説明

電気用保護帽

【課題】絶縁性を確保しつつ着用者の頭部を冷却することができるとともに、簡素な構成で重量が軽減されている電気用保護帽を提供する。
【解決手段】椀状に形成された本体部11とこの本体部11の前側で本体部11に設けられた庇部15とを備えた帽体7と、庇部15に設けられた空気導入孔9と、帽体7の前方で帽体7に設置され、空気導入孔9から導入された空気を帽体7の前方内側まで導く空気通路19を形成している空気ガイド部材5とを有する電気用保護帽1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気用保護帽に係り、特に、内側に空気通路が形成されているものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の保護帽は、着用者の頭部に熱がこもることを防ぐために、帽体の前頭部や側頭部に通気孔を設けてある(たとえば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【0003】
ところが、上記従来の保護帽は、空気を導入するための貫通孔が帽体に形成されているので、所定の絶縁性を具備する必要のある電気用保護帽としては使用することができない。したがって、貫通孔を設けていない従来の電気用保護帽では、保護帽内の通気性が悪く、電気工事を行う着用者の頭部のムレが改善されない。
【0004】
そこで、特許文献3に掲げるような保護帽を電気用保護帽200として採用することが考えられる(図20参照)。特許文献3に記載の保護帽200は、外側部202と多数の通気孔204が設けられている内側部206との2重構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−3220号公報
【特許文献2】国際公開第2005/006901号
【特許文献3】実開昭63−89924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献3に記載の保護帽200では、絶縁性を確保することができる可能性があるものの、保護帽200が外側部202と内側部206との2重構造になっているので、保護帽200の構成が煩雑であるとともに重量が重くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、絶縁性を確保しつつ着用者の頭部を冷却することができるとともに、簡素な構成で重量が軽減されている電気用保護帽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、椀状に形成された本体部とこの本体部の前側で前記本体部に設けられた庇部とを備えた帽体と、前記庇部に設けられた空気導入孔と、前記帽体の前方で前記帽体に設置され、前記空気導入孔から導入された空気を前記帽体の前方内側まで導く前側空気通路を形成している空気ガイド部材とを有する電気用保護帽である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、椀状に形成された本体部とこの本体部の前側で前記本体部に設けられた庇部とを備えた帽体と、前記帽体の前方で前記帽体に設置され、空気導入孔とこの空気導入孔から導入された空気を前記帽体の前方内側まで導く前側空気通路とを形成している空気ガイド部材とを有する電気用保護帽である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電気用保護帽において、前記庇部は、前記帽体の本体部とは別体で構成されており、前記空気導入孔は、前記庇部の先端部もしくは前記庇部の先端部の近くに設けられている電気用保護帽である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電気用保護帽において、前記空気ガイド部材には、被係止部が設けられており、前記被係止部が、前記帽体本体部の内側に設けられるハンモックの係止部に係合して、前記空気ガイド部材が前記帽体に設置されるように構成されている電気用保護帽である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電気用保護帽において、貫通孔を備え、前記帽体の内部で前記帽体に設置され、前記帽体と協働して後側空気通路を形成している衝撃吸収ライナを有し、前記空気導入孔から導入され前記前側空気通路内を流れた空気が、前記後側空気通路内で前記帽体の内壁に沿って流れるとともに、この空気に流れによって、前記衝撃吸収ライナ内側の空気が、前記貫通孔を通って前記後側空気通路側に吸引されるように構成されている電気用保護帽である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、絶縁性を確保しつつ着用者の頭部を冷却することができるとともに、簡素な構成で重量が軽減されている電気用保護帽を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る電気用保護帽の概略構成を示す斜視図である。
【図2】電気用保護帽を前から見た図である。
【図3】図2におけるIII−III断面を示す図である。
【図4】衝撃吸収ライナを取り除いた電気用保護帽を下から見た図である。
【図5】衝撃吸収ライナが設置されている電気用保護帽を下から見た図である。
【図6】空気ガイド部材の概略構成を示す図である。
【図7】衝撃吸収ライナの概略構成を示す図である。
【図8】電気用保護帽の安全試験の概要を示す図である。
【図9】図8におけるIX部の拡大図である。
【図10】図9におけるX矢視図である。
【図11】電気用保護帽の変形例を示す図である。
【図12】電気用保護帽の変形例を示す図である。
【図13】電気用保護帽の変形例を示す図である。
【図14】電気用保護帽の変形例を示す図である。
【図15】電気用保護帽の冷却効果の試験のやり方を示す図である。
【図16】電気用保護帽の冷却効果の試験結果のうちで、頭頂部に設けられている湿度センサで測定した湿度の変化を示す図である。
【図17】電気用保護帽の冷却効果の試験結果のうちで、後頭部に設けられている湿度センサで測定した湿度の変化を示す図である。
【図18】電気用保護帽の冷却効果の試験結果のうちで、頭頂部に設けられている温度センサで測定した温度の変化を示す図である。
【図19】電気用保護帽の冷却効果の試験結果のうちで、後頭部に設けられている温度センサで測定した温度の変化を示す図である。
