説明

電気機能体の交換機構と交換方法

【課題】電流導入端子などの電気供給部品を交換対象から除外することができ、これにより電気機能体(例えばフィラメントからなる)の交換作業の負担を大幅に軽減できる電気機能体の交換機構と交換方法を提供する。
【解決手段】本体容器5の内部空間5aに配置され電気が供給されることで機能する電気機能体3を交換するための電気機能体の交換機構であって、本体容器5には、本体容器外部から内部空間5aへ電気機能体3を通す挿入孔5bが形成されるとともに、本体容器5は、挿入孔5bを開閉する開閉手段7と、電気を供給するための電気供給端子11を有し、電気機能体3は、電気供給端子11に着脱可能に接続され電気供給端子11から電気を受ける接続端子3aを有し、挿入孔5bから内部空間5aへ電気機能体3を挿入することで、接続端子3aを電気供給端子11に接続できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体容器の内部空間に配置され電気が供給されることで機能する電気機能体を交換するための電気機能体の交換機構と交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、本体容器は、イオン注入装置で用いられ内部が真空にされる真空容器であり、電気機能体は、真空容器内に配置されるフィラメントからなる。
イオン注入装置は、例えばガラス基板上の薄膜に不純物を注入する装置である。不純物は、リン(P)やボロン(B)などであり、イオンとしてプラズマから引き出されて薄膜に注入される。
【0003】
図7にイオン注入装置の構成を示す。なお、図7において、真空容器33の内部は、互いに連通しているプラズマ室33a、加速室33bおよび処理室33cからなる。
プラズマ室33a内にフィラメント35が配置される。ガス導入口37からプラズマ生成用の材料ガスがプラズマ室33aに導入された状態で、フィラメント35に電流が流されると、フィラメント35は加熱され熱電子を放出し、この熱電子は、プラズマ生成用の材料ガスと衝突して、ガス分子を電離あるいはイオン化する。これにより、プラズマが生成される。
プラズマ中のイオンは、加速用電極(図示せず)により引き出されて加速室33bで加速される。加速されたイオン(イオンビーム)は、不純物として処理室33cに配置された薄膜39に注入される。
【0004】
フィラメント35は、材料ガスとの反応などにより、化学的、物理的に消耗して、ある程度の使用時間で断線する。断線したフィラメント35は、新しいフィラメント35と交換する必要があり、交換は、真空容器33を大気開放せずに行われている。
【0005】
フィラメンの交換機構は、例えば下記の特許文献1、2に記載されている。
特許文献1では、図8に示すように、補助真空容器41を真空容器33の真空弁33aに取り付け、補助真空容器41内を真空容器33側から真空排気する。次いで、真空容器33内を大気圧に戻すことなく、操作軸43を用いて、フランジ付電流導入端子45を旧フィラメント35と共に補助真空容器41内に引き抜く。そして、補助真空容器41と真空容器33とを真空弁33aで遮断し、補助真空容器41内をほぼ大気圧に戻すことによって、補助真空容器41をフランジ付電流導入端子45および旧フィラメント35と共に取り外すことができる。次いで、逆の手順で新フィラメント35を真空容器33内に取り付ける。このように、フィラメント交換を行っている。
特許文献2では、図9に示すように、真空容器のプラズマ室33aに隣接して設けられた真空ボックス47内に基端部が支持された支持アーム49を回転板48により回転させる。これにより、その支持アーム49の先端に支持された旧フィラメント35をゲートバルブ51を通過させ上記真空ボックス47内に移動させる。次いで、ゲートバルブ51を閉塞した後に、上記真空ボックス47の蓋部材47aを開けて旧フィラメント35を新フィラメント35に交換する。その後、蓋部材47aを閉めて、大気吸引手段で真空ボックス47内を真空状態にした後、ゲートバルブ51を開けて、新フィラメント35をプラズマ発生室33a内に移動させる。
【特許文献1】特開平11−250846号公報
