308は、前述した表示手段の表示部に含まれる。
【0048】
波形比較回路306は、LED1、LED2の点灯の増減や点灯箇所を切り替える切替部(切替手段)として機能する。
【0049】
この表示手段の電気回路は、回転ブラシ用電動機24に並列接続されるので、回転ブラシ用電動機24に供給される交流電力と同位相で同波形の交流電力が供給される。
【0050】
整流回路302は、位相制御された交流電力を脈流の直流に変換する。脈流の直流は、分圧回路303で分圧される。分圧された10Vの脈流の直流が矩形波整形回路304に供給される。定電圧電源回路304は、電圧変動の大きい脈流の直流を10Vの直流定電圧に作り変え、LED1、LED2、LED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308の駆動電力を供給する。
【0051】
矩形波整形回路305は、波形比較回路306に供給する矩形波信号を作る。波形比較回路306は、その矩形波信号に応じてLED駆動回路(A)307を駆動したり、LED駆動回路(B)308を駆動したり、あるいは双方を同時に駆動する。
【0052】
LED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308の駆動により、LED1、LED2が点灯する。
【0053】
LED1、LED2の点灯は、前述したように回転ブラシ用電動機24の運転モードと対応し、運転モードに応じて表示手段の表示部に色別の表示が行なわれるので、運転モードを容易に知ることができる。
【0054】
矩形波信号の生成、および矩形波信号と運転モードとの関係について、図7を引用して説明する。
【0055】
図7は回転ブラシ用電動機24に供給されるところの位相制御された交流電力の波形401、402、403(上側)と、矩形波整形回路305が生成した矩形波信号501、502、503(下側)を示す。
【0056】
波形401は100%通電の位相時間(長い)、波形402は70%通電の位相時間(中程)、波形402は60%通電の位相時間(短い)になっている。この位相時間に見合うように矩形波信号501、502、503は生成されている。このため、矩形波信号501は強運転(高速)の運転モードに、矩形波信号502は中運転(中速)の運転モードに、矩形波信号503は弱運転(低速)の運転モードに対応する。
【0057】
波形比較回路306は、矩形波信号501の入力を読んだときはLED駆動回路(A)307が駆動されるように出力する。矩形波信号503の入力を読んだときには、波形比較回路306はLED駆動回路(B)307が駆動されるように出力する。矩形波信号502の入力を読んだときには、波形比較回路306はLED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308の双方が駆動されるように出力する。
【0058】
これにより、表示手段の表示部には、強運転(高速)、中運転(中速)、および弱運転(低速)の運転モードに応じた色別の表示が行なわれるので、その時々の運転モードを容易に知ることができる。
【0059】
この回転ブラシ用電動機24の運転モードに応じた表示手段による夫々の表示は、回転ブラシ用電動機24に供給する位相制御された交流電力の位相時間幅に見合う矩形波信号を生成した実現するので、交流電力を供給する以外の電線を必要としない。
【0060】
このため、掃除機本体と吸口体とを繋ぐ延長管に、特許文献2に記載されているような掃除機本体と吸口体を電気的に繋ぐ信号線を設ける必要がなく、延長管の配線が複雑化せず、量産に好適である。
【0061】
上記実施例では、位相制御された交流電力の位相時間幅に見合う矩形波信号を用いたが、回転ブラシ用電動機24に供給されるところに位相制御される交流電力の電力量、位相時間幅、交流波形のいずれを読んで運転モードに応じた表示をするようにしてもよい。
【0062】
この中で、位相時間幅に見合う矩形波信号を用いるのが、回路構成が複雑化せず、量産に好適である。
【0063】
次に矩形波信号に対する回転ブラシ用電動機の逆起電力の影響回避について、図8を引用して述べる。
【0064】
図8に示す脈流の直流波形402A,402Bは、分圧回路303から矩形波整形回路304に取り込まれる波形である。図7の(2)に示す交流電力の波形402に対応する。
【0065】
矩形波整形回路304は、この脈流の直流波形402A,402Bを用いて矩形波信号502を生成する。
【0066】
矩形波信号502は、脈流の直流波形の電圧が閾値1(開始時点を決める開始規定電圧の閾値)に達したら立ち上がり(オン)、脈流の直流波形の電圧が閾値2(終了時点を決める終了規定電圧の閾値)より下がると立ち下がる(オフ)。
【0067】
脈流の直流波形の終端には、図8に示すように回転ブラシ用電動機24の逆起電力の成分4020の影響が生じる。閾値2を閾値1と同様に低い値にすると、矩形波信号502の終了時点が斜線5020で示すように延びる。しかも、延び時間は一定ではなく、不定である。
【0068】
このため、矩形波信号502の位相時間幅が定まらず、波形比較回路305が誤判断を繰り返し、LED1、LED2の点灯が乱れる。
【0069】
そこで、閾値2を交流電力に対する回転ブラシ用電動機の逆起電力が影響しないところに設定した。これにより、矩形波信号502の終了時点を安定化でき、LED1、LED2の点灯乱れが解消された。
【0070】
一方、閾値1はできるだけ低い方が望ましい。矩形波信号の時間幅が位相制御された交流電力の位相時間幅に近づくからである。そこで、閾値1を閾値2よりも低く設定した。
【0071】
定電圧電源回路304は、電圧変動の大きい脈流の直流を10Vの直流定電圧に作り変える。この安定した直流定電圧で、LED駆動回路(A)307、LED駆動回路(B)308、LED1、LED2が駆動されるので、LED1、LED2の点灯表示が安定する。
【0072】
