電気泳動表示装置及び電子機器
【課題】電気泳動表示装置における表示部の焼き付きを防止する。
【解決手段】電気泳動表示装置(1)は、互いに対向する画素電極(21)及び共通電極(22)間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子(23)が夫々設けられた複数の画素(20)からなる表示部(3)と、画像データに基づいて、画素電極及び共通電極間に駆動電圧を印加することにより、表示部に画像データに対応する画像を表示する駆動部とを備える。駆動部は、表示部に表示される画像を第1画像から第2画像へ書き換える書換期間において、第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域である第1領域(b)のうち、第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域である第2領域(a)に隣接すると共に第2領域を囲む領域である第3領域(c)と、第2領域とに夫々対応する画素の画素電極及び共通電極間に、第2領域及び第3領域を第1階調にする駆動電圧を印加する第1期間を設ける。
【解決手段】電気泳動表示装置(1)は、互いに対向する画素電極(21)及び共通電極(22)間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子(23)が夫々設けられた複数の画素(20)からなる表示部(3)と、画像データに基づいて、画素電極及び共通電極間に駆動電圧を印加することにより、表示部に画像データに対応する画像を表示する駆動部とを備える。駆動部は、表示部に表示される画像を第1画像から第2画像へ書き換える書換期間において、第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域である第1領域(b)のうち、第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域である第2領域(a)に隣接すると共に第2領域を囲む領域である第3領域(c)と、第2領域とに夫々対応する画素の画素電極及び共通電極間に、第2領域及び第3領域を第1階調にする駆動電圧を印加する第1期間を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置及び、該電気泳動表示装置を備える電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気泳動表示装置では、複数の画素によって次のように表示を行う表示部を有する。各画素では、画素スイッチング素子を介してメモリー回路に画像信号を書き込んだ後、書き込まれた画像信号に応じた画素電位により画素電極が駆動され、共通電極との間に電圧が印加される。これによって画素電極及び共通電極間の電気泳動素子を駆動することにより表示を行う。
【0003】
例えば特許文献1には、表示部に表示される画像を第1画像から第2画像に書き換える際に、第1画像を表示している期間に、例えば白表示であった領域に対応する画素電極及び共通電極間には電圧を印加せず、黒表示であった領域に対応する画素電極及び共通電極間にのみ電圧を印加して、全白表示にする期間を設けた電気泳動表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−206267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の背景技術によれば、第1画像から第2画像に書き換える際の反転消去時に、第1画像を表示している期間に白表示であった領域と黒表示であった領域との境界部分の黒粒子が、反転せずに(即ち、白表示とならずに)、境界線の焼き付きが生じる可能性があるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、電気泳動表示装置における表示部の焼き付きを防止することができる電気泳動表示装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気泳動表示装置は、上記課題を解決するために、互いに対向する画素電極及び共通電極間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子が夫々設けられた複数の画素からなる表示部と、画像データに基づいて、前記画素電極及び前記共通電極間に駆動電圧を印加することにより、前記表示部に前記画像データに対応する画像を表示する駆動部とを備え、前記駆動部は、前記表示部に表示される画像を第1画像から第2画像へ書き換える書換期間において、前記第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域である第1領域のうち、前記第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域である第2領域に隣接すると共に前記第2領域を囲む領域である第3領域と、前記第2領域とに夫々対応する画素の画素電極及び共通電極間に、前記第2領域及び前記第3領域を前記第1階調にする駆動電圧を印加する第1期間を設ける。
【0008】
本発明の電気泳動表示装置によれば、その動作時に、駆動部により、画像データに基づいて、複数の画素の各々における画素電極及び共通電極間に駆動電圧が印加されることによって、画素電極及び共通電極間に設けられた電気泳動素子が駆動されることで(即ち、電気泳動素子に含まれる電気泳動粒子が画素電極及び共通電極間において移動することで)、表示部に画像データに対応する画像が表示される。
【0009】
駆動部は、表示部に表示される画像を第1画像から第2画像へ書き換える書換期間において、第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域である第1領域のうち、第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域である第2領域に隣接すると共に第2領域を囲む領域である第3領域と、第2領域とに夫々対応する画素の画素電極及び共通電極間に、第2領域及び第3領域を第1階調にする駆動電圧を印加する第1期間を設ける。
【0010】
ここで、「第2領域に隣接すると共に第2領域を囲む領域」とは、第2領域の縁と、該第2領域の縁から該第2領域の側とは反対側に大なり小なりずれた輪郭線とによって規定される領域を意味する。
【0011】
尚、典型的には、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素の画素電極及び共通電極間には駆動電圧が印加されない。ここで、「駆動電圧が印加されない」とは、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素の画素電極及び共通電極に、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素を更新するための駆動電圧を印加しないことを意味する。従って、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素は、第1階調に維持されている(即ち、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素の画素電極及び共通電極間には、第1階調となる電圧が保持されている)。
【0012】
本願発明者の研究によれば、表示部に表示される画像を第1画像から第2画像へ書き換える際の反転消去時に、第2領域(即ち、第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域)に対応する画素の画素電極及び共通電極間にのみ第1階調にする駆動電圧を印加して、表示部全体を第1階調にしようとすると、第2領域の端部に対応する画素の画素電極と、第1領域(即ち、第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域)の第2領域と隣接する部分に対応する画素の画素電極との電位が相互に異なる。
【0013】
このため、第2領域の端部に対応する画素の画素電極及び共通電極間だけでなく、第2領域の端部に対応する画素の画素電極と、第1領域の第2領域と隣接する部分に対応する画素の画素電極との間にも電界が生じてしまい、第2領域の端部に対応する画素の少なくとも一部が反転されない(即ち、第1階調にならない)。
【0014】
特に、第1画像と第2画像とを交互に繰り返し表示するような電気泳動表示装置では、第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域と第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域との境界部分、或いは、第2画像が表示されている期間に第1階調であった領域と第2画像が表示されている期間に第2階調であった領域との境界部分に、焼き付きが生じるおそれがあることが判明している。
【0015】
しかるに本発明では、駆動部により、第2領域及び第3領域に夫々対応する画素の画素電極及び共通電極間に、第2領域及び第3領域を第1階調にする駆動電圧が印加される第1期間が設けられている。ここで、第3領域は、第1画像が表示されている期間に第1階調であったので、第3領域の端部と、第1領域のうち該第3領域と隣接する部分との境界部分に第2階調が現れることはない。従って、当該電気泳動表示装置の表示部の焼き付きを防止することができる。
本発明の電気泳動表示装置の一態様では、前記第3領域は、前記第2領域の縁から前記第2領域の側とは反対側に所定幅だけずれた輪郭線を有している。
【0016】
この態様によれば、反転消去時における消費電力を比較的小さくすることができ、実用上非常に有利である。
【0017】
本発明に係る「所定幅」は、例えば一画素の大きさに対応する幅等であり、第2領域の端部に対応する画素の画素電極が、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素の画素電極の影響を受けない幅として設定される。
【0018】
この態様では、前記所定幅は、一画素の大きさに対応する幅であってよい。
【0019】
このように構成すれば、第3領域に対応する画素の画素電極及び共通電極間に駆動電圧を印加することによる消費電力を最低限にとどめることができ、実用上非常に有利である。
