説明

電気穿孔による真核細胞への線形ポリヌクレオチドの改良された形質移入

【課題】 真核細胞へのより効率的な遺伝子導入方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、真核細胞、好ましくはヒト造血細胞、特に樹状細胞において電気穿孔により遺伝子を送達するための改良された方法を提供する。本発明の方法は、従来のmRNAのリポフェクションおよび受動的パルシングによる方法、および樹状細胞への腫瘍抗原負荷を含む遺伝子送達のためのプラスミドcDNAの電気穿孔による方法よりも、優れた導入率などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真核細胞、好ましくはヒト造血細胞、特に樹状細胞中に電気穿孔により遺伝
子を送達する改良された方法を提供する。本発明の方法は、mRNAのリポフェクション
および受動的パルシングよりも、および樹状細胞の腫瘍抗原負荷を含む遺伝子送達用のプ
ラスミドcDNAの電気穿孔よりも優れている。
【背景技術】
【0002】
樹状細胞(DC)は、試験管内および生体内で一次免疫反応を開始するための専門的な
抗原捕捉および提示細胞として機能する骨髄由来白血球である(Banchereau,
J.,Steinman,R.M.著,Nature,第392巻:245〜252頁(199
8年))。生体内での細胞媒介免疫におけるそれらの中心的役割により、それらは、AI
DSおよび癌のような後天性疾患の分子的免疫治療のための極めて魅力的な標的である。
DCの生体外発生およびDC機能を調整する能力の近年の発達により、DCをベースとし
た腫瘍ワクチンを設計する原理が提供されている(Avigan,D.,Blood Rev.,第
13巻:51〜64頁(1999年))。そのような腫瘍ワクチンの結果は、細胞毒性T
リンパ球(CTL)媒介抗腫瘍免疫反応の最適刺激のための応用抗原負荷法の有効性に高
度に依存する(Tarte,K.,Klein,B.著,Leukemia,第13巻:653〜
663頁(1999年))。幾つかのレポートが、TAA特異的細胞毒性Tリンパ球(C
TL)の誘導用にDCを負荷するために腫瘍関連抗原をコードしているcDNAをウイル
ス的に転移することを記載している(Dietz,A.B.,Vuk,P.S.著,Bloo
d,第91巻:392〜398頁(1998年);Brossart,P.ら著、J.Immun
ol.,第158巻:3270〜3276頁(1997年);Specht,J.M.ら著
、J.Exp.Med.,第186巻:1213〜1221頁(1997年))が、DCに基づいた
ワクチン用の非ウイルス性遺伝子送達系は、安全性の問題およびベクターの免疫原性を最
低まで低下させるので、臨床的展望を伴う、より魅力的な手段を提供する。
【0003】
さらに、転写が起こる場合は核へのDNAの細胞内輸送が非常に制限されているので、
非ウイルス性DNA形質移入法は、特に非分裂細胞において非効率的であることが一般的
に知られている(Luo,D.,Saltzman,W.M.著,Nat.Biotechnol.,第
18巻:33〜37頁(2000年))。従って、複数のグループが、mRNA形質移入
の、非ウイルス性遺伝子送達用の有効な代替物としての可能性を示した。これは、この手
段が、核内に入る必要性、およびDNAベクターに関わる転写調節の複合的問題を回避す
るからである(Lu,D.ら著、Cancer Gene Ther.,第1巻:245〜252頁(19
94年);Kariko,K.ら著、Biochem.Biophys.Acta,第1369巻:320〜3
34頁(1998年);サワイ(Sawai),K.ら著、Mol.Genet.Metab.,第64巻
:44〜51頁(1998年))。RNA手法は、DCをベースとした腫瘍ワクチンの開
発において有益なものにする幾つかの利点を有している。まず、DCは、ポックスウイル
ス(Kim,C.J.ら著、J.Immunother.,第20巻:276〜286頁(1997年
))またはアデノウイルス(Dietz,A.B.,Vuk,P.S.著,Blood,第9
1巻:392〜398頁(1998年))のような組換えウイルスによる形質導入と比べ
て、匹敵しうる水準まで形質移入され得ると共に、ウイルスベクターの欠点は回避する(
Jenne,L.ら著、Gene Ther.,第7巻:1575〜1583頁(2000年);J
onuleit,H.ら著、Gene Ther.,第7巻:249〜254頁(2000年))。
第2に、DCは、腫瘍関連抗原を予め同定することなく腫瘍抗原の供給源としてIVT
mRNAの代わりに全mRNAを用いて全抗原範囲を負荷され得る(Zhang,W.ら
著、Hum.Gene Ther.,第10巻:1151〜1161頁(1999年))。さらに、RN
Aは細胞半減期が短く、宿主ゲノム中に組み込まれる潜在力に欠き、そのために、臨床的
遺伝子治療試行の点において、安全性事項、例えば、挿入的突然変異生成を除く(Lu,
D.ら著、Cancer Gene Ther.,第1巻:245〜252頁(1994年);Ying,
H.ら著、Nat.med.,第5巻:823〜827頁(1999年))。一方、この短い細胞
半減期は、比較的短いタンパク質発現につながり得るので不利となり得る。
【0004】
しかしながら、非ウイルス性形質移入による非効率的遺伝子転移および低水準の発現の
問題が残る(Arthur,J.F.ら著、Cancer Gene Ther.,第4巻:17〜25頁
(1997年))。
【0005】
以前には、我々は電気穿孔媒介遺伝子送達(Van Tendeloo,V.F.I.
ら著、Gene Ther.,第5巻:700〜707頁(1998年))を利用する、CD34
前駆体由来DC(34−DC)およびランゲルハンス細胞(34−LC)の繁殖における
高水準の導入遺伝子発現を報告した。これに対して、試験管内培養DCの高度に利用し易
く広く用いられている供給源であることを意味する非分裂単核細胞由来DC(Mo−DC
)は、電気穿孔またはリポフェクションによるcDNA形質移入技術にあまり適応性がな
い。
【0006】
近年、ヒトDCをRNAで形質移入することができ、一次抗原特異的CTLを誘発する
ことができることが示された(Nair,S.K.ら著、Nat.Biotechnol.,第16巻:
364〜369頁(1998年))。しかしながら、受動的パルシング、リポフェクショ
ンまたは電気穿孔を用いるMo−DC中のmRNA転移の効率についてデータは、あった
としても、殆ど無い。さらに、34−DCまたは34−LCにおけるmRNA形質移入の
実行可能性は未だ確立されておらず、この方法はMo−DCに適用されただけである。
【0007】
「正常」細胞(例えば、腫瘍細胞)中に環状ポリ核酸を組み込むための電気穿孔法は、
通常、以下の反応条件を用いる(Van Tendeloo V.F.I.ら著、Gene T
her.,第5巻:700〜707頁(1998年);Van Tendeloo,V.F.
I.ら著、Gene Ther.,第7巻:1431〜1437頁(2000年);Van Boc
kstaele,D.,Berneman,Z.N.,Cytometry第41巻:31〜35
頁(2000年);Lurquin,P.F.著,Mol.Biotechnol.第7巻:5〜35頁
(1997年);Matthews,K.E.ら著、Mol.Biotechnol.第48巻,第22
章,Nickoloff編);Spencer,S.C.著,Biochem.and Biotechnol.
第42巻:75〜82頁(1993年)):
− 1〜10×10細胞/mlの範囲の細胞濃度、
− 200〜350Vの範囲の電圧、
− 300μFを超える静電容量、
− 15〜40μsの範囲のパルス長。
【0008】
しかしながら、そのような「従来の」電気穿孔法は、種々の「従来の」パラメーター設
定:i)静電容量および電圧をそれぞれ300μFおよび250Vに維持しつつ細胞密度
を2×10〜4×10細胞/mlの範囲で試験し、細胞密度の増加が致死率の低下に
つながることを示し;ii)静電容量および細胞密度をそれぞれ300μFおよび4×1
細胞/mlに維持しつつ電圧の衝撃を250〜350Vの範囲で検討し、電圧の増加
が致死率の上昇につながることを示し;iii)細胞密度および電圧をそれぞれ4×10
細胞/mlおよび250Vに維持しつつ静電容量を300〜1500μFの範囲で評価
したこと、を我々がテストし単核細胞由来樹状細胞の電気穿孔について報告したStro
bel,I.ら著、Gene Therapy 第7巻:2028〜2035頁(2000年)に例え
ば示されているように線形ポリヌクレオチドを電気穿孔したおよび/または一次細胞(例
えばMo−DC)に適用した場合に、非常に低いRNA形質転換収率しか与えない。静電
容量の増加は致死率の増加をもたらした。22msより短いパルス時間が細胞生活力を増
加させたが、非常に低い非相同性遺伝子発現しか検出できなかった。これに対し、28m
sより長いパルス時間は、一時的に遺伝子発現を高めたが、細胞損失を増加させた。結果
的に、この以前に公開された作業において、未成熟単核細胞由来DCのための以下のよう
な最適の電気穿孔条件が発見された:i.)細胞密度4×10細胞/ml;ii.)電
圧250V;iii.)静電容量300〜500μFおよびiv.)パルス時間22〜2
8ms。これらの最適化電気穿孔条件を用いると、GFP RNAを形質移入すると、4
8時間後に11%までのDCがGFPであった。GFP DNAを用いて同様の形質移
入効果が得られた。
【0009】
最近、我々は、試験管内転写mRNAの単核細胞由来樹状細胞中への効果的電気穿孔が
可能であることも報告したが、この電気穿孔をいかに達成し得るかは述べなかった(Post
er、the 6th Symposium on dendritic cells,P
ort Douglas,オーストラリア,2000年5月26日〜6月1日およびth
e Keystone Symposia,Taos,NM,USA.,2001年3月
12日から18日)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
米国特許第5,766,902号は、核酸分子を標的細胞に結合するリガンド中に適用
するまたはそのリガンドと共に適用するという、核酸分子用の電気穿孔法を開示している
。この化合物はエンドソマル分裂溶剤を含む。
【0011】
米国特許第5,554,528号は、細胞が感染されたときのHIV複製を阻害するよ
うに細胞系を安定に形質転換させるためにHIV要素の制御下に毒素遺伝子を含むプラス
ミド(すなわち、環状DNA構造体)を用いることを記載している。前記特許は、プラス
ミド電気穿孔に典型的でない電気的設定(250μF;220〜290V;体積100μ
l、BioRad cuvettes and Gene Pulser(登録商標))
を用いる電気穿孔によるDNA形質移入(15欄、実施例2)を記載しているが、RNA
形質移入は記載しておらず、RNA電気穿孔も当然記載していない。さらに、「正常」哺
乳動物細胞株しか電気穿孔されておらず、一次細胞は考えられていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、特定の電気穿孔設定を用いると、単核細胞由来樹状細胞のような造血
細胞にDNAおよびRNAを効果的に形質移入することができることが発見された。特に
、最適化mRNAをベースとした電気穿孔を用いてmRNA形質移入効率が向上すること
が発見された。すなわち、本発明は、異なる型のヒトDC中への腫瘍抗原の効果的負荷に
関連するmRNA電気穿孔によるMo−DCおよび他の型の樹状細胞(CD34由来ラ
ンゲルハンス細胞および間隙型DCを含む)の高度に効果的な非ウイルス性形質移入の方
法を記載する。本発明の方法の効果を、mRNAのリポフェクションおよび受動的パルシ
ング並びにcDNA電気穿孔のような他の形質移入法と比較し、高度に優れていると分か
った。さらに、負荷効率へのDC成熟の効果を検討した。Mo−DC並びに34−DCお
よび34−LC中の高度に効果的な抗原負荷に適している電気穿孔をベースとしたmRN
A形質移入プロトコールが開発された。この技術は、負荷効率およびその後の抗原特異的
CD8CTLクローンの活性化の点で、mRNAリポフェクションまたは受動的mRN
Aパルシングより優れていると分かった。そのようなmRNAをベースとした電気穿孔を
用いると、Mo−DC、34−DCおよび34−LCにおける形質移入効率は、van
Tendeloo,V.F.I.ら著、Gene Ther.,第5巻:700〜707頁(199
8年)に記載のプラスミドDNA電気穿孔と比べて、少なくともそれぞれ25倍、6倍お
よび3倍、より効率的であり、先に記載したmRNA電気穿孔よりも優れていた。また、
そのようなmRNA電気穿孔は、mRNAリポフェクションおよび受動的パルシングより
優れていた。この高められた形質移入効率は、我々のCTL活性化実験により確認される
ように試験管内での優れた生物学的効果に翻訳され、生体内でのより高い免疫性能が得ら
れるかどうかについて検討する手段として用いることができた(Porgador,A.