【図20】従来の電気用保護帽として採用することが考えられる保護帽を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る電気用保護帽1の概略構成を示す斜視図であり、図2は、電気用保護帽1を前から見た図であり、図3は、図2におけるIII−III断面を示す図である。
【0016】
図4は、衝撃吸収ライナ3を取り除いた電気用保護帽1を下から見た図であり、図5は、衝撃吸収ライナ3が設置されている電気用保護帽1を下から見た図である。
【0017】
図6は、空気ガイド部材5の概略構成を示す図であり、図6(a)は、空気ガイド部材5の平面図であり、図6(b)は、図6(a)におけるVIB矢視図であり、図6(c)は、図6(b)におけるVIC−VIC断面を示す図である。
【0018】
図7は、衝撃吸収ライナ3の概略構成を示す図であり、図7(a)は、衝撃吸収ライナ3の平面図であり、図7(b)は、図7(a)におけるVIIB−VIIB断面を示す図であり、図7(c)は、図7(b)におけるVIIC矢視図であって衝撃吸収ライナ3を後側から見た図であり、図7(d)は、図7(b)におけるVIID矢視図であって衝撃吸収ライナ3を前側から見た図である。
【0019】
電気用保護帽(電気保護帽;耐電ヘルメット)1は、労働安全衛生法第42条の規定に基づく「保護帽の規格」、労働安全衛生規則第348条の規定に基づく「絶縁用保護具」に適合したものであり、電気工事をする者が着用するものであり、7kVボルト以下での着用者の頭部の感電を防止するためのものである。
【0020】
電気用保護帽1は、たとえば左右対称に形成されており、帽体7と、この帽体7に設けられた空気導入孔9と、空気ガイド部材5とを備えて構成されている。
【0021】
帽体7は、椀状に形成された本体部11と、この本体部11の縁13の前側で本体部11に一体的に設けられた庇部15とを備えて構成されている。
【0022】
空気導入孔9は、たとえば、前方に開口して庇部15に(庇部15の肉部に)に設けられている。また、空気導入孔9は、帽体7の幅方向に長く、帽体7の上下方向に短い、細長い矩形な形状に形成されている(図2参照)。
【0023】
本体部11と庇部15とで構成された帽体7の肉部には、空気導入孔9以外の貫通孔は設けられていない。したがって、帽体7の開口部17を上向きにして(開口部17の縁13を上にし頂上部を下にして)帽体7の内部に水等の液体を入れたとき、次にA.〜C.で掲げる3つの場合には帽体7から水がこぼれ出るが、これらの3つの場合以外には、帽体7から水がこぼれ出ないようになっている。
【0024】
A.空気導入孔9を通って水がこぼれ出る場合。B.帽体7の内部の体積よりも水を多く入れようとしたときに帽体7の開口部17の縁13を越えて水が溢れ出る場合。C.帽体7を傾けたときに開口部17の縁13を越えて水がこぼれ出る場合。
【0025】
なお、庇部15が帽体7の開口部17における縁13の前方で前側に突出して設けられており、空気導入孔9が庇部15に設けられているので、上述したA.の「空気導入孔9を通って水がこぼれ出る」ようにするには、帽体7の内部に、帽体7の内部の体積とほぼ等しいか帽体7の内部の体積よりも僅かに少ない量の水を入れる必要がある。
【0026】
空気ガイド部材5は、帽体7の前方の内側で帽体7に一体的に設置されている。そして、空気ガイド部材5が、帽体7と協働して空気通路(前側空気通路)19を形成している。
【0027】
前側空気通路19は、空気導入孔9から導入された空気を、帽体7の前方内側(たとえば、電気用保護帽1を着用者が被ったときに着用者の額のはえぎわもしくはこの近傍に対応する部位)21まで導き(前側から後方に流して導き)、この後、空気の流れる方向を上斜め方向に変えるようにして空気を導き、帽体7の内壁に沿わせ帽体7の頂上部に向かって吐出するようになっている(図3の矢印A1を参照)。
【0028】
前側空気通路19は、この延伸方向(空気が流れる方向)に対して直交する平面による断面が、空気導入孔9とほぼ同じ形状に形成されている。すなわち、前側空気通路19は、細長い矩形な形状に形成されている。そして、前側空気通路19の断面の長手方向が帽体7の幅方向になっている。前側空気通路19は、この延伸方向では、帽体7の本体部11と庇部15との境界ところ(部位21のところ)で曲がっていて「L」字状に形成されている。そして、「L」字状の前側空気通路19は、帽体7の前側で庇部15から帽体7の本体部11の前側やや上方の部位にわたって形成されている。
【0029】
また、電気用保護帽1には、衝撃吸収ライナ3が設けられている。衝撃吸収ライナ3は、空気通路(後側空気通路)13を帽体7と協働して形成している。後側空気通路23内では、空気導入孔9から導入され前側空気通路19を流れて前側空気通路19から吐出された空気が、帽体7の内部を帽体7の内壁に沿って帽体7の前方から後方や側方に向かって流れるようになっている。
【0030】
衝撃吸収ライナ3は、たとえば発泡プラスチックで構成されており、椀状で左右対称に形成されている。そして、図7で示すように、衝撃吸収ライナ3の外側の面(凸状の面)の一部(凸部)25が、帽体本体部11の内側の面(凹状の面)に接触して、衝撃吸収ライナ3が帽体7の内部で帽体7に一体的に設置されている。なお、衝撃吸収ライナ3は、帽体7に対して着脱自在になっているが、一旦設置された衝撃吸収ライナ3は、帽体7から容易には外れないようになっている。
【0031】
衝撃吸収ライナ3の外側の面に形成されている凹部(上記凸部25以外の部位)27は、帽体7と協働して後側空気通路23を形成するようになっている。
【0032】
また、衝撃吸収ライナ3には、衝撃吸収ライナ3の内側の面(電気用保護帽1を着用者が被ったときに着用者の頭と対向する面)と、衝撃吸収ライナ3の外側の面とをお互いにつないでいる貫通孔29が設けられている。貫通孔29は、衝撃吸収ライナ3の外側の面に形成されている凹部27のところに設けられている。
【0033】
空気ガイド部材5が設置された帽体7に衝撃吸収ライナ3を設置したときに、前述したように、衝撃吸収ライナ3の外側の面に形成されている凹部27と帽体7とで、前側空気通路19につながっている後側空気通路23が形成されるようになっている。また、衝撃吸収ライナ3の貫通孔29を介して、衝撃吸収ライナ3の内側と後側空気通路23とがお互いにつながるようになっている。
【0034】
そして、空気導入孔9で導入された空気が、前側空気通路19と後側空気通路23とを通って電気用保護帽1の外部まで流れ、後側空気通路23内の空気の流れにより、貫通孔29を通って衝撃吸収ライナ3の内側の空気が後側空気通路23側に吸引され、電気用保護帽1を被った着用者の頭部が冷却されるようになっている。
