説明

電気接続箱、その成型金型及び加工金型

【課題】ケースのバスバーを露出させる窓の縁を、バスバーの延在方向に対して斜めに形成した電気接続箱において、電気接続箱の製造に用いる金型の強度を向上する。
【解決手段】間を空けて配列された複数のバスバー3と、複数のバスバー3を被覆して形成された樹脂製のケース5を備え、ケース5は、複数のバスバー3の一部を露出させる窓11が形成されてなる電気接続箱1において、窓11は、複数のバスバー3の露出部に位置する縁17と、複数のバスバー3の露出部の複数のバスバー3間に位置する縁19とを有し、縁17は、バスバー3の延在方向に対して斜めの仮想線21に沿って形成され、縁19は、仮想線21を斜辺とする直角三角形状の凹みが形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱、その成型金型及び加工金型に係り、特に、複数のバスバーを樹脂製のケースで被覆した電気接続箱のケースに、バスバーを露出させる窓を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車等の車両の電気部品を接続する電気接続箱として、電気回路を形成する複数のバスバーを樹脂性のケースのベース部材にインサート成型した電気接続箱が提案されている。これらのバスバーは、インサート成型の際の位置決めを容易にするため、隣り合うバスバー間を適宜箇所で連結して形成される。そして、インサート成型後にその連結部を切断してバスバーを分断し、ケースのベース部材内に所望の電気回路が形成される。同文献によれば、切断対象のバスバーの連結部を露出させる窓をベース部材に形成している。
【0003】
また、特許文献1は、電気接続箱に他の電気部品を接続する端子を、配列された複数のバスバーから起立して設け、この接続部に複数のバスバーを露出させる窓を形成している。この接続部に配列されている複数のバスバーは、窓の縁に片持ち状態で支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010―46835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、配列されている複数のバスバーの端子位置は、接続相手の電気部品の端子の位置に合わせなければならない。例えば、接続相手の電気部品の複数の端子は、干渉を避けるために位置をずらして配置されることがあり、これに合わせて複数のバスバーの先端部に起立された端子の位置をずらして配置することになる。この場合、窓の縁から各バスバーの片持ちの露出長(出代)が異なることになる。
【0006】
ところで、各バスバーの露出長は、振動を吸収する機能を有するが、バスバーの露出長が長すぎると装置のコンパクト化の要望に反する。そこで、各バスバーの露出長を同一の長さにして、各バスバーを片持ち支持する窓の縁を各バスバーの端子位置に合わせて、バスバーの延在方向に対して斜めに延在させて形成することが考えられる。
【0007】
しかし、各バスバーを片持ち支持する窓の縁をバスバーの延在方向に対して斜めに形成すると、各バスバーを露出させる部位の窓の金型は、各バスバーを包囲する凹部と、各バスバー間に位置する凸部とが連設された型になるから、型の凹部と凸部の境界に位置する一方の凸部の端が鋭角のエッジ状になり、この部分の強度が弱くなるので、例えば成型時の溶融樹脂の通流によって摩耗するという問題がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、各バスバーを片持ち支持する窓の縁をバスバーの延在方向に対して斜めに延在させて形成する金型において、溶融樹脂の通流による摩耗を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、間を空けて配列された複数のバスバーと、複数のバスバーを被覆して形成された樹脂製のケースを備え、ケースは、複数のバスバーの一部を露出させる窓が形成されてなる電気接続箱において、前記窓は、複数のバスバーの露出部に位置する第1の縁と、複数のバスバーの露出部の複数のバスバー間に位置する第2の縁とを有し、第1の縁は、バスバーの延在方向に対して斜めの仮想線に沿って形成され、第2の縁は、仮想線を斜辺とする直角三角形状の凹みが形成されてなることを特徴とする。
【0010】