ら著、J.Exp.Med.,第188巻:1075〜1082頁(1998年))。重要なことに
、特定のCD8TILクローンにMHCクラスIが限定された方法で、mRNAを形質
移入したDCが、導入された抗原および存在する抗原エピトープを効果的に処理すること
ができた(図4)。さらに、DCの抗原提示性能への成熟の効果についての先の報告(C
ella,M.ら著、Curr.Opin.Immunol.,第9巻:10〜16頁(1997年))に従
って、mRNA電気穿孔による抗原負荷を、最適の抗原提示を達成するために、好ましく
はDC成熟に先立って行い(図5)、今後のDCをベースとしたワクチン設計のための、
負荷およびDC成熟を連続して行う重要性を示した(Morse,M.A.ら著、Cancer
Res.,第58巻:2965〜2968頁(1998年))。
【0013】
すなわち、本発明は、次の事項を提供する:
(1)線状ポリヌクレオチドの一種もしくは二種以上またはその混合物で真核細胞を形
質移入する方法であって、真核細胞および形質移入すべき線状ポリヌクレオチドを含む懸
濁液を300μFを下回る静電容量で電気穿孔することを含んでなる方法。
【0014】
(2)線状ポリヌクレオチドの一種もしくは二種以上またはその混合物で真核細胞を形
質移入する方法であって、好ましくは(1)に定義される方法であって、真核細胞および
形質移入すべき線状ポリヌクレオチドを含む懸濁液を300〜600Vで100μs〜1
msのソフトパルスを用いて電気穿孔することを含んでなる方法。
【0015】
(3)前記(1)または(2)に定義される方法により得ることができる形質移入真核
細胞。
【0016】
(4)前記(1)または(2)に定義される方法により得ることができる形質移入真核
細胞を含んでなる医薬組成物またはワクチン。
【0017】
(5)免疫または寛容の誘発、腫瘍治療、幹細胞治療、再生医療または組織工学を含む
免疫治療用の薬を調製するための、前記(1)または(2)に定義される方法により得る
ことができる形質移入真核細胞の使用。
【0018】
(6)線形ポリヌクレオチドによりコードされる遺伝子産物用の発現系として、または
検出系としての、前記(1)または(2)に定義される方法により得ることができる形質
移入真核細胞の使用。
【0019】
(7)前記(1)または(2)に定義される方法により得ることができる形質移入真核
細胞を患者に投与することを含んでなる、免疫治療または腫瘍治療のための方法。
【発明の効果】
【0020】
実施形態(1)および(2)の方法は、腫瘍抗原のような抗原をヒト樹状細胞(DC)
に負荷するのに適用することができ、これはDCをベースとした腫瘍ワクチンへの挑戦的
な手法である。(これは、非常に重要である。何故なら、予備実験において、プラスミド
DNA電気穿孔手法が、それが引き起こすT細胞刺激がプラスミドDNAにより直接また
は間接的に媒介される非特異的T細胞刺激から区別できないので、DCの腫瘍抗原負荷に
適用できないことが分かったからである)。この非特異的の刺激は、mRNA電気穿孔を
用いた時には観察されず、特異的DCをベースとしたT細胞刺激よりも優れていることが
証明された。また、遺伝子転移によるDC中の他のタンパク質(例えば、刺激または寛容
またはアポトーシス分子)の発現が望ましく、さらに、電気穿孔によるアンチセンスRN
Aの導入が望ましい。換言すれば、本発明は、遺伝情報をDC中に効率的に導入するため
の、mRNA電気穿孔に基づく細胞質発現系を記載する。強化グリーン蛍光タンパク質(
Enhanced green fluorescent protein)(EGFP
)レポーター遺伝子を用いるK562細胞中での予備実験は、mRNA電気穿孔が、プラ
スミドDNA電気穿孔と比べて著しく改良された形質移入効率(それぞれ、EGFP
胞での40%に対して89%)を示し、著しく低い細胞毒性(死亡率が、プラスミドDN
Aを用いた場合の51%に対してmRNAを用いた場合の15%)を誘発したことを示し
た。単核細胞由来DC(Mo−DC)、CD34前駆体由来DC(34−DC)および
ランゲルハンス細胞(34−LC)を含む異なる型のヒトDCの非ウイルス性形質移入の
ためにmRNA電気穿孔を適用すると、全DC型の50%より多くにおいてmRNA電気
穿孔による高水準の導入遺伝子発現が得られた。mRNAで電気穿孔したDCは、その表
現型および成熟性能を維持した。重要なことに、Melan−AをコードするmRNAで
電気穿孔したDCは、Melan−A特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)クローンを
HLA限定的方法に強度に活性化し、mRNAをリポフェクションしたまたはパルスした
DCより優れていた。Mo−DCがmRNA形質移入に続いて成熟すると、CTLの最適
刺激が生じる。DCをプラスミドDNAで形質移入すると、CTLの非特異的刺激が際立
って観察された。我々のデータは、mRNAで電気穿孔したMo−DCが、機能的抗原性
ペプチドを細胞傷害性T細胞に効率的に提示することを明らかに示している。従って、腫
瘍抗原をコードするmRNAの電気穿孔は、ヒト樹状細胞に腫瘍抗原を負荷する効果的な
技術であり、将来のDCをベースとした腫瘍ワクチンでの適用に役立つことができる。用
意した成熟DCの形質移入は、TNFα+LPSのような成熟刺激を用いた場合、効率が
低かった。しかしながら、最適化成熟刺激を含むMo−DC用の特定世代のメタノールを
用いると(実施例4を参照)、成熟Mo−DCの腫瘍抗原のような効率的形質移入も可能
になる。以下において、本発明を添付の図面および実施例により、より詳細に説明するが
、これらは本発明を制限するものと解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】EGFP mRNA電気穿孔に続くK562細胞中での導入遺伝子発現のフローサイトメトリー的分析を示す図である。 EGFP mRNAで300V、150μFでまたは実施例に示すようにEGFPプラスミドDNAで260V、1050μF(破線)で電気穿孔したK562細胞。電気穿孔の24時間後、フローサイトメトリー(FCM)EGFP分析を行って、mRNA電気穿孔(太線)およびプラスミドDNA電気穿孔(破線)の形質移入効率を推定した。5つの独立した実験を表す上掛けヒストグラムを示す。非電気穿孔細胞(細線)を用いて、バックグラウンド蛍光を決めた。M1領域は、EGFP陽性細胞フラクションを示す。EGFP細胞の割合は、mRNAまたはプラスミドDNA電気穿孔に続いて、それぞれ、85%(太線)および50%(破線)であった。
【図1B】EGFP mRNA電気穿孔に続くK562細胞中での導入遺伝子発現のフローサイトメトリー的分析を示す図である。 K562細胞中のEGFP mRNA発現の時間の関数としての速度論(n=3)。電気穿孔後3時間早々の高水準EGFP発現の迅速誘導に注目されたい。
【図2A】異なる型のDCにおけるEGFP mRNA形質移入に続く導入遺伝子発現のFCM分析を示す図である。 未成熟Mo−DCをGM−CSFおよびIL−4と培養し、培養6日目に、リポフェクション(底部)または電気穿孔(上部)により対照(Melan−A)またはEGFP mRNAで形質移入し、形質移入の1日後にFCMにより分析した。ドットプロットは、x軸上のEGFP蛍光と、y軸上のエチジウムブロミド染色を示す。対照のmRNAリポフェクションまたは電気穿孔Mo−DCに基づいてゲートを引いた。死んだ細胞(上左角)および生活力のあるEGFP細胞(下右角)の割合を示す。結果は、8つの独立した実験を代表する。
【図2B】異なる型のDCにおけるEGFP mRNA形質移入に続く導入遺伝子発現のFCM分析を示す図である。 mRNA電気穿孔に続くMo−DCにおけるEGFP mRNA発現および細胞生存度の、時間の関数としてのモニタリング(n=2)。
【図2C】異なる型のDCにおけるEGFP mRNA形質移入に続く導入遺伝子発現のFCM分析を示す図である。 34−DC(底部)および34−LC(上部)を、材料および方法の項目に記載のように培養し、それぞれ培養12日目および25日目に、mRNA電気穿孔により対照(Melan−A)またはEGFP mRNAを形質移入した。mRNA電気穿孔の24時間後にFCM分析を行った。ドットプロットは、x軸上のEGFP蛍光と、y軸上のエチジウムブロミド染色を示す。対照のmRNA電気穿孔Mo−DC(左側)に基づいてゲートを引いた。死んだ細胞(上左角)および生存するEGFP細胞(下右角)の割合を示す。結果は、4つの独立した実験を代表する。
【図3A】mRNA電気穿孔DCの表現型分析および成熟性能を示す図である。 未成熟Mo−DC(iMo−CD)を、EGFPをコードするmRNAで電気穿孔することにより形質移入し、電気穿孔の1日後に、CD1a、HLA−DRおよびCD86に特異的なフィコエリスリン(PE)標識抗体で染色した(底部)。非形質移入iMo−DC(上部)は対照として作用し、アイソタイプ対応抗体を用いて象限を設定した。結果は、3つの実験を代表する。
【図3B】mRNA電気穿孔DCの表現型分析および成熟性能を示す図である。 iMo−DCを、Melan−AをコードするmRNAで電気穿孔することにより形質移入し、直接的にPE−標識CD80抗体(底部)で染色するまたはCD83抗体(上部)で間接的に染色した。破線が対照非電気穿孔iMo−DCを表し、細線が電気穿孔iMo−DCを表し、太線が、TNF−αおよびLPSの存在下にmRNA電気穿孔に続いてさらに24時間成熟させられた電気穿孔iMo−DCを表す代表的上掛けヒストグラムを示す。
【図3C】mRNA電気穿孔DCの表現型分析および成熟性能を示す図である。 12日培養34−DCを、EGFPをコードするmRNAで電気穿孔することにより形質移入し、電気穿孔の1日後にCD1a、HLA−DR、CD86およびCD80に特異的なPE−標識抗体で染色した(底部)。非形質移入34−DC(上部)は対照として作用し、アイソタイプ対応抗体を用いて象限を設定した。結果は、3つの実験を代表する。
【図4】Mo−DCのmRNAをベースとした抗原負荷を示す図である。未成熟Mo−DCをGM−CSFおよびIL−4と共に培養し、培養6日目に、電気穿孔(n=11)、リポフェクション(n=8)または受動的パルシング(n=5)によりMelan−A mRNAで形質移入し、または電気穿孔(n=6)によりEGFP mRNAで形質移入した。SK23−MELメラノーマ細胞株、Melan−AでパルシングしたHLA−A2Mo−DC、または無関係なインフルエンザペプチド、およびMelan−A mRNAで電気穿孔したHLA−A2−陰性Mo−DCが、対照として作用した。抗原提示細胞(グラフの左側に示される)を、Melan−A特異的CD8CTLクローンと共インキュベーションして、CTLクローンのIFN−γ生成により反映される抗原負荷効率を決めた。結果を、平均±SDとして表す.*p<0.05;EP=電気穿孔;lipo=リポフェクション;puls=受動的パルシング。
【図5】DC成熟の、mRNA形質移入Mo−DCの腫瘍抗原提示への影響を示す図である。CTLクローンによるIFN−γ生成を、Melan−A mRNAで電気穿孔したHLA−A2Mo−DCと共培養した後に測定した。iMo−DCは、未成熟段階において形質移入され、そのものとして用いられたMo−DC;Mo−DCaは、LPS+TNF−α刺激後、成熟段階において形質移入されたMo−DC;Mo−DCbは、未成熟段階において形質移入され、LPS+TNF−αにより成熟され、次にMelan−A特異的CTLクローン刺激についてアッセイしたMo−DC。結果を、平均±SDとして表す(n=4)。*p<0.05
【図6】34−LCのプラスミドcDNAをベースとした抗原負荷の結果を示す図である。Melan−A(pcDNA1.1/Melan−A;n=12)、EGFP(pEGFP−N1;n=12)、ルシフェラーゼ(pCMV−Luc;n=3)をコードする種々のプラスミドDNA構造体で、または真核生物のcDNA配列を欠くバックボーンベクター(pcDNA1.1/Amp;n=6)で電気穿孔したHLA−A234−LCと共培養した後に、CTLクローンによるIFN−γ生成を測定した。または、EGFPまたはMelan−A(n=3)をコードする試験管内転写mRNAで34−LCを電気穿孔した。結果を、平均±SDとして表す。*p<0.05
【図7】未成熟単核細胞由来細胞の電気穿孔の結果、特に、GFP−RNAで電気穿孔した48時間後の樹状細胞の表現型を示す図である。象限の下右部分での数は、EGFP陽性DCを示し、上右部分での数は、それぞれ、EGFP+/CD83+およびEGFP+/CD25+DCを示す。
【図8】電気穿孔を用いるGFP−RNA形質移入に続く樹状細胞におけるEGFP発現の形質移入効率および速度論を示す図である。
【図9A】電気穿孔による単核細胞由来樹状細胞へのEGFP RNA形質移入の結果を示す図である。 電圧の細胞寸法および顆粒性への影響を示す輪郭プロット
【図9B】電気穿孔による単核細胞由来樹状細胞へのEGFP RNA形質移入の結果を示す図である。 CD83およびCD25のEGFP発現が電圧により影響されることを示す。
【図10A】電気穿孔による成熟単核細胞由来樹状細胞のEGFP RNA形質移入。 Aは、電気穿孔を用いる成熟樹状細胞のGFP−RNA形質移入に続くEGFP発現の形質移入効率および速度論を示す。
【図10B】電気穿孔による成熟単核細胞由来樹状細胞のEGFP RNA形質移入。 GFP−RNAで電気穿孔した後に樹状細胞の表現型が維持されることを確認する。
【図10C】電気穿孔による成熟単核細胞由来樹状細胞のEGFP RNA形質移入。 GFP−RNAで電気穿孔した後に樹状細胞の表現型が維持されることを確認する。
【図10D】電気穿孔による成熟単核細胞由来樹状細胞のEGFP RNA形質移入。 GFP−RNAで電気穿孔した後に樹状細胞の表現型が維持されることを確認する。
【図10E】電気穿孔による成熟単核細胞由来樹状細胞のEGFP RNA形質移入。 GFP−RNAで電気穿孔した後に樹状細胞の表現型が維持されることを確認する。
