説明

電気掃除機

【課題】吸込口体の姿勢および走行状態ならびに吸込口体が置かれた被掃除面の種類に応じて操作性および安全性を向上可能な電気掃除機を提案する。
【解決手段】電気掃除機は、掃除機本体と、掃除機本体に連通された吸込口を底面に有する吸込口体と、掃除機本体に収容されて吸込口に吸込負圧を発生させる電動送風機と、吸込口体に軸支されて吸込口に配置された回転清掃体と、回転清掃体を回転駆動させる電動機と、吸込口体の走行にともなって回転する回転部材58を有するとともに吸込口体に対して相対的に変位自在かつ弾性支持された検出器支持構造45と、検出器支持構造45に設けられて加速度を検出する加速度検出部57と、回転部材58の回転方向を検出する進行方向検出部59と、加速度検出部57および進行方向検出部59の検出結果に応じて電動機の回転方向および回転速度を制御可能な吸込口体電源部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機によって駆動される回転清掃体を有する吸込口体を備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転清掃体を有する吸込口体を備えた電気掃除機が知られている。
【0003】
このような従来の電気掃除機は、回転清掃体の原動機としてタービンなどの流体機械や電動機を備える。
【0004】
そして、電動機を原動機とした回転清掃体を備えるとともに、吸込口体の底部に軸支されて吸込口体の走行にともなって回転する回転部材と、回転部材の回転方向に基づいて吸込口体の進行方向を検出する進行方向検出部と、進行方向の検出結果に応じて回転清掃体の回転方向を制御する制御部と、を備えた電気掃除機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、電動機を原動機とした回転清掃体を備えるとともに、被掃除面に衝撃を加えて被掃除面の応答を検出して被掃除面の種類(木床やプラスチック板などの平滑な床か、じゅうたんなどの凹凸な床か)を判別して被掃除面の種類に応じて回転清掃体を運転または停止させて操作性を向上させた電気掃除機が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−184506号公報
【特許文献2】特開平3−140133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の従来の電気掃除機は、回転部材の外周面に市松模様状に配置された反射率の異なる2つの領域(具体的には、白色の領域と黒色の領域)を有し、回転部材の市松模様の通過状況を検出する光センサによって回転部材の回転方向を検出する。また、特許文献1に記載の従来の電気掃除機は、回転部材の一部に中空部を形成して重心を回転軸芯から遠ざけている。このような構成によって、特許文献1に記載の従来の電気掃除機は、吸込口体が被掃除面から持ち上げられたときや、吸込口体が底面を上方に指向されている姿勢(すなわち、吸込口体が裏返った姿勢)であるときに、回転部材を略一定の姿勢(重心が鉛直下方に位置する姿勢)に保ち光センサによる回転部材の回転検出を抑制して回転清掃体の停止制御を行う。このような回転清掃体の停止制御は、消費電力の低減や安全上の観点から行われる。
【0008】
しかしながら、従来の電気掃除機は、吸込口体自体と回転部材との相対的な姿勢変化の程度によっては回転部材の回転検出の抑制が十分に働かない虞があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の従来の電気掃除機は、被掃除面の種類を判別できるものの、吸込口体が衝撃を加えるべき被掃除面に置かれていない場合の制御まで行われるものではない。
【0010】
そこで、本発明は、吸込口体の姿勢および走行状態ならびに吸込口体が置かれた被掃除面の種類に応じて操作性および安全性を向上可能な電気掃除機を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するため本発明に係る電気掃除機は、掃除機本体と、前記掃除機本体に連通された吸込口を底面に有する吸込口体と、前記掃除機本体に収容されて前記吸込口に吸込負圧を発生させる電動送風機と、前記吸込口体に軸支されて前記吸込口に配置された回転清掃体と、前記回転清掃体を回転駆動させる電動機と、前記吸込口体の走行にともなって回転する回転部材を有するとともに前記吸込口体に対して相対的に変位自在かつ弾性支持された検出器支持構造と、前記検出器支持構造に設けられて加速度を検出する加速度検出部と、前記回転部材の回転方向を検出する進行方向検出部と、前記加速度検出部および前記進行方向検出部の検出結果に応じて前記電動機の回転方向および回転速度を制御可能な制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、吸込口体の姿勢および走行状態ならびに吸込口体が置かれた被掃除面の種類に応じて操作性および安全性を向上可能な電気掃除機を提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電気掃除機の外観を示した斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る電気掃除機の吸込口体を部分的に切り欠いて示した平面図。
