説明

電気放電ランプ

電気放電ランプは、光透過性セラミック放電管(1);該放電管(1)に導入され、該放電管(1)内でそれぞれの電極(4、5)を支持する第1および第2の電流導体(2、3);前記放電管(1)内の希ガスおよび金属ハロゲン化物を有する電離可能な充填材を有し、少なくとも放電管(1)内の第1の電流導体(2)は、ハロゲン化に対する耐性を有し、第1の電流導体(2)は、少なくとも実質的に等方性の熱膨張係数を有する材料を少なくとも実質的に有し、前記材料は、YがMo、WおよびTaから選定され、XがB、Al、NまたはCで、4≦p≦5および0<q≦1のとき、YpSi3Xqの群から選定されることが好ましい。前記材料の組成は、0.10≦x≦0.55および0.15≦y≦0.40として、Mo6(Six,Mo1-x)4(Cy,Si1-y)6であることがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
光透過性セラミック放電管と、
該放電管に導入され、該放電管内でそれぞれの電極を支持する第1および第2の電流導体と、
前記放電管内の希ガスおよび金属ハロゲン化物を有する電離可能な充填材と、
を有する電気放電ランプであって、少なくとも前記放電管内の前記第1の電流導体は、ハロゲン化に対する耐性を有する電気放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような電気放電ランプは、国際特許出願第WO0034980号に示されている。第1の電流導体の第1の部分は、耐ハロゲン化材料で構成され、その第2の部分は、ニオブで構成される。ニオブは、本材料の熱膨張係数が放電管の熱膨張係数に近いことから選定され、ランプのリーク漏れが防止できる。従来技術の特定の実施例では、前記第1の部分は、シール材がセラミック、ガラスまたはそれらの組み合わせである場合、リーク漏れの危険を未然に防ぐため、三珪化五モリブデンで構成され、第1の電流導体の第1の部分が直接ランプに接続される。
【0003】
本明細書および特許請求の範囲では、セラミック放電管とは、例えば単結晶サファイヤのような半透明結晶質金属酸化物、および例えばアルミナ、YAGまたはYbAgのような緻密焼結多結晶金属酸化物で構成された壁を有する放電管を指すことに留意する必要がある。
【特許文献1】国際特許出願第WO0034980号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許出願に示されている電気放電ランプの問題は、第1の電流導体の第1の部分が、三珪化五モリブデンで構成されている場合、特に高温および/または高稠密の焼結時に、この材料にマイクロクラックが生じることである。これらのマイクロクラックは、第1の電流導体の機械的強度を抑え、および/または放電管内の電離可能な充填材を部分的に「吸収」する。またマイクロクラックは、前述のようなリーク漏れの原因となる気孔を形成する。
【0005】
本発明の課題は、前述の問題を排除することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のため、本発明による最初に示した方式の電気放電ランプでは、前記第1の電流導体が、少なくとも実質的に等方性の熱膨張係数を有する材料を少なくとも実質的に有することに特徴がある。前記材料は、YがMo、WおよびTaから選定され、XがB、Al、NまたはCで、4≦p≦5および0<q≦1のとき、YpSi3Xqの群から選定されることが好ましい。本材料は、ノボトニ相としても知られているD88型構造の群に属する。これらの材料の有意な点は、これらが実質的に単相であることである。材料組成は、0.10≦x≦0.55および0.15≦y≦0.40として、Mo6(Six,Mo1-x)4(Cy,Si1-y)6であることが好ましい。広範囲に及ぶ研究によって、前述のマイクロクラックは、三珪化五モリブデンの固有の熱弾性特性の影響によって、材料内に熱応力が生じるためであることが明らかとなっている。本発明は、特に、少なくとも実質的に等方性の熱膨張係数を有する材料、すなわち使用材料の結晶構造の全ての結晶方向において、熱膨張係数が同等の値を示す材料を提供することによって、使用材料の熱弾性特性が改善され、材料内の熱応力が抑制されるという認識に基づくものである。本発明の材料の基本的特性は、YがMo、WおよびTaの2以上の元素から選定された混合物で構成される場合に確保される。本発明では、特に、YがMo、WおよびTaから選定され、XがB、Al、NまたはCで、4≦p≦5および0<q≦1のときのYpSi3Xq、さらには特に、0.10≦x≦0.55および0.15≦y≦0.40のときのMo6(Six,Mo1-x)4(Cy,Si1-y)6において、(ほぼ)等方性の熱膨張係数が得られることが認められており、この熱膨張係数は、放電管の熱膨張係数とも近くなっている。他の利点は、これらの材料が実質的に単相であることである。これは、同時に他の要求にも合致する:電離可能な充填材に対するランプの耐性、特にハロゲン化に対する耐性(すなわち、これらの材料は、ハロゲン化合物またはそれから形成されるハロゲンにアタックを受けたり反応したりしない必要がある)、熱成型時やランプの作動条件下での耐性、2000℃までの熱安定性、電極に対する取り付け容易性、および電気的損失を防止することの可能な十分な電気伝導性である。
