電気泳動装置、電気泳動装置の駆動方法、電子機器
【課題】電気泳動装置の階調表現等の特性が向上させること。
【解決手段】複数の画素を有し、前記複数の画素の各々が、第1の電極と、第2の電極と、前記第1電極及び前記第2電極間の所定の電位差により駆動される電気泳動層を有し、前記複数の画素の各々の表示は、前記所定の電位差を、表示する階調に対応した回数印加することで行われる電気泳動装置である。
【解決手段】複数の画素を有し、前記複数の画素の各々が、第1の電極と、第2の電極と、前記第1電極及び前記第2電極間の所定の電位差により駆動される電気泳動層を有し、前記複数の画素の各々の表示は、前記所定の電位差を、表示する階調に対応した回数印加することで行われる電気泳動装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動粒子を含有する分散系を備える電気泳動装置とその駆動方法並びに当該電気泳動装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動現象を利用した電気泳動装置が知られており、非発光型の表示装置としての応用が期待されている。しかし、電気泳動装置の多階調化技術や表示の保持方法は未成熟であり、未知の部分が多い。電気泳動装置の従来例として、特開2002−116733号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。この特許文献1に開示された電気泳動装置は、画像データの指示する階調値に応じた期間だけ、各画素電極に電圧を印加し、その後各画素電極に共通電極電位を書き込むことにより、画像を保持するというものである。しかし、この従来例の電気泳動装置では、画像の階調表現等の特性について未だ改良の余地があった。
【0003】
【特許文献1】特開2002−116733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明に係る具体的態様は、電気泳動装置の階調表現等の特性が向上させることが可能な技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電気泳動装置は、複数の画素を有し、前記複数の画素の各々が、第1電極と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極間の所定の電位差により駆動される電気泳動層を有し、前記複数の画素の各々の表示は、前記所定の電位差を、表示する階調に対応した回数印加することで行われる。
【0006】
かかる構成によれば、電気泳動装置の階調特性を向上させることができる。
【0007】
好ましくは、上記した電気泳動装置において、前記複数の画素の各々は、最大階調数により定められた最大回数スキャンされ、前記最大回数の中の、前記表示する階調に対応した回数だけ前記所定の電位差が印加される。
【0008】
前記複数の画素の各々は、前記所定の電位差の印加回数が多いものほど先のスキャンで印加が開始されてもよい。なお、前記複数の画素の各々は、前記所定の電位差の印加回数に関わらず同じスキャンで印加が開始されてもよい。
【0009】
電圧書き込みに要する回数が多い画素部ほど電圧書き込みをより早く開始し、電圧書き込みに要する回数が少ない画素ほど電圧書き込みをより遅く開始した場合には、全ての画素に対して、それぞれに必要な電圧書き込みを完了する時期を揃えることができる。それにより、他の画素部への電圧書き込みが完了するまでの間に、電圧書き込みに要する回数が少ない画素部への電圧書き込みが早い段階で完了してしまい当該画素部において電荷の放電が生じて電気泳動層の分布状態が保持されなくなることを回避することが可能となる。
【0010】
前記所定の電位差の印加は、例えば、所定期間間隔で行われる。当該所定の電位差は、例えば、前記第1電極の電位を前記第2電極の電位よりも相対的に高くすることで得る。
【0011】
好ましくは、前記複数の画素の各々に対しての前記所定の電位差の印加が終了した後、前記第2電極を高インピーダンス状態にする。
【0012】
それにより、電圧書き込み後における各画素部の電荷保持特性が向上し、表示品質を更に高めることができる。
【0013】
例えば、前記複数の画素の各々は、駆動手段と前記第1電極との間に設けられた第1スイッチング素子と、一方端が前記第1電極に接続された容量素子を有する。
【0014】
また、前記複数の画素の各々は、更に、前記第1スイッチング素子と前記第1電極との間に設けられ、前記駆動手段により駆動される第2スイッチング素子を備えることも好ましい。この第2スイッチング素子は、例えば、前記所定の電位差の印加開始で導通状態とされ、前記印加開始後の所定の時間を経過した後で非導通状態とされる、
【0015】
電圧書き込み中に適宜第2スイッチング素子を非導通状態とすることにより、各画素部に書き込まれる電圧をより細かく制御し、より多くの階調表現を達成することができる。
【0016】
本発明に係る電気泳動装置の駆動方法は、上記した本発明に係る電気泳動装置に用いられている駆動方法である。
【0017】
また、本発明に係る電子機器は、上述した電気泳動装置を備える。ここで、「電子機器」は、電気泳動材料による表示を利用する表示部を備えるあらゆる機器を含むもので、ディスプレイ装置、テレビジョン装置、電子ペーパー、時計、電卓、携帯電話、携帯情報端末等を含む。また、「機器」という概念からはずれるもの、例えば可撓性のある紙状/フィルム状の物体、これら物体が貼り付けられた壁面等の不動産に属するもの、車両、飛行体、船舶等の移動体に属するものも含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明するのは本発明を適用した実施形態の1つに過ぎず、本発明の適用範囲は以下の実施形態にのみ限定されるものではない。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電気泳動装置の構成を模式的に示す回路図である。本実施形態における電気泳動装置は、マトリクス状に配置された複数の画素部100を有する。各画素部100に含まれる電気泳動素子105の状態を制御することにより、各画素部100における外部光の反射率(換言すれば階調)を多段階に制御することができる。これにより、外部から視認できる画像が形成される。図1に基づいて電気泳動装置の構成について更に説明する。本実施形態に係る電気泳動装置は、複数の走査線101と、これらの走査線101と交差して配置された複数のデータ線102と、これらの走査線101及びデータ線102の各交点に対応付けてそれぞれ配置された画素部100と、各走査線101を介して各画素部100と接続されたスキャンドライバ(走査線駆動回路)130と、各データ線102を介して各画素部100と接続されたデータドライバ(データ線駆動回路)140と、を備える。