次に回転ブラシ用電動機の運転モードの自動的切り替えと、スムーズな運転モードの切替わりについて、図9、図10、図11を引用して説明する。
【0073】
まず、図9を引用して回転ブラシ用電動機が床面の負荷判定をする電流検知回路108(検知手段)の電流検知から述べる。
【0074】
図9は、縦に電流、横に時間を示す。ここに示す弱判定、中判定、強判定は、吸口体を前後に往復移動させて回転ブラシ用電動機に流れる負荷電流900の測定値である。負荷電流900の振幅Hは弱判定で小さく、中判定、強判定へと段階的に大きくなる。
【0075】
負荷電流900の周期幅Lは吸口体の前後移動を速度を変えることで多少変化する。
【0076】
床がたたみ、フローリングでは、負荷電流900の振幅Hが小さく弱判定になる。逆に目の深い絨毯などでは、負荷電流900の振幅Hが大きく強判定になる。目の浅い絨毯などでは、中判定になる。
【0077】
このように電流検知回路108(検知手段)が検知する回転ブラシ用電動機の負荷電流を見ることにより、回転ブラシ用電動機24に対する負荷状態(掃除する床面の種類/状況)を判定できる。この判定を基に、負荷状態に応じた回転ブラシ用電動機24の運転が実行されるように図6に示すマイコン103にプログラムされている。
【0078】
プログラムの内容を図10に示すステートチャート(状態遷移)を引用して述べる。
【0079】
さて、図9に示す手元スイッチ6のパワーブラシ入/切の押しボタン60が押されると、手動切替モード1000が選ばれる。自動の押しボタン62が押されると、自動切替モード2000が選ばれる。
【0080】
ステップ3000では電源がオフになっている。電源投入により、待機状態3001になる。この待機状態3001から手動切替モード1000または自動切替モード2000が選ばれ、切の押しボタン63を押すことにより、待機状態3001に戻る。
【0081】
手動切替モード1000では、開始のステップ1001から運転モードのステップ1002、1003,1004に移る。ステップ1002は強運転(高速)の運転モード、ステップ1003は中運転(中速)の運転モード、ステップ1004は弱運転(低速)の運転モードである。
【0082】
運転モードの切り替えは、強/中/弱の押しボタン61で行なう。強運転(高速)運転モード、中運転(中速)、弱運転(低速)、強運転(高速)の順番で切り替わる。
【0083】
自動切替モード2000では、開始のステップ2001からステップ2002に自動的に移る。ステップ2002は強運転(高速)の運転モードである。運転モードの最初のステップを強運転(高速)にしたのは、一般的に強運転(高速)から開始する傾向が多いからである。また、後述するように、負荷状態の自動的な判定に好都合であるからである。
【0084】
ステップ2003は中運転(中速)の運転モード、ステップ2004は弱運転(低速)の運転モードである。強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)を含めた運転モードは、上記負荷状態の判定によって自動的に切り替えが行なわれる。
【0085】
この自動切替モード2000の運転では、図9に示すように、ステップ2004(弱運転(低速)の運転モード)から他の運転モードに移行するときには、強運転(高速)の運転モードを経由するプログラム構成にした。
【0086】
これは、負荷状態の判定が電流検知回路108(検知手段)に検知される電流に依存するため、弱運転(低速)の運転モードでは電流変化が小さくて迅速な判定できない。図9の記述からも理解できるように、弱運転(低速)の運転モードでの電流検知回路108(検知手段)の検知電流は小さく、判定に困難を来たす。
【0087】
この結果、負荷状態(掃除する床面の種類/状況)が変わったにもかかわらず、それに追随した運転モードの移行がスムーズに行なわれないので、使い勝手が良くない。
【0088】
そこで、弱運転(低速)の運転モードでの運転中に負荷状態の変動が気配する場合は、一旦、強運転(高速)の運転モードにして電流変化を拡大することにより、負荷状態の判定が誤りなく迅速に行なわれる。このため、負荷状態(掃除する床面の種類/状況)に応じた運転モードの移行がスムーズに行なわれる使い勝手の良い電気掃除機を提供できる。
【0089】
図12は、夫々の運転モードでの各判定と検知電流をグラフに示している。
【0090】
このグラフ、および図12の記述から理解できるように、弱運転(低速)の運転モード時は、弱判定から強判定に亘って検知電流が小さく、電流変化が少ない。これに反し、強運転(高速)の運転モード時は、弱判定から強判定に亘って検知電流が大きく、電流変化も多い。
【0091】
そこで、弱運転(低速)の運転モード時に、負荷状態の変動(電流の振幅が弱判定より大きい)が気配する場合は強運転(高速)の運転モードに移行させ、この強運転(高速)の運転モードで判定をする。電流変化が拡大するので、誤りのない的確な判定が迅速に行なわれる。
【符号の説明】
【0092】
1…掃除機本体、2…吸口体、3…延長管、4吸い込みホース、5…把手部、6…手元スイッチ、20…吸口本体、21…継手、22…上ケース、23…回転ブラシ、24…回転ブラシ用電動機、25A…LED1、25B…LED、26…導光部材、27…電源回り回路基板、28…回路基板、29…リード線、30…透明窓、60…ボタン、61…ボタン、62…ボタン、63…ボタン、100…掃除機本体側電気回路、101…電動機、102…制御基板、103…マイコン、104…駆動回路、105…トライアック、106…駆動回路、107…トライアック、108…電流検知回路、200…電線、300…吸口体側電気回路、301…吸口制御基板、302…整流回路、303…分圧回路、304…定電圧電源回路、305…矩形波整形回路、306…波形比較回路、401…波形、402…波形、403…波形、402A…直流波形、402B…直流波形、501…矩形波信号、502…矩形波信号、503…矩形波信号、900…負荷電流、1000…手動切替モード、2000…自動切替モード、3001…待機状態、4020…成分、5020…斜線、620…ステップ、621…ステップ、622…ステップ、623…ステップ、3000…ステップ、1001…ステップ、1002…ステップ(強運転(高速)の運転モード)、1003…ステップ(中運転(中速)の運転モード)、1004…ステップ(弱運転(低速)の運転モード)、2001…ステップ、2002…ステップ(強運転(高速)の運転モード)、2003…ステップ(中運転(中速)の運転モード)、2004…ステップ(弱運転(低速)の運転モード)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替わる運転制御を行う制御装置と、前記負荷状態の判定で前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検知する検知手段を有する電気掃除機において、