【0035】
また、電気用保護帽1には、あご紐31とハンモック33とが設けられている。ハンモック33は、帽体7や衝撃吸収ライナ3の内側に設けられており、着用者が電気用保護帽1を被ったときに、着用者の頭部にハンモック33が接触し、ハンモック33を介して電気用保護帽1が着用者の頭部で支持されるようになっている。
【0036】
庇部15は、環状部材35に形成されている。環状部材35は、環状部37とこの環状部37の前方の一部で環状部37の外側に突出している庇部15とで構成されている。環状部37と庇部15とで構成されている環状部材35は、たとえば射出成型により一体成型されている。
【0037】
帽体7の本体部11は、椀状の部位とこの椀状の部位の開口部に設けられている環状部材35の環状部37とで形成されている。上記椀状の部位と環状部材35とは別体で構成されている。空気導入孔9は、庇部15の先端部41の近くに設けられているが、庇部15の先端部41に設けられていてもよい。
【0038】
庇部15は、板状に形成されており、帽体7もしくは帽体本体部11の開口部17の縁13の前側から前方に、所定の幅で所定の長さだけ突出している。帽体本体部11のうちの上記椀状の部位は、たとえば、非導電性の合成樹脂を射出成型することによって形成されており、庇部15を含む環状部材35は、たとえば、非導電性の合成樹脂をたとえばインサート成型することによって、帽体本体部11の上記椀状の部位に一体的に設けられている。なお、インサート成型に代えて、接着剤で一体的に設けられていてもよい。
【0039】
帽体本体部11の上記椀状の部位は、非透明の合成樹脂で一体成型により形成されているが、庇部15を含む環状部材35は、透明(色付き透明を含む)な合成樹脂や半透明(色付き半透明を含む)な合成樹脂で形成されている。
【0040】
なお、インサート成型により環状部材35が一体的に設けられていることにより、庇部15が帽体本体部11に一体的に設けられていることになる。これにより、帽体7の開口部17の縁(環状の縁)13の近傍には、この環状の縁13とほぼ平行な環状の接合部(帽体本体部11の椀状部位の開口部における環状の縁と環状部材35の環状部37との接合部)39が形成されている。この接合部39では、気密性が確保されている。
【0041】
なお、上記説明では、庇部15が環状部材35の環状部37を介して帽体本体部11の上記椀状部位に設けられているが、庇部15が帽体本体部に直接設けられていてもよい。すなわち、庇部15を環状部材35に設けるのではなく、帽体本体部の開口部における前側の縁に直接設けた構成であってもよい。
【0042】
空気導入孔9は、電気用保護帽1の安全試験に適合しやすくするため、上述したように庇部15の先端部41の近くに設けられている。具体的には、庇部15の先端部(環状部材35の環状部37とは反対側に位置している部位)41から30mm以内の領域に設けられている。
【0043】
さらに詳しくは、次に述べる第1の点と第2の点との間の距離(電気用保護帽1の表面に沿った最短の道のりであるが、直線距離であってもよい。)が、必ず30mm以下になっている。第1の点は、細長い環状に形成されている空気導入孔9の縁の上に存在している任意の点であり、第2の点は、庇部15の曲線状の先端部41の上に存在している点のうちで上記第1の点との距離が最も小さい点である。
【0044】
ここで、電気用保護帽1における「保護帽の規格」について説明する。「保護帽の規格」に適合するためには、社団法人産業安全技術協会と社団法人日本ヘルメット工業会により合意された保護帽検定試験方法に規定されている電気用保護帽の安全試験(以下、単に「安全試験」という)に適合していることが必要である。
【0045】
ここで、電気用保護帽の安全試験について詳しく説明する。
【0046】
図8は、電気用保護帽の安全試験の概要を示す図であり、図9は、図8におけるIX部の拡大図であり、図10は、図9におけるX矢視図である。
【0047】
図8で示す参照符号43は水槽設置台であり、参照符号45は水槽であり、参照符号47は台座であり、参照符号49はおもりであり、参照符号51(51A,51B)は水であり、参照符号53(53A,53B)は電極であり、参照符号55は電源装置である。
【0048】
水51Aは電気用保護帽1の内部に入れられた水であり、水51Bは、水槽45の内部であって電気用保護帽1の外部に入れられた水である。電極53Aは、水51A内に設置された電極であって電源装置55に接続されており、高圧電圧が印加されるようになっている。電極53Bは、水51B内に設置された電極であって電源装置55に接続されており、アースされている。
【0049】
水51A,51Bの水面の高さは、お互いが一致しており、水51A,51Bの水面と電気用保護帽1の開口部17の縁13(縁13の最も低い部位)との間の距離L1は、30mmになっている。
【0050】
図8で示した状態で、各電極53A,53B間にたとえば20kVの試験交流電圧を印加し、1分間耐えることができれば、電気用保護帽の安全試験に適合してことになる。
【0051】
なお、帽体7が、上述したように、帽体本体部11の椀状部位に、環状部材35(庇部15)をインサート成型で設けた構成であると、電気用保護帽の安全試験を行うときに、図9や図10で示すように、庇部15にアルミニウム箔57(57A,57B)等の導電性の薄い部材を設置する必要がある。
【0052】
アルミニウム箔57Aは、電気用保護帽1の内側で、帽体本体部11や庇部15に接触して設置されている。また、アルミニウム箔57Aの一端部が、図9や図10で示すように、距離L2(たとえば30mm)のところに位置しており、他端部側の部位は、水51Aに浸かっている。
【0053】
アルミニウム箔57Bは、電気用保護帽1の外側で、アルミニウム箔57Aと同様に設置されている。
【0054】
なお、空気導入孔9は、図8〜図10では図示していないが、庇部15における距離L2の部位(領域;図10参照)59内に設けられている。これにより、前述したように、第1の点と第2の点との間の距離が、必ず30mm以下になっている。
【0055】
空気ガイド部材5には、被係止部61が設けられており、この被係止部61が、帽体本体部11の内側に設けられるハンモック係止部63に係合して、空気ガイド部材5が帽体7に設置されるように構成されている。
【0056】