【0020】
図2は、第1の実施形態に係る画素部100の構成を示す回路図である。各画素部100は、それぞれトランジスタ(第1スイッチング素子)103、容量素子104、電気泳動素子105を含んで構成されている。トランジスタ103は、ゲートに接続された走査線101を通じてスキャンドライバ130から走査信号の供給を受け、ソースに接続されたデータ線102を通じてデータドライバからデータ信号の供給を受ける。容量素子104は、一方端子がトランジスタ103のドレインと接続され、他方端子が容量線106に接続されている。
【0021】
電気泳動素子105は、共通電極110と、画素電極111と、共通電極110及び画素電極111の間に設けられた電気泳動層112と、を備える。一方端子としての画素電極(第1電極)111がトランジスタ103のドレインと接続され、他方端子としての共通電極(第2電極)110は図示しない電源回路と接続されている。なお、本実施形態では共通電極110と上述した容量線106には同電位が与えられる。共通電極110は、各画素部100に対応する各電気泳動素子105に渡って形成されており、これらの間で共有される。電気泳動層112は、多数の黒色粒子(第1粒子)及び白色粒子(第2粒子)を含有する。本実施形態においては、黒色粒子がプラス(正)に帯電し、白色粒子がマイナス(負)に帯電している。なお、図示の例ではマイクロカプセル型の電気泳動層が示されているが、電気泳動層の実施態様はこれに限定されない。
【0022】
図3は、第1の実施形態に係る電気泳動装置の断面構造を模式的に示した断面図である。本実施形態の電気泳動装置において、共通電極110および各画素電極111はそれぞれ基板上に設けられており、当該基板の相互間に電気泳動層112が設けられている。また、本実施形態においては、共通電極110の側から視認し得るよう画像形成が行われるものとする。共通電極110に対して画素電極111が相対的に高い電位となるような電圧を印加すると黒表示となり、共通電極110に対して画素電極111が相対的に低い電位となるような電圧を印加すると白表示となる。本実施形態では、各画素電極111には、高電位(HI;例えば+30V)または低電位(LO;例えば0V)のいずれかが印加され、共通電極110には高電位と低電位の中間電位1/2(HI+LO)が印加される。なお、電気泳動層112の分散媒や電気泳動粒子などについては、公知技術(例えば特開2007−213014号公報参照)を採用して実現可能である。なお、各粒子の色調をどのようにするかは任意であり、本実施形態における黒色と白色の組み合わせは一例に過ぎない。また、少なくとも1種類の電気泳動粒子が含まれていればよい。
【0023】
図4は、第1の実施形態に係る画素部における各部の電圧変化を模式的に示した図である。上記図2に示したように、本実施形態における画素部100は、いわゆる1T1C画素回路である。このような画素部100は、トランジスタ103を介してデータ信号電圧が書き込まれるとこの電圧が容量素子104に保持される。そして、この容量素子104によって電気泳動素子105への電圧が保たれる。しかし、一般に電気泳動素子の静電容量は、例えば液晶素子と比較すると大きい。よって、図4に示すように、1回の画素選択期間による電圧書き込み後、容量素子104の電圧(保持容量電圧)は大きく低下してしまう。このため、1回の電圧書き込みでは、白表示または黒表示の極限状態(上記図3参照)は得難く、複数回の電圧書き込みが必要となる。例えば、黒表示の極限状態(最も黒い状態、すなわち共通電極111側における反射率が低い状態)を得るのに必要な電圧書き込みの回数をX回とすると、初期状態からの電圧書き込みの回数をX回より少ない回数とした画素部100については中間階調(グレー)が得られる。よって、各画素部100について電圧書き込みの回数を調整することにより、任意の多階調表示を得ることができる。例えば、上記したXを3回とすると、ある画素部100において、共通電極110に対して画素電極111が相対的に高い電位となる電圧書き込みを3回行えば黒表示、電圧書き込みを2回行えばミッドグレー(濃いグレー)表示、電圧書き込みを1回だけ行えばライトグレー(薄いグレー)、電圧書き込みを行わない場合(電圧書き込みが0回の場合)には白表示、というように4階調の表示制御が可能となる。
【0024】
図5は、第1の実施形態に係る電気泳動装置の駆動方法を示す波形図である。図示のように本実施形態においては1フレーム期間(所定期間)ごとに電圧書き込みが行われる。詳細には、黒表示に制御したい画素部100に対しては、1フレーム目、2フレーム目、3フレーム目のすべてにおいて、データ信号電圧を高電位(HI)にする。それにより、その画素部100の画素電極111に印加される電圧は、各フレームのいずれにおいても高電位になる。すなわち、この画素部100には3回の電圧書き込みが行われる。なお、共通電極110の電位は中間電位である1/2(HI+LO)に設定されている。
【0025】
また、ミッドグレー表示に制御したい画素部100に対しては、2フレーム目および3フレーム目において、データ信号電圧を高電位(HI)にする。それにより、その画素部100の画素電極111に印加される電圧は、2フレーム目および3フレーム目にのみ高電位になる。すなわち、この画素部100には2回の電圧書き込みが行われる。
【0026】
また、ライトグレー表示に制御したい画素部100に対しては、3フレーム目にのみデータ信号電圧を高電位(HI)にする。それにより、その画素部100の画素電極111に印加される電圧は3フレーム目にのみ高電位になる。すなわち、この画素部100には1回の電圧書き込みが行われる。
【0027】
また、白表示に制御したい画素部100に対しては、各フレームのいずれにおいてもデータ信号電圧が共通電極110の電位と同じ中間電位である1/2(HI+LO)に設定される。それにより、その画素部100の画素電極111に印加される電圧は各フレームのいずれにおいても中間電位になる。すなわち、この画素部100には0回の電圧書き込みが行われる。
【0028】
このように本実施形態では、電圧書き込みの回数によって階調を制御することにより階調特性を向上させている。
【0029】
