説明

電気接続箱

【課題】 バスバーをしっかりと支持した上で、隣接するバスバー同士の短絡防止を行うことが可能な電気接続箱を提供することを目的とする。
【解決手段】 電気接続箱20はケーシング21、ヒューズボックス70、アッパーコネクタ90を主体として構成され、ヒューズボックス70の下面76からはバスバー41、100が引き出されている。各バスバー41、100は同下面76に沿う配索経路をとって、ケーシング21或いはアッパーコネクタ90に引き込まれている。ヒューズボックス70内に侵入した水滴はバスバー41、100を伝って下方へしみ出してゆくが、アッパーコネクタ90並びにカバー61には排水用斜面部67、94が形成されているから、しみ出した水滴は装置外に排水される。一方、ヒューズHの取り替え作業時には、基板用バスバー41の曲げ部41Aには下方への押し込み力が作用するが、カバー側排水用斜面部67には支持板68が形成されており、曲げ部41Aを前記押し込み力に抗じてしっかりと支えるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車に搭載される電気接続箱はエンジンルーム等に設置されることがあるため、洗浄による水の浸入によって回路基板或いはバスバーが短絡しないように対策が講じられてきた(特許文献1)。
このものは回路基板を収容するための枠体3の上面に、外部コネクタ接続用の取付部3cが一体的に設けられている。この取付部3cには上下に貫通する端子収容孔3dが設けられており、そこには、外部コネクタの備える端子と回路基板を接続するための接続端子(バスバー)13が収容されている。そのため、この端子収容孔3dを介して侵入した水分がバスバーを伝って電気接続箱内部の回路基板を浸水させる虞があった。
そこで、取付部3cから回路基板5に至る経路上においてバスバー13の外周に別部品11を液密状に嵌着し、これにより、バスバー13を伝う水滴分の経路を変えることで回路基板5を保護するようにしていた。
【特許文献1】特開2003−348732公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、図6に示すようにヒューズボックス15の下方にこれとは別体に形成された接続箱本体17が配されるものにおいては、ヒューズボックス15と接続箱本体17に収容される回路基板との間を電気的に接続するバスバー18は、ヒューズボックス15の底壁から引き出された後、同底壁の下面15Aに沿う配索経路をとって接続箱本体17に引き込まれることがある。
係る場合に、ヒューズボックス15内に侵入した水滴はバスバー18を介してヒューズボックス15側から接続箱本体17側へ伝ってゆくが、こうした水滴が接続箱本体17の上面に貯まってしまうと、その部分で隣接するバスバー同士が短絡してしまう虞がある。そこで、短絡を未然に防止する方策としてバスバー18のうち底壁から引き出された部分18Aと、接続箱本体17との間に空隙を設けることが考えられるが、このような空隙19を設けると、バスバー18の支持が十分でなくなるためヒューズの装着・取り替えの際に、図6の(b)に示すようにバスバー18のうち底壁から引き出された部分18Aが変形をきたす虞があった。本発明は上記のような事情に基づいてなされたものであって、バスバーをしっかりと支持した上で、短絡防止を行うことが可能な電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、ヒューズ素子が脱着可能に収容されるヒューズボックスの下方に、内部に回路構成体が収容される回路ケーシングが配されるとともに、前記ヒューズボックスと前記回路構成体との間を電気的に接続する複数個のバスバーが前記ヒューズボックスの底壁から引き出された後、同底壁の下面に沿う配索経路をとって前記回路ケーシングに引き込まれている電気接続箱であって、前記回路ケーシングの上面と前記バスバーとの間に排水空隙が設けられるとともに、前記回路ケーシングの上面には前記バスバーの底壁に沿う部分に当接して同バスバーを下支えする支持突部が設けられているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記支持突部は前記バスバーの並び方向に沿う複数個の支持板により構成され、これら各支持板は前記各バスバーと対向する位置にあって同バスバーを個別に支えるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、バスバーと回路ケーシングとの間には排水空隙が設けられているから回路ケーシングの上面に水滴が貯まることがない。従って、同上面において隣接するバスバー同士が短絡することがない(短絡防止)。
