説明

電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、電子機器及び電子時計

【課題】 DCバランスをとりつつも、残像が生じる可能性が高い場合に予備表示動作を実効することで消費電力を増大させず、効果的に残像の発生を抑える電気泳動表示装置の駆動方法等を提供する。
【解決手段】 一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素からなる表示部を含み、一方の前記基板と前記電気泳動素子との間に前記画素に対応する画素電極が形成され、他方の前記基板と前記電気泳動素子との間に、複数の前記画素電極と対向する共通電極が形成された電気泳動表示装置の駆動方法であって、前記表示部の表示画像を第1の画像から第2の画像に更新する画像更新工程S6と、前記画像更新工程の前に予備表示画像を表示する予備表示工程S4と、を含み、前記予備表示工程は、前記第2の画像が面積階調領域を含む場合(S2Y)に実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、電子機器及び電子時計等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源を切っても画像を保持できるメモリー性を有する表示パネルが開発され、電子時計等にも使用されている。メモリー性を有する表示パネルとしては、EPD(Electrophoretic Display)すなわち電気泳動表示装置や、メモリー性液晶表示装置等が知られている。
【0003】
電気泳動表示装置は、視野角の広さ、コントラストの高さ、柔軟性、反射型ディスプレイであるゆえの低消費電力などの優れた利点がある。
【0004】
一方で、特許文献1に記載されているように、電気泳動表示装置において電極間に印加される電界の時間平均がほぼゼロでなければ、装置の動作寿命が短くなる恐れがある。つまり、電気泳動表示装置の長期信頼性を確保するためには、DCバランスがとられること、すなわち印加される電界の時間平均がほぼゼロになることが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−530201号公報
【特許文献2】特開2008−268853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、電気泳動表示装置が様々な機器に適用されるにつれて、表示内容も多様化している。例えば、表示画面に文字や数字を表示するだけでなく、写真、模様やイラスト等までも表示することがある。表示内容の大きな変更(例えば、文字表示から写真表示への変更)を伴う画像の更新をする場合、更新前の画像の一部が残像として視認される場合がある。このような残像は、電気泳動表示装置の表示品質を低下させてしまう。
【0007】
ここで、いくつかの実験によると、このような残像は更新後の画像の面積階調領域において発生しやすいことがわかっている。なお、面積階調領域については後述する。また、実験結果から、面積階調領域以外では残像が目立たないこともわかっている。
【0008】
特許文献2の発明では、画像の更新をする場合に予備表示動作を行うことで残像が生じないようにしている。このとき、予備表示動作に用いる画像(以下、予備表示画像)について、データの転送を不用とすることで消費電力が増大しないようにしている。しかし、接続線の接続状態を切り換える複雑な制御を必要とし、予備表示画像も単一色や元画像又は新画像の反転画像に限られる。また、残像が生じにくい場合でも画一的に予備表示動作を行うため、画像の更新処理に時間がかかる可能性がある。そのため、例えばフレームレートを高めようとした場合に、画像の更新処理にかかる時間でフレームレートの上限が決まる恐れがあった。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、DCバランスをとりつつも、残像が生じる可能性が高い場合に予備表示動作を実効することで消費電力を増大させず、効果的に残像の発生を抑える電気泳動表示装置の駆動方法等を提供する。なお、不必要な場合には予備表示動作を実行しないので、画像の更新処理の平均時間を早める効果も期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素を有する表示部を含み、一方の前記基板と前記電気泳動素子との間に前記画素に対応する画素電極が形成され、他方の前記基板と前記電気泳動素子との間に、複数の前記画素電極と対向する共通電極が形成された電気泳動表示装置の駆動方法であって、前記表示部の表示画像を第1の画像から第2の画像に更新する画像更新工程と、前記画像更新工程の前に予備表示画像を表示する予備表示工程と、を含み、前記予備表示工程は、前記第2の画像が、前記第1色および前記第2色の一方が2画素以上隣り合って配置されることがない面積階調領域を含む場合に実行される。
【0011】
(2)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記画像更新工程は、前記第2の画像を反転表示する反転更新工程と、前記第2の画像を正転表示する正転更新工程と、を含んでもよい。
【0012】
(3)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記予備表示工程は、前記予備表示画像を反転表示する反転予備工程と、前記予備表示画像を正転表示する正転予備工程と、を含んでもよい。
【0013】
これらの発明によれば、表示部の表示画像を第1の画像(元画像)から第2の画像(新画像)に更新する画像更新工程の前に、第2の画像の特徴に基づいて、必要な場合に予備表示画像を表示する予備表示工程を実行する。そのため、効果的に残像の発生を抑えながらも、不必要な場合には予備表示工程を実行しないので消費電力を増大させることもない。また、予備表示工程を実行しない場合には、表示画像の更新処理にかかる時間が短縮されるので、全体として表示画像の更新の平均処理時間を短くできる。
【0014】
ここで、電気泳動表示装置の表示部は、少なくとも第1色と第2色を表示できる。つまり、第1色と第2色は、電気泳動表示装置が最低限表示可能な基本色である。例えば、二粒子系マイクロカプセル型の電気泳動方式では、分散液は無色透明、電気泳動粒子は白色又は黒色のものがある。この方式の電気泳動表示部は、白色および黒色を基本色として少なくとも2色を表示できる。このとき、第1色として電気泳動粒子の1つの色である黒色を割り当て、第2色として白色を割り当ててもよい。逆に、第1色として白色を、第2色として黒色を割り当ててもよい。
【0015】
予備表示工程は、第2の画像が面積階調領域を含む場合に実行される。面積階調領域は、第1色(例えば黒色)および第2色(例えば白色)の一方が2画素以上隣り合って配置されることがない領域をいう。具体的には、1画素の黒色表示に隣り合う画素が全て白色であれば面積階調領域であると判断される。第2の画像(新画像)が面積階調領域を含む場合に、第1の画像(元画像)の文字や数字等が残像となりやすいことが知られている。そこで、これらの発明は、第2の画像が面積階調領域を含む場合に予備表示工程を実行する。そのため、無駄なく効果的に残像の発生を抑えることができる。