また、電圧書き込みを行うべき回数が多いほどその画素部100に対する電圧書き込みがより先の時期(すなわち、先のフレーム)から開始され、電圧書き込みを行うべき回数が少ないほどその画素部100に対する電圧書き込みがより後の時期(すなわち、後のフレーム)から開始される。それにより、図示のように、全画素部100において電圧書き込みが終了するタイミングが揃う(等しくなる)。それにより、他の画素部への電圧書き込みが完了するまでの間に、電圧書き込みに要する回数が少ない画素部への電圧書き込みが早い段階で完了してしまい当該画素部において電荷の放電が生じて電気泳動層の分布状態が保持されなくなることを回避することが可能となる。従って、電圧書き込みの回数に応じた階調制御を良好に行うことが可能となる。
【0030】
更に本実施形態では、全画素部100への電圧書き込みが終了した後に、共通電極110を高インピーダンス状態とする。それにより、全画素部100において電荷が保持され、黒浮きを抑えることができる。
【0031】
図6は、比較例の電気泳動装置の駆動方法を示す波形図である。本比較例は、画素部100に設定したい階調に応じて電圧書き込みの回数を調整している点は上記図5に示した本実施形態と同様であるが、電圧書き込みの回数が少ない画素部100ほど、より早い時期(すなわち、先のフレーム)において電圧書き込みが実行される点が異なっている。このような比較例の駆動方法では、必要な回数の電圧書き込みが終了した画素部100については、その後、画素電極111と共通電極110とが同電位に設定されるので、電荷が急激に放電されてしまい、中間階調が保持されにくくなる。
【0032】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る電気泳動装置の構成を模式的に示す回路図である。本実施形態における電気泳動装置は、基本的に上述した第1の実施形態に係る電気泳動装置と同様の構成を有しており、画素部100aの構成が一部異なる点と、これらの画素部100aと消去線151を介して接続された消去線ドライバ150が追加された点と、が相違している。なお、第1の実施形態における構成と共通する構成については同一の符号を用いており、それらについては詳細な説明を省略する。
【0033】
図8は、第2の実施形態に係る画素部100aの構成を示す回路図である。各画素部100aは、それぞれトランジスタ(第1スイッチング素子)103、容量素子104、電気泳動素子105、消去トランジスタ(第2スイッチング素子)152を含んで構成されている。なお、第1の実施形態における構成と共通する構成については同一の符号を用いており、それらについては詳細な説明を省略する。消去トランジスタ152は、トランジスタ103のドレインと電気泳動素子105の画素電極111との間に設けられている。この消去トランジスタ152は、ゲートに接続された消去線151を通じて消去線ドライバ150から消去信号の供給を受けて、トランジスタ103のドレインと電気泳動素子105の画素電極111との間を導通状態(トランジスタ;オン)又は非導通状態(トランジスタ;オフ)にする。
【0034】
図9は、画素部100aにおける各部の電圧変化を模式的に示した図である。上記図8に示した画素部100aは、トランジスタ103、消去トランジスタ152ともにオン状態とし、トランジスタ103を介してデータ信号電圧が書き込まれるとこの電圧が容量素子104に保持され、この容量素子104によって電気泳動素子105への電圧が保たれる。しかし、上述したように1回の画素選択期間による電圧書き込み後、容量素子104の電圧は大きく低下してしまう。
【0035】
このとき、図示のように、トランジスタ103がオフ状態となった時点(すなわち画素選択期間が終了した時点)からある程度の期間が経過したタイミングで消去トランジスタ152もオフ状態(非導通状態)とする。詳細には、図7において模式的に示したように、走査線ドライバ130による走査線選択のタイミングと消去線ドライバによる消去線選択のタイミングとの時間差Δtが消去トランジスタ152のオン期間、すなわち書き込み時間になる。一定のオン期間を経過して消去トランジスタ152がオフ状態となることにより、トランジスタ103のドレインと電気泳動素子105の画素電極111との間が非導通状態となり、容量素子104の一方端子及び電気泳動素子105の画素電極111がそれぞれ高インピーダンス状態となる。それにより、容量素子104の保持容量電圧の低下が抑えられ、電気泳動素子105の画素電極111の電位(電気泳動素子電圧)の上昇も抑えられる。仮に消去トランジスタをオフ状態としなかった場合には、図9において点線で示したように保持容量電圧が低下し、電気泳動素子電圧が上昇する。
【0036】
このように、所定期間(本実施形態では1フレーム期間)の途中に任意のタイミングで消去トランジスタ152をオフとすることで、電気泳動素子105への電圧印加が中断され、電圧印加時間が1フレーム期間よりも短くなる。よって、電圧印加時間の制御性が増し、一層の多階調化が可能となる。また、容量素子104と電気泳動素子105の間が高インピーダンス状態となるために中間調表示も保持される。
【0037】
階調制御の一例を説明する。例えば、上記した第1の実施形態と同様に、黒表示の極限状態を得るのに必要な電圧書き込みの回数Xを3回と仮定すると、ある画素部100において、共通電極110に対して画素電極111が相対的に高い電位となる電圧書き込みを1回行い、当該電圧書き込みの途中で消去トランジスタ152をオフ状態とすることにより、電気泳動素子105を白表示とライトグレー表示との間の階調に表示制御することができる。また、ある画素部100において、共通電極110に対して画素電極111が相対的に高い電位となる電圧書き込みを2回行い、当該2回目の電圧書き込みの途中で消去トランジスタ152をオフ状態とすることにより、電気泳動素子105をライトグレー表示とミッドグレー表示の間の階調に表示制御することができる。同様に、ある画素部100において、共通電極110に対して画素電極111が相対的に高い電位となる電圧書き込みを3回行い、当該3回目の電圧書き込みの途中で消去トランジスタ152をオフ状態とすることにより、電気泳動素子105をミッドグレー表示と黒表示との間の階調に表示制御することができる。上記した一定時間Δtをどの程度に設定するかにより階調を制御し得る。
【0038】
図9に示したような階調制御の期間を、例えば第1の実施形態において説明した3つのフレーム期間を用いた階調制御(図4〜図6参照)の後に4フレーム目以降を追加してゆくこともできる。それにより、上記した第1の実施形態と同様に中間調の保持特性に優れ、かつ階調をより細かく制御可能な電気泳動装置が得られる。