ハンモック係止部63は、たとえば、突起65で構成されている。突起65は、帽体本体部11の開口部17の縁13の近傍でたとえば8箇所に設けられており、帽体本体部11の内壁から帽体本体部11の中心に向かって僅かに突出している。なお、総ての突起65は、衝撃吸収ライナ3とは干渉しない位置に設けられている。
【0057】
そして、帽体7に空気ガイド部材5と衝撃吸収ライナ3とが設置された状態で、ハンモック係止部63(突起65)に、ハンモック33とあご紐31が係止されて設置されるようになっている。
【0058】
また、突起65は、左右対称に設けられているとともに、帽体本体部11の開口部17における環状の縁13を概ね8等配する位置に設けられている。最も、前側に位置している一対の突起65Aの間(最も前側で左に位置している1つの突起と、最も前側で右に位置している1つの突起との間)に、前側空気通路19が形成されるようになっている。
【0059】
空気ガイド部材5は、たとえば、被導電性の合成樹脂を射出成型することによって一体成型されており、図6で示すように、前側空気通路19を形成するための前側空気通路構成部67と被係止部61が形成されている被係止部構成部69とを備えて左右対称に形成されている。
【0060】
前側空気通路構成部67は、板状の帽体本体側部位71と板状の庇側部位73と板状の左脇部位75と板状の右脇部位77とを備えて構成されている。
【0061】
帽体本体側部位71は矩形状に形成されており、庇側部位73は等脚台形状に形成されている。帽体本体側部位71の下側の1辺と庇側部位73の下底とがお互いに一致するようにして、庇側部位73が帽体本体側部位71につながっている。このつながっているところで、庇側部位73と帽体本体側部位71とが鈍角で交差している(庇側部位73の厚さ方向の一方の面と帽体本体側部位71の厚さ方向の一方の面と劣角が、鈍角になっている)。
【0062】
左脇部位75は細長い矩形状に形成されている。左脇部位75の長い一対の辺のうちの一方の辺と帽体本体側部位71の左側の1辺とがお互いに一致し、左脇部位75の短い一対の辺のうちの一方の辺と、庇側部位73における左側の斜辺の下底側の部位とがお互いに一致するようにして、左脇部位75が帽体本体側部位71と庇側部位73とにつながっている。なお、左脇部位75の厚さ方向がほぼ左右方向になっている。
【0063】
右脇部位77は、左脇部位75と同様にして、帽体本体側部位71や庇側部位73の右側で帽体本体側部位71と庇側部位73とにつながっている。
【0064】
被係止部構成部69は、板状の左側部位79と板状の右側部位81とで構成されている。左側部位79は、矩形状に形成されており、左側部位79の右側の端部の1辺と、左脇部位75の長い一対の辺のうちの他方の辺とがお互いに一致している。そして、左側部位79は、前側空気通路構成部67の左端部から左側に延出している。
【0065】
また、左側部位79には、被係止部61を構成するたとえば2つの貫通孔83が設けられている。そして、空気ガイド部材5を帽体7に設置したときに、帽体本体部11の2つの突起65(最も前側に位置している突起65Aと、前から2番目の突起65B)が、2つの貫通孔83に入り込み、しかも、左側部位79の厚さ方向の一方の面(前側の面)が、帽体7の内面に接触するようになっている(図4等を参照)。さらに、ハンモック33をハンモック係止部63に設置したときに、ハンモック33の被係止部と帽体7の内面とで挟まれて、空気ガイド部材5の被係止部構成部69における左側部位79が、帽体7に一体的に設置されるようになっている。
【0066】
右側部位81は、左側部位79と同様に形成され、左側部位79と同様にして、前側空気通路構成部67の右端部から右側に延出しており、左側部位79と同様にして帽体7に設置されるようになっている。右側部位81と左側部位79とが帽体7に設置されることにより、空気ガイド部材5が帽体7に一体的に設置されるようになっている。
【0067】
ここで、庇部15は、この左右方向の中央部であって前後方向における後側の部位85が、所定の高さで上方に僅かに盛り上がっている(図1等を参照)。この上方に盛り上がっている部位85は、平面視において、矩形状に形成されており、左右方向の寸法が空気ガイド部材5の庇側部位73の上底の寸法とほぼ等しくなっており、前後方向の寸法が、空気ガイド部材5の庇側部位73の高さの寸法とほぼ等しいか僅かに小さくなっている。
【0068】
そして、空気ガイド部材5を帽体7に設置したときに前側空気通路19が形成されるようになっている。前側空気通路19は、この上側が帽体7で構成されており、下側が空気ガイド部材5で構成されている。
【0069】
すなわち、前側空気通路19のうちの庇部15に形成されている部位(前側に形成されている部位)87は、庇部15の上方に盛り上がっている部位85と庇側部位73とで囲まれて形成されている。前側空気通路19のうちの帽体本体部11側に形成されている部位(後側に形成されている部位)89は、帽体本体部11の一部(庇部15につながっている前側の部位)と帽体本体側部位71と左脇部位75と右脇部位77とで囲まれて形成されている。
【0070】
なお、空気ガイド部材5が設置された帽体7を前から見ると、庇部15の先端部(前端部)41は、ほぼ水平な直線状で左右方向に延伸している。空気導入孔9は、庇部15の先端部41の上側で庇部15の先端部41から僅か離れて、左右方向に長い矩形状になっている(図2参照)。
【0071】
また、空気導入孔9を構成するために庇部15の上方に盛り上がっている部位85の中央部(左右方向の中央部)には、リブ91が設けられている(図2等を参照)。このリブ91は、庇部15の上方に盛り上がっている部位85や空気ガイド部材5の帽体本体側部位71を補強するために設けられているものであり、平板状に形成されて厚さ方向が帽体7の左右方向になっている。なお、このリブ91を削除した構成であってもよい。
【0072】
衝撃吸収ライナ3は、図7で示すように、椀状のライナ本体部93を備えて構成されている。ライナ本体部93の外側の面には凸部25が設けられている。また、ライナ本体部93の肉部を貫通して貫通孔29が設けられている。衝撃吸収ライナ3の高さは、帽体7よりも高さよりもわずかに低くなっている。また、凸部25が設けられていないライナ本体部93の外側の面に、凹部27が形成されている。
【0073】
ライナ本体部93の外側の面に設けられた凸部25は、たとえば、一対の前側凸部(左前側凸部25AL,右前側凸部25AR)と、一対の頂上凸部(左側頂上凸部25BL,右側頂上凸部25BR)と、一対の後側凸部(左後側凸部25CL,右後側凸部25CR)と、一対の側方凸部(左側方凸部25DL,右側方凸部25DR)とで構成されている。