【0016】
例えばCPU(電気泳動表示装置の外部又は内部のコントローラー)が、そのプログラムによって第2の画像を把握できる場合がある。このような場合には、第2の画像が面積階調領域を含むか否かを事前に知ることができるので、それに応じて予備表示工程を実施するか否かを決定してもよい。なお、面積階調領域は、特に写真、模様、イラスト等の濃淡を表現するのに用いられる。ここで、文字や数字等を表示する場合には、その文字や数字等は使用者に正しく認識されるように、少なくとも2画素以上の連続した線や点で構成される。これに対し、写真、模様、イラスト等では、濃淡を表現するために1画素の点が散在する面積階調領域が使用されることが多い。よって、プログラム等による事前の把握ができない場合でも、第2の画像のデータが例えばVRAM(Video RAM)に読み込まれたときに、各画素について隣り合う画素に同色の画素があるか否かを調べることにより、面積階調領域を含むか否かを判断できる。そして、面積階調領域を含む場合には、別のVRAMに予備表示画像のデータを読み込み、予備表示工程を実行してもよい。
【0017】
ここで、画像更新工程と予備表示工程は、それぞれの工程内で反転表示、正転表示を行ってもよい。つまり、画像更新工程は、第2の画像を反転表示する反転更新工程と、正転表示する正転更新工程とを含んでもよい。また、予備表示工程は、予備表示画像を反転表示する反転予備工程と、正転表示する正転予備工程と、を含んでもよい。このとき、画像更新工程と予備表示工程は、それぞれの工程内でDCバランスをとることが可能になる。すると、電気泳動表示装置の長期信頼性を確保することができる。
【0018】
(4)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記予備表示工程は、前記予備表示画像として市松模様を用いてもよい。
【0019】
(5)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記予備表示工程は、前記予備表示画像として縦2画素、横2画素で前記第1色の画像と、縦2画素、横2画素で前記第2色の画像とを、縦方向および横方向で交互に並べた市松模様を用いてもよい。
【0020】
(6)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記予備表示工程は、
前記予備表示画像として千鳥格子を用いてもよい。
【0021】
(7)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記予備表示工程は、
前記予備表示画像として単一色画像を用いてもよい。
【0022】
(8)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記予備表示工程は、
前記予備表示画像として前記第2の画像を用いてもよい。
【0023】
これらの発明によれば、予備表示工程では、効果的に残像の発生を抑える予備表示画像を使用することができる。例えば、市松模様や千鳥格子を予備表示画像として使用できる。このとき、予備表示画像は第1の画像(元画像)と全く関連がない。そのため、第1の画像の文字や数字等を消去してから第2の画像を表示するので効果的に残像の発生を抑えることが可能である。
【0024】
このとき、縦2画素、横2画素の画像を単位画像として並べ、縦方向および横方向で交互に第1色、第2色を単位画像に割り当てた市松模様を用いてもよい。また、千鳥格子とは特定の模様に限るものではない。千鳥格子とは同じ模様であって、第1色のものと第2色のものとが交互に現れるような画像であればよい。広義には、繰り返しの単位となる基本画像において第1色と第2色とが50%ずつ含まれるような模様であってもよい。
【0025】
また、単一色画像や第2の画像(新画像)を予備表示画像として使用してもよい。市松模様や千鳥格子を用いた場合と同様に、電気泳動粒子を移動させて効果的に残像の発生を抑えることが可能である。単一色画像の場合は、全面が第1色又は第2色であるため、画像データの作成が容易である。また、第2の画像を予備表示画像として使用した場合には、予備表示画像用のVRAMを別途用意する必要がない。
【0026】
(9)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記画像更新工程および前記予備表示工程は、前記共通電極に第1の電位と第2の電位とを繰り返す駆動パルス信号に基づく電圧を印加し、複数の前記画素電極のそれぞれに前記第1の電位および前記第2の電位のいずれかを印加し、前記画素電極と前記共通電極との間に生じた電界によって前記電気泳動粒子を移動させることで前記表示部に画像を表示し、前記予備表示工程は、前記予備表示画像として反転させた前記第1の画像を用い、前記駆動パルス信号に基づく電圧を印加する時間が、前記正転更新工程において前記駆動パルス信号に基づく電圧を印加する時間よりも短くてもよい。
【0027】
本発明によれば、予備表示工程は、予備表示画像として反転させた第1の画像を用いる。このとき、別途予備表示画像のデータを読み込む必要がない。また、正転更新工程よりも短い時間だけ予備表示工程を行うため、表示画像の更新処理に時間がかかることもない。なお、予備表示工程でも画像更新工程と同じ第1の画像を用いるので、画像更新工程および予備表示工程を合わせて、DCバランスがとられるようにすることが可能である。
【0028】
(10)この電気泳動表示装置の駆動方法において、前記画像更新工程の前に、前記予備表示工程が複数回実行され、1つの予備表示工程で表示される予備表示画像は、直前に実行された予備表示工程で表示された予備表示画像とは異なってもよい。
【0029】
本発明によれば、画像更新工程で第2の画像を更新表示する前に、複数回、予備表示工程を実行する。このとき、2回目以降の予備表示工程では、直前の予備表示工程で使用された予備表示画像とは異なる予備表示画像を使用する。例えば、最初に予備表示画像として千鳥格子を用いて、続く予備表示工程では市松模様の予備表示画像を用いる。予備表示工程を複数回実行することで、さらに効果的に残像の発生を抑えることが可能である。
【0030】
(11)本発明は、電気泳動表示装置であって、第1の基板と第2の基板との間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素を有する表示部と、前記第1の基板と前記電気泳動素子との間に形成される、前記画素に対応する画素電極と、前記第2の基板と前記電気泳動素子との間に形成される、複数の前記画素電極と対向する共通電極と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記表示部の表示画像を第1の画像から第2の画像に更新することと、前記第2の画像が、前記第1色および前記第2色の一方が2画素以上隣り合って配置されることがない面積階調領域を含む場合に、前記画像を更新する前に予備表示画像を表示することと、を実行する。