【0039】
図10は、第2の実施形態に係る電気泳動装置の変形構成例を模式的に示す回路図である。この電気泳動装置は、基本的には図7に示した電気泳動装置と同様の構成を有している。なお、第1、第2の各実施形態における構成と共通する構成については同一の符号を用いており、それらについては詳細な説明を省略する。図10に示す電気泳動装置では、消去トランジスタ152のゲートに与える信号を制御するためのトランジスタ161及び容量素子163が追加されている。消去線151はこのトランジスタ161のゲートと接続されている。また、トランジスタ161のソースは、消去データ線162を介して消去データドライバ160と接続されている。このような構成によれば、各画素部100aのそれぞれ毎に消去トランジスタ152のオン/オフを制御することが可能となる。
【0040】
(第3の実施形態)
図11は、電気泳動装置を適用した電子機器の具体例を説明する斜視図である。図11(A)は、電子機器の一例である電子ブックを示す斜視図である。この電子ブック1000は、ブック形状のフレーム1001と、このフレーム1001に対して回動自在に設けられた(開閉可能な)カバー1002と、操作部1003と、本実施形態に係る電気泳動装置によって構成された表示部1004と、を備えている。図11(B)は、電子機器の一例である腕時計を示す斜視図である。この腕時計1100は、本実施形態に係る電気泳動装置によって構成された表示部1101を備えている。図11(C)は、電子機器の一例である電子ペーパーを示す斜視図である。この電子ペーパー1200は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体部1201と、本実施形態に係る電気泳動装置によって構成された表示部1202と、を備えている。なお、電気泳動装置を適用可能な電子機器の範囲はこれに限定されず、電気泳動粒子の移動に伴う視覚上の色調の変化を利用した装置を広く含むものである。例えば、上記のような装置の他、電気泳動フィルムが貼り合わせられた壁面等の不動産に属するもの、車両、飛行体、船舶等の移動体に属するものも該当する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態に係る電気泳動装置の構成を模式的に示す回路図である。
【図2】第1の実施形態に係る画素部の構成を示す回路図である。
【図3】第1の実施形態に係る電気泳動装置の断面構造を模式的に示した断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る画素部における各部の電圧変化を模式的に示した図である。
【図5】第1の実施形態に係る電気泳動装置の駆動方法を示す波形図である。
【図6】比較例の電気泳動装置の駆動方法を示す波形図である。
【図7】第2の実施形態に係る電気泳動装置の構成を模式的に示す回路図である。
【図8】第2の実施形態に係る画素部の構成を示す回路図である。
【図9】第2の実施形態に係る画素部における各部の電圧変化を模式的に示した図である。
【図10】第2の実施形態に係る電気泳動装置の変形構成例を模式的に示す回路図である。
【図11】電気泳動装置を適用した電子機器の具体例を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
100、100a…画素部、101…走査線、102…データ線、103…トランジスタ(第1スイッチング素子)、104…容量素子、105…電気泳動素子、106…容量線、110…共通電極、111…画素電極(個別電極)、112…電気泳動層、130…スキャンドライバ、140…データドライバ、150…消去線ドライバ、151…消去線、152…消去トランジスタ(第2スイッチング素子)、160…消去データドライバ、161…トランジスタ、162…消去データ線
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動粒子を含有する分散系を備える電気泳動装置とその駆動方法並びに当該電気泳動装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動現象を利用した電気泳動装置が知られており、非発光型の表示装置としての応用が期待されている。しかし、電気泳動装置の多階調化技術や表示の保持方法は未成熟であり、未知の部分が多い。電気泳動装置の従来例として、特開2002−116733号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。この特許文献1に開示された電気泳動装置は、画像データの指示する階調値に応じた期間だけ、各画素電極に電圧を印加し、その後各画素電極に共通電極電位を書き込むことにより、画像を保持するというものである。しかし、この従来例の電気泳動装置では、画像の階調表現等の特性について未だ改良の余地があった。
【0003】
【特許文献1】特開2002−116733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明に係る具体的態様は、電気泳動装置の階調表現等の特性が向上させることが可能な技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電気泳動装置は、複数の画素を有し、前記複数の画素の各々が、第1電極と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極間の所定の電位差により駆動される電気泳動層を有し、前記複数の画素の各々の表示は、前記所定の電位差を、表示する階調に対応した回数印加することで行われる。
【0006】
かかる構成によれば、電気泳動装置の階調特性を向上させることができる。
【0007】
好ましくは、上記した電気泳動装置において、前記複数の画素の各々は、最大階調数により定められた最大回数スキャンされ、前記最大回数の中の、前記表示する階調に対応した回数だけ前記所定の電位差が印加される。
【0008】
前記複数の画素の各々は、前記所定の電位差の印加回数が多いものほど先のスキャンで印加が開始されてもよい。なお、前記複数の画素の各々は、前記所定の電位差の印加回数に関わらず同じスキャンで印加が開始されてもよい。
【0009】
