説明

電気柵

【課題】 停電や落雷があっても電気柵への通電が停止されることがなく継続でき、電気柵を常に機能させて動物の脱柵を防止して動物による二次被害の発生を防止する。
【解決手段】 複数の杭21の間に、地面とは絶縁された状態でワイヤ22を張りめぐらしてこれにパワーユニット10から高電圧を印加する動物用もしくはセキュリティ用の電気牧柵20であって、そのパワーユニット10に、このユニット10を駆動するための複数の充電可能なバッテリ11,12と、バッテリ11,12を充電する少なくとも1個の充電器2と、切換装置3とを設け、切換装置3は、バッテリ11,12の内の一方を充電器2から切り離してパワーユニット10に接続し、他方を、充電器2に接続するか、或いは中立状態にするようにした電気柵である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気柵の改良に関し、特に、電気柵に通電する電気柵の電源装置であるパワーユニットの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気柵は、柵を構成する杭と杭に碍子を介して張りめぐらしたワイヤやフェンスに通電することにより、柵内への動物の侵入や柵内からの逃走を防止するために使用される。この場合、ワイヤは地面に対して絶縁された状態となっている。このような電気柵に使用する電源装置としてのパワーユニットには、電灯線のような商用電源を電源とするタイプのものと、バッテリを電源とするタイプのものがある。商用電源を電源とするタイプの電気柵は、例えば、特許文献1に記載がある。
【0003】
【特許文献1】特開平11−169007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、商用電源を電源とするタイプの電源装置は、停電があると動作しなくなる問題があった。また、野山に敷設されているフェンス部に落雷が発生した場合には、落雷のサージがパワーユニットまで導かれ、パワーユニットが破壊されるにとどまらず、商用電源に接続する別の装置をも破壊する虞があり、この場合には大きなダメージが発生するという問題があった。
【0005】
一方、バッテリ等の直流電源から電源の供給を受けるパワーユニットでは、バッテリの電圧が低下するとショックパルスの間隔が開いたり、ショックパルスの供給停止が起こるという問題があった。また、バッテリに充電器が接続されてフロート充電されるタイプのものでは、結果的に電気柵と商用電源が直接接続されるため、落雷によるサージ電流が充電器を介して商用電源に流れるので、結果的に商用電源を電源とするタイプのものと同様の問題点があった。
【0006】
そして、電気柵に電源が供給されなくなると、動物が電気柵から脱柵し、その結果、逃げ出した動物による二次的な被害、例えば、動物による障害や動物と交通機関との衝突による交通事故等により、人間が傷つくという深刻な問題が発生する虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、前記従来の電気柵の有する課題を解消し、停電や落雷があっても電気柵への通電を停止することなく継続でき、動物による二次被害が発生する虞の少ない電気柵を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成する本発明の電気柵の第1の形態は、複数の杭又は碍子と、この杭又は碍子の間に、地面とは絶縁された状態で張りめぐらすワイヤと、このワイヤに高電圧を印加するパワーユニットとから構成される動物用もしくはセキュリティ用の電気柵において、パワーユニットに、このユニットを駆動するための複数の充電可能な直流電源と、直流電源を充電する少なくとも1個の充電器と、切換装置とを設け、切換装置は、直流電源の内の少なくとも1個を充電器から切り離してパワーユニットに接続し、他の直流電源を、充電器に接続するか、或いはパワーユニットにも充電器にも接続されない中立状態にすることを特徴とする電気柵である。
【0009】
本発明の第2の形態の電気柵は、第1の形態の電気柵において、切換装置は、パワーユニットに接続中の直流電源の所定状態以外の状態を検出した時に、これをパワーユニットから切り離し、同時に、他の直流電源の内の1つをパワーユニットに接続することを特徴とする電気柵である。
【0010】
本発明の第3の形態の電気柵は、第2の形態の電気柵において、直流電源の所定状態以外の状態が、直流電源の出力電圧が所定電圧以下に低下した時、或いは、直流電源のコンダクタンスが所定値以上に悪化した時であることを特徴とする電気柵である。
