説明

電気泳動表示装置とその駆動方法

【課題】優れた情報保護機能を備えた電気泳動表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の電気泳動表示装置は、表示部に表示させる画像データを記憶する記憶部に、前記表示部に表示されていた画像の可読性を低下させる可読阻害画像を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置とその駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気泳動表示装置は、電気泳動粒子及び分散媒を含む電気泳動素子を備えており、電気泳動素子自体が記憶性を有している。この記憶性により、電源供給を停止しても表示画像を保持することができる。その反面、表示画像を消去しても残像が生じやすいという課題がある。そのため、従来から種々の画像消去を行う駆動方法が提案されていた(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−149115号公報
【特許文献2】特開2007−206267号公報
【特許文献3】特開2007−206471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の駆動方法では、新たな画像を表示する前に、表示部全体を白表示していた。しかし、かかる駆動方法では、全面白表示により画像を消去する際に、元が白表示であった画素をさらに白表示動作させる電圧が印加されていた。そのため、表示内容を変更した際に、変更前に白表示であった領域の反射率が黒表示に近づいてしまい、残像として視認されるという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2記載の駆動方法では、新たな画像を表示する前に、黒表示の領域のみを白表示動作させる電圧を印加して表示部全体を白表示していた。これにより、特許文献1に記載の駆動方法における残像を抑えることが可能であった。
また、特許文献3記載の駆動方法では、白表示の領域のみを黒表示動作させる電圧を印加して表示部全体を黒表示した後、さらに表示部全体を白表示する駆動を行い、その後に新たな画像を表示していた。これにより、さらに残像を抑えることが可能であった。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3記載の駆動方法を用いたとしても、長時間の駆動によって蓄積された残像までも完全に消去することは難しく、電源オフ後に表示されていた内容を読み取れなくする上での課題となっていた。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、優れた情報保護機能を備えた電気泳動表示装置とその駆動方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気泳動表示装置は、一対の基板間に電気泳動素子を挟持してなり、表示部に画像を表示させる制御部と、前記表示部に表示させる画像データを記憶する記憶部とを備えた電気泳動表示装置であって、前記記憶部に、前記表示部に表示されていた画像の可読性を低下させる可読阻害画像を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、可読阻害画像を表示部に表示させ、以前表示されていた画像が読み取られるのを防止することができる電気泳動表示装置を実現できる。したがって、表示部に解消困難な残像が生じた場合であっても適切に情報を保護することができる。
【0010】
前記制御部は、前記表示部の表示画像を消去した後に、前記可読阻害画像を表示させる動作を実行することが好ましい。
この構成によれば、可読阻害画像を表示する前に表示画像を消去するので、以前に表示されれていた画像の可読性をさらに低下させることができ、より効果的に情報を保護することができる。
【0011】
前記制御部は、前記可読阻害画像を表示させた後に、前記表示部の表示コントラストを変更するコントラスト変更動作を実行することが好ましい。
この構成によれば、表示部に生じる残像の階調と可読阻害画像の階調とを調整することができ、以前表示されていた画像の残像を判別しにくくすることができる。これにより、さらに効果的に情報を保護することができる。
【0012】
前記コントラスト変更動作は、表示画像の少なくとも一部の画像成分を中間調表示に移行させる動作であることが好ましい。
表示部に生じる残像は、通常、黒表示や白表示ではなく中間階調である。そこで、このような構成とすることで、表示部に生じる残像の階調と可読阻害画像の階調とを近づけることができ、残像をさらに目立たなくすることができる。これにより、さらに効果的な情報保護が可能になる。