【0074】
左前側凸部25ALは、細長い形状に形成されており、長手方向の一端部が椀状のライナ本体部93の開口部の縁の近傍(ライナ本体部93外側の面の下端)に位置し、長手方向の他端部が椀状のライナ本体部93の頂上部側に位置し、幅方向がライナ本体部93の左右方向とほぼ一致するようにして、ライナ本体部93の左前側(ライナ本体部93の前端側に寄ったところ)に設けられている。
【0075】
右前側凸部25ARは、衝撃吸収ライナ3の中心を通って衝撃吸収ライナ3の上下前後方向に展開している平面に対して、左前側凸部25ALと対称に設けられている。なお、左前側凸部25ALと右前側凸部25ARとはお互いが所定の距離だけ離れており、左前側凸部25ALと右前側凸部25ARとの間に、空気通路19,23を形成する凹部27の一部である前側凹部27Aが形成されている。
【0076】
左後側凸部25CLは、細長い形状に形成されており、長手方向の一端部が椀状のライナ本体部93の開口部の縁の近傍(ライナ本体部93外側の面の下端)に位置し、長手方向の他端部が椀状のライナ本体部93の頂上部側に位置し、幅方向がライナ本体部93の左右方向とほぼ一致するようにして、ライナ本体部93の左後側(ライナ本体部93の後端側に寄ったところ)に設けられている。
【0077】
右後側凸部25CRは、衝撃吸収ライナ3の中心を通って衝撃吸収ライナ3の上下前後方向に展開している平面に対して、左後側凸部25CLと対称に設けられている。なお、左後側凸部25CLと右後側凸部25CRとはお互いが所定の距離だけ離れており、左後側凸部25CLと右後側凸部25CRとの間に、空気通路23を形成する凹部27の一部である後側凹部27Bが形成されている。
【0078】
左側方凸部25DLは、所定の幅と所定の長さとを備えた形状に形成されており、長手方向の一端部が椀状のライナ本体部93の開口部の縁の近傍(ライナ本体部93の外側の面の下端)に位置し、長手方向の他端部が椀状のライナ本体部93の頂上部側に位置し、幅方向がライナ本体部93の前後方向とほぼ一致するようにして、ライナ本体部93の左側に設けられている。
【0079】
右側方凸部25DRは、衝撃吸収ライナ3の中心を通って衝撃吸収ライナ3の上下前後方向に展開している平面に対して、左側方凸部25DLと対称に設けられている。
【0080】
左前側凸部25ALと左側方凸部25DLとはお互いが所定の距離だけ離れており、左前側凸部25ALと左側方凸部25DLとの間に、空気通路23を形成する凹部27の一部である左前側方凹部27CLが形成されている。
【0081】
同様にして、右前側凸部25ARと右側方凸部25DRとの間に、空気通路23を形成する凹部27の一部である右前側方凹部27CRが形成されており、左側方凸部25DLと左後側凸部25CLとの間には、空気通路23を形成する凹部27の一部である左後側方凹部27DLが形成されており、右側方凸部25DRと右後側凸部25CRとの間には、空気通路23を形成する凹部27の一部である右後側方凹部27DRが形成されている。
【0082】
また、ライナ本体部93の外側の面の頂上部およびこの周辺(左右の前側凸部25AL,25ARと左右の後側凸部25CL,25CRと左側方凸部25DLと右側方凸部25DRとが設けられていない頂上部およびこの周辺)には、空気通路23を形成する凹部27の一部である頂上凹部27Eが形成されている。
【0083】
前側凹部27Aと後側凹部27Bと左右の前側方凹部27CL,27CRと左右の後側方凹部27DL,27DRと頂上凹部27Eとは、頂上凹部27Eを中央に介在させてお互いがつながっている。
【0084】
左側頂上凸部25BLは、左前側凸部25ALや左後側凸部25CLに比べて短く形成されており、椀状のライナ本体部93の頂上の近傍で、椀状のライナ本体部93の頂上の左側に位置している。また、左側頂上凸部25BLは、頂上凹部27Eのところに設けられている。
【0085】
右側頂上凸部25BRは、衝撃吸収ライナ3の中心を通って衝撃吸収ライナ3の上下前後方向に展開している平面に対して、左側頂上凸部25BLと対称に設けられている。
【0086】
貫通孔29としては、頂上貫通孔29Aと複数の頂上周辺貫通孔29Bと左右の側方貫通孔29CL,29CRとが設けられている。いずれの貫通孔29も、ライナ本体部93の凹部27のところに設けられている。
【0087】
頂上貫通孔29Aは、衝撃吸収ライナ3の頂上部に設けられている。頂上周辺貫通孔29Bは、衝撃吸収ライナ3の頂上を中心にした所定の半径の円を4等配する位置に設けられており、左斜め前側、左斜め後側、右斜め前側、右斜め後側の4箇所に設けられている。
【0088】
左側方貫通孔29CLは、左側方凸部25DLの上端部のところ設けられており、右側方貫通孔29CRは、衝撃吸収ライナ3の中心を通って衝撃吸収ライナ3の上下前後方向に展開している平面に対して、左側方貫通孔29CLと対称に設けられている。
【0089】
左側頂上凸部25BLは、左斜め前側に位置している頂上周辺貫通孔29Bと左斜め後側に位置している頂上周辺貫通孔29Bとの間に設けられている。右側頂上凸部25BRは、衝撃吸収ライナ3の中心を通って衝撃吸収ライナ3の上下前後方向に展開している平面に対して、左側頂上凸部25BLと対称に設けられている。
【0090】
また、衝撃吸収ライナ3には、衝撃吸収ライナ3を帽体7に設置したときに、衝撃吸収ライナ3と帽体7に設けられているハンモック係止部63とが干渉することを防止するための切り欠き95が設けられている。
【0091】
切り欠き95は、たとえば4つ設けられている。1つ目の切り欠き95は、椀状のライナ本体部93の開口部の縁(ライナ本体部93の下部)で、左前側凸部25ALと左側方凸部25DLとの間に設けられている。2つ目の切り欠き95は、椀状のライナ本体部93の開口部の縁(ライナ本体部93の下部)で、左側方凸部25DLと左後側凸部25CLとの間に設けられている。3つ目の切り欠き95は、衝撃吸収ライナ3の中心を通って衝撃吸収ライナ3の上下前後方向に展開している平面に対して、1つ目の切り欠き95と対称に設けられている。4つ目の切り欠き95は、衝撃吸収ライナ3の中心を通って衝撃吸収ライナ3の上下前後方向に展開している平面に対して、2つ目の切り欠き95と対称に設けられている。
【0092】
