説明

電気浸透脱水装置

【課題】豆腐糟、焼酎や醤油などの食品残渣及び生物発酵工程により排出された固形物、有機性廃水を生物で処理して発生した汚泥など、特に有機成分が多い含水物の電気浸透により脱水する、少ない電気消費で含水物の高度脱水効果が得られる電気浸透脱水装置を提供する。
【解決手段】電極と含水物との直接接触により低電圧での電気浸透が実現されることと、陰極に集めた水をすばやく導出することにより、低コスト、高効率の含水物の脱水が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品残渣、下水処理で発生する汚泥など、特に有機成分が多い含水物の電気浸透による脱水に関するものである。
【背景技術】
【0002】
豆腐糟、焼酎や醤油などの食品残渣及び生物発酵工程より排出された固形物、有機性廃水を生物で処理して発生した汚泥などは、真空ろ過、加圧ろ過、遠心分離などの方法により脱水するが、有機物と生物体が多く含まれ、機械による脱水は極めて困難である。このような難脱水性含水物は機械脱水の後に、更なる低含水率を求める場合では電気浸透方法が適用されている。
【0003】
しかし、従来の電気浸透脱水では電極と含水物との間にろ布が介在され、含水物の剥離は通常の圧搾工程の経験を利用でき、作業操作の面には便利であるが、ろ布介在のため、電気抵抗が高くて、高電圧の条件で脱水しなければならない。また、電気浸透で陰極に集めた水は陰極にたまると、電気浸透の効率が低下する。これらの原因で電気消費が多くなることより、電気浸透脱水の高コストを招いた。従って、高効率、低コストの電気浸透装置が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、低コストで、高効率の電気浸透脱水装置を提供することを目的とする。
【発明が解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、含水物を隔てて対向し合う陽極と陰極との電極間に直流電圧を印加し、前記含水物に含有される水を電場の作用により陰極側に集めて脱水させる電気浸透式脱水方法に於いて、陰極と陽極とも電極を含水物に直接接触させて脱水することを特徴とする電気浸透式脱水装置である。電極と含水物との間にろ布を介在する従来の方法に比べて、直接接触させることにより含水物にかける電圧の低い条件で電気浸透脱水することができ、電気消費を低く抑えることが可能になる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、陰極と陽極とも導電性網により構成し、陽極網の網目の開きは1410μmより小さいものと、陰極網の網目の開きは250μmより小さいものとを採用することを特徴とする請求項1に記載の含水物の電気浸透脱水装置である。導電性網を電極に用いることにより、電極付近にできたガスが発散できると同時に、陰極に集めた水を含水物の反対側まで通過でき、電気浸透の効率を高めることができる。更に導電性網の孔、特に陰極網の孔を小さくすることにより、水だけを陰極網を通過させ、含水物が透過できないため、低電圧による電気浸透を行いながら含水物と水の分離が可能になる。陰極の導電性網の孔を小さくすることにより、電極と含水物の間にろ布を介在させなくても、電気浸透と固液分離が同時に実現することが可能になる。導電性網は炭素繊維製、金属製などが挙げられる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、含水物に接触する導電性網電極の反対側に、回転できるロールと密接に接触させ圧力を加え、前記陽極側のロールと電極網の間に当該ロールと垂直に配置した電極補強筋が設置され当該電極と一緒に移動することと、前記導電性網陰極側のロールの下方に水導出板を設置することとを特徴とする請求項1と請求項2に記載の含水物の電気浸透脱水装置である。ロールにより電極間に挟む含水物を電極と密接させ、含水物の間も隙間なく、効率的な通電が実現できる。また、陽極網と圧力ロールの間に補強筋の設置により、電極及び含水物がスムーズに移動できる。なお、陰極と密接しているロールに水が移動し、水の導出板により移動してきた水をすばやく離脱させ、脱水効率アップにつながると同時に離脱水を指定場所に集めることができる。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記電気浸透脱水装置の導電性網電極の脱水末端に圧縮空気又は噴射水又はブラシ又はこれらの組み合わせ方法による残存含水物を取り除く洗浄機構を附加することを特徴とする請求項1と請求項2に記載の電気浸透脱水装置である。電極網と含水物の間にろ布が介在しないため、含水物が電極網に付着して、安定的な電気浸透操作に支障が出る可能性があるから、電極を掃除する手段が必要となる。このような掃除方法と機構を用いることにより電極網に付着異物がないように再生でき、スムーズな操作を実現できる。洗浄機構は含水物の性状によって電極の両面か、又は片面に設置することができる。