【図10F】電気穿孔による成熟単核細胞由来樹状細胞のEGFP RNA形質移入。 GFP−RNAで電気穿孔した後に樹状細胞の表現型が維持されることを確認する。
【図10G】電気穿孔による成熟単核細胞由来樹状細胞のEGFP RNA形質移入。 GFP−RNAで電気穿孔した後に樹状細胞の表現型が維持されることを確認する。
【図10H】電気穿孔による成熟単核細胞由来樹状細胞のEGFP RNA形質移入。 Hは、電気穿孔を用いる成熟樹状細胞のGFP−RNA形質移入に続くEGFP発現の形質移入効率および速度論を示す。
【図11】非凍結対照におけるEGFP mRNA電気穿孔の後であり凍結保存サンプルの融解後の未成熟および成熟DCにおける導入遺伝子発現のFCM分析。ドットプロットは、x軸上のEGFP蛍光と、y軸上のエチジウムブロミド染色を示す。分析は、自己リンパ球の混在を排除するように、大きな前方散乱および大きな側方散乱プロフィールを示す細胞について行った。死んだ細胞(上左角)、生存するEGFP+細胞(下右角)および生存するEGFP−細胞(下左角)の割合を、象限分析におけるドットの数に基づいて示す。(A)ドットプロットは、mRNA電気穿孔(左側)の24時間後の非凍結iMo−DCの、および融解の6時間後(中)および融解の24時間後(右側)のmRNA電気穿孔iMo−DCの分析を示す。(B)ドットプロットは、mRNA電気穿孔の24時間後の非凍結mMo−DC(左側)の、および融解の6時間後(中)および融解の24時間後(右側)のmRNA電気穿孔mMo−DCの分析を示す。EP=電気穿孔。
【図12A】非凍結および凍結mRNA電気穿孔未成熟および成熟DCの表現型分析の代表例。ドットプロットは、PE−標識モノクローナル抗体のFCM分析がCD1a、HLA−DR、CD80およびCD86(y−軸)を含む典型的DC−マーカーに対して行われたことを示す。象限を設定するための対照として、アイソタイ対応抗体およびPE標識モノクローナルCD14抗体を用いた。DCマーカーの分析を、x軸上のEGFP蛍光により示されるように、対照サンプル中の生存力のあるEGFP−細胞について、およびmRNA電気穿孔DC中の生存力のあるEGFP+細胞について行った。(A)培養8日目のiMo−DC、(B)6日目のmRNA電気穿孔後の48時間の培養後のEGFP+iMo−DC。(C)6日目のmRNA電気穿孔、18時間の培養、凍結保存、融解および24時間培養の後のEGFP+iMo−DC。(D)6日後に成熟カクテルで48時間刺激したiMo−DC。(E)6日目のmRNA電気穿孔および成熟カクテルでの48時間の刺激の後のEGFP+iMo−DC。(F)6日目のmRNA電気穿孔および成熟カクテルを用いる24時間の培養、凍結保存、融解および、成熟カクテルの存在下における24時間の培養の後のEGFP+iMo−DC。 通常、Mo−DC培養の6日目後、凍結インターバル(カウントされず)を置いてまたは置かないで、培養の2日後に表現型化を行った。図12のドットプロット分析により示されるように、iMo−DCが、HLA−DR、CD80およびCD86のアップレギュレーションにより示されるように(図12、A&B)、mRNA電気穿孔の48時間後、成熟する。融解したDCは、HLA−DRおよびCD80の同じアップレギュレーションを呈するが、CD86は低水準である(図12、C)。これは、おそらく、凍結未成熟DC培地が、融解の24時間後に染色されているという事実により引き起こされる。未成熟Mo−DCは、iMo−DCにおける発現水準(図12、A&D)と比較した、mMo−DCにおけるHLA−DR、CD80およびCD86のアップレギュレーションにより分かるように、成熟カルテルに充分に反応した。しかしながら、mRNA電気穿孔と成熟刺激との組み合わせは、高水準のHLA−DR、CD80およびCD86発現を引き起こす(図12、E)ので、成熟DCにおいてこの組み合わせは非常に有効であると思われる。電気穿孔した凍結成熟DCは、融解後、高いレベルの成熟マーカー発現を示す(図12、F)。
【図12B】非凍結および凍結mRNA電気穿孔未成熟および成熟DCの表現型分析の代表例。ドットプロットは、PE−標識モノクローナル抗体のFCM分析がCD1a、HLA−DR、CD80およびCD86(y−軸)を含む典型的DC−マーカーに対して行われたことを示す。象限を設定するための対照として、アイソタイ対応抗体およびPE標識モノクローナルCD14抗体を用いた。DCマーカーの分析を、x軸上のEGFP蛍光により示されるように、対照サンプル中の生存力のあるEGFP−細胞について、およびmRNA電気穿孔DC中の生存力のあるEGFP+細胞について行った。(A)培養8日目のiMo−DC、(B)6日目のmRNA電気穿孔後の48時間の培養後のEGFP+iMo−DC。(C)6日目のmRNA電気穿孔、18時間の培養、凍結保存、融解および24時間培養の後のEGFP+iMo−DC。(D)6日後に成熟カクテルで48時間刺激したiMo−DC。(E)6日目のmRNA電気穿孔および成熟カクテルでの48時間の刺激の後のEGFP+iMo−DC。(F)6日目のmRNA電気穿孔および成熟カクテルを用いる24時間の培養、凍結保存、融解および、成熟カクテルの存在下における24時間の培養の後のEGFP+iMo−DC。 通常、Mo−DC培養の6日目後、凍結インターバル(カウントされず)を置いてまたは置かないで、培養の2日後に表現型化を行った。図12のドットプロット分析により示されるように、iMo−DCが、HLA−DR、CD80およびCD86のアップレギュレーションにより示されるように(図12、A&B)、mRNA電気穿孔の48時間後、成熟する。融解したDCは、HLA−DRおよびCD80の同じアップレギュレーションを呈するが、CD86は低水準である(図12、C)。これは、おそらく、凍結未成熟DC培地が、融解の24時間後に染色されているという事実により引き起こされる。未成熟Mo−DCは、iMo−DCにおける発現水準(図12、A&D)と比較した、mMo−DCにおけるHLA−DR、CD80およびCD86のアップレギュレーションにより分かるように、成熟カルテルに充分に反応した。しかしながら、mRNA電気穿孔と成熟刺激との組み合わせは、高水準のHLA−DR、CD80およびCD86発現を引き起こす(図12、E)ので、成熟DCにおいてこの組み合わせは非常に有効であると思われる。電気穿孔した凍結成熟DCは、融解後、高いレベルの成熟マーカー発現を示す(図12、F)。
【図13】凍結保存したmRNA電気穿孔成熟DCの刺激性能。6日間の共培養中に、PBMCの刺激因子として、凍結保存したマトリクスタンパク質M1mRNA電気穿孔成熟DCを用いた。次に、初回刺激したPBMCを、6時間の共培養中に、MHCクラスI制限M1免疫優勢エピトープでパルシングしたT2細胞で刺激した。初回刺激したPBMC培地における抗原特異的T細胞を、陽性IFN−γ生成により示されるように検出した。対照として、パルシングしていないT2細胞を刺激因子として用い、新鮮なPBMCを反応体として用いた。結果を平均±標準誤差として示す。 ペプチドをパルシングしたT2細胞を用いて再刺激すると、初回刺激したPBMC培地中の活性化T細胞が、免疫優勢マトリクスタンパク質ペプチドに対するIFN−γを生成した。この活性化の特異性は、パルシングしていないT2細胞に対する初回刺激PBMC培地のバックグラウンドIFN−γ生成によってのみ示される。これらの培養されたPBMCが6日間の培養中に刺激されたことを示すために、新鮮なPBMCを用いて同じ実験を行った。T2細胞または、ペプチドをパルシングしたT2細胞と共培養した後、バックグラウンド水準を越えるIFN−γ生成は検出されなかった(図13)。
【図14】実施例6の短期間血清非含有培養未成熟DCおよびポリ−I:C−成熟DCの散乱プロフィールおよび生存度の代表的フローサイトメトリー分析。 左側は、AIM−V培地+GM−CSF中で2日間培養された未成熟単核細胞由来DC(iMo−DC)。右側は、ポリ−I:C−成熟単核細胞由来DC(mMo−DC)。上側ドットプロットは、全ての細胞の前方および側方散乱プロフィールを示す。R1ゲートは、培地中でのDCの割合を示す。下側のドットプロットは、培養DC中におけるエチジウムブロミド染色による致死率を示す。(上側の数は、エチジウムブロミド陽性の死んだDC;下側の数は、エチジウムブロミド陰性の生きているDC)。下側のドットプロットは、R1側に開いている(gated on R1)(上側パネル)。示されるデータは、PBMCドナーAからのものである。結果は、未成熟DCについてはドナーA、B、FからのPBMCについて、および成熟DCについてはドナーA、B、C、D、E、FからのPBMCについての代表を表わしている。
【図15】実施例6の短期間血清非含有培養未成熟DCおよび血清非含有培養ポリ−I:C−成熟DCの代表的表現型分析。 FITC標識モノクローナル抗体のフローサイトメトリー分析は、DCおよび単核細胞マーカー:CD14、HLA−DR、CD86(左側)およびCD1a、CD80、CD83(右側)に対して行われた。培養1日後にポリ−I:Cを添加しまたは添加せずに、GM−CSFを補足したAIM−V培地中で2日間培養後に、DCを外側に開いている(outgating)残りのリンパ球で分析した。比較データを、未成熟DC(細線)および成熟DC(太線)についてヒストグラムに示す。示されたデータは、PBMCドナーAからのものである。結果は、未成熟DCについてはドナーA、B、FからのPBMCについて、および成熟DCについてはドナーA、B、C、D、E、FからのPBMCについての代表を表わしている。
【図16】実施例6の短期間血清非含有培養未成熟DCおよび血清非含有培養ポリ−I:C−成熟DCのアロゲニック刺激性能を示す図である。 7日間の共培養中に、未成熟および成熟短期間培養DC(それぞれ、iMo−DCおよびmMo−DC)を、アロゲニックPBMC用の刺激因子として用いた。その後、6時間の共培養中にDCドナーからのPBMCで、初回刺激PBMCを再刺激した。初回刺激PBMC培地中の活性化T細胞を、標的PBMCに対するIFN−γ生成により示されるように検出した。結果を、未成熟DC(iMo−DC)および成熟DC(mMo−DC)を用いて開始した培地についての2つの独立した実験の平均±標準偏差として示す。著しい相違は、アスタリスクで示す。ドナーBおよびCからのPBMCを用いた結果を得た。
【図17】短期間血清非含有培養未成熟DCおよび血清非含有培養ポリ−I:C−成熟DC(実施例6)の刺激性能を示す図である。 7日間の共培養中に、インフルエンザマトリクスタンパク質M1ペプチドパルシングした未成熟および成熟DC(それぞれ、iMo−DCおよびmMo−DC)を、自己PBMC用の刺激因子として用いた。その後、6時間の共培養中に、MHCクラスI制限インフルエンザマトリクスタンパク質M1ペプチドでパルシングしたT2細胞(T2/M1)で、初回刺激PBMCを再刺激した。初回刺激PBMC培地中の抗原特異的T細胞を、増加したIFN−γ生成により示されるように検出した。対照として、無関係HPV E7ペプチドをパルシングしたT2細胞(T2/E7)を刺激因子として用いた。著しい相違は、アスタリスクで示す。結果を、ドナーB(図17A、3つの実験)およびドナーF(図17B、2つの実験)からのPBMCを用いて得た。
【図18】血清非含有培養未成熟DCおよび血清非含有培養ポリ−I:C−成熟DCの刺激性能。インフルエンザ標的で再刺激後のIFN−γ−分泌CD8+T細胞の直接染色(実施例6)。 7日間の共培養中に、インフルエンザマトリクスタンパク質M1ペプチドパルシングした未成熟および成熟DC(それぞれ、iMo−DCおよびmMo−DC)を、PBMC用の刺激因子として用いた。次に、初回刺激PBMCを、MHCクラスI制限インフルエンザM1ペプチドまたはHPV E7対照ペプチドでパルシングしたT2細胞で、3時間再刺激した。ドットプロットは、CD8+およびCD8−リンパ球集団におけるIFN−γ−分泌細胞を示す。ドットプロット上に示されるIFN−γ−分泌細胞の数は、合計リンパ球の割合である。結果を、ドナーBからのPBMCを用いて得た。
【図19】成熟DCに短期間培養されたEGFP mRNA電気穿孔単核細胞の散乱プロフィール、生存度およびEGFP発現の代表的フローサイトメトリー分析(実施例6)。 EGFP mRNAで電気穿孔した(EP、下側ドットプロット)または電気穿孔していない(EP、上側ドットプロット)単核細胞を、AIM−V培地+GM−CSF中において2日間培養した。培養24時間後に、ポリ−I:Cにより成熟を誘発した。(A)培養成熟DCの散乱プロフィール。(B)培養成熟DCのエチジウムブロミド染色。ドットプロットはR1の方に開いていた(gated on R1)(散乱プロフィール)。指示数は、エチジウムブロミド陰性の生きているDCの割合を示す。(C)非電気穿孔成熟DC(細点線)およびEGFP mRNA電気穿孔成熟DC(太線)のFL−1 EGFP蛍光ヒストグラム上掛け。示したデータは、ドナーDのPBMCからのものである。結果は、ドナーC、D、EからのPBMCを代表するものである。
【図20】mRNAを電気穿孔され、成熟DCに短期間血清非含有培養された単核細胞の代表的表現型分析(実施例6)。 DCおよび単核細胞マーカー:CD14、CD80、CD86、HLA−DRおよびCD83に対して導かれたPE標識モノクローナル抗体のフローサイトメトリー分析。EGFP mRNAで電気穿孔した(EP、下側ドットプロット)または電気穿孔していない(EP、上側ドットプロット)単核細胞を、AIM−V培地+GM−CSF中において2日間培養した。培養24時間後に、ポリ−I:Cにより成熟を誘発した。ヒストグラムは、アイソタイプ対照染色(点線)に対するマーカー発現(黒色上掛け)の水準を示す。示されるデータはドナーDのPBMCからのものである。結果は、ドナーC、D、EからのPBMCを代表するものである。