【特許文献2】特開2002−343265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フィラメントの交換は、上述のように種々の非大気開放方式で実施されているが、作業性、作業時間、メンテナンスコストに関する課題がある。
【0007】
まず、交換対象部品に、フィラメントに電流を供給するための電気供給部品を含むことで、次の(1)、(2)の問題が生じる。
(1)特許文献1では、電気供給部品(即ち、フランジ付電流導入端子45)も交換対象部品である。そのため、交換対象部品が大きくなるとともに、フィラメント交換後にフランジ付電流導入端子45を電源に接続する作業などが必要となる。その分、フィラメントの交換作業の負担が増える。
(2)また、電気供給部品(フランジ付電流導入端子45)も交換対象部品であると、非大気開放方式で行う場合には、電気供給部品も真空容器33に取り付ける交換用容器(例えば、特許文献1の補助真空容器41)内に収容するため、交換用容器の寸法が、電気供給部品の分だけ大きくかつ重くなる。そのため、作業者の負担が増して作業時間も長くなる。
上記(1)、(2)は、部品や作業コストの増大と、交換時間の増加によるイオン注入装置の稼働率低下などの問題に直結する。
【0008】
また、交換用容器(例えば、特許文献1の補助真空容器や特許文献2の真空ボックス)を真空容器33に常設しておく場合には、交換用容器などが材料ガスやプラズマに曝されて汚染されるおそれがある。例えば、交換用容器の内壁が材料ガスやプラズマで汚染されることによって膜付着が発生する可能性があり、交換用容器のメンテナンスが必要となる可能性がある。さらに、特許文献1の真空弁33aのフランジ面やシール材(Oリング)が、材料ガスやプラズマにより劣化して真空閉止できなくなる場合がある。特許文献2のゲートバルブ51も同様である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、フランジ付電流導入端子45などの電気供給部品を交換対象から除外することができ、これにより電気機能体(例えばフィラメントからなる)の交換作業の負担を大幅に軽減できる電気機能体の交換機構と交換方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、交換用容器がプラズマガスや材料ガスによって汚染することを防止でき、交換用容器と本体容器(例えば真空容器)との間を遮断・開放するための開閉手段がプラズマガスや材料ガスによって汚染されることを抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明によると、本体容器の内部空間に配置され電気が供給されることで機能する電気機能体を交換するための電気機能体の交換機構であって、
前記本体容器には、本体容器外部から前記内部空間へ前記電気機能体を通す挿入孔が形成されるとともに、前記本体容器は、前記挿入孔を開閉する開閉手段と、電気を供給するための電気供給端子を有し、
前記電気機能体は、前記電気供給端子に着脱可能に接続され前記電気供給端子から電気を受ける接続端子を有し、
前記挿入孔から前記内部空間へ前記電気機能体を挿入することで、前記接続端子を前記電気供給端子に接続できるようになっている、ことを特徴とする電気機能体の交換機構が提供される。
【0011】
上述の本発明の交換機構では、前記本体容器には、本体容器外部から前記内部空間へ前記電気機能体を通す挿入孔が形成されるとともに、前記本体容器は、前記挿入孔を開閉する開閉手段と、電気を供給するための電気供給端子を有し、前記電気機能体は、前記電気供給端子に着脱可能に接続され前記電気供給端子から電気を受ける接続端子を有し、前記挿入孔から前記内部空間へ前記電気機能体を挿入することで、前記接続端子を前記電気供給端子に接続できるようになっているので、電気機能体に電気を供給するための電気供給部品を交換対象から除外することができる。従って、電気機能体の交換作業の負担が大幅に軽減される。その結果、交換時間が短縮され、本体容器を用いた装置の作動停止時間も短縮されるので、当該装置の稼働率を向上できる。
しかも、電気供給部品を交換対象から除外することができるので、前記内部空間を外部から遮断した状態で前記電気機能体を交換するための交換用容器の寸法を小さくできる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によると、前記内部空間を外部から遮断した状態で前記電気機能体を交換するための交換用容器が設けられ、
