説明

電気機器

【課題】適切に水密を確保し、蓋体をケースの開口部に装着する作業性の向上を図る。
【解決手段】少なくとも一端側に開口部を有する筒状のケース11と;ケース11に収納保持され、電子回路を構成する電子部品が実装されたプリント基板16と;前記ケース11の開口部26、27の内周囲壁に所定長において密着する第1の厚みを有する密着縁部34と、開口部26、27の内周囲壁に密着縁部が密着した状態において開口部26、27の外側に位置して開口部26、27の周端面に当接することによりシールする外側シール部35と、段部36を介して密着縁部より内側で密着縁部34と一体化して開口部26、27の深さ方向に前記第1の厚みより厚い第2の厚みを有する中央基部37とを有し、開口部26、27を水密に塞ぐパッキン22、23と;を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防水性を有する電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外などに照明器具を設置することを考慮して、点灯装置である電気機器を防水構造とすることが行われている。通常の場合には、電気機器のケース内の回路部分を樹脂により封止する。このような構成の電気機器においては、ケースの端部に存在する開口部をパッキングにより封止し、このパッキングを外側から端板により覆い、端板をケースに固着することにより水密を図っている(特許文献1、特に図4など参照)。
【特許文献1】特許第2720940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の蓋体であるパッキン90は図8に示すように、開口部に嵌め合わせたときに外側に位置して、開口部の周端面に当接することによりシールする外側シール部91から、開口部の形状に応じて概ね垂直に立ち上がった壁部91の高さが、パッキン90の厚みにほぼ匹敵している。
【0004】
壁部91の周辺は、開口部の開口周辺よりやや大きめに作成されており、壁部91を開口部に嵌め込んだときにパッキン90の弾性力により壁部91が、開口部の内壁部側へ広がることにより押圧して水密を実現する。このため、パッキン90が全体として厚く、開口部に挿入する際に撓みが少なく作業性が悪いという問題があった。特に、壁部91の高さが高いことから、壁部91と開口部の内壁部の摩擦力が大きく、壁部91を開口部の内壁部に添わせて挿入する作業が行い難いものであった。
【0005】
本発明は、上記のような従来の電気機器における問題点を解決せんとしてなされたもので、その目的は、適切に水密を確保できる構成であって、しかも蓋体をケースの開口部に装着する作業が従来に比べて行い易く、作業性の向上を図ることが可能な電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気機器は、少なくとも一端側に開口部を有する筒状のケースと;ケースに収納保持され、電子回路を構成する電子部品が実装されたプリント基板と;前記ケースの開口部の内周囲壁に所定長において密着する第1の厚みを有する密着縁部と、開口部の内周囲壁に密着縁部が密着した状態において開口部の外側に位置して開口部の周端面に当接することによりシールする外側シール部と、段部を介して密着縁部より内側で密着縁部と一体化して開口部の深さ方向に前記第1の厚みより厚い第2の厚みを有する中央基部とを有し、開口部を水密に塞ぐ蓋体と;を具備することを特徴とする。
【0007】
蓋体は、ゴムや樹脂により構成される。第1の厚みは、開口部を水密に塞ぐために十分な厚みである。電子部品が実装されたプリント基板に対しては、樹脂による封止が行われても良い。
【0008】
本発明に係る電気機器では、開口部は、基本周囲形状部分と、この基本周囲形状部分から凹凸する凹凸形状部分とを有し、蓋体の密着縁部の周縁形状及び中央基部の周縁形状が、前記基本周囲形状部分及び凹凸形状部分に対応した形状であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る電気機器では、外側シール部の厚みは、第1の厚みよりも薄いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電気機器では、開口部を水密に塞ぐ蓋体が、前記ケースの開口部の内周囲壁に所定長において密着する第1の厚みを有する密着縁部と、開口部の内周囲壁に密着縁部が密着した状態において開口部の外側に位置して開口部の周端面に当接することによりシールする外側シール部と、段部を介して密着縁部より内側で密着縁部と一体化して開口部の深さ方向に前記第1の厚みより厚い第2の厚みを有する中央基部とを有しているので、密着縁部の第1の厚みだけ挿入することにより嵌合作業を行うことができ、また、密着縁部から段部を介して中央基部へ連なっている構成であり、この部分が撓み易く嵌め合わせの作業を効率良く行うことができる。