【0007】
本発明による電気放電ランプのある好適実施例では、さらに第2の電流導体が、少なくとも実質的に等方性の熱膨張係数を有する材料を少なくとも実質的に有し、前記材料の組成は、0.10≦x≦0.55および0.15≦y≦0.40として、Mo6(Six,Mo1-x)4(Cy,Si1-y)6であることが好ましい。この場合、同じ組成が両電流導体に使用されるため、ランプの製作が簡略化される。前述のようにこれらの材料は、熱的および化学的に安定であって、等方性の熱膨張係数を有するという要求にうまく合致する。
【0008】
本発明による電気放電ランプの別の好適実施例では、前記材料は、ランプの製造温度において放電管のセラミック材料に密着する。この場合、以下の理由により、極めて小型のランプ構成が可能となる。前述の特許出願に示されている従来のランプでは、シール材を使用して、セラミック放電管を電流導体の周囲でシールする。ランプが高温(作動温度)の場合、シール材の反応性が高いため、シール材は、放電管の中央部からできる限り離して、すなわち焼結によって放電管の中央部に接続される突出プラグ(すなわち延伸した端部部分)の自由端に、設置される。また前記突出プラグの使用は、ランプの設計と作動の点では、いくつかの問題がある。前記プラグは、冷却フィンとして機能し、ランプ作動時の放電管内の作動温度に影響を及ぼすため、ランプ設計時に制約が加わることになる。さらに、前記突出プラグにはキャピラリが設置され、その内部でランプ充填材の一部が揮発する結果、ランプの色が不安定になる。本好適実施例では、YがMo、WおよびTaから選定され、XがB、Al、NまたはCで、4≦p≦5および0<q≦1のときの前述の材料YpSi3Xqは、実質的に単相であり、約1500から2000℃の間で変化する製作温度において、セラミック放電管に共焼結される。従って、別個のシール材を使用する必要がなくなるとともに、放電管の一部として突出プラグを使用する必要がなくなる。好適実施例では、放電管のセラミック材料と電流導体材料の熱膨張係数とが極めて近くなるという利点が得られる。本好適実施例では、極めて小型のランプを構成することが可能となる上、前述の従来の問題を排除することができる。
【0009】
本発明による電気放電ランプの別の好適実施例では、前記第1および第2の電流導体の各々は、該電流導体の周囲で前記放電管を気密シールするシール材から、前記放電管の外部まで延伸し、前記放電管は突出プラグを有し、該突出プラグの各々には各電流導体が収容され、該突出プラグの各々は、前記放電管が前記シール材と密着してシールされる箇所に自由端を有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明をより詳しく説明する。
【0011】
図1には、本発明に基づく電気放電ランプを示す。この電気放電ランプには、多結晶酸化アルミで構成された、管状の光透過性セラミック放電管1が設けられ、該放電管1は、第1および第2の電流導体2、3を有する。該導体2、3は、相互に放電管1の反対側に挿入され、それぞれ、放電管1内に設けられ各電流導体2、3に溶接されたタングステン電極4、5を支持している。セラミックシール材6は、重量比で30%の酸化アルミと、重量比で40%の酸化ケイ素と、重量比で30%の酸化ジスプロシウムの溶融処理によって形成され、このシール材は、電流導体2、3を気密シールする。放電管1は、希ガスとしてのアルゴンと、ハロゲン化金属としてのナトリウム、タリウムおよびジスプロシウムのヨウ化物の混合物とを有する電離可能な充填材を有する。
【0012】
第1および第2の電流導体2、3は、それぞれ、放電管1内の第1の耐ハロゲン化部21、31と、シール材6から放電管1の外部まで延伸され、第1の部分21、31に溶接された第2の部分22、32とを有する。電流導体2、3の第2の部分22、32は、ニオブで構成され、放電管1内でシール材6と完全に一体化されている。本発明では、第1および第2の電流導体2、3の第1の部分21、31は、等方性の熱膨張係数を有する材料で構成され、この材料は、YがMo、WおよびTaから選定され、XがB、Al、NまたはCで、4≦p≦5および0<q≦1のとき、YpSi3Xqであることが好ましく、0.10≦x≦0.55および0.15≦y≦0.40としたとき、Mo6(Six,Mo1-x)4(Cy,Si1-y)6の組成であることがより好ましい。これらの材料は、実質的に単相である。本発明の代替実施例では、両電流導体2、3は、一つの材料の一つの部品で構成される。この場合、ニオブからなる第2の部分22、32を使用する必要がなくなるため、ランプ構造が簡略化できるという利点があり、ランプ製作工程が単純化される。これが可能となるのは、YがMo、WおよびTaから選定され、XがB、Al、NまたはCで、4≦p≦5および0<q≦1のとき、YpSi3Xqが、放電管1を構成するセラミック材料の熱膨張係数と極めて近い熱膨張係数を有することによる。