該交換用容器内には、前記電気機能体が収容可能であるとともに、該交換用容器は、前記挿入孔を覆うように前記本体容器の外面に着脱可能に取り付けられ、これにより、該交換用容器の内面と前記本体容器の前記外面との間で密閉空間が形成され、
前記交換用容器には、
前記密閉空間内を真空または所定のガス雰囲気にする吸引・ガス導入機構と、
該交換用容器が前記外面に取り付けられた取付状態で、前記開閉手段を開閉する開閉機構と、
前記取付状態で、前記密閉空間から前記挿入孔を通して、前記内部空間へ前記電気機能体を挿入することで、前記接続端子を前記電気供給端子に接続させ、または、前記電気機能体を前記電気供給端子から外すとともに前記挿入孔を通して前記密閉空間へ引き出す挿入・引出機構と、が設けられる。
【0013】
上記構成では、交換用容器を設けることで、次の交換方法の手順(A)〜(I)により、前記内部空間を外部から遮断した状態で前記電気機能体を交換することができる。即ち、本発明によると、前記交換機構を用いた電気機能体の交換方法であって、
(A)前記交換用容器を前記本体容器の前記外面に取り付け、前記吸引・ガス導入機構により前記密閉空間内を真空または所定のガス雰囲気にし、
(B)前記開閉機構により前記開閉手段を開放し、
(C)前記挿入・引出機構により、旧電気機能体を前記電気供給端子から外すとともに前記挿入孔を通して前記密閉空間へ引き出し、
(D)前記開閉機構により前記開閉手段を閉じ、
(E)前記交換用容器内に新電気機能体を収容させた状態で、前記交換用容器を前記本体容器の前記外面に取り付け、
(F)前記開閉手段を閉じた状態で、前記吸引・ガス導入機構により前記密閉空間内を真空または所定のガス雰囲気にし、
(G)前記開閉機構により前記開閉手段を開放し、
(H)前記挿入・引出機構により、前記密閉空間から前記挿入孔を通して、前記内部空間へ前記新電気機能体を挿入することで、前記接続端子を前記電気供給端子に接続させ、
(I)前記開閉機構により前記開閉手段を閉じ、前記交換用容器を前記外面から取り外す、ことを特徴とする電気機能体の交換方法が提供される。
さらに、前記交換機構または交換方法では、電気機能体の交換後は、前記開閉手段により前記挿入孔を塞いで、前記交換用容器を取り外すことができるので、交換用容器が前記内部空間のプラズマガスや材料ガスによって汚染されることがなくなり、交換用容器のメンテナンスがほとんど不要になる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によると、前記電気供給端子の位置は、前記挿入孔と前記内部空間との境界、または、前記内部空間における前記境界付近である。
【0015】
このように、前記電気供給端子の位置は、前記電気供給端子の位置は、前記挿入孔と前記内部空間との境界、または、前記内部空間における前記境界付近であるので、電気供給端子およびこれに接続される前記接続端子が障害となって、前記内部空間のプラズマガスや材料ガスが前記挿入孔を通って前記開閉手段まで到達し難くなる。これにより、前記開閉手段やこれに設けられるシール部材などがプラズマガスや材料ガスによって劣化することを抑制できる。
【0016】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記電気機能体は、前記電気供給端子に支持される。
【0017】
このように、前記電気機能体は、前記電気供給端子に支持されるので、前記電気機能体を支持するための他の部材や部分を省略できる。
【0018】
前記電気機能体は、
電流が流れることで、熱電子を放出するフィラメント、
電圧が印加されることで、荷電粒子が衝突してターゲット材料粒子を放出するターゲット材料、または