前記運転モードは、前記回転ブラシ用電動機の負荷に応じた強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)を含み、
前記弱運転(低速)の運転モードから他の運転モードに移行する際には、前記強運転(高速)を経由することを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
請求項1記載の電気掃除機において、
前記中運転(中速)の運転モードから前記弱運転(低速)の運転モードへの移行では、弱運転(低速)に直接移行、あるいは前記強運転(高速)を経由することを特徴とする電気掃除機。
【請求項3】
回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)の運転モードに自動的に切り替わる自動切替モードと、前記運転モードをマニアルで選択する手動切替モードを有する電気掃除機において、
前記自動切替モード、前記手動切替モードのいずれを選択しても最初に強運転(高速)が設定されることを特徴とする電気掃除機。
【請求項4】
請求項3記載の電気掃除機において、
手動切替モードでのそれぞれの運転モードの切り替えは、強運転(高速)→中運転(中速)→弱運転(低速)→強運転(高速)の順番であることを特徴とする電気掃除機。
【請求項5】
請求項3記載の電気掃除機において、
前記自動切替モードが選択されると、強運転(高速)の設定に先立ち、強運転(高速)の運転モードを基軸とした回転ブラシ用電動機の速度増減が数秒にわたり実行されることを特徴とする電気掃除機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載された電気掃除機において、
前記回転ブラシ用電動機の運転モードを表示する表示手段を備えたことを特徴とする電気掃除機。
【請求項1】
回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替わる運転制御を行う制御装置と、前記負荷状態の判定で前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検知する検知手段を有する電気掃除機において、
前記運転モードは、前記回転ブラシ用電動機の負荷に応じた強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)を含み、
前記弱運転(低速)の運転モードから他の運転モードに移行する際には、前記強運転(高速)を経由することを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
請求項1記載の電気掃除機において、
前記中運転(中速)の運転モードから前記弱運転(低速)の運転モードへの移行では、弱運転(低速)に直接移行、あるいは前記強運転(高速)を経由することを特徴とする電気掃除機。
【請求項3】
回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた強運転(高速)、中運転(中速)、弱運転(低速)の運転モードに自動的に切り替わる自動切替モードと、前記運転モードをマニアルで選択する手動切替モードを有する電気掃除機において、
前記自動切替モード、前記手動切替モードのいずれを選択しても最初に強運転(高速)が設定されることを特徴とする電気掃除機。
【請求項4】
請求項3記載の電気掃除機において、
手動切替モードでのそれぞれの運転モードの切り替えは、強運転(高速)→中運転(中速)→弱運転(低速)→強運転(高速)の順番であることを特徴とする電気掃除機。
【請求項5】
請求項3記載の電気掃除機において、
前記自動切替モードが選択されると、強運転(高速)の設定に先立ち、強運転(高速)の運転モードを基軸とした回転ブラシ用電動機の速度増減が数秒にわたり実行されることを特徴とする電気掃除機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載された電気掃除機において、
前記回転ブラシ用電動機の運転モードを表示する表示手段を備えたことを特徴とする電気掃除機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−158541(P2010−158541A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56838(P2010−56838)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【分割の表示】特願2007−180739(P2007−180739)の分割
【原出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【分割の表示】特願2007−180739(P2007−180739)の分割
【原出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
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