【0011】
本発明の第4の形態の電気柵は、第1の形態の電気柵において、切換装置は、パワーユニットに接続中の直流電源の接続時間が所定時間に達した時に、これをパワーユニットから切り離し、同時に、他の直流電源の内の1つをパワーユニットに接続することを特徴とする電気柵である。
【0012】
本発明の第5の形態の電気柵は、第1の形態の電気柵において、直流電源には動作監視装置が接続されており、この動作監視装置は、パワーユニットに接続中の直流電源の動作不良を検出した時には、これをパワーユニットから切り離し、同時に、他の直流電源の内の1つをパワーユニットに接続することを特徴とする電気柵である。
【0013】
本発明の第6の形態の電気柵は、第1から第5の形態の電気柵において、パワーユニットとワイヤとの間に、避雷回路が設けられていることを特徴とする電気柵である。
【0014】
本発明の第7の形態の電気柵は、第6の形態の電気柵において、更に、パワーユニットの出力を監視するフェンス出力監視回路が設けられており、パワーユニットが、入力側の切換回路と出力側の切換回路を介して複数設けられており、入力側と出力側の切換回路は、複数のパワーユニットの内の1つが電気柵を駆動するように、フェンス出力監視回路によって同期して切り換えられるようになっており、避雷回路が、サージ電流をグランドに逃がす第1の避雷回路と、パワーユニットの出力側にそれぞれ設けられたインピーダンスの異なる第2の避雷回路とから構成されていることを特徴とする電気柵である。
【0015】
本発明の第8の形態の電気柵は、第1から第7の形態の電気柵において、直流電源が、二次電池或いはコンデンサであることを特徴とする電気柵である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電気柵によれば、停電や落雷があっても電気柵への通電が停止されることがなく継続でき、電気柵は常に機能しているので動物が脱柵せず、動物による二次被害が発生する虞が少ないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、具体的な実施例を示す添付図面を使用して詳細に説明する。なお、ここでは電気柵として、牧場等で使用されている電気牧柵を例にとって説明するが、電気柵はこの電気牧柵に限定されるものではない。
【0018】
図1は本発明の電気柵の第1の実施例の構成を示すブロック回路図であり、本発明の電気柵の基本的な構成を示すものである。電気牧柵20は、複数の杭21と杭21の間に、絶縁部材である碍子を介して掛け渡されたワイヤ22とを備えている。即ち、ワイヤ22は地面とは絶縁された状態で杭21の間に張りめぐらされる。なお、杭21自体が絶縁部材で構成されている場合には、碍子は必要がない。
【0019】
このような電気牧柵20には、パワーユニット10から高電圧が印加される。また、この実施例では、パワーユニット10と電気牧柵20との間に避雷回路5が接続されている。そして、この実施例のパワーユニット10は、バッテリ等の直流電源(6〜30V)で駆動されるものであり、内部でこの直流電源からの直流電圧を昇圧して高電圧に変換する。このパワーユニット10の構成は公知であるので、ここではその説明を省略する。
【0020】
また、この実施例にはパワーユニット20に直流電源を供給するために、第1のバッテリ11と第2のバッテリ12の2つのバッテリが設けられている。第1のバッテリの正端子は切換スイッチSW1の端子aと切換スイッチSW2の端子bに接続されている。第1のバッテリの負端子は切換スイッチSW3の端子aと切換スイッチSW4の端子bに接続されている。同様に、第2のバッテリの正端子は切換スイッチSW1の端子bと切換スイッチSW2の端子aに接続されている。第2のバッテリの負端子は切換スイッチSW3の端子bと切換スイッチSW4の端子aに接続されている。
【0021】
切換スイッチSW1の端子cは充電器2の正端子に接続され、切換スイッチSW3の端子cは充電器2の負端子に接続されている。また、切換スイッチSW2の端子cはパワーユニット10の正端子に接続され、切換スイッチSW4の端子cはパターユニット10の負端子に接続されている。充電器2は100Vの商用電源に接続されており、充電器2の出力電圧は切換回路3によって監視されている。切換回路3は、スイッチSW1〜SW4の全ての端子cが、端子aに接続されるか、或いは端子bに接続されるように、スイッチSW1〜SW4の接続を同期して切り換えることができる。切換スイッチSW1〜SW4には、例えばリレーが使用でき、切換回路3にはタイマーを内蔵させることができる。