【図3】本発明の実施形態に係る電気掃除機の吸込口体の検出器支持構造を概略的に示した断面図。
【図4】本発明の実施形態に係る電気掃除機の吸込口体の検出器支持構造を概略的に示した断面図。
【図5】本発明の実施形態に係る電気掃除機の吸込口体の検出器支持構造を概略的に示した斜視図。
【図6】本発明に係る電気掃除機のブロック図。
【図7】本発明に係る電気掃除機の運転制御を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る電気掃除機の実施形態について図1から図8を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る電気掃除機の外観を示した斜視図である。
【0016】
図1に示すように、電気掃除機1は、いわゆるキャニスタ型の電気掃除機である。電気掃除機1は、被掃除面上に配置される掃除機本体2と、掃除機本体2に着脱自在に接続された管部3と、を備える。
【0017】
掃除機本体2は、本体ケース5と、本体ケース5の両側方に軸支された一対の車輪6と、本体ケース5に収容された塵埃分離集塵部7と、塵埃分離集塵部7に連通された電動送風機8と、電動送風機8の駆動を制御する本体制御部9と、電動送風機8に電力を導く電源コード11と、を備える。
【0018】
本体ケース5は、塵埃分離集塵部7に連通された本体接続口12を有する。
【0019】
塵埃分離集塵部7は、電動送風機8が発生させた負圧によって電気掃除機1に吸い込まれる塵埃を含んだ空気(含塵空気)から塵埃を分離し、捕集する。
【0020】
車輪6は、掃除機本体2の走行用の大径の走行輪である。
【0021】
本体制御部9は、予め設定された複数の運転モードを有する。また、本体制御部9は、管部3から入力される操作信号に対応させて複数の運転モードから任意の運転モードを択一的に選択し電動送風機8を駆動させる。それぞれの運転モードは、管部3から入力される操作信号に対応付けられるとともに、電動送風機8の入力値を互いに異ならせて設定される。
【0022】
電源コード11は、自由端部に電源プラグ14を備える。
【0023】
管部3は、電動送風機8の運転にともない掃除機本体2から作用する負圧によって、被掃除面から含塵空気を吸い込み掃除機本体2に案内する。管部3は、掃除機本体2の本体接続口12に着脱自在に接続された接続管19と、接続管19に連通された集塵ホース21と、集塵ホース21に連通された手元操作管22と、手元操作管22から突出させて設けられた把持部23と、把持部23に設けられた操作部24と、手元操作管22に着脱自在に接続され連通された延長管25と、延長管25に着脱自在に接続され連通された吸込口体26と、を備える。
【0024】
集塵ホース21は、可撓性を有する細長略円筒状に形成される。集塵ホース21の一端は、接続管19に接続される。集塵ホース21は、接続管19を介して掃除機本体2の内部に連通される。
【0025】
手元操作管22の一端は、集塵ホース21の他端に設けられる。手元操作管22は、接続管19および集塵ホース21を介して掃除機本体2の内部に連通される。
【0026】
把持部23は、電気掃除機1のユーザが把持して電気掃除機1を操作するものである。把持部23は、手元操作管22の他端部から突出させて設けられ手元操作管22の一端部に指向させて湾曲される。
【0027】
操作部24は、それぞれの運転モードに対応させたスイッチを備える。具体的には、操作部24は、電動送風機8の運転停止操作を受け取る停止スイッチ24aと、電動送風機8の運転開始操作を受け取る起動スイッチ24bと、を備える。起動スイッチ24bは、弱運転スイッチ(図示省略)、中運転スイッチ(図示省略)および強運転スイッチ(図示省略)を別個に備える構成にしても良い。電気掃除機1のユーザは、操作部24を操作して電動送風機8の運転モードを択一的に選択できる。
【0028】
