説明

電気治療器

【課題】使用者に不快感を与えることなく、消費電力の低減化を図ると共に、電池寿命を延ばし、経済的で環境上も問題のない電気治療器を提供する。
【解決手段】本発明は、外部電源8又は電池10から供給された電力によって人体の患部を温める温熱手段34a,34b,35a,35bを備えた電気治療器1であって、前記電力が外部電源8と電池10のいずれの供給源から供給されているかを識別する電力供給源識別手段5と、前記電力が電池10から供給されていると電力供給源識別手段5が識別した場合には、前記電力が外部電源8から供給されていると電力供給源識別手段5が識別した場合より温熱手段34a,34b,35a,35bからの出力が小さくなるように制御する温熱出力制御手段5と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気治療器に関し、特に、外部電源や電池から供給された電力によって人体の患部を温める温熱手段を備えた電気治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温熱手段としてヒータを設けた電極を人体の患部に貼付し、外部電源や電池から供給された電力によって前記電極に電流を流し、人体の患部を温めると共に低周波治療などを行う電気治療器が公知である。
【0003】
一般に、この種の電気治療器では、前記ヒータ使用時の消費電力が大きくなるため、電池によってヒータに電力を供給すると、電池の消耗が激しくなり、電気治療器を使用できる時間が短くなることから、ACアダプター等の外部電源を接続した場合のみ、ヒータを使用できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−128368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の電気治療器では、電池を電力供給源として使用する場合、前記ヒータが使用できないため、使用者が人体の患部に電極を貼付した時に不快な冷感を感じるおそれがあるといった問題があった。
【0006】
また、電池を使用する従来の電気治療器には、電池収納部の両端に電池のプラス電極及びマイナス電極と接触可能なように電池バネが設けられているが、この電池バネにおける電力損失が無視できない程に大きいことから、電池寿命が短くなり、経済的にも環境問題上も好ましくないといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、使用者に不快感を与えることなく、消費電力の低減化を図ると共に、電池寿命を延ばし、経済的で環境上も問題のない電気治療器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明は、外部電源又は電池から供給された電力によって人体の患部を温める温熱手段を備えた電気治療器であって、前記電力が前記外部電源と前記電池のいずれの供給源から供給されているかを識別する電力供給源識別手段と、前記電力が前記電池から供給されていると前記電力供給源識別手段が識別した場合には、前記電力が前記外部電源から供給されていると前記電力供給源識別手段が識別した場合より前記温熱手段からの出力が小さくなるように制御する温熱出力制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
そして、本発明に係る電気治療器において、前記温熱出力制御手段は、前記電力が前記電池から供給されていると前記電力供給源識別手段が識別した場合には、前記温熱手段からの出力温度が体温と同程度の温度となるようにPWM制御するのが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る電気治療器は、前記電池を収納可能な電池収納部を備え、該電池収納部の両端には前記電池のプラス電極及びマイナス電極と接触可能なように電池バネが設けられ、該電池バネは線径が0.6〜0.7mmで体積抵抗率が2〜6μΩcmの線バネにより形成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用者に不快感を与えることなく、消費電力の低減化を図ると共に、電池寿命を延ばし、経済的で環境上も問題のない電気治療器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気治療器の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電気治療器の本体の外観を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電気治療器の電池収納部及び該電池収納部に取り付けられる電池バネを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電気治療器の電池収