【0009】
請求項5に記載の発明は、前記含水物脱水装置における含水物の入口側に含水物ケーキの厚みを制御する厚み制御機構を装備した請求項1及び請求項2の電気浸透脱水装置である。電気浸透脱水は含水物ケーキの厚みが薄いほど電気浸透に必要な電圧が低い。また安定した電気浸透操作は電極を含水物に密接な接触が必要である。従って、ランダムに入った含水物を要求される厚みに整理することが重要である。厚み制御機構を用いて任意に調整できることにより、安定的且つ低電圧操作が実現できる。
【0010】
請求項6に記載の発明は、前記脱水装置の電極は含水物の入口から出口までの方向に上向きに傾斜し、水平面に対する傾斜角度は0.2°から12°までの間に任意の角度を有することを特徴とする請求項1から請求項5までの電気浸透脱水装置である。陰極網の傾斜により、集めて通過された水は含水物の高含水段にある入口側に流動して低含水段にある出口側の脱水を効率よく行うことができる。また,通過された水は元の位置から移動しやすくなり脱水効率を高めることができる。
【0011】
請求項7に記載の発明は、前記脱水装置の陰極と当該陰極に密接しているロールとの間に、水が通過できる補強網を装備し、前記補強網の孔が陰極の導電性網の孔より大きいことを特徴とする請求項1と請求項2記載の電気浸透脱水装置である。通常、孔の小さい網は薄くて強度が弱いから、回転には支障が生じる。陰極の補強網を付加することにより、孔の小さい陰極網の回転に支障がなくなる。それに陰極網の孔よりも補強網の孔が多きいことより、陰極に集めた水が通過しやすくなるため、脱水効率に支障が生じない。補強網は材質を問わずに、薄くて強度があればよい。例えばプラスチック材料も金属材料も構わない。
【0012】
請求項8に記載の発明は、前記陰極に密接している支持ロールは吸水性材で剛性芯を被ったものを採用するか、又は支持ロールの間に吸水性材で構成した吸水ロールを陰極に密接させるか、又はその両方を採用することにより、陰極に集めた水を吸収した後に、吸水したロールを絞り、吸収された水を搾り出し、吸水材を再生し、繰り返し吸水することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3及び請求項7に記載の電気浸透脱水装置である。吸水ロールにより陰極に集めた水をすばやく吸い取り、電気浸透の効率を高める。更に水を吸収した吸水材は水に飽和され、吸水能力が低下し、再生する必要がある。実際の操作に便利のために吸水材は多孔質の材料、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリビニールアルコール、ポリアクリルなどの発泡体を採用する。ただし、これらに限らない。このような発泡体は絞る操作による再生は効果的且つ低コストで実現できる。吸水ロールは一本の芯に吸水材を被る形にしても、一本以上例えば2本或いは3本の芯を並べて支持したベルト式でもよい。
【0013】
請求項9に記載の発明は、前記脱水装置において、含水物に接触する陰極の反対側に設置した支持ロール又は補強網を駆動回転体とし、陰極導電性網を移動させる方式を用いるか、又は陰極下に設置したロールを支持ロールだけとし、陰極導電性網と補強網を一体させ、回転ドラムにより移動させる方式を用いるかを特徴とする請求項1から請求項8まで記載の電気浸透脱水装置である。支持ロール又は移動できる補強網を駆動回転体とし、陰極導電性網を移動させる方式は陰極導電性網に力を伝える面積が広く、その網に作用する力が分散され、陰極網に及ぼす損傷が低減される。陰極下に設置したロールを支持ロールだけとし、陰極導電性網と補強網を一体させ、回転ドラムにより移動させる方式は補強網に対する強度の要求が高くなるが、構造的には簡素化することができる。
【0014】
請求項10に記載の発明は、前記脱水装置の陽極と含水物の間に、含水且つ通水できる薄い膜を設置することを特徴とする請求項1と請求項2に記載の電気浸透脱水装置である。食品などの残渣と発酵糟などを食品又は飼料として利用される時に陽極の酸化で変質し、利用に支障が生じる可能性があり、陽極と含水物の間に含水且つ通水できる薄い膜の介在により含水物の酸化を回避することができる。
【0015】