【0013】
前記制御部は、当該電気泳動表示装置の電源オフ動作の実行期間に、前記表示部に前記可読阻害画像を表示させる動作を実行することが好ましい。
この構成によれば、電気泳動表示装置を電源オフする際に可読阻害画像を表示させ、以前表示されていた画像を読み取れなくすることができる。これにより、使用していないときに適切に情報を保護することができる電気泳動表示装置となる。
【0014】
前記制御部は、前記表示部に表示させる前記画像データに所定の識別情報が含まれているか否かに基づいて、前記可読阻害画像の表示動作の実行を選択することが好ましい。
この構成によれば、可読阻害画像の表示動作を必要なときにのみ実行するので、電力消費を抑えることができる。また、かかる構成によれば、電気泳動素子の記憶性を利用して同一画像を表示し続ける用途にも好適に使用することができる。
【0015】
前記可読阻害画像が、文字及び図形の少なくとも一方を含むパターン画像であることが好ましい。あるいは、前記可読阻害画像が、前記表示部の縦横に延在する画像成分と、前記表示部の斜め方向に延在する画像成分とを含む画像であることが好ましい。
このような可読阻害画像を用いることで、残像の生じやすい電気泳動表示装置における情報保護を確実に行うことができる。
【0016】
次に、本発明の電気泳動表示装置の駆動方法は、一対の基板間に電気泳動素子を挟持してなる電気泳動表示装置の駆動方法であって、表示部に表示されていた画像の可読性を低下させる可読阻害画像を前記表示部に表示する情報保護ステップを有することを特徴とする。
【0017】
この駆動方法によれば、可読阻害画像を表示部に表示させることで、以前表示されていた画像が読み取られるのを防止することができる。したがって、表示部に解消困難な残像が生じた場合であっても適切に情報を保護することができる。
【0018】
前記可読阻害画像を表示するに先立って表示画像を消去する表示消去ステップを有することが好ましい。
この駆動方法によれば、可読阻害画像を表示する前に表示画像を消去するので、以前に表示されれていた画像の可読性をさらに低下させることができ、より効果的に情報を保護することができる。
【0019】
前記可読阻害画像を表示させた後に前記表示部の表示コントラストを変更するコントラスト変更ステップを有することが好ましい。
この駆動方法によれば、表示部に生じる残像の階調と可読阻害画像の階調とを調整することができ、以前表示されていた画像の残像を判別しにくくすることができる。これにより、さらに効果的に情報を保護することができる。
【0020】
前記コントラスト変更ステップにおいて、表示画像の少なくとも一部の画像成分を中間調表示に移行させることが好ましい。
表示部に生じる残像は、通常、黒表示や白表示ではなく中間階調である。そこで、このような駆動方法とすることで、表示部に生じる残像の階調と可読阻害画像の階調とを近づけることができ、残像をさらに目立たなくすることができる。これにより、さらに効果的な情報保護が可能になる。
【0021】
前記情報保護ステップが、当該電気泳動表示装置の電源を停止する電源オフステップに含まれることが好ましい。
この駆動方法によれば、電気泳動表示装置を電源オフする際に可読阻害画像を表示させ、以前表示されていた画像を読み取れなくすることができる。これにより、使用していないときに適切に情報を保護することができる電気泳動表示装置となる。
【0022】
入力される画像データに所定の識別情報が含まれているときに、前記情報保護ステップを実行することが好ましい。
この駆動方法によれば、可読阻害画像の表示動作を必要なときにのみ実行するので、電力消費を抑えることができる。また、この駆動方法によれば、電気泳動素子の記憶性を利用して同一画像を表示し続ける用途にも好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態に係る電気泳動表示装置の外観図。
【図2】電気泳動表示装置の内部構成を示すブロック図。
【図3】電気泳動表示パネルの概略構成図。
【図4】実施形態に係る第1の駆動方法を示すフローチャート。
【図5】第1の駆動方法における表示部の状態遷移を示す説明図。
【図6】可読阻害画像の第1構成例を示す図。
【図7】可読阻害画像の第2構成例を示す図。
【図8】可読阻害画像の第3構成例を示す図。
【図9】可読阻害画像の第4構成例を示す図。
【図10】実施形態に係る第2の駆動方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明の電気泳動表示装置とその駆動方法について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態である電気泳動表示装置100の外観図である。図2は、本実施形態の電気泳動表示装置100の内部構成を示すブロック図である。