納部及び該電池収納部に取り付けられる電池バネを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電気治療器の電池バネを示す側面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電気治療器の別のタイプの電池バネを示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電気治療器の温熱手段の駆動回路を示す回路図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電気治療器の温熱手段の制御例を示す図であり、(a)は電力供給源がACアダプターで強設定の場合の制御例を示し、(b)は電力供給源がACアダプターで弱設定の場合の制御例を示し、(c)は電力供給源が電池の場合の制御例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る電気治療器について説明する。なお、以下の説明では、互いに周波数の異なる2つの電流を人体内で交差させ、この時に生じる干渉波によって人体の患部に刺激を与えて治療を行う温熱干渉波治療器に本発明を適用した場合について例示して説明する。
【0014】
図1及び図2に示されているように、本実施の形態に係る電気治療器1は、本体2と、この本体2に接続される第1導子3a,3b及び第2導子4a,4bとを備えて構成されている。
【0015】
本体2は、例えば、長さが180mm、幅が85mm、厚さが30mmで、265gの重量を有し、携帯可能なように形成されており、マイクロコンピュータなどのCPU(Central Processing Unit)5と、第1導子3a,3bを接続するための第1出力チャンネル6と、第2導子4a,4bを接続するための第2出力チャンネル7と、ACアダプター8などの外部電源を接続するための電源ジャック9と、4本の単三型アルカリ乾電池などの電池10と、前記外部電源や電池10をON/OFFするための電源スイッチ(SW)11と、運転モードを切り替えるためのモード選択スイッチ(SW)12と、第1出力チャンネル6及び第2出力チャンネル7の出力を同時に増加又は減少させるための出力増減スイッチ(SW)13と、タイマー14と、前記電源や運転モードや出力の状態或いはタイマー14の残時間や電池10の残量などを表示するための液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)15と、各種プログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶部37とを備えて構成されている。
【0016】
また、本体2の内部には、図3及び図4に示されているように、電池10を収納可能な電池収納部16が設けられており、電池収納部16の両端にはそれぞれ電池バネ支持部17,18が形成されている。そして、この電池バネ支持部17,18には、それぞれ4個の挿入溝17a,17b,17c,17d及び18a,18b,18c,18dが横並びで形成されている。
【0017】
図3に示されているように、一方の電池バネ支持部17の挿入溝17a,17b,17c,17dには、図示左側から順に、プラス電極用の電池バネ19(+)、マイナス電極用の電池バネ20(−)、プラス電極用の電池バネ21(+)、及びマイナス電極用の電池バネ22(−)が図示矢印方向から挿入可能となっている。なお、図3では、マイナス電極用の電池バネ20(−)及び22(−)の一部分を省略して示している。
【0018】
また、図4に示されているように、他方の電池バネ支持部18の挿入溝18a,18b,18c,18dには、前記プラス電極用の電池バネ19(+)、マイナス電極用の電池バネ20(−)、プラス電極用の電池バネ21(+)、及びマイナス電極用の電池バネ22(−)に対向するように、図示右側から順に、マイナス電極用の電池バネ19(−)、プラス電極用の電池バネ20(+)、マイナス電極用の電池バネ21(−)、及びプラス電極用の電池バネ22(+)が図示矢印方向から挿入可能となっている。これにより、各電池バネ19(+),19(−)、20(+),20(−)、21(+),21(−)、及び22(+),22(−)は電池収納部16に収納される4本の電池10のプラス電極又はマイナス電極とそれぞれ接触可能となっている。なお、図4では、マイナス電極用の電池バネ19(−)及び21(−)の一部分を省略して示している。
【0019】
各電池バネ19(+),19(−)、20(+),20(−)、21(+),21(−)、及び22(+),22(−)は、例えば、リン青銅にニッケルをめっき処理した線バネにより形成されており、好ましくは線径が0.6〜0.7mm(より好ましくは、0.7mm)で体積抵抗率が2〜6μΩcm(より好ましくは、2μΩcm)となるように形成されている。