【0020】
本発明の電気泳動表示装置の他の態様では、前記駆動部は、前記第1期間の後に、前記表示部全体を前記第1階調にする第2期間を設ける。
【0021】
この態様によれば、書換期間における過剰な第1階調の表示を緩和することができる。
【0022】
この態様では、前記第2期間では、前記駆動部は、前記表示部の全領域における画素電極及び共通電極間に、前記第1階調にする駆動電圧を印加してよい。
【0023】
このように構成すれば、電気泳動粒子が比較的よく攪拌され、残像の低減を図ることができ、実用上非常に有利である。
【0024】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気泳動表示装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
【0025】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気泳動表示装置を具備してなるので、表示部の焼き付きを防止して、高品質の画像を表示可能な、例えば、腕時計、電子ペーパー、電子ノート、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの各種電子機器を実現できる。
【0026】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【図3】第1実施形態に係る電気泳動表示装置における書換動作を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を示すタイミングチャートである。
【図5】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【図6】第1実施形態の変形例に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を示すタイミングチャートである。
【図7】第2実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図8】第2実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【図9】第1実施形態の比較例に係る電気泳動表示装置における書換動作を示す図である。
【図10】第1実施形態の比較例に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を電気力線と共に示す図である。
【図11】電気泳動表示装置を適用した電子機器の一例としての電子ペーパーの構成を示す斜視図である。
【図12】電気泳動表示装置を適用した電子機器の他の例としての電子ノートの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下図面を参照しながら、本発明に係る電気泳動表示装置、及び該電気泳動表示装置を備える電子機器の各実施形態を説明する。
【0029】
<電気泳動表示装置>
<第1実施形態>
本発明に係る電気泳動表示装置の第1実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0030】
(電気泳動表示装置の構成)
先ず、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに、図1は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【0031】
図1において、本実施形態に係る電気泳動表示装置1は、表示部3と、コントローラー10と、走査線駆動回路60と、データ線駆動回路70と、対向電極変調回路150とを備えている。
【0032】
表示部3には、m行×n列分の画素20がマトリックス状(二次元平面的)に配列されている。また、表示部3には、m本の走査線40(即ち、走査線Y1、Y2、…、Ym)と、n本のデータ線50(即ち、データ線X1、X2、…、Xn)とが互いに交差するように設けられている。具体的には、m本の走査線40は、行方向(即ち、X方向)に延在し、n本のデータ線50は、列方向(即ち、Y方向)に延在している。m本の走査線40とn本のデータ線50との交差に対応して画素20が配置されている。
【0033】
コントローラー10は、走査線駆動回路60、データ線駆動回路70及び対向電極変調回路150の動作を制御する。コントローラー10は、例えば、クロック信号、スタートパルス等のタイミング信号を各回路に供給する。
【0034】
走査線駆動回路60は、コントローラー10から供給されるタイミング信号に基づいて、走査線Y1、Y2、…、Ymの各々に走査信号をパルス的に順次供給する。データ線駆動回路70は、コントローラー10から供給されるタイミング信号に基づいて、データ線X1、X2、…、Xnに画像信号を供給する。画像信号は、高電位レベル(以下「ハイレベル」という。例えば5V)又は低電位レベル(以下「ローレベル」という。例えば0V)の2値的なレベルをとる。
【0035】
対向電極変調回路は、共通電位線93に共通電位Vcomを供給すると共に、保持容量線106に電源電位Vsを供給する。ここで、本実施形態に係る「共通電位線93」及び「保持容量線106」は、本発明に係る「駆動部」の一例を構成する。
【0036】
尚、コントローラー10、走査線駆動回路60、データ線駆動回路70及び対向電極へ変調回路150には、各種の信号が入出力されるが、本実施形態と特に関係のないものについては説明を省略する。
【0037】
次に、電気泳動表示装置1の画素20における原理的構成について、図2を参照して説明する。ここに、図2は、本実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0038】
図2において、画素20は、画素スイッチング用トランジスター24と、画素電極21と、共通電極22と、電気泳動素子23と、保持容量27とを備えている。
【0039】
画素スイッチング用トランジスター24は、例えばN型トランジスターで構成されている。画素スイッチング用トランジスター24は、そのゲートが走査線40に電気的に接続されており、そのソースがデータ線50に電気的に接続されており、そのドレインが画素電極21及び保持容量27に電気的に接続されている。
【0040】
画素スイッチング用トランジスター24は、データ線駆動回路70(図1参照)からデータ線50を介して供給される画像信号を、走査線駆動回路60(図1参照)から走査線40を介してパルス的に供給される走査信号に応じたタイミングで、画素電極21及び保持容量27に出力する。
【0041】
画素電極21には、データ線駆動回路70からデータ線50及び画素スイッチング用トランジスター24を介して、画像信号が供給される。画素電極21は、電気泳動素子23を介して共通電極22と互いに対向するように配置されている。
【0042】
共通電極22は、共通電位Vcomが供給される共通電位線93に電気的に接続されている。
【0043】
電気泳動素子23は、電気泳動粒子をそれぞれ含んでなる複数のマイクロカプセルから構成されている。
【0044】
保持容量27は、誘電体膜を介して対向配置された一対の電極からなり、一方の電極が、画素電極21及び画素スイッチング用トランジスター24に電気的に接続され、他方の電極が保持容量線106に電気的に接続されている。保持容量27によって画像信号を一定期間だけ維持することができる。
【0045】
(電気泳動表示装置の動作)
次に、電気泳動表示装置1の動作時において表示画像を更新する際の動作について、図3及び図4を参照して説明する。ここに、図3は、本実施形態に係る電気泳動表示装置における書換動作を示す図であり、図4は、本実施形態に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を示すタイミングチャートである。尚、電気泳動粒子は、負に帯電した白い電気泳動粒子と、正に帯電した黒い電気泳動粒子とを含むものとする。また、「白」を「第1階調」、「黒」を「第2階調」とする。
【0046】
図3(a)の状態では、表示部3に、第1画像として、白の背景上に黒で描かれた第1の図形が表示されている。ここで、図3(a)において、黒である領域を領域a、白である領域を領域bとする。尚、第1画像が書き込まれる直前には、表示部3全体が白表示となっている。第1画像が書き込まれる際には、図4に示すように、共通電極22はローレベルとされる。また、領域aに対応する画素20の画素電極21はハイレベルとされると共に、領域b(後述する領域c含む)に対応する画素20の画素電極21はローレベルとされる。
【0047】
これにより、領域aにおいてのみ黒い電気泳動粒子が共通電極22側に移動し、図3(a)に示すような第1画像が表示される。第1画像の書き込み後は、共通電極22及び全ての画素電極21がローレベルとされることによって表示内容(即ち、第1画像)が保持される(図4における期間(i)参照)。
【0048】
次に、第1画像から第2画像(後述する図3(d)参照)に表示画像を変更する前に、図3(b)に示すように、領域aと、領域bのうち領域aに隣接すると共に該領域aを囲む領域である領域cとが白表示にされ第1画像が消去される。この際、共通電極22及び領域b(領域c含まず)に対応する画素20の画素電極21はハイレベルとされる。また、領域a及び領域cに夫々対応する画素20の画素電極21はローレベルとされる(図4における期間(ii)参照)。これにより、領域aにおいてのみ黒い電気泳動粒子が画素電極21側に移動し第1の図形が消去される。
【0049】
尚、領域cの幅(即ち、領域aの外縁と領域cの外縁との間の距離)は、一画素の大きさに対応する幅であることが望ましい。
【0050】
次に、図3(c)に示すように、表示部3全体が白表示にされる。この際、共通電極22はハイレベルとされる。他方、全ての画素20の画素電極21はローレベルとされる(図4における期間(iii)参照)。
【0051】
次に、図3(d)に示すように、表示部3に、第2画像として、白の背景上に黒で描かれた第2の図形が表示される。ここで、図3(d)において、黒である領域を領域dとする。第2画像が書き込まれる際には、共通電極22はローレベルとされる。また、領域dに対応する画素20の画素電極21はハイレベルとされる。尚、表示部3のうち領域d以外の領域に対応する画素20の画素電極21はローレベルとされる。これにより、領域dにおいてのみ黒い電気泳動粒子が共通電極22側に移動し、図3(d)に示すような第2画像が表示される。
