説明

電気柵支柱の継ぎ具

【課題】誤って切断された電気柵の支柱を容易に継ぎ足すことのできる継ぎ具を提供すること。
【解決手段】電気柵に使用されるパイプ状の支柱2a,2bを継ぎ足すための電気柵支柱の継ぎ具20であって、支柱2a,2bの内孔径より大きい外径を有する鍔部21と、この鍔部21の上下に設けられ、それぞれ支柱2a,2bの内孔に挿入されて嵌め込まれる挿入部22,23と備え、上下の挿入部22,23のうち少なくとも一方の挿入部の先端部分22a,23aを先細り状に形成した電気柵支柱の継ぎ具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気柵の支柱を継ぎ足すための電気柵用支柱の継ぎ具に関する。
【背景技術】
【0002】
中山間地域の農村地帯では、田畑を荒らす猪、鹿等の害獣を電気ショックで撃退するために、田畑の周囲に裸電線を張り巡らしこの裸電線に衝撃電圧を印加するようにした電気柵が多く使用されている。
【0003】
この電気柵は図3に示すように、田畑の周囲に打設された支柱2に取り付けられた碍子1a,1bに裸電線3a,3bを係止して、裸電線3a,3bを田畑の周囲に張設し、その裸電線3a,3bを約50mごとに裸電線からなる上下結線4で結線したものである(例えば特許文献1参照)。
【0004】
地表より1段目の裸電線3bは地表より約20cm程度、2段目の裸電線3aは裸電線3bの上方約20cm程度の比較的低い位置に張設されている。そして、この張設された裸電線3a,3bに衝撃電圧発生装置5より発生された衝撃電圧が印加されている。
【0005】
田畑に侵入しようとして、この張設された裸電線3a若しくは裸電線3bに接触した猪等の害獣には図中の矢印のように衝撃電圧発生装置5の出力端子6、出力線7、裸電線3a、上下結線4、裸電線3b、猪8、地中9、アース棒10、アース線11、アース端子12の順路で衝撃電流が流れ、猪8は電気ショックにより電撃を受け、田畑へ侵入する意欲を失い、侵入をあきらめる。
【0006】
この電気柵において地表より1段目の裸電線3bの張設された高さは地表より約20cmと低いため、裸電線3bの下の草類が生長を続け、この草類が裸電線3b又は裸電線3aに接触すると、衝撃電流はこの接触した草類を通して地中へ漏電することになる。この漏電は裸電線3b又は裸電線3aに触れる草類の数が増えるのに略比例して多くなり、そして、漏電が多くなれば多くなるほど衝撃電圧発生器5から裸電線3a,3bにかかる衝撃電圧は減少することになる。その結果、猪等の害獣に有効な衝撃電流を与えることができなくなる。
【0007】
したがって、猪等の害獣が裸電線3a又は裸電線3bに触れると害獣に電気ショックを与えるという電気柵の忌避効果を維持するためには、裸電線3b又は裸電線3aに接触している草類、及び接触しようとしている草類を常に取り除く除草作業が必要である。この除草作業には刈り払い機が多用される。
【0008】
しかし、刈り払い機を使用して草類を刈り払う場合、刈り払い機の回転している刃物を支柱に誤って当ててしまい、支柱を切断してしまうことが多々ある。
【0009】
従来、支柱を切断してしまった場合、新たな支柱を準備して、これを打設し、さらに裸電線を張設し直す必要があった。
【0010】
これに対して、継ぎ具を使用して誤って切断された支柱を継ぎ足し、再度利用できるようにすることが考えられる。
【0011】
図2は、従来の一般的なパイプ用の継ぎ具とその問題点を示す図である。同図に示す従来の一般的なパイプ用の継ぎ具30は、鍔部31とこの鍔部31の上下に設けられた挿入部32,33とからなる。各挿入部32,33は、継ぎ具として使用したときにガタツキが生じないように、その外径D1がパイプP1,P2の内孔径D2と略同一に形成されている。したがって、継ぎ具30を使用して切断されたパイプP1,P2を継ぎ足すには、まず、挿入部32,33のいずれか一方(図2では挿入部33)を下側のパイプP2の内孔に嵌め込むために、挿入部32,33のいずれか他方(図2では挿入部32)の先端を木槌等で叩く必要がある。そうすると、木槌等で叩いた挿入部の先端部分が変形してバリBが生じる。バリBが生じると、その挿入部32に上側のパイプP2を嵌め込むことができなくなる
【0012】