【図21】成熟DCに短期間血清非含有培養されたmRNA電気穿孔単核細胞の刺激性能(実施例6)。 インフルエンザマトリクスタンパク質mRNAを電気穿孔した単核細胞を、AIM−V培地+GM−CSF中において2日間培養した。培養24時間後に、ポリ−I:Cにより成熟を誘発した。これらの成熟抗原負荷DCを、7日間の共培養中、自己PBMC用の刺激因子として用いた。その後、6時間の共培養中に、MHCクラスI制限インフルエンザマトリクスタンパク質M1ペプチドでパルシングしたT2細胞(T2/M1)で、初回刺激PBMCを再刺激した。初回刺激PBMC培地中の抗原特異的T細胞を、増加したIFN−γ生成により示されるように検出した。対照として、無関係HPV E7ペプチドをパルシングしたT2細胞(T2/E7)を刺激因子として用いた。結果を、ドナーBからのPBMC(Aと表す)およびドナーCからのPBMC(Bと表す)についての3つの独立した実験の平均±標準偏差として表す。著しい相違は、アスタリスクで示す。
【図22A】24時間および96時間における実施例7の形質移入細胞のEGFP分析の結果を、それぞれ、図22AおよびBに示す。96時間後の実施例7の形質移入細胞の表現型分析(CD34/CD45+細胞上に開く(gated);CD19/DR+細胞上に開く(gated);CD14/CD33+細胞上に開く(gated);CD4/CD7+細胞上に開く(gated))を、それぞれ、図22C〜Fに示す。
【図22B】24時間および96時間における実施例7の形質移入細胞のEGFP分析の結果を、それぞれ、図22AおよびBに示す。96時間後の実施例7の形質移入細胞の表現型分析(CD34/CD45+細胞上に開く(gated);CD19/DR+細胞上に開く(gated);CD14/CD33+細胞上に開く(gated);CD4/CD7+細胞上に開く(gated))を、それぞれ、図22C〜Fに示す。
【図22C】24時間および96時間における実施例7の形質移入細胞のEGFP分析の結果を、それぞれ、図22AおよびBに示す。96時間後の実施例7の形質移入細胞の表現型分析(CD34/CD45+細胞上に開く(gated);CD19/DR+細胞上に開く(gated);CD14/CD33+細胞上に開く(gated);CD4/CD7+細胞上に開く(gated))を、それぞれ、図22C〜Fに示す。
【図22D】24時間および96時間における実施例7の形質移入細胞のEGFP分析の結果を、それぞれ、図22AおよびBに示す。96時間後の実施例7の形質移入細胞の表現型分析(CD34/CD45+細胞上に開く(gated);CD19/DR+細胞上に開く(gated);CD14/CD33+細胞上に開く(gated);CD4/CD7+細胞上に開く(gated))を、それぞれ、図22C〜Fに示す。
【図22E】24時間および96時間における実施例7の形質移入細胞のEGFP分析の結果を、それぞれ、図22AおよびBに示す。96時間後の実施例7の形質移入細胞の表現型分析(CD34/CD45+細胞上に開く(gated);CD19/DR+細胞上に開く(gated);CD14/CD33+細胞上に開く(gated);CD4/CD7+細胞上に開く(gated))を、それぞれ、図22C〜Fに示す。
【図22F】24時間および96時間における実施例7の形質移入細胞のEGFP分析の結果を、それぞれ、図22AおよびBに示す。96時間後の実施例7の形質移入細胞の表現型分析(CD34/CD45+細胞上に開く(gated);CD19/DR+細胞上に開く(gated);CD14/CD33+細胞上に開く(gated);CD4/CD7+細胞上に開く(gated))を、それぞれ、図22C〜Fに示す。
【図23A】(A)フィーダーを用いないおよび(B)フィーダーを用いる場合の、実施例8の形質移入胚幹細胞のEGFP分析および表現型分析の結果を示す図である。
【図23B】(A)フィーダーを用いないおよび(B)フィーダーを用いる場合の、実施例8の形質移入胚幹細胞のEGFP分析および表現型分析の結果を示す図である。
【図24A】実施例9の方法により電気穿孔したPBMCのEGFP分析および表現型分析の結果を示す図である。
【図24B】実施例9の方法により電気穿孔したPBMCのEGFP分析および表現型分析の結果を示す図である。
【図24C】実施例9の方法により電気穿孔したPBMCのEGFP分析および表現型分析の結果を示す図である。
【図25】μs範囲でのMo−DCへのmRNA電気穿孔(実施例10B)。 A:電圧の形質移入効率への影響。未成熟Mo−DCを、指数関数的減衰パルスを発する機械MULTIPORATOR(登録商標)(Eppendorf,Hamburg,Germany)を用いて指示された電圧で500μs、電気穿孔した。その直後に、IL1β、IL−6、TNF−αおよびPGEを添加することにより終末成熟を誘発した。FCM分析により、指示された時間に、形質移入効率を決めた。破線は、EGFP mRNAで形質移入したMo−DCの蛍光を示す。点線は、陰性対照を示す。図中の数値は、平均蛍光強度(MFI)を示す。 B:電圧の生存度への影響。図は、プロピジウムヨージドで染色後、前述と同じMo−DCを示す。図中の数値は死んだ細胞を示す。
【図26】パルス型の形質移入効率への影響(実施例10C)を示す図である。未成熟Mo−DCを、それぞれ指数関数的減衰または方形パルスを発する機械MULTIPORATOR(登録商標)(Eppendorf,Hamburg,Germany)およびECM830(登録商標)(Genetronics BTX,San Diego,CA,USA)を用いて400Vで500μs、電気穿孔した。その直後に、IL1β、IL−6、TNF−αおよびPGEを添加することにより終末成熟を誘発した。成熟DCを同じ設定にて電気穿孔した。電気穿孔の2日後にFCM分析により、形質移入効率を決めた。破線は、EGFP mRNAで形質移入したDCの蛍光を示す。点線は、FluM1 mRNAで形質移入したDCの蛍光を示す。図中の数値は、平均蛍光強度(MFI)を示す。
【図27】μs範囲でのmRNA電気穿孔の2日後のMo−DCの表現型分析(実施例10C)。未成熟および成熟Mo−DCを、図26/実施例10Cに記載のように電気穿孔した。破線は、それぞれCD83およびCD25に特異的なモノクローナル抗体で染色したMo−DCの赤色蛍光を示す。点線は、アイソタイプ制御を示す。図中の数値は、平均蛍光強度(MFI)を示す。
【図28】電気穿孔キュベット当たりの細胞数のスケールアップ(実施例10D)。増加数の成熟Mo−DCを、機械MULTIPORATOR(登録商標)を用いて0.4cmギャップキュベット中、400Vで500μs、EGFP mRNAで電気穿孔した。24時間後、形質移入効率を、EGFP蛍光のFCM分析により決めた。 A:破線は、EGFP mRNAで形質移入したMo−DCの蛍光を示す。点線は陰性対照を表す。 B:電気穿孔直後(p.e.)および24時間後に示される細胞の回収率(%)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態(1)の方法において、指数関数的減衰パルスを提供する従来の電気
穿孔装置を利用することが好ましい。電気穿孔が、100〜500V、より好ましくは2
00〜350V、最も好ましくは250〜300Vで行われることがさらに好ましい。静
電容量が100〜300μF未満、好ましくは150〜250μFであることも好ましい
。パルシング時間は、トレー(キュベット)の型およびキュベット中の反応混合物(細胞
懸濁液)の量に強く依存し、通常50ms未満、好ましくは40ms未満である。4mm
のキュベットおよび200μlの反応混合物の場合には、パルシング時間が5〜40ms
、好ましくは1〜25ms、最も好ましくは7〜10msである。異なるキュベットおよ
び/または異なる量の反応混合物体積の場合、当業者により異なる電圧およびパルシング
時間を容易に決めることができる。
【0023】
本発明の実施形態(2)において、所謂「ソフトパルス」電気穿孔装置が利用される。
そのような装置を用いる場合、300〜600Vの電圧および100μs〜1msの時間
の設定が利用され、この設定は300μFより低い静電容量に相当すると考えられる(し
かしながら、真核細胞懸濁液の使用のために、正確な転化は不可能である)。市販のソフ
トパルス電気穿孔装置により提供されるパルス型は、矩形波パルスまたは指数関数的減衰
パルスであり得る。ソフトパルス装置用の好ましい設定は350〜450Vで300〜6
00μsである。
【0024】
本発明の実施形態(1)および(2)において、懸濁系中の細胞の濃度は、1×10
〜1×10細胞/ml、好ましくは1×10〜1×10細胞/mlである。さらに
より好ましくは1×10〜5×10細胞/mlであり、最も好ましくは1〜4×10
細胞/mlである。
【0025】
形質移入すべき線形ポリヌクレオチドは、好ましくは所謂「裸」のポリヌクレオチド、
すなわち、リガンド等により複合されないまたは安定化されないポリヌクレオチドである
。本発明で利用される線形ポリヌクレオチドは、限定はされないが、修飾または未修飾の
限定または非限定DNA、RNAまたはDNA−RNAハイブリッドおよび、全ての種類
のその修飾変異体を含む。最も好ましい線形ポリヌクレオチドはmRNAである。前記D
NA−RNAハイブリッドは、遺伝子を補修または修飾するのに特に適している(Ste
pehnson,J.,JAMA 第281(2)巻、119〜122頁(1999年)
)。さらに、形質移入すべきポリヌクレオチドの濃度が1×10−7〜1×10−5mm
ol/ml、好ましくは4×10−6〜6×10−6mmol/mlであることが好まし
い。
【0026】
哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、げっ歯類(マウス、ラット)細胞)を含む脊椎動物
細胞、非脊椎動物細胞(例えば、魚および虫の細胞)、酵母、糸状菌、子嚢菌等の下等真
核細胞のような全ての型の真核細胞を、本発明の方法により電気穿孔することができる。
哺乳動物/ヒト細胞は、好ましくは、限定はさらないが、線維芽細胞および腫瘍細胞、幹
細胞および、胚幹細胞のようなそれらの誘導体を含む非造血細胞、造血幹細胞およびそれ
らの誘導体から選択され、造血細胞は、限定はされないが、単核細胞、骨髄CD34
駆体由来樹状細胞、CD34前駆体由来ランゲルハンス細胞、単核細胞由来樹状細胞(
Mo−DC)を含み、および最も好ましくは、限定はされないが未成熟Mo−DCおよび
成熟Mo−DCを含むMo−DCであるが、単核細胞またはCD34造血前駆体細胞の
ようなDC前駆体(precursor)または前駆体(progenitor)に、および胚幹細胞にも適用す
ることができる。本発明の方法は、RNA電気穿孔による一次骨髄細胞の形質導入にも適
している(これは、全骨髄単核細胞のmRNA電気穿孔が可能であることも示し得る)。
前記前駆体細胞は、樹状細胞に(迅速)分化する前に、関連抗原をコードするmRNAで
電気穿孔される。この手法は、印刷中のPonsaertsら著、Journal of Immunolog
y 2002年に公開される予定である。この方法は、CD123+形質細胞様(plasmacy
toid)樹状細胞または、試験管内で比較的短い半減期を有する新鮮なCD11c+血液樹
状細胞を含む他の型の前駆体樹状細胞にも価値がある。
【0027】
実施形態(1)および(2)で用いられる線形ポリヌクレオチドは、真核細胞において
、ある効果を発現する任意の機能的ヌクレオチド配列であり得、これは、真核細胞中で発
現すべきタンパク質またはペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオ
チドは、機能または調節配列等である。真核細胞中において発現すべきタンパク質または
ペプチドは、真核細胞中において直接の機能を有しても有さなくても良い、すなわち、発
現されたタンパク質またはペプチドが、形質移入された細胞の特性を変化させ、または細
胞中で発現されるあるいは細胞により分泌されるだけである(例えば、実施形態(6)に
よるレポーター遺伝子または遺伝子産物である)。線形ポリヌクレオチドによりコードさ
れる前記タンパク質またはペプチドは、限定はされないが、腫瘍抗原、微生物抗原、ウイ
ルス抗原、免疫刺激性または寛容原性分子、抗アポトーシス分子、接着およびホーミング
分子、並びに抗原処理分子を含む。前記機能または調節配列は、限定はされないが、分化
調節遺伝子、分化関連遺伝子および組織特異的遺伝子を含む。線形ポリヌクレオチドによ
りコードされる前記タンパク質またはペプチドの例は、EGFP(強化グリーン蛍光タン
パク質;配列番号1および2)等のようなレポーター遺伝子;WT1(ウィルムス腫瘍1
タンパク質;配列番号3および4)、E6(ヒトパピロマウイルスE6タンパク質;配列
番号5および6)、E7(ヒトパピロマウイルスE7タンパク質;配列番号7および8)
、env(ヒト免疫不全ウイルスenvタンパク質;配列番号9)、gag(ヒト免疫不
全ウイルスgagタンパク質;配列番号10)、tat(WT)(ヒト免疫不全ウイルス
tat(WT)タンパク質;配列番号11)、tat(SLT)(ヒト免疫不全ウイルス
tat(SLT)タンパク質;配列番号12)、Nef(ヒト免疫不全ウイルスNefタ
ンパク質;配列番号13)、Ref(ヒト免疫不全ウイルスRefタンパク質;配列番号
14)のような腫瘍/ウイルス抗原;Melan−A/MART1(メラノーマ抗原Me
lan−A;配列番号15および16);MAGEA1(メラノーマ抗原1;配列番号1
7および18);MAGEA3(メラノーマ抗原3;配列番号19および20)等;GM
−CSF(顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子;配列番号21および22)、IL
−2(インターロイキン2;配列番号23および24)等のようなサイトカイン;Nks
2.5(CSX:心臓特異的ホメオボックス;配列番号25および26)、Notch(
Notch相同体1;配列番号27および28)、BAALC(脳および急性白血病、細
胞質遺伝子座;配列番号29および30)、Wnt遺伝子、GATA−4、GABA、デ
スミン、心臓トロポニン等のような幹細胞用遺伝子である。
【0028】