電流が流れることで、ターゲット材料を加熱して蒸発させるヒータを有する。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明によると、電気機能体(例えばフィラメントからなる)に電気を供給するための部品を交換対象から除外することができ、これにより電気機能体の交換作業の負担を大幅に軽減できる。また、本発明によると、交換用容器がプラズマガスや材料ガスによって汚染されることを防止でき、交換用容器と本体容器(例えば真空容器)との間を遮断するための開閉手段やシール部材などがプラズマガスや材料ガスによって劣化することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態による電気機能体3の交換機構10の構成図である。交換機構10は、本体容器5の内部空間5aに配置され電気が供給されることで機能する電気機能体3を交換するための機構である。この例では、本体容器5は、上述したイオン注入装置に設けられる真空容器であり、電気機能体3は電流が流されることで熱電子を放出するフィラメントからなる。なお、図1には、真空容器のプラズマ生成部付近が示されている。
【0022】
本実施形態による交換機構10は、以下に述べる電気機能体3と本体容器5などに設けられる機構・構成である。
【0023】
本体容器5には、本体容器5外部から内部空間5aへ電気機能体3を通す挿入孔5bが形成される。この挿入孔5bを開閉する開閉手段7が本体容器5に設けられる。
また、本体容器5には、電気導入端子9と電気供給端子11が設けられる。電気導入端子9は、本体容器5の外部に位置し、本体容器5の外部にある電源(図示せず)に電気配線により接続される。電気供給端子11は、内部空間5aに位置し、配線保護部材13内に設けられた電気配線を介して電気導入端子9に接続されている。この電気供給端子11は、後述する電気機能体3の接続端子3aに接続されて電気機能体3に電気を供給する。電気供給端子11の位置は、挿入孔5b内、挿入孔5bと内部空間5aとの境界(即ち、挿入孔5b開口部)、または、内部空間5aにおける前記境界付近である。
【0024】
電気機能体3は、電気供給端子11に着脱可能に接続され電気供給端子11から電気を受ける接続端子3aを有する。電気機能体3を挿入孔5bから内部空間5aへ挿入することで、接続端子3aを電気供給端子11に接続できるようになっている。電気機能体3は、その接続端子3aが電気供給端子11に接続されると、電気供給端子11に支持される。電気機能体3の接続端子3aが電気供給端子11に接続された状態を図2に示す。この例では、電気機能体3は、フィラメント部分3cおよび接続端子3aと一体となっている支持部3dを有する。
【0025】
本実施形態によると、交換機構10は、内部空間5aを外部から遮断した状態で電気機能体3を交換するための交換用容器15を有する。該交換用容器15内には、電気機能体3が収容可能であるとともに、該交換用容器15は、挿入孔5bを覆うように本体容器5の外面5cに着脱可能に取り付けられ、これにより、該交換用容器15の内面と本体容器5の外面5cとの間で密閉空間17が形成される。交換用容器15には、吸引・ガス導入機構19、開閉機構21および挿入・引出機構23が設けられる。
なお、図1の例では、交換用容器15は、本体容器5の取付部5dに取り付けられている。取付部5dの外表面は、本体容器5の外面5cを構成する。この取付部5dの厚みの分だけ、挿入孔5bの深さを大きくできる。
【0026】
吸引・ガス導入機構19は、密閉空間17内を真空または所定のガス雰囲気にする。図1の例では、吸引・ガス導入機構19は、窒素などの不活性ガスを供給するガス源19a(例えば、ガスタンク)と、交換用容器15の壁面に設けられ交換用容器15内部と連通するガスポート19bと、このガスポート19bとガス源19aを接続するガスライン19cと、ガスライン19cに設けられるバルブ19dと、吸引装置19e(例えば、真空ポンプ)と、交換用容器15の壁面に設けられ交換用容器15内部と連通する吸引ポート19fと、この吸引ポート19fと吸引装置19eを接続する吸引ライン19gと、吸引ライン19gに設けられるバルブ19hと、からなる。
【0027】
開閉機構21は、交換用容器15が本体容器5の外面5cに取り付けられた取付状態で、開閉手段7を開閉する機構である。開閉機構21は、図1の例では、回転シャフトからなる。開閉手段7は、この例では、蓋部材である。回転シャフト21を、交換用容器15の外部で人が回転させることで、蓋部材7を直線移動(図1の紙面と垂直な方向に移動)させる。これにより、蓋部材7を、挿入孔5bを塞ぐ閉止位置と挿入孔5bを開放する開放位置との間で移動させることができる。そのために、例えば、回転シャフト21の先端部にはピニオン21aが固定され、このピニオン21aと噛み合うラック21bが蓋部材7の上面に固定されている。また、回転シャフト21とピニオン21aの位置は、電気機能体3と挿入・引出機構23の移動範囲から図1の紙面と垂直な方向にずれている。従って、回転シャフト21とピニオン21aが、電気機能体3および挿入・引出機構23と干渉することがない。