図1に示すように、電気泳動表示装置100は、筐体101と、筐体101の開口部に装着された電気泳動表示部112とを備えている。筐体101には、ページ送りボタン105と、ページ戻しボタン106と、連続送りボタン107と、決定ボタン108と、電源ボタン116とが設けられている。
【0026】
電気泳動表示装置100は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit;制御部)102、ワークメモリー(RAM(Random Access Memory))103、プログラムメモリー(ROM(Read Only Memory);記憶部)104、入力I/F109、VRAM(Video RAM)110、表示部制御回路111、電気泳動表示部112、タッチパネルI/F114、及びタイマー115を備えており、各部はバス118を介して信号を授受可能に接続されている。タッチパネルI/F114には、タッチパネル113が接続されている。さらに、表示部制御回路111には、電気泳動表示パネル119に備えられた走査線駆動回路120とデータ線駆動回路121とが接続されている。
【0027】
入力I/F109には、入力ボタン130が接続されている。入力ボタン130は、図1に示したページ送りボタン105、ページ戻しボタン106、連続送りボタン107、決定ボタン108及び電源ボタン116を含む。
【0028】
入力I/F109は、ページ送りボタン105が押下操作されるとページ送り信号をCPU102に出力する。また、ページ戻しボタン106が押下操作されるとページ戻し信号をCPU102に出力し、連続送りボタン107が押下操作されると連続送り信号をCPU102に出力する。さらに、電源ボタン116が押下操作されると、電源制御信号をCPU102に出力する。
【0029】
CPU102は、プログラムメモリー104に格納された基本制御プログラムやアプリケーションプログラム等の各種プログラム及びデータを読み込み、それら各種プログラム及びデータをワークメモリー103内に設けられるワークエリアに展開実行して、電気泳動表示装置100が備える各部の制御を実行する。
【0030】
例えば、CPU102は、入力ボタン130の操作に基づいて入力I/F109からページ送り信号が出力されると、電気泳動表示部112に表示されているドキュメントの次ページに対応する画像データ(以下、ラスタデータとも呼ぶ。)を生成し、そのラスタデータをVRAM110に格納する。
【0031】
同様に、入力I/F109からページ戻し信号が出力された場合には、ドキュメントの前ページに対応するラスタデータを生成してVRAM110に格納する。また、連続送り信号が出力された場合にはドキュメントの次ページ以降に対応するラスタデータを次々と生成し、VRAM110に順次格納する。
【0032】
また、入力I/F109から電源制御信号が出力された場合には、CPU102は、電気泳動表示装置100の作動状態に応じて、電源投入動作、電源オフ動作、スタンバイ動作などを実行する。すなわち、電気泳動表示装置100が電源オフ状態又はスタンバイ状態であれば、電気泳動表示部112への画像表示が可能な動作状態へ移行させるために、図2に示した各回路への電源供給を開始する電源投入動作を実行する。一方、電気泳動表示装置100が通電状態にある場合には、電源オフ状態又はスタンバイ状態に移行させるために、各回路の一部又は全部への電源供給を停止する動作を実行する。
【0033】
ワークメモリー103は、CPU102が各種プログラムに従って上記処理を実行するときに、各種プログラムを展開するワークエリアを形成するとともに、CPU102により実行される各種処理に係るデータを展開するための一時記憶領域を形成する。
なお、ワークメモリー103としては、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)やMRAM(Magnetoresistive random access memory)等の不揮発性メモリーのほか、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリーを使用することができる。
【0034】
プログラムメモリー104は、CPU102により実行される基本制御プログラム、各種アプリケーションプログラム及びこれら各プログラムに係るデータ等を格納する。プログラムメモリー104に格納されるデータには、プログラムの実行に使用されるデータのほか、プリセットの画像データも含まれる。本実施形態の場合、このプリセットの画像データに、後述する可読阻害画像が含まれている。
【0035】