電気穿孔のために、以下のパラメーターが最も好ましい:細胞懸濁液200μlを含む
4mmキュベット、300ボルトおよび静電容量150μFを用いて細胞を刺激する(パ
ルス時間8〜10ms)。これは、白血病K562細胞および異なる型のDCの両方、前
駆体由来および単核細胞由来DCの両方のための最適パラメーターである。最適化プロセ
スにおいて、例えば電圧および静電容量並びにキュベット中の体積を変化させて、パルス
時間を短くまたは長くすることにより他のパラメーターも調べた。要約すれば、RNA電
気穿孔の効率および毒性のために以下のパラメーターが見つけられた:
300V−150μF〜200μl−8ms
450V−150μF〜200μl−8ms。
【0029】
RNA電気穿孔用の共通の要素は、細胞密度を増加させるための低静電容量(150〜
300μF未満)(高静電容量が必要とされるDNA設定と対照的)および低電気穿孔体
積(200μl)と組み合わされた低電圧(100V〜450Vの範囲)である。
【0030】
電気穿孔およびインキュベーションは全て室温で行われ、細胞は血清を含まない緩衝液
(例えば、IMDM、RPMI、血清低減緩衝液(例えば、Opti−MEM(登録商標
))、またはEquiBio,U.Kから購入された最適化電気穿孔緩衝液Optimi
x(登録商標),cat n♯ EKIT−E1)中に再懸濁される。電気穿孔装置型は
、指数関数的減衰パルスのみを発するEasyject Plus(登録商標)(Equ
iBio)である。実施例2〜4において、Gane Pulser II(登録商標)
(Biorad)を用いる。さらに、実施例10においては、所謂「ソフトパルス」電気
穿孔装置(例えば、Eppendorf製のMultiporatorおよびGenet
ronix BTX製のECM830)を用いる。
【0031】
mRNA電気穿孔を用いて観察される毒性の著しい減少は、部分的には、RNAの導入
に必要な穏やかな電気的設定により説明することができる(表1)。それにも拘わらず、
過酷なDNA設定で行われるmRNA電気穿孔は、細胞毒性を低下させ、これは細胞毒性
が、単に電気穿孔手順そのものに起因するのではなく、導入された核酸の性質にも関わり
得ることを意味している。さらに、プラスミド製剤においてしばしば見られるバクテリア
汚染物質(例えば、LPS)の共導入が、細胞生活力に影響を与えることができる。(G
ordillo,G.M.c著,Transpl.Immunol.,第7巻:83〜94頁(1999年
))。
【0032】
DCのDNA負荷とmRNA負荷との比較の試行において、予想外に、mRNA電気穿
孔34−DCおよび34−LCではなくプラスミドDNAによるTILクローンの非特異
的刺激が観察され(図6)、これは、プラスミドDNAのDNase I処理により廃棄
することができた。プラスミドDNAのこの刺激効果は、データ解釈を混同させるが、抗
原提示性能についてのこの現象のDC負荷への影響はさらなる検討を必要とする。プラス
ミドDNA中に存在する免疫刺激配列(すなわち、非メチル化CpGモチーフ)が含まれ
る可能性を考慮しなくてはならない(Klinman,D.M.ら著、Proc.Natl.Acad.S
ci.USA,第93巻:2879〜2883頁(1996年);Klinman,D.M
.ら著、Vaccine,第17巻:19〜25頁(1999年))。
【0033】
mRNAリポフェクションは、DC、特に34−DCおよび34−LCに負荷するため
のmRNA電気穿孔よりも全体として効率が低く、これらのデータは、カチオン性脂質、
すなわちDMRIE−Cを一つだけ用いる実験から得られた。従って、我々は、他の脂質
が、mRNA電気穿孔と比べて匹敵するまたはより高い、形質移入および/またはMo−
DC、34−LCもしくは34−DCのMHCクラスI制限抗原負荷の効率を達成すると
いう可能性を排除できない。受動的mRNAパルシングを用いて、我々は、実験したDC
の型によりEGFP発現を検出できずCTL活性化も検出できなかった。従って、これら
の結果は、パルシング実験において未成熟Mo−DCが形質移入剤を用いることなくmR
NAを取り込むことができ、続いて主要な腫瘍特異的CTLを試験管内で取り込むことが
できることを示したNairら著、Nat.Biotechnol.,第16巻:364〜369頁(1
998年)の発見にやや対照的であると思われる。Nairらの実験において、タンパク
質発現を検出できないので、DCの受動的RNAパルシングがDCの実質的部分において
効果的RNA形質転換を起こすことが可能である。
【0034】
結論として、IVT mRNAをベースとした電気穿孔が、ヒトMo−DC、34−D
Cおよび34−LCを腫瘍抗原で遺伝子修飾するための高度に効率的で簡単な非ウイルス
的方法であることが示される。この研究で記載された技術は、DCをベースとした腫瘍ワ
クチンの開発における、および造血細胞において高水準の短期間導入遺伝子発現を必要と
する他の遺伝子転移プロトコールにおける適用に役立つことができる。
【0035】
実施例
材料および方法
電気穿孔装置:
正常パルス:EasyjecT PLUS D2000モデルSHV(220V;指数
関数的減衰パルス)は、EquiBio Ltd.(cat♯ EJ−002,Acti
on Court,Ashford Road,Ashford,Middlesex,
TW15 1×B,U.K)から購入した。EasyjecT PLUSは、LCDディ
スプレイ、薄膜キーパッドおよび「スマートカード」リーダー/レコーダーを特徴とする
ベンチトップリモートコントロールユニットにより充分にマイクロプロセッサー制御され
る。EasyjecTプリンター(EasyjecT PLUSに含まれる)を用いて、
パラメーターおよび開始したパルス値のハードコピーを取ることができる。この情報は、
実験手順の確認に価値が無く、結果に保証された情報を与え得る。EasyjecT P
LUSは、実験手順に疑いを招くことなく安全な操作を可能にするための複数の安全性お
よび操作検出特徴を含む。特徴は:プレArc(-Pre-Arc)検出、開放回路および短絡回路
検出、充分に封止された電気穿孔チャンバーに連結されたプレパルスインピーダンス測定
を含む。プログラミングは、安全でないまたは不正確な情報が測定またはプログラムされ
た場合に、可視的かつ可聴的アラームを与える。EasyjecTは、単一または二重の
指数関数的減衰パルスを与えるように設計される。EasyjecT PLUSは、さら
に、独自の「二重パルス」技術を有する。これは、単一パルス実験が不成功のまたは落胆
的な形質転換の結果になる特定の場合に有益である。
【0036】

EasyjecT PLUSの詳細な仕様書:出力電圧:高電圧モードにおいて100
〜3500ボルト(50V段階)または低電圧モードにおいて20〜450ボルト(2V
段階)。分路抵抗器:20オーム〜無限(10値)。静電容量範囲:高電圧モードにおい
て0.5μF/25μFまたは低電圧モードにおいて150〜3000μF。パルス時間
:10μs〜7秒。パルス間時間が0〜30sのDOUBLE PULSE装置。プログ
ラム保存:8内部(internal)またはスマートカードあたり8。また、アーキングが起こる
場合の、開放および短絡回路状態用の可視的かつ可聴的アラームによる安全性検出モニタ
リング。プリンターは含まれる。寸法:メインユニット(425×220×510mm)
、キーパッド(100×270×35mm)、チャンバー(260×67×92mm)。
出力 190〜250ボルトまたは90〜220ボルト最大250ワット。波形:選択さ
れたコンデンサ、サンプルおよび分路抵抗器に依存するRC時間定数を有する減衰指数関
数的波形。実施例2〜4において、Gene Pulser II(Biorad)を用
いた。
【0037】
ソフトパルス:Multiporator(登録商標)(Eppendorf,Ham
burg,ドイツ)、指数関数的減衰パルスおよびECM830(登録商標)(Gene
tronics BTX,San Diego,CA,USA)、方形パルス。
【0038】
電気穿孔キュベット:EasyjecT PLUS D2000を用いる実験を通して
、キャップを有する滅菌4mm電気穿孔キュベット(EquiBio,UK cat♯
ECU−104)を用いた。各キュベットを、個々に包み、ガンマ線照射した。無菌手順
をさらに向上させるために特に設計された滅菌ピペットを用いた。合計容量は800μl
である。
【0039】
電気穿孔培地:電気穿孔直前に、細胞を、Optimix(登録商標)培地(Equi
Bio,UK cat♯ EKIT−E1)中に懸濁させた。Optimixは、真核細
胞の電気穿孔用に設計された、QC試験した充分に最適化された培地である。Optim
ixは、形質移入効率と、リン酸緩衝食塩水(PBS)または他の標準的培養培地を超え
る生存率との両方を向上させる。Optimixの組成物を、電気穿孔プロセス中の細胞
保護を補助するために注意深く調製し、細胞を通る放電により引き起こされる不安定化に
続く再生プロセスにおいて補助となる重要な分子およびさらなる塩も提供した。Opti
mixキットは、使用が容易であり、約24の実験のための充分な材料を含む。キットは
周囲温度で出荷されるが、成分の一部を着きしだい4℃または−20℃で保存することが
重要である。Optimixは、洗浄溶液1×200ml、Optimix4×2.5m
l、4×ATPおよび4×グルタチオンを含む。使用前に、ATP5.5mgおよびグル
タチオン7.7mgをOptimix緩衝液2.5mlと混合し、−20℃で等分して凍
結する。
【0040】
電気パラメーター:特記しない限り、典型的mRNA電気穿孔設定は、300V、15
0μFであり、内部分路抵抗は無限(+∞)とする。キュベット中の合計体積は200μ
lであり、Optimix培地中に再懸濁された2〜5百万の細胞を含む。
【0041】
電気穿孔計算:電場Eは以下の式を用いて平方センチメーター当たりのボルトで表す:
E=V・d−1
ここで、Vは電気穿孔装置の出力電圧で、dはキュベットの電極間の距離である。
【0042】

我々の電気穿孔技術において、dは常に0.4cm(4mmキュベット)である。従っ
て、EはVに直接関連し、下記式により計算することができる:
E=V・(0.4)−1
パルス時間(τ)は、定義によれば、パルスの開始から、電場が最大(E)の場合、
電場が初期値E0のe−1(0.368)まで低下するまでの秒としての経過時間である
。特に、この値は、電気穿孔ユニットのマイクロプロセッサーにより測定される。理想的
なシステムのパルス時間は、以下のように計算することができる:
τ=R・C
ここで、Cは静電容量(ファラッドで表される)であり、Rは電気回路の抵抗である。
パルス時間は、膜孔形成プロセスの持続時間の推定を与え、キュベット中の電気穿孔培地
の体積と逆相関し、キュベット中の細胞密度および培地の抵抗と直接相関する。
【0043】
細胞系:T2細胞(TAP−欠損、HLA−A2、T×Bハイブリッド)、EBV−
LG2(HLA−A2 EBV−形質転換Bリンパ球)およびSK23−MEL(Me
lan−A HLA−A2 メラノーマ細胞株)は、Dr.Pierre Van
der Bruggen(Ludwig institute for cancer
Research,Brussels,ベルギー)により快く提供された。K562細胞
を、USAン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC n° CCL−243、
Rockville,MD,USA)から得た。細胞株は、L−グルタミン(2mM)、
ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、アンホテリ
シンB(1.25μg/ml Fungizone)および10%胎児ウシ血清(FCS
;Sera Lab、Sussex、UK)を補足したIscove’s培地(IMDM
)からなる完全培地中で培養した。細胞を、5%COを補足した加湿雰囲気中にて37
℃で対数期増殖に維持した。全ての細胞培地試薬は、Gibco BRL(Paisle
y、UK)から購入した。
【0044】
Melan−A−特異的CTLクローン:免疫優勢HLA−A0201−制限Mela
n−A27‐35エピトープ(AAGIGILTV;配列番号34)を認識するCD8
TIL 1235クローンは、Dr.J.Wunderlich(NIH,Bethe
sda,USA)より快く賦与され、先に記載の方法で僅かの変化を設けて培養した(R
eeves,M.E.ら著、Cancer Res.,第56巻:5672〜5677頁(1996
年))。簡単に言うと、TILクローンを、5%貯留ヒトAB血清(Signa,Bor
nem,ベルギー)および500IU/mlインターロイキン(IL)−2(R&D S
ystems,Minneapolis,MN,USA)を補足したAIM−V培地(G
ibco BRL)中に維持し、DC共培養実験における反応体集合として用いた。
【0045】
一次細胞の供給源:骨髄(BM)は、インフォームドコンセント後に、心臓手術を受け
ている血液学的に正常な患者から、胸骨穿刺により吸引した。健康ボランティアまたは血
色素症の患者から抹消血単核細胞(PBMC)を得た。この研究で用いた6人のPBMC
ドナーを文字A〜Fで表わす。単核細胞を、Ficoll−Hypaqueグラジエント
分離(LSM,ICN Biomedicals Inc.,Costa Mesa,C
A,USA)により単離した。単核細胞を直接単離し、以下に記載のようにDC培養に用
いた。DC/T細胞共培養用のPBMCを、90%FCSおよび10%DMSOからなる
溶液中に凍結保存し、使用まで−80℃で貯蔵した。
【0046】
CD34細胞選別:Ficoll−Hypaque分離後、単核細胞BM細胞を、D
r.H−J.Buhring,University of Tubingen,ドイツ
により快く賦与された43A1ハイブリドーマ(抗−CD34)(Buhring,H.
