説明

電気温液器

【課題】高効率な電気温液器を提供する。
【解決手段】本発明の電気温液器(100)は、液密に密閉できる筐体(10)と、筐体内に冷液を導入する導入管(21)と、筐体内から温液を導出する導出管(23)と、筐体内に収納された電気式ヒータ(40)と、電気式ヒータへ電力を供給する電源(E)に接続される接続子(69)とを備え、導入管は筐体の内底部に冷液を導入し、導出管は筐体の上部から温液を導出し、電気式ヒータは筐体内に複数延在する薄帯状の金属発熱体(41、42、43)からなる。この電気温液器によれば、冷液が金属発熱体に直接接触して、瞬時に効率よく加熱される。そして、所望の温液が導出管から連続的に供給される。また、上記の筐体や接続管を、市販されている耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管を用いて製造することにより、本発明の電気温液器を低コストで提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液体を効率良く加熱できる電気温液器に関する。
【背景技術】
【0002】
温水器または給湯器には、燃焼ガスや圧縮ガス等の高温ガスと熱交換することにより冷水を加熱して温水(湯)を供給する熱交換式と、シーズヒータ等の発熱により冷水を直接加熱して温水(湯)を供給する電気式がある。電気式は、構造が簡単であり環境負荷もなく優れている。このような電気式温水器の一例が、下記の特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−304172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、水平に配置した配管内に線状面状発熱体を設けた「電気式流水加温装置」に関する記載がある。その配管内へ冷水を流入させると、線状面状発熱体により加熱された温水が得られる。しかし、特許文献1の「電気式流水加温装置」では、流路となる配管内に単に一本の線状面状発熱体が水平に設けられているのみであり、多量の水を効率的に加熱することは困難である。このため、水の流量を増やしたり、得られる温水の温度を高めるには、配管を長くしたりする必要があり、電気式流水加温装置が大型化し易い。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、コンパクトな装置で水等の液体を効率的に加熱できる電気温液器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、薄帯状の細長い金属発熱体を、筐体の長手方向に沿って折り返して配置し、冷水を筐体の内底部から導入して筐体の上部へ導出することを思いついた。これにより、装置をコンパクト化しつつ、多量の水等を効率的に加熱できることをも確認した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
【0007】
《電気温液器》
(1)本発明の電気温液器は、液密に密閉できる筐体と、該筐体内に冷液を導入する導入管と、該筐体内から温液を導出する導出管と、該筐体内に収納された電気式ヒータと、該電気式ヒータへ電力を供給する電源に接続される接続子とを備える電気温液器であって、
前記導入管は、前記筐体の内底部に前記冷液を導入し、前記導出管は、前記筐体の上部から前記温液を導出し、前記電気式ヒータは、前記筐体内に複数延在する薄帯状の金属発熱体からなり、前記冷液が前記金属発熱体に直接接触して加熱され、前記温液となって前記導出管から導出され得ることを特徴とする。
【0008】
(2)本発明の電気温液器によれば、薄帯状の金属発熱体が筐体内に複数配置され、金属発熱体の筐体内における密度が高い。しかも、冷液(温液を含む)が金属発熱体に沿うように筐体の内底部から筐体の上部へ流れる。しかも、加熱された冷液には自ずと上昇流が生じる。このため筐体内の冷液は、気相等により阻害されることなく多数の金属発熱体と直接接触して加熱され、高い熱伝達率を維持しながら昇温していく。こうして本発明の電気温液器によれば、環境に負荷をかけることなく、冷液を効率的に加熱でき、多量の温液でも瞬時に供給可能となる。なお、金属発熱体は、冷液の流れに沿った方向に配設されていればよく、その具体的な方向は問わない。例えば、金属発熱体は、筐体の長手方向、軸方向、上下方向等に配置される。また本明細書でいう上下関係も、電気温液器の設置方向または使用時の方向と一致するものではなく、便宜的なものである。但し、本発明の電気温液器の一般的な使用形態を考慮すると、導出管が上方に配置されると好ましいので、適宜、導出管がある側を上方、その反対側を下方、筐体または金属発熱体の延在する方向を上下方向と便宜的にいう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の電気温液器に係る一実施例の外観を示す斜視図である。
