電気機械モータに対する法線力の付与
電気機械モータ組立体(1)は、ステータ(30)と、移動対象体(10)と、ステータ支持部(35)とを備える。ステータ(30)は、常に電気機械アクチュエータ(20)のうちの少なくとも1つを確実に対象体(10)と非スライド方式で接触させるステップの反復により対象体(10)を移動させるように構成された複数の電気機械アクチュエータ(20)を有する。組立体は、さらに、少なくとも1つのバネ構成部(42)により、ステータとステータ支持部との間に法線力(N)を加える加力構成部(40)を備える。バネ構成部(42)は、対象体(10)の表面(5)に対する法線方向(Z)に、法線力(N)と、対象体(10)の表面(5)の平均高さ不確定性との比の5%未満となる低いバネ定数を有する。加力構成部(40)は、さらに、主運動方向(X)に平行で、かつ、対象体(10)の表面(5)に対して並置された状態で、ステータ(30)とステータ支持部(35)との間に取り付けられた横固定板(46)を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電気機械マイクロモータに関し、特に複数の電気機械的にアクティブなアクチュエータ素子の反復動作を用いる電気機械マイクロモータに関する。
【背景技術】
【0002】
長年、例えば圧電材料等の電気機械的にアクティブな材料を用いたマイクロモータが、多数の種々の用途に用いられてきた。特に様々な消費者製品においては、小型、軽量、低消費電力、廉価構成が好まれるので、このようなモータが使用されている。このようなモータは、比較的高速であること、動作が静かなこと、低消費電力、高位置精度等を特徴とすることが多い。非常に高い位置決め精度を達成するために、「ウォーキング」機構、スティックスリップ(固着・滑り)機構、「慣性」位置決め、蠕動機構、ステッピング機構等、様々な運動機構が一般に用いられている。このような機構において、その運動は、複数の電気機械的にアクティブなアクチュエータ素子の反復動作に基づく。
【0003】
このような電気機械モータの非常に好適な例が、米国特許第6,798,117号及び第7,355,325号に開示されている。二組の駆動素子が交互に移動対象物に接触する。駆動素子は共通の背面部に接続され、さらにモータの収納部に取り付けられている。対象物に運動を伝えるためには、収納部が駆動方向における駆動力に対する対向保持部として作用するように駆動素子を収納部に接続しなければならない。さらに、駆動素子は、対象物を駆動できるように、所定の法線力によって駆動対象物表面に対して保持されなければならない。米国特許第6,798,117号において、駆動素子は、駆動方向において「堅固性」が得られるように収納部に強固に取り付けられている。法線力は、バネ手段が一対のローラに対して作用することで対象物をアクチュエータ又は駆動素子の方向に押すことより得られる。
【0004】
明確な動作を達成するため、非常に良好な表面精度が必要である。取り付けミス、非平面性、摩耗、変形等、位置ずれが原因でアクチュエータと駆動対象物との間の距離や角度の誤差があると、正確な駆動条件に不確定性が生じる。これにより速度、力、位置決め精度が影響を受けてしまう。このため、モータステータは、駆動対象物とステータ支持部との間の種々の相対位置ずれに適応できなければならない。
【0005】
したがって、従来の電気機械モータの一般的な問題は、ステータ支持部に比較的影響されやすいという点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、複数の電気機械的にアクティブなアクチュエータ素子の反復動作を用い、表面とアクチュエータの高さの不確定性に対してより頑強な電気機械モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、本開示の独立請求項に係る電気機械モータにより達成される。本開示の従属請求項で、好ましい実施形態について具体的に述べる。一般に、電気機械モータ組立体は、ステータと、主運動方向においてステータに対して移動する移動対象体と、ステータ支持部とを備える。ステータは、複数の電気機械アクチュエータを有している。各電気機械アクチュエータは、移動対象体の表面と相互作用を行うための接触部を有している。複数の電気機械アクチュエータは、電気機械アクチュエータの各ステップの反復により移動対象体を移動させるように構成される。複数の電気機械アクチュエータは、常に接触部のうちの少なくとも1つが確実に移動対象体と物理的に非スライド接触するように構成される。電気機械モータ組立体は、さらに、ステータとステータ支持部との間に法線力を加える加力構成部を備える。加力構成部は、移動対象体の表面に対する法線方向において、ステータとステータ支持部との間に力を加えるように構成された少なくとも1つのバネ構成部を備える。加力構成部は、さらに、主運動方向に平行で、かつ、移動対象体の表面に対して物理的に接触せずに並置された状態で、ステータとステータ支持部との間に取り付けられた横固定板を備える。バネ構成部は、移動対象体の表面に対する法線方向に低いバネ定数を有している。このバネ定数は、法線力と、移動対象体の表面の平均高さ不確定性との比の5%未満とする。
【0008】
本発明の利点として、この電気機械モータ組立体は、一般に、表面とアクチュエータの不正確な位置決めに影響を受けにくく、正確な動作を達成する。他の利点については、以下の詳細な説明の種々の実施形態により説明する。
【0009】
本発明と、本発明のさらなる目的と利点については、添付図面を用いた以下の説明を参照することにより、最もよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】平行移動と回転の方向を示す図である。
【図2A】モータ組立体における力、平行移動、回転の条件を示す図である。
【図2B】モータ組立体における力、平行移動、回転の条件を示す図である。
【図2C】モータ組立体における力、平行移動、回転の条件を示す図である。
【図2D】モータ組立体における力、平行移動、回転の条件を示す図である。
【図2E】モータ組立体における力、平行移動、回転の条件を示す図である。
【図3A】本発明に係る電気機械モータ組立体の一実施形態を示す図である。
【図3B】本発明に係る電気機械モータ組立体の一実施形態を示す図である。
【図3C】本発明に係る電気機械モータ組立体の一実施形態を示す図である。
【図4A】法線力に対する対向保持部を設ける種々の実施形態の概略図である。
【図4B】法線力に対する対向保持部を設ける種々の実施形態の概略図である。
【図5】本発明に係る電気機械モータ組立体の他の実施形態の図である。
【図6】本発明に係る電気機械モータ組立体のさらに他の実施形態の図である。
【図7】法線力とねじり力との関係を示す概略図である。
【図8】蠕動運動を用いた、本発明に係る電気機械モータ組立体の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図中、同様の構成要素又は対応する構成要素には同じ参照番号を使用する。複数の電気機械アクチュエータ20を有するステータ30と移動対象体10との間では、多数の異なる相対運動が可能である。図1は、以降の説明をわかりやすくするため、種々の可能な動きを示す。所望の主運動方向に沿った線形変位又は平行移動を、X方向の平行移動とする。アクチュエータ20が作用する移動対象体10の表面5に垂直な方向の線形変位又は平行移動を、Z方向の平行移動とする。X及びZの両方向に垂直な線形変位又は平行移動を、Y方向の平行移動とする。
【0012】
同様に、電気機械アクチュエータ20と移動対象体10との間の相対回転を定義することもできる。説明を簡単にすると、これらの相対回転は回転の中心となる軸により定められる。X方向の軸を中心とする相対回転をRXとする。すなわち、主運動方向に沿った回転である。これはロール回転と呼ばれることが多い。Y方向の軸を中心とする相対回転をRYとする。これはピッチ回転と呼ばれることが多い。Z方向の軸を中心とする相対回転をRZとする。これはヨー回転と呼ばれることが多い。
【0013】
例えば対象体10の表面平滑性の不正確さを許容するため、ステータ30は、いずれのステータ支持部に対しても、ある程度の運動自由度を与える必要がある。多くの用途では、RZ方向の回転に加えてY方向の平行運動も、駆動精度に関してさほど重要ではなく、また、種々のベアリング構成によって容易に制御される。したがって、まず、2つの平行移動X及びZと、2つの回転RY及びRXに注目する。
【0014】