延長管25は、伸縮可能な細長略円筒状に形成される。延長管25は、複数の筒状体を重ね合わせてテレスコピック構造に構成される。延長管25の一端は、手元操作管22の他端に着脱自在に接続される。延長管25は、接続管19、手元操作管22および集塵ホース21を介して掃除機本体2の内部に連通される。
【0029】
吸込口体26は、延長管25の一端に着脱自在に接続される。また、吸込口体26は、木床やカーペットなどの被掃除面上を走行可能に構成されるとともに、走行状態において被掃除面に対向する底面に吸込口28を有する。さらに、吸込口体26は、吸込口体26に軸支され吸込口28に配置された回転清掃体29と、回転清掃体29を回転駆動させる電動機31と、を備える。吸込口体26は、延長管25、手元操作管22および集塵ホース21を介して掃除機本体2の内部に連通される。
【0030】
電気掃除機1は、起動スイッチ24bが操作されると電動送風機8を駆動させ掃除機本体2の内部に負圧(吸込負圧)を作用させる。この負圧は、本体接続口12から集塵ホース21と手元操作管22と延長管25とを経て吸込口体26の吸込口28に作用する。吸込口28に作用した負圧によって、電気掃除機1は、被掃除面に溜まった塵埃を空気とともに吸込口28から吸い込んで被掃除面を掃除する。吸込口28に吸い込まれた含塵空気は、掃除機本体2に収容された塵埃分離集塵部7によって空気と塵埃とに分離される。分離された塵埃は、塵埃分離集塵部7に捕集される。他方、分離された空気は、塵埃分離集塵部7を通過し電動送風機8に吸い込まれて掃除機本体2から排気される。
【0031】
図2は、本発明の実施形態に係る電気掃除機の吸込口体を部分的に切り欠いて示した平面図である。
【0032】
図2に示すように、吸込口体26は、略直方体形状の箱状の本体部33と、延長管25が着脱自在に接続される接続管部34と、を備える。
【0033】
ここで、吸込口体26の前進方向(図2中、実線矢X)を前方、その反対方向を後方とする。また、吸込口体26を床面などの略水平な被掃除面に配置した状態で、後から前を見たときの左側(図2中、実線矢Y)を左方、その反対方向を右方とする。さらに、吸込口体26の前後方向および左右方向に直交する右手座標系の+Z方向を上方とし、その反対方向を下方とする。
【0034】
本体部33は、前後方向に短辺、左右方向に長辺を有する。本体部33は、吸込口28を有する吸込室36が区画されたケース37と、ケース37の側部に設けられたケース37よりも柔軟な材料で形成されたバンパ部38と、ケース37の内部に設けられた一対の軸受保持部39と、軸受保持部39に嵌着された一対の軸受41と、吸込口28に配置されて軸受41に回動自在に軸支された回転清掃体42と、回転清掃体42を回転駆動させる駆動部43と、ケース37に対して相対的に変位自在かつ弾性支持された検出器支持構造45と、駆動部43を制御可能な吸込口体制御部46(制御部)と、を備える。
【0035】
ケース37は、例えばABS樹脂を用いて形成され、上方が開放された箱状の下ケース48と、下ケース48を覆う上ケース49と、を備える。ケース37は、前側の内部に区画された吸込室36と、後側の左右の内部に区画された機器収容室51a、51bと、を有する。吸込室36は、本体部33の左右方向に幅広に形成されとともに、接続管部34に連通される。
【0036】
吸込口28は、吸込室36に配置されて本体部33の底面に開口される。また、吸込口28は、本体部33の左右方向に細長く形成された略長方形状の開口である。吸込室36は、吸込口体26を被清掃面に置くと吸込口28を通して被清掃面を臨む。
【0037】
バンパ部38は、本体部33の前側、左右および後側の一部に渡って一体に形成される。また、バンパ部38は、ケース37に用いられる材料よりも柔軟な材料、例えばエラストマーを用いて形成される。
【0038】
軸受保持部39は、軸受41を介して回転清掃体42を吸込室36に保持するものであり、吸込室36内の左右それぞれに配置され、互いに対向させて設けられる。
【0039】
軸受41は、軸受保持部39に嵌脱自在に嵌着される。
【0040】
回転清掃体42は、吸込室36に収容され、軸受41を介して軸受保持部39に保持される。また、回転清掃体42は、軸受41が両端部に回転自在に設けられた回転軸52と、回転軸52の一方側の端部近傍に設けられたプーリ53と、回転軸52の周壁部から螺旋帯状に突設された複数のブラシ毛54と、を備える。なお、回転清掃体42は、ブラシ毛54の他にゴムなどの弾性体で形成されたブレード(図示省略)を備えるものでも良い。
【0041】
駆動部43は、左右いずれか、例えば左側の機器収容室51bに収容される。駆動部43は、回転清掃体42を回動させる駆動源としての電動機31と、電動機31の駆動力を回転清掃体42のプーリ53に伝達するベルト52と、を備える。