そして、プログラムメモリー104は、CPU102からの読み出し要求に従って、それら各種プログラムやデータをCPU102に出力する。なお、プログラムメモリー104内の各種プログラム及びデータは、いずれもCPU102により読み取り及び実行可能な形式で格納されている。
【0036】
タッチパネルI/F114には、電気泳動表示パネル119の前面側(表示面側)に配設されたタッチパネル113が接続されている。そして、タッチパネル113が押圧操作されると操作位置を示すタッチパネル信号をCPU102に出力する。タッチパネル113としては任意の方式のものを用いることができる。すなわち、抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルを用いることができる。
【0037】
VRAM110は、CPU102からの書き込み要求に従ってページごとの画像のラスタデータを格納する。また、格納したラスタデータを、表示部制御回路111からのデータ送出要求に従って電気泳動表示部112のデータ線駆動回路121に出力する。表示部制御回路111は、VRAM110に格納されているラスタデータから電気泳動表示部112に表示させるための各種制御信号を生成し、電気泳動表示部112に供給する。
【0038】
電気泳動表示部112は、複数の画素がアレイ状に形成された電気泳動表示パネル119、つまり電力の供給を止めてもそれまでの表示内容を保持可能な電気泳動素子を具備したパネルを有する。
【0039】
ここで図3は、電気泳動表示パネル119の回路構成図である。
電気泳動表示パネル119は、図3に示すように、表示部(画素形成領域)119aの一辺端部に沿って設けられた走査線駆動回路120と、表示部119aの他の一辺端部に沿って設けられたデータ線駆動回路121とを備えている。表示部119aには、走査線駆動回路120から延びる複数の走査線36と、データ線駆動回路121から延びる複数のデータ線38と、マトリクス状に配列された複数の画素40とが設けられている。
【0040】
画素40は、走査線36及びデータ線38と接続された選択トランジスタ41(スイッチング素子)と、選択トランジスタ41と接続された画素電極35と、選択トランジスタ41及び画素電極35と接続された保持容量43とを有する。共通電極37は複数の画素40に共通の電極であり、共通電極37と画素電極35との間に電気泳動素子32が挟持されている。
【0041】
走査線駆動回路120は、m本の走査線36(G1、G2、…、Gm)を介して各々の画素40に接続されており、これら1行目からm行目までの走査線36を順次選択し、画素40に設けられた選択トランジスタ41のオンタイミングを規定する選択信号を、選択した走査線36を介して供給する。
データ線駆動回路121は、n本のデータ線38(S1、S2、…、Sn)を介して各々の画素40に接続されており、画素40の各々に対して、VRAM110から出力されるラスタデータを入力する。これにより、電気泳動表示パネル119に、VRAMに保持されたページの画像が表示される。
【0042】
なお、本実施形態では走査線駆動回路120とデータ線駆動回路121とを備えたアクティブマトリクス方式の電気泳動表示パネル119を例示しているが、電気泳動表示パネル119としてはセグメント駆動方式の電気泳動表示パネルであってもよい。また、走査線駆動回路120及びデータ線駆動回路121以外の駆動回路(共通電極や他のグローバル配線を駆動する駆動回路等)が設けられ、表示部制御回路111に接続されている構成であってもよい。
【0043】
[第1の駆動方法]
次に、本実施形態の電気泳動表示装置の駆動方法について、図4から図9を参照して説明する。
図4は、本実施形態の第1の駆動方法を示すフローチャートである。図5は、第1の駆動方法における表示部119aの状態遷移を示す説明図である。
【0044】
本実施形態の第1の駆動方法は、図4に示すように、表示消去ステップS101と、可読阻害画像表示ステップS102と、コントラスト変更ステップS103とを含む情報保護ステップS100を有する。以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0045】
まず、情報保護ステップS100が実行される際には、表示部119aには、通常、図5(a)に示すように、操作者に提供された画像が表示されている。
情報保護ステップS100が開始され、表示消去ステップS101に移行すると、図5(a)に示す黒表示の領域A(文字「K」の画像成分)を選択的に消去する処理が実行される。具体的には、CPU102から表示部制御回路111に制御信号が出力され、表示部制御回路111は、制御信号に基づいて走査線駆動回路120及びデータ線駆動回路121を駆動する。これにより、黒表示されている領域Aの画素が白表示され、図5(b)に示すように、表示部119aの全体が白表示状態となる。