図2Aを参照して、アクチュエータ20が対象体10に力を加えようとするとき、ステータ30とステータ支持部35又は「モータ収納部」と間に反作用力がなければならない。多くの従来構成では、ステータ支持部35に対してステータ30を堅固に、あるいは、本質的に堅固に取り付けている。しかし、アクチュエータの高さの不正確さ、及び/又は、対象体10の表面のむらを許容するために、ステータ30をステータ支持部35に対して少なくとも幾分か移動可能とすることが有利である。しかし、上述のように、常に何らかの物理的接続が必要である。この接続を図2Aにて弾性接続部31として示す。RY及びRX方向の必要な回転とZ方向の平行移動を許容するため、これらの弾性接続部31はZ方向において「弱い」ことが必要である。一方、X方向に高い位置精度を確保するために、弾性接続部31はX方向において比較的「堅固」でなければならない。
【0015】
なお、弾性接続部31を図示のようにステータ30の上部に設けた場合、ステータ支持部35が弾性接続部31を介してステータ30にどのような力を加えても、この力はアクチュエータ20と対象体10との間の接触面21に対してトルクを生じる。トルクアームをDで示す。実際には、この接触面は対象体の相互作用面5と一致する。これは、アクチュエータ20が対象体10と相互作用を行うこと、すなわち、接触面21にて対象体10に駆動力を加えることによる。比較的大きい力を用いる場合、トルクがかなり大きくなることがあり、これによりRY方向のピッチ回転が生じる。
【0016】
図2Bの構成では、より良好な状況となる。この場合、X方向の動きを阻止する弾性接続部31が、接触面21に近い位置でステータ30に接続されている。トルクアームが図2Aのトルクアームと比較してごく僅かになるので、ステータ30において作用するトルクはいずれも、はるかに小さくなる。
【0017】
このことから、ステータ支持部35に対するステータ20のX方向の動きを制限する構成を、移動対象体10の表面5に対して物理的接触がない状態で並置すればよいことがわかる。
【0018】
多くの従来構成では、法線力の付与とX方向運動の制限は、1つの同じ部材で行われる。しかし、ステータ30のX運動を制限する部材を対象体の表面5付近に設けた場合、この領域の空間が限定されすぎてしまい、少なくとも従来技術の法線力付与部材を収容できないことが多い。
【0019】
X方向に高い堅固性が求められるのに対し、Z方向の法線力の付与は、好ましくは、その方向に比較的高い運動自由度を与える必要がある。これは一般に、RY及びRX方向の回転についても言えることである。この背景にある基本的な考え方は、図2C乃至2Eを参照することにより理解できるであろう。相互作用面の平坦性が不完全な対象体10を、ステータ30のアクチュエータ20によって駆動する。図2C乃至2Eは、X方向における3つの異なる相対位置を示している。なお、この考え方を視覚化するために、図中、非平坦性を極端に誇張してある。移動対象体の表面の平均高さ不確定性をΔで示し、z軸に沿った、モータ収納部に対する対象体の線形位置ずれとして定義する。また、これに対応してRY及びRX方向に角度ずれが生じる。特徴が比較的明確な動作を行うために、アクチュエータ20と表面5の相対方向及び位置が異なるにもかかわらず、これら3つの位置すべてにおける動作条件は、ほぼ同一でなければならない。このため、ステータ30は、加えた法線力を大きく変えずに、Z方向に移動可能でなければならない。同様に、ステータ30は、傾斜する表面5を補償するために、RY及び/又はRX方向に回転可能でなければならない。つまり、Z方向におけるステータとステータ支持部との接続の堅固性は低くなければならず、好ましくは、RY及び/又はRX方向において少なくとも僅かな回転を可能とする必要がある。これにより、駆動対象体に対する良好な位置合わせが可能となり、例えば組立体において、プリロード力に影響を与えずに、ずれを許容することが可能となる。
【0020】
図3Aは、本発明に係る電気機械モータ1組立体の一実施形態の断面図を示す。この断面はX及びZ方向に平行な平面で取ったものであり、組立体の中心からY方向にオフセットしている。図3Bは、移動対象体を取り除いた状態の断面図にて同実施形態を示す。この断面は、X及びZ方向に平行な平面で取ったものであり、Y方向において組立体の中心を通る。この断面はX及びZ方向に平行な平面で取ったものであり、組立体の中心からY方向にオフセットしている。図3Cは、図3Aと同様の図であるが、対象体を取り除いた状態である。以下の説明における図面の参照は、説明する特徴によって異なるが、すべてこれらの図についてである。ステータ30は、複数の電気機械アクチュエータ20を有している。各電気機械アクチュエータ20は、移動対象体10の表面5と相互作用を行うための接触部22を有している。移動対象体10は、主運動方向Xにおいてステータ30に対して相対的に移動する。複数の電気機械アクチュエータ20は、電気機械アクチュエータ20の各ステップの反復により移動対象体10を移動させるように構成されている。また、複数の電気機械アクチュエータ20は、常に接触部22のうちの少なくとも1つが確実に移動対象体10と物理的に非スライド接触するように構成されている。電気機械モータ1組立体は、さらに、ステータ支持部35を備えている。
【0021】
本実施形態では、4つの電気機械アクチュエータが存在する。なお、複数の電気機械アクチュエータであれば、いくつ用いてもかまわない。一般的な構成では、電気機械アクチュエータは、少なくとも2グループの電気機械アクチュエータとして動作可能に接続される。各グループ内の電気機械アクチュエータは、それに対応する運動パターンで一緒に動く。各グループの運動はグループ間で異なり、一般的には位相差により異なる。なお、完全に異なる運動シーケンスを用いてもよい。一般的なウォーキング又はステッピング機構では、一方のグループの電気機械アクチュエータは、各時点で対象体に接触しており、好ましくは対象体に運動を伝えるが、他方のグループの電気機械アクチュエータは、対象体から離れ、新たなサイクルのために開始位置に戻されている。
【0022】
この特定の実施形態の電気機械アクチュエータは、圧電セラミック材料からなる、ほぼ矩形のブロックとして形成されている。各ブロックは一端において共通の背面部に取り付けられ、他端に接触部22が取り付けられている。本実施形態において、各ブロックはバイモルフとして構成され、2つの別々に励起可能な部分が主運動方向Xにおいて互いに隣接して配置されている。これら異なる部分に好適な電圧を印加することにより、ブロックをX方向に曲げることができるとともに、Z方向の長さを変えることができる。このような形状変化を利用して、対象体との相互作用や対象体の移動を達成することができる。個々のブロックは互いに独立して機械的に移動可能である。すなわち、共通背面部又は移動対象体を介する以外、ブロック間で力の交換が行われることはほとんどない。なお、ブロック間の隙間は、ブロックの形状変化に影響を与えないような、容易に変形可能な材料で埋めてもよい。
【0023】
また、以下にさらに説明するが、本発明の加力方式とともに他の種類の運動機構を用いることもできる。
【0024】
加力構成部を全体として40で示すが、例えば、この加力構成部を設けて、ステータ30とステータ支持部35との間に法線力N、すなわち、対象体10の表面5に対して垂直方向、つまりZ方向の力を与える。加力構成部40は、Z方向においてステータ30とステータ支持部35との間に力を与えるように構成された、少なくとも1つのバネ構成部42を備えている。本実施形態において、バネ構成部42は、板バネ、固体エラストマー、液体(液圧式)、気体(圧縮空気式)、電磁力等、他の種類の弾力性構成部によるものでもよい。
【0025】
加力構成部40は、さらに、主運動方向Xに平行で、かつ、移動対象体10の表面5に対して物理的に接触せずに並置された状態で、ステータ30とステータ支持部35との間に取り付けられた横固定板46を備えている。バネ構成部42は、移動対象体10の表面5に対する法線方向Zに低いバネ定数を有している。このバネ定数は、法線力Nと、移動対象体10の表面5の平均高さ不確定性との比の5%未満とする。これにより、全体的な動作条件に過大な変化を生じることなく、表面平坦性の不確定性を補償することが可能である。経験的には、多くの用途におけるモータ動作は、力の変動が5%であれば許容できる。しかし、力の変動を小さく維持できるならば、もちろんその方が良い。したがって、より好ましくは、特に非常に高い再現性が要求される用途においては、バネ定数は、法線力Nと、移動対象体10の表面5の平均高さ不確定性との比の1%未満とする。
【0026】