このように構成された衝撃吸収ライナ3を帽体7内に設置することによって、たとえば、各凸部25の先端の面が帽体7の内側の面に面接触する。そして、帽体7と衝撃吸収ライナ3とが協働して、後側空気通路23を形成するようになっている。すなわち、後側空気通路23は、衝撃吸収ライナ3の凹部27と帽体7とによって形成されている。
【0093】
また、空気ガイド部材5が設置された帽体7に衝撃吸収ライナ3を設置したときに、前側空気通路19と後側空気通路23とがお互いにつながるようになっている。すなわち、空気ガイド部材5の上端部およびこの上端部から近傍にかけての部位が、衝撃吸収ライナ3の前側凹部27A(前側凹部27Aの下端からこの下端の近傍にかけての部位)内に入り込み、前側空気通路19と後側空気通路23とがお互いにつながり、空気導入孔9から入ってきた空気が、前側空気通路19から後側空気通路23に流れるようになっている。
【0094】
なお、前側空気通路19の幅方向と、前側凹部27Aでの後側空気通路23の幅方向とは、お互いがほぼ一致している。また、空気の流れ方向に直交する平面による断面の面積は、前側凹部27Aでの後側空気通路23のほうが前側空気通路19よりも僅かに大きくなっており、空気ガイド部材5が前側凹部27Aに嵌っていて、空気がスムーズに流れるようになっている。
【0095】
ここで、電気用保護帽1を着用者が被った場合について説明する。
【0096】
電気用保護帽1を着用者が被ると、ハンモック33が着用者の頭部に接触し、衝撃吸収ライナ3と着用者の頭部との間に隙間が形成される。
【0097】
そして、電気用保護帽1を被った着用者が、たとえば、前方に歩くと、図3で示すように、空気導入孔9から入った空気が、矢印A1で示すように、前側空気通路19内を流れ、この前側空気通路19内を流れた空気が、後側空気通路23内を矢印A2,A3で示すように流れる。このように矢印A2,A3で示す空気の流れによって、着用者の頭部で暖められた空気が誘引される。すなわち、着用者の頭部で暖められた空気が、矢印A4で示すように貫通孔29を通って、後側空気通路23内に流れ、電気用保護帽1の外に排出される。
【0098】
電気用保護帽1によれば、空気導入孔9以外の貫通孔が設けられていない帽体7の前方部位に空気通路19を構成する空気ガイド部材5を設けてあるので、絶縁性を確保しつつ着用者の頭部を冷却することができるとともに、簡素な構成で重量が軽減されている。
【0099】
したがって、電気工事において着用者が電気用保護帽1を長時間着用しても、着用者の頭部のムレを防止することができ着用者の首等に発生する疲労を軽減することができる。
【0100】
また、特許文献3に記載の保護帽のような2重構造になっていないので、帽体7の内側に衝撃吸収ライナ3を設置しても、電気用保護帽1が大型化することを防止することができる。
【0101】
また、電気用保護帽1によれば、空気の誘引作用によって、着用者の頭部を効率良く冷却することができる。
【0102】
すなわち、特許文献3に記載の保護帽であると、内側部にむやみに多数の通気孔をあけてあり、保護帽の外部から外側部と内側部との間の入った空気をそれらの通気孔から内側部の内側に流して、着用者の頭部を冷却する方式を採用している。この方式だと、着用者の頭部で暖められた空気が上昇して通気孔を通り外側部と内側部との間の空間に流れようとする。したがって、内側部の形成された貫通孔で空気がぶつかり、空気の流れが阻害されやすい。
【0103】
これに対して、電気用保護帽1では、この前側に設けられた空気導入孔9で導入された空気が、前側空気通路19を通過し衝撃吸収ライナ3と帽体7とで形成された後側空気通路23を帽体7の内壁に沿って前から後に流れる。この後側空気通路23が排気用通風路として働き、後側空気通路23を流れる空気が着用者の頭部で暖められた空気を誘引するので(図3で示す矢印A4を参照)、着用者の頭部を効率良く冷却することができる。なお、着用者の頭部で暖められた空気は、前述したように、衝撃吸収ライナ3に設けられている貫通孔29を通って誘引される。
【0104】
また、電気用保護帽1によれば、別途部材を設けることなく衝撃吸収ライナ3で後側空気通路23を形成しているので、構成が簡素化され軽量化されている。
【0105】
また、電気用保護帽1によれば、庇部15が透明体もしくは半透明体で構成されているので、着用者の視界を確保することができる。また、空気導入孔9が庇部15の先端側に設けられているので、図8で示した試験においても、沿面距離を稼ぐことによって沿面放電が発生し難くなっており、絶縁性を確保することができる。
【0106】
また、電気用保護帽1によれば、空気ガイド部材5の被係止部61が帽体本体部11の内側に設けられるハンモック係止部63に係合して、空気ガイド部材5が帽体7に設置されるように構成されているので、簡素な構成で空気ガイド部材5を帽体7に設置することができる。
【0107】
ここで、電気用保護帽1の冷却効果の試験結果について説明する。
【0108】
まず、図15で示すように、頭部モデル101が設置されている治具台100に電気用保護帽1を設置する。頭部モデル101には、ヒータ103と生理食塩水3gを塗布したティッシュ105を設けてある。治具台100には、貫通孔102が形成されている。
【0109】
電気用保護帽1の縁と治具台100との間は図示しないテープで塞がれており、送風機104によって、空気導入孔9から電気用保護帽1内に送られた空気は、貫通孔102からのみ、電気用保護帽1の外に排出されるようになっている。
【0110】
図15に示ように、頭部モデル101が設置されている治具台100に設置された電気用保護帽1を、恒温恒湿容器の風に影響をおよぼさないようにダンボール等の遮蔽板で適宜囲い、恒温恒湿容器内に設置する。送風機104は、恒温恒湿容器内に設置されている。
【0111】
恒温恒湿容器内は、23℃で40%の湿度になっている。ヒータ103の設定温度を36.5℃とする。
【0112】
そして、ヒータ103の電源を入れると同時に送風機104を稼動する。このヒータ103の電源を入れ送風機104を稼動し始めてから所定の時刻が経過する毎に、図示しない温度センサと湿度センサ(頭頂部や後頭部に設けられている湿度センサ)とで、電気用保護帽1の湿度と温度を測定した(図16〜図19参照)。なお、図15で示す矢印は、空気の流れを示している。
【0113】
図16は、電気用保護帽1の冷却効果の試験結果のうちで、頭頂部に設けられている湿度センサで測定した湿度の変化を示す図である。
【0114】
図16の横軸は、時刻の経過を示し、縦軸は湿度を示している。
【0115】