J.ら著、Leukemia,第5巻:854〜860頁(1991年)の上澄みを用いて間接的
に染色し、続いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)共役ウサギ抗マウス
イムノグロブリン(DAKO,Glostrup,Denmark)により染色した。次
に、CD34標識細胞を、空冷アルゴンイオンレーザーILTモデル5500−A(Io
n Laser Technology,Salt Lake City,UT,USA
)が備えられたFACStarPLUS細胞ソーター(Becton Dickinso
n,Erembodegem,ベルギー)上で選別した。ソートウインドウを、低側部散
乱および陽性グリーン蛍光(CD34)を呈する細胞を含むように設定した。95%を
超える純度を従来通りに得た。
【0047】
DCの試験管内培養:34−DC培地を、先に記載のように培養した(Lardon,
F.ら著、Immunology,第91巻:553〜559頁(1997年))。簡単に言えば、
1〜2・10CD34細胞を、100ng/ml顆粒球−マクロファージコロニー刺
激因子(GM−CSF;Leucomax,Novartis Pharma,Base
l,スイス)、2.5ng/ml腫瘍壊死因子(TNF)−α(Roche Molec
ular Biochemicals,Mannheim,ドイツ)および50ng/m
l幹細胞因子(SCF;Biosource,Nivelle,ベルギー)を補足した完
全培地2ml中で5日目まで培養し;その後、SCFを1000U/ml IL−4(R
&D Systems)で置き換え、これを次の5〜9日目の間に添加した。培養12日
後、15〜20倍の合計細胞増殖が観察され、細胞は、CD1a、CD80、CD86お
よびHLA−DR(図3C)を含む成熟DCの典型的マーカーを示した。
【0048】
34−LCについて、我々はHerbst,Bら著、Blood,第88巻:2541〜2
548頁(1996年)により記載されたプロトコールを用いた。簡単に言えば、選別し
たCD34細胞を、まず、100ng/ml IL−3、100ng/ml IL−6
および50ng/ml SCF(全てBiosource製)を含む完全培地中において
8日間培養し、続いて、GM−CSF(100ng/ml)およびIL−4(1000U
/ml)中でLC分化を次の4週間行った。培養25日後、有核細胞の合計数の75〜1
00倍増加が観察され、細胞は高水準のCD1aおよびCD40、中水準のHLA−DR
および低水準のCD80およびCD86を発現し、37℃にて効率的にFITCデキスト
ランを取り込むことができた(データは示さず)。
【0049】
未成熟単核細胞由来DC(iMo−DC)を、Romani,Nら著、J.Exp.Med.,第
180巻:83〜93頁(1996年)に記載のようにPBMCから発生させた。簡単に
言えば、PBMCを、AIM−V培地中、37℃で2時間接着させた。非接着性フラクシ
ョンを除去し、接着性細胞を、さらに、2.5%自家熱失活血漿を補足したIMDM中で
5〜7日間培養した。GM−CSF(100ng/ml)およびIL−4(1000U/
ml)を、0日目から開始して2〜3日毎に培地に添加した。iMo−DCの成熟を、2
.5ng/ml TNF−αおよび100ng/mlリポ多糖(LPS;Sigma)を
Mo−DC培養の6日目から開始して24時間添加することにより誘発した。
【0050】
また、PBMC由来の単核細胞を、6ウエル培養プレート(20×10PMBC/ウ
エル)においてAIM−V培地(Gibco BRL,Paisly,UK)に37℃で
2時間接着させた。非接着性フラクションを注意深く除去した後、100ng/ml G
M−CSF(Leucomax,Novartis Pharma,Basel,スイス
)を補足した血清非含有AIM−V培地において細胞を2日間培養した。成熟DCを得る
ために、poly−I:C(Sigma,Cambridge,UK)を、培養開始後2
4時間で、25μg/mlの濃度で添加した。DC培地の典型的収率および純度は、DC
60〜70%を含む1〜2×10細胞/ウエルであった。電気穿孔実験のために、製造
者の指示に従ってCD14ミクロビーズ(Miltenyi Biotec,Bergi
sch Gladbach,ドイツ)を用いて磁気的単離することによりPBMCから単
核細胞を単離した。通常法により、純度85%以上で、100×10PMBCから出発
した単核細胞4〜8×10を得た。
【0051】
DCのHLA−A型別:BB7−2ハイブリドーマ(抗−HLA−A2;ATCC)の
上清、続いてFITC共役ウサギ抗マウスイムノグロブリン(DAKO)で間接的に染色
することによりBM由来単核細胞およびPBMCにおいてHLA−A2亜型別を決めた。
HLA−A2染色は、FACScan分析用フローサイトメーター(Becton Di
ckinson,Erembodegem,ベルギー)を用いるフローサイトメトリーに
より分析した。
【0052】
合成ペプチド:DCおよびT2細胞上でそれぞれパルシングしたときのマトリックスタ
ンパク質M1ペプチド特異的T−細胞の活性化または検出のために、インフルエンザウイ
ルス−特異的HLA−A0201−制限マトリックスタンパク質M1ペプチド(M1;
アミノ酸(aa)58〜66,GILGFVFTL;配列番号32)を用いた。T2細胞
上でパルシングした場合の対照実験において、ヒトパピロマウイルス(HPV)HLA−
A2−制限E7タンパク質特異的ペプチド(E7;アミノ酸(aa)11〜20,YML
DLQPETT;配列番号33)を用いた。Melan−Aペプチド(MA;aa27〜
35,AAGIGILTV;配列番号34)も用いた。ペプチド(>95%純度)を、S
igma−Genosys(Cambridge,UK)から購入した。両方のペプチド
を、100%DMSO中に10mg/mlとなるように溶解し、さらに、血清非含有IM
DM中で1mg/mlまで希釈し、−70℃で分割して貯蔵した。ペプチドを、20mM
の最終濃度で用いた。ペプチド(>95%純度)を、Sigma−Genosys(Ca
mbridge,UK)から購入した。ペプチドを100%DMSO中に10mg/ml
となるまで溶解し、さらに、血清非含有IMDM中で1mg/mlまで希釈し、−80℃
で分割して貯蔵した。ペプチドを、20μMの最終濃度で用いた。
【0053】
DCのペプチドパルシング:T2細胞、HLA−A2iMO−DCまたはDCを、I
MDMで2回洗い、続いて、5ml円錐型ポリスチレン管または15ml円錐型管におい
て、2.5μg/ml β2−microglobulin(Sigma)を補足した血
清非含有IMDM培地中、20μg/mlペプチドと共に、室温で1〜2時間インキュベ
ート(2×10細胞/ml)した。その後、細胞を洗い、それぞれ、PBMC用の刺激
因子として、またはサイトカイン放出アッセイにおける再刺激因子として用いた。
【0054】
プラスミド:プラスミドcDNA形質移入にために、pEGFP−N1プラスミド(C
LONTECH Laboratories,Palo Alto,CA,USA)を用
いて、T7プロモーターの制御下にEGFPを含んだCMVプロモータープラスミドpG
EM4Z/EGFP/A64(Dr.E.Gilboa,Duke Universit
y Medical Center,Durham,NC,USAから快く提供された)
の制御下に強化グリーン蛍光タンパク質(EGFP)をコードした。CMVプロモーター
により促進されるMelan−A/MART−1遺伝子を含むプラスミドpcDNA1.
1/Melan−Aは、Dr.Pierre Van der Bruggenにより快
く提供された。pcDNA1.1/Amp(Invitrogen,Carlsbad,
CA,USA)を、バックボーン制御ベクターとして用いた。プラスミドpCMV−ルシ
フェラーゼ(CLONTECH Laboratories,Polo Alter,C
A,USA)は、CMVプロモーターの制御下にルシフェラーゼ遺伝子を有しており、対
照プラスミドとして用いた。プラスミドpGEM4Z/M1/A64(Dr.A.Ste
inkasserer,University of Erlangen,Erlang
en,ドイツにより快く提供された)は、T7プロモーター(配列番号31)の制御下の
インフルエンザM1遺伝子をコードしている。プラスミドを、大腸菌株DH5α(Gib
co BRL)またはスーパーコンピテント細胞(Stratagene,La Jol
la,CA,USA)において増殖させ、エンドトキシンフリーQIAGEN(登録商標
)チップ500カラム(Qiagen,Chatsworth,CA,USA)上で精製
した。
【0055】
試験管内転写(IVT)mRNAの生成:試験管内転写のために、プラスミドを線状化
し、Genieprepキット(Ambion,Austin,TX,USA)またはP
CR精製キット(Qiagen)を用いて精製し、試験管内転写反応用のDNAテンプレ
ートとして用いた。T7プロモーターの制御下の試験管内転写のために、pcDNA1.
1/Melan−Aを用いた。pEGFP−H1からの0.8kb HindIII−N
otIフラグメントとして単離されたEGFP cDNAを、まず、pcDNA1.1/
Amp中にサブクローニングし、続いて、BamHI−XbaIフラグメントとしてpS
P64(Promega,Madison,WI,USA)中にクローニングし、これに
よりSP6プロモーターの制御下に試験管内転写を行った。転写は、SP6 Messa
geMachineキット(Ambion)を用いて最終的に20〜100μlの反応混
合物中で37℃で3〜4時間行い、5’mGpppGキャップしたIVT mRNAを
発生させた。テンプレートとしてのSpe I(MBI Fermentas,St.L
eonRot,ドイツ)線状化プラスミドpGEM4Z/EGFP/A64またはpGE
M4Z/M1/A64を用いる転写反応を、T7 MessageMachineキット
(Ambion,Austin,TX,USA)を用いて最終20μlの反応混合物にお
いて37℃で行って、5’キャップされた試験管内転写(IVT)mRNAを発生させた
。IVT mRNAの精製を、製造者の指示に従って、DNase I消化、続いてLi
Cl沈降および70%エタノール洗浄により行った。各実験において、mRNAの少なく
とも3種類の異なるバッチを用いた。アガロース−ホルムアルデヒドゲル電気泳動により
、mRNAの品質を調べた。RNA濃度は、OD260での分光光度分析により調べた。
RNAを、−80℃で小分割して貯蔵した(1μg/μl)。
【0056】
細胞形質移入:電気穿孔の前に、K562細胞を血清非含有IMDMで2回洗い、再懸
濁させてOpti−MEM(Gibco BRL)中での最終の濃度5〜10×10
胞/mlとした。表現型分析(培地中のCD1aHLA−DRDCの存在を確認する
ために行った)後、34−DC、34−LCおよびMo−DCを(特記しない限り)それ
ぞれ培養12日、25日および6日後に従来法により採集し、血清非含有IMDMで2回
洗い、再懸濁してOpti−MEM中での最終的濃度10〜40×10細胞/mlとし
た。続いて、細胞懸濁液0.5mlをIVT mRNA20μgと混合し、Easyje
ct Plus device(EquiBio,Kent,UK)を用いて0.4cm
キュベット中で電気穿孔した。K562細胞中、mRNA形質移入効率へのそれらの効果
を調べるために種々の体積、静電容量および電気穿孔体積を比較した(結果項目を参照)
。CD14ミクロビーズ単離単核細胞中へのmRNAの電気穿孔を、Van Tende
rloo,V.P.ら著、Blood,第98巻:49頁(2001年)に記載されているよ
うに、少しの変更を施して行った。簡単に言えば、電気穿孔前に、CD14ミクロビーズ
単離単核細胞をOptimix Washing Solution(EquiBio,
Ashford,Middlesex,UK)で2回洗い、再懸濁してOptimix電
気穿孔緩衝液(EquiBio)中での最終濃度50×10細胞/mlとした。続いて
、細胞懸濁液0.2mlをIVT mRNA20μgと混合し、Easyject Pl
us device(EquiBio)を用いて0.4cmキュベット中、300Vおよ
び150μFで電気穿孔した。プラスミドDNA電気穿孔を、先に記載(Van Ten
deloo,V.F.I.ら著、Gene Ther.,第5巻:700〜707頁(1998年)
)のように行った。電気穿孔後、新鮮な完全培地(DC用のサイトカインを含む)を細胞
懸濁液に添加し、細胞を、5%COを補足した加湿雰囲気中で37℃でさらにインキュ
ベートした。
【0057】
mRNAのリポフェクションを、製造者の指示(に従って少しの変化を設けて、カチオ
ン性脂質DMRIE−C(Gibco BRL)を用いて行った(Van Tendel
oo,V.F.I.ら著、Gene Ther.,第5巻:700〜707頁(1998年))。簡
単に言えば、K562細胞を血清非含有IMDMで2回洗い、再懸濁してOpti−ME
M中での最終濃度1〜2・10細胞/mlとした。34−DC、34−LCおよびMo
−DCを、それぞれ培養12日、25日および6日後に採集し、血清非含有IMDMで2
回洗い、再懸濁してOpti−MEM中での最終濃度1〜2・10細胞/mlとした。
Opti−MEM250μl中に希釈したIVT mRNA5μgを、DMRIE−Cと
混合し、また、脂質:RNA比4:1でOpti−MEM250μl中にも希釈した。R
NA−脂質複合化のために室温で5〜15分間インキュベーションした後、リポプレック
ス(lipoplex)を細胞に添加し、37℃で2時間インキュベートした。または、
DMRIE−Cの非存在下に、IVT mRNA5〜20μgを37℃で3〜4時間、細
胞にパルシングした。プラスミドDNAリポフェクションを、先に記載のように行った(
Van Tendeloo,V.F.I.ら著、Gene Ther.,第5巻:700〜707頁
(1998年))。リポフェクションまたは受動的パルシング後、新鮮な完全培地(DC
用のサイトカインを含む)を各ウエルに添加した。
【0058】
EGFP分析:EGFP形質移入細胞を、フローサイトメトリー(FCM)分析により
、形質移入24〜48時間後のEGFP発現について調べた。簡単に言えば、細胞(1〜
5×10)を、1%FCSを補足したリン酸緩衝食塩水(PBS)中で一回洗い、1%
BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを補足したPBS0.5ml中に再懸濁した。F
ACScan分析用フローサイトメーター(Beckton Dickinson)での
FCM分析の直前に、エチジウムブロミド(EB)を最終濃度10μg/mlで添加して
、細胞生存度を調べた。DC培地中でのEGFP分析のために、自家リンパ球の混在を排
除するように、大きな前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)プロフィールを示す
細胞、つまりDCについてゲーティングを行った。ゲーティングされたDCを、次に、E
GFP発現について評価した。
【0059】
DCの免疫表現型化:先に記載(Van Tendeloo,V.F.I.ら著、Gene
Ther.,第5巻:700〜707頁(1998年))のように免疫表現型化を行った。以