本実施形態では、バネ構成部42は、ステータ30とステータ支持部35との間で、ステータ30の中心のX方向における両側に設けられた2つのコイルバネ44を備えている。一般に、この中心は、主運動方向Xに垂直でステータ30の対称点を通る対称面26と一致する。このようなコイルバネ44の配置により、法線力Nがステータ30上で対称的に与えられる。すなわち、法線力Nは、RY方向にステータ30を傾斜させるように作用することはない。他の実施形態において、単一のバネをステータ30の中心と同じ平面に設けることもできる。
【0027】
本発明のコイルバネ44は、ステータ支持部35とステータ30の背面側との間に設けられる。本実施形態において、コイルバネ44は、それぞれ、ステータ支持部35の本体にネジ構造で接続された中空ボルト41により保持される。コイルバネ44は、その一端が中空ボルト41のヘッドにてフランジ43により支持されている。コイルバネは、バネ定数が低いことが好ましいので、十分な法線力Nを与えるには、コイルバネ44を相当圧縮しなければならない。このため、非圧縮状態のバネは、取り付け時のバネの長さを比べて非常に長い。取り付けを容易にするために、本実施形態では、取り付け時にガイド棒を通すことができる長手方向の穴をボルトヘッドに設けている。ガイド棒をコイルバネ内部に配置し、圧縮時のコイルバネの横曲がりを防止する。コイルバネ44の他端はステータ30の背面側に作用する。
【0028】
本実施形態では、ステータの中心の両側に2つの部分力を与えることにより、RY方向の回転トルクが発生する。このような回転トルクは、以下に詳細に説明するが、例えば図2Dのように角度ずれにより生じる場合もある。多くの用途では、中心から同距離に、すなわち、一般的には対称面26に、2つの等しいバネを設けて、ステータに対して十分な力を発生させることが好ましい。このような構成では、回転に対抗する戻り力は回転方向と無関係であり、法線力自体の付与が回転成分を与えることはない。
【0029】
可能であれば、法線力はステータの中心に、又は、ステータの中心に対して対称的に加えるべきである。例えば、対称面26において1つのバネを設ける。なお、幾つかの特定の用途においては、ステータ30の中心に対して異なる距離に2つ以上のバネを設けることが有利となる。
【0030】
信頼性の高い動作を達成するため、好ましい実施形態では、ねじり可撓性が十分低くなるバネ構成部を備える。本開示においては、ねじり可撓性は、回転に対する抵抗として定義され、角度単位毎に発生した回転運動量として表される。図7は、法線力Nとねじり可撓性との関係を示す。距離Lだけ離れた2点に、回転点Rに対して対称的に法線力Nの半分を加えるとする。対象体は角度θだけ回転し、これにより対象体の各端部がそれぞれ、元の平面に対して距離(1/2)×Δだけ上下に移動する。2点におけるバネ定数k/2の各バネによって加えられた法線力はトルクMを生じ、回転を戻そうとする。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、F0は回転のない場合の法線力である。角度が小さい場合、Δは回転角θにより表され、これにより、次の数式2となる。
【0033】
【数2】
【0034】
ねじり可撓性は、M/θ’として定義される。lを、回転点と、法線力を加える位置との間のX方向の距離として定義すると、すなわち、l=L/2とすると、好ましいねじり可撓性は、次の数式3で表わすことができる。
【0035】
【数3】
【0036】
つまり、ねじり可撓性は、好ましくは、法線力Nと、移動対象体の表面の平均2倍高さ不確定性Δとの比に、加えた力のトルクアームの二乗を掛けた値の5%未満であるべきである。このねじり可撓性は、多くの用途において十分である。トルクアームは、一般に、ステータの対称点と、法線力(の半分)が加えられる点との間のX方向の距離である。さらに好適な実施形態では、特に非常に高い再現性が要求される用途においては、ねじり可撓性は、上記の値の1%未満である必要がある。
【0037】
図2A乃至2Eで説明したように、ステータ30とステータ支持部35との間の接続部は、X方向においてかなり堅固でなければならない。図3A乃至3Cの実施形態では、上述のように、これは横固定板46により得られる。本実施形態では、横固定板46は移動対象体10の表面5に平行に設けられる。ここでは、横固定板46は、電気機械アクチュエータ20が突出して通る矩形穴48を設けた中央矩形部47を備えている。中央矩形部47は、例えばネジによりステータ30に強固に取り付けられている。横固定板46は、さらに、X方向における横固定板46の両端に、それぞれ端部取付部49を備えている。端部取付部49は、例えばネジによりステータ支持部35に強固に取り付けられている。中央矩形部47と端部取付部49とは、各ブリッジ部45により連結されている。本実施形態では、ブリッジ部45は、Y方向において横固定板46の他の部分よりも狭いが、X方向に比較的堅固な連結を行うのに十分な幅を有している。幅狭のブリッジ部45により、法線力やX方向の力に実質的な影響を与えずに、ステータをRX方向に僅かに回転させることができる可能性が高くなる。横固定板は、ねじり可撓性に対する要求を考慮して設計されたものであるならば、単一又は平行カンチレバー構造であってもよい。
【0038】
本実施形態では、コイルバネ44と横固定板46とを組み合わせることで、X方向のバネ定数が非常に高く、すなわち、X方向に非常に堅固な構成でありながら、Z方向に低いバネ定数で法線力が得られる。さらに、RY方向に僅かな回転が可能である。また、幅狭のブリッジ部45により、RX方向に僅かな回転が可能である。
【0039】
図3A乃至3Cでは、ステータ支持部35を移動対象体に対して保持する様子を、明確には示していない。一般に、移動対象体に対して法線力の対向保持部がなければならないが、主運動方向の運動はできるだけ無制限であるべきである。この要件に対し、従来技術において知られているような、いくつかの解決手段がある。図4Aに一解決手段を示す。ステータ30を、ステータ支持部35から移動対象体10の表面5の方向に押す。ステータ支持部35は、移動対象体10の反対側まで延びており、Z方向においては比較的強固であるがX方向の相対運動を可能にする手段7によって、接触表面5とは反対側6から対象体10に接触する。手段7はホイールとして示されているが、例えば、スライド及び/又はロール回転を行う種々の接触部を用いる等、種々の方法で構成することができる。別の例を図4Bに示す。ここでは、ツインタイプのモータを示す。2つのステータ30を、互い対向する方向から移動対象体10に押し付ける。ステータ支持部35は、ステータ30の背面部付近まで延びており、ステータを支持する。これにより、一方のステータからの力が、他方のステータの法線力に対する対向支持力として作用する。当該分野の技術者ならわかるように、従来技術による対向支持部構成のための解決手段として、本発明と組み合わせて用いることが可能な手段は多数ある。
【0040】
図5は、本発明に係る電気機械モータ組立体1の他の実施形態を側面図にて示す。この側面図は、ステータ支持部35の断面にて取ったものである。本実施例では、加力構成部40は、ステータ30の各側に2つの板構造部50を備えている。図面には板構造部50の一方のみを示してある。板構造部50は、横固定板に対する垂直方向において対向するステータ30両側に取り付けられた各薄板を有している。したがって、これらの板は移動対象体10の表面5に垂直である。これにより、図示の平面に垂直な方向、すなわち、Y方向の可撓性が得られる。以下にさらに説明するが、これは板平面と一致することから、X方向に比較的高い剛性が得られる。また、以下にさらに説明するが、柔軟な弾力性部材としての作用を得るために、Z方向の剛性は低くなっている。板構造部50の内側部51は、例えばネジによりステータ30に強固に取り付けられている。板構造部50の外部取付部52は、本実施形態では角ブラケットの形をとっており、ステータ支持部35に強固に取り付けられている。横固定板46と、板構造部50の結合部55は、内側部51と外部取付部52とに機械的に連結されている。横固定板46と結合部55はステータ30に直接固定されてはいないが、内側部51を介してステータ30に取り付けられている。
【0041】
板構造部50のX方向の寸法は一般的には比較的幅広である。つまり、例えば、板平面に平行な方向における横固定板46の材料剛性は維持されるということである。したがって、図3A乃至3Cと同じ作用が達成される。横固定板46と内側部51との接合部54の中心を図中破線57で示し、Z方向において、X方向の力がステータ30にかかる位置を定める。この中心線は、好ましくは移動対象体10の表面5に物理的に接触しないで並置された状態で設けられる。本実施形態では、横固定板46は、横方向、すなわち、Y方向において表面5に対して並置されている(図1参照)。