【0022】
今、切換回路3の動作により、スイッチSW1〜SW4の全ての端子cが端子bに接続されている場合を考える。この状態は図1に実線で示される。この時は、第1のバッテリ11がパワーユニット10に電源を供給し、第2のバッテリ12が充電器2によって充電される。一方、切換回路3の動作により、スイッチSW1〜SW4の全ての端子cが端子aに接続された場合を考える。この状態は図1に破線で示される。この時は、第2のバッテリ12がパワーユニット10に電源を供給し、第1のバッテリ11が充電器2によって充電される。
【0023】
なお、スイッチSW1〜SW4は12個の接点を備える1つのリレーで実現することができるが、3つの接点を備える4個のリレーからも構成することができる。スイッチSW1〜SW4を4個のリレーから構成する場合は、リレーの各接点の間を離して設置することができる。これは、パワーユニットの出力トランスがオートトランスであったり、また、パワーユニットの接地が十分にとれていない場合、パワーユニットの入力側の正負端子間に高電圧が加わる場合があり、その短絡を防いで、切換スイッチSW2とSW4の破損を防ぐためである。
【0024】
図2は本発明の電気柵の第2の実施例の構成を示すブロック回路図である。第2の実施例の構成が、第1の実施例の構成と異なる点は、第1の実施例における切換スイッチSW3とSW4が省略され、充電器2の負端子がパワーユニット10の負端子に直接回路で接続され、これに伴って第1と第2のバッテリ11,12の負極がこの回路に接続されている点のみである。また、第2の実施例には第1の実施例に示した避雷回路5は図示していない。
【0025】
従って、第2の実施例では、切換回路3の動作により、スイッチSW1,SW2の両方の端子cが、実線で示すように共に端子bに接続されると、第1のバッテリ11がパワーユニット10に電源を供給し、第2のバッテリ12が充電器2によって充電される。一方、切換回路3の動作により、スイッチSW1,SW2の両方の端子cが、破線で示すように共に端子aに接続されると、第2のバッテリ12がパワーユニット10に電源を供給し、第1のバッテリ11が充電器2によって充電される。
【0026】
なお、第2の実施例のスイッチSW1,SW2には、端子cに接続する端子a,bの他に、端子cに端子dが接続できるようになっている。この端子dには回路は接続されておらず、端子cが端子dに接続された場合は、回路は切断されることになる。また、第2の実施例では、切換回路3に明るさ検出回路6が接続されている。この明るさ検出回路6は、検出した明るさで、昼と夜の区別を切換回路3に認識させることができるものである。
【0027】
電気牧柵20の使用方法として、猪などの夜行性の動物の排除のために、電気牧柵20に夜間のみしか通電しない使用方法がある。このような場合、第2の実施例では、昼間と夜間の区別を明るさ検出回路6で検出し、昼間の時には切換回路3によってスイッチSW2の端子cを端子dに接続してパワーユニット10に第1と第2のバッテリ11,12の何れも接続されないようにし、このとき、スイッチSW1の端子cを端子aか端子bの何れかに接続して第1と第2のバッテリ11,12の何れかを充電することができる。そして、夜間は、スイッチSW2の端子cを端子aか端子bの何れかに接続してパワーユニット10に電源を供給して電気牧柵20を動作させ、スイッチSW1は、端子cをスイッチSW2の端子cが接続する端子と異なる端子に接続して、パワーユニット10に電源を供給していない方のバッテリを充電するか、中立状態にする。
【0028】
なお、第1の実施例のスイッチSW1〜SW4にも端子dを追加するとともに、明るさ検出回路6を切換回路3に接続すれば、第2の実施例と同じように、夜間のみ電気牧柵20を動作させるようにすることができる。
【0029】
また、図1、図2で説明した実施例では、充電器2が商用電源100Vに接続されているが、充電器2には、商用電源100Vの代わり、或いは、商用電源100Vに加えて、図7に示すように並列に、ソーラーパネル9が接続されていても良い。ソーラーパネル9を充電器2に接続する場合は、スイッチSW8を介して接続し、このスイッチSW8は明るさ検出回路6が夜間を検出した場合にはオフするように構成すれば良い。これはソーラーパネル9は夜間は放電する機能があるからである。
【0030】