【0052】
ここで、本実施形態の比較例に係る電気泳動表示装置の動作時において表示画像を更新する際の動作について、図9及び図10を参照して説明する。ここに、図9は、図3と同趣旨の、本実施形態の比較例に係る電気泳動表示装置における書換動作を示す図であり、図10は、本実施形態の比較例に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を電気力線と共に示す図である。
【0053】
先ず、本実施形態と同様に、比較例に係る電気泳動表示装置の表示部3に、第1画像として、白の背景上に黒で描かれた第1の図形が表示されているとする(図9(a)参照)。比較例に係る電気泳動表示装置では、第1の図形を反転消去する際に、共通電極22がハイレベルとされると共に、領域aに対応する画素20の画素電極21のみローレベルとされる。これにより、領域aにおいてのみ黒い電気泳動粒子が画素電極21側に移動する。
【0054】
しかしながら、図10に示すように、領域aの端部に対応する画素20の画素電極21aと、領域bの領域aと隣接する部分に対応する画素20の画素電極21bとの電位が相互に異なるため、画素電極21a及び画素電極21b間にも電界が生じてしまう。すると、領域aの端部に対応する画素20の少なくとも一部が白表示とならない(即ち、反転されない)。この結果、領域aと領域bとの境界部分に、図9(b)に示すような焼き付きが生じる可能性がある。
【0055】
しかるに本実施形態に係る電気泳動表示装置1では、上述の如く、第1画像の反転消去時に、領域a及び領域cに夫々対応する画素20の画素電極21がローレベルとされると共に、共通電極22がハイレベルとされる。この結果、領域aの端部に対応する画素20の画素電極と、領域cの領域aと隣接する部分に対応する画素20の画素電極との電位が等しくなり、領域aと領域cとの境界部分が黒表示となること(即ち、反転されないこと)はない。従って、当該電気泳動表示装置1の表示部3における焼き付きを防止することができる。
【0056】
尚、図3では、第1の図形が矩形である場合を例として挙げたが、表示部3に表示される図形が、図5に示すようなリング状の場合、画像の反転消去時には、領域aと、領域aの外側の縁から該領域aの側とは反対側(即ち、外側)に所定幅だけずれた輪郭線を有する領域c1と、領域aの内側の縁から該領域aの側とは反対側(即ち、中心側)に所定幅だけすれた輪郭線を有する領域c2とに夫々対応する画素20の画素電極21がローレベルとされると共に、共通電極22がハイレベルとされる。ここに、図5は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【0057】
尚、本実施形態に係る「領域a」及び「領域b」は、夫々、本発明に係る「第2領域」及び「第1領域」の一例であり、本実施形態に係る「領域c」、「領域c1」及び「領域c2」は、本発明に係る「第3領域」の一例である。また、本実施形態に係る「反転消去期間(図4の期間(ii)参照)」及び「全白消去期間(図4の期間(iii)参照)」は、夫々、本発明に係る「第1期間」及び「第2期間」の一例である。
【0058】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例に係る電気泳動表示装置の動作時において表示画像を更新する際の動作について、図6を参照して説明する。ここに、図6は、図4と同趣旨の、本実施形態の変形例に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を示すタイミングチャートである。
【0059】
本変形例では、反転消去期間(図6の期間(ii)参照)の後に、全白消去期間(図4の期間(iii)参照)に代えて、比較的短い期間で全白表示と全黒表示とを繰り返し行う消去期間(図6の期間(iii)参照)を設けている。尚、全白表示と全黒表示との繰り返しは、1ミリ秒乃至10ミリ秒の周期で行うことが望ましい。
【0060】
比較的短い期間で全白表示と全黒表示とが繰り返されることにより、分散媒体中で電気泳動粒子が比較的よく攪拌されるので、画像消去時の残像や経時的な残像の低減又は軽減を図ることができる。
【0061】
<第2実施形態>
本発明の電気泳動表示装置に係る第2実施形態を、図7及び図8を参照して説明する。第2実施形態では、表示部等の構成が一部異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図7及び図8を参照して説明する。ここに、図7は、図1と同趣旨の、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図であり、図8は、図2と同趣旨の、本実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0062】
(電気泳動表示装置の構成)
図7において、本実施形態に係る電気泳動表示装置2は、表示部3と、走査線駆動回路60と、データ線駆動回路70と、コントローラー10と、電源回路200とを備えている。
【0063】
コントローラー10は、走査線駆動回路60、データ線駆動回路70及び電源回路200の動作を制御する。
【0064】
電源回路200は、高電位電源線91に高電位電源電位Vddを供給し、低電位電源線92に低電位電源電位Vssを供給し、共通電位線93に共通電位Vcomを供給し、第1の制御線94に第1の電位S1を供給し、第2の制御線95に第2の電位S2を供給する。尚、ここでは図示を省略するが、高電位電源線91、低電位電源線92、共通電位線93、第1の制御線94及び第2の制御線95の各々は、電気的なスイッチを介して電源回路200に電気的に接続されている。
【0065】
また、各画素20は、高電位電源線91、低電位電源線92、共通電位線93、第1の制御線94及び第2の制御線95に電気的に接続されている。高電位電源線91、低電位電源線92、共通電位線93、第1の制御線94及び第2の制御線95は夫々、典型的には図7中に示すように行方向(X方向)に沿って配列する画素20からなる画素列毎に、画素列に属する画素20に共通に配線される。
【0066】
電源回路200は、電源部210と、共通電位供給回路220と、DC−DCコンバーター230と、発振回路240とを備えている。
【0067】
電源部210は、1次電池或いは2次電池であり、共通電位供給回路220、DC−DCコンバーター230及び発振回路240に電力を供給している。電源部210は、電源電圧Vdc(例えば3V)を出力する。尚、本実施形態では、電源部210は、共通電位供給回路220、DC−DCコンバーター230及び発振回路240にのみ電力を供給しているが、これに限定されず、他の回路、例えばコントローラー10等に電力を供給してもよい。
【0068】
共通電位供給回路220は、共通電位線93にスイッチ93s(図8参照)を介して電気的に接続されており、DC−DCコンバーター230から印加される電圧に基づいて、共通電位Vcomを出力する。本実施形態では、共通電位供給回路220は、第1の制御線94にスイッチ94s(図8参照)を介して電気的に接続されており、共通電位Vcomを第1の電位S1として第1の制御線94に出力する。尚、本実施形態に係る「高電位電源線91」、「低電位電源線92」、「共通電位線93」、「第1の制御線94」及び「第2の制御線95」は、本発明に係る「駆動部」の他の例を構成する。
【0069】
DC−DCコンバーター230は、高電位電源線91にスイッチ91s(図8参照)を介して電気的に接続されており、電源部210から印加された電源電圧Vdc(例えば3V)に基づいて、高電位VH(例えば12V)を生成して高電位電源電位Vddとして出力する。
【0070】
発振回路240は、例えばリングオシレーター等を含んでなる発振回路であり、DC−DCコンバーター230にクロック信号を供給する。発振回路240は、コントローラー10の制御下で、その出力するクロック信号の周波数を変更可能に構成されている。
【0071】
また、電源回路200は、グランドに電気的に接続されることにより低電位VLとされた接地端子(図示省略)を備えており、この接地端子から低電位電源線92に低電位VLを低電位電源電位Vssとして出力している。
【0072】
尚、本実施形態では、第2の制御線95は、スイッチ95s(図8参照)を介して、DC−DCコンバーター230及び上述した接地電位と電気的に接続可能に構成されており、第2の制御線95には、DC−DCコンバーター230から出力される高電位VHと接地端子から出力される低電位VLとが切り替えられて第2の電位S2として出力される。
【0073】
次に、電気泳動表示装置2の画素20における原理的構成について、図8を参照して説明する。
【0074】
図8において、画素20は、画素スイッチング用トランジスター24と、メモリー回路25と、スイッチ回路110と、画素電極21と、共通電極22と、電気泳動素子23とを備えている。
【0075】
画素スイッチング用トランジスター24は、例えばN型トランジスターで構成されている。画素スイッチング用トランジスター24は、そのゲートが走査線40に電気的に接続されており、そのソースがデータ線50に電気的に接続されており、そのドレインがメモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。画素スイッチング用トランジスター24は、データ線駆動回路70(図7参照)からデータ線50を介して供給される画像信号を、走査線駆動回路60(図7参照)から走査線40を介してパルス的に供給される走査信号に応じたタイミングで、メモリー回路25の入力端子N1に出力する。
【0076】
メモリー回路25は、インバータ回路25a及び25bを有しており、SRAM(Static Random Access Memory)として構成されている。
【0077】
インバータ回路25a及び25bは、互いの入力端子に他方の出力端子が電気的に接続されたループ構造を有している。即ち、インバータ回路25aの入力端子とインバータ回路25bの出力端子とが互いに電気的に接続され、インバータ回路25bの入力端子とインバータ回路25aの出力端子とが互いに電気的に接続されている。インバータ回路25aの入力端子が、メモリー回路25の入力端子N1として構成されており、インバータ回路25aの出力端子が、メモリー回路25の出力端子N2として構成されている。