【0042】
接続管部34は、本体部33の後部側の幅方向略中央部に配置される。また、接続管部34は、回動接続管部54と、傾動接続管部55と、を備える。回動接続管部54は、本体部33の後部側の幅方向略中央部に配置され、かつ吸込口体26の前後方向に沿う軸(X軸)回りに回動自在に枢支される。傾動接続管部55は、回動接続管部54に傾動自在に設けられる。すなわち、傾動接続管部55は、回動接続管部54の回転軸(X軸)に直交する軸回りに揺動自在に構成される。また、傾動接続管部55は、延長管25の自由端部に着脱自在に接続される。
【0043】
このように構成された吸込口体26は、延長管25から接続管部34を経て吸込室36に負圧を作用させる。この負圧は、吸込口28に作用し、被掃除面上の塵埃を空気とともに吸込室36に吸い込む。吸込室36に吸い込まれた含塵空気は、接続管部34を経て延長管25に案内される。
【0044】
図3および図4は、本発明の実施形態に係る電気掃除機の吸込口体の検出器支持構造を概略的に示した断面図である。
【0045】
図5は、本発明の実施形態に係る電気掃除機の吸込口体の検出器支持構造を概略的に示した斜視図である。
【0046】
なお、図3は、検出器支持構造を吸込口体の左右方向に切断して示した断面図であり、図4は、検出器支持構造を吸込口体の前後方向に切断して示した断面図である。
【0047】
図3から図5に示すように電気掃除機1の吸込口体26は、検出器支持構造45と、検出器支持構造45に設けられて加速度を検出する加速度検出部57と、回転部材58の回転方向を検出する進行方向検出部59と、を備える。
【0048】
検出器支持構造45は、吸込口体26に対して相対的に変位自在な検出器ケース61と、検出器ケース61を吸込口体26に弾性的に支持する弾性部材62と、検出器ケース61に軸支されて吸込口体26の走行にともなって回転する回転部材58と、を備える。
【0049】
検出器ケース61は、吸込口体26の内面に収容された箱状体であり、吸込口体26の底面側に開口63を有する開放区画65と、塵埃が入り込まないよう閉じられた閉鎖区画66とを有する。また、検出器ケース61は、吸込口体26の上下方向(Z軸に沿う方向)へ往復動自在に構成される。
【0050】
弾性部材62は、板ばねやコイルばねを用いて構成される。
【0051】
回転部材58は、吸込口体26が被掃除面F上を走行することによって従動される従動輪68と、従動輪68に対して回転一体に設けられた反射ローラ69と、を備える。従動輪68は、検出器ケース61の開放区画65に配置され、反射ローラ69は、検出器ケース61の閉鎖区画66に配置される。
【0052】
従動輪68は、例えば、じゅうたんなどの凹凸な被掃除面Fを転がるときに、凹凸に追従可能な回転径を有する。
【0053】
反射ローラ69は、外周面に反射率の異なる2つの領域(具体的には、白色の領域と黒色の領域)を有する。この反射率の異なる領域は、反射ローラ69の回転軸方向に2列に構成される。それぞれの列は、反射ローラ69の円周方向にむかって略等間隔かつ交互に反射率の異なる領域を有するとともに、お互いの列は、同じ反射率のまま連続する円弧の中心角の半分に相当する位相差を有する。例えば、それぞれの列が反射ローラ69の円周方向にむかって2つの白色の領域と2つの黒色の領域とを交互に有して円周を略4等分する場合、お互いの列は、略45°の位相差を有する。
【0054】
加速度検出部57は、検出器ケース61の閉鎖区画66の内面に設けられる。加速度検出部57は、多軸方向の加速度を検出な加速度計で構成されて吸込口体26の上下方向(Z軸方向)の加速度および前後方向(X軸方向)の加速度を検出できる。
【0055】
進行方向検出部59は、検出器ケース61の閉鎖区画66の内面に設けられる。また、進行方向検出部59は、光センサで構成されるとともに、反射ローラ69の有する反射率の異なる領域のそれぞれの列に対向させて配置される。進行方向検出部59は、回転部材58の回転にともなって反射ローラ69のいずれの領域(反射率の高い領域または低い領域)に対向しているのかを検出する。
【0056】
図6は、本発明に係る電気掃除機のブロック図である。
【0057】
図6に示すように、電気掃除機1は、本体制御回路71と、本体制御回路71に接続された吸込口体制御回路72と、を備える。電気掃除機1は、操作部24に入力される操作入力に応じて電動送風機8を運転して吸込口体26から空気とともに塵埃を吸い込む。また、電気掃除機1は、電動送風機8とともに吸込口体26の電動機31を運転して回転清掃体29を回転駆動させて被掃除面に付着した塵埃を掻き取る。