図3は本発明の電気柵の第3の実施例の構成を示すブロック回路図である。第3の実施例が第1の実施例と異なる点は、切換回路3に電圧監視回路4が接続されている点のみである。電圧監視回路4は、パワーユニット10の入力電圧を監視してこれを切換回路3に報告するものである。この第3の実施例にも第1の実施例に示した避雷回路5は図示していない。この電圧監視回路4を用いることにより、パワーユニット10の入力電圧が低くなった時に、切換回路3がパワーユニット10に接続するバッテリを切り換えることができるようになる。
【0031】
図4は本発明の電気柵の第4の実施例の構成を示すブロック回路図である。第4の実施例が第1の実施例と異なる点は、パワーユニット10に電源を供給できるバッテリが、第1〜第3のバッテリ11〜13の3個ある点のみである。この第4の実施例にも第1の実施例に示した避雷回路5は図示していない。
【0032】
バッテリが3個設けられている場合には、充電器2とパワーユニット10との間の回路が、充電器2の正端子側に3回路、負端子側に3回路の合計6回路必要となる。そして、それぞれの回路の充電器2側とパワーユニット10側にオンオフスイッチSW1〜SW12が設けられている。第1のバッテリ11の正端子はスイッチSW1とSW2に接続し、負端子はスイッチSW7とSW8に接続している。第2のバッテリ12の正端子はスイッチSW3とSW4に接続し、負端子はスイッチSW9とSW10に接続している。第3のバッテリ13の正端子はスイッチSW5とSW6に接続し、負端子はスイッチSW11とSW12に接続している。
【0033】
このように、バッテリを3つ設けた場合には、その内の1つのバッテリでパワーユニット10を駆動し、他の2つのバッテリを待機状態、或いは、他の2つのバッテリの内の一方を待機状態、他方を充電状態にすることができる。充電するバッテリの選択、及び電気牧柵を動作させるバッテリの選択は、第1〜第3のバッテリ11〜13に接続した電圧監視回路4によって検出した第1から第3のバッテリ11〜13の出力電圧を切換回路3に通知することにより、切換回路3によって行うことができる。
【0034】
圧監視回路4には、切換スイッチSW1,SW3,SW5,SW7,SW9及びSW11を切り換える回路と、切換スイッチSW2,SW4,SW6,SW8,SW10及びSW12を切り換える回路が独立して設けられており、これら2つの独立回路は電気的に絶縁されている。この電気的に絶縁されているとは、例えば、後述する図5に示すように、第1のバッテリ11に接続する切換スイッチSW1とSW3の駆動回路と、第2のバッテリ12に接続する切換スイッチSW2とSW4の駆動回路とが、切換回路3に対してはそれぞれ光で駆動されるようになっており、切換スイッチSW1とSW3の駆動回路を流れる電気信号では、切換スイッチSW2とSW4の駆動回路が駆動されないことを意味している。
【0035】
なお、第4の実施例では、バッテリ11、12、13の異常を検出する方法としてバッテリの出力電圧の低下を検出し、出力電圧が所定電圧以下になった事をもってバッテリの異常と判定しているが、バッテリの異常の判定には次のような方法もあり、これらを使用してバッテリの異常判定を行っても良い。
(1)バッテリに負荷を接続した時の出力電圧の下がり具合や回復する電力(回復起電力)を測定基準にして劣化状態を診断するロードテスタ法。
(2)バッテリ内の電流の流れ易さを測定基準とするコンダクタンス法。
【0036】
図5は図3で説明した切換スイッチSW1〜SW4の切換回路の別の例を示す回路図である。図5において、E1〜E3は発光ダイオード、PT1〜PT3はフォトセンサであるフォトトランジスタ、T1、T2はトランジスタ、D1,D2はダイオード、L1、L2はソレノイドコイルである。電圧監視回路4がパワーユニット10への入力電圧の低下を検出すると、これBが発光ダイオードE1とフォトセンサPT1により無線で切換回路3に伝わり、切換回路3は発光ダイオードE2,E3を発光させてソレノイドコイルL1,L2を駆動してスイッチSW1〜SW4を切り換えるのである。
【0037】
図6は図1で説明した電気柵20を駆動するためのパワーユニット10を複数個(この実施例では2個)にした場合の構成を示すものである。商用電源1から第2と第4のスイッチSW2、SW4までの構成は図1と同じであるので、ここまでの構成の説明は省略する。また、この実施例では2つのパワーユニットを第1のパワーユニット10Aと第2のパワーユニット10Bとする。
【0038】