また、この継ぎ具を誤って切断された電気柵の支柱の継ぎ足しに使用する場合、電気柵の支柱の内孔面にもバリのあることが多いから、そもそも、挿入部32,33を支柱の内孔に嵌め込みにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−299433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、誤って切断された電気柵の支柱を容易に継ぎ足すことのできる継ぎ具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の継ぎ具は、電気柵に使用されるパイプ状の支柱を継ぎ足すための電気柵支柱の継ぎ具であって、電気柵の支柱の内孔径より大きい外径を有する鍔部と、この鍔部の上下に設けられ、それぞれ電気柵の支柱の内孔に挿入されて嵌め込まれる挿入部とを備え、上下の挿入部のうち少なくとも一方の挿入部の先端部分を先細り状に形成したことを特徴とするものである。
【0016】
このように、少なくとも一方の挿入部の先端部分を先細り状に形成したことで、挿入部の一方を電気柵の支柱の内孔に嵌め込む際に、先端部分を先細り状に形成した挿入部の先端を木槌等で叩くようにすれば、木槌等で叩いた先端部分が変形してバリが生じても、もとが先細り状であることから、電気柵の支柱の内孔の嵌め込むことができる。したがって、誤って切断された電気柵の支柱を容易に継ぎ足すことができる。
【0017】
本発明においては、上下の挿入部の両方の先端部分を先細り状に形成することが好ましい。これによって、両方の挿入部を電気柵の支柱の内孔に、より簡単に嵌め込むことができるようになる。
【0018】
また本発明においては、挿入部の、先細り状に形成した先端部分より鍔部側の基端部分の外径を電気柵の支柱の内孔径と同一にすることが好ましい。これによって、挿入部の基端部分が電気柵の支柱の内孔に強固に嵌り込むので、切断された電気柵の支柱どうしを強固に接続して一体化できる。
【0019】
さらに本発明においては、挿入部の、先細り状に形成した先端部分より鍔部側の基端部分の鍔部と隣接する部分の外径を電気柵の支柱の内孔径と同一にし、かつ基端部分を先端部分に向けて先細りとなるテーパー状に形成することもできる。このように挿入部の基端部分を先細りのテーパー状に形成することで、電気柵の支柱の内孔への挿入部の嵌め込みをよりスムーズに行うことができる。そして、挿入部の基端部分の鍔部と隣接する部分の外径が電気柵の支柱の内孔径と同一であることから、切断された電気柵の支柱どうしを強固に接続して一体化できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の継ぎ具によれば、誤って切断された電気柵の支柱を容易に継ぎ足すことができる。したがって、誤って切断された電気柵の支柱を継ぎ足し、再度利用することができ、資材やコストの無駄をなくすことができる。また、電気柵の支柱の継ぎ足しが容易であることから、高齢者であっても容易に取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の電気柵支柱の継ぎ具とその使用形態を示す図である。
【図2】従来の一般的なパイプ用の継ぎ具とその問題点を示す図である。
【図3】電気柵の代表的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の電気柵支柱の継ぎ具とその使用形態を示す図である。同図に示す電気柵支柱の継ぎ具20は、鍔部21とこの鍔部21の上下に設けられた挿入部22,23とからなる。継ぎ具20は、例えば電気柵の支柱と同じFRPで形成する。
【0024】
鍔部21の外径は、電気柵の支柱2a,2bの内孔径より大きい。そして、上下の挿入部22,23が、それぞれ支柱2a,2bに嵌め込まれる。これによって、切断された電気柵の支柱2a,2bが継ぎ足され、図3に示す支柱2として再利用できるようになる。
【0025】
上下の挿入部22,23は、その先端部分22a,23aが先細り状に形成されている。また、この先端部分22a,23aより鍔部21側の基端部分22b,23bの外径φaは、支柱2a,2bの内孔径φbと同一に形成されている。
【0026】
この継ぎ具20を使用して支柱2a,2bを継ぎ足すには、まず、挿入部23を支柱2bの内孔に嵌め込む。この嵌め込みの作業は、挿入部22の先端部分22aを木槌等で叩いて行う。
【0027】
なお、支柱2bの内孔面には切断によってバリが生じている場合があるが、この支柱2bの内孔に嵌め込む挿入部23の先端部分23aを先細り状に形成しているので、バリがあったとしても容易に嵌め込むことができる。また、挿入部23の基端部分23bの外径φaは、支柱2bの内孔径φbと同一であるので、挿入部23は支柱2bの内孔に強固に嵌り込む。