【0031】
本発明によれば、電気泳動表示装置が有する制御部は、表示部の表示画像を第1の画像から第2の画像に更新することと、第2の画像が、第1色および第2色の一方が2画素以上隣り合って配置されることがない面積階調領域を含む場合に、画像を更新する前に予備表示画像を表示することと、を実行する。そのため、本発明の電気泳動表示装置は、効果的に表示部の残像の発生を抑えながらも、不必要な場合には予備表示画像の表示を行わないので消費電力を増大させることもない。
【0032】
(12)本発明は、前記電気泳動表示装置を含む電子機器であってもよい。
【0033】
(13)本発明は、前記電気泳動表示装置を含む電子時計であってもよい。
【0034】
これらの発明の電子機器、電子時計は、前記の電気泳動表示装置を用いることで、DCバランスをとりつつも、消費電力を増大させずに効果的に残像の発生を抑えることができる。そのため、長期的信頼性に優れ、表示品質のよい電子機器、電子時計を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態における電気泳動表示装置のブロック図。
【図2】第1実施形態における電気泳動表示装置の画素の構成例を示す図。
【図3】図3(A)は電気泳動素子の構成例を示す図。図3(B)、図3(C)は電気泳動素子の動作の説明図。
【図4】図4(A)〜図4(D)は残像が生じない画像更新の例を示す図。
【図5】図5(A)〜図5(D)は残像が生じる画像更新の例を示す図。
【図6】図6(A)〜図6(F)は予備表示工程を実行した場合の例を示す図。
【図7】図7(A)は面積階調領域の例を示す図。図7(B)は文字の画像の例を示す図。
【図8】第1実施形態のフローチャート。
【図9】第1実施形態のサブルーチンのフローチャート。
【図10】第1実施形態の波形図。
【図11】図11(A)〜図11(B)は予備表示画像の例を表す図。
【図12】図12(A)〜図12(F)は予備表示画像が第2の画像の場合の図。
【図13】図13(A)〜図13(H)は予備表示工程を複数回実行する場合の図。
【図14】図14(A)〜図14(E)は第2実施形態の予備表示工程を実行した場合の例を示す図。
【図15】第2実施形態の波形図。
【図16】適用例の電子機器のブロック図。
【図17】図17(A)は電子機器の一例である電子時計の図、図17(B)は電子機器の一例である電子ペーパーの図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態および変形例について図1〜図13(H)を参照して説明する。第1実施形態および変形例の電気泳動表示装置は、文字、数字、写真、模様、イラスト等の様々な画像を表示可能であるとする。
【0037】
1.1.電気泳動表示装置の構成
図1は、本実施形態のアクティブマトリックス方式の電気泳動表示装置の構成を示す図である。
【0038】
電気泳動表示装置10は、表示制御回路60、表示部3を含む。表示制御回路60は、表示部3を制御する制御部であり、走査線駆動回路61、データ線駆動回路62、コントローラー63、共通電源変調回路64、記憶部160を含む。
【0039】
走査線駆動回路61、データ線駆動回路62、共通電源変調回路64、記憶部160は、それぞれコントローラー63と接続されている。コントローラー63は、例えば時刻信号等の入力信号(図外)に基づいて、これらを総合的に制御する。
【0040】
記憶部160は、例えばVRAMと、例えばフラッシュメモリー等の不揮発性メモリーを含んでいてもよい(図外)。VRAMは表示部3に表示させる画像のデータを記憶する。VRAMは複数のバンクに分かれており、それぞれが個別のVRAMとして機能してもよい。また、不揮発性メモリーはVRAMに記憶されたデータを構成する要素のデータ(例えばパーツデータや背景データ)を記憶する。なお、記憶部160は、その他に例えばSRAM、DRAM等を含んでいてもよい。
【0041】
表示部3には、走査線駆動回路61から延びる複数の走査線66と、データ線駆動回路62から延びる複数のデータ線68とが形成されており、これらの交差位置に対応して複数の画素40が設けられている。
【0042】
走査線駆動回路61は、m本の走査線66(Y1、Y2、…、Ym)により各画素40に接続されている。走査線駆動回路61は、コントローラー63の制御に従って1行目からm行目までの走査線66を順次選択することで、画素40に設けられた駆動用TFT48(図2参照)のオンタイミングを規定する選択信号を供給する。
【0043】
データ線駆動回路62は、n本のデータ線68(X1、X2、…、Xn)により各画素40に接続されている。データ線駆動回路62は、コントローラー63の制御に従って、画素40のそれぞれに対応する1ビットの画像データを規定する画像信号を画素40に供給する。なお、本実施形態では、画素データ「0」を規定する場合には、ローレベルの画像信号を画素40に供給し、画素データ「1」を規定する場合には、ハイレベルの画像信号を画素40に供給するものとする。
【0044】
表示部3には、また、共通電源変調回路64から延びる低電位電源線49(Vss)、高電位電源線50(Vdd)、共通電極配線55(Vcom)、第1のパルス信号線91(S1)、第2のパルス信号線92(S2)が設けられており、それぞれの配線は画素40と接続されている。共通電源変調回路64は、コントローラー63の制御に従って上記配線のそれぞれに供給する各種信号を生成する一方、これら各配線の電気的な接続及び切断(ハイインピーダンス化、Hi−Z)を行う。
【0045】
1.2.画素部分の回路構成
図2は、図1の画素40の回路構成図である。なお、図1と同じ配線には同じ番号を付しており、説明は省略する。また、全画素に共通の共通電極配線55については記載を省略している。
【0046】
画素40には、駆動用TFT(Thin Film Transistor)48と、ラッチ回路70と、スイッチ回路80が設けられている。画素40は、ラッチ回路70により画像信号を電位として保持するSRAM(Static Random Access Memory)方式の構成をとる。
【0047】
駆動用TFT48は、N−MOSトランジスタからなる画素スイッチング素子である。駆動用TFT48のゲート端子は走査線66に接続され、ソース端子はデータ線68に接続され、ドレイン端子はラッチ回路70のデータ入力端子に接続されている。ラッチ回路70は転送インバーター70tと帰還インバーター70fとを備えている。転送インバーター70t、帰還インバーター70fには、低電位電源線49(Vss)と高電位電源線50(Vdd)から電源電圧が供給される。
【0048】
スイッチ回路80は、トランスミッションゲートTG1、TG2からなり、ラッチ回路70に記憶された画素データのレベルに応じて、画素電極35(図3(B)、図3(C)参照)に信号を出力する。なお、Vaは、1つの画素40の画素電極へ供給される電位(信号)を意味する。
【0049】