【0078】
インバータ回路25aは、N型トランジスター25a1及びP型トランジスター25a2を有している。N型トランジスター25a1及びP型トランジスター25a2のゲートは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。N型トランジスター25a1のソースは、低電位電源電位Vssが供給される低電位電源線92に電気的に接続されている。P型トランジスター25a2のソースは、高電位電源電位Vddが供給される高電位電源線91に電気的に接続されている。N型トランジスター25a1及びP型トランジスター25a2のドレインは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されている。
【0079】
インバータ回路25bは、N型トランジスター25b1及びP型トランジスター25b2を有している。N型トランジスター25b1及びP型トランジスター25b2のゲートは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されている。N型トランジスター25b1のソースは、低電位電源電位Vssが供給される低電位電源線92に電気的に接続されている。P型トランジスター25b2のソースは、高電位電源電位Vddが供給される高電位電源線91に電気的に接続されている。N型トランジスター25b1及びP型トランジスター25b2のドレインは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。
【0080】
メモリー回路25は、その入力端子N1にハイレベルの画像信号が入力されると、その出力端子N2から低電位電源電位Vssを出力し、その入力端子N1にローレベルの画像信号が入力されると、その出力端子N2から高電位電源電位Vddを出力する。即ち、メモリー回路25は、入力された画像信号がハイレベルであるかローレベルであるかに応じて、低電位電源電位Vss又は高電位電源電位Vddを出力する。言い換えれば、メモリー回路25は、入力された画像信号を、低電位電源電位Vss又は高電位電源電位Vddとして記憶可能に構成されている。
【0081】
スイッチ回路110は、第1のトランスミッションゲート111及び第2のトランスミッションゲート112を備えている。
【0082】
第1のトランスミッションゲート111は、P型トランジスター111p及びN型トランジスター111nを備えている。P型トランジスター111p及びN型トランジスター111nのソースは、第1の制御線94に電気的に接続されている。P型トランジスター111p及びN型トランジスター111nのドレインは、画素電極21に電気的に接続されている。P型トランジスター111pのゲートは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されており、N型トランジスター111nのゲートは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されている。
【0083】
第2のトランスミッションゲート112は、P型トランジスター112p及びN型トランジスター112nを備えている。P型トランジスター112p及びN型トランジスター112nのソースは、第2の制御線95に電気的に接続されている。P型トランジスター112p及びN型トランジスター112nのドレインは、画素電極21に電気的に接続されている。P型トランジスター112pのゲートは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されており、N型トランジスター112nのゲートは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。
【0084】
スイッチ回路110は、メモリー回路25に入力される画像信号に応じて、第1の制御線94及び第2の制御線95のいずれか一方の制御線を択一的に選択して、その一方の制御線を画素電極21に電気的に接続する。
【0085】
具体的には、メモリー回路25の入力端子N1にハイレベルの画像信号が入力されると、メモリー回路25からN型トランジスター111n及びP型トランジスター112pのゲートに低電位電源電位Vssが出力されると共に、P型トランジスター111p及びN型トランジスター112nのゲートに高電位電源電位Vddが出力されることにより、第2のトランスミッションゲート112を構成するP型トランジスター112p及びN型トランジスター112nのみがオン状態となり、第1のトランスミッションゲート111を構成するP型トランジスター111p及びN型トランジスター111nはオフ状態となる。
【0086】
一方、メモリー回路25の入力端子N1にローレベルの画像信号が入力されると、メモリー回路25からN型トランジスター111n及びP型トランジスター112pのゲートに高電位電源電位Vddが出力されると共に、P型トランジスター111p及びN型トランジスター112nのゲートに低電位電源電位Vssが出力されることにより、第1のトランスミッションゲート111を構成するP型トランジスター111p及びN型トランジスター111nのみがオン状態となり、第2のトランスミッションゲート112を構成するP型トランジスター112p及びN型トランジスター112nはオフ状態となる。つまり、メモリー回路25の入力端子N1にハイレベルの画像信号が入力された場合には、第2のトランスミッションゲート112のみがオン状態となり、一方、メモリー回路25の入力端子N1にローレベルの画像信号が入力された場合には、第1のトランスミッションゲート111のみがオン状態となる。
【0087】
複数の画素20の各々の画素電極21は、スイッチ回路110によって画像信号に応じて択一的に選択された第1の制御線94又は第2の制御線95に電気的に接続される。その際、複数の画素20の各々の画素電極21は、スイッチ94s又は95sのオンオフ状態に応じて、第1の電位S1又は第2の電位S2が供給される、或いはハイインピーダンス状態とされる。
【0088】
より具体的には、ローレベルの画像信号が供給される画素20については、第1のトランスミッションゲート111のみがオン状態となり、その画素20の画素電極21は、第1の制御線94に電気的に接続され、スイッチ94sのオンオフ状態に応じて電源回路200から第1の電位S1が供給され、又は、ハイインピーダンス状態とされる。一方、ハイレベルの画像信号が供給される画素20については、第2のトランスミッションゲート112のみがオン状態となり、その画素20の画素電極21は、第2の制御線95に電気的に接続され、スイッチ95sのオンオフ状態に応じて電源回路200から第2の電位S2が供給され、又は、ハイインピーダンス状態とされる。
【0089】
画素電極21は、電気泳動素子23を介して共通電極22と互いに対向するように配置されている。共通電極22は、共通電位Vcomが供給される共通電位線93に電気的に接続されている。
【0090】
<電子機器>
次に、上述した電気泳動表示装置を適用した電子機器について、図11及び図12を参照して説明する。以下では、上述した電気泳動表示装置を電子ペーパー及び電子ノートに適用した場合を例にとる。
【0091】
図11は、電子ペーパー1400の構成を示す斜視図である。
【0092】
図11に示すように、電子ペーパー1400は、上述した実施形態に係る電気泳動表示装置を表示部1401として備えている。電子ペーパー1400は可撓性を有し、従来の紙と同様の質感及び柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1402を備えて構成されている。
【0093】
図12は、電子ノート1500の構成を示す斜視図である。
【0094】
図12に示すように、電子ノート1500は、図11で示した電子ペーパー1400が複数枚束ねられ、カバー1501に挟まれているものである。カバー1501は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力するための表示データ入力手段(図示せず)を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
【0095】
上述した電子ペーパー1400及び電子ノート1500は、上述した実施形態に係る電気泳動表示装置を備えるので、表示部の焼き付きを防止して、高品質な画像表示を行うことが可能である。
【0096】
尚、これらの他に、腕時計、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの電子機器の表示部に、上述した本実施形態に係る電気泳動表示装置を適用することができる。
【0097】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気泳動表示装置及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
1、2…電気泳動表示装置、3…表示部、10…コントローラー、20…画素、21…画素電極、22…共通電極、23…電気泳動素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置及び、該電気泳動表示装置を備える電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気泳動表示装置では、複数の画素によって次のように表示を行う表示部を有する。各画素では、画素スイッチング素子を介してメモリー回路に画像信号を書き込んだ後、書き込まれた画像信号に応じた画素電位により画素電極が駆動され、共通電極との間に電圧が印加される。これによって画素電極及び共通電極間の電気泳動素子を駆動することにより表示を行う。
【0003】