【0028】
一方、挿入部23を支柱2bの内孔に嵌め込む際に、挿入部22の先端部分22aを木槌等で叩くことから挿入部22の先端部分22aにはバリBが生じる。しかし、挿入部22の先端部分22aは先細り状に形成されているから、バリBが挿入部22の基端部分22bの外径φa(=支柱2aの内孔径φb)を超えることはない。したがって、バリBが生じたとしても、挿入部22を支柱2aの内孔に容易に嵌め込むことができる。そして、挿入部22の基端部分22bの外径φaは、支柱2aの内孔径φbと同一であるので、挿入部22は支柱2bの内孔に強固に嵌り込む。これによって、支柱2a,2bが強固に接続される。
【0029】
ここで、図1の実施例では、挿入部22,23の両方の先端部分22a,23aを先細り状に形成したが、いずれか一方のみを先細り状に形成しても良い。すなわち、図1の実施例では、支柱2bの内孔面にバリがあっても挿入部23を支柱2bの内孔に簡単に嵌め込むことができるように、その先端部分23aを先細り状に形成したが、支柱2bの内孔面のバリは比較的簡単に除去できるので、先端部分23aを先細り状にしなくても、挿入部23を支柱2bの内孔に嵌め込むことは可能である。したがって、上下の挿入部22,23のうち一方の挿入部の先端部分を先細り状に形成し、先細り状の先端部分を有する挿入部を上にして使用するようにすれば、支柱2a,2bの継ぎ足しは行うことができる。
【0030】
ただし、図1の実施例のように、挿入部22,23の両方の先端部分22a,23aを先細り状に形成する方が、支柱2a,2bの継ぎ足しをより簡単に行うことができるし、挿入部22,23の上下を気にすることなく使用できるので、利便性が向上する。
【0031】
また、図1の実施例では、挿入部22,23の基端部分22b,23bの全体を外径φaとして円柱状に形成したが、基端部分22b,23bの鍔部21と隣接する部分の外径を電気柵の支柱の内孔径と同一のφbにし、先端部分22a,23aに向けて先細りとなるテーパー状に形成しても良い。このようにすることで、支柱2a,2bの内孔への挿入部22,23の嵌め込みをよりスムーズに行うことができる。そして、挿入部22,23の基端部分22b,23bの鍔部21と隣接する部分の外径φaが支柱2a,2bの内孔径φbと同一であることから、支柱2a,2bどうしを強固に接続して一体化できる。
【符号の説明】
【0032】
1a,1b 碍子
2,2a,2b 電気柵の支柱
3a,3b 裸電線
4 上下結線
5 衝撃電圧発生装置
6 出力端子
7 出力線
8 猪
9 地中
10 アース棒
11 アース線
12 アース端子
20 本発明の継ぎ具
21 鍔部
22,23 挿入部
22a,23a 挿入部の先端部分
22b,23b 挿入部の基端部分
φa 挿入部の基端部分の外径
φb 電気柵の支柱の内孔径
30 従来の継ぎ具
31 鍔部
32,33 挿入部
P1,P2 切断されたパイプ
D1 従来の継ぎ具の挿入部の外径
D2 パイプの内孔径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気柵に使用されるパイプ状の支柱を継ぎ足すための電気柵支柱の継ぎ具であって、
電気柵の支柱の内孔径より大きい外径を有する鍔部と、この鍔部の上下に設けられ、それぞれ電気柵の支柱の内孔に挿入されて嵌め込まれる挿入部と備え、
上下の挿入部のうち少なくとも一方の挿入部の先端部分を先細り状に形成した電気柵支柱の継ぎ具。
【請求項2】
上下の挿入部の両方の先端部分を先細り状に形成した請求項1に記載の電気柵支柱の継ぎ具。
【請求項3】
挿入部の、先細り状に形成した先端部分より鍔部側の基端部分の外径を電気柵の支柱の内孔径と同一にした請求項2に記載の電気柵支柱の継ぎ具。
【請求項4】
挿入部の、先細り状に形成した先端部分より鍔部側の基端部分の鍔部と隣接する部分の外径を電気柵の支柱の内孔径と同一にし、かつ基端部分を先端部分に向けて先細りとなるテーパー状に形成した請求項2に記載の電気柵支柱の継ぎ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−246459(P2010−246459A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99060(P2009−99060)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(596009788)株式会社末松電子製作所 (16)
【Fターム(参考)】