【0042】
本実施形態において、バネ構成部42は2つの横固定板と一体化している。横固定板46は、板構造部50の幅狭部として設けられる2つの屈曲可能な接合部54、56によって、結合部55と内側部51との間に接続されている。これら屈曲可能接合部54、56を適切な寸法で設計することにより、これらによるZ方向のバネ作用、例えばバネ定数を修正することができる。本発明によれば、移動対象体10の表面5に対する法線方向Zのバネ定数を、法線力と、移動対象体10の表面5の平均高さ不確定性との比の5%未満とする。したがって、横固定板46と結合部55は、屈曲可能接合部54、56が許容できる限り、ステータ30に対して相対的にX及びZ方向に僅かに動くことができる。Z方向に所定のプリロードを有する板構造部50を取り付けることにより、必要な法線力が得られる。板構造部50の寸法は、バネ作用の動作にとって重要であり、好ましくは、板構造部50をアークスパーク浸食により製造される。
【0043】
図6は、本発明に係る電気機械モータ組立体1のさらに他の実施形態を側面図にて示す。本実施形態は図5の実施形態と多くの点で似ているが、板構造部50の実設計が少し異なる。ここでは、ステータ30に対する取付部として2つの内側部51を設ける。横固定板46はX方向において板構造部50全体にわたって延びているが、ここでは、X方向における両内側部51間の位置にて結合部55に取り付けられている。横固定板46と結合部55はステータ30に直接固定されてはいないが、内側部51を介してステータ30に取り付けられている。この構成によって、ステータ30に対する、より対称的な加力が行われるが、製造や取り付けがより複雑になる。
【0044】
また、上述のように、常に電気機械アクチュエータの接触部のうちの少なくとも1つが移動対象体に物理的に非スライド接触した状態で、電気アクチュエータの各ステップの反復により移動対象体を移動させる他の運動機構を用いることもできる。このような機構の一例として蠕動運動機構がある。可能な蠕動モータについての背景説明が、例えば、米国特許第7,161,278号に記載されている。このようなモータにおいても、図8に示すように、本加力方式の利点を得ることができる。
【0045】
ステータ30は、移動対象体10の表面5と相互作用を行う接触部22を有する多数の電気機械アクチュエータ20を備えている。電気機械アクチュエータ20は順次励起されて、長さ(Z方向)と幅(X方向)が変化する。本実施形態では、電気機械アクチュエータ20は、ほぼ全長にわたって単体として一体化されている。つまり、少なくとも幅が変化すると、対象体10に対する他の電気機械アクチュエータ20の相対位置が影響を受けるということである。幅が順次変化することにより、ステータ30は対象体10に対して段階的な動きを行う。
【0046】
実際の蠕動運動の詳細は、本発明の効果を達成するのに特に重要ではないので、詳細な説明は省略する。常に電気機械アクチュエータ20の接触部22のうちの少なくとも1つが移動対象体10に物理的に非スライド接触した状態で、電気アクチュエータ20の各ステップの反復によりこのような運動を実現できればよい。このタイプの運動に関する背景説明が必要な場合、米国特許第7,161,278号を参照されたい。
【0047】
本実施形態において、ステータ30は、X方向における所定位置にて実際の電気機械アクチュエータ20に強固に取り付けられた金属シェル33を有している。本実施形態では、加力構成部40は、2つのコイルバネ44からなるバネ構成部42と、横固定板46とにより構成されている。コイルバネ44は、移動対象体10の表面5に対する法線方向Zにおいて、ステータ30のシェル33とステータ支持部35との間に力を加える。横固定板46は、主運動方向Xに平行に、かつ、対象体10の表面5に物理的に接触しないで並置された状態で、ステータ30のシェル33とステータ支持部35との間に取り付けられている。
【0048】
バネ定数の選択は、上述の説明にしたがって行う。上述の各実施形態は、本発明の例として理解されるべきである。当該分野の技術者ならば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、これらの実施形態について種々の修正、組み合わせ、変更を行うことできるとわかるであろう。特に、技術的に可能である場合、他の構成において種々の実施形態の種々の部分的解決手段を組み合わせることができる。なお、本発明の主旨は、添付の特許請求の範囲により定める。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電気機械マイクロモータに関し、特に複数の電気機械的にアクティブなアクチュエータ素子の反復動作を用いる電気機械マイクロモータに関する。
【背景技術】
【0002】
長年、例えば圧電材料等の電気機械的にアクティブな材料を用いたマイクロモータが、多数の種々の用途に用いられてきた。特に様々な消費者製品においては、小型、軽量、低消費電力、廉価構成が好まれるので、このようなモータが使用されている。このようなモータは、比較的高速であること、動作が静かなこと、低消費電力、高位置精度等を特徴とすることが多い。非常に高い位置決め精度を達成するために、「ウォーキング」機構、スティックスリップ(固着・滑り)機構、「慣性」位置決め、蠕動機構、ステッピング機構等、様々な運動機構が一般に用いられている。このような機構において、その運動は、複数の電気機械的にアクティブなアクチュエータ素子の反復動作に基づく。
【0003】
このような電気機械モータの非常に好適な例が、米国特許第6,798,117号及び第7,355,325号に開示されている。二組の駆動素子が交互に移動対象物に接触する。駆動素子は共通の背面部に接続され、さらにモータの収納部に取り付けられている。対象物に運動を伝えるためには、収納部が駆動方向における駆動力に対する対向保持部として作用するように駆動素子を収納部に接続しなければならない。さらに、駆動素子は、対象物を駆動できるように、所定の法線力によって駆動対象物表面に対して保持されなければならない。米国特許第6,798,117号において、駆動素子は、駆動方向において「堅固性」が得られるように収納部に強固に取り付けられている。法線力は、バネ手段が一対のローラに対して作用することで対象物をアクチュエータ又は駆動素子の方向に押すことより得られる。
【0004】
明確な動作を達成するため、非常に良好な表面精度が必要である。取り付けミス、非平面性、摩耗、変形等、位置ずれが原因でアクチュエータと駆動対象物との間の距離や角度の誤差があると、正確な駆動条件に不確定性が生じる。これにより速度、力、位置決め精度が影響を受けてしまう。このため、モータステータは、駆動対象物とステータ支持部との間の種々の相対位置ずれに適応できなければならない。
【0005】
したがって、従来の電気機械モータの一般的な問題は、ステータ支持部に比較的影響されやすいという点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、複数の電気機械的にアクティブなアクチュエータ素子の反復動作を用い、表面とアクチュエータの高さの不確定性に対してより頑強な電気機械モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、本開示の独立請求項に係る電気機械モータにより達成される。本開示の従属請求項で、好ましい実施形態について具体的に述べる。一般に、電気機械モータ組立体は、ステータと、主運動方向においてステータに対して移動する移動対象体と、ステータ支持部とを備える。ステータは、複数の電気機械アクチュエータを有している。各電気機械アクチュエータは、移動対象体の表面と相互作用を行うための接触部を有している。複数の電気機械アクチュエータは、電気機械アクチュエータの各ステップの反復により移動対象体を移動させるように構成される。複数の電気機械アクチュエータは、常に接触部のうちの少なくとも1つが確実に移動対象体と物理的に非スライド接触するように構成される。電気機械モータ組立体は、さらに、ステータとステータ支持部との間に法線力を加える加力構成部を備える。加力構成部は、移動対象体の表面に対する法線方向において、ステータとステータ支持部との間に力を加えるように構成された少なくとも1つのバネ構成部を備える。加力構成部は、さらに、主運動方向に平行で、かつ、移動対象体の表面に対して物理的に接触せずに並置された状態で、ステータとステータ支持部との間に取り付けられた横固定板を備える。バネ構成部は、移動対象体の表面に対する法線方向に低いバネ定数を有している。このバネ定数は、法線力と、移動対象体の表面の平均高さ不確定性との比の5%未満とする。