ラッチ回路70に画素データ「1」(ハイレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG1がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号S1を供給する。一方、ラッチ回路70に画素データ「0」(ローレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG2がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号S2を供給する。このような回路構成により、表示制御回路60はそれぞれの画素40の画素電極に対して供給する電位(信号)を制御することが可能である。
【0050】
1.3.表示方式
本実施形態の電気泳動表示装置10は、二粒子系マイクロカプセル型の電気泳動方式であるとする。分散液は無色透明、電気泳動粒子は白色又は黒色のものであるとすると、白色又は黒色の2色を基本色として少なくとも2色を表示できる。ここでは、電気泳動表示装置10は、基本色として黒色と白色とを表示可能であるとして説明する。そして、黒色を表示している画素を白色で表示すること、又は白色を表示している画素を黒色で表示することを反転と表現する。
【0051】
図3(A)は、本実施形態の電気泳動素子132の構成を示す図である。電気泳動素子132は素子基板130(第1の基板)と対向基板131(第2の基板)(図3(B)、図3(C)参照)との間に挟まれている。素子基板130と対向基板131とが一対の基板である。電気泳動素子132は、複数のマイクロカプセル120を配列して構成される。マイクロカプセル120は、例えば無色透明な分散液と、複数の白色粒子(電気泳動粒子)127と、複数の黒色粒子(電気泳動粒子)126とを封入している。本実施形態では、例えば白色粒子127は負に帯電しており、黒色粒子126は正に帯電しているとする。
【0052】
図3(B)は、電気泳動表示装置10の表示部3の部分断面図である。素子基板130と対向基板131は、マイクロカプセル120を配列してなる電気泳動素子132を狭持している。表示部3(図1参照)は、素子基板130の電気泳動素子132側に、複数の画素電極35が形成された駆動電極層350を含む。図3(B)では、画素電極35として画素電極35Aと画素電極35Bが示されている。画素電極35により、画素ごとに電位を供給することが可能である(例えば、Va、Vb)。ここで、画素電極35Aを有する画素を画素40Aとし、画素電極35Bを有する画素を画素40Bとする。画素40A、画素40Bは画素40(図1、図2参照)に対応する2つの画素である。
【0053】
一方、対向基板131は透明基板であり、表示部3において対向基板131側に画像表示がなされる。表示部3は、対向基板131の電気泳動素子132側に、平面形状の共通電極37が形成された共通電極層370を含む。なお、共通電極37は透明電極である。共通電極37は、画素電極35と異なり全画素に共通の電極であり、電位Vcomが供給される。
【0054】
共通電極層370と駆動電極層350との間に設けられた電気泳動表示層360に電気泳動素子132が配置されており、電気泳動表示層360が表示領域となる。共通電極37と画素電極(例えば、35A、35B)との間の電位差に応じて、画素毎に所望の表示色を表示させることができる。
【0055】
図3(B)では、共通電極側の電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも高電位である。このとき、負に帯電した白色粒子127が共通電極37側に引き寄せられ、正に帯電した黒色粒子126が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは白色を表示していると視認される。
【0056】
図3(C)では、共通電極側の電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも低電位である。このときは逆に、正に帯電した黒色粒子126が共通電極37側に引き寄せられ、負に帯電した白色粒子127が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは黒色を表示していると視認される。なお、図3(C)の構成は図3(B)と同様であり説明は省略する。また、図3(B)、図3(C)ではVa、Vb、Vcomを固定された電位として説明したが、実際にはVa、Vb、Vcomは時間とともに電位が変化する。
【0057】
ここで、図3(B)の後に、図3(C)の状態に変化したとする。このとき、画素40Aは白色の後に黒色が表示されており、印加電界の方向が正反対に変化している。画素40Aについては、印加電界が対称的でありDCバランスがとられている。一方、画素40Bは白色だけが表示されており、印加電界が対称的でなく、DCバランスがとられていない。電気泳動表示装置の長期信頼性を確保するためには、画素40Aのように、反転した表示を行う必要がある。
【0058】
1.4.予備表示工程
第1実施形態の電気泳動表示装置の制御部(図1の表示制御回路60が対応)は、表示部の画像を、すでに表示している元画像(以下、第1の画像)から新画像(以下、第2の画像)へと切り替える制御である画像更新制御を行う。そして、第2の画像が面積階調領域を含む場合には、画像更新制御を行う前に、表示部に予備表示画像を表示する予備表示制御を行う。予備表示制御は、表示部に予備表示画像を表示することで、第2の画像に残像が生じないにする。
【0059】
ここで、画像更新制御と予備表示制御は所定の順番で実行される。以下では、画像更新制御を実行する段階を画像更新工程と、予備表示制御を実行する段階を予備表示工程という。また、画像更新制御は第2の画像を反転表示する反転更新制御と、正転表示する正転更新制御とを含むが、それぞれの制御を実行する段階を反転更新工程、正転更新工程という。そして、予備表示制御は予備表示画像を反転表示する反転予備制御と、正転表示する正転予備制御とを含むが、それぞれの制御を実行する段階を反転予備工程、正転予備工程という。また、以下において、ある工程において対応する制御を実行することを、単にその工程を実行すると表現する。例えば、制御部が予備表示工程で予備表示制御を実行することを、単に「予備表示工程を実行する」と表現する。
【0060】
以下に、第1実施形態の電気泳動表示装置で、予備表示工程を実行しない場合、および予備表示工程を実行する場合について、比較例も用いて図4(A)〜図7(B)を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図1〜図3(C)と同じ要素には同じ符号を付しており説明を省略する。
【0061】
1.4.1.予備表示工程を実行しない場合