電圧書き込みに要する回数が多い画素部ほど電圧書き込みをより早く開始し、電圧書き込みに要する回数が少ない画素ほど電圧書き込みをより遅く開始した場合には、全ての画素に対して、それぞれに必要な電圧書き込みを完了する時期を揃えることができる。それにより、他の画素部への電圧書き込みが完了するまでの間に、電圧書き込みに要する回数が少ない画素部への電圧書き込みが早い段階で完了してしまい当該画素部において電荷の放電が生じて電気泳動層の分布状態が保持されなくなることを回避することが可能となる。
【0010】
前記所定の電位差の印加は、例えば、所定期間間隔で行われる。当該所定の電位差は、例えば、前記第1電極の電位を前記第2電極の電位よりも相対的に高くすることで得る。
【0011】
好ましくは、前記複数の画素の各々に対しての前記所定の電位差の印加が終了した後、前記第2電極を高インピーダンス状態にする。
【0012】
それにより、電圧書き込み後における各画素部の電荷保持特性が向上し、表示品質を更に高めることができる。
【0013】
例えば、前記複数の画素の各々は、駆動手段と前記第1電極との間に設けられた第1スイッチング素子と、一方端が前記第1電極に接続された容量素子を有する。
【0014】
また、前記複数の画素の各々は、更に、前記第1スイッチング素子と前記第1電極との間に設けられ、前記駆動手段により駆動される第2スイッチング素子を備えることも好ましい。この第2スイッチング素子は、例えば、前記所定の電位差の印加開始で導通状態とされ、前記印加開始後の所定の時間を経過した後で非導通状態とされる、
【0015】
電圧書き込み中に適宜第2スイッチング素子を非導通状態とすることにより、各画素部に書き込まれる電圧をより細かく制御し、より多くの階調表現を達成することができる。
【0016】
本発明に係る電気泳動装置の駆動方法は、上記した本発明に係る電気泳動装置に用いられている駆動方法である。
【0017】
また、本発明に係る電子機器は、上述した電気泳動装置を備える。ここで、「電子機器」は、電気泳動材料による表示を利用する表示部を備えるあらゆる機器を含むもので、ディスプレイ装置、テレビジョン装置、電子ペーパー、時計、電卓、携帯電話、携帯情報端末等を含む。また、「機器」という概念からはずれるもの、例えば可撓性のある紙状/フィルム状の物体、これら物体が貼り付けられた壁面等の不動産に属するもの、車両、飛行体、船舶等の移動体に属するものも含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明するのは本発明を適用した実施形態の1つに過ぎず、本発明の適用範囲は以下の実施形態にのみ限定されるものではない。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電気泳動装置の構成を模式的に示す回路図である。本実施形態における電気泳動装置は、マトリクス状に配置された複数の画素部100を有する。各画素部100に含まれる電気泳動素子105の状態を制御することにより、各画素部100における外部光の反射率(換言すれば階調)を多段階に制御することができる。これにより、外部から視認できる画像が形成される。図1に基づいて電気泳動装置の構成について更に説明する。本実施形態に係る電気泳動装置は、複数の走査線101と、これらの走査線101と交差して配置された複数のデータ線102と、これらの走査線101及びデータ線102の各交点に対応付けてそれぞれ配置された画素部100と、各走査線101を介して各画素部100と接続されたスキャンドライバ(走査線駆動回路)130と、各データ線102を介して各画素部100と接続されたデータドライバ(データ線駆動回路)140と、を備える。
【0020】
図2は、第1の実施形態に係る画素部100の構成を示す回路図である。各画素部100は、それぞれトランジスタ(第1スイッチング素子)103、容量素子104、電気泳動素子105を含んで構成されている。トランジスタ103は、ゲートに接続された走査線101を通じてスキャンドライバ130から走査信号の供給を受け、ソースに接続されたデータ線102を通じてデータドライバからデータ信号の供給を受ける。容量素子104は、一方端子がトランジスタ103のドレインと接続され、他方端子が容量線106に接続されている。
【0021】
電気泳動素子105は、共通電極110と、画素電極111と、共通電極110及び画素電極111の間に設けられた電気泳動層112と、を備える。一方端子としての画素電極(第1電極)111がトランジスタ103のドレインと接続され、他方端子としての共通電極(第2電極)110は図示しない電源回路と接続されている。なお、本実施形態では共通電極110と上述した容量線106には同電位が与えられる。共通電極110は、各画素部100に対応する各電気泳動素子105に渡って形成されており、これらの間で共有される。電気泳動層112は、多数の黒色粒子(第1粒子)及び白色粒子(第2粒子)を含有する。本実施形態においては、黒色粒子がプラス(正)に帯電し、白色粒子がマイナス(負)に帯電している。なお、図示の例ではマイクロカプセル型の電気泳動層が示されているが、電気泳動層の実施態様はこれに限定されない。
【0022】
図3は、第1の実施形態に係る電気泳動装置の断面構造を模式的に示した断面図である。本実施形態の電気泳動装置において、共通電極110および各画素電極111はそれぞれ基板上に設けられており、当該基板の相互間に電気泳動層112が設けられている。また、本実施形態においては、共通電極110の側から視認し得るよう画像形成が行われるものとする。共通電極110に対して画素電極111が相対的に高い電位となるような電圧を印加すると黒表示となり、共通電極110に対して画素電極111が相対的に低い電位となるような電圧を印加すると白表示となる。本実施形態では、各画素電極111には、高電位(HI;例えば+30V)または低電位(LO;例えば0V)のいずれかが印加され、共通電極110には高電位と低電位の中間電位1/2(HI+LO)が印加される。なお、電気泳動層112の分散媒や電気泳動粒子などについては、公知技術(例えば特開2007−213014号公報参照)を採用して実現可能である。なお、各粒子の色調をどのようにするかは任意であり、本実施形態における黒色と白色の組み合わせは一例に過ぎない。また、少なくとも1種類の電気泳動粒子が含まれていればよい。
【0023】