【0008】
本発明の利点として、この電気機械モータ組立体は、一般に、表面とアクチュエータの不正確な位置決めに影響を受けにくく、正確な動作を達成する。他の利点については、以下の詳細な説明の種々の実施形態により説明する。
【0009】
本発明と、本発明のさらなる目的と利点については、添付図面を用いた以下の説明を参照することにより、最もよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】平行移動と回転の方向を示す図である。
【図2A】モータ組立体における力、平行移動、回転の条件を示す図である。
【図2B】モータ組立体における力、平行移動、回転の条件を示す図である。
【図2C】モータ組立体における力、平行移動、回転の条件を示す図である。
【図2D】モータ組立体における力、平行移動、回転の条件を示す図である。
【図2E】モータ組立体における力、平行移動、回転の条件を示す図である。
【図3A】本発明に係る電気機械モータ組立体の一実施形態を示す図である。
【図3B】本発明に係る電気機械モータ組立体の一実施形態を示す図である。
【図3C】本発明に係る電気機械モータ組立体の一実施形態を示す図である。
【図4A】法線力に対する対向保持部を設ける種々の実施形態の概略図である。
【図4B】法線力に対する対向保持部を設ける種々の実施形態の概略図である。
【図5】本発明に係る電気機械モータ組立体の他の実施形態の図である。
【図6】本発明に係る電気機械モータ組立体のさらに他の実施形態の図である。
【図7】法線力とねじり力との関係を示す概略図である。
【図8】蠕動運動を用いた、本発明に係る電気機械モータ組立体の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図中、同様の構成要素又は対応する構成要素には同じ参照番号を使用する。複数の電気機械アクチュエータ20を有するステータ30と移動対象体10との間では、多数の異なる相対運動が可能である。図1は、以降の説明をわかりやすくするため、種々の可能な動きを示す。所望の主運動方向に沿った線形変位又は平行移動を、X方向の平行移動とする。アクチュエータ20が作用する移動対象体10の表面5に垂直な方向の線形変位又は平行移動を、Z方向の平行移動とする。X及びZの両方向に垂直な線形変位又は平行移動を、Y方向の平行移動とする。
【0012】
同様に、電気機械アクチュエータ20と移動対象体10との間の相対回転を定義することもできる。説明を簡単にすると、これらの相対回転は回転の中心となる軸により定められる。X方向の軸を中心とする相対回転をRXとする。すなわち、主運動方向に沿った回転である。これはロール回転と呼ばれることが多い。Y方向の軸を中心とする相対回転をRYとする。これはピッチ回転と呼ばれることが多い。Z方向の軸を中心とする相対回転をRZとする。これはヨー回転と呼ばれることが多い。
【0013】
例えば対象体10の表面平滑性の不正確さを許容するため、ステータ30は、いずれのステータ支持部に対しても、ある程度の運動自由度を与える必要がある。多くの用途では、RZ方向の回転に加えてY方向の平行運動も、駆動精度に関してさほど重要ではなく、また、種々のベアリング構成によって容易に制御される。したがって、まず、2つの平行移動X及びZと、2つの回転RY及びRXに注目する。
【0014】
図2Aを参照して、アクチュエータ20が対象体10に力を加えようとするとき、ステータ30とステータ支持部35又は「モータ収納部」と間に反作用力がなければならない。多くの従来構成では、ステータ支持部35に対してステータ30を堅固に、あるいは、本質的に堅固に取り付けている。しかし、アクチュエータの高さの不正確さ、及び/又は、対象体10の表面のむらを許容するために、ステータ30をステータ支持部35に対して少なくとも幾分か移動可能とすることが有利である。しかし、上述のように、常に何らかの物理的接続が必要である。この接続を図2Aにて弾性接続部31として示す。RY及びRX方向の必要な回転とZ方向の平行移動を許容するため、これらの弾性接続部31はZ方向において「弱い」ことが必要である。一方、X方向に高い位置精度を確保するために、弾性接続部31はX方向において比較的「堅固」でなければならない。
【0015】
なお、弾性接続部31を図示のようにステータ30の上部に設けた場合、ステータ支持部35が弾性接続部31を介してステータ30にどのような力を加えても、この力はアクチュエータ20と対象体10との間の接触面21に対してトルクを生じる。トルクアームをDで示す。実際には、この接触面は対象体の相互作用面5と一致する。これは、アクチュエータ20が対象体10と相互作用を行うこと、すなわち、接触面21にて対象体10に駆動力を加えることによる。比較的大きい力を用いる場合、トルクがかなり大きくなることがあり、これによりRY方向のピッチ回転が生じる。
【0016】
図2Bの構成では、より良好な状況となる。この場合、X方向の動きを阻止する弾性接続部31が、接触面21に近い位置でステータ30に接続されている。トルクアームが図2Aのトルクアームと比較してごく僅かになるので、ステータ30において作用するトルクはいずれも、はるかに小さくなる。
【0017】
このことから、ステータ支持部35に対するステータ20のX方向の動きを制限する構成を、移動対象体10の表面5に対して物理的接触がない状態で並置すればよいことがわかる。
【0018】
多くの従来構成では、法線力の付与とX方向運動の制限は、1つの同じ部材で行われる。しかし、ステータ30のX運動を制限する部材を対象体の表面5付近に設けた場合、この領域の空間が限定されすぎてしまい、少なくとも従来技術の法線力付与部材を収容できないことが多い。
【0019】
X方向に高い堅固性が求められるのに対し、Z方向の法線力の付与は、好ましくは、その方向に比較的高い運動自由度を与える必要がある。これは一般に、RY及びRX方向の回転についても言えることである。この背景にある基本的な考え方は、図2C乃至2Eを参照することにより理解できるであろう。相互作用面の平坦性が不完全な対象体10を、ステータ30のアクチュエータ20によって駆動する。図2C乃至2Eは、X方向における3つの異なる相対位置を示している。なお、この考え方を視覚化するために、図中、非平坦性を極端に誇張してある。移動対象体の表面の平均高さ不確定性をΔで示し、z軸に沿った、モータ収納部に対する対象体の線形位置ずれとして定義する。また、これに対応してRY及びRX方向に角度ずれが生じる。特徴が比較的明確な動作を行うために、アクチュエータ20と表面5の相対方向及び位置が異なるにもかかわらず、これら3つの位置すべてにおける動作条件は、ほぼ同一でなければならない。このため、ステータ30は、加えた法線力を大きく変えずに、Z方向に移動可能でなければならない。同様に、ステータ30は、傾斜する表面5を補償するために、RY及び/又はRX方向に回転可能でなければならない。つまり、Z方向におけるステータとステータ支持部との接続の堅固性は低くなければならず、好ましくは、RY及び/又はRX方向において少なくとも僅かな回転を可能とする必要がある。これにより、駆動対象体に対する良好な位置合わせが可能となり、例えば組立体において、プリロード力に影響を与えずに、ずれを許容することが可能となる。
【0020】
図3Aは、本発明に係る電気機械モータ1組立体の一実施形態の断面図を示す。この断面はX及びZ方向に平行な平面で取ったものであり、組立体の中心からY方向にオフセットしている。図3Bは、移動対象体を取り除いた状態の断面図にて同実施形態を示す。この断面は、X及びZ方向に平行な平面で取ったものであり、Y方向において組立体の中心を通る。この断面はX及びZ方向に平行な平面で取ったものであり、組立体の中心からY方向にオフセットしている。図3Cは、図3Aと同様の図であるが、対象体を取り除いた状態である。以下の説明における図面の参照は、説明する特徴によって異なるが、すべてこれらの図についてである。ステータ30は、複数の電気機械アクチュエータ20を有している。各電気機械アクチュエータ20は、移動対象体10の表面5と相互作用を行うための接触部22を有している。移動対象体10は、主運動方向Xにおいてステータ30に対して相対的に移動する。複数の電気機械アクチュエータ20は、電気機械アクチュエータ20の各ステップの反復により移動対象体10を移動させるように構成されている。また、複数の電気機械アクチュエータ20は、常に接触部22のうちの少なくとも1つが確実に移動対象体10と物理的に非スライド接触するように構成されている。電気機械モータ1組立体は、さらに、ステータ支持部35を備えている。
【0021】