図4(A)〜図4(D)は、予備表示工程がなくても、第2の画像に残像が生じない画像更新の例を示す図である。図4(A)は、反転更新工程(1)で、表示部3に反転した時刻表示(反転時刻表示9A)がされていることを表す。その後に、図4(B)のように、正転更新工程(1)で、表示部3に時刻表示(正転時刻表示9B)がされる。反転更新工程(1)によって正転更新工程(1)とDCバランスがとられる。なお、工程のあとに付してある括弧で囲まれた数字は、同じ名称の工程を区別するために実行の順番を表している。
【0062】
その後、例えば使用者がボタン等を操作して、文字を表示するメニュー画面を表示させるものとする。このとき、表示部3の表示画像の更新が必要になる。なお、第1の画像(元画像)は正転時刻表示9Bである。
【0063】
図4(C)は、反転更新工程(2)で、表示部3に反転したメニュー表示(反転メニュー表示9C)がされていることを表す。その後に、図4(D)のように、正転更新工程(2)で、表示部3にメニュー表示(正転メニュー表示9D)がされる。反転更新工程(2)によって正転更新工程(2)とDCバランスがとられる。この更新処理において、第2の画像(新画像)は正転メニュー表示9Dである。
【0064】
このとき、第1の画像も第2の画像も文字、数字を表示するものであり、第2の画像に面積階調領域は含まれず、残像は生じにくい。このような場合、本実施形態の制御部は、図4(A)〜図4(D)のように表示画像を更新し、予備表示工程を行わない。このとき、第2の画像に残像が生じることなく、しかも予備表示工程を実行しないので、消費電力を低くでき、更新処理の時間も短くすることができる。
【0065】
なお、図4(A)〜図4(D)の例では、使用者の指示により第2の画像(正転メニュー表示9D)へと表示画像を更新したが、時間の経過により時刻表示を更新する場合(例えば第2の画像が「10:06」を表す時刻表示)にも、第2の画像に面積階調領域は含まれないので、予備表示工程を行わない。
【0066】
1.4.2.比較例(残像発生の例)
図5(A)〜図5(D)は、比較例の電気泳動表示装置で、残像が発生する例を表す図である。図5(A)、図5(B)は、それぞれ図4(A)、図4(B)と工程および表示画像が同じであるため説明を省略する。
【0067】
図5(B)の正転更新工程(1)の後、例えば使用者がボタン等を操作して、装飾的な模様を表示させるものとする。このとき、表示部3の表示画像の更新が必要になる。なお、第1の画像は正転時刻表示9Bである。
【0068】
図5(C)は、反転更新工程(2)で、表示部3に反転した模様の表示(反転模様表示9E)がされていることを表す。その後に、図5(D)のように、正転更新工程(2)で、表示部3に模様の表示(正転模様表示9F)がされる。反転更新工程(2)によって正転更新工程(2)とDCバランスがとられる。この更新処理において、第2の画像は正転模様表示9Fである。
【0069】
このとき、第2の画像において濃淡を表現するために1画素の点が散在する面積階調領域が使用されている。図5(D)の例では、4つに区分された領域のうち、右上と左下の領域(全てが白色又は黒色の領域以外)は面積階調領域である。これらの領域で、第1の画像の時刻を表す数字の残像が生じている。
【0070】
第2の画像に面積階調領域が含まれるか否かに関係なく、図5(A)〜図5(D)のように反転更新工程と正転更新工程とを単純に繰り返す比較例の電気泳動表示装置では、第2の画像に面積階調領域が含まれる場合に、図5(D)のように残像を発生させてしまう。
【0071】
1.4.3.予備表示工程を実行する場合
図6(A)〜図6(F)は、本実施形態の電気泳動表示装置で、予備表示工程を実行する場合の例を示す。図6(A)、図6(B)は、それぞれ図4(A)、図4(B)と工程および表示画像が同じであるため説明を省略する。
【0072】
図6(B)の正転更新工程(1)の後、比較例の場合と同じように、例えば使用者がボタン等を操作して、装飾的な模様を表示させるものとする。このとき、表示部3の表示画像の更新が必要になる。なお、第1の画像は正転時刻表示9Bである。また、第2の画像は比較例の場合と同様に正転模様表示9Fである(図6(F)参照)。
【0073】
本実施形態の電気泳動表示装置では、比較例の電気泳動表示装置の場合と異なり、図6(C)〜図6(D)のように予備表示工程が実行される。この例では、予備表示画像として市松模様が使用される。ここで、予備表示工程においてもDCバランスをとるために、予備表示画像を反転表示する反転予備工程と、予備表示画像を正転表示する正転予備工程が実行される。図6(C)のように、反転予備工程では反転した市松模様(反転市松模様8A)が表示部3に表示される。そして、図6(D)のように、正転予備工程では市松模様(正転市松模様8B)が表示部3に表示される。
【0074】
そして、予備表示工程が実行された後に、比較例の場合と同じように画像更新工程が実行される(図5(C)〜図5(D)参照)。つまり、図6(E)のように反転模様表示9Eが表示部3に表示され、その後、図6(F)のように正転模様表示9Fが表示される。このとき、比較例の場合と異なり、正転模様表示9Fの面積階調領域にも残像が生じない。なお、いくつかの実験によると、縦横2画素の画像に黒色、又は白色を割り当てる2ドットの市松模様を予備表示画像として使用した場合に特に残像消去の効果が高い。
【0075】
ここで、例えば予備表示工程を実行せずに、画像更新工程において共通電極と画素電極に電圧を長時間印加することでも、移動しにくくなった黒色粒子を移動させることはできる。しかし、一律に電圧を印加する時間を延ばすことは、消費電力を大幅に増大させてしまう。そのため、本実施形態の電気泳動表示装置のように、予備表示工程を必要に応じて実行する制御方法が好ましい。
【0076】
なお、図6(C)〜図6(D)の例では、市松模様を通してうっすらと時刻表示がされる。しかし、予備表示工程の途中で時刻が更新されない限り表示は正確であるので、かえって時計の利便性の面からは良好であるといえる。
【0077】
1.4.4.面積階調領域
本実施形態の電気泳動表示装置では、第2の画像に面積階調領域が含まれるか否かで予備表示工程を実行するか否かを判断する。ここで、面積階調領域を、文字や数字を表示している領域と区別する方法について図7(A)〜図7(B)を参照して説明する。
【0078】
図7(A)は面積階調領域の拡大図であり、図6(F)の正転模様表示9Fの一部領域7Aに対応する。一方、図7(B)は文字の一部の拡大図であり、図6(B)の時刻の一部領域7Bに対応する。図7(B)のように、白色が背景の場合、文字や数字等の一部を表す黒色の画素は、その文字や数字等が使用者に正しく認識されるよう、少なくとも2画素以上の連続した線や点で構成される。しかし、面積階調領域は、特に写真、模様、イラスト等の濃淡を表現するのに用いられる。そのため、図7(A)のように濃淡を表現するために1画素の黒い点が散在する。よって、1つの画素11の周囲の領域(隣接画素領域12)に同色の画素がない場合には、面積階調領域であると判断できる。なお、図7(A)では、画素11は黒色で隣接画素領域12は白色であるが、画素11が白色で隣接画素領域12が黒色の場合にも面積階調領域であると判断される。
【0079】