【図2】その内部構造を模式的に示した部分断面図である。
【図3】その内部に配設された金属発熱体と保持板の係合関係を部分的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
【0011】
《金属発熱体》
(1)本発明に係る電気式ヒータを構成する金属発熱体は、筐体内の液中における短絡や漏電等が少なく、供給された電力を冷液の加熱に効率的に変換し得るものが好ましい。この金属発熱体は、その成分組成や組織等を必ずしも問わないが、特開2004−316377号(特許3997179号)または特開2008−156711号等に係るニッケル、インジウムおよびチタンを有するニッケル基合金(金属酸化物を含む)、特開2009−41099号等に係る鉄クロム、インジウムおよびチタンを有する鉄クロム基合金(金属酸化物を含む)等からなると好ましい。これらの金属発熱体は抵抗値が非常に小さく、瞬時に発熱する。このため、それらの金属発熱体を用いると、漏電や感電等の恐れが非常に少なく、非常に高効率な電気温液器が実現される。
【0012】
(2)金属発熱体の具体的なサイズは、筐体のサイズや電気温液器の仕様に応じて適宜調整され得る。金属発熱体は、筐体の上下方向に延在する形態で、筐体内に複数設けられる。上下方向へ延在する金属発熱体は、それぞれが独立していてもよいし、少なくとも一本の細長い金属発熱体が筐体内のある区間で折り返し等されたものでもよく、それらを組み合わせたものでもよい。
【0013】
(3)金属発熱体は、薄帯状をしているため、上下方向の延在距離が長くなると、電気温液器の使用中に撓みや揺れが生じ易くなる。そこで筐体内に、そのような金属発熱体を保持する保持板が配設されていると好ましい。保持板の形状や枚数等は適宜選択、調整され得る。保持板は、金属発熱体を挿通または係止する貫通穴または切り欠きを、金属発熱体の本数や折り返し数に応じて(またはその数以上に多く)有していると好ましい。これらの貫通穴や切り欠きは、単に金属発熱体を挿通して保持するのみならず、冷液または温液の流路ともなり得る。このため、例えば、冷液が導入管から激しく流入する場合でも、それら貫通穴や切り欠きが冷液(さらには温液)により冷液は整流され得る。この結果、流入量や流入圧等が変動しても、冷液(温液を含む)は金属発熱体と安定して接触し、金属発熱体により効率的に加熱される。なお、貫通穴や切り欠きの形状や数等は、その配置される位置に応じて、適宜変更されてもよい。また保持板は、筐体内に配置される金属発熱体の上端部または下端部のみに設けられてもよいし、それら中間部に設けられてもよいし、上下端部および中間部に設けられてもよい。
【0014】
《筐体、導入管、導出管》
(1)筐体は、液密に密閉できる限り、その構造、形状等をとわない。また、温液の温度に応じた耐熱性を有する限り、材質も問わない。これらのことは、導入管や導出管についても同様である。一例として、筐体、導入管、導出管の少なくとも一つに、耐熱性硬質ポリ塩化ビニルを用いるとよい。特に、市販されている耐熱性硬質ポリ塩化ビニル製の配管や継手を利用すると、本発明の電気温液器を低コストで製作可能となる。
【0015】
(2)本発明に係る導入管は、冷液を筐体の内底部へ導入するが、筐体内における導入管の開口端の位置は問わない。もっとも、導入管が、筐体の上部から筐体の底部中央に冷液を誘導する誘導管を有すると、冷液を筐体の内底部へ確実に導くことができて好ましい。
【0016】
《冷液、温液》
冷液(温液を含む。)の種類は問わないが、代表的なものは水である。冷液が冷水の場合なら、例えば、本発明に係る導入管へ、水道を接続したり、河川や貯水池等から水を汲み上げる吸水ポンプの排出口を接続したりするとよい。
【0017】
なお、本明細書でいう温液は、冷液が加熱されたものであるが、両者の区別は便宜的であり、温度や加熱の程度等に関して明確な区別はないし、その必要もない。従って本明細書では、適宜、温液をも含めて冷液という。
【実施例】
【0018】
本発明の一実施例である電気温水器100(電気温液器)の外観を図1に示した。また、その内部構造を模式的に説明する部分断面図を図2に示した。この実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。
【0019】
《構成》
この電気温水器100は、ケース10(筐体)と、配管20と、ヒータ40とから主になる。
【0020】