【0028】
挿入・引出機構23は、前記取付状態で、密閉空間17から挿入孔5bを通して、内部空間5aへ電気機能体3を挿入することで、接続端子3aを電気供給端子11に接続させ(図2の状態)、または、接続端子3aを電気供給端子11から外すとともに電気機能体3を挿入孔5bを通して密閉空間17へ引き出すための機構である。挿入・引出機構23は、図1の例では、交換用容器15外部で人が操作可能な操作シャフトである。操作シャフト23の先端部は雄ネジ部23aとなっており、この雄ネジ部23aは電気機能体3の支持部3dに設けられた雌ネジ部3bに螺合可能である。この構成で、操作シャフト23を人が回転させて操作シャフト23の雄ネジ部23aを電気機能体3の雌ネジ部3bに螺合させることで、操作シャフト23と電気機能体3とが結合される。その後、操作シャフト23を人が押し込むことで、電気機能体3を挿入孔5bから内部空間5aへ挿入させて、接続端子3aを電気供給端子11に接続できる。また、逆に、操作シャフト23と電気供給端子11に接続された電気機能体3とを結合させた状態で、操作シャフト23を人が引き抜くことで、接続端子3aを電気供給端子11から外し、電気機能体3を挿入孔5bを通して交換用容器15の内部へ引き抜くことができる。
【0029】
次に、上述した交換機構10を用いた電気機能体3の交換方法について説明する。図3は、この交換方法を示すフローチャートである。
【0030】
(旧電気機能体3の取り出し)
まず、ステップS1において、交換用容器15を本体容器5の外面5cに取り付ける。交換用容器15の外面5cへの取り付けは、図1の破線で示す部分の拡大図である図4のように行ってよい。即ち、交換用容器15のフランジ15aを外面5cにネジ27などで取り付けてよい。また、フランジ15aと外面5cとの間にはOリングなどのシール部材29が設けられている。
ステップS2において、吸引・ガス導入機構19により密閉空間17内を真空または所定のガス雰囲気にする。即ち、密閉空間17を内部空間5aと同じ状態(真空または所定のガス雰囲気)にする。この例では、密閉空間17を真空にする。この例では、バルブ19hを開放して、交換用容器15の内部を吸引ポート19fから吸引装置19eにより吸引する。これにより、交換用容器15の内部を真空にする。
その後、ステップS3において、開閉機構21により蓋部材7を開放する。この例では、回転シャフト21を手動で回転させ、蓋部材7を前記閉止位置から前記開放位置へ直線移動させる。
次いで、ステップS4において、挿入・引出機構23により、旧電気機能体3を電気供給端子11から外すとともに挿入孔5bを通して密閉空間17へ引き出す。この例では、操作シャフト23を人が操作して、その雄ネジ部23aを電気機能体3の雌ネジ部3bに螺合させ、この状態で、引き抜くことで、接続端子3aを電気供給端子11から外し、電気機能体3を挿入孔5bを通して交換用容器15の内部へ引き抜く。
ステップS5において、開閉機構21により蓋部材7を閉じる。この例では、回転シャフト21を手動で回転させ、蓋部材7を前記開放位置から前記閉止位置へ直線移動させる。
ステップS6において、吸引・ガス導入機構19により、交換用容器15の内部に不活性ガスを導入して、交換用容器15の内部を昇圧する。この例では、ガス源19aからガスポート19bを通して不活性ガスを交換用容器15の内部に供給する。
ステップS7において、交換用容器15を外面5cから取り外し、旧電気機能体3を取り出す。
【0031】
(新電気機能体3の取り付け)
ステップS8において、交換用容器15内に新電気機能体3を収容させた状態で、交換用容器15を本体容器5の外面5cに取り付ける。この際に、操作シャフト23と電気機能体3を上述のように結合させておく。
ステップS9において、蓋部材7を閉じた状態で、吸引・ガス導入機構19により密閉空間17内を真空または所定のガス雰囲気にする。即ち、密閉空間17を内部空間5aと同じ状態にする。この例では、ステップS2と同じ方法で交換用容器15の内部(密閉空間17)を真空にする。