例えば特許文献1には、表示部に表示される画像を第1画像から第2画像に書き換える際に、第1画像を表示している期間に、例えば白表示であった領域に対応する画素電極及び共通電極間には電圧を印加せず、黒表示であった領域に対応する画素電極及び共通電極間にのみ電圧を印加して、全白表示にする期間を設けた電気泳動表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−206267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の背景技術によれば、第1画像から第2画像に書き換える際の反転消去時に、第1画像を表示している期間に白表示であった領域と黒表示であった領域との境界部分の黒粒子が、反転せずに(即ち、白表示とならずに)、境界線の焼き付きが生じる可能性があるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、電気泳動表示装置における表示部の焼き付きを防止することができる電気泳動表示装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気泳動表示装置は、上記課題を解決するために、互いに対向する画素電極及び共通電極間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子が夫々設けられた複数の画素からなる表示部と、画像データに基づいて、前記画素電極及び前記共通電極間に駆動電圧を印加することにより、前記表示部に前記画像データに対応する画像を表示する駆動部とを備え、前記駆動部は、前記表示部に表示される画像を第1画像から第2画像へ書き換える書換期間において、前記第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域である第1領域のうち、前記第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域である第2領域に隣接すると共に前記第2領域を囲む領域である第3領域と、前記第2領域とに夫々対応する画素の画素電極及び共通電極間に、前記第2領域及び前記第3領域を前記第1階調にする駆動電圧を印加する第1期間を設ける。
【0008】
本発明の電気泳動表示装置によれば、その動作時に、駆動部により、画像データに基づいて、複数の画素の各々における画素電極及び共通電極間に駆動電圧が印加されることによって、画素電極及び共通電極間に設けられた電気泳動素子が駆動されることで(即ち、電気泳動素子に含まれる電気泳動粒子が画素電極及び共通電極間において移動することで)、表示部に画像データに対応する画像が表示される。
【0009】
駆動部は、表示部に表示される画像を第1画像から第2画像へ書き換える書換期間において、第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域である第1領域のうち、第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域である第2領域に隣接すると共に第2領域を囲む領域である第3領域と、第2領域とに夫々対応する画素の画素電極及び共通電極間に、第2領域及び第3領域を第1階調にする駆動電圧を印加する第1期間を設ける。
【0010】
ここで、「第2領域に隣接すると共に第2領域を囲む領域」とは、第2領域の縁と、該第2領域の縁から該第2領域の側とは反対側に大なり小なりずれた輪郭線とによって規定される領域を意味する。
【0011】
尚、典型的には、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素の画素電極及び共通電極間には駆動電圧が印加されない。ここで、「駆動電圧が印加されない」とは、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素の画素電極及び共通電極に、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素を更新するための駆動電圧を印加しないことを意味する。従って、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素は、第1階調に維持されている(即ち、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素の画素電極及び共通電極間には、第1階調となる電圧が保持されている)。
【0012】
本願発明者の研究によれば、表示部に表示される画像を第1画像から第2画像へ書き換える際の反転消去時に、第2領域(即ち、第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域)に対応する画素の画素電極及び共通電極間にのみ第1階調にする駆動電圧を印加して、表示部全体を第1階調にしようとすると、第2領域の端部に対応する画素の画素電極と、第1領域(即ち、第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域)の第2領域と隣接する部分に対応する画素の画素電極との電位が相互に異なる。
【0013】
このため、第2領域の端部に対応する画素の画素電極及び共通電極間だけでなく、第2領域の端部に対応する画素の画素電極と、第1領域の第2領域と隣接する部分に対応する画素の画素電極との間にも電界が生じてしまい、第2領域の端部に対応する画素の少なくとも一部が反転されない(即ち、第1階調にならない)。
【0014】
特に、第1画像と第2画像とを交互に繰り返し表示するような電気泳動表示装置では、第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域と第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域との境界部分、或いは、第2画像が表示されている期間に第1階調であった領域と第2画像が表示されている期間に第2階調であった領域との境界部分に、焼き付きが生じるおそれがあることが判明している。
【0015】
しかるに本発明では、駆動部により、第2領域及び第3領域に夫々対応する画素の画素電極及び共通電極間に、第2領域及び第3領域を第1階調にする駆動電圧が印加される第1期間が設けられている。ここで、第3領域は、第1画像が表示されている期間に第1階調であったので、第3領域の端部と、第1領域のうち該第3領域と隣接する部分との境界部分に第2階調が現れることはない。従って、当該電気泳動表示装置の表示部の焼き付きを防止することができる。
本発明の電気泳動表示装置の一態様では、前記第3領域は、前記第2領域の縁から前記第2領域の側とは反対側に所定幅だけずれた輪郭線を有している。
【0016】
この態様によれば、反転消去時における消費電力を比較的小さくすることができ、実用上非常に有利である。
【0017】
本発明に係る「所定幅」は、例えば一画素の大きさに対応する幅等であり、第2領域の端部に対応する画素の画素電極が、第1領域のうち第3領域でない領域に対応する画素の画素電極の影響を受けない幅として設定される。
【0018】
この態様では、前記所定幅は、一画素の大きさに対応する幅であってよい。
【0019】
このように構成すれば、第3領域に対応する画素の画素電極及び共通電極間に駆動電圧を印加することによる消費電力を最低限にとどめることができ、実用上非常に有利である。
【0020】
本発明の電気泳動表示装置の他の態様では、前記駆動部は、前記第1期間の後に、前記表示部全体を前記第1階調にする第2期間を設ける。
【0021】
この態様によれば、書換期間における過剰な第1階調の表示を緩和することができる。
【0022】
この態様では、前記第2期間では、前記駆動部は、前記表示部の全領域における画素電極及び共通電極間に、前記第1階調にする駆動電圧を印加してよい。
【0023】
このように構成すれば、電気泳動粒子が比較的よく攪拌され、残像の低減を図ることができ、実用上非常に有利である。
【0024】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気泳動表示装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
【0025】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気泳動表示装置を具備してなるので、表示部の焼き付きを防止して、高品質の画像を表示可能な、例えば、腕時計、電子ペーパー、電子ノート、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの各種電子機器を実現できる。
【0026】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【図3】第1実施形態に係る電気泳動表示装置における書換動作を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を示すタイミングチャートである。
【図5】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【図6】第1実施形態の変形例に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を示すタイミングチャートである。
【図7】第2実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図8】第2実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【図9】第1実施形態の比較例に係る電気泳動表示装置における書換動作を示す図である。
【図10】第1実施形態の比較例に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を電気力線と共に示す図である。
【図11】電気泳動表示装置を適用した電子機器の一例としての電子ペーパーの構成を示す斜視図である。
【図12】電気泳動表示装置を適用した電子機器の他の例としての電子ノートの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下図面を参照しながら、本発明に係る電気泳動表示装置、及び該電気泳動表示装置を備える電子機器の各実施形態を説明する。
【0029】
<電気泳動表示装置>
<第1実施形態>
本発明に係る電気泳動表示装置の第1実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0030】
(電気泳動表示装置の構成)