【0058】
本体制御回路71は、電動送風機8とともに商用交流電源Eに直列に接続された第一スイッチング素子73と、吸込口体制御回路72とともに商用交流電源Eに直列に接続された第二スイッチング素子74と、商用電源Eに接続された本体電源部75と、本体電源部75の出力電圧の分圧値を変化させる操作部24と、第一スイッチング素子73および第二スイッチング素子74のスイッチング制御を行う本体制御部9と、を備える。
【0059】
第一スイッチング素子73は、本体制御部9の制御に応じ電動送風機8の入力を変化させる。
【0060】
第二スイッチング素子74は、本体制御部9の制御に応じ吸込口体制御回路72の入力を変化させる。
【0061】
第一スイッチング素子73および第二スイッチング素子74は、電力制御用に双方向サイリスタや逆阻止3端子サイリスタなどの素子を用いて構成され、それぞれのゲート端子は、本体制御部9に接続される。
【0062】
操作部24は、停止スイッチ24aおよび起動スイッチ24bのそれぞれに対応させて本体電源部75の出力電圧の分圧値を変化させる電圧可変回路(図示省略)を備える。操作部24が変化させた本体電源部75の出力電圧の分圧値は、本体制御部9に入力される操作信号である。
【0063】
本体制御部9は、マイクロコンピュータからなり、中央処理部(図示省略)、メモリ(図示省略)、I/O部(図示省略)およびタイマ(図示省略)を備える。メモリは、中央処理部で実行される制御プログラムや、制御プログラムの実行に必要な定数などのデータが予め記憶される。このデータには、予め設定された各運転モードに対応させた定数が含まれる。また、メモリは、中央処理部の演算データなどを一時記憶しておくデータ記憶領域ならびに作業領域として使用される。
【0064】
また、本体制御部9は、操作部24から入力される操作信号と、ゼロクロス検出器(図示省略)で検出された商用交流電源Eのゼロクロスタイミングと、を周期的に読み取り、選択された運転モードにしたがって第一スイッチング素子73および第二スイッチング素子74のスイッチング制御(位相制御)を行い電動送風機8および吸込口体制御回路72の入力を制御する。
【0065】
本体制御部9は、例えば、弱、中および強からなる3つの運転モードを有する。それぞれの運転モードは、弱モード<中モード<強モードの関係で予め設定された電動送風機8の入力値を有する。そして、本体制御部9は、起動スイッチ24bが運転開始操作を受け取る都度、運転モードを切り換え第一スイッチング素子73のスイッチング制御を行い電動送風機8の入力を変更させる。そして、本体制御部9は、起動スイッチ24bが運転開始操作を受け取ると、第二スイッチング素子74のスイッチング制御を行い吸込口体制御回路72に電力の供給を開始する。
【0066】
吸込口体制御回路72は、本体制御回路71から供給される電圧を検出する電源検出部77と、本体制御回路71から供給される交流電力を直流電力に変換する吸込口体電源部78と、吸込口体電源部78に接続されて電動機31の入力を変化させるスイッチング回路79と、加速度検出部57と、進行方向検出部59と、スイッチング回路79のスイッチング制御を行う吸込口体制御部81(制御部)と、を備える。
【0067】
電源検出部77は、本体制御回路71から供給される電圧の波形情報を検出し、吸込口体制御部81に出力する。
【0068】
スイッチング回路79は、複数のスイッチング素子(図示省略)を有するブリッジ回路である。スイッチング回路79は、吸込口体制御部81の制御に応じ電動機31の入力や回転方向を変化させる。
【0069】
加速度検出部57は、吸込口体26(より詳しくは検出器支持構造45)に加わる重力加速度または吸込口体26(より詳しくは検出器支持構造45)に加わる加速度を検出し、その検出結果を加速度情報として吸込口体制御部81に出力する。加速度検出部57は、吸込口体26の前後方向(X軸方向)の加速度と、吸込口体26の上下方向(X軸方向)の加速度を検出可能なように少なくとも2軸以上の加速度センサ(図示省略)を備える。
【0070】
進行方向検出部59は、吸込口体26の回転部材58の回転状態を検出し、その検出結果を移動方向情報として吸込口体制御部81に出力する。
【0071】
吸込口体制御部81も、本体制御部9と同様にマイクロコンピュータからなり、中央処理部(図示省略)、メモリ(図示省略)、I/O部(図示省略)およびタイマ(図示省略)を備える。メモリは、中央処理部で実行される制御プログラムや、制御プログラムの実行に必要な定数などのデータが予め記憶される。また、メモリは、中央処理部の演算データなどを一時記憶しておくデータ記憶領域ならびに作業領域として使用される。