図16のグラフG11は、帽体に頭部冷却用の貫通孔が設けられている従来の保護帽(電気用保護帽ではない)で、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。なお、上記貫通孔は、前頭部に相当する帽体の部位、後頭部に相当する帽体の部位、左側方部に相当する帽体の部位、右側方部に相当する帽体の部位に設けられている。前頭部に相当する帽体の部位に設けられている貫通孔は、小さい多数の貫通孔がお互いに接近している小径貫通孔群で構成されている。後頭部に相当する帽体の部位、左側方部に相当する帽体の部位、右側方部に相当する帽体の部位に設けられている貫通孔も、同様にして、小径貫通孔群で構成されている。
【0116】
図16のグラフG12は、本発明の実施形態に係る電気用保護帽1で、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0117】
図16のグラフG13は、グラフG11の試験で使用した従来の保護帽で、左側方部に相当する帽体の部位に設けられている貫通孔と、右側方部に相当する帽体の部位に設けられている貫通孔とを塞ぎ、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0118】
図16のグラフG14は、グラフG11の試験で使用した従来の保護帽で、総ての貫通孔を塞ぎ、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0119】
図16で示す各グラフから理解されるように、帽体の貫通孔を一切塞いでいない従来の保護帽にはおよばないものの、電気用保護帽1であっても、十分な湿度の低下があり、十分な冷却効果を得ることができる。
【0120】
図17は、電気用保護帽1の冷却効果の試験結果のうちで、後頭部に設けられている湿度センサで測定した湿度の変化を示す図である。
【0121】
図17の横軸は、図16の場合と同様に、時刻の経過を示し、縦軸は湿度を示している。
【0122】
図17のグラフG21は、帽体に頭部冷却用の貫通孔が設けられている従来の保護帽(グラフG11の試験で使用した従来の保護帽)で、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0123】
図17のグラフG22は、本発明の実施形態に係る電気用保護帽1で、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0124】
図17のグラフG23は、グラフG21の試験で使用した従来の保護帽で、左側方部に相当する帽体の部位に設けられている貫通孔と、右側方部に相当する帽体の部位に設けられている貫通孔とを塞ぎ、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0125】
図17のグラフG24は、グラフG21の試験で使用した従来の保護帽で、総ての貫通孔を塞ぎ、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0126】
図17で示す各グラフから理解されるように、後頭部では、従来の保護帽、電気用保護帽1で、十分な湿度の低下があり、十分な冷却効果を得ることができる。
【0127】
図18は、電気用保護帽1の冷却効果の試験結果のうちで、頭頂部に設けられている温度センサで測定した温度の変化を示す図である。
【0128】
図18の横軸は、時刻の経過を示し、縦軸は温度を示している。
【0129】
図18のグラフG31は、帽体に頭部冷却用の貫通孔が設けられている従来の保護帽(グラフG11の試験で使用した従来の保護帽)で、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0130】
図18のグラフG32は、本発明の実施形態に係る電気用保護帽1で、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0131】
図18のグラフG33は、グラフG31の試験で使用した従来の保護帽で、左側方部に相当する帽体の部位に設けられている貫通孔と、右側方部に相当する帽体の部位に設けられている貫通孔とを塞ぎ、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0132】
図18のグラフG34は、グラフG31の試験で使用した従来の保護帽で、総ての貫通孔を塞ぎ、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0133】
図18で示す各グラフから理解されるように、帽体の貫通孔を一切塞いでいない従来の保護帽にはおよばないものの、電気用保護帽1であっても、十分な湿度の低下があり、十分な冷却効果を得ることができる。
【0134】
図19は、電気用保護帽1の冷却効果の試験結果のうちで、後頭部に設けられている温度センサで測定した温度の変化を示す図である。
図19の横軸は、図18の場合と同様に、時刻の経過を示し、縦軸は温度を示している。
【0135】
図19のグラフG41は、帽体に頭部冷却用の貫通孔が設けられている従来の保護帽(グラフG11の試験で使用した従来の保護帽)で、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0136】
図19のグラフG42は、本発明の実施形態に係る電気用保護帽1で、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0137】
図19のグラフG43は、グラフG41の試験で使用した従来の保護帽で、左側方部に相当する帽体の部位に設けられている貫通孔と、右側方部に相当する帽体の部位に設けられている貫通孔とを塞ぎ、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0138】
図19のグラフG44は、グラフG41の試験で使用した従来の保護帽で、総ての貫通孔を塞ぎ、図15等で示した冷却試験を行ったときの湿度の変化を示している。
【0139】
図19で示す各グラフから理解されるように、後頭部では、従来の保護帽、電気用保護帽1で、十分な温度の低下があり、十分な冷却効果を得ることができる。
【0140】
ところで、電気用保護帽1におけて、空気導入孔9を庇部15以外の箇所に設けてもよい。すなわち、電気用保護帽を帽体と空気ガイド部材とを備えた構成とし、帽体の庇部と空気ガイド部材とが協働して空気導入孔を形成するようにしてもよい。
【0141】