また、回路ケーシングの上面には支持突部が設けられているから、バスバーをしっかりと支持することが出来る。
【0007】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、各支持板は各バスバーを個別に支持するからバスバーの支持に関して信頼性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図1ないし図5によって説明する。
図1に示す20は自動車に使用される電気接続箱であって、バッテリ等の電源と電気的負荷との間に介設され、電源から供給される電力を各電装品に分配・供給するとともに、これら電力供給の切り替え等の制御を行うものである。電気接続箱20は回路構成体31を内部に収容するケーシング(本発明の回路ケーシングに相当する)21、ヒューズボックス70、アッパーコネクタ90を主体として構成され、例えば、エンジンルーム内に縦向きに(図1に示す向き)配置される。
【0009】
回路構成体31は回路基板33と、回路基板33の表面に形成された回路パターン(図示せず)に実装される電子部品32と、回路基板33の裏面に沿って配されて電源(図示せず)に接続される金属板材からなる基板用バスバー41とから構成されている。尚、回路基板33と基板用バスバー41とは、絶縁性を有する接着材(図示せず)を介して一体化されている。また、ここでいう接着材には接着剤及び接着シート等が含まれるものとする。
【0010】
ケーシング21は合成樹脂製の枠体35、枠体35の外形と概ね同じ形状とされた金属製(例えば、アルミニウム合金)の放熱板39並びにカバー61から構成されている。枠体35は、回路基板33の外形に沿った形状であって、全周に亘って切れ目無く連続して回路基板33を包囲するようになっている。また、詳細には後述するが、枠体35の上部(図1に示す上部)にはヒューズボックス70が取りつけられている。
【0011】
カバー61は放熱板39と同じく枠体35の外形と概ね同じ形状とされる。図4に示すようにカバー61並びに放熱板39は枠体35の左右両側に対向するように位置して枠体35内に回路構成体31を収容させた状態で、枠体35の開口面を閉止するようになっている。また、図1に示すようにカバー61の上部の左右両縁には座部64が設けられており、カバー61は枠体35に対して例えば、ねじ締め等によってヒューズボックス70と共締めされるようになっている。
【0012】
ヒューズボックス70は合成樹脂製であって上方に開口する箱型をなす。図4に示すように、ヒューズボックス70の内部は区画壁71Aによって、複数のヒューズ室72に区画されている。各ヒューズ室72の底壁には各ヒューズ室72を連通する端子挿通孔75A、75Bが同図の左右方向に一対設けられており、右側の端子挿通孔75Aには基板用バスバー41が、左側の端子挿通孔75Bにはコネクタ用バスバー100がそれぞれ挿通されるようになっている。
【0013】
まず、基板用バスバー41から説明すると、基板用バスバー41の上端部分はクランク状に屈曲され(水平方向に折り曲げられた部分を曲げ部41Aとする)て図示上方に立ち上げられている。この立ち上げられた部分がヒューズ端子接続部42とされており、端子挿通孔75Aに挿通される。尚、曲げ部41Aはヒューズボックス70とカバー61との対向面(ヒューズボックス70の下面76、カバー61の上面62)間にあって、両面に沿うように配される。
【0014】
一方、コネクタ用バスバー100は図3に示すように、タブ101とヒューズ端子接続部105との間を連結部103を介して前後に繋いで形成され、ヒューズ端子接続部105が、端子挿通孔75Bに挿通されるようになっている。
そして、図4に示すように、これら端子挿通孔75A、75Bの間に位置して仕切壁73と、仕切壁73の両側に抜止め片74が設けられている。この抜止め片74は図示上方に向かって片持ち状に伸び、その先端部分にはロック爪74Aが設けられている。このロック爪74Aは、各ヒューズ端子接続部42、105が図4に示す正規差し込み位置まで挿入されたときには各ヒューズ端子接続部42、105に形成されるロック孔109に係止してヒューズ端子接続部42を抜止めするようになっている。
【0015】