先ず、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに、図1は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【0031】
図1において、本実施形態に係る電気泳動表示装置1は、表示部3と、コントローラー10と、走査線駆動回路60と、データ線駆動回路70と、対向電極変調回路150とを備えている。
【0032】
表示部3には、m行×n列分の画素20がマトリックス状(二次元平面的)に配列されている。また、表示部3には、m本の走査線40(即ち、走査線Y1、Y2、…、Ym)と、n本のデータ線50(即ち、データ線X1、X2、…、Xn)とが互いに交差するように設けられている。具体的には、m本の走査線40は、行方向(即ち、X方向)に延在し、n本のデータ線50は、列方向(即ち、Y方向)に延在している。m本の走査線40とn本のデータ線50との交差に対応して画素20が配置されている。
【0033】
コントローラー10は、走査線駆動回路60、データ線駆動回路70及び対向電極変調回路150の動作を制御する。コントローラー10は、例えば、クロック信号、スタートパルス等のタイミング信号を各回路に供給する。
【0034】
走査線駆動回路60は、コントローラー10から供給されるタイミング信号に基づいて、走査線Y1、Y2、…、Ymの各々に走査信号をパルス的に順次供給する。データ線駆動回路70は、コントローラー10から供給されるタイミング信号に基づいて、データ線X1、X2、…、Xnに画像信号を供給する。画像信号は、高電位レベル(以下「ハイレベル」という。例えば5V)又は低電位レベル(以下「ローレベル」という。例えば0V)の2値的なレベルをとる。
【0035】
対向電極変調回路は、共通電位線93に共通電位Vcomを供給すると共に、保持容量線106に電源電位Vsを供給する。ここで、本実施形態に係る「共通電位線93」及び「保持容量線106」は、本発明に係る「駆動部」の一例を構成する。
【0036】
尚、コントローラー10、走査線駆動回路60、データ線駆動回路70及び対向電極へ変調回路150には、各種の信号が入出力されるが、本実施形態と特に関係のないものについては説明を省略する。
【0037】
次に、電気泳動表示装置1の画素20における原理的構成について、図2を参照して説明する。ここに、図2は、本実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0038】
図2において、画素20は、画素スイッチング用トランジスター24と、画素電極21と、共通電極22と、電気泳動素子23と、保持容量27とを備えている。
【0039】
画素スイッチング用トランジスター24は、例えばN型トランジスターで構成されている。画素スイッチング用トランジスター24は、そのゲートが走査線40に電気的に接続されており、そのソースがデータ線50に電気的に接続されており、そのドレインが画素電極21及び保持容量27に電気的に接続されている。
【0040】
画素スイッチング用トランジスター24は、データ線駆動回路70(図1参照)からデータ線50を介して供給される画像信号を、走査線駆動回路60(図1参照)から走査線40を介してパルス的に供給される走査信号に応じたタイミングで、画素電極21及び保持容量27に出力する。
【0041】
画素電極21には、データ線駆動回路70からデータ線50及び画素スイッチング用トランジスター24を介して、画像信号が供給される。画素電極21は、電気泳動素子23を介して共通電極22と互いに対向するように配置されている。
【0042】
共通電極22は、共通電位Vcomが供給される共通電位線93に電気的に接続されている。
【0043】
電気泳動素子23は、電気泳動粒子をそれぞれ含んでなる複数のマイクロカプセルから構成されている。
【0044】
保持容量27は、誘電体膜を介して対向配置された一対の電極からなり、一方の電極が、画素電極21及び画素スイッチング用トランジスター24に電気的に接続され、他方の電極が保持容量線106に電気的に接続されている。保持容量27によって画像信号を一定期間だけ維持することができる。
【0045】
(電気泳動表示装置の動作)
次に、電気泳動表示装置1の動作時において表示画像を更新する際の動作について、図3及び図4を参照して説明する。ここに、図3は、本実施形態に係る電気泳動表示装置における書換動作を示す図であり、図4は、本実施形態に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を示すタイミングチャートである。尚、電気泳動粒子は、負に帯電した白い電気泳動粒子と、正に帯電した黒い電気泳動粒子とを含むものとする。また、「白」を「第1階調」、「黒」を「第2階調」とする。
【0046】
図3(a)の状態では、表示部3に、第1画像として、白の背景上に黒で描かれた第1の図形が表示されている。ここで、図3(a)において、黒である領域を領域a、白である領域を領域bとする。尚、第1画像が書き込まれる直前には、表示部3全体が白表示となっている。第1画像が書き込まれる際には、図4に示すように、共通電極22はローレベルとされる。また、領域aに対応する画素20の画素電極21はハイレベルとされると共に、領域b(後述する領域c含む)に対応する画素20の画素電極21はローレベルとされる。
【0047】
これにより、領域aにおいてのみ黒い電気泳動粒子が共通電極22側に移動し、図3(a)に示すような第1画像が表示される。第1画像の書き込み後は、共通電極22及び全ての画素電極21がローレベルとされることによって表示内容(即ち、第1画像)が保持される(図4における期間(i)参照)。
【0048】
次に、第1画像から第2画像(後述する図3(d)参照)に表示画像を変更する前に、図3(b)に示すように、領域aと、領域bのうち領域aに隣接すると共に該領域aを囲む領域である領域cとが白表示にされ第1画像が消去される。この際、共通電極22及び領域b(領域c含まず)に対応する画素20の画素電極21はハイレベルとされる。また、領域a及び領域cに夫々対応する画素20の画素電極21はローレベルとされる(図4における期間(ii)参照)。これにより、領域aにおいてのみ黒い電気泳動粒子が画素電極21側に移動し第1の図形が消去される。
【0049】
尚、領域cの幅(即ち、領域aの外縁と領域cの外縁との間の距離)は、一画素の大きさに対応する幅であることが望ましい。
【0050】
次に、図3(c)に示すように、表示部3全体が白表示にされる。この際、共通電極22はハイレベルとされる。他方、全ての画素20の画素電極21はローレベルとされる(図4における期間(iii)参照)。
【0051】
次に、図3(d)に示すように、表示部3に、第2画像として、白の背景上に黒で描かれた第2の図形が表示される。ここで、図3(d)において、黒である領域を領域dとする。第2画像が書き込まれる際には、共通電極22はローレベルとされる。また、領域dに対応する画素20の画素電極21はハイレベルとされる。尚、表示部3のうち領域d以外の領域に対応する画素20の画素電極21はローレベルとされる。これにより、領域dにおいてのみ黒い電気泳動粒子が共通電極22側に移動し、図3(d)に示すような第2画像が表示される。
【0052】
ここで、本実施形態の比較例に係る電気泳動表示装置の動作時において表示画像を更新する際の動作について、図9及び図10を参照して説明する。ここに、図9は、図3と同趣旨の、本実施形態の比較例に係る電気泳動表示装置における書換動作を示す図であり、図10は、本実施形態の比較例に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を電気力線と共に示す図である。
【0053】
先ず、本実施形態と同様に、比較例に係る電気泳動表示装置の表示部3に、第1画像として、白の背景上に黒で描かれた第1の図形が表示されているとする(図9(a)参照)。比較例に係る電気泳動表示装置では、第1の図形を反転消去する際に、共通電極22がハイレベルとされると共に、領域aに対応する画素20の画素電極21のみローレベルとされる。これにより、領域aにおいてのみ黒い電気泳動粒子が画素電極21側に移動する。
【0054】
しかしながら、図10に示すように、領域aの端部に対応する画素20の画素電極21aと、領域bの領域aと隣接する部分に対応する画素20の画素電極21bとの電位が相互に異なるため、画素電極21a及び画素電極21b間にも電界が生じてしまう。すると、領域aの端部に対応する画素20の少なくとも一部が白表示とならない(即ち、反転されない)。この結果、領域aと領域bとの境界部分に、図9(b)に示すような焼き付きが生じる可能性がある。
【0055】
しかるに本実施形態に係る電気泳動表示装置1では、上述の如く、第1画像の反転消去時に、領域a及び領域cに夫々対応する画素20の画素電極21がローレベルとされると共に、共通電極22がハイレベルとされる。この結果、領域aの端部に対応する画素20の画素電極と、領域cの領域aと隣接する部分に対応する画素20の画素電極との電位が等しくなり、領域aと領域cとの境界部分が黒表示となること(即ち、反転されないこと)はない。従って、当該電気泳動表示装置1の表示部3における焼き付きを防止することができる。
【0056】
尚、図3では、第1の図形が矩形である場合を例として挙げたが、表示部3に表示される図形が、図5に示すようなリング状の場合、画像の反転消去時には、領域aと、領域aの外側の縁から該領域aの側とは反対側(即ち、外側)に所定幅だけずれた輪郭線を有する領域c1と、領域aの内側の縁から該領域aの側とは反対側(即ち、中心側)に所定幅だけすれた輪郭線を有する領域c2とに夫々対応する画素20の画素電極21がローレベルとされると共に、共通電極22がハイレベルとされる。ここに、図5は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【0057】
尚、本実施形態に係る「領域a」及び「領域b」は、夫々、本発明に係る「第2領域」及び「第1領域」の一例であり、本実施形態に係る「領域c」、「領域c1」及び「領域c2」は、本発明に係る「第3領域」の一例である。また、本実施形態に係る「反転消去期間(図4の期間(ii)参照)」及び「全白消去期間(図4の期間(iii)参照)」は、夫々、本発明に係る「第1期間」及び「第2期間」の一例である。