本実施形態の電気泳動表示装置では、第2の画像の画像データから面積階調領域が含まれるか否かを判断する。制御部(図1の表示制御回路60が対応)は、例えば第2の画像の画像データが記憶部160(図1参照)のVRAMに読み込まれたときに、各画素について隣り合う画素に同色の画素があるか否かを調べることで面積階調領域が含まれるか否かを判断する。そして、面積階調領域を含む場合に、別のVRAM(例えばVRAMの別のバンク等)に予備表示画像のデータを読み込み、予備表示工程を実行して残像の発生を防止してもよい。
【0080】
1.5.フローチャート
本実施形態の電気泳動表示装置の制御部が行う制御処理は、図8〜図9(B)のフローチャートの通りである。図8は全体の制御処理を表す。図8のように、まず制御部は第2の画像が面積階調領域を含むか否かを判断する(S2)。第2の画像が面積階調領域を含む場合(S2Y)には、予備表示工程(S4)が実行される。予備表示工程を実行することで、面積階調領域を含む第2の画像に発生する残像を消去することができる。そして、第2の画像が面積階調領域を含まない場合(S2N)や予備表示工程(S4)の実行後に、画像更新工程(S6)が実行される。画像更新工程(S6)の実行後は、ステップS2に戻り、次の第2の画像について判断する。
【0081】
図9(A)は予備表示工程(S4)の詳細を表す。図9(A)のように、予備表示工程として反転予備工程(S42)が実行された後に、正転予備工程(S44)が実行される。また、図9(B)は画像更新工程(S6)の詳細を表す。図9(B)のように、画像更新工程として反転更新工程(S62)が実行された後に、正転更新工程(S64)が実行される。
【0082】
1.6.波形図
図10は本実施形態の波形図である。なお、図3(B)〜図3(C)、図8〜図9(B)と同じ要素には同じ符号を付しており説明を省略する。電位Vcomは共通電極に印加される電位を表し時間とともに変化する(以下、駆動パルス信号ともいう)。具体的には、電位V(第1の電位)と電位V(第2の電位)とを繰り返す。電位Va、電位Vbは隣り合う画素の画素電極35A、画素電極35B(図3(B)参照)に印加される電位を表し時間とともに変化する。
【0083】
ここで、V>Vの関係が成り立つ。例えば、電位Vcomが電位Vで電位Va(又はVb)が電位Vをとる場合、共通電極側が画素電極側よりも高電位であるため、負に帯電した白色粒子が共通電極側に引き寄せられ、表示部の対応する画素は白色を表示するように変化する。逆に、電位Vcomが電位Vで電位Va(又はVb)が電位Vをとる場合、共通電極側が画素電極側よりも低電位であるため、正に帯電した黒色粒子が共通電極側に引き寄せられ、表示部の対応する画素は黒色を表示するように変化する。電位Vcomと電位Va(又はVb)が同電位の場合には表示は維持される。なお、図10の白、黒の表記は、対応する画素がそれぞれ白色、黒色を表示するように変化することを表す。
【0084】
図10の波形図において、時刻tより前は画像更新工程の正転更新工程が行われており、第1の画像が表示されたとする。次に表示される第2の画像には面積階調領域が含まれており、予備表示工程が続いて実行されるものとする。図10の時刻t〜tは予備表示工程の反転予備工程を、時刻t〜tは予備表示工程の正転予備工程を実行している。そして、時刻t以後に、第2の画像を表示する画像更新工程の反転更新工程が実行される。
【0085】
図10のように、本実施形態では、予備表示工程(時刻t〜t)は画像更新工程に比べて短時間だけ行われる。そのため、全体の表示画像の更新処理にかかる時間は長くならず、消費電力も大きく増えることはない。また、残像の発生をどの程度抑えるかに応じて予備表示工程を実行する時間を調整してもよい。このとき、表示画像の更新処理に要する時間と残像を軽減する効果とのバランスを調整することができる。
【0086】
2.変形例
以下では、第1実施形態のいくつかの変形例を図11(A)〜図13(H)を参照して説明する。なお、図1〜図10と同じ要素については同じ符号を付しており説明を省略する。
【0087】
図11(A)は1つの変形例の予備表示画像を表す。この変形例では、予備表示工程で用いる予備表示画像を、市松模様(図6(C)〜図6(D)参照)ではなく、千鳥格子とする。図11(A)には、反転した千鳥格子(反転千鳥格子8C)と千鳥格子(正転千鳥格子8D)が示されている。
【0088】
ここで、千鳥格子というのは、図11(A)で示す特定の模様に限るものではない。千鳥格子とは同じ模様であって、黒色(第1色)のものと白色(第2色)のものとが交互に現れるような画像であればよい。広義には、繰り返しの単位(図11(A)の単位領域7C)となる基本画像において黒色と白色とが50%ずつ含まれるような模様であってもよい。例えば図11(A)の64画素である単位領域7Cは、白色の32画素と黒色の32画素で構成される。いくつかの実験では、予備表示画像を千鳥格子とした場合にも、市松模様と同様に高い残像消去の効果が得られている。
【0089】
図11(B)は別の変形例の予備表示画像を表す。この変形例では、予備表示工程で用いる予備表示画像を、市松模様(図6(C)〜図6(D)参照)ではなく、単一色画像とする。図11(B)には、全面黒色の画像(全面黒色画像8E)と全面白色の画像(全面白色画像8F)が示されている。予備表示画像が単一色画像の場合は、全面が黒色又は白色であるため画像データの作成が容易である。
【0090】
図12(A)〜図12(F)は、また別の変形例の予備表示画像を表す。この変形例では、予備表示画像として第2の画像を用いる。なお、図12(A)、図12(B)、図12(E)、図12(F)は、それぞれ図6(A)、図6(B)、図6(E)、図6(F)と工程および表示画像が同じであるため説明を省略する。
【0091】
図12(C)、図12(D)の表示画像は、それぞれ図12(E)、図12(F)と同じ反転模様表示9E、正転模様表示9Fである。この変形例では、予備表示工程に用いる予備表示画像も第2の画像であるため、VRAMに読み込む画像データは第2の画像だけでよく、予備表示画像用のVRAMの領域を別途用意する必要がない。
【0092】
図13(A)〜図13(H)は、さらに別の変形例の予備表示画像を表す。この変形例では、予備表示工程を複数回実行する。このとき、2回目以降の予備表示工程では、直前の予備表示工程で使用された予備表示画像とは異なる予備表示画像を使用する。このとき、第1の画像の文字や数字等がさらに異なる予備表示画像で消去されるので、より効果的に残像の発生を抑えることが可能である。なお、図13(A)、図13(B)、図13(G)、図13(H)は、それぞれ図6(A)、図6(B)、図6(E)、図6(F)と工程および表示画像が同じであるため説明を省略する。
【0093】
本変形例では、図13(C)〜図13(D)で示す1回目の予備表示工程に続いて、図13(E)〜図13(F)で示す2回目の予備表示工程が実行される。なお、さらに3回目以降の予備表示工程が実行されてもよい。
【0094】