ステップS10において、開閉機構21により蓋部材7を開放する。この開放はステップS3と同じ方法で行える。
ステップS11において、挿入・引出機構23により、密閉空間17から挿入孔5bを通して、内部空間5aへ新電気機能体3を挿入することで、接続端子3aを電気供給端子11に接続させる。この例では、操作シャフト23を手動で押し込むことで、電気機能体3を挿入孔5bから内部空間5aへ挿入させて、接続端子3aを電気供給端子11に接続する。これにより、電気機能体3が電気供給端子11に支持される。次いで、操作シャフト23を回転させて操作シャフト23と電気機能体3との螺合を解き、操作シャフト23を交換用容器15の内部まで戻す。
ステップS12において、開閉機構21により蓋部材7を閉じる。
次いで、ステップS13において、吸引・ガス導入機構19により、交換用容器15の内部に不活性ガスを導入して、交換用容器15の内部を昇圧する。
ステップS14において、交換用容器15を外面5cから取り外す。この例では、ネジ27を外して交換用容器15を取り外す。この後、蓋部材7をネジなどで外面5cに確実に固定してよい。このネジは、上記ステップS1の直前で外される。
【0032】
上述の本発明の実施形態による交換機構10では、本体容器5には、本体容器5外部から内部空間5aへ電気機能体3を通す挿入孔5bが形成されるとともに、本体容器5は、挿入孔5bを開閉する蓋部材7と、電気を供給するための電気供給端子11を有し、電気機能体3は、電気供給端子11に着脱可能に接続され電気供給端子11から電気を受ける接続端子3aを有し、挿入孔5bから内部空間5aへ電気機能体3を挿入することで、接続端子3aを電気供給端子11に接続できるようになっているので、電気機能体3に電気を供給するための電気供給部品を交換対象から除外することができる。従って、電気機能体3の交換作業の負担が大幅に軽減される。その結果、交換時間が短縮され、本体容器5を用いた装置の作動停止時間も短縮されるので、当該装置の稼働率を向上できる。
しかも、電気供給部品を交換対象から除外することができるので、内部空間5aを外部から遮断した状態で電気機能体3を交換するための交換用容器15の寸法を小さくできる。
【0033】
また、上述の実施形態により以下の効果も得られる。
上述の実施形態では、電気機能体3を交換後は、蓋部材7により挿入孔5bを塞いで、交換用容器15を取り外すので、交換用容器15が内部空間5aのプラズマガスや材料ガスによって汚染されることがなくなり、交換用容器15のメンテナンスがほとんど不要になる。
電気供給端子11の位置は、挿入孔5b内、挿入孔5bと内部空間5aとの境界(即ち、挿入孔5b開口部)、または、内部空間5aにおける前記境界付近であるので、電気供給端子11およびこれに接続される接続端子3aが障害となって、内部空間5aのプラズマガスや材料ガスが挿入孔5bを通って蓋部材7まで到達し難くなる。これにより、蓋部材7およびこれに設けられるシール部材がプラズマガスや材料ガスによって汚染されることを抑制できる。
電気機能体3は、電気供給端子11に支持されるので、電気機能体3を支持するための他の部材や部分を省略できる。
さらに、従来ではフィラメントに取り付けられていた電気導入端子9を本体容器5に設けたので、フィラメント3の交換時に、電気導入端子9へ配線の取り外し、取り付け作業も省略でき、電気導入端子9を冷却する冷却配管などの電気導入端子9に対する取り外し、取り付け作業も省略できる。
【0034】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下のように、上述の実施形態を本発明の範囲内で変更することができる。
【0035】
例えば、上述の実施形態では電気機能体3は、イオン注入装置に使用されるフィラメントからなっていたが、本発明によると、電気機能体3は、スパッタ装置で使用されるターゲット材料からなっていてもよいし、真空蒸着装置で使用されるヒータからなっていてもよい。