図4は、第1の実施形態に係る画素部における各部の電圧変化を模式的に示した図である。上記図2に示したように、本実施形態における画素部100は、いわゆる1T1C画素回路である。このような画素部100は、トランジスタ103を介してデータ信号電圧が書き込まれるとこの電圧が容量素子104に保持される。そして、この容量素子104によって電気泳動素子105への電圧が保たれる。しかし、一般に電気泳動素子の静電容量は、例えば液晶素子と比較すると大きい。よって、図4に示すように、1回の画素選択期間による電圧書き込み後、容量素子104の電圧(保持容量電圧)は大きく低下してしまう。このため、1回の電圧書き込みでは、白表示または黒表示の極限状態(上記図3参照)は得難く、複数回の電圧書き込みが必要となる。例えば、黒表示の極限状態(最も黒い状態、すなわち共通電極111側における反射率が低い状態)を得るのに必要な電圧書き込みの回数をX回とすると、初期状態からの電圧書き込みの回数をX回より少ない回数とした画素部100については中間階調(グレー)が得られる。よって、各画素部100について電圧書き込みの回数を調整することにより、任意の多階調表示を得ることができる。例えば、上記したXを3回とすると、ある画素部100において、共通電極110に対して画素電極111が相対的に高い電位となる電圧書き込みを3回行えば黒表示、電圧書き込みを2回行えばミッドグレー(濃いグレー)表示、電圧書き込みを1回だけ行えばライトグレー(薄いグレー)、電圧書き込みを行わない場合(電圧書き込みが0回の場合)には白表示、というように4階調の表示制御が可能となる。
【0024】
図5は、第1の実施形態に係る電気泳動装置の駆動方法を示す波形図である。図示のように本実施形態においては1フレーム期間(所定期間)ごとに電圧書き込みが行われる。詳細には、黒表示に制御したい画素部100に対しては、1フレーム目、2フレーム目、3フレーム目のすべてにおいて、データ信号電圧を高電位(HI)にする。それにより、その画素部100の画素電極111に印加される電圧は、各フレームのいずれにおいても高電位になる。すなわち、この画素部100には3回の電圧書き込みが行われる。なお、共通電極110の電位は中間電位である1/2(HI+LO)に設定されている。
【0025】
また、ミッドグレー表示に制御したい画素部100に対しては、2フレーム目および3フレーム目において、データ信号電圧を高電位(HI)にする。それにより、その画素部100の画素電極111に印加される電圧は、2フレーム目および3フレーム目にのみ高電位になる。すなわち、この画素部100には2回の電圧書き込みが行われる。
【0026】
また、ライトグレー表示に制御したい画素部100に対しては、3フレーム目にのみデータ信号電圧を高電位(HI)にする。それにより、その画素部100の画素電極111に印加される電圧は3フレーム目にのみ高電位になる。すなわち、この画素部100には1回の電圧書き込みが行われる。
【0027】
また、白表示に制御したい画素部100に対しては、各フレームのいずれにおいてもデータ信号電圧が共通電極110の電位と同じ中間電位である1/2(HI+LO)に設定される。それにより、その画素部100の画素電極111に印加される電圧は各フレームのいずれにおいても中間電位になる。すなわち、この画素部100には0回の電圧書き込みが行われる。
【0028】
このように本実施形態では、電圧書き込みの回数によって階調を制御することにより階調特性を向上させている。
【0029】
また、電圧書き込みを行うべき回数が多いほどその画素部100に対する電圧書き込みがより先の時期(すなわち、先のフレーム)から開始され、電圧書き込みを行うべき回数が少ないほどその画素部100に対する電圧書き込みがより後の時期(すなわち、後のフレーム)から開始される。それにより、図示のように、全画素部100において電圧書き込みが終了するタイミングが揃う(等しくなる)。それにより、他の画素部への電圧書き込みが完了するまでの間に、電圧書き込みに要する回数が少ない画素部への電圧書き込みが早い段階で完了してしまい当該画素部において電荷の放電が生じて電気泳動層の分布状態が保持されなくなることを回避することが可能となる。従って、電圧書き込みの回数に応じた階調制御を良好に行うことが可能となる。
【0030】
更に本実施形態では、全画素部100への電圧書き込みが終了した後に、共通電極110を高インピーダンス状態とする。それにより、全画素部100において電荷が保持され、黒浮きを抑えることができる。
【0031】
図6は、比較例の電気泳動装置の駆動方法を示す波形図である。本比較例は、画素部100に設定したい階調に応じて電圧書き込みの回数を調整している点は上記図5に示した本実施形態と同様であるが、電圧書き込みの回数が少ない画素部100ほど、より早い時期(すなわち、先のフレーム)において電圧書き込みが実行される点が異なっている。このような比較例の駆動方法では、必要な回数の電圧書き込みが終了した画素部100については、その後、画素電極111と共通電極110とが同電位に設定されるので、電荷が急激に放電されてしまい、中間階調が保持されにくくなる。
【0032】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る電気泳動装置の構成を模式的に示す回路図である。本実施形態における電気泳動装置は、基本的に上述した第1の実施形態に係る電気泳動装置と同様の構成を有しており、画素部100aの構成が一部異なる点と、これらの画素部100aと消去線151を介して接続された消去線ドライバ150が追加された点と、が相違している。なお、第1の実施形態における構成と共通する構成については同一の符号を用いており、それらについては詳細な説明を省略する。
【0033】
図8は、第2の実施形態に係る画素部100aの構成を示す回路図である。各画素部100aは、それぞれトランジスタ(第1スイッチング素子)103、容量素子104、電気泳動素子105、消去トランジスタ(第2スイッチング素子)152を含んで構成されている。なお、第1の実施形態における構成と共通する構成については同一の符号を用いており、それらについては詳細な説明を省略する。消去トランジスタ152は、トランジスタ103のドレインと電気泳動素子105の画素電極111との間に設けられている。この消去トランジスタ152は、ゲートに接続された消去線151を通じて消去線ドライバ150から消去信号の供給を受けて、トランジスタ103のドレインと電気泳動素子105の画素電極111との間を導通状態(トランジスタ;オン)又は非導通状態(トランジスタ;オフ)にする。
【0034】