下のモノクローナル抗体を用いた:CD1a−フルオレセインイソチオシアネート(FI
TC)(Ortho Diagnostic Systems,Beerse,ベルギー
)、CD1a−フィコエリスリン(PE)(Caltag Laboratories,
San Francisco,CA,USA)、CD14−PE、HLA−DR−PE、
HLA−DR−FITC(PharMingen,San Diego,CA,USA)
、CD4−PE、CD80−PE(Becton Dickinson)、CD80−F
ITC(PharMingen,San Diego,CA,USA)、CD40−FI
TC(BioSource,Zoersel,ベルギー)、CD86−PE(PharM
ingen,San Diego,CA,USA)、CD86−FITC(Serote
c,Oxford,UK)、CD13−FITC(DAKO)、CD14−FITC(B
ecton Dickinson,Erembodegem,ベルギー)および非共役C
D83(HB−15クローン;Immunotech,Marseille,Franc
e)。CD83での免疫表現型化の後に、二次ウサギ抗−マウス(RAM)−FITC抗
体(Dako,Glostrup,Denmark)で染色した。非反応性アイソタイプ
対応抗体(Becton Dickinson)を対照として用いた。FACScan分
析用フローサイトメーター(Beckton Dickinson)でのFCM分析の前
に、エチジウムブロミドを添加して、細胞生存度を調べると共に死亡細胞を分析から排除
した。DC培地中に残っているリンパ球を排除するためにもゲーティングを行った。特に
、強化グリーン蛍光タンパク質(EGFP)mRNA電気穿孔DCの免疫表現型化のため
に、以下のフィコエリスリン(PE)で標識したモノクローナル抗体を用いた:CD1a
−PE、HLA−DR−PE、CD80−PE、CD14−PE、CD86−PEおよび
、CD83染色用の二次RAM−PE抗体(Dako,Glostrup,Denmar
k)。
【0060】
インターフェロン(IFN)−γ放出アッセイ:形質移入の24時間後に、34−DC
、34−LCおよびiMo−DCを刺激因子細胞として用いた。成熟の効果を研究するた
めに、形質移入の前に、TNF−αおよびLPSの存在下に、6日培養したiMo−DC
を24時間成熟させ、形質移入の24時間後に刺激因子として用いた。または、iMo−
DCを、培養6日目にmRNAで形質移入し、12〜16時間後、タンパク質発現させ、
TNF−αおよびLPSを添加して最終的DC成熟を誘発した。さらに24時間後、成熟
形質移入Mo−DCを刺激因子として用いた。一部の実験において、Melan−A、無
関係なインフルエンザM1ペプチドまたは無関係なヒトパピロマウイルスE7ペプチドで
パルシングしたiMo−DCを刺激因子として用いた。刺激因子を2回洗い、10%貯留
ヒトAB血清および40IU/ml IL−2を補足したAIM−V培地中に再懸濁した
。反応体CTLを激しく3〜4回洗い、AIM−V培地中に再懸濁した。次に、CTL(
1×10細胞)を、96丸底プレート中で、刺激因子細胞(1×10細胞)と一緒に
37℃で24時間、共インキュベーションして、合計体積200μlとした。または、刺
激因子および反応体PBMCを洗い、IMDM+5%hAB血清中に再懸濁した。次に、
反応体PBMC(1×10細胞)を、96ウエル丸底プレート中で、刺激因子細胞(1
×10細胞)と一緒に37℃で6時間、共インキュベーションして、合計体積100μ
lとした。これらの共培地からの3つの上清サンプルを、IFN−γELISA(Bio
source,Nivelle,ベルギー)により、特異的IFN−γ分泌について試験
した。データを基準化するために、観察された測定値の各々からバックグラウンドIFN
−γ分泌(非修飾DCに晒されたCTLによるIFN−γ放出として定義)を引いた。測
定値は、IU/10個の反応体細胞により放出されたml/24時間として表される。
【0061】
IFN−γ分泌細胞アッセイ:前述のように予備刺激され培養されたPBMC(1×1
細胞)を、対照としてのM1ペプチドまたはE7ペプチドでパルシングしたT2細胞
(1×10)により、24ウエルプレート中で3時間再刺激した。次に、IFN−γ分
泌細胞を、フローサイトメトリー式IFN−γ Secretion Assay De
tection Kit(Miltenyi Biotec,Bergisch Gla
dbach,ドイツ)により、製造者の指示に従って分析した。細胞を、CD8−FIT
C(Becton Dickinson)でも染色し、フローサイトメトリーにより、サ
ンプル当たり5×10個の細胞を分析した。リンパ球集合でのゲーティングにより分析
を行った。
【0062】
アロゲニック混合リンパ球反応(MLR):アロゲニックPBMCの刺激のために、未
成熟および成熟DCを用いた。簡単に言えば、未成熟および成熟DCを、T25培養フラ
スコにおいて、5%ヒト(h)AB血清(Sigma)を補足したIMDM10ml中、
20×10アロゲニックPBMCと共培養(比1:10)した。培養4日目に、新鮮な
培地5ml(IMDM+5%hAB血清)を培地に添加した。培養7日目に、細胞を反応
性について分析した。このために、刺激したPBMC(1×10細胞)を、96ウエル
丸底プレートにおいて、DCドナー(1×10細胞)からのPBMCで37℃にて6時
間再刺激し、合計体積を100μlとした。これらの共培地からの上清サンプルを、IF
N−γ ELISA(Biosource,Nivelle,ベルギー)によりIFN−
γ分泌について試験した。
【0063】
MHCクラスI制限インフルエンザ特異的T細胞の誘発:PBMCの抗原特異的刺激の
ために、M1ペプチドパルシングした未成熟DC、M1ペプチドパルシングした成熟DC
およびマトリクスタンパク質mRNA電気穿孔した成熟DCを用いた。簡単に言えば、2
×10個の抗原負荷DCを、T25培養フラスコにおいて、5%hAB血清を補足した
IMDM10ml中の20×10個の自家PBMCと共培養(比1:10)した。培養
4日目に、新鮮な培地(IMDM+5%hAB血清)5mlを培地に添加した。培養7日
目に、細胞を抗原特異性について分析した。
【実施例1】
【0064】
A.K562細胞中へのIVT mRNA形質移入の最適化:
mRNA電気穿孔を最適化するための予備実験において、我々は白血病K562細胞を
使用した。これらの細胞は、プラスミド電気穿孔により容易に形質移入可能だからである
(Baum,C.ら著、Biotechniques,第17巻:1058〜1062頁(1994年
))。mRNA形質移入効率を調べるためにEGFPレポーター遺伝子を用いた。種々の
電気穿孔設定を試験し、形質移入効率を、EGFP発現のFCM分析により決めた(図1
A)。試験した全ての電気的設定のうち、合計キュベット体積200μlで静電容量15
0μFと電圧300Vを組み合わせると、最高のEGFP発現が得られた(表1)。
【表1】

【0065】
K562細胞を、電気穿孔またはリポフェクションによる材料および方法の項目に記載
のように形質移入した。細胞を、電気穿孔24時間後に、EGFP発現用のFCMにより
分析して形質移入効率(=EGFP細胞%)を推定し、また、エチジウムブロミドを排
除することにより細胞生存度を分析した。結果は、各々が異なるIVT mRNAバッチ
を有する4つの独立した実験の平均(平均の標準誤差<2.5%)である。
【0066】
大部分の生存可能な細胞フラクションが、かなりの程度にEGFPを発現した。EGF
P発現K562細胞の割合は、cDNA電気穿孔を、最適DNA電気穿孔設定、すなわち
260Vおよび1050μFで行った場合でも、プラスミドcDNA形質移入の後よりも
mRNA電気穿孔の後の方が著しく高かった(図1A)。さらに、最適設定におけるmR
NA電気穿孔は、最適設定におけるcDNA電気穿孔と比較して、著しく低下した細胞致
死率を示した(それぞれ、15%対51%)。最適脂質:核酸比(4:1と3:1)およ
びインキュベーション時間(2時間と6時間)は、それぞれRNAリポフェクションおよ
びDNAリポフェクションについて変化したが、DMRIE−C媒介RNAおよびDNA
リポフェクションは、効率および生存度において、幾分類似した結果を示した(表1)。
【0067】
RNAは極めて不安定であり、DNAと比べると短い半減期を有するので、我々は、m
RNA電気穿孔に続くEGFP発現の速度論も研究した(図1B)。K562細胞におけ
る導入遺伝子発現は24〜48時間においてピークを向かえ、素早く6日後にバックグラ
ウンド水準まで低下した。
【0068】
B.異なる型のDCへのIVT mRNA形質移入の効率:
GM−CSFおよびIL−4の存在下に、接着性PBMCから、未成熟Mo−DC(i
Mo−DC)を発生した。培養5〜6日後、Mo−DCにEGFP mRNAを電気穿孔
した。最適化実験は、K562細胞の設定(300V,150μF)に類似の最適設定を
示し、細胞死の最低水準と組み合わされた最大形質移入効率が得られた。EGFP発現の
FCM分析は、60%を超えるEGFPを発現するiMo−DCを示した(図2Aと表2
)。形質移入していないMo−DC培地は、既に、ある程度の細胞死(5〜10%)を示
したが、mRNA電気穿孔後のMo−DCの致死率は15〜30%(平均細胞致死率22
±8%)であった。生存可能な集団についてゲーティングすると、生存可能なMo−DC
の85%が、EGFPをある程度発現した。形質移入前のMo−DCのTNFα+LPS
誘発成熟は、電気穿孔およびリポフェクション効率の著しい低下を示した(表2)。mR
NA形質移入に続くDC成熟は、導入遺伝子の発現に影響を与えない(データは示さず)
。Mo−DC中へのEGFP mRNAのリポフェクションは、効率がかなり低く(7.
5±0.5%)なり、図2Aに示すように、mRNA電気穿孔よりも、細胞に対する毒性
が僅かに高かった(平均細胞致死率28±10%)。DCのmRNAによる受動的パルシ
ングは、検出可能なEGFP発現を示さなかった。Mo−DCにおけるmRNA発現の速
度論的分析は、電気穿孔の24時間後に最大を示し、続いて、時間関数としてゆっくり低
下した(図2B)。mRNA電気穿孔の5日後、EGFPは、K562細胞における導入
遺伝子発現速度(5日後にEGFP細胞9%)と対照的に、実質的割合のMo−DCに
おいてなお検出可能(EGFP細胞31%)であった。mRNA電気穿孔後の細胞生存
度のモニタリングは、時間関数として幾分安定な生存度を示した(図2B)。
【0069】
骨髄CD34前駆体由来DC(34−DC)およびCD34前駆体由来ランゲルハ
ンス細胞(34−LC)におけるmRNA形質移入も試験した。これらのDC型のそれぞ
れ72%および53%が、mRNA電気穿孔により容易に形質移入された(図2C)が、
mRNAリポフェクションまたはmRNAパルシングによっては形質移入されなかった(
表2)。34−DCおよび34−LCの両方について生存度は常に80%より高かった(
図2C)。表2は、異なる型のDCにおけるmRNAをベースとした電気穿孔、リポフェ
クションおよび受動的パルシングの効率を要約する。
【表2】

【0070】
異なる型のDCを、電気穿孔、リポフェクションおよび受動的パルシングを用いてIV
T EGFP mRNAで形質移入した。形質移入の1日後、EGFP発現をFCMによ
り分析して形質移入効率(EGFPDC%)を推定した。iMo−DC、未成熟Mo−
DC;mMo−DC、成熟Mo−DC;34−LC、CD34前駆体由来ランゲルハン
ス細胞;34−DC、CD34前駆体由来樹状細胞。結果は、受動的パルシング、リポ
フェクションまたは電気穿孔についての少なくとも3つの独立した実験の平均±標準偏差
(SD)である;<BG、バックグラウンド蛍光を下回るEGFP発現。
【0071】
mRNA電気穿孔DCの表現型および成熟:
DCは、培養または形質移入条件により容易に妨げることができる繊細な表現型を有す
るので、我々は電気穿孔DCがそれぞれの表現型および、成熟DCに分化する性能を保持
するかどうかFCM分析により調べた。CD1a、HLA−DR、CD80、CD86お
よびCD83を含む特徴的DCマーカーに結合するモノクローナル抗体を用いて、対照お
よびEGFP mRNA形質移入Mo−DCを染色した。電気穿孔したMo−DC共発現
EGFPは高水準のCD1a、HLA−DRおよびCD86を保持したので、mRNAの
電気穿孔はMo−DCの表現型に影響を示さなかった(図3A)。模擬電気穿孔(mRN
Aを用いない電気穿孔)が同様の結果を示した(データは示さない)。mRNA電気穿孔
Mo−DCが成熟Mo−DCに分化する性能を、CD80およびCD83を含む成熟DC
マーカーの発現により評価した。図3Bは、mRNA電気穿孔そのものが、DC成熟を誘
発しなかったこと、しかし、成熟カクテル(TNF−α+LPS)の存在下にmRNA形
質移入未成熟Mo−DCがCD83およびCD80をアップレギュレーションすることが
できたので、電気穿孔後の成熟性能が維持されたことを示している。
【0072】
また、34−DCの表現型もmRNA電気穿孔により影響されなかった(図3C)。E
GFP34−DC共発現HLA−DR、CD1a、CD80およびCD86。34−L
Cが、未成熟ランゲルハンス様DCへの類似性に匹敵する、CD80およびCD86の低
水準を示したことを除いて、同様の発見が34−LCにおいて観察された(データは示さ
ず)。
【0073】
C.mRNA形質転換DCによるMHCクラスI制限抗原提示:
Mo−DCにおける形質移入効率が高い場合、我々は、どの程度に、mRNA形質移入
Mo−DCが抗原を処理し、MHCクラスI制限抗原エピトープを抗原特異的CTLクロ
ーンに提示するか検討した。従って、我々は、電気穿孔、リポフェクションまたは受動的
パルシングを用いて、Melan−A/MART−1をコードしているmRNAをHLA
−A2 Mo−DCに導入した。Melan−A mRNAで電気穿孔またはリポフェ
クションしたMo−DCは、IFN−γ分泌により判断されるようにHLA−A2
elan−A特異的CTLクローンを著しく刺激した(図4)。Melan−A mRN
Aを受動的にパルシングしたMo−DCは、いかなるCTL刺激も起こさなかった。EG
FP mRNAを電気穿孔したHLA−A2 Mo−DCまたはMelan−A mR
NAを電気穿孔したHLA−A2 Mo−DCは、IFN−γを生成するようにCTL
クローンを刺激しなかった。免疫優勢Melan−A27〜35ペプチドAAGIGIL
TVをパルシングしたHLA−A2 Melan−A SK23−MELメラノーマ
細胞およびHLA−A2 Mo−DCの両方を陽性対照として使用し、CTLクローン
によるIFN−γ生成を強度に誘発した。M1インフルエンザペプチドをパルシングした
HLA−A2 Mo−DCは、いかなる特異的IFN−γ生成も誘発しなかった。Me
lan−A IVT mRNAを電気穿孔したMo−DCは、mRNAリポフェクション
したMo−DCよりも2倍以上強力にCTLクローンを刺激し(図4)、これは、二つの
遺伝子転移法間の形質移入効率の相違との関連性を示している(表2)。mRNA電気穿
孔の効率(表2)と他の型のDCにおいてCTLクローンを刺激する性能(表3)とを比
較すると、形質移入効率とCTL活性化とが相関しているという観察も得られた。EGF
P mRNAではなくMelan mRNAをHLA−A2 34−DCおよび34−
LCに電気穿孔すると、CTLが特異的に活性化される。検出可能な形質移入水準の不存