すなわち、溶融樹脂の通流で摩耗する金型の鋭角のエッジ部は、金型の各バスバーを包囲する凹部と、各バスバー間に位置する凸部と境界に位置する一方の凸部に形成されるから、成形品のバスバー間の位置に直角三角形状の凹みを形成し、凸部を金型の外方向、言い換えると、窓を広げる方向に拡大可能にした。これにより、各バスバーを片持ち支持する窓の縁をバスバーの延在方向に対して斜めに延在させて形成する金型の窓の縁面には、鋭角のエッジ部が形成されないので、溶融樹脂の通流によって摩耗することを抑制できる。
【0011】
例えば、強化材としてガラス繊維を含有させた樹脂でケースを形成する場合、鋭角なエッジ部を有する金型を用いると、ケース成型時、金型の鋭角なエッジ部にガラス繊維が衝突し金型の鋭角なエッジ部が特に摩耗するから、このような場合、金型に鋭角のエッジ部が形成されない本発明を適用することが好ましい。
【0012】
また、金型に鋭角のエッジ部は、機械的強度が比較的弱いため、セッティング時や離型時に、凝固した樹脂やバスバーに接触してエッジ部が破損する可能性があるから、鋭角なエッジ部が形成されてない本発明を適用することが好ましい。
【0013】
なお、複数のバスバーの露出部にそれぞれのバスバーを連結する連結部を形成する場合は、成型後に連結部を切断して電気回路を形成する。
【0014】
また、本発明の電気接続箱を形成する成型金型は、樹脂製のケースのベース部材に電気回路を形成する複数のバスバーを一体成型する少なくとも上型と下型からなり、複数のバスバーが間を空けて配列されてなるバスバーの一部を露出させる窓を、ベース部材に形成する枠状部が上型と下型の少なくとも一方に形成されてなる成型金型において、枠状部の窓の縁に対応する縁は、各バスバーを包囲する凹部に位置する第1の縁と、各バスバー間の凸部に位置する第2の縁とを有し、第1の縁は、バスバーの延在方向に対して斜めの仮想線に沿って形成され、第2の縁は、仮想線を斜辺とし枠状部の外側面に凸となる直角三角形状に形成されてなることを特徴とする。これによれば、鋭角のエッジ部が形成される金型の枠状部の一方の凸部を外側面に拡大でき、溶融樹脂の通流によって摩耗することを抑制できる。
【0015】
また、本発明の電気接続箱のバスバーの連結部を切断する切断する加工金型は、連結部の位置にパンチの挿入孔が形成されたダイスに複数のバスバーの露出部を当接させ、ダイスの挿入孔に向けてパンチを挿入し連結部を切断する加工金型において、ダイスを、電気接続箱の第1と第2の縁に沿って形成することを特徴とする。これによれば、電気接続箱の第2の縁の凹みの分だけダイスを大きくできるから、ダイスの強度を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各バスバーを片持ち支持する窓の縁をバスバーの延在方向に対して斜めに延在させて形成する金型において、溶融樹脂の通流による摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の電気接続箱の平面図である。
【図2】図1の四角2で囲った部分の拡大図である。
【図3】図1の窓を形成する金型を表す概念図である。
【図4】図3の金型の駒部を表す概念図である。
【図5】本実施形態に反して、窓の突出辺をバスバーの延在方向に対して斜めに形成した概念図である。
【図6】本実施形態のバスバーの連結部を切断するダイスとパンチを表した図である。
【図7】バスバーの連結部を全て切断した状態の図である。
【図8】本実施形態に反して、窓の突出辺をバスバーの延在方向に対して斜めに形成した場合のダイスを表した図である。
【図9】バスバーの連結部の位置を変えた変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態)
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。図1、2に示すように本実施形態の電気接続箱1は、例えば、自動車のABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の電気部品を接続する電気接続箱であり、間を空けて配列された複数のバスバー3と、複数のバスバー3を被覆して形成された樹脂製のケース5を備えている。複数のバスバー3は、導電性を有する金属板によって形成されている。各バスバー3の先端には、各バスバー3から起立させた端子10が形成されている。端子10は、接続相手の電気部品のそれぞれの端子に接続可能に形成されている。複数のバスバー3は、金属製の連結部7によって連結されている。連結部7は、後述するケース5の窓11から露出する位置に形成されている。複数のバスバー3は、樹脂性のケース5のベース部材9内にインサート成型され、ベース部材9内に電気回路を形成するようになっている。