本実施形態では、4つの電気機械アクチュエータが存在する。なお、複数の電気機械アクチュエータであれば、いくつ用いてもかまわない。一般的な構成では、電気機械アクチュエータは、少なくとも2グループの電気機械アクチュエータとして動作可能に接続される。各グループ内の電気機械アクチュエータは、それに対応する運動パターンで一緒に動く。各グループの運動はグループ間で異なり、一般的には位相差により異なる。なお、完全に異なる運動シーケンスを用いてもよい。一般的なウォーキング又はステッピング機構では、一方のグループの電気機械アクチュエータは、各時点で対象体に接触しており、好ましくは対象体に運動を伝えるが、他方のグループの電気機械アクチュエータは、対象体から離れ、新たなサイクルのために開始位置に戻されている。
【0022】
この特定の実施形態の電気機械アクチュエータは、圧電セラミック材料からなる、ほぼ矩形のブロックとして形成されている。各ブロックは一端において共通の背面部に取り付けられ、他端に接触部22が取り付けられている。本実施形態において、各ブロックはバイモルフとして構成され、2つの別々に励起可能な部分が主運動方向Xにおいて互いに隣接して配置されている。これら異なる部分に好適な電圧を印加することにより、ブロックをX方向に曲げることができるとともに、Z方向の長さを変えることができる。このような形状変化を利用して、対象体との相互作用や対象体の移動を達成することができる。個々のブロックは互いに独立して機械的に移動可能である。すなわち、共通背面部又は移動対象体を介する以外、ブロック間で力の交換が行われることはほとんどない。なお、ブロック間の隙間は、ブロックの形状変化に影響を与えないような、容易に変形可能な材料で埋めてもよい。
【0023】
また、以下にさらに説明するが、本発明の加力方式とともに他の種類の運動機構を用いることもできる。
【0024】
加力構成部を全体として40で示すが、例えば、この加力構成部を設けて、ステータ30とステータ支持部35との間に法線力N、すなわち、対象体10の表面5に対して垂直方向、つまりZ方向の力を与える。加力構成部40は、Z方向においてステータ30とステータ支持部35との間に力を与えるように構成された、少なくとも1つのバネ構成部42を備えている。本実施形態において、バネ構成部42は、板バネ、固体エラストマー、液体(液圧式)、気体(圧縮空気式)、電磁力等、他の種類の弾力性構成部によるものでもよい。
【0025】
加力構成部40は、さらに、主運動方向Xに平行で、かつ、移動対象体10の表面5に対して物理的に接触せずに並置された状態で、ステータ30とステータ支持部35との間に取り付けられた横固定板46を備えている。バネ構成部42は、移動対象体10の表面5に対する法線方向Zに低いバネ定数を有している。このバネ定数は、法線力Nと、移動対象体10の表面5の平均高さ不確定性との比の5%未満とする。これにより、全体的な動作条件に過大な変化を生じることなく、表面平坦性の不確定性を補償することが可能である。経験的には、多くの用途におけるモータ動作は、力の変動が5%であれば許容できる。しかし、力の変動を小さく維持できるならば、もちろんその方が良い。したがって、より好ましくは、特に非常に高い再現性が要求される用途においては、バネ定数は、法線力Nと、移動対象体10の表面5の平均高さ不確定性との比の1%未満とする。
【0026】
本実施形態では、バネ構成部42は、ステータ30とステータ支持部35との間で、ステータ30の中心のX方向における両側に設けられた2つのコイルバネ44を備えている。一般に、この中心は、主運動方向Xに垂直でステータ30の対称点を通る対称面26と一致する。このようなコイルバネ44の配置により、法線力Nがステータ30上で対称的に与えられる。すなわち、法線力Nは、RY方向にステータ30を傾斜させるように作用することはない。他の実施形態において、単一のバネをステータ30の中心と同じ平面に設けることもできる。
【0027】
本発明のコイルバネ44は、ステータ支持部35とステータ30の背面側との間に設けられる。本実施形態において、コイルバネ44は、それぞれ、ステータ支持部35の本体にネジ構造で接続された中空ボルト41により保持される。コイルバネ44は、その一端が中空ボルト41のヘッドにてフランジ43により支持されている。コイルバネは、バネ定数が低いことが好ましいので、十分な法線力Nを与えるには、コイルバネ44を相当圧縮しなければならない。このため、非圧縮状態のバネは、取り付け時のバネの長さを比べて非常に長い。取り付けを容易にするために、本実施形態では、取り付け時にガイド棒を通すことができる長手方向の穴をボルトヘッドに設けている。ガイド棒をコイルバネ内部に配置し、圧縮時のコイルバネの横曲がりを防止する。コイルバネ44の他端はステータ30の背面側に作用する。
【0028】
本実施形態では、ステータの中心の両側に2つの部分力を与えることにより、RY方向の回転トルクが発生する。このような回転トルクは、以下に詳細に説明するが、例えば図2Dのように角度ずれにより生じる場合もある。多くの用途では、中心から同距離に、すなわち、一般的には対称面26に、2つの等しいバネを設けて、ステータに対して十分な力を発生させることが好ましい。このような構成では、回転に対抗する戻り力は回転方向と無関係であり、法線力自体の付与が回転成分を与えることはない。
【0029】
可能であれば、法線力はステータの中心に、又は、ステータの中心に対して対称的に加えるべきである。例えば、対称面26において1つのバネを設ける。なお、幾つかの特定の用途においては、ステータ30の中心に対して異なる距離に2つ以上のバネを設けることが有利となる。
【0030】
信頼性の高い動作を達成するため、好ましい実施形態では、ねじり可撓性が十分低くなるバネ構成部を備える。本開示においては、ねじり可撓性は、回転に対する抵抗として定義され、角度単位毎に発生した回転運動量として表される。図7は、法線力Nとねじり可撓性との関係を示す。距離Lだけ離れた2点に、回転点Rに対して対称的に法線力Nの半分を加えるとする。対象体は角度θだけ回転し、これにより対象体の各端部がそれぞれ、元の平面に対して距離(1/2)×Δだけ上下に移動する。2点におけるバネ定数k/2の各バネによって加えられた法線力はトルクMを生じ、回転を戻そうとする。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、F0は回転のない場合の法線力である。角度が小さい場合、Δは回転角θにより表され、これにより、次の数式2となる。
【0033】
【数2】
【0034】
ねじり可撓性は、M/θ’として定義される。lを、回転点と、法線力を加える位置との間のX方向の距離として定義すると、すなわち、l=L/2とすると、好ましいねじり可撓性は、次の数式3で表わすことができる。
【0035】
【数3】
【0036】
つまり、ねじり可撓性は、好ましくは、法線力Nと、移動対象体の表面の平均2倍高さ不確定性Δとの比に、加えた力のトルクアームの二乗を掛けた値の5%未満であるべきである。このねじり可撓性は、多くの用途において十分である。トルクアームは、一般に、ステータの対称点と、法線力(の半分)が加えられる点との間のX方向の距離である。さらに好適な実施形態では、特に非常に高い再現性が要求される用途においては、ねじり可撓性は、上記の値の1%未満である必要がある。
【0037】
図2A乃至2Eで説明したように、ステータ30とステータ支持部35との間の接続部は、X方向においてかなり堅固でなければならない。図3A乃至3Cの実施形態では、上述のように、これは横固定板46により得られる。本実施形態では、横固定板46は移動対象体10の表面5に平行に設けられる。ここでは、横固定板46は、電気機械アクチュエータ20が突出して通る矩形穴48を設けた中央矩形部47を備えている。中央矩形部47は、例えばネジによりステータ30に強固に取り付けられている。横固定板46は、さらに、X方向における横固定板46の両端に、それぞれ端部取付部49を備えている。端部取付部49は、例えばネジによりステータ支持部35に強固に取り付けられている。中央矩形部47と端部取付部49とは、各ブリッジ部45により連結されている。本実施形態では、ブリッジ部45は、Y方向において横固定板46の他の部分よりも狭いが、X方向に比較的堅固な連結を行うのに十分な幅を有している。幅狭のブリッジ部45により、法線力やX方向の力に実質的な影響を与えずに、ステータをRX方向に僅かに回転させることができる可能性が高くなる。横固定板は、ねじり可撓性に対する要求を考慮して設計されたものであるならば、単一又は平行カンチレバー構造であってもよい。
【0038】