図9は、画素部100aにおける各部の電圧変化を模式的に示した図である。上記図8に示した画素部100aは、トランジスタ103、消去トランジスタ152ともにオン状態とし、トランジスタ103を介してデータ信号電圧が書き込まれるとこの電圧が容量素子104に保持され、この容量素子104によって電気泳動素子105への電圧が保たれる。しかし、上述したように1回の画素選択期間による電圧書き込み後、容量素子104の電圧は大きく低下してしまう。
【0035】
このとき、図示のように、トランジスタ103がオフ状態となった時点(すなわち画素選択期間が終了した時点)からある程度の期間が経過したタイミングで消去トランジスタ152もオフ状態(非導通状態)とする。詳細には、図7において模式的に示したように、走査線ドライバ130による走査線選択のタイミングと消去線ドライバによる消去線選択のタイミングとの時間差Δtが消去トランジスタ152のオン期間、すなわち書き込み時間になる。一定のオン期間を経過して消去トランジスタ152がオフ状態となることにより、トランジスタ103のドレインと電気泳動素子105の画素電極111との間が非導通状態となり、容量素子104の一方端子及び電気泳動素子105の画素電極111がそれぞれ高インピーダンス状態となる。それにより、容量素子104の保持容量電圧の低下が抑えられ、電気泳動素子105の画素電極111の電位(電気泳動素子電圧)の上昇も抑えられる。仮に消去トランジスタをオフ状態としなかった場合には、図9において点線で示したように保持容量電圧が低下し、電気泳動素子電圧が上昇する。
【0036】
このように、所定期間(本実施形態では1フレーム期間)の途中に任意のタイミングで消去トランジスタ152をオフとすることで、電気泳動素子105への電圧印加が中断され、電圧印加時間が1フレーム期間よりも短くなる。よって、電圧印加時間の制御性が増し、一層の多階調化が可能となる。また、容量素子104と電気泳動素子105の間が高インピーダンス状態となるために中間調表示も保持される。
【0037】
階調制御の一例を説明する。例えば、上記した第1の実施形態と同様に、黒表示の極限状態を得るのに必要な電圧書き込みの回数Xを3回と仮定すると、ある画素部100において、共通電極110に対して画素電極111が相対的に高い電位となる電圧書き込みを1回行い、当該電圧書き込みの途中で消去トランジスタ152をオフ状態とすることにより、電気泳動素子105を白表示とライトグレー表示との間の階調に表示制御することができる。また、ある画素部100において、共通電極110に対して画素電極111が相対的に高い電位となる電圧書き込みを2回行い、当該2回目の電圧書き込みの途中で消去トランジスタ152をオフ状態とすることにより、電気泳動素子105をライトグレー表示とミッドグレー表示の間の階調に表示制御することができる。同様に、ある画素部100において、共通電極110に対して画素電極111が相対的に高い電位となる電圧書き込みを3回行い、当該3回目の電圧書き込みの途中で消去トランジスタ152をオフ状態とすることにより、電気泳動素子105をミッドグレー表示と黒表示との間の階調に表示制御することができる。上記した一定時間Δtをどの程度に設定するかにより階調を制御し得る。
【0038】
図9に示したような階調制御の期間を、例えば第1の実施形態において説明した3つのフレーム期間を用いた階調制御(図4〜図6参照)の後に4フレーム目以降を追加してゆくこともできる。それにより、上記した第1の実施形態と同様に中間調の保持特性に優れ、かつ階調をより細かく制御可能な電気泳動装置が得られる。
【0039】
図10は、第2の実施形態に係る電気泳動装置の変形構成例を模式的に示す回路図である。この電気泳動装置は、基本的には図7に示した電気泳動装置と同様の構成を有している。なお、第1、第2の各実施形態における構成と共通する構成については同一の符号を用いており、それらについては詳細な説明を省略する。図10に示す電気泳動装置では、消去トランジスタ152のゲートに与える信号を制御するためのトランジスタ161及び容量素子163が追加されている。消去線151はこのトランジスタ161のゲートと接続されている。また、トランジスタ161のソースは、消去データ線162を介して消去データドライバ160と接続されている。このような構成によれば、各画素部100aのそれぞれ毎に消去トランジスタ152のオン/オフを制御することが可能となる。
【0040】
(第3の実施形態)
図11は、電気泳動装置を適用した電子機器の具体例を説明する斜視図である。図11(A)は、電子機器の一例である電子ブックを示す斜視図である。この電子ブック1000は、ブック形状のフレーム1001と、このフレーム1001に対して回動自在に設けられた(開閉可能な)カバー1002と、操作部1003と、本実施形態に係る電気泳動装置によって構成された表示部1004と、を備えている。図11(B)は、電子機器の一例である腕時計を示す斜視図である。この腕時計1100は、本実施形態に係る電気泳動装置によって構成された表示部1101を備えている。図11(C)は、電子機器の一例である電子ペーパーを示す斜視図である。この電子ペーパー1200は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体部1201と、本実施形態に係る電気泳動装置によって構成された表示部1202と、を備えている。なお、電気泳動装置を適用可能な電子機器の範囲はこれに限定されず、電気泳動粒子の移動に伴う視覚上の色調の変化を利用した装置を広く含むものである。例えば、上記のような装置の他、電気泳動フィルムが貼り合わせられた壁面等の不動産に属するもの、車両、飛行体、船舶等の移動体に属するものも該当する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態に係る電気泳動装置の構成を模式的に示す回路図である。
【図2】第1の実施形態に係る画素部の構成を示す回路図である。
【図3】第1の実施形態に係る電気泳動装置の断面構造を模式的に示した断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る画素部における各部の電圧変化を模式的に示した図である。
【図5】第1の実施形態に係る電気泳動装置の駆動方法を示す波形図である。
【図6】比較例の電気泳動装置の駆動方法を示す波形図である。
【図7】第2の実施形態に係る電気泳動装置の構成を模式的に示す回路図である。
【図8】第2の実施形態に係る画素部の構成を示す回路図である。
【図9】第2の実施形態に係る画素部における各部の電圧変化を模式的に示した図である。
【図10】第2の実施形態に係る電気泳動装置の変形構成例を模式的に示す回路図である。