第1のパワーユニット10Aと第2のパワーユニット10Bを設ける場合は、これらのユニットの入力側に切換スイッチSW5とSW6を設ける。切換スイッチSW5とSW6の接点cは、それぞれ切換スイッチSW4とSW2の接点cに接続されている。第1のパワーユニット10Aの正端子は切換スイッチSW6の端子bに接続され、第1のパワーユニット10Aの負端子は切換スイッチSW5の端子bに接続されている。また、第2のパワーユニット10Bの正端子は切換スイッチSW6の端子aに接続され、第2のパワーユニット10Bの負端子は切換スイッチSW5の端子aに接続されている。
【0039】
第1のパワーユニット10Aと第2のパワーユニット10Bの出力側の負端子は接地されており、正端子はそれぞれ切換スイッチSW7の端子aと端子bに接続されている。そして、この切換スイッチSW7の端子cが電気牧柵20に接続されている。なお、この実施例では、切換スイッチSW7の端子cと電気牧柵20の間に避雷回路5が、第1のパワーユニット10Aと切換スイッチSW7の端子aの間に避雷回路31が、第2のパワーユニット10Bと切換スイッチSW7の端子bと間に避雷回路32が設けられている。避雷回路31はインピーダンスL1を有しており、避雷回路32はインピーダンスL2を有している。
【0040】
避雷回路31と避雷回路32は、避雷回路5と相まって、電気牧柵20に落雷があった場合のサージ電流を効率的に地面に逃がし、第1と第2のパワーユニット10A,10Bを落雷の被害から守るためのものである。
【0041】
そして、切換スイッチSW7は、第1と第2のパワーユニット10A、10Bの何れかが稼働している時、高電圧が稼働していない側のパワーユニットの回路に流れないようにしている。即ち、第1と第2のパワーユニット10A、10Bの何れか一方は電気牧柵20から浮いた状態にすることにより、電気牧柵20への落雷のダメージを防止して信頼性の高い電気牧柵20を実現することができる。また、インピーダンスL1とL2の値は異なるように作ることができる。これは、落雷があった場合、切換スイッチSW7によって浮いた状態にあるパワーユニットに端子を飛び越してサージ電流が流れる場合があり、このような場合は、サージ電流の流れ方を異ならせることにより、サージ電流によって破壊されるパワーユニットが第1のパワーユニット10Aと第2のパワーユニット10Bの何れか一方だけに留めようとするものである。
【0042】
更に、切換スイッチSW7の端子cと電気牧柵20との間にはフォトセンサ7が設けられており、このフォトセンサ7の出力が電気牧柵20への出力としてフェンス出力監視回路8によって監視されている。フェンス出力監視回路8は切換スイッチSW2,SW4の出力電圧も監視している。フェンス出力監視回路8は、電気牧柵20を駆動しているパワーユニットの出力を監視しており、稼働しているパワーユニットの機能の不良や停止が確認された場合には切換スイッチSW5,SW6、及び切換スイッチSW7を同期させて切り換え、稼働していなかった方のパワーユニットにより電気牧柵20を駆動させる。
【0043】
なお、以上説明した構成においては、電気柵として電気牧柵を説明したが、本発明は電気牧柵以外の電気柵にも適用が可能である。また、本発明では、パワーユニットを完全に絶縁した状態とすることができるので、電気柵の信頼性を向上させることが可能である。
【0044】
以上説明した実施例に加えて、本発明の電気柵では以下のような実施例が可能である。
(1)切換回路にタイマを内蔵させ、2個、又は3個のバッテリの切換をバッテリのパワーユニットへの接続時間で行う。
(2)複数個設けるバッテリの容量に大容量のものと、小容量のものを使用し、停電時には大容量のバッテリからパワーユニットへの電源の供給を行う。
(3)バッテリの寿命を長くするために、充電時間、放電時間を監視し、バッテリに過放電、過充電が行われないような制御回路を設置する。
(4)バッテリの代わりに、電解コンデンサ、電解二重層コンデンサ(電気二重層)を使用する。
(5)電気牧柵に供給する電圧を昼夜で切り換えるために、バッテリに電圧の異なるものを用意する。
(6)バッテリの接続を切り換えるスイッチに、トランジスタ等の電子部品を使用した電子回路を採用する。
(7)電圧監視回路によって落雷時のサージ電流を検出し、サージ電流検出時には全てのスイッチを中立状態にする。
(8)充電器又はバッテリを電気牧柵の一部として組み込んだ構成、
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の電気柵の第1の実施例の構成を示すブロック回路図である。