【0020】
図3に示されているように、プラス電極用の電池バネ19(+)は、同一平面上において互いに近接位置(例えば、1mmの離間距離)で対向するように反対側に屈曲された角部24,25を有する2個一対の屈曲部26,27を備え、各屈曲部26,27はコの字状に屈曲された半周長の連結部28により同一平面上で連結されており、各角部24,25に電池10のプラス電極が接触可能となっている。
【0021】
図3及び図5に示されているようにマイナス電極用の電池バネ20(−)とプラス電極用の電池バネ21(+)は一体に成形され、マイナス電極用の電池バネ20(−)は、渦巻状を成し、好ましくは総巻数が5巻以下(より好ましくは、4.5巻)となるように形成されている。また、プラス電極用の電池バネ21(+)は、同一平面上の互いに近接位置(例えば、2.8mmの離間距離)で電池バネ21(+)の挿入溝17cへの挿入方向に沿って平行に延出する平行延出部29を備えており、この平行延出部29の略中央部に電池10のプラス電極が接触可能となっている。なお、図5では、マイナス電極用の電池バネ20(−)の一部分を省略して示している。
【0022】
図3及び図6に示されているように、マイナス電極用の電池バネ22(−)は、巻き方向がマイナス電極用の電池バネ20(−)と反対の渦巻状を成し、好ましくは総巻数が5巻以下(より好ましくは、4.5巻)となるように形成されている。なお、図6では、マイナス電極用の電池バネ22(−)の一部分を省略して示している。
【0023】
また、図4に示されているように、マイナス電極用の電池バネ19(−)とプラス電極用の電池バネ20(+)、及びマイナス電極用の電池バネ21(−)とプラス電極用の電池バネ22(+)は、それぞれ一体に成形され、上記したマイナス電極用の電池バネ20(−)及びプラス電極用の電池バネ21(+)と左右対称形となるように形成されている。
【0024】
図1を再び参照すると、第1導子3a,3b及び第2導子4a,4bの先端には、それぞれ2枚1組の第1粘着パッド30a,30b及び第2粘着パッド31a,31bが取り付けられており、各第1粘着パッド30a,30b及び第2粘着パッド31a,31bには、それぞれ第1電極32a,32bと第2電極33a,33bが設けられていると共に、温熱手段として第1ヒータ34a,34bと第2ヒータ35a,35bが設けられている。
【0025】
この第1ヒータ34a,34b及び第2ヒータ35a,35bをPWM(Pulse Width Modulation)制御するため、本体2には駆動回路36が設けられている。図7に示されているように、この駆動回路36は、PNP型トランジスタQ1と、NPN型トランジスタQ2と、抵抗R1,R2,R3,R4とから成り、CPU5から所望に変化させたデューティ比のパルス電圧が入力部に印加されることにより、温熱手段である第1ヒータ34a,34b及び第2ヒータ35a,35bへ出力される電力が細かく制御されるようになっている。
【0026】
次に、上記した構成を備えた本発明の実施の形態に係る電気治療器1の動作について説明する。
【0027】
先ず、使用者が、電源スイッチ11により電源をONにした上で、モード選択スイッチ12及び出力増減スイッチ13から電気治療器1の運転モードや第1出力チャンネル6及び第2出力チャンネル7の出力を所望な運転モードや出力に設定すると、ACアダプター8又は電池10を電力の供給源として、CPU5から中周波のパルスが正弦波として出力される。このパルスは、各第1出力チャンネル6及び第2出力チャンネル7を介して第1粘着パッド30a,30b及び第2粘着パッド31a,31bに送出され、第1電極32a,32b及び第2電極33a,33bにおいて使用者が所望するレベルの出力がなされ、互いに干渉し合う。
【0028】
また、この時、前記電力がACアダプター8と電池10のいずれの供給源から供給されているかが、CPU5によって、ACアダプター8と電池10から供給される電圧の違い(例えば、ACアダプター8は10.5V、電池10は6.0V)が検出されることにより識別される。
【0029】
その結果、前記電力がACアダプター8から供給されているとCPU5によって識別されると、前記モード選択スイッチ12及び出力増減スイッチ13からの設定に応じて、図8(a)及び(b)に示されているように、第1粘着パッド30a,30b及び第2粘着パッド31a,31bの温度が43℃(弱設定の場合)〜50℃(強設定の場合)となるように、CPU5よってPWM制御される。
【0030】
一方、前記電力が電池10から供給されているとCPU5によって識別されると、図8(c)に示されているように、前記電力がACアダプター8から供給されていると識別された場合の強設定の時(図8(a)参照)の約50%のデューティ比となるように、CPU5によってPWM制御される。これにより、第1粘着パッド30a,30b及び第2粘着パッド31a,31bの温度は体温と同程度の35℃前後となる。