【図11】電気泳動装置を適用した電子機器の具体例を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
100、100a…画素部、101…走査線、102…データ線、103…トランジスタ(第1スイッチング素子)、104…容量素子、105…電気泳動素子、106…容量線、110…共通電極、111…画素電極(個別電極)、112…電気泳動層、130…スキャンドライバ、140…データドライバ、150…消去線ドライバ、151…消去線、152…消去トランジスタ(第2スイッチング素子)、160…消去データドライバ、161…トランジスタ、162…消去データ線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有し、
前記複数の画素の各々が、第1電極と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極間の所定の電位差により駆動される電気泳動層を有し、
前記複数の画素の各々の表示は、前記所定の電位差を、表示する階調に対応した回数印加することで行われる電気泳動装置。
【請求項2】
前記複数の画素の各々は、最大階調数により定められた最大回数スキャンされ、前記最大回数の中の、前記表示する階調に対応した回数だけ前記所定の電位差が印加される請求項1に記載の電気泳動装置。
【請求項3】
前記複数の画素の各々は、前記所定の電位差の印加回数が多いものほど先のスキャンで印加が開始される、請求項2の電気泳動装置。
【請求項4】
前記複数の画素の各々は、前記所定の電位差の印加回数に関わらず同じスキャンで印加が開始される、請求項2の電気泳動装置。
【請求項5】
前記所定の電位差の印加は、所定期間間隔で行われる請求項1乃至4のいずれ一項に記載の電気泳動装置。
【請求項6】
前記所定の電位差は、前記第1電極の電位を前記第2電極の電位よりも相対的に高くすることで得ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気泳動装置。
【請求項7】
前記複数の画素の各々に対しての前記所定の電位差の印加が終了した後、前記第2電極を高インピーダンス状態にすることを特徴とする請求項6に記載の電気泳動装置。
【請求項8】
前記複数の画素の各々は、駆動手段と前記第1電極との間に設けられた第1スイッチング素子と、一方端が前記第1電極に接続された容量素子を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気泳動装置。
【請求項9】
前記複数の画素の各々は、更に、前記第1スイッチング素子と前記第1電極との間に設けられ、前記駆動手段により駆動される第2スイッチング素子を備える請求項8記載の電気泳動装置。
【請求項10】
前記第2スイッチング素子は、前記所定の電位差の印加開始で導通状態とされ、前記印加開始後の所定の時間を経過した後で非導通状態とされる、請求項9記載の電気泳動装置。
【請求項11】
電気泳動装置に用いられる駆動方法であって、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電気泳動装置に用いられている、電気泳動装置の駆動方法。
【請求項12】
電子機器であって、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電気泳動装置を備える電子機器。
【請求項1】
複数の画素を有し、
前記複数の画素の各々が、第1電極と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極間の所定の電位差により駆動される電気泳動層を有し、
前記複数の画素の各々の表示は、前記所定の電位差を、表示する階調に対応した回数印加することで行われる電気泳動装置。
【請求項2】
前記複数の画素の各々は、最大階調数により定められた最大回数スキャンされ、前記最大回数の中の、前記表示する階調に対応した回数だけ前記所定の電位差が印加される請求項1に記載の電気泳動装置。
【請求項3】
前記複数の画素の各々は、前記所定の電位差の印加回数が多いものほど先のスキャンで印加が開始される、請求項2の電気泳動装置。
【請求項4】
前記複数の画素の各々は、前記所定の電位差の印加回数に関わらず同じスキャンで印加が開始される、請求項2の電気泳動装置。
【請求項5】
前記所定の電位差の印加は、所定期間間隔で行われる請求項1乃至4のいずれ一項に記載の電気泳動装置。
【請求項6】
前記所定の電位差は、前記第1電極の電位を前記第2電極の電位よりも相対的に高くすることで得ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気泳動装置。
【請求項7】
前記複数の画素の各々に対しての前記所定の電位差の印加が終了した後、前記第2電極を高インピーダンス状態にすることを特徴とする請求項6に記載の電気泳動装置。
【請求項8】
前記複数の画素の各々は、駆動手段と前記第1電極との間に設けられた第1スイッチング素子と、一方端が前記第1電極に接続された容量素子を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気泳動装置。
【請求項9】
前記複数の画素の各々は、更に、前記第1スイッチング素子と前記第1電極との間に設けられ、前記駆動手段により駆動される第2スイッチング素子を備える請求項8記載の電気泳動装置。
【請求項10】
前記第2スイッチング素子は、前記所定の電位差の印加開始で導通状態とされ、前記印加開始後の所定の時間を経過した後で非導通状態とされる、請求項9記載の電気泳動装置。
【請求項11】
電気泳動装置に用いられる駆動方法であって、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電気泳動装置に用いられている、電気泳動装置の駆動方法。
【請求項12】
電子機器であって、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電気泳動装置を備える電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−26159(P2010−26159A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186124(P2008−186124)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]