図13(C)〜図13(D)の1回目の予備表示工程では、予備表示画像は千鳥格子であって、反転千鳥格子8Cと正転千鳥格子8Dが表示される(図11(A)参照)。そして、図13(E)〜図13(F)の2回目の予備表示工程では、予備表示画像は市松模様であって、反転市松模様8Aと正転市松模様8Bが表示される(図6(C)〜図6(D)参照)。
【0095】
なお、図13(C)〜図13(F)の例では、予備表示画像を通してうっすらと時刻表示がされる。しかし、2回目の予備表示工程の完了までに時刻が更新されない限り、時刻表示自体は正確であるので、かえって時計の利便性の面からは良好であるといえる。
【0096】
以上のように、本実施形態およびその変形例の電気泳動表示装置は、効果的に表示部の残像の発生を抑えながらも、不必要な場合には予備表示画像の表示を行わないので消費電力を増大させることがない。
【0097】
3.第2実施形態
本発明の第2実施形態について図14(A)〜図15を参照して説明する。なお、図1〜図13(H)と同じ要素については同一符号を付しており説明を省略する。
【0098】
図14(A)は、本実施形態の電気泳動表示装置で、予備表示工程を実行した場合の例を示す。なお、図14(A)、図14(B)、図14(D)、図14(E)は、それぞれ図6(A)、図6(B)、図6(E)、図6(F)と工程および表示画像が同じであるため説明を省略する。
【0099】
本実施形態の予備表示工程に用いる予備表示画像は反転させた第1の画像である。図14(C)のように、図14(A)の反転更新工程(1)で表示した反転時刻表示9Aと同じ画像が予備表示画像として表示される。このとき、別途予備表示画像のデータを読み込む必要がない。ただし、本実施形態では反転更新工程(1)、正転更新工程(1)、予備表示工程(図14(A)〜図14(C))を合わせてDCバランスをとる必要がある。
【0100】
図15は本実施形態の波形図である。なお、表示に用いている記号等は図10と同じであり説明を省略する。図15では、時刻t〜tは画像更新工程の反転更新工程が実行され、図14(A)の反転更新工程(1)が対応する。時刻t〜tは画像更新工程の正転更新工程が実行され、図14(B)の正転更新工程(1)が対応する。時刻t〜tは予備表示工程が実行され、図14(C)の予備表示工程が対応する。時刻t〜tは画像更新工程の反転更新工程が実行され、図14(D)の反転更新工程(2)が対応する。そして、時刻t以後は画像更新工程の正転更新工程が実行され、図14(E)の正転更新工程(2)が対応する。
【0101】
図15に示した50%、100%の表記は、時刻t〜tの正転更新工程における駆動パルス信号の電圧印加時間を100%としたときに、時刻t〜tの反転更新工程、時刻t〜tの予備表示工程における駆動パルス信号の電圧印加時間はそれぞれ50%であることを示す。本実施形態では、このように電圧印加時間を調整することで、時刻t〜tの3つの工程(反転更新工程、正転更新工程、予備表示工程)を通じてDCバランスをとる。
【0102】
本実施形態では、第1実施形態およびその変形例と比較して、予備表示工程を実行するために固有の時間が増加することがない。つまり、反転更新工程と予備表示工程とを合わせた時間が、第1実施形態およびその変形例の反転更新工程の時間に対応する。そのため、表示画像の更新処理に時間がかからず、消費電力の増加をさらに少なくすることができる。
【0103】
4.適用例
本発明の適用例について図16〜図17(B)を参照して説明する。なお、図1〜図15と同様の要素については同一符号を付して説明を省略する。第1実施形態、変形例、第2実施形態の電気泳動表示装置は、例えば時刻表示を行う電子時計などの電子機器に適用できる。
【0104】
4.1.電子機器のブロック図
図16は適用例に係る電子機器1のブロック図である。電子機器1は、CPU2、入力部4、記憶部5、電気泳動表示装置10を含む。電気泳動表示装置10は、第1実施形態の電気泳動表示装置であって、様々な画像を表示する表示部3を含む。
【0105】
CPU2は、他のブロックを制御し様々な演算や処理を行う。CPU2は、例えば記憶部5からプログラムを読み込み、プログラムに従って電気泳動表示装置10に時刻信号や制御信号等を与えてもよい。例えばCPU2が、そのプログラムによって表示する画像を把握できる場合がある。このような場合には、更新後の画像(第2の画像)が面積階調領域を含むか否かを事前に知ることができるので、それに応じて電気泳動表示装置10に予備表示工程を実施するか否かを指示する制御信号を与えてもよい。
【0106】
入力部4は、例えば電子機器1の使用者からの指示を受け取り、指示に応じた信号を他のブロックに出力してもよい。
【0107】
記憶部5は、例えばDRAMやSRAMなどのメモリーであってもよいし、ROMを含んでいてもよい。CPU2が使用するプログラムは、例えば記憶部5が含むROMに書かれていてもよい。
【0108】
表示部3は、電気泳動表示装置10の一部であって、例えば時刻を表示したり、文字、写真などを表示したりしてもよい。
【0109】
電子機器1は、第1実施形態、変形例、第2実施形態の電気泳動表示装置10を含むことで、表示画像のDCバランスをとりつつ、消費電力を増大させずに効果的に残像の発生を抑えることができる。そのため、長期的信頼性に優れ、表示品質のよい電子機器を実現できる。
【0110】
4.2.電子機器の具体例
図17(A)〜図17(B)に、電子機器の具体例を示す。図17(A)は電子機器の1つである電子時計1000の正面図である。電子時計1000は、例えば腕時計であり、時計ケース1002と、時計ケース1002に連結された一対のバンド1003とを備える。時計ケース1002の正面には、電気泳動表示装置10の表示部3(図16参照)である表示部1004が設けられ、時刻表示1005を行っている。時計ケースの側面には、2つの操作ボタン1011と1012とが設けられ、入力部4(図16参照)として機能する。
【0111】
また、例えば図17(B)は電子機器の1つである電子ペーパー1100の斜視図である。電子ペーパー1100は可撓性を有し、電気泳動表示装置10の表示部3(図16参照)である表示領域1101と、本体1102とを備えている。
【0112】
第1実施形態、変形例、第2実施形態の電気泳動表示装置は、これらの具体例を含む、様々な電子機器に適用できる。そして、そのような電子機器は、DCバランスが取れていることで表示部の長期信頼性を確保でき、残像の発生を抑えることで表示品質を向上させることができる。
【0113】
5.その他
前記の実施形態においては、電気泳動表示装置は、黒粒子および白粒子による白黒二粒子系の電気泳動が行われるものに限られず、青白等の一粒子系の電気泳動を行っても良く、また、白黒以外の組み合わせでも構わない。
【0114】
そして、電気泳動表示装置に限らず、メモリー性の表示手段に前記の駆動方法が適用されてもよい。例えば、ECD(Electrochromic Display=エレクトロクロミックディスプレイ)、強誘電性液晶ディスプレイ、コレステリック液晶ディスプレイ等である。
【0115】
さらに、前記の適用例の電子時計は、腕時計に限らず、置き時計、掛け時計、懐中時計などの時計機能を有する機器に広く適用できる。