本実施形態では、コイルバネ44と横固定板46とを組み合わせることで、X方向のバネ定数が非常に高く、すなわち、X方向に非常に堅固な構成でありながら、Z方向に低いバネ定数で法線力が得られる。さらに、RY方向に僅かな回転が可能である。また、幅狭のブリッジ部45により、RX方向に僅かな回転が可能である。
【0039】
図3A乃至3Cでは、ステータ支持部35を移動対象体に対して保持する様子を、明確には示していない。一般に、移動対象体に対して法線力の対向保持部がなければならないが、主運動方向の運動はできるだけ無制限であるべきである。この要件に対し、従来技術において知られているような、いくつかの解決手段がある。図4Aに一解決手段を示す。ステータ30を、ステータ支持部35から移動対象体10の表面5の方向に押す。ステータ支持部35は、移動対象体10の反対側まで延びており、Z方向においては比較的強固であるがX方向の相対運動を可能にする手段7によって、接触表面5とは反対側6から対象体10に接触する。手段7はホイールとして示されているが、例えば、スライド及び/又はロール回転を行う種々の接触部を用いる等、種々の方法で構成することができる。別の例を図4Bに示す。ここでは、ツインタイプのモータを示す。2つのステータ30を、互い対向する方向から移動対象体10に押し付ける。ステータ支持部35は、ステータ30の背面部付近まで延びており、ステータを支持する。これにより、一方のステータからの力が、他方のステータの法線力に対する対向支持力として作用する。当該分野の技術者ならわかるように、従来技術による対向支持部構成のための解決手段として、本発明と組み合わせて用いることが可能な手段は多数ある。
【0040】
図5は、本発明に係る電気機械モータ組立体1の他の実施形態を側面図にて示す。この側面図は、ステータ支持部35の断面にて取ったものである。本実施例では、加力構成部40は、ステータ30の各側に2つの板構造部50を備えている。図面には板構造部50の一方のみを示してある。板構造部50は、横固定板に対する垂直方向において対向するステータ30両側に取り付けられた各薄板を有している。したがって、これらの板は移動対象体10の表面5に垂直である。これにより、図示の平面に垂直な方向、すなわち、Y方向の可撓性が得られる。以下にさらに説明するが、これは板平面と一致することから、X方向に比較的高い剛性が得られる。また、以下にさらに説明するが、柔軟な弾力性部材としての作用を得るために、Z方向の剛性は低くなっている。板構造部50の内側部51は、例えばネジによりステータ30に強固に取り付けられている。板構造部50の外部取付部52は、本実施形態では角ブラケットの形をとっており、ステータ支持部35に強固に取り付けられている。横固定板46と、板構造部50の結合部55は、内側部51と外部取付部52とに機械的に連結されている。横固定板46と結合部55はステータ30に直接固定されてはいないが、内側部51を介してステータ30に取り付けられている。
【0041】
板構造部50のX方向の寸法は一般的には比較的幅広である。つまり、例えば、板平面に平行な方向における横固定板46の材料剛性は維持されるということである。したがって、図3A乃至3Cと同じ作用が達成される。横固定板46と内側部51との接合部54の中心を図中破線57で示し、Z方向において、X方向の力がステータ30にかかる位置を定める。この中心線は、好ましくは移動対象体10の表面5に物理的に接触しないで並置された状態で設けられる。本実施形態では、横固定板46は、横方向、すなわち、Y方向において表面5に対して並置されている(図1参照)。
【0042】
本実施形態において、バネ構成部42は2つの横固定板と一体化している。横固定板46は、板構造部50の幅狭部として設けられる2つの屈曲可能な接合部54、56によって、結合部55と内側部51との間に接続されている。これら屈曲可能接合部54、56を適切な寸法で設計することにより、これらによるZ方向のバネ作用、例えばバネ定数を修正することができる。本発明によれば、移動対象体10の表面5に対する法線方向Zのバネ定数を、法線力と、移動対象体10の表面5の平均高さ不確定性との比の5%未満とする。したがって、横固定板46と結合部55は、屈曲可能接合部54、56が許容できる限り、ステータ30に対して相対的にX及びZ方向に僅かに動くことができる。Z方向に所定のプリロードを有する板構造部50を取り付けることにより、必要な法線力が得られる。板構造部50の寸法は、バネ作用の動作にとって重要であり、好ましくは、板構造部50をアークスパーク浸食により製造される。
【0043】
図6は、本発明に係る電気機械モータ組立体1のさらに他の実施形態を側面図にて示す。本実施形態は図5の実施形態と多くの点で似ているが、板構造部50の実設計が少し異なる。ここでは、ステータ30に対する取付部として2つの内側部51を設ける。横固定板46はX方向において板構造部50全体にわたって延びているが、ここでは、X方向における両内側部51間の位置にて結合部55に取り付けられている。横固定板46と結合部55はステータ30に直接固定されてはいないが、内側部51を介してステータ30に取り付けられている。この構成によって、ステータ30に対する、より対称的な加力が行われるが、製造や取り付けがより複雑になる。
【0044】
また、上述のように、常に電気機械アクチュエータの接触部のうちの少なくとも1つが移動対象体に物理的に非スライド接触した状態で、電気アクチュエータの各ステップの反復により移動対象体を移動させる他の運動機構を用いることもできる。このような機構の一例として蠕動運動機構がある。可能な蠕動モータについての背景説明が、例えば、米国特許第7,161,278号に記載されている。このようなモータにおいても、図8に示すように、本加力方式の利点を得ることができる。
【0045】
ステータ30は、移動対象体10の表面5と相互作用を行う接触部22を有する多数の電気機械アクチュエータ20を備えている。電気機械アクチュエータ20は順次励起されて、長さ(Z方向)と幅(X方向)が変化する。本実施形態では、電気機械アクチュエータ20は、ほぼ全長にわたって単体として一体化されている。つまり、少なくとも幅が変化すると、対象体10に対する他の電気機械アクチュエータ20の相対位置が影響を受けるということである。幅が順次変化することにより、ステータ30は対象体10に対して段階的な動きを行う。
【0046】
実際の蠕動運動の詳細は、本発明の効果を達成するのに特に重要ではないので、詳細な説明は省略する。常に電気機械アクチュエータ20の接触部22のうちの少なくとも1つが移動対象体10に物理的に非スライド接触した状態で、電気アクチュエータ20の各ステップの反復によりこのような運動を実現できればよい。このタイプの運動に関する背景説明が必要な場合、米国特許第7,161,278号を参照されたい。
【0047】
本実施形態において、ステータ30は、X方向における所定位置にて実際の電気機械アクチュエータ20に強固に取り付けられた金属シェル33を有している。本実施形態では、加力構成部40は、2つのコイルバネ44からなるバネ構成部42と、横固定板46とにより構成されている。コイルバネ44は、移動対象体10の表面5に対する法線方向Zにおいて、ステータ30のシェル33とステータ支持部35との間に力を加える。横固定板46は、主運動方向Xに平行に、かつ、対象体10の表面5に物理的に接触しないで並置された状態で、ステータ30のシェル33とステータ支持部35との間に取り付けられている。
【0048】
バネ定数の選択は、上述の説明にしたがって行う。上述の各実施形態は、本発明の例として理解されるべきである。当該分野の技術者ならば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、これらの実施形態について種々の修正、組み合わせ、変更を行うことできるとわかるであろう。特に、技術的に可能である場合、他の構成において種々の実施形態の種々の部分的解決手段を組み合わせることができる。なお、本発明の主旨は、添付の特許請求の範囲により定める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(30)と、
主運動方向(X)において前記ステータ(30)に対して移動する移動対象体(10)と、
ステータ支持部(35)とを備え、
前記ステータ(30)は、複数の電気機械アクチュエータ(20)を有し、各電気機械アクチュエータ(20)は、前記移動対象体(10)の表面(5)と相互作用を行うための接触部(22)を有し、
前記複数の電気機械アクチュエータ(20)は、前記電気機械アクチュエータ(20)の各ステップの反復により前記移動対象体(10)を移動させるように構成され、