【0072】
また、吸込口体制御部81は、電源検出部77から入力される電圧の波形情報を読み取り、スイッチング回路79のスイッチング制御を行い電動機31の入力や回転方向を制御する。
【0073】
さらに、吸込口体制御部81は、本体制御回路71が商用交流電源Eに接続されて本体制御部9による第二スイッチング素子74のスイッチング制御が開始されると吸込口体電源部78から通電されて動作可能になる。
【0074】
このとき、吸込口体制御部81は、加速度検出部57の検出結果としての加速度情報および進行方向検出部59の検出結果としての移動方向情報を読み取って電動機31の始動、停止、運転時の回転方向および回転速度を制御する。
【0075】
電気掃除機1は、操作部24が運転開始操作を受け取ると、本体制御部9によるスイッチング制御によって電動送風機8の入力を予め設定された目標入力値まで徐々に増加させて電動送風機8を始動させるとともに、吸込口体制御回路72に給電を開始して吸込口体制御部81による電動機31の制御を始動させる。
【0076】
図7は、本発明に係る電気掃除機の運転制御を示したフローチャートである。
【0077】
図7に示すように、電気掃除機1の吸込口体制御部81は、加速度検出部57の検出結果によって吸込口体26が裏返った姿勢であると判断したとき、電動機31を停止させる。
【0078】
また、吸込口体制御部81は、進行方向検出部59の検出結果によって吸込口体26が停止していると判断するとともに、加速度検出部57の検出結果によって吸込口体26が停止していると判断したとき電動機31を停止させる。他方、吸込口体制御部81は、進行方向検出部59の検出結果によって吸込口体26が停止していると判断するとともに、加速度検出部57の検出結果によって吸込口体26が走行方向に移動していると判断したとき電動機31を回転させる。
【0079】
さらに、吸込口体制御部81は、進行方向検出部59の検出結果によって吸込口体26が走行していると判断するとともに、加速度検出部57の検出結果によって吸込口体26が略平滑な被掃除面(例えば、木床やプラスチック板などの平滑な床)上を走行していると判断したとき、電動機31を第一回転速度で回転させる。他方、吸込口体制御部81は、進行方向検出部59の検出結果によって吸込口体26が走行していると判断するとともに、加速度検出部57の検出結果によって吸込口体26が凹凸な被掃除面(じゅうたんなどの凹凸な床)上を走行していると判断したとき、電動機31を第一回転速度よりも速い第二回転速度で回転させる。
【0080】
吸込口体制御部81による電動機31の運転制御について詳述する。
【0081】
先ず、吸込口体制御部81は、ステップS1で加速度検出部57から吸込口体26の上下方向の加速度情報を読み取る。
【0082】
次に、吸込口体制御部81は、ステップS2で吸込口体26が裏返っているか否かを判断する。吸込口体制御部81は、吸込口体26が裏返っていると判断した場合はステップS3に進み、その他の場合はステップS4に進む。具体的には、吸込口体制御部81は、ステップS1で読み取った加速度情報によって、吸込口体26の上方に向かう加速度を検出したときに吸込口体26が裏返っていると判断し、その他の場合は吸込口体26が裏返っていないと判断する。この吸込口体26の上方に向かう加速度は、もっぱら重力加速度を検出するものである。そこで、吸込口体26が裏返っているか否かの判断は、加速度検出部57によって検出される吸込口体26の上下方向の加速度の向きのみに限られず、その大きさ(吸込口体26の上方向に向かう加速度の大きさ)を考慮しても良い。
【0083】
吸込口体制御部81は、ステップS3で電動機31を停止してステップS1に戻る。なお、吸込口体制御部81は、電動機31が回転していれば回転を停止し、電動機31が停止していればその状態を維持する。
【0084】
次に、吸込口体制御部81は、ステップS4で進行方向検出部59から吸込口体26の移動方向情報を読み取る。
【0085】
次に、吸込口体制御部81は、ステップS5で吸込口体26が前方に移動しているか否かを判断する。吸込口体制御部81は、吸込口体26が前方に移動していると判断した場合はステップS6に進み、その他の場合はステップS7に進む。具体的には、吸込口体制御部81は、ステップS4で読み取った移動方向情報によって、吸込口体26の前進距離が予め定めた閾値(例えば、約10cm)を超えたときに吸込口体26が前方に移動していると判断する。この吸込口体26の前進距離は、移動方向情報から算出するものである。
【0086】
次に、吸込口体制御部81は、ステップS6でスイッチング回路79を制御して電動機31を回転させて回転清掃体42を正転させてステップS9に進む。