【0031】
なお、このように前記電力が電池10から供給されているとCPU5によって識別された場合、前記電力がACアダプター8から供給されていると判断された場合と比べて、温熱手段である第1ヒータ34a,34b及び第2ヒータ35a,35bからの出力が小さくなるように制御されれば上記した制御方法に限定されるものではない。
【0032】
このように上記した実施の形態に係る電気治療器1によれば、電池10を電力供給源とした場合であっても第1ヒータ34a,34b及び第2ヒータ35a,35bを使用することができ、第1粘着パッド30a,30b及び第2粘着パッド31a,31bの温度が体温と同程度の35℃前後となるため、使用者が第1粘着パッド30a,30b及び第2粘着パッド31a,31bを人体の患部に貼付した時に不快な冷感を感じることがなく、快適性の向上を図ることができる。
【0033】
また、各電池バネ19(+),19(−)、20(+),20(−)、21(+),21(−)、及び22(+),22(−)は、電気抵抗値が小さい材料製で、線径が太く、全長の短い線バネにより形成されているため、電力損失を抑制することができる。具体的には、図3〜図6に示すように、リン青銅にニッケルめっき処理した体積抵抗率が2〜6μΩcmで線径が0.7mmの線バネを使用し、マイナス電極用の電池バネ19(−),20(−),21(−),22(−)の総巻数を4.5巻とした場合、体積抵抗率が10〜20μΩcmで線径が0.6mmの硬鋼線を使用し、マイナス電極用の電池バネの総巻数を6.25巻とした従来の電池バネと比較して、電池バネにおける電力損失を20%低減することができた。したがって、上記した実施の形態に係る電気治療器1によれば、消費電力の低減化を図ることができると共に、電池寿命を延ばすことができ、経済的で良好な環境を提供することができる。
【0034】
なお、上記した本発明の実施の形態では、本発明に係る電気治療器を干渉波治療器に適用した場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は、この場合に限定されるものではない。すなわち、本発明は、例えば、人体の患部に低周波の電流を流して治療する低周波治療器の他、人体の筋肉に電気刺激を与えて運動能力の向上を図るトレーニング機器等、人体の患部を治療する狭い意味での治療器以外の機器にも適用可能であり、且つそれらの機器を包含するものである。
【符号の説明】
【0035】
1 電気治療器
5 CPU(電力供給源識別手段、温熱出力制御手段)
8 ACアダプター(外部電源)
10 電池
16 電池収納部
19(+) プラス電極用の電池バネ
19(−) マイナス電極用の電池バネ
20(+) プラス電極用の電池バネ
20(−) マイナス電極用の電池バネ
21(+) プラス電極用の電池バネ
21(−) マイナス電極用の電池バネ
22(+) プラス電極用の電池バネ
22(−) マイナス電極用の電池バネ
24 角部
25 角部
26 屈曲部
27 屈曲部
28 連結部
34a 第1ヒータ(温熱手段)
34b 第1ヒータ(温熱手段)
35a 第2ヒータ(温熱手段)
35b 第2ヒータ(温熱手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源又は電池から供給された電力によって人体の患部を温める温熱手段を備えた電気治療器であって、
前記電力が前記外部電源と前記電池のいずれの供給源から供給されているかを識別する電力供給源識別手段と、
前記電力が前記電池から供給されていると前記電力供給源識別手段が識別した場合には、前記電力が前記外部電源から供給されていると前記電力供給源識別手段が識別した場合より前記温熱手段からの出力が小さくなるように制御する温熱出力制御手段と、
を備えていることを特徴とする電気治療器。
【請求項2】
前記温熱出力制御手段は、前記電力が前記電池から供給されていると前記電力供給源識別手段が識別した場合には、前記温熱手段からの出力温度が体温と同程度の温度となるようにPWM制御する請求項1に記載の電気治療器。
【請求項3】
前記電池を収納可能な電池収納部を備え、該電池収納部の両端には前記電池のプラス電極及びマイナス電極と接触可能なように電池バネが設けられ、該電池バネは線径が0.6〜0.7mmで体積抵抗率が2〜6μΩcmの線バネにより形成されている請求項1又は2に記載の電気治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−40102(P2012−40102A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182477(P2010−182477)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】