前記複数の電気機械アクチュエータ(20)は、常に前記接触部(22)のうちの少なくとも1つが確実に前記移動対象体(10)と物理的に非スライド接触するように構成され、
前記ステータ(30)と前記ステータ支持部(35)との間に法線力(N)を加える加力構成部(40)を備え、
前記加力構成部(40)は、前記移動対象体(10)の前記表面(5)に対する法線方向(Z)において、前記ステータ(30)と前記ステータ支持部(35)との間に力を加えるように構成された少なくとも1つのバネ構成部(42)を備え、
前記加力構成部(40)は、さらに、
前記主運動方向(X)に平行に、かつ、前記移動対象体(10)の前記表面(5)に対して物理的に接触せずに並置された状態で、前記ステータ(30)と前記ステータ支持部(35)との間に取り付けられた横固定板(46)を備え、
前記バネ構成部(42)は、前記移動対象体(10)の前記表面(5)に対する前記法線方向(X)に低いバネ定数を有し、
前記バネ定数は、前記法線力(N)と、前記移動対象体(10)の前記表面(5)の平均高さ不確定性(Δ)との比の5%未満であること
を特徴とする電気機械モータ組立体(1)。
【請求項2】
前記バネ定数は、前記法線力(N)と、前記移動対象体(10)の前記表面(5)の平均高さ不確定性(Δ)との比の1%未満であることを特徴とする請求項1に記載の電気機械モータ。
【請求項3】
前記バネ構成部(42)のねじり可撓性は、前記法線力(N)と、前記移動対象体(10)の前記表面(5)の平均高さ不確定性(Δ)との比に、前記ステータ(30)の対称点と前記法線力(N)の少なくとも一部が加えられる点との前記主運動方向(X)における距離の二乗を掛けた値の5%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気機械モータ。
【請求項4】
前記バネ構成部(42)の前記ねじり可撓性は、前記法線力(N)と、前記移動対象体(10)の前記表面(5)の平均高さ不確定性(Δ)との比に、前記ステータ(30)の前記対称点と前記法線力(N)の少なくとも前記一部が加えられる前記点との前記主運動方向(X)における前記距離の二乗を掛けた値の1%未満であることを特徴とする請求項3に記載の電気機械モータ。
【請求項5】
前記バネ構成部(42)は、前記主運動方向(X)に垂直で前記ステータ(30)の対称点を通る対称面(26)に対して対称的に前記法線力(N)を与えるように構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電気機械モータ。
【請求項6】
前記バネ構成部(42)は、前記対称面(26)の各側において、前記ステータ(30)と前記ステータ支持部(35)との間に設けられる2つのコイルバネ(44)を備えることを特徴とする請求項5に記載の電気機械モータ。
【請求項7】
前記横固定板(46)は、前記移動対象体(10)の前記表面(5)に平行に設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電気機械モータ。
【請求項8】
前記ステータ(30)の、前記横固定板(46)に垂直な方向における各側に、前記移動対象体(10)の前記表面(5)に垂直に、2つの前記横固定板(46)が設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電気機械モータ。
【請求項9】
前記バネ構成部(42)は、前記2つ横固定板(46)と一体化していることを特徴とする請求項8に記載の電気機械モータ。
【請求項1】
ステータ(30)と、
主運動方向(X)において前記ステータ(30)に対して移動する移動対象体(10)と、
ステータ支持部(35)とを備え、
前記ステータ(30)は、複数の電気機械アクチュエータ(20)を有し、各電気機械アクチュエータ(20)は、前記移動対象体(10)の表面(5)と相互作用を行うための接触部(22)を有し、
前記複数の電気機械アクチュエータ(20)は、前記電気機械アクチュエータ(20)の各ステップの反復により前記移動対象体(10)を移動させるように構成され、
前記複数の電気機械アクチュエータ(20)は、常に前記接触部(22)のうちの少なくとも1つが確実に前記移動対象体(10)と物理的に非スライド接触するように構成され、
前記ステータ(30)と前記ステータ支持部(35)との間に法線力(N)を加える加力構成部(40)を備え、
前記加力構成部(40)は、前記移動対象体(10)の前記表面(5)に対する法線方向(Z)において、前記ステータ(30)と前記ステータ支持部(35)との間に力を加えるように構成された少なくとも1つのバネ構成部(42)を備え、
前記加力構成部(40)は、さらに、
前記主運動方向(X)に平行に、かつ、前記移動対象体(10)の前記表面(5)に対して物理的に接触せずに並置された状態で、前記ステータ(30)と前記ステータ支持部(35)との間に取り付けられた横固定板(46)を備え、
前記バネ構成部(42)は、前記移動対象体(10)の前記表面(5)に対する前記法線方向(X)に低いバネ定数を有し、
前記バネ定数は、前記法線力(N)と、前記移動対象体(10)の前記表面(5)の平均高さ不確定性(Δ)との比の5%未満であること
を特徴とする電気機械モータ組立体(1)。
【請求項2】
前記バネ定数は、前記法線力(N)と、前記移動対象体(10)の前記表面(5)の平均高さ不確定性(Δ)との比の1%未満であることを特徴とする請求項1に記載の電気機械モータ。
【請求項3】
前記バネ構成部(42)のねじり可撓性は、前記法線力(N)と、前記移動対象体(10)の前記表面(5)の平均高さ不確定性(Δ)との比に、前記ステータ(30)の対称点と前記法線力(N)の少なくとも一部が加えられる点との前記主運動方向(X)における距離の二乗を掛けた値の5%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気機械モータ。
【請求項4】
前記バネ構成部(42)の前記ねじり可撓性は、前記法線力(N)と、前記移動対象体(10)の前記表面(5)の平均高さ不確定性(Δ)との比に、前記ステータ(30)の前記対称点と前記法線力(N)の少なくとも前記一部が加えられる前記点との前記主運動方向(X)における前記距離の二乗を掛けた値の1%未満であることを特徴とする請求項3に記載の電気機械モータ。
【請求項5】
前記バネ構成部(42)は、前記主運動方向(X)に垂直で前記ステータ(30)の対称点を通る対称面(26)に対して対称的に前記法線力(N)を与えるように構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電気機械モータ。
【請求項6】
前記バネ構成部(42)は、前記対称面(26)の各側において、前記ステータ(30)と前記ステータ支持部(35)との間に設けられる2つのコイルバネ(44)を備えることを特徴とする請求項5に記載の電気機械モータ。
【請求項7】
前記横固定板(46)は、前記移動対象体(10)の前記表面(5)に平行に設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電気機械モータ。
【請求項8】
前記ステータ(30)の、前記横固定板(46)に垂直な方向における各側に、前記移動対象体(10)の前記表面(5)に垂直に、2つの前記横固定板(46)が設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電気機械モータ。
【請求項9】
前記バネ構成部(42)は、前記2つ横固定板(46)と一体化していることを特徴とする請求項8に記載の電気機械モータ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2013−511251(P2013−511251A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538786(P2012−538786)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051288
【国際公開番号】WO2011/059369
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(503222101)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051288
【国際公開番号】WO2011/059369
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(503222101)
【Fターム(参考)】
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