【0013】
放電管1は、狭小の外端部分、あるいは突出プラグ11、12を有し、各電流導体2、3は、これらの各々の内部に収容される。各プラグ11、12は、自由端111、121を有し、シール材6は、この箇所で放電管1をシールする。放電管1の中央部10は、焼結によって、セラミックディスク13を介してプラグ11、12に接続される。放電管1には、気密シールされた外部外囲器7が設置され、電流導体2、3のニオブ製の第2の部分22、32を保護するため、内部は真空化されあるいは不活性ガスが充填される。外部外囲器7は、ランプキャップ8を支持する。
【0014】
図2には、別の好適実施例に基づく管状の光透過性セラミック放電管1の一端を概略的に示すが、この場合、極めて小型のランプ構造が得られる。放電管1内に設置されたタングステン電極5は、第1の電流導体2に取り付けられ(好ましくは溶接され)ている。前記第1の電流導体2は、約1500から2000℃の間で変化するランプ製作温度において、セラミック放電管1の材料に共焼結されるが、この場合、図1に示すランプとは異なり、別個のシール材を使用する必要はなくなる。電流導体2は、図1の第1の電流導体2で指定された材料と同じ材料で構成される。図2の第1の電流導体2は、セラミック放電管1の端部壁を構成する。あるいは図3に示す例では、電流導体2は、放電管1のセラミックディスク13を貫通して延びる電極5の延伸部を構成する。セラミック放電管の他端(図2および図3には図示されていない)は、同じ構造を有しても良い。
【0015】
本発明は、図面に示された形式に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に含まれる他の実施例も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による高圧放電ランプの概略図である。
【図2】図1のランプの放電管の代替密閉構造の断面図である。
【図3】図1のランプの放電管の別の代替密閉構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性セラミック放電管と、
該放電管に導入され、該放電管内でそれぞれの電極を支持する第1および第2の電流導体と、
前記放電管内の希ガスおよび金属ハロゲン化物を有する電離可能な充填材と、
を有する電気放電ランプであって、
少なくとも前記放電管内の前記第1の電流導体は、ハロゲン化に対する耐性を有し、
前記第1の電流導体は、少なくとも実質的に等方性の熱膨張係数を有する材料を少なくとも実質的に有することを特徴とする電気放電ランプ。
【請求項2】
前記材料は、YがMo、WおよびTaから選定され、XがB、Al、NまたはCで、4≦p≦5および0<q≦1のとき、YpSi3Xqの群から選定されることを特徴とする請求項1に記載の電気放電ランプ。
【請求項3】
前記材料の組成は、0.10≦x≦0.55および0.15≦y≦0.40として、Mo6(Six,Mo1-x)4(Cy,Si1-y)6であることを特徴とする請求項2に記載の電気放電ランプ。
【請求項4】
さらに前記第2の電流導体は、少なくとも実質的に等方性の熱膨張係数を有する材料を少なくとも実質的に有することを特徴とする請求項1、2または3のいずれかに記載の電気放電ランプ。
【請求項5】
前記材料の組成は、0.10≦x≦0.55および0.15≦y≦0.40として、Mo6(Six,Mo1-x)4(Cy,Si1-y)6であることを特徴とする請求項4に記載の電気放電ランプ。
【請求項6】
前記材料は、当該ランプの製作温度において、前記放電管のセラミック材料に共焼結されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の電気放電ランプ。
【請求項7】
前記第1および第2の電流導体の各々は、該電流導体の周囲で前記放電管を気密シールするシール材から、前記放電管の外部まで延伸し、前記放電管は突出プラグを有し、該突出プラグの各々には各電流導体が収容され、該突出プラグの各々は、前記放電管が前記シール材でシールされる箇所に自由端を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の電気放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−528102(P2007−528102A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518425(P2006−518425)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051023
【国際公開番号】WO2005/001883
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】