【0011】
本発明に係る電気機器では、開口部は、基本周囲形状部分と、この基本周囲形状部分から凹凸する凹凸形状部分とを有し、蓋体の密着縁部の周縁形状及び中央基部の周縁形状が、前記基本周囲形状部分及び凹凸形状部分に対応した形状であるため、凹凸形状部分において短辺が存在してある程度の堅さがあり、開口部との嵌合において抜け難くする作用がある。
【0012】
本発明に係る電気機器では、外側シール部の厚みは、第1の厚みよりも薄いので、開口部の周端面に当接した場合に弾性変形し易く、シール性を高める効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下添付図面を参照して、本発明に係る電気機器の実施例を説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。本実施例に係る電気機器は、図1に組立て斜視図を示す放電灯点灯装置10である。
【0014】
放電灯点灯装置10は、高輝度放電ランプ(HID)などの放電灯を点灯させるものであり、ケース11に、電子部品12〜14が実装されたプリント基板16が収納保持されて構成されている。ケース11は、角筒状のケース本体21と、開口部を水密に塞ぐ蓋体であるパッキン22、23及び表面板24、25により構成されている。ケース本体21は、例えばアルミニウムなどの金属の押し出し成形により作成される。
【0015】
ケース本体21は、角筒状の両端に開口部26、27を有し、内壁には長手方向に延びる溝28が設けられている。この溝28は、プリント基板16を摺動させてケース本体21内に収納させ、保持するための構成である。プリント基板16からはリード線が引き出され、例えば一方のパッキン22に形成される挿通孔と表面板24に形成される挿通孔から外部の電源などに延びる構成を有するが、ここでは図示を省略している。
【0016】
プリント基板16が溝28に沿って摺動され、ケース本体21に内包された状態では、側面からの透過図である図2に示すように、電子部品12〜14が実装された表面側に第1空間31とその裏面側に第2空間32が、プリント基板16によって空間が区分されたことにより出現する。
【0017】
パッキン22、23は、開口部26、27を密封するための構成であって、ほぼ四角い板状の例えばゴムにより作成されている。パッキン22、23は、図3、図4に示すように、開口部26、27の内周囲壁29に所定長において密着する第1の厚みd1を有する密着縁部34を備えている。
【0018】
また、パッキン22、23は、開口部26、27の内周囲壁29に密着縁部34が密着した状態において開口部26、27の外側に位置して開口部26、27の周端面26a、27aに当接することによりシールする外側シール部35を備える。更に、パッキン22、23は、段部36を介して密着縁部より内側で密着縁部34と一体化して開口部26、27の深さ方向に上記第1の厚みd1より厚い第2の厚みd2を有する中央基部37とを有している。上記段部36はテーパ状であり、中央基部37側から密着縁部34へ向かって広がる傾斜面となっている。また、外側シール部35の厚みd3は、第1の厚みd1よりも薄く形成されている。
【0019】
開口部26、27は、ほぼ四角形の基本周囲形状部分(26b)27bと、この基本周囲形状部分(26b)27bから凹凸する凹凸形状部分(26c)27cとを有している。これに対し、パッキン22、23の密着縁部34の周縁形状及び中央基部37の周縁形状が、上記基本周囲形状部分(26b)27b及び凹凸形状部分(26c)27cに対応した形状である。つまり、パッキン22、23は、基本周囲形状部分22b、23b及び凹凸形状部分22c、23cを備えている。
【0020】
以上の構成によるパッキン22、23は、開口部26、27に嵌め合わされて、図5及び図6の如き状態となるが、この嵌め合わせ作業のときに、密着縁部34に関する第1の厚みd1だけの挿入を行えば良いので、従来に比べて挿入距離と摩擦面積が共に少ないことにより容易に挿入作業を行うことができる。また、周端から中央基部37までに到る区間Lには、厚みd2より薄い密着縁部34及び段部36が存在し、段部36がテーパ状で、中央基部37側から密着縁部34へ向かって広がる傾斜面となっているので、この区間Lは比較的可撓性があり、折り曲げ易く、段部36におけるテーパ状の部分がガイドとなり、パッキン22、23を開口部26、27に嵌め合わせ作業する場合に、扱い易く嵌め込み作業の効率を向上させることができる。
【0021】