電気浸透脱水装置はベルト式とフィルタープレス式が典型的であるが、後者の場合では同じく導電性網電極が直接含水物と接触して電場をかけるが、電極網の外側にろ布を付けた方がよい。それは高含水率の含水物を入れ、先ず機械圧力で圧搾脱水して、機械圧力脱水の困難な含水率になった時点で、電場をかけて電気浸透脱水する運転方法はコストが低くなるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電極と含水物との直接接触式電気浸透により抵抗を低く抑え、低い電圧による含水物の脱水を実現することができると同時に、陰極に集めた水をすばやく離脱させ、脱水効率が高められることより、電力消費を大幅に低減させ、機械脱水の困難な含水物を更なる低含水率を低コストで実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施例により説明するが、かかる実施例によって本発明が制限されるものではない。
【実施例1】
【0018】
本発明の食品残渣の電気浸透脱水の実施例の一つで、焼酎糟を処理する場合である。図1に示した脱水装置に、フィルタープレスにより得られた焼酎糟を金属網で構成した陽極1と陰極2で構成した電気浸透脱水機にいれ、厚み制御ロール9により厚みを5mmのケーキ3にして,陽極の外側にある陽極圧力ロール5と陰極の外側にある支持ロール4により圧力を加え、電極の移動に従って移動しながら電場の作用により水が陰極に集まり、陰極の金属網2を通過し、更に陰極補強網7を通過してロール4に集まり、水導出板10から導出通路(図示していない)を経由して脱水機外に導出する。陰極に集めた水をもっと速く離脱させるためにポリビニールアルコール吸水材の吸水ロール13(図に例として1個だけ示す)で水を速く吸い取り、陰極にたまった水を少なくして電気浸透を促進する。吸水したロール13を搾りロール14で水を搾り出し、吸水材を再生させる。焼酎糟は脱水工程が終わったら電極から離脱し、排出される。その後の陰極は水ノズル11とブラシ12で洗浄され、陽極網はブラシ(図示していない)で洗浄される。陽極と陰極の網とも回転ドラム6とベルト送りロール8で移動させる。陽極は呼び寸法250μmのメッシュのチタン基材にイリジウムめっきした網を採用し、陰極網は呼び寸法74μmのメッシュのステンレス製で、補強ベルト7は呼び寸法350μmのメッシュのナイロン製を採用した。陰極ベルトは糟の入口から出口まで少しずつ高くなるように設置し、傾斜角度は2°にする。電場の電圧は直流8ボルトで低電圧の電気浸透脱水が実現される。
【実施例2】
【0019】
本発明に係る廃水処理場から排出された汚泥の電気浸透脱水の実施例の一つである。
図2に示した脱水装置に、ベルトプレス脱水により得られた汚泥を金属網で構成した陽極1と陰極2で構成した電気浸透脱水機にいれ、厚み制御ロール9により厚みを6mmのケーキ3にして,陽極の外側にある陽極圧力ロール5と陰極の外側にある支持ロール4により圧力を加え、電極の移動に従って移動しながら電場の作用により水が陰極に集まり、陰極の金属網2を通過し、更に陰極補強網7を通過してロール4に集まり、水導出板10から導出通路(図示していない)を経由して脱水機外に導出する。陰極に集めた水をもっと速く離脱させるためにポリウレタンフォーム吸水材の吸水ロール13(図に例として1個だけ示す)で水を速く吸い取り、陰極にたまった水を少なくして電気浸透を促進する。吸水したロール13を搾りロール14で水を搾り出し、吸水材を再生させる。汚泥は脱水工程が終わったら電極から離脱し、排出される。その後の陰極は水ノズル11とブラシ12で洗浄され、陽極網はブラシ(図示していない)で洗浄される。陽極と陰極の網とも回転ドラム6とベルト送りロール8で移動させる。陽極は呼び寸法210μmのメッシュのチタン基材にイリジウムめっきした網を採用し、陰極網は呼び寸法88μmのステンレス製で、補強ベルト7は呼び寸法350μmのメッシュのステンレス製を採用した。また、補強ベルトは単独の回転ドラム6とベルト送りロール8で移動させている。この場合では補強ベルトの回転ドラム6だけを駆動体とし、陰極導電性網に直接接触している回転ドラム6は陰極網を支持して送る役割だけにする。また、図1に示した装置を用いて汚泥を脱水しても同じ効果が得られる。いずれの装置を用いても直流10ボルトの低電圧条件での電気浸透脱水が実現される。
【実施例3】
【0020】