【0019】
ケース5は、例えば、ガラス繊維入りの樹脂によって形成されている。ケース5には、複数のバスバー3の一部を露出させる窓11が形成されている。窓11は、各バスバー3を片持ち支持する縁15を有している。窓11は、各バスバー3の連結部7と端子10を露出させる位置に形成されている。ケース5の側部には、複数の貫通孔12が形成され、貫通孔12にボルトを挿通し電気接続箱1を所定の位置に固定できるようになっている。
【0020】
このように構成される電気接続箱1の特徴構成を説明する。ケース5の窓11の複数のバスバー3が突出する縁15には、複数のバスバー3の露出部に位置する第1の縁17と、複数のバスバー3の露出部の複数のバスバー3間に位置する第2の縁19が連設されている。縁17は、バスバー3の延在方向に対して斜めの仮想線21に沿って形成されている。これにより、各バスバー3を片持ち支持する窓11の縁15が、各バスバー3の端子10の位置に合わせて形成され、各バスバー3の露出長(縁15から端子10までの長さ)を同一の長さに設定可能になっている。縁19には、仮想線21を斜辺とする直角三角形状断面の凹部23が形成されている。これにより、窓11が縁15が凹部23の分だけ窓11を広げる方向に拡大されている。
【0021】
このように構成される電気接続箱1の特徴作用を、成型金型と加工金型とともに説明する。電気接続箱1を成型する成型金型は、図示していない上型と下型を備え、金型内に形成されたキャビティ内に複数のバスバー3を支持し、キャビティ内に溶融樹脂を流し込んで複数のバスバー3をインサート成型するようになっている。
【0022】
成型金型の上型と下型の少なくとも一方には、図3に示すように、ベース部材9に窓11を形成する枠状部25が形成されている。枠状部25は、複数のバスバー3の露出部を取り囲む筒状に形成されている。枠状部25には、複数のバスバー3をそれぞれ包囲する凹部27と、各バスバー3間に位置する凸部29とが形成されている。凹部27と凸部29は、窓11の縁15に対応する枠状部25の位置に形成されている。凸部29は、各バスバー3間に挟まれる駒状に形成されている。
【0023】
枠状部25の窓11の縁に対応する縁は、凹部27に位置する縁31と、凸部29に位置する縁33を有し、縁31は、バスバー3の延在方向に対して斜めの仮想線21に沿って形成され、縁33は、仮想線21を斜辺とし枠状部25の外側面に凸となる直角三角形状の断面に形成されている。
【0024】
すなわち、本実施形態の電気接続箱1は、ケース5の窓11の縁19に、直角三角形状の凹部23を形成し、その凹部23に沿って枠状部25の凸部29を、枠状部25の外方向に拡大した。これにより、凸部29の断面が矩形になり、溶融樹脂の通流によって摩耗する鋭角のエッジ部が形成されない。
【0025】
一方、図5に示すように、窓11の縁15のバスバー3間の位置に、凹部23を形成しないと、枠状部25の各バスバー3を包囲する凹部27と、各バスバー3間に位置する凸部29との境界に位置する一方の凸部29(図示は、凸部29の左側)に鋭角のエッジ部35が形成されるから、このエッジ部35がインサート成型時の溶融樹脂やガラス繊維の通流によって摩耗し、成型金型の寿命が短くなる。
【0026】
電気接続箱1を成型した後、バスバー3の連結部7を切断される。連結部7は、図6に示すように、ダイス41とパンチ43を備える加工金型で切断される。ダイス41は、複数のバスバー3の露出部に当接し、連結部7の位置にパンチ43が挿入される挿入孔45を有し、縁17、19に沿って形成されている。このように構成されるダイス41を、図6(a)、(b)に示すように、バスバー3の裏面に配置し当接させ、連結部7の上方からパンチ43を連結部7に向けて下降させ連結部7を切断する。これにより、図7に示すように、全ての連結部7を切断され、所望の電気回路が形成される。
【0027】