【図2】本発明の電気柵の第2の実施例の構成を示すブロック回路図である。
【図3】本発明の電気柵の第3の実施例の構成を示すブロック回路図である。
【図4】本発明の電気柵の第4の実施例の構成を示すブロック回路図である。
【図5】切換スイッチの別の例を示す回路図である。
【図6】本発明の電気柵の第5の実施例の構成を示すブロック回路図である。
【図7】図2に示した本発明の電気柵に切換スイッチとソーラーパネルとを追加した構成を示す変形実施例である。
【符号の説明】
【0046】
1 商用電源
2 充電器
3 切換回路
4 電圧監視回路
5 避雷回路
6 明るさ検出回路
10,10A,10B パワーユニット
11〜13 バッテリ
20 電気牧柵
31,32 避雷回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の杭又は碍子と、この杭又は碍子の間に、地面とは絶縁された状態で張りめぐらすワイヤと、このワイヤに高電圧を印加するパワーユニットとから構成される動物用もしくはセキュリティ用の電気柵において、
前記パワーユニットに、このユニットを駆動するための複数の充電可能な直流電源と、前記直流電源を充電する少なくとも1個の充電器と、切換装置とを設け、
前記切換装置は、前記直流電源の内の少なくとも1個を、前記充電器から切り離して前記パワーユニットに接続し、他の直流電源を、前記充電器に接続するか、或いは前記パワーユニットにも前記充電器にも接続されない中立状態にすることを特徴とする電気柵。
【請求項2】
請求項1に記載の電気柵であって、
前記切換装置は、前記パワーユニットに接続中の前記直流電源の所定状態以外の状態を検出した時に、これを前記パワーユニットから切り離し、同時に、前記他の直流電源の内の1つを前記パワーユニットに接続することを特徴とする電気柵。
【請求項3】
請求項2に記載の電気柵であって、
前記直流電源の所定状態以外の状態が、前記直流電源の出力電圧が所定電圧以下に低下した時、或いは、前記直流電源のコンダクタンスが所定値以上に悪化した時であることを特徴とする電気柵。
【請求項4】
請求項1に記載の電気柵であって、
前記切換装置は、前記パワーユニットに接続中の前記直流電源の接続時間が所定時間に達した時に、これを前記パワーユニットから切り離し、同時に、前記他の直流電源の内の1つを前記パワーユニットに接続することを特徴とする電気柵。
【請求項5】
請求項1に記載の電気柵であって、
前記直流電源には動作監視装置が接続されており、この動作監視装置は、前記パワーユニットに接続中の前記直流電源の動作不良を検出した時には、これを前記パワーユニットから切り離し、同時に、前記他の直流電源の内の1つを前記パワーユニットに接続することを特徴とする電気柵。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の電気柵であって、
前記パワーユニットと前記ワイヤとの間に、避雷回路が設けられていることを特徴とする電気柵。
【請求項7】
請求項6に記載の電気柵であって、
更に、前記パワーユニットの出力を監視するフェンス出力監視回路が設けられており、
前記パワーユニットが、入力側の切換回路と出力側の切換回路を介して複数設けられており、
前記入力側と前記出力側の切換回路は、前記複数のパワーユニットの内の1つが前記電気柵を駆動するように、前記フェンス出力監視回路によって同期して切り換えられるようになっており、
前記避雷回路が、サージ電流をグランドに逃がす第1の避雷回路と、前記パワーユニットの出力側にそれぞれ設けられたインピーダンスの異なる第2の避雷回路とから構成されていることを特徴とする電気柵。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の電気柵であって、
前記直流電源が、二次電池或いはコンデンサであることを特徴とする電気柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−174703(P2006−174703A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353291(P2004−353291)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000105844)サージミヤワキ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】