ヒューズボックス70の上面からは各ヒューズ室72に対して、ヒューズHが挿入されるようになっている。ヒューズHは一対のヒューズ端子Tを備えており、挿入状態においては各ヒューズ端子Tが基板用バスバー41並びにコネクタ用バスバー100のヒューズ端子接続部42、105にそれぞれ接続されるようになっている。
【0016】
また、ヒューズボックス70における幅方向の中央部分からは、図1に示すように下向きにロックアーム78が形成されている。このロックアーム78は、次述するアッパーコネクタ90に形成されるロック受け部に対して係止して、アッパーコネクタ90をロック状態に保持するように機能する。
【0017】
アッパーコネクタ90は合成樹脂製であって横長角筒状をなすとともに、前方から相手側ハウジングを嵌合可能とされたフード部が形成されている。図4に示すように、アッパーコネクタ90はヒューズボックス70の下部において、同フード部を下に向けた状態(開口を下に向けた状態)で、カバー61と向かい合うように配置されている。そして、アッパーコネクタ90の上面(ヒューズボックス70の下面76と向かい合う面)91には各フード部に連なる受け入れ孔(図示せず)が上下に貫通しており、そこへは前述したコネクタ用バスバー100のタブ101が貫通されるようになっている。
【0018】
ところで、ヒューズボックス70は上面が開口しているから、そこへは水滴が侵入することがあるが、侵入した水滴はヒューズ室72の底側に集まり、その後、基板用バスバー41或いはコネクタ用バスバー100を伝ってゆく。
一方、本実施形態において基板用バスバー41及びコネクタ用バスバー100はヒューズボックス70の下面76から引き出された後、クランク状に屈曲して同下面76に沿う配索経路をとっているが、屈曲した部分(曲げ部41A、連結部103)の下方にはカバー61並びにアッパーコネクタ90が位置している(図4参照)。そのため、水滴が基板用バスバー41或いはコネクタ用バスバー100を伝う過程で、カバー61並びにアッパーコネクタ90の上面62、91に留まってしまい、そこで、隣接する基板用バスバー41同士或いはコネクタ用バスバー100同士が短絡する虞がある。
【0019】
そこで、本実施形態では、基板用バスバー41の曲げ部41Aとカバー61の上面62との間並びにコネクタ用バスバー100の連結部103とアッパーコネクタ90の上面91との間に排水空隙を設けることとしている。
【0020】
より具体的に図4を参照して説明すると、アッパーコネクタ90の上面91には段差96が設けられるとともに、その下端からはカバー61側に向かって下降傾斜するコネクタ側排水用斜面部94が形成されている。コネクタ側排水用斜面部94の終端はアッパーコネクタ90の側面(カバー61に対する対向面)90Aに達している。これにより、連結部103とコネクタ側排水用斜面部94との間に、排水空隙が形成される。尚、この排水空隙はコネクタ用バスバー100の並び方向の全幅に亘って形成されている。
【0021】
一方、カバー61の上面62にはカバー側排水用斜面部67が設けられている。カバー側排水用斜面部67は図4に示すP部(基板用バスバー41の曲げ部41Aが枠体35の内側から外側に引き出される部分)を始端として、そこからアッパーコネクタ90に向かって下降傾斜し、終端はカバー61の壁面(アッパーコネクタに対する対向面)61Aに達している。これにより、曲げ部41Aとカバー側排水用斜面部67との間に、排水空隙が形成される。尚、この排水空隙は基板用バスバー41の並び方向の全幅に亘って形成されている。
【0022】
これら両排水用斜面部67、94は互いに対向するようになっているが、カバー側排水用斜面部67の方が傾斜角度が大きくとってあり(約45度の勾配)、その下端がコネクタ側排水用斜面部94の下端に比べて下方に位置している。
【0023】
また、カバー61の排水用斜面部67には図2に示すように基板用バスバー41の並び方向に沿って、支持板68が複数個並設されている。各支持板68は板面が基板用バスバー41における曲げ部41Aの配索方向に沿った三角形状をなすとともに、各曲げ部41Aと対向する位置に配されている(図4参照)。そして、支持板68のうち曲げ部41Aと対向する側の片は曲げ部41Aに対する支持面68Aとなっている。支持面68Aは基板用バスバー41の曲げ部41Aに倣った水平面とされており、曲げ部41Aのうち枠体35から露出される部分(図4におけるP部より左側に位置する部分)のほぼ全長に亘って接して、同曲げ部41Aを下支えするようになっている。尚、基板用バスバー41における曲げ部41Aの配索方向とは図4における左右方向のことである。
【0024】