【0116】
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0117】
1…電子機器、2…CPU、3…表示部、4…入力部、5…記憶部、7A,7B…一部領域、7C…単位領域、8A…反転市松模様、8B…正転市松模様、8C…反転千鳥格子、8D…正転千鳥格子、8E…全面黒色画像、8F…全面白色画像、9A…反転時刻表示、9B…正転時刻表示、9C…反転メニュー表示、9D…正転メニュー表示、9E…反転模様表示、9F…正転模様表示、10…電気泳動表示装置、11…画素、12…隣接画素領域、35,35A,35B…画素電極、37…共通電極、40,40A,40B…画素、48…駆動用TFT(Thin Film Transistor)、49…低電位電源線(Vss)、50…高電位電源線(Vdd)、55…共通電極配線(Vcom)、60…表示制御回路、61…走査線駆動回路、62…データ線駆動回路、63…コントローラー、64…共通電源変調回路、66…走査線、68…データ線、70…ラッチ回路、80…スイッチ回路、91…第1のパルス信号線(S)、92…第2のパルス信号線(S)、120…マイクロカプセル、126…黒色粒子、127…白色粒子、130…素子基板、131…対向基板、132…電気泳動素子、160…記憶部、350…駆動電極層、360…電気泳動表示層、370…共通電極層、1000…腕時計、1002…時計ケース、1003…バンド、1004…表示部、1005…時刻表示、1011…操作ボタン、1012…操作ボタン、1100…電子ペーパー、1101…表示領域、1102…本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素を有する表示部を含み、一方の前記基板と前記電気泳動素子との間に前記画素に対応する画素電極が形成され、他方の前記基板と前記電気泳動素子との間に、複数の前記画素電極と対向する共通電極が形成された電気泳動表示装置の駆動方法であって、
前記表示部の表示画像を第1の画像から第2の画像に更新する画像更新工程と、
前記画像更新工程の前に予備表示画像を表示する予備表示工程と、を含み、
前記予備表示工程は、
前記第2の画像が、前記第1色および前記第2色の一方が2画素以上隣り合って配置されることがない面積階調領域を含む場合に実行される電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記画像更新工程は、
前記第2の画像を反転表示する反転更新工程と、
前記第2の画像を正転表示する正転更新工程と、を含む電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記予備表示工程は、
前記予備表示画像を反転表示する反転予備工程と、
前記予備表示画像を正転表示する正転予備工程と、を含む電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記予備表示工程は、
前記予備表示画像として市松模様を用いる電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記予備表示工程は、
前記予備表示画像として縦2画素、横2画素で前記第1色の画像と、縦2画素、横2画素で前記第2色の画像とを、縦方向および横方向で交互に並べた市松模様を用いる電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記予備表示工程は、
前記予備表示画像として千鳥格子を用いる電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記予備表示工程は、
前記予備表示画像として単一色画像を用いる電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記予備表示工程は、
前記予備表示画像として前記第2の画像を用いる電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項9】
請求項2に記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記画像更新工程および前記予備表示工程は、
前記共通電極に第1の電位と第2の電位とを繰り返す駆動パルス信号に基づく電圧を印加し、複数の前記画素電極のそれぞれに前記第1の電位および前記第2の電位のいずれかを印加し、前記画素電極と前記共通電極との間に生じた電界によって前記電気泳動粒子を移動させることで前記表示部に画像を表示し、
前記予備表示工程は、
前記予備表示画像として反転させた前記第1の画像を用い、
前記駆動パルス信号に基づく電圧を印加する時間が、前記正転更新工程において前記駆動パルス信号に基づく電圧を印加する時間よりも短い電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記画像更新工程の前に、前記予備表示工程が複数回実行され、
1つの予備表示工程で表示される予備表示画像は、直前に実行された予備表示工程で表示された予備表示画像とは異なる電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項11】
第1の基板と第2の基板との間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を狭持し、少なくとも第1色と第2色を表示可能な画素を有する表示部と、
前記第1の基板と前記電気泳動素子との間に形成される、前記画素に対応する画素電極と、
前記第2の基板と前記電気泳動素子との間に形成される、複数の前記画素電極と対向する共通電極と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記表示部の表示画像を第1の画像から第2の画像に更新することと、
前記第2の画像が、前記第1色および前記第2色の一方が2画素以上隣り合って配置されることがない面積階調領域を含む場合に、前記画像を更新する前に予備表示画像を表示することと、を実行する、
電気泳動表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電気泳動表示装置を含む電子機器。
【請求項13】
請求項11に記載の電気泳動表示装置を含む電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図5】
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【図6】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−54202(P2013−54202A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192124(P2011−192124)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】