【0046】
より詳しくは、走査線駆動回路120から出力される選択信号によって領域Aに属する画素40を含む画素群が選択され、これらの選択された画素40の画素電極35に対してデータ線駆動回路121から白表示に対応する画像信号(例えばローレベルの電位)が入力される。また、共通電極37に白表示に対応する電位(例えばハイレベルの電位)が入力される。これにより、画素電極35と共通電極37との電位差により電気泳動素子32が駆動され、領域Aに属する画素40が白表示となる。
ここで、このような表示消去ステップS101によって図5(a)に示した文字「K」を消去した場合でも、電圧印加履歴の差に起因する残像や、長時間の駆動によって蓄積された残像などにより、図5(b)の二点鎖線に示すように文字「K」が視認されることがある。
【0047】
次に、可読阻害画像表示ステップS102では、図5(c)に示すように、表示部119aに可読阻害画像Pxが表示される。図5に示した例では、可読阻害画像Pxは、細かい文字列「POWEROFF」が一面に配置された画像である。
【0048】
可読阻害画像表示ステップS102において、CPU102は、プログラムメモリー104に記憶されている可読阻害画像Pxを読み出してワークメモリー103に展開する。そして、ワークメモリー103に展開された可読阻害画像Pxのラスタデータを生成し、VRAM110に格納する。またCPU102は、表示部制御回路111に制御信号を出力する。
【0049】
表示部制御回路111は、入力された制御信号に基づいて走査線駆動回路120及びデータ線駆動回路121を駆動する。そして、走査線駆動回路120及びデータ線駆動回路121により、VRAM110に格納されているラスタデータが表示部119aの画素40に入力される。これにより、図5(c)に示すように、表示部119aに可読阻害画像Pxが表示される。
【0050】
可読阻害画像Pxは、表示部119aに表示させることで、表示部119aに以前表示されていた画像の可読性を低下させる画像である。可読阻害画像Pxを表示することで、文字「K」として視認される上記の残像が残っていたとしても、図5(c)に示すように、図5(a)に示した文字「K」をほぼ判別できなくすることができる。
可読阻害画像としては、図5に示したもののほか、図6から図9に示す可読阻害画像Px1〜Px4を例示することができる。
【0051】
図6に示す可読阻害画像Px1は、十字形の図形と、X字形の図形とを図示縦方向及び横方向に交互に配列した画像である。すなわち、図示縦横方向に延びる画像成分と、図示斜め方向に延びる画像成分とを含む画像である。
【0052】
図7に示す可読阻害画像Px2は、格子状の図形C1と、図示斜め45°方向に延びるストライプ状の2つの図形C2、C3を重ね合わせた画像である。可読阻害画像Px2も、図示縦横方向に延びる直線状の画像成分と、図示斜め方向に延びる直線状の画像成分とを含む。
なお、図7では、可読阻害画像Px2の画像成分を判別しやすくするために、各図形の大きさを異ならせて表示しており、実際の可読阻害画像Px2の模様は、3つの図形C1〜C3が重なった部分の模様となる。
【0053】
図8に示す可読阻害画像Px3は、「a」〜「z」を配列した文字列を敷き詰めた画像であり、図5(c)に示した可読阻害画像Pxと同種のものである。可読阻害画像Px3には任意の文字、記号などを用いることができ、可読阻害画像Pxのように意味のある文字列を配置してもよく、無意味な文字列の配列であってもよい。さらに、構成要素である文字を回転させたり、反転させたものを混在させてもよい。
【0054】
本例のように文字や記号により可読阻害画像を形成する場合にも、図示縦横方向に延びる画像成分と、図示斜め方向に延びる画像成分を含むように文字列を選択することが好ましい。また、図8に示すように、文字同士が一部重なり合うようにすることで、より高い可読阻害効果を得ることができる。
【0055】
図9に示す可読阻害画像Px4は、複数サイズのドットをランダムに配列したランダムパターンからなる画像である。画像成分であるドットは任意のサイズとすることができるが、表示部119aに表示される文字よりも小さいサイズとすることが好ましい。また、ドットの配置は、ドットが配置されない領域がドットと同等のサイズとなるようにすることが好ましい。
【0056】
なお、可読阻害画像は、上記に例示した可読阻害画像Px1〜Px4に限定されるものではなく、以前表示されていた画像の可読性を低下させることができる模様の画像であれば、任意の画像を用いることができる。例えば、可読阻害画像Px1〜Px4を反転させた画像や、可読阻害画像Px1〜Px4を適宜組み合わせた画像も、可読阻害画像として好適に用いることができる。
【0057】