このような構成とすることで、基板用バスバー41の変形防止が図られる。すなわち、ヒューズHを交換する場合などには、基板用バスバー41の曲げ部41AにはヒューズHを介して下向きの押し込み力が作用するが、上記構成であれば支持板68によって曲げ部41Aをしっかりと支えることが出来るから、曲げ部41Aに下向きの押し込み力が作用しても同部分が変形することがない。
【0025】
本実施形態の作用効果について説明する。
ヒューズHの交換作業はボンネットを空けた状態で行うことから、例えば降雨時に交換作業を行うとヒューズボックス70のヒューズ室72内に水滴が侵入する場合がある。ヒューズ室72内に侵入した水滴は、ヒューズ室72に設けられる挿通孔75A、75Bを通じてヒューズボックス70の下面76側にしみ出す。その後、水滴は基板用バスバー41側にあっては同バスバー41の曲げ部41Aを伝ってカバー61側へ徐々にしみ出してゆき、コネクタ用バスバー100にあっては同バスバー100の連結部103を伝ってアッパーコネクタ90側にしみ出してゆく。やがて、水滴はカバー側排水用斜面部67、或いはコネクタ側排水用斜面部94の始端に達する。それ以降、水滴は各排水用斜面部67、94の斜面に沿って下方に流れてゆく。従って、水滴がカバー61並びにアッパーコネクタ90の上面62、91に留まることがないから、同部分における隣接するバスバー間の短絡が未然に防止される。
【0026】
また、ヒューズHを装着する際に、基板用バスバー41並びにコネクタ用バスバー100にはヒューズHを介して下向きの押し込み力が作用する。特に、基板用バスバー41にあっては、図4に示すように曲げ部41Aの長さが連結部103の全長に比べて長く同図におけるP部には強い力が加わる。しかし、支持板68が各基板用バスバー41の曲げ部41Aをその全長に亘って支えているから上記押し込み力に十分抗することが出来る。そして、各支持板68は各基板用バスバー41を個別に支持するからバスバーの支持に関して信頼性が高まる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0028】
(1)本実施形態では支持板68を基板用バスバー41の並び方向に複数個併設させ、各基板用バスバー41を個別に支えたが、各バスバー41を一括して支持するようなものであってもよい。
【0029】
(2)本実施形態ではカバー側排水用斜面部67にのみ支持板68を設けたが、コネクタ側排水用斜面部94に支持板68を設けてコネクタ用バスバー100を支持してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気接続箱の正面図
【図2】カバーの斜視図
【図3】コネクタ用バスバーの斜視図
【図4】図1におけるA−A線断面図
【図5】支持板が基板用バスバーを下支えしている状態を示す斜視図
【図6】従来例の側面図
【符号の説明】
【0031】
20…電気接続箱
21…ケーシング(回路ケーシング)
41…基板用バスバー
41A…曲げ部
67…カバー側排水用斜面部
68…支持板(支持突部)
70…ヒューズボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューズ素子が脱着可能に収容されるヒューズボックスの下方に、内部に回路構成体が収容される回路ケーシングが配されるとともに、
前記ヒューズボックスと前記回路構成体との間を電気的に接続する複数個のバスバーが前記ヒューズボックスの底壁から引き出された後、同底壁の下面に沿う配索経路をとって前記回路ケーシングに引き込まれている電気接続箱であって、
前記回路ケーシングの上面と前記バスバーとの間に排水空隙が設けられるとともに、前記回路ケーシングの上面には前記バスバーの底壁に沿う部分に当接して同バスバーを下支えする支持突部が設けられていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記支持突部は前記バスバーの並び方向に沿う複数個の支持板により構成され、これら各支持板は前記各バスバーと対向する位置にあって同バスバーを個別に支えるところを特徴とする請求項1に記載の電気接続箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−50786(P2006−50786A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228202(P2004−228202)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】