【0058】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例に係る電気泳動表示装置の動作時において表示画像を更新する際の動作について、図6を参照して説明する。ここに、図6は、図4と同趣旨の、本実施形態の変形例に係る書換期間において、画素電極及び共通電極に印加される電圧を示すタイミングチャートである。
【0059】
本変形例では、反転消去期間(図6の期間(ii)参照)の後に、全白消去期間(図4の期間(iii)参照)に代えて、比較的短い期間で全白表示と全黒表示とを繰り返し行う消去期間(図6の期間(iii)参照)を設けている。尚、全白表示と全黒表示との繰り返しは、1ミリ秒乃至10ミリ秒の周期で行うことが望ましい。
【0060】
比較的短い期間で全白表示と全黒表示とが繰り返されることにより、分散媒体中で電気泳動粒子が比較的よく攪拌されるので、画像消去時の残像や経時的な残像の低減又は軽減を図ることができる。
【0061】
<第2実施形態>
本発明の電気泳動表示装置に係る第2実施形態を、図7及び図8を参照して説明する。第2実施形態では、表示部等の構成が一部異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図7及び図8を参照して説明する。ここに、図7は、図1と同趣旨の、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図であり、図8は、図2と同趣旨の、本実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0062】
(電気泳動表示装置の構成)
図7において、本実施形態に係る電気泳動表示装置2は、表示部3と、走査線駆動回路60と、データ線駆動回路70と、コントローラー10と、電源回路200とを備えている。
【0063】
コントローラー10は、走査線駆動回路60、データ線駆動回路70及び電源回路200の動作を制御する。
【0064】
電源回路200は、高電位電源線91に高電位電源電位Vddを供給し、低電位電源線92に低電位電源電位Vssを供給し、共通電位線93に共通電位Vcomを供給し、第1の制御線94に第1の電位S1を供給し、第2の制御線95に第2の電位S2を供給する。尚、ここでは図示を省略するが、高電位電源線91、低電位電源線92、共通電位線93、第1の制御線94及び第2の制御線95の各々は、電気的なスイッチを介して電源回路200に電気的に接続されている。
【0065】
また、各画素20は、高電位電源線91、低電位電源線92、共通電位線93、第1の制御線94及び第2の制御線95に電気的に接続されている。高電位電源線91、低電位電源線92、共通電位線93、第1の制御線94及び第2の制御線95は夫々、典型的には図7中に示すように行方向(X方向)に沿って配列する画素20からなる画素列毎に、画素列に属する画素20に共通に配線される。
【0066】
電源回路200は、電源部210と、共通電位供給回路220と、DC−DCコンバーター230と、発振回路240とを備えている。
【0067】
電源部210は、1次電池或いは2次電池であり、共通電位供給回路220、DC−DCコンバーター230及び発振回路240に電力を供給している。電源部210は、電源電圧Vdc(例えば3V)を出力する。尚、本実施形態では、電源部210は、共通電位供給回路220、DC−DCコンバーター230及び発振回路240にのみ電力を供給しているが、これに限定されず、他の回路、例えばコントローラー10等に電力を供給してもよい。
【0068】
共通電位供給回路220は、共通電位線93にスイッチ93s(図8参照)を介して電気的に接続されており、DC−DCコンバーター230から印加される電圧に基づいて、共通電位Vcomを出力する。本実施形態では、共通電位供給回路220は、第1の制御線94にスイッチ94s(図8参照)を介して電気的に接続されており、共通電位Vcomを第1の電位S1として第1の制御線94に出力する。尚、本実施形態に係る「高電位電源線91」、「低電位電源線92」、「共通電位線93」、「第1の制御線94」及び「第2の制御線95」は、本発明に係る「駆動部」の他の例を構成する。
【0069】
DC−DCコンバーター230は、高電位電源線91にスイッチ91s(図8参照)を介して電気的に接続されており、電源部210から印加された電源電圧Vdc(例えば3V)に基づいて、高電位VH(例えば12V)を生成して高電位電源電位Vddとして出力する。
【0070】
発振回路240は、例えばリングオシレーター等を含んでなる発振回路であり、DC−DCコンバーター230にクロック信号を供給する。発振回路240は、コントローラー10の制御下で、その出力するクロック信号の周波数を変更可能に構成されている。
【0071】
また、電源回路200は、グランドに電気的に接続されることにより低電位VLとされた接地端子(図示省略)を備えており、この接地端子から低電位電源線92に低電位VLを低電位電源電位Vssとして出力している。
【0072】
尚、本実施形態では、第2の制御線95は、スイッチ95s(図8参照)を介して、DC−DCコンバーター230及び上述した接地電位と電気的に接続可能に構成されており、第2の制御線95には、DC−DCコンバーター230から出力される高電位VHと接地端子から出力される低電位VLとが切り替えられて第2の電位S2として出力される。
【0073】
次に、電気泳動表示装置2の画素20における原理的構成について、図8を参照して説明する。
【0074】
図8において、画素20は、画素スイッチング用トランジスター24と、メモリー回路25と、スイッチ回路110と、画素電極21と、共通電極22と、電気泳動素子23とを備えている。
【0075】
画素スイッチング用トランジスター24は、例えばN型トランジスターで構成されている。画素スイッチング用トランジスター24は、そのゲートが走査線40に電気的に接続されており、そのソースがデータ線50に電気的に接続されており、そのドレインがメモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。画素スイッチング用トランジスター24は、データ線駆動回路70(図7参照)からデータ線50を介して供給される画像信号を、走査線駆動回路60(図7参照)から走査線40を介してパルス的に供給される走査信号に応じたタイミングで、メモリー回路25の入力端子N1に出力する。
【0076】
メモリー回路25は、インバータ回路25a及び25bを有しており、SRAM(Static Random Access Memory)として構成されている。
【0077】
インバータ回路25a及び25bは、互いの入力端子に他方の出力端子が電気的に接続されたループ構造を有している。即ち、インバータ回路25aの入力端子とインバータ回路25bの出力端子とが互いに電気的に接続され、インバータ回路25bの入力端子とインバータ回路25aの出力端子とが互いに電気的に接続されている。インバータ回路25aの入力端子が、メモリー回路25の入力端子N1として構成されており、インバータ回路25aの出力端子が、メモリー回路25の出力端子N2として構成されている。
【0078】
インバータ回路25aは、N型トランジスター25a1及びP型トランジスター25a2を有している。N型トランジスター25a1及びP型トランジスター25a2のゲートは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。N型トランジスター25a1のソースは、低電位電源電位Vssが供給される低電位電源線92に電気的に接続されている。P型トランジスター25a2のソースは、高電位電源電位Vddが供給される高電位電源線91に電気的に接続されている。N型トランジスター25a1及びP型トランジスター25a2のドレインは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されている。
【0079】
インバータ回路25bは、N型トランジスター25b1及びP型トランジスター25b2を有している。N型トランジスター25b1及びP型トランジスター25b2のゲートは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されている。N型トランジスター25b1のソースは、低電位電源電位Vssが供給される低電位電源線92に電気的に接続されている。P型トランジスター25b2のソースは、高電位電源電位Vddが供給される高電位電源線91に電気的に接続されている。N型トランジスター25b1及びP型トランジスター25b2のドレインは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。
【0080】
メモリー回路25は、その入力端子N1にハイレベルの画像信号が入力されると、その出力端子N2から低電位電源電位Vssを出力し、その入力端子N1にローレベルの画像信号が入力されると、その出力端子N2から高電位電源電位Vddを出力する。即ち、メモリー回路25は、入力された画像信号がハイレベルであるかローレベルであるかに応じて、低電位電源電位Vss又は高電位電源電位Vddを出力する。言い換えれば、メモリー回路25は、入力された画像信号を、低電位電源電位Vss又は高電位電源電位Vddとして記憶可能に構成されている。
【0081】
スイッチ回路110は、第1のトランスミッションゲート111及び第2のトランスミッションゲート112を備えている。
【0082】
第1のトランスミッションゲート111は、P型トランジスター111p及びN型トランジスター111nを備えている。P型トランジスター111p及びN型トランジスター111nのソースは、第1の制御線94に電気的に接続されている。P型トランジスター111p及びN型トランジスター111nのドレインは、画素電極21に電気的に接続されている。P型トランジスター111pのゲートは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されており、N型トランジスター111nのゲートは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されている。
【0083】