本発明に係るフィルタープレス型電気浸透によるクエン酸発酵残渣の脱水実施例の一つである。操作を簡単にするために、プレス機能による脱水と電気浸透による高度脱水工程を一つの入れ出し作業で実現する方法をとる。即ち、フィルターと発酵残渣の間に通電できる金属網を介在して、高含水段では先ずペレスだけで脱水させ、含水率が下がり、脱水効果がなくなると、陰極と陽極に電場をかけ、電気浸透脱水段に入り、更なる高度な脱水を実施する。フィルタープレス型脱水装置は通常脱水フィルターが縦に設置することが多いから、陰極に集めた水はフィルターを通過して水導出通路から外に排出されるため、吸水ロールを使用しないで済む。この場合では陰極と陽極との間に絶縁体を入れ、電気の短絡がないようにする。電極と糟が直接接触するため低電圧の電気浸透が可能になる。図示していないが、ベルト式と同様、電極と含水物の直接の接触により10ボルトの低電圧で低含水率まですばやく脱水できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る焼酎糟の電気浸透脱水の例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る廃水処理場から排出された汚泥の電気浸透脱水の例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 陽極ベルト
2 陰極ベルト
3 含水物
4 陰極支持ロール
5 陽極プレスロール
6 駆動回転ドラム
7 補強網ベルト
8 ベルト送りロール
9 含水物厚み制御ロール
10 水導出板
11 洗浄用流体ノズル
12 ブラシ
13 吸水材ロール
14 吸水材搾りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水物を隔てて対向し合う陽極と陰極との電極間に直流電圧を印加し、前記含水物に含有される水を電場の作用により陰極側に集めて脱水させる電気浸透脱水方法に於いて、陰極と陽極とも電極を含水物に直接接触させて脱水することを特徴とする電気浸透脱水装置。
【請求項2】
前記陰極と陽極とも導電性網により構成し、陽極網の網目の開きは1410μmより小さいものと、陰極網の網目の開きは250μmより小さいものとを採用することを特徴とする請求項1に記載の含水物の電気浸透脱水装置。
【請求項3】
含水物に接触する導電性網電極の反対側に、回転できるロールと密接に接触させ圧力を加え、前記陽極側のロールと電極網の間に当該ロールと垂直に配置した電極補強筋が設置され当該電極と一緒に移動することと、前記導電性網陰極側のロールの下方に水導出板を設置することとを特徴とする請求項1と請求項2に記載の含水物の電気浸透脱水装置。
【請求項4】
前記電気浸透脱水装置の導電性網電極の脱水末端に圧縮空気又は噴射水又はブラシ又はこれらの組み合わせ方法による残存含水物を取り除く洗浄機構を附加することを特徴とする請求項1と請求項2に記載の電気浸透脱水装置。
【請求項5】
前記含水物脱水装置における含水物の入口側に含水物ケーキの厚みを制御する厚み制御機構を装備した請求項1及び請求項2の電気浸透脱水装置。
【請求項6】
前記脱水装置の電極は含水物の入口から出口までの方向に上向きに傾斜し、水平面に対する傾斜角度は0.2°から12°までの間に任意の角度を有することを特徴とする請求項1から請求項5までの電気浸透脱水装置。
【請求項7】
前記脱水装置の陰極と当該陰極に密接しているロールとの間に、水が通過できる補強網を装備し、前記補強網の孔が陰極の導電性網の孔より大きいことを特徴とする請求項1と請求項2記載の電気浸透脱水装置。
【請求項8】
前記陰極に密接している支持ロールは吸水性材で剛性芯を被ったものを採用するか、又は支持ロールの間に吸水性材で構成した吸水ロールを陰極に密接させるか、又はその両方を採用することにより、陰極に集めた水を吸収した後に、吸水したロールを絞り、吸収された水を搾り出し、吸水材を再生し、繰り返し吸水することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3及び請求項7に記載の電気浸透脱水装置。
【請求項9】
前記脱水装置において、含水物に接触する陰極の反対側に設置した支持ロール又は補強網を駆動回転体とし、陰極導電性網を移動させる方式を用いるか、又は陰極下に設置したロールを支持ロールだけとし、陰極導電性網と補強網を一体させ、回転ドラムにより移動させる方式を用いるかを特徴とする請求項1から請求項8まで記載の電気浸透脱水装置。
【請求項10】
前記脱水装置の陽極と含水物の間に、含水且つ通水できる薄い膜を設置することを特徴とする請求項1と請求項2に記載の電気浸透脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−212909(P2008−212909A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82837(P2007−82837)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(501147325)コア技術株式会社 (9)
【出願人】(595065507)株式会社協同商事 (5)
【Fターム(参考)】