次に、コントラスト変更ステップS103に移行すると、CPU102は、表示部制御回路111に対して表示部119aの表示コントラストを低下させる制御信号を出力する。本実施形態の場合、表示コントラストを低下させる動作として、表示部119aの表示画像を構成する黒表示の画素40を、中間調表示に移行させる動作を実行する。
【0058】
より詳しくは、黒表示の画素40に対して、短時間の白表示動作を行わせることで、黒表示をグレー表示に変更する。例えば、表示消去ステップS101を、電気泳動素子32への電圧印加時間を短縮して実行することで、図5(c)では黒表示されていた文字列をグレー表示に移行させることができ、グレー表示の可読阻害画像Pxが表示された状態とすることができる。
【0059】
コントラスト変更ステップS103を実行することで、以前表示されていた画像(図5(a)に示す文字「K」)をさらに目立たなくすることができ、極めて判別されにくい状態とすることができる。
これは、表示部119aに生じる残像が、明確に黒表示あるいは白表示された画像成分により構成されるのではなく、消去が不十分であるためにグレー表示となった画像成分により構成されるからである。そのため、可読阻害画像Pxをグレー表示に移行させることで、可読阻害画像Pxと残像との反射率の差異が小さくなり、残像がさらに判別されにくくなって、効果的に可読性を低下させることができる。
【0060】
なお、コントラスト変更ステップS103におけるグレー表示の階調は、任意の階調に設定することができる。すなわち、少なくとも中間調表示であれば、残像の階調に近づくため、残像を目立たなくする効果を得ることができる。残像を目立たなくする効果をより高めるためには、表示部119aの残像の階調と同階調のグレー表示とすることが好ましい。
【0061】
以上に説明した情報保護ステップS100は、任意のタイミングで実行可能なアプリケーションプログラムとしてプログラムメモリー104に格納されている。すなわち、CPU102は、操作者からの指示、又は基本制御プログラムからのアプリケーション呼び出しに応じて、プログラムメモリー104から情報保護ステップS100のプログラムを読み出してワークメモリー103に展開し、ステップS101〜S103を順次実行する。
【0062】
例えば、図1に示した電源ボタン116が押下操作され、電源オフ動作又はスタンバイ動作が開始された場合に、CPU102において実行される電源オフシーケンス又はスタンバイシーケンスの一部として、情報保護ステップS100が実行される。この場合には、図1に示した各回路への電源供給が停止される前に、情報保護ステップS100が実行され、図5(d)に示した表示部119aに可読阻害画像Pxがグレー表示された状態とされる。その後に、各回路への電源供給が停止される。
【0063】
あるいは、電気泳動表示装置100が長時間操作されない場合に、情報保護ステップS100が実行されるようにしてもよい。この場合、通常の画像表示動作が終了した後、タイマー115を用いて入力ボタン130が操作されない時間をカウントする。そして、入力ボタン130が一定時間操作されないときに、情報保護ステップS100を実行し、表示部119aを可読阻害画像Pxがグレー表示された状態に移行させる。
【0064】
以上詳細に説明したように、本実施形態の電気泳動表示装置100及びその駆動方法によれば、情報保護ステップS100によって、表示部119aに可読阻害画像Px(Px1〜Px4)を表示させることができる。これにより、例えば電気泳動表示装置100を電源オフ状態とする場合や、入力ボタン130が一定時間操作されない場合などに、電気泳動表示部112に表示されている画像を、可読阻害画像Pxにより読み取れなくすることができる。したがって、電気泳動素子32の残像により、表示されていた画像が読み取られてしまうのを防止することができ、電気泳動表示装置100を用いて表示される情報を効果的に保護することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、表示消去ステップS101において、領域Aの画像成分を選択的に消去することとしたが、他の消去方法を用いてもよい。例えば、表示部119aの全体を白表示又は黒表示させて表示画像を消去してもよい。また、図5(a)に示した画像の反転画像を表示部119aに表示させた後、表示部119aの全体を消去してもよい。さらに、図5(a)に示した白表示の領域を選択的に黒表示させ、これにより全体を黒表示することで画像を消去してもよい。このような消去ステップによって図5(a)に示した文字「K」を消去した場合でも、電圧印加履歴の差などに起因して図5(b)のように文字「K」の残像が視認されることがあるが、可読阻害画像Pxの作用によりこの残像の可読性を低下させることができる。
【0066】