在(表2)に従って、34−DCおよび34−LCのリポフェクションまたは、Mela
n−A mRNAの全ての型のDCへの受動的パルシングは、バックグラウンド水準を越
えて検出可能ないかなるIFN−γも発生しなかった(表3)。
【表3】

【0074】
異なる型のDCに、電気穿孔、リポフェクションおよび受動的パルシングを用いてIV
T Melan mRNAを形質移入した。形質移入の1日後、10個の形質移入DC
を、37℃にて10個のMelan−A−特異的CTLと24時間共培養した。その後
、上清を集め、IFN−γ分泌を、材料および方法項目において説明されているように、
IFN−γ ELISAにより調べた。結果は、少なくとも5つの独立した電気穿孔の実
験と3つの独立した受動的パルシングおよびリポフェクションの実験の平均±SDである
。iMo−DC、未成熟Mo−DC;mMo−DC、成熟Mo−DC;34−LC、CD
34前駆体由来ランゲルハンス細胞;34−DC、CD34前駆体由来DC;<BG
、バックグラウンドを下回るIFN−γ生成。
【0075】
D.Mo−DCにおけるmRNA負荷への成熟の効果:
GM−CSFおよびIL−4の存在下にPBMCを5〜7日間培養して得られたMo−
DCは、主に、未成熟表現型を示す(Romani,N.ら著、J.Immunol.Methods,第
196巻:137〜151頁(1996年))。これらの未成熟Mo−DCは、環境から
大量の抗原を捕獲する際に専門に扱われる(Sallusto,F.,Lanzavec
chia,A.,J.Exp.Med.,第179巻:1109〜1118頁(1994年))。し
かしながら、CTLへの最適提示のために、Mo−DCは、バクテリア生成物(例えば、
LPS)、炎症性サイトカイン(例えばTNF−α)および/またはTヘルパー細胞によ
るCD40ライゲーションにより誘発され得る成熟プロセスを経る必要がある(Banc
herau,J.,Steinmann,R.N.Nature,第392巻:245〜
252頁(1998年))。従って、成熟および負荷の配列がMo−DCの抗原提示性能
に影響を与えるかどうか試験するために、我々は、mRNA電気穿孔によりMelan−
Aを負荷したMo−DCが、LPSTNF−αで成熟する前および後に、CTLクロー
ンを刺激する性能を評価した。図5は、Mo−DCの成熟前に電気穿孔またはリポフェク
ションによるmRNA負荷を行った場合、最も有効なCTL活性化が得られることを明ら
かに示している。成熟がmRNA負荷の前に生じた場合、TIL細胞によるIFN−γ分
泌が著しく低下(図5)し、LPSおよびTNF−αで成熟された成熟Mo−DCの低度
の形質移入性能と相関していると思われる(表2)。
【0076】
E.cDNA負荷対mRNA負荷:
Mo−DCと対照的に、34−LCおよび34−DCをプラスミドDNA電気穿孔によ
り形質移入することもできる(Van Tendeloo,V.F.I.ら著、Gene The
r.,第5巻:700〜707頁(1998年))。従って、我々は、プラスミドDNA形
質移入DCが、抗原特異的CTL活性化も誘発し得るかどうか評価した。Melan−A
をコードしているIVT mRNAまたはプラスミドDNAで電気穿孔したHLA−A2
34−LCを、Melan−A特異的CTLと共にインキュベートして、IFN−γ
分泌を評価した(図6)。驚くべきことに、我々は、対照のベクター形質移入34−LC
を用いた場合のようにMelan−A cDNAを用いて同様のIFN−γ水準を再現可
能に得、これは、非特異的CTL刺激を意味している。二つの他の無関係なプラスミド(
pEGFP−N1およびpCMV−ルシフェラーゼ)の形質移入は、同様の非特異的CT
L刺激となった。この現象は、擬(mock)形質移入(プラスミドDNAを用いない電気穿孔
)34−LCにおいて、または電気穿孔(図6)の前にDNAをDNase Iで消化し
た場合において、決して見られない。同様の観察が、34−DCにて成された(データを
示さない)。
【実施例2】
【0077】
電気穿孔による未成熟単核細胞由来樹状細胞(白血球搬出(leukapheresis)生成物から
発生し、臨床的適用のためのGMP条件下にIL−1β+IL−6+TNFα+PEG
のカクテルにより成熟された)へのEGFP RNA形質移入。単核細胞由来未成熟樹状
細胞(DC)は、既述のように白血球搬出(leukapheresis)生成物から得られた(Feu
erstein,B.ら著、J.Immunol.Methods第245巻:15〜29頁(2000年
))。未成熟DC(d6)をRPMI中で2回洗い、Optimix(登録商標)−Ki
t(EQUIBIO,Maidstone Kent,U.K.)の洗浄溶液で1回洗っ
た。DCを、Optimix(登録商標)培地中での最終細胞濃度を10×10/ml
に調節した。次に、細胞懸濁液0.2mlを、1.5ml反応管内で、試験管内転写EG
FP RNA20μgと混合した。室温で最大3分間インキュベーションした後、細胞懸
濁液を0.4cmギャップ電気穿孔キュベット内に移した。Gene Pulser I
I(BioRad,Munich,ドイツ)を用いて電圧300Vおよび静電容量150
μFでパルスをかけ、パルス時間7〜10ミリ秒とした。その直後、細胞懸濁液を6ウエ
ルプレートに移した(1×10DC/ウエル/GM−CSFおよびIL−4を補足した
培養培地3ml)。半数のウエルにおいて、既述のようにIL−1β、IL−6、TNF
−αおよびPGEを添加することにより終末成熟を誘発した(Feuerstein,
B.ら著、J.Immunol.Methods第245巻:15〜29頁(2000年))。電気穿孔の
48時間後、DCを、示されたマウスmAbsおよびPE共役抗マウスIgで対比染色し
、続いてFACS分析した。結果を図7に要約する。
【0078】
形質移入後に成熟カクテルを添加すると、より高い割合のDCによるCD83およびC
D25の発現により示されるように、より成熟している樹状細胞の集団が得られる。これ
は、成熟DCのみが生体内免疫を誘発し未成熟のものは寛容を誘発し得るので、重要であ
る(Roncarolo,M.G.ら著、Exp.Med.第15巻:193(2)頁:F5〜
9.Review.(2001年))。
【0079】
単核細胞由来未成熟樹状細胞(DC)を前述のように処理し、成熟刺激の添加に続いて
、成熟形質移入DC中でのEGFP発現の長命を調査した。EGFPの発現は、4日後で
も、細胞の大部分において維持される。結果を図8に要約する。
【実施例3】
【0080】
電気穿孔による単核細胞由来樹状細胞へのEGFP RNA形質移入−電圧滴定
A:電圧の細胞寸法および顆粒性への影響
単核細胞由来未成熟樹状細胞(DC)を、既述のように白血球搬出(leukapheresis)生
成物から得た(Feuerstein,B.ら著、J.Immunol.Methods第245巻:15
〜29頁(2000年))。未成熟DC(d6)をRPMI中で2回洗い、Optimi
x(登録商標)−Kit(EQUIBIO,Maidstone Kent,U.K.)
の洗浄溶液中で1回洗った。DCを、Optimix(登録商標)培地中での最終細胞濃
度10×10/mlに調節した。次に、細胞懸濁液0.2mlを、1.5ml反応管内
で、試験管内転写EGFP RNA20μgと一緒に混合またはそのRNAを用いないで
混合した。室温で最大3分間インキュベーションした後、細胞懸濁液を0.4cmギャッ
プ電気穿孔キュベット内に移した。Gene Pulser II(BioRad,Mu
nich,ドイツ)を用いて示された電圧および静電容量150μFでパルスをかけ、パ
ルス時間7〜10ミリ秒とした。その直後、細胞懸濁液を6ウエルプレートに移した(1
×10DC/ウエル/培養培地3ml)。既述のようにIL−1β、IL−6、TNF
−αおよびPGEを添加することにより終末成熟を誘発した(Feuerstein,
B.ら著、J.Immunol.Methods第245巻:15〜29頁(2000年))。電気穿孔の
48時間後、DCを分析した。図9Aの輪郭プロットは、x軸に前側散乱およびy軸に側
方散乱を示す。
【0081】
前側および側方散乱分析を加えると、白血球搬送(leukapheresis)生成物から発生し、
電気穿孔によりRNA形質転換し、IL−1β、IL−6、TNF−αおよびPGE
らなる成熟カクレル(Feuerstein,B.ら著、J.Immunol.Methods,第245
巻:15〜29頁(2000年))を添加することにより充分成熟された単核細胞由来樹
状細胞について、260Vの使用が、細胞の完全性が幾分優れて保存されるので、僅かに
優れていることが示される。
【0082】
B:電圧のCD83およびCD25への影響
未成熟DC(d6)(図9A参照)を、RPMI中で2回洗い、Optimix(登録
商標)−Kit(EQUIBIO,Maidstone Kent,U.K.)の洗浄溶
液中で1回洗った。DCを、Optimix(登録商標)培地中での最終細胞濃度10×
10/mlに調節した。次に、細胞懸濁液0.2mlを、1.5ml反応管内で、試験
管内転写EGFP RNA20μgと一緒に混合またはそのRNAを用いないで混合した
。室温で最大3分間インキュベーションした後、細胞懸濁液を0.4cmギャップ電気穿
孔キュベット内に移した。Gene Pulser II(BioRad,Munich
,ドイツ)を用いて示された電圧および150μFの静電容量でパルスをかけ、パルス時
間7〜10ミリ秒とした。その直後、細胞懸濁液を6ウエルプレートに移した(1×10
DC/ウエル/培養培地3ml)。IL−1β、IL−6、TNF−αおよびPGE
を添加することにより終末成熟を誘発した。電気穿孔の48時間後、DCを、示されたマ
ウスmAbsおよびPE共役抗マウスIgで対比染色し、続いてFACS分析した。結果
を図9Bに要約する。
【0083】
表現型分析により、白血球搬送(leukapheresis)生成物から発生し、電気穿孔によりR
NA形質転換し、IL−1β、IL−6、TNF−αおよびPGEからなる成熟カクレ
ル(Feuerstein,B.ら著、J.Immunol.Methods,第245巻:15〜29頁
(2000年))を添加することにより充分成熟された単核細胞由来樹状細胞について、
上右象限においてより多くの細胞が存在する、すなわち、EGFPと成熟マーカーCD8
3およびCD25との両方が発現されるので、260Vの使用が僅かに優れていることが
示される。
【実施例4】
【0084】
電気穿孔による既に成熟した単核細胞由来樹状細胞(白血球搬出(leukapheresis)細胞
から発生し、臨床的適用のためのGMP条件下にIL−1β+IL−6+TNFα+PF
のカクテルにより成熟された)へのEGFP RNA形質移入。
【0085】
A:単核細胞由来未成熟樹状細胞(DC)は、既述のように白血球搬出(leukapheresis
)生成物から得られた(Feuerstein,B.ら著、J.Immunol.Methods第245巻
:15〜29頁(2000年))。未成熟DC(d6)を誘発させて、Feuerste
in,B.ら著、J.Immunol.Methods,第245巻:15〜29頁(2000年)に記載
のようにIL−1β、IL−6、TNFαおよびPGEの添加により終末成熟させた。
成熟DCに、実施例2に記載のように電気穿孔によりEGFP−RNAを形質移入した。
【0086】
TNFα+LPSにより成熟されたDCは平均33%のみ形質移入され、図10Aおよ
びHに示される結果から、成熟単核細胞由来樹状細胞(IL−1β+IL−6+TNF−
α+PGEからなる最適化成熟カクテルにより成熟)が効率的に形質移入され、EGF
P発現を48時間以上の試験時間維持するということができる。
【0087】
B:成熟単核細胞由来樹状細胞(DC)を効率的に形質移入し、図10B〜Gにより確
認されるように、その成熟表現型(CD83、CD80、CD25、CD40、HLA−
DAおよびMHCクラスIの高発現)を48時間以上の試験時間維持する。
【0088】
形質移入後に成熟カクテルを添加すると、DCのより高い割合によりCD83およびC
D25の発現により示されるように、より成熟した樹状細胞の集団が得られる。これは、
成熟DCのみが生体内免疫を誘発し未成熟のものは寛容を誘発し得るので、重要である(
Roncarolo,M.G.ら著、Exp.Med.第15巻:193(2)頁:F5〜9.
Review(2000年))。
【実施例5】
【0089】
mRNA電気穿孔成熟樹状細胞は、導入遺伝子発現、表現型特性および凍結保存後の刺
激性能を維持する。
【表4】

【0090】
K562細胞にEGFP mRNAを電気穿孔し、形質移入3または24時間後に凍結
保存した。凍結保存のために、K562細胞を、純FCS中、10×10/mlの濃度
で凍結管(Nunc CryoTube Vials,Nalgene Nunc In
ternational,Denmark)内で再懸濁させた。次に、懸濁液を、氷上で
、20%DMSO(Sigma,St.Louis,MO,USA)を補足した等体積の
FCSと混合した。細胞懸濁液を、冷凍凍結容器Nalgene Nunc Inter
national)を用いてゆっくり(−1℃/分)と−80℃まで凍結させた。細胞を
、さらなる実験で用いる前に、−80℃で24時間以上凍結させた。細胞を、凍結保存の
前後の異なる時点にEGFP発現用にFCMにより分析して、形質移入効率(=EGFP
+細胞%)およびEGFP細胞の平均蛍光強度(=MFI EGFP+細胞)を推定し
た。死んだ細胞の数は、エチジウムブロミド染色(=死んだ細胞%)により決めた。結果
は、平均±標準誤差として示す。
【0091】
電気穿孔の24時間後に凍結した培地と比較して、電気穿孔の3時間後に凍結した培地
における細胞生存率は僅かに少なかった(p=0.0025)。細胞は、電気穿孔後に短
時間回復する必要がある。
【0092】
電気穿孔mRNAは、凍結保存後、なお機能的であった。電気穿孔の3時間後に凍結し
た培地において、発現されたEGFPのMFIは、融解3時間後と24時間後との間に殆
ど2倍になった(p=0.0009)。
【表5】

【0093】
未成熟Mo−DCをEGFP mRNAで電気穿孔した。細胞を、形質移入の18時間
後に未成熟DCとして凍結保存する、または形質移入の24時間後に成熟DCとして凍結
保存する。成熟を、形質移入直後に成熟カクテル(TNF−α+PGE+IL−1+I
L−6)を添加することにより誘導した。細胞を、凍結保存の前後の異なる時点にEGF
P発現用にFCMにより分析して、形質移入効率(=EGFP+細胞%)およびEGFP
+細胞の平均蛍光強度(=MFI EGFP+細胞)を推定した。死んだ細胞の数は、エ
チジウムブロミド染色(=死んだ細胞%)により決めた。結果は、平均±標準誤差として
示す。EPは電気穿孔。
【0094】
未成熟および成熟DCの非凍結対照において見られる(表5、それぞれ対照1および対
照2)ように、生存度は、この電気穿孔により時間の関数としてあまり影響されず(p値
はそれぞれ0.1849および0.1362)、細胞は高水準のEGFP(表5;図11
A&B)を発現する。
【0095】
電気穿孔の18時間後に凍結した未成熟DCは、融解の6時間後に凍結サイクルウエル
で生き残るようである。細胞致死率(+13%,p=0.0008)の増加は小さいが、
EGFP発現細胞のMFIは、非凍結対照DCの場合(p=0.5185)とほぼ同様