図5は、電気機能体3がスパッタ装置で使用されるターゲット材料からなる場合を示す。図5のスパッタ装置では、本体容器5内の気体分子をグロー放電などにより、プラズマにする。一方、電気機能体3のターゲット材料部分3cには、電気供給端子11から電圧が印加されることで、電位が与えられる。これにより、プラズマ中のイオンがターゲット材料部分3cに向けて加速し衝突する。これにより、ターゲット材料部分3cから飛び出したターゲット粒子が本体容器5内の対象物に付着することで、対象物に薄膜を形成する。この場合、交換用容器15を用いた上述の交換方法により、本体容器5内を真空に維持したままターゲット材料部分3cを有する電気機能体3を交換できる。図5(A)は、電気機能体3が交換用容器15内にある状態を示し、図5(B)は、電気機能体3の接続端子3aが電気供給端子11に接続されている状態を示す。電気機能体3がこのようなターゲット材料部分3cを有する場合の交換機構10の他の構成は上述の実施形態と同じであってよい。
図6は、電気機能体3が、真空蒸着装置で使用されるヒータからなる場合を示す。図6の真空蒸着装置では、電気機能体3のヒータ部分3cには、電気供給端子11から電流が供給されることで、ヒータ3cはターゲット材料である薄膜材料31を加熱して蒸発させる。蒸発した薄膜材料31は、本体容器5内の対象物に衝突付着し、これにより、対象物に薄膜が形成される。図6の例では、薄膜材料31は、ヒータ3cに取り付けられている。図6(A)は、電気機能体3が交換用容器15内にある状態を示し、図6(B)は、電気機能体3の接続端子3aが電気供給端子11に接続されている状態を示す。電気機能体3がこのようなヒータ3cを有する場合の交換機構10の他の構成は上述の実施形態と同じであってよい。
【0036】
また、電気機能体3は、イオンビーム中性化装置で使用されるフィラメントからなっていてもよいし、本体容器5内に配置され電気が供給されることで機能する他のものであってもよい。
【0037】
開閉手段7は、上述した蓋部材に限られず、交換用容器15の外部から開閉操作可能である他の適切なもの(例えば真空弁)であってもよい。
【0038】
吸引・ガス導入機構19は、上述した構成に限定されず、密閉空間17内を真空または所定のガス雰囲気にする構成でありさえすればよい。
開閉機構21は、上述した構成に限定されず、交換用容器15が本体容器5の外面5cに取り付けられた取付状態で、開閉手段7を開閉する機構でありさえすればよい。
挿入・引出機構23は、上述した構成に限定されず、前記取付状態で、密閉空間17から挿入孔5bを通して、内部空間5aへ電気機能体3を挿入することで、接続端子3aを電気供給端子11に接続させ、または、電気機能体3を電気供給端子11から外すとともに挿入孔5bを通して密閉空間17へ引き出すための機構でありさえすればよい。
【0039】
また、本体容器5は、内部空間5aが電気機能体3の交換前後を通して、真空に維持されるものだけでなく、所定のガス雰囲気に維持されるものであってもよい。この場合、上述の構成により、内部空間5aを所定のガス雰囲気に維持したまま、電気機能体3を交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態による電気機能体の交換機構を示す。
【図2】電気機能体を本体容器内に取り付けた状態を示す。
【図3】本発明の実施形態による電気機能体の交換方法を示すフローチャートである。
【図4】図1の破線で囲んだ部分の拡大図である。
【図5】電気機能体がスパッタ装置のターゲット材料を有する場合に本発明を適用した構成を示す。
【図6】電気機能体が真空蒸着装置のヒータ有する場合に本発明を適用した構成を示す。
【図7】イオン注入装置の概略構成図である。
【図8】特許文献1の交換機構を示す。
【図9】特許文献2の交換機構を示す。
【符号の説明】
【0041】
3 電気機能体、3a 接続端子、3b 雌ネジ部、3c 電気機能部分(フィラメント部分)、3d 支持部、5 本体容器、5a 内部空間、5b 挿入孔、5c 外面、5d 取付部、7 開閉手段(蓋部材)、9 電気導入端子、10 交換機構、11 電気供給端子、13 配線保護部材、15 交換用容器、15a フランジ、17 密閉空間、19 吸引・ガス導入機構、19a ガス源,19b ガスポート、19c ガスライン、19d バルブ、19e 吸引装置、19f 吸引ポート、19g 吸引ライン、19h バルブ、21 開閉機構(回転シャフト)、23 挿入・引出機構(操作シャフト)、23a 雄ネジ部、27 ネジ、29 シール部材、31 ターゲット材料(薄膜材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体容器の内部空間に配置され電気が供給されることで機能する電気機能体を交換するための電気機能体の交換機構であって、