【0087】
次に、吸込口体制御部81は、ステップS7で吸込口体26が後方に移動しているか否かを判断する。吸込口体制御部81は、吸込口体26が後方に移動していると判断した場合はステップS8に進み、その他の場合はステップS13に進む。具体的には、吸込口体制御部81は、ステップS4で読み取った移動方向情報によって、吸込口体26の後退距離が予め定めた閾値(例えば、約10cm)を超えたときに吸込口体26が後方に移動していると判断する。この吸込口体26の後退距離は、移動方向情報から算出するものである。
【0088】
次に、吸込口体制御部81は、ステップS8でスイッチング回路79を制御して電動機31を回転させて回転清掃体42を逆転させる。
【0089】
ここで、回転清掃体42の正転とは、回転清掃体42の回転によって吸込口体26に前進方向の走行駆動力を発生させる方向に回転清掃体42を回転させることであり、他方、回転清掃体42の逆転とは、吸込口体26に後退方向の走行駆動力を発生させる方向に回転清掃体42を回転させることである。
【0090】
次に、吸込口体制御部81は、ステップS9で加速度検出部57から吸込口体26の上下方向の加速度情報を読み取る。
【0091】
次に、吸込口体制御部81は、ステップS10で吸込口体26(より詳しくは、より詳しくは検出器支持構造45)の振動加速度が予め定めた加速度閾値よりも大きいか否かを判断する。吸込口体制御部81は、吸込口体26(より詳しくは、より詳しくは検出器支持構造45)の振動加速度が予め定めた加速度閾値よりも大きい場合はステップS11に進み、その他の場合はステップS12に進む。具体的には、吸込口体制御部81は、ステップS9で読み取った加速度情報に基づいて吸込口体26の上下方向の振動加速度(例えば、加速度の実行値)を算出して、この振動加速度と予め定めた加速度閾値とを比較して大小関係を判断する。
【0092】
なお、振動加速度は、被掃除面から入力される変位励振に対して吸込口体26に弾性的に支持された検出器支持構造45の応答加速度である。また、加速度閾値は、木床やプラスチック板などの平滑な被掃除面を励振源にした場合と、じゅうたんなどの凹凸な被掃除面を励振源にした場合と、を区別可能な適宜の値に設定される。そして、吸込口体制御部81は、振動加速度が加速度閾値よりも大きい場合は吸込口体26が凹凸な被掃除面上を走行していると判断してステップS11に進み、その他の場合は吸込口体26が略平滑な被掃除面上を走行していると判断してステップS12に進む。
【0093】
吸込口体制御部81は、ステップS11でスイッチング回路79を制御して電動機31の回転速度を第二回転速度に設定して回転清掃体42を回転させてステップS1に戻る。
【0094】
吸込口体制御部81は、ステップS12でスイッチング回路79を制御して電動機31の回転速度を第一回転速度に設定して回転清掃体42を回転させてステップS1に戻る。
【0095】
次に、吸込口体制御部81は、ステップS13で加速度検出部57から吸込口体26の前後方向の加速度情報を読み取る。
【0096】
次に、吸込口体制御部81は、ステップS14で吸込口体26が前後に移動しているか否かを判断する。吸込口体制御部81は、吸込口体26が前後に移動していると判断した場合はステップS15に進み、その他の場合はステップS3に戻る。具体的には、吸込口体制御部81は、ステップS13で読み取った加速度情報によって、吸込口体26の前後方向に加速度が検出されときに吸込口体26が前後に移動していると判断する。
【0097】
次に、吸込口体制御部81は、ステップS15でスイッチング回路79を制御して電動機31を回転させて回転清掃体42を逆転させてステップS1に戻る。
【0098】
このように構成された本実施形態に係る電気掃除機1によれば、吸込口体26が持ち上げられて被掃除面に置かれていないとき、または吸込口体26が裏返っているときに回転清掃体42を確実に停止させておくことができる。これによって、電気掃除機1は、電動機31の不要な回転にともなう消費電力を低減できるとともに回転清掃体42の回転にともなう騒音を低減できる。また、電気掃除機1は、ユーザが吸込口28に指を突っ込むなどして回転清掃体42で怪我を負わないよう安全性を高めることができる。
【0099】
また、電気掃除機1によれば、吸込口体26を壁際などで前後方向に小刻みに移動させて掃除する場合に、進行方向検出部59および加速度検出部57の検出を参照することによってユーザの使用状況を高精度で判別して操作性を向上できる。
【0100】