そして、パッキン22、23における密着縁部34の周辺長は、開口部26、27の開口周辺長より僅かに大きめに作成されており、パッキン22、23を開口部26、27に嵌め込んだときにパッキン22、23の弾性力により密着縁部34が、開口部26、27の内周囲壁29を押圧するように広がることにより水密を実現する。
【0022】
上記パッキン22、23中の一方のパッキン22を開口部26に嵌め合わせた後、表面板24を表面側から重ねる。パッキン22、23の表面には粘着層が形成されていて表面板24、25を容易に貼着することができる。重ねられた状態のパッキン22と表面板24とは、ネジSによりケース本体21に固定される。
【0023】
パッキン22と表面板24とが取り付けられ、電子部品12〜14が実装されたプリント基板16が収納保持された状態のケース本体21に対し、図7に示すように開口部27から例えばノズル5を用いて合成樹脂6を第1空間31へ注入する。これにより第1空間31へと流れ込んだ合成樹脂6の一部は基板とケース本体21の間隙や、プリント基板16の下方端部側の連結部を介して第2の空間32へと回り込む。第2の空間32へ注入した場合には、上記と逆の経路で第1の空間31へと回り込みが生じる。
【0024】
合成樹脂6が所定量充填されると、パッキン23を開口部27に嵌め合わせた後、表面板25を表面側から重ねる。重ねられた状態のパッキン23と表面板25とは、ネジSによりケース本体21に固定される。前述の通り、パッキン22、23を開口部26、27に嵌め込んだときにパッキン22、23の弾性力により密着縁部34が、開口部26、27の内周囲壁29を押圧するように広がることにより水密が実現されており、第1の空間31と第2の空間32とに充填された合成樹脂が外部へ漏れることはない。また、外部から水が上記水密構造により遮断されて内部へ侵入することもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る電気機器である放電灯点灯装置の組み立て斜視図。
【図2】本発明に係る電気機器である放電灯点灯装置の組み立て工程を透過して示す側面図。
【図3】本発明に係る電気機器である放電灯点灯装置の要部であるパッキンの斜視図。
【図4】本発明に係る電気機器である放電灯点灯装置の要部であるパッキンの側面図。
【図5】本発明に係る電気機器である放電灯点灯装置の組み立て完了状態を透過して示す側面図。
【図6】本発明に係る電気機器である放電灯点灯装置の組み立て完了状態の要部を示す断面図。
【図7】本発明に係る電気機器である放電灯点灯装置のケースに合成樹脂を注入している状態を透過して示す側面図。
【図8】本発明に係る電気機器である放電灯点灯装置の要部であるパッキンに相当する従来のパッキンの斜視図。
【符号の説明】
【0026】
10 放電灯点灯装置
11 ケース
16 プリント基板
21 ケース本体
22、23 パッキン
26、27 開口部
34 密着縁部
35 外側シール部
36 段部
37 中央基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端側に開口部を有する筒状のケースと;
ケースに収納保持され、電子回路を構成する電子部品が実装されたプリント基板と;
前記ケースの開口部の内周囲壁に所定長において密着する第1の厚みを有する密着縁部と、開口部の内周囲壁に密着縁部が密着した状態において開口部の外側に位置して開口部の周端面に当接することによりシールする外側シール部と、段部を介して密着縁部より内側で密着縁部と一体化して開口部の深さ方向に前記第1の厚みより厚い第2の厚みを有する中央基部とを有し、開口部を水密に塞ぐ蓋体と;
を具備することを特徴とする電気機器。
【請求項2】
開口部は、基本周囲形状部分と、この基本周囲形状部分から凹凸する凹凸形状部分とを有し、
蓋体の密着縁部の周縁形状及び中央基部の周縁形状が、前記基本周囲形状部分及び凹凸形状部分に対応した形状であることを特徴とする請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
外側シール部の厚みは、第1の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1または2に記載の電気機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−40598(P2010−40598A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198935(P2008−198935)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】