ケース10は、円筒状パイプからなる本体11と、本体11の上部外周面に嵌合接着される円筒部とこの円筒部から延在する環状鍔部を有する上部フランジ12と、上部フランジ12の上面側に環状のゴムパッキン13を介して液密に固定される円板状の上蓋14と、本体11の下部外周面に嵌合接着される円筒部とこの円筒部から延在する環状鍔部を有する下部フランジ16と、下部フランジ16の下面側に環状のゴムパッキン17を介して液密に固定される円板状の下蓋18とからなる。
【0021】
上部フランジ12と上蓋14は、環状に所均等配置された8つの締結具15により固定される。下部フランジ16と下蓋18は、環状に所均等配置された8つの締結具19により固定される。締結具15は、それぞれ、ボルト151と、これに螺合するナット152と、それらの間に介在して上部フランジ12および上蓋14にそれぞれ接するワッシャ154、153とからなる。締結具19はそれぞれ、ボルト191と、これに螺合するナット192と、それらの間に介在して下部フランジ16および下蓋18にそれぞれ接するワッシャ194、193とからなる。
【0022】
上蓋14に固定された配管20は、接続管21(導入管)と、誘導管22と、接続管23(導出管)とからなる。接続管21、23は共にL字型状の継手管からなり、それらの開口部211、231は上蓋14から突出している。それらの他方の開口部は、上蓋14に螺設されており、いずれも本体11内部と連通している。
【0023】
そして接続管21の本体11内へ連通する開口部には、さらにストレート状の誘導管22が接続されている。接続管21に連通した誘導管22は、本体11の中心軸線に沿って下方へ延在し、その下端開口はケース10の内底部の近傍まで及んでいる。
【0024】
本実施例のケース10および配管20は、基本的に耐熱性硬質ポリ塩化ビニルからなる。より具体的にいうと、ケース10および配管20は、市販されている耐熱性硬質ポリ塩化ビニル製のパイプや継手等を加工することにより製作した。従って本実施例の場合、材料費や加工費等が抑制され、電気温水器100を非常に低コストで製作することが可能となった。
【0025】
ヒータ40(電気式ヒータ)は、薄く細長い面状発熱体(薄帯状の金属発熱体)41、42、43からなる。この面状発熱体41、42、43には、ニッケル、インジウムおよびチタンを有するニッケル基合金からなる市販品(夢現テクノ株式会社製)を用いた。面状発熱体41、42、43は、それぞれ、本体11の上方に設けた円板状の上部保持板51と本体11の下方に設けた円板状の下部保持板54との間に掛け渡されており(折り返されており)、本体11の軸方向に多数本の面状発熱体41、42、43が延在保持された状態となっている。
【0026】
その一例として、上部保持板51周辺の具体的な様子を図3に示した。上部保持板51は、それぞれ、多数の貫通穴511または切り欠き512を有する。面状発熱体41、42、43は、それらの貫通穴511または切り欠き512に挿通され係止されて、保持されている。この際、面状発熱体41、42、43の各端部411、412、421、422、431、432はいずれも、貫通穴511または切り欠き512を通じて上部保持板51の上面側へ突出している。
【0027】
上部保持板51と下部保持板54との間には、さらに、それらと同形状の中間保持板52、53が上下方向にほぼ等間隔で配置されている。面状発熱体41、42、43は、中間保持板52、53にある貫通穴または切り欠きに挿通されても保持される。このため、面状発熱体41、42、43は、上部保持板51と下部保持板54の間でも、過度に撓んだり屈曲したりすることがなく、電気温水器100の使用中に相互に接触することもしない。
【0028】
なお、上部保持板51、下部保持板54および中間保持板52、53に設けた貫通穴または切り欠きは、本体11内を内底部から上部へ移動する冷水または温水を整流する作用も果たす。この結果、冷水(温水を含む)は、ケース10内で乱流状態にならず、気相等を介在させることなく、面状発熱体41、42、43の表面と安定して直接接触し得る。
【0029】
面状発熱体41、42、43の各端部411、412、421、422、431、432は、本体11内の誘導管22に固定した接続端子61、62、63にそれぞれ接続される。具体的には、各面状発熱体41、42、43に三相200V(実効電圧)が印加されるように、各端部411、412、421、422、431、432と接続端子61、62、63が順次接続される。この接続端子61、62、63には、配線65の一端も接続されている。配線65は、本体11内から上蓋14を液密に貫通して、外部へ導出される。ケース10外にある配線65の他端には、電源コントローラEへ接続されるコネクタ69が設けられている。
【0030】
そして電源コントローラEから、コネクタ69、配線65および接続端子61、62、63を通じて各面状発熱体41、42、43へ所定の電力が供給される。電源コントローラEからの供給電力は、面状発熱体41、42、43の特性(抵抗値、許容電流量等)、温水の設定温度、冷水の流量等に応じて自在に調整される。