第2のトランスミッションゲート112は、P型トランジスター112p及びN型トランジスター112nを備えている。P型トランジスター112p及びN型トランジスター112nのソースは、第2の制御線95に電気的に接続されている。P型トランジスター112p及びN型トランジスター112nのドレインは、画素電極21に電気的に接続されている。P型トランジスター112pのゲートは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されており、N型トランジスター112nのゲートは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。
【0084】
スイッチ回路110は、メモリー回路25に入力される画像信号に応じて、第1の制御線94及び第2の制御線95のいずれか一方の制御線を択一的に選択して、その一方の制御線を画素電極21に電気的に接続する。
【0085】
具体的には、メモリー回路25の入力端子N1にハイレベルの画像信号が入力されると、メモリー回路25からN型トランジスター111n及びP型トランジスター112pのゲートに低電位電源電位Vssが出力されると共に、P型トランジスター111p及びN型トランジスター112nのゲートに高電位電源電位Vddが出力されることにより、第2のトランスミッションゲート112を構成するP型トランジスター112p及びN型トランジスター112nのみがオン状態となり、第1のトランスミッションゲート111を構成するP型トランジスター111p及びN型トランジスター111nはオフ状態となる。
【0086】
一方、メモリー回路25の入力端子N1にローレベルの画像信号が入力されると、メモリー回路25からN型トランジスター111n及びP型トランジスター112pのゲートに高電位電源電位Vddが出力されると共に、P型トランジスター111p及びN型トランジスター112nのゲートに低電位電源電位Vssが出力されることにより、第1のトランスミッションゲート111を構成するP型トランジスター111p及びN型トランジスター111nのみがオン状態となり、第2のトランスミッションゲート112を構成するP型トランジスター112p及びN型トランジスター112nはオフ状態となる。つまり、メモリー回路25の入力端子N1にハイレベルの画像信号が入力された場合には、第2のトランスミッションゲート112のみがオン状態となり、一方、メモリー回路25の入力端子N1にローレベルの画像信号が入力された場合には、第1のトランスミッションゲート111のみがオン状態となる。
【0087】
複数の画素20の各々の画素電極21は、スイッチ回路110によって画像信号に応じて択一的に選択された第1の制御線94又は第2の制御線95に電気的に接続される。その際、複数の画素20の各々の画素電極21は、スイッチ94s又は95sのオンオフ状態に応じて、第1の電位S1又は第2の電位S2が供給される、或いはハイインピーダンス状態とされる。
【0088】
より具体的には、ローレベルの画像信号が供給される画素20については、第1のトランスミッションゲート111のみがオン状態となり、その画素20の画素電極21は、第1の制御線94に電気的に接続され、スイッチ94sのオンオフ状態に応じて電源回路200から第1の電位S1が供給され、又は、ハイインピーダンス状態とされる。一方、ハイレベルの画像信号が供給される画素20については、第2のトランスミッションゲート112のみがオン状態となり、その画素20の画素電極21は、第2の制御線95に電気的に接続され、スイッチ95sのオンオフ状態に応じて電源回路200から第2の電位S2が供給され、又は、ハイインピーダンス状態とされる。
【0089】
画素電極21は、電気泳動素子23を介して共通電極22と互いに対向するように配置されている。共通電極22は、共通電位Vcomが供給される共通電位線93に電気的に接続されている。
【0090】
<電子機器>
次に、上述した電気泳動表示装置を適用した電子機器について、図11及び図12を参照して説明する。以下では、上述した電気泳動表示装置を電子ペーパー及び電子ノートに適用した場合を例にとる。
【0091】
図11は、電子ペーパー1400の構成を示す斜視図である。
【0092】
図11に示すように、電子ペーパー1400は、上述した実施形態に係る電気泳動表示装置を表示部1401として備えている。電子ペーパー1400は可撓性を有し、従来の紙と同様の質感及び柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1402を備えて構成されている。
【0093】
図12は、電子ノート1500の構成を示す斜視図である。
【0094】
図12に示すように、電子ノート1500は、図11で示した電子ペーパー1400が複数枚束ねられ、カバー1501に挟まれているものである。カバー1501は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力するための表示データ入力手段(図示せず)を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
【0095】
上述した電子ペーパー1400及び電子ノート1500は、上述した実施形態に係る電気泳動表示装置を備えるので、表示部の焼き付きを防止して、高品質な画像表示を行うことが可能である。
【0096】
尚、これらの他に、腕時計、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの電子機器の表示部に、上述した本実施形態に係る電気泳動表示装置を適用することができる。
【0097】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気泳動表示装置及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
1、2…電気泳動表示装置、3…表示部、10…コントローラー、20…画素、21…画素電極、22…共通電極、23…電気泳動素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する画素電極及び共通電極間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子が夫々設けられた複数の画素からなる表示部と、
画像データに基づいて、前記画素電極及び前記共通電極間に駆動電圧を印加することにより、前記表示部に前記画像データに対応する画像を表示する駆動部と
を備え、
前記駆動部は、前記表示部に表示される画像を第1画像から第2画像へ書き換える書換期間において、前記第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域である第1領域のうち、前記第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域である第2領域に隣接すると共に前記第2領域を囲む領域である第3領域と、前記第2領域とに夫々対応する画素の画素電極及び共通電極間に、前記第2領域及び前記第3領域を前記第1階調にする駆動電圧を印加する第1期間を設ける
ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記第3領域は、前記第2領域の縁から前記第2領域の側とは反対側に所定幅だけずれた輪郭線を有していることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記所定幅は、一画素の大きさに対応する幅であることを特徴とする請求項2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記第1期間の後に、前記表示部全体を前記第1階調にする第2期間を設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項5】
前記第2期間では、前記駆動部は、前記表示部の全領域における画素電極及び共通電極間に、前記第1階調にする駆動電圧を印加することを特徴とする請求項4に記載の電気泳動表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
互いに対向する画素電極及び共通電極間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子が夫々設けられた複数の画素からなる表示部と、
画像データに基づいて、前記画素電極及び前記共通電極間に駆動電圧を印加することにより、前記表示部に前記画像データに対応する画像を表示する駆動部と
を備え、
前記駆動部は、前記表示部に表示される画像を第1画像から第2画像へ書き換える書換期間において、前記第1画像が表示されている期間に第1階調であった領域である第1領域のうち、前記第1画像が表示されている期間に第2階調であった領域である第2領域に隣接すると共に前記第2領域を囲む領域である第3領域と、前記第2領域とに夫々対応する画素の画素電極及び共通電極間に、前記第2領域及び前記第3領域を前記第1階調にする駆動電圧を印加する第1期間を設ける
ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記第3領域は、前記第2領域の縁から前記第2領域の側とは反対側に所定幅だけずれた輪郭線を有していることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記所定幅は、一画素の大きさに対応する幅であることを特徴とする請求項2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記第1期間の後に、前記表示部全体を前記第1階調にする第2期間を設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項5】
前記第2期間では、前記駆動部は、前記表示部の全領域における画素電極及び共通電極間に、前記第1階調にする駆動電圧を印加することを特徴とする請求項4に記載の電気泳動表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−211033(P2010−211033A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58068(P2009−58068)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]