さらに、電気掃除機1によれば、吸込口体26が走行している被掃除面の種類(木床やプラスチック板などの平滑な被掃除面か、じゅうたんなどの凹凸な被掃除面か)に応じて回転清掃体42の回転速度を変化させることができるので、略平坦な被掃除面では電動機31の不要な高速回転を抑制して消費電力を低減できるとともに、凹凸な被掃除面では、電動機31の回転速度を上げて集塵力を適宜に向上させることができる。
【0101】
したがって、本実施形態に係る電気掃除機1によれば、吸込口体26の姿勢および走行状態ならびに吸込口体26が置かれた被掃除面の種類に応じて操作性および安全性を向上できる。
【0102】
なお、本発明に係る電気掃除機は、キャニスタ型の電気掃除機1に限らず、アプライト型、スティック型、あるいはハンディ型などの電気掃除機であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 電気掃除機
2 掃除機本体
3 管部
5 本体ケース
6 車輪
7 塵埃分離集塵部
8 電動送風機
9 本体制御部
11 電源コード
12 本体接続口
14 電源プラグ
19 接続管
21 集塵ホース
22 手元操作管
23 把持部
24 操作部
25 延長管
26 吸込口体
24a 停止スイッチ
24b 起動スイッチ
28 吸込口
29 回転清掃体
31 電動機
33 本体部
34 接続管部
36 吸込室
37 ケース
38 バンパ部
39 軸受保持部
41 軸受
42 回転清掃体
43 駆動部
45 検出器支持構造
46 吸込口体制御部
48 下ケース
49 上ケース
51a 機器収容室
51b 機器収容室
52 回転軸
53 プーリ
54 ブラシ毛
52 ベルト
54 回動接続管部
55 傾動接続管部
57 加速度検出部
58 回転部材
59 進行方向検出部
61 検出器ケース
62 弾性部材
63 開口
65 開放区画
66 閉鎖区画
68 従動輪
69 反射ローラ
71 本体制御回路
72 吸込口体制御回路
73 第一スイッチング素子
74 第二スイッチング素子
75 本体電源部
77 電源検出部
78 吸込口体電源部
79 スイッチング回路
81 吸込口体制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掃除機本体と、
前記掃除機本体に連通された吸込口を底面に有する吸込口体と、
前記掃除機本体に収容されて前記吸込口に吸込負圧を発生させる電動送風機と、
前記吸込口体に軸支されて前記吸込口に配置された回転清掃体と、
前記回転清掃体を回転駆動させる電動機と、
前記吸込口体の走行にともなって回転する回転部材を有するとともに前記吸込口体に対して相対的に変位自在かつ弾性支持された検出器支持構造と、
前記検出器支持構造に設けられて加速度を検出する加速度検出部と、
前記回転部材の回転方向を検出する進行方向検出部と、
前記加速度検出部および前記進行方向検出部の検出結果に応じて前記電動機の回転方向および回転速度を制御可能な制御部と、を備えたことを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記制御部は、前記加速度検出部の検出結果によって前記吸込口体が裏返った姿勢であると判断したとき、前記電動機を停止させることを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記制御部は、前記進行方向検出部の検出結果によって前記吸込口体が停止していると判断するとともに、前記加速度検出部の検出結果によって前記吸込口体が停止していると判断したとき前記電動機を停止させ、他方、前記加速度検出部の検出結果によって前記吸込口体が走行方向に移動していると判断したとき前記電動機を回転させることを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記制御部は、前記進行方向検出部の検出結果によって前記吸込口体が走行していると判断するとともに、前記加速度検出部の検出結果によって前記吸込口体が略平滑な被掃除面上を走行していると判断したとき、前記電動機を第一回転速度で回転させ、他方、前記加速度検出部の検出結果によって前記吸込口体が凹凸な被掃除面上を走行していると判断したとき、前記電動機を第一回転速度よりも速い第二回転速度で回転させることを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−136023(P2011−136023A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297694(P2009−297694)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】