前記本体容器には、本体容器外部から前記内部空間へ前記電気機能体を通す挿入孔が形成されるとともに、前記本体容器は、前記挿入孔を開閉する開閉手段と、電気を供給するための電気供給端子を有し、
前記電気機能体は、前記電気供給端子に着脱可能に接続され前記電気供給端子から電気を受ける接続端子を有し、
前記挿入孔から前記内部空間へ前記電気機能体を挿入することで、前記接続端子を前記電気供給端子に接続できるようになっている、ことを特徴とする電気機能体の交換機構。
【請求項2】
前記内部空間を外部から遮断した状態で前記電気機能体を交換するための交換用容器が設けられ、
該交換用容器内には、前記電気機能体が収容可能であるとともに、該交換用容器は、前記挿入孔を覆うように前記本体容器の外面に着脱可能に取り付けられ、これにより、該交換用容器の内面と前記本体容器の前記外面との間で密閉空間が形成され、
前記交換用容器には、
前記密閉空間内を真空または所定のガス雰囲気にする吸引・ガス導入機構と、
該交換用容器が前記外面に取り付けられた取付状態で、前記開閉手段を開閉する開閉機構と、
前記取付状態で、前記密閉空間から前記挿入孔を通して、前記内部空間へ前記電気機能体を挿入することで、前記接続端子を前記電気供給端子に接続させ、または、前記電気機能体を前記電気供給端子から外すとともに前記挿入孔を通して前記密閉空間へ引き出す挿入・引出機構と、が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の電気機能体の交換機構。
【請求項3】
前記電気供給端子の位置は、前記挿入孔内、前記挿入孔と前記内部空間との境界、または、前記内部空間における前記境界付近である、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の電気機能体の交換機構。
【請求項4】
前記電気機能体は、前記電気供給端子に支持される、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の電気機能体の交換機構。
【請求項5】
前記電気機能体は、
電流が流れることで、熱電子を放出するフィラメント、
電圧が印加されることで、荷電粒子が衝突してターゲット材料粒子を放出するターゲット材料、または
電流が流れることで、ターゲット材料を加熱して蒸発させるヒータを有する、ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気機能体の交換機構。
【請求項6】
請求項2に記載の交換機構を用いた電気機能体の交換方法であって、
(A)前記交換用容器を前記本体容器の前記外面に取り付け、前記吸引・ガス導入機構により前記密閉空間内を真空または所定のガス雰囲気にし、
(B)前記開閉機構により前記開閉手段を開放し、
(C)前記挿入・引出機構により、旧電気機能体を前記電気供給端子から外すとともに前記挿入孔を通して前記密閉空間へ引き出し、
(D)前記開閉機構により前記開閉手段を閉じ、
(E)前記交換用容器内に新電気機能体を収容させた状態で、前記交換用容器を前記本体容器の前記外面に取り付け、
(F)前記開閉手段を閉じた状態で、前記吸引・ガス導入機構により前記密閉空間内を真空または所定のガス雰囲気にし、
(G)前記開閉機構により前記開閉手段を開放し、
(H)前記挿入・引出機構により、前記密閉空間から前記挿入孔を通して、前記内部空間へ前記新電気機能体を挿入することで、前記接続端子を前記電気供給端子に接続させ、
(I)前記開閉機構により前記開閉手段を閉じ、前記交換用容器を前記外面から取り外す、ことを特徴とする電気機能体の交換方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−15750(P2010−15750A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173143(P2008−173143)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】