また場合によっては、表示消去ステップS101を実行しない駆動方法とすることもできる。すなわち、図5(a)に示した表示部119aに対して、図5(c)に示す可読阻害画像Pxを上書きしてもよい。この場合にも、可読阻害画像Pxの作用により相当程度可読性を低下させることができるため、可読阻害画像Pxの模様によっては十分な効果を得ることができる。表示消去ステップS101を省略することで、情報保護ステップS100における電力消費を抑えることができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、コントラスト変更ステップS103により可読阻害画像Pxをグレー表示に移行させ、残像をさらに目立たなくすることとしたが、図5(c)に示した表示状態で十分な可読阻害効果が得られる場合には、コントラスト変更ステップS103を省略することも可能である。この場合にも、情報保護ステップS100における電力消費を抑えることができる。
【0068】
[第2の駆動方法]
次に、本実施形態の電気泳動表示装置の第2の駆動方法について、図10を参照して説明する。
図10は、本実施形態の第2の駆動方法を示すフローチャートである。
図10に示すように、第2の駆動方法に係る情報保護ステップS200は、識別情報判定ステップS201と、第1の表示消去ステップS202と、可読阻害画像表示ステップS203と、コントラスト変更ステップS204と、第2の表示消去ステップS205とを含む。
【0069】
識別情報判定ステップS201は、図5(a)に示した画像に、情報保護を要する画像である旨の識別情報が付与されているか否かを判定するステップである。識別情報判定ステップS201において、識別情報が付与されている場合に、第1の表示消去ステップS202、可読阻害画像表示ステップS203、及びコントラスト変更ステップS204が実行される。一方、識別情報が付与されていない場合には、第2の表示消去ステップS205が実行される。
【0070】
第1の表示消去ステップS202、可読阻害画像表示ステップS203、及びコントラスト変更ステップS204は、第1の駆動方法における情報保護ステップS100と同様である。また、第2の表示消去ステップS205は、第1の駆動方法における表示消去ステップS101と同様である。
【0071】
第2の駆動方法では、CPU102は、入力された画像データに基づく画像を表示部119aに表示させる際に、画像データに識別情報が付与されているか否かを判定する。そして、識別情報が付与されている場合にのみ、可読阻害画像Pxを表示部119aに表示させ、その他の場合には単に表示部119aの画像を消去する。
【0072】
例えば、電源オフシーケンスに情報保護ステップS200が含まれている場合には、電源ボタン116の押下操作によって電源オフシーケンスが開始されたときに表示部119aに表示されている画像の種類によって異なる動作をする。すなわち、表示されている画像が識別情報を付与された情報保護を要する画像である場合には、表示部119aに可読阻害画像Pxが表示された状態で電源オフ状態に移行する。一方、識別情報を付与されていない画像が表示されている場合には、表示部119aが消去された状態で電源オフ状態に移行する。
【0073】
また、タイマー115による非操作時間の監視を行うシーケンスに情報保護ステップS200が含まれている場合には、シーケンスが開始されたときに表示部119aに表示されている画像が情報保護を要する画像であれば、所定の非操作時間の経過後に可読阻害画像Pxが表示される。一方、表示されている画像が識別情報を含まないものである場合には、所定の非操作時間の経過後に、表示部119aの消去動作が実行される。
【0074】
以上の第2の駆動方法では、画像データに付与された識別情報に基づいて可読阻害画像表示ステップS203等の実行の要否を選択する。これにより、情報保護を要する画像が表示されているときにのみ可読阻害画像表示ステップS203等を実行するので、電気泳動表示装置100の電力消費を抑えることができる。
【0075】
なお、第2の駆動方法において、第2の表示消去ステップS205は省略することができる。すなわち、識別情報が付与されていない場合には、表示されている画像は情報保護を要しない画像であり、電気泳動素子32は画像を表示させた状態であっても電力を消費しないため、あえて表示消去を行わなくてもよい。また、第2の表示消去ステップS205を省略することで、電源オフ後にも表示を残しておく動作形態や、長時間同じ画像を表示させておく動作形態も選択可能になる。
【0076】
また第2の駆動方法においても、第1の駆動方法と同様に、第1の表示消去ステップS202、及びコントラスト変更ステップS204を場合によっては省略可能である。このように一部のステップを省略することで、さらに電力消費を抑えることができる。