【0031】
《作用》
(1)水の流れ
水道等に連なる配管を接続管21の開口端211に接続する。なお、開口端211の内周面は雌ネジになっているため、配管を容易にネジどめできる。この開口端211から冷水が導入されると、冷水は接続管21から誘導管22を通り、誘導管22の開口端221から流出(噴出)する。
【0032】
開口端221から流出した冷水は、本体11の内底中央部から内底外周部へと放射状に拡散し、内底部に貯まる。この内底部近傍の冷水は、開口端221からの噴流と、面状発熱体41、42、43により直接加熱されて生じる自然流とにより、上昇していく。そして冷水は、さらに、上方へ延びる面状発熱体41、42、43と接触し、加熱されつつ上昇していく。こうして、冷水の温度(水温)は、上方にくるほど高くなり、冷水は急速に温水になっていく。
【0033】
こうして得られた温水が、上部保持板51を抜けると、図2に二点鎖線で示すように、本体11に内通する接続管23へ流れ込み、接続管23の開口端231から排出される。この開口端231の内周面も雌ネジになっているため、温水を導く配管もその開口端231へ容易にネジどめされ、その配管へ温水が導かれる。
【0034】
(2)加熱効率
本実施例の電気温水器100の場合、面状発熱体41、42、43が通電と共に瞬時に発熱して高温となり、この面状発熱体41、42、43に冷水が直接接触する。このため、電気温水器100の接続管21から導入された冷水は、ほぼ瞬時に温水となって、接続管23から連続的に排出される。
【0035】
具体例を挙げると次の通りである。各面状発熱体41、42、43のサイズ(共通):10×4138×0.05mm(これら各1本がケース内で複数回折り返され、見かけ上12本、合計で36本ケース内で延在した状態となっている)、抵抗値:12Ω/本として、接続管21から10℃の冷水を10L/min流入させたとき、接続管23からは24.3℃の温水が連続的に出てきた。この際の消費電力は10kWであった。この際、電力が水温上昇に利用された割合(熱効率)は約100%という非常に高い値となった。
【0036】
以上から、本発明の電気温液器を用いると、効率よく安定して水等の液体を連続的に加熱できることがわかる。
【符号の説明】
【0037】
10 ケース(筐体)
21 接続管(導入管)
22 誘導管
23 接続管(導出管)
40 ヒータ(電気式ヒータ)
41、42、43 面状発熱体(金属発熱体)
69 コネクタ(接続子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液密に密閉できる筐体と、
該筐体内に冷液を導入する導入管と、
該筐体内から温液を導出する導出管と、
該筐体内に収納された電気式ヒータと、
該電気式ヒータへ電力を供給する電源に接続される接続子と、
を備える電気温液器であって、
前記導入管は、前記筐体の内底部に前記冷液を導入し、
前記導出管は、前記筐体の上部から前記温液を導出し、
前記電気式ヒータは、前記筐体内に複数延在する薄帯状の金属発熱体からなり、
前記冷液が前記金属発熱体に直接接触して加熱され、前記温液となって前記導出管から導出され得ることを特徴とする電気温液器。
【請求項2】
前記金属発熱体は、ニッケル、インジウムおよびチタンを有するニッケル基合金からなる請求項1に記載の電気温液器。
【請求項3】
前記金属発熱体の少なくとも一本は、前記筐体内で折り返されて配設されている請求項1または2に記載の電気温液器。
【請求項4】
さらに、前記筐体内に配設されて前記金属発熱体を保持する保持板を有する請求項1〜3のいずれかに記載の電気温液器。
【請求項5】
前記保持板は、前記金属発熱体を挿通または係止する貫通穴または切り欠きを有する請求項1〜4のいずれかに記載の電気温液器
【請求項6】
前記導入管は、前記筐体の上部から該筐体の底部中央に前記冷液を誘導する誘導管を有する請求項1〜5のいずれかに記載の電気温液器。
【請求項7】
前記筐体、前記導入管および前記導出管の少なくとも一つは、耐熱性硬質ポリ塩化ビニルからなる請求項1または6に記載の電気温液器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−104573(P2013−104573A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246242(P2011−246242)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(511272864)株式会社ファインテック (1)
【Fターム(参考)】