ここで、本実施形態の電気接続箱1は、ケース5の窓11の縁19に、直角三角形状の凹部23を形成しているから、その凹部23の分だけダイス41を広げることができるので、ダイス41の強度を向上できる。
【0028】
一方、図8に示すように、窓11の縁15に凹部23を形成しないと本実施形態に比べてダイス41の強度が低いという問題がある。なお、図6、8は、説明をわかりやすくするため、バスバー3の裏側に隠れているダイス41を図示している。
【0029】
このように、本実施形態の電気接続箱1によれば、バスバー3間の位置に直角三角形状の凹部23を形成し、凸部29を枠状部25の外方向に拡大可能にした。これにより、凸部29に鋭角のエッジ部が形成されないので、溶融樹脂の通流によって摩耗することを抑制できる。
【0030】
特に、強化材としてガラス繊維を含有させた樹脂でケース5を形成する場合、鋭角なエッジ部35を有する金型を用いると、ケース5の成型時に、エッジ部35にガラス繊維が衝突しエッジ部35が特に摩耗する。このような場合、金型に鋭角のエッジ部35が形成されない本実施形態を適用することが好ましい。
【0031】
また、金型に鋭角のエッジ部35は、機械的強度が比較的弱いため、セッティング時や離型時に、凝固したケース5やバスバー3との接触でエッジ部35が破損する可能性があるから、鋭角なエッジ部35が形成されてない本実施形態を採用することにより、金型の破損を防止できる。
【0032】
なお、本実施形態は、複数のバスバー3を連結部7で連結した構成を例として説明したが、連結部7を省略することができる。
【0033】
また、図9に示すように、複数のバスバー3の延在方向の同じ位置に連結部7を形成することができる。これによれば、製造公差等による連結部7の位置ズレを抑制でき、加工金型に対する連結部7の位置がずれることを抑制できる。
【符号の説明】
【0034】
1 電気接続箱
3 バスバー
5 ケース
7 連結部
9 ベース部材
11 窓
17 縁
19 縁
21 仮想線
23 凹部
25 枠状部
27 凹部
29 凸部
31 縁
33 縁
41 ダイス
43 パンチ
45 挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間を空けて配列された複数のバスバーと、該複数のバスバーを被覆して形成された樹脂製のケースを備え、該ケースは、前記複数のバスバーの一部を露出させる窓が形成されてなる電気接続箱において、
前記窓は、前記複数のバスバーの露出部に位置する第1の縁と、前記複数のバスバーの露出部の複数のバスバー間に位置する第2の縁とを有し、
前記第1の縁は、前記バスバーの延在方向に対して斜めの仮想線に沿って形成され、前記第2の縁は、前記仮想線を斜辺とする直角三角形状の凹みが形成されてなることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続箱において、
前記複数のバスバーの露出部には、それぞれのバスバーを連結する連結部が形成され、成型後に前記連結部を切断して用いられることを特徴とする電気接続箱。
【請求項3】
樹脂製のケースのベース部材に電気回路を形成する複数のバスバーを一体成型する少なくとも上型と下型からなり、前記複数のバスバーが間を空けて配列されてなる前記バスバーの一部を露出させる窓を、前記ベース部材に形成する枠状部が前記上型と前記下型の少なくとも一方に形成されてなる成型金型において、
前記枠状部の前記窓の縁に対応する縁は、前記各バスバーを包囲する凹部に位置する第1の縁と、前記各バスバー間の凸部に位置する第2の縁とを有し、前記第1の縁は、前記バスバーの延在方向に対して斜めの仮想線に沿って形成され、前記第2の縁は、前記仮想線を斜辺とし前記枠状部の外側面に凸となる直角三角形状に形成されてなることを特徴とする成型金型。
【請求項4】
請求項2に記載の電気接続箱の連結部を切断するダイスとパンチを備える加工金型において、
前記ダイスは、前記複数のバスバーの露出部に当接し、前記連結部の位置に前記パンチが挿入される挿入孔を有し、前記第1と第2に縁に沿って形成されてなることを特徴とする加工金型。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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