この場合、帽体は、椀状に形成された本体部と、この本体部の縁部の前側で前記本体部に一体的に設けられた庇部とを備えて構成されている。空気ガイド部材は、前記帽体の前方の内側で前記帽体に一体的に設置されている。また、空気ガイド部材は、前方に開口している空気導入孔とこの空気導入孔から導入された空気を前記帽体の前方内側まで導く空気通路を、前記帽体と協働して形成している。
【0142】
具体的には、電気用保護帽1を図11〜図14で示すように適宜変形してもよい。
【0143】
図2等で示す電気用保護帽1では、空気導入孔9が、庇部15の肉部を貫通して設けられているが、図11に示す電気用保護帽1aでは、庇部15aと空気ガイド部材5aとで空気導入孔9aが構成されている。
【0144】
すなわち、空気ガイド部材5aが設置された帽体7aを前から見ると、庇部15aの前端部41aは、上方に凸な高さ寸法の小さい逆「V」字状に形成されている。一方、空気ガイド部材5aは、高さ寸法の小さい「U」字状に形成されている。
【0145】
そして、空気導入孔9aと前側空気通路19aとは、この上側が帽体7aで構成されており、下側が空気ガイド部材5aで構成されている。図11で示す電気用保護帽1aの断面の形態は、概ね図14(a)で示すようになる。なお、前から見た帽体7aの庇部15aの前端部41aが、ほぼ水平な直線状で左右方向に延伸している構成であってもよい。
【0146】
図12に示す電気用保護帽1bも、図11に示すものと同様に、庇部15bと空気ガイド部材5bとで空気導入孔9bが構成されている。
【0147】
空気ガイド部材5bが設置された帽体7bを前から見ると、庇部15bの前端部41bの中央部(左右方向の中部)が、所定の高さで上方に凸になっており、上方に凸な高さ寸法の小さい逆「U」字状に形成されている。一方、空気ガイド部材5bは、水平方向で直線状に延伸している。
【0148】
そして、空気導入孔9bと前側空気通路19bとは、この上側が帽体7bで構成されており、下側が空気ガイド部材5bで構成されている。図12で示す電気用保護帽1bの断面の形態も、概ね図14(a)で示すようになる。
【0149】
図13に示す電気用保護帽1cも、図11や図12で示すものと同様に、庇部15cと空気ガイド部材5cとで空気導入孔9cが構成されている。
【0150】
空気ガイド部材5cが設置された帽体7cを前から見ると、庇部15cの前端部41cは、上方に凸な高さ寸法の小さい逆「V」字状に形成されている。空気ガイド部材5cは、水平方向で直線状に延伸している。
【0151】
そして、空気導入孔9cと前側空気通路19cとは、この上側が帽体7cで構成されており、下側が空気ガイド部材5cで構成されている。図13で示す電気用保護帽1cの断面の形態も、概ね図14(a)で示すようになる。
【0152】
ところで、上記説明では、庇部の下側や帽体の内側に空気ガイド部材を設けて、前側空気通路を構成しているが、図14(b)で示すように、庇部15dの上側や帽体7dの外側に空気ガイド部材5dを設けて、前側空気通路19dを構成してもよい。この場合、前側空気通路19dの空気の出口として、帽体7dに貫通孔8dを設けてある。
【0153】
さらに、上記説明では、帽体と空気ガイド部材とが協働して前側空気通路を形成しているが、空気ガイド部材のみで、前側空気通路を形成する構成であってもよい。この場合、空気ガイド部材は筒状に形成されている。この筒状の空気ガイド部材を、庇部の下側や帽体の内側に設けてもよいし、庇部の上側や帽体の外側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0154】
1、1a、1b、1c 電気用保護帽
5、5a、5b、5c 空気ガイド部材
7、7a、7b、7c 帽体
9、9a、9b、9c 空気導入孔
11、11a、11b、11c 帽体の本体部
15、15a、15b、15c 帽体の庇部
41 庇部の先端部
61 被係止部
63 ハンモック係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椀状に形成された本体部とこの本体部の前側で前記本体部に設けられた庇部とを備えた帽体と、
前記庇部に設けられた空気導入孔と、
前記帽体の前方で前記帽体に設置され、前記空気導入孔から導入された空気を前記帽体の前方内側まで導く前側空気通路を形成している空気ガイド部材と、
を有することを特徴とする電気用保護帽。
【請求項2】
椀状に形成された本体部とこの本体部の前側で前記本体部に設けられた庇部とを備えた帽体と、
前記帽体の前方で前記帽体に設置され、空気導入孔とこの空気導入孔から導入された空気を前記帽体の前方内側まで導く前側空気通路とを形成している空気ガイド部材と、
を有することを特徴とする電気用保護帽。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気用保護帽において、
前記庇部は、前記帽体の本体部とは別体で構成されており、
前記空気導入孔は、前記庇部の先端部もしくは前記庇部の先端部の近くに設けられていることを特徴とする電気用保護帽。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電気用保護帽において、
前記空気ガイド部材には、被係止部が設けられており、
前記被係止部が、前記帽体本体部の内側に設けられるハンモックの係止部に係合して、前記空気ガイド部材が前記帽体に設置されるように構成されていることを特徴とする電気用保護帽。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電気用保護帽において、
貫通孔を備え、前記帽体の内部で前記帽体に設置され、前記帽体と協働して後側空気通路を形成している衝撃吸収ライナを有し、
前記空気導入孔から導入され前記前側空気通路内を流れた空気が、前記後側空気通路内で前記帽体の内壁に沿って流れるとともに、この空気に流れによって、前記衝撃吸収ライナ内側の空気が、前記貫通孔を通って前記後側空気通路側に吸引されるように構成されていることを特徴とする電気用保護帽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−1834(P2012−1834A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136008(P2010−136008)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】