【符号の説明】
【0077】
100 電気泳動表示装置、102 CPU(制御部)、103 ワークメモリー、104 プログラムメモリー、105 ページ送りボタン、106 ページ戻しボタン、107 連続送りボタン、108 決定ボタン、109 入力I/F、110 VRAM、111 表示部制御回路、112 電気泳動表示部、113 タッチパネル、114 タッチパネルI/F、115 タイマー、116 電源ボタン、118 バス、119 電気泳動表示パネル、120 走査線駆動回路、121 データ線駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に電気泳動素子を挟持してなり、表示部に画像を表示させる制御部と、前記表示部に表示させる画像データを記憶する記憶部とを備えた電気泳動表示装置であって、
前記記憶部に、前記表示部に表示されていた画像の可読性を低下させる可読阻害画像を備えることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記表示部の表示画像を消去した後に、前記可読阻害画像を表示させる動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記可読阻害画像を表示させた後に、前記表示部の表示コントラストを変更するコントラスト変更動作を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
前記コントラスト変更動作は、表示画像の少なくとも一部の画像成分を中間調表示に移行させる動作であることを特徴とする請求項3に記載の電気泳動表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、当該電気泳動表示装置の電源オフ動作の実行期間に、前記表示部に前記可読阻害画像を表示させる動作を実行することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記表示部に表示させる前記画像データに所定の識別情報が含まれているか否かに基づいて、前記可読阻害画像の表示動作の実行を選択することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項7】
前記可読阻害画像が、文字及び図形の少なくとも一方を含むパターン画像であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項8】
前記可読阻害画像が、前記表示部の縦横に延在する画像成分と、前記表示部の斜め方向に延在する画像成分とを含む画像であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項9】
一対の基板間に電気泳動素子を挟持してなる電気泳動表示装置の駆動方法であって、
表示部に表示されていた画像の可読性を低下させる可読阻害画像を前記表示部に表示する情報保護ステップを有することを特徴とする電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項10】
前記可読阻害画像を表示するに先立って表示画像を消去する表示消去ステップを有することを特徴とする請求項9に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項11】
前記可読阻害画像を表示させた後に前記表示部の表示コントラストを変更するコントラスト変更ステップを有することを特徴とする請求項9又は10に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項12】
前記コントラスト変更ステップにおいて、表示画像の少なくとも一部の画像成分を中間調表示に移行させることを特徴とする請求項11に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項13】
前記情報保護ステップが、当該電気泳動表示装置の電源を停止する電源オフステップに含まれることを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項14】
入力される画像データに所定の識別情報が含まれているときに、前記情報保護ステップを実行することを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−210898(P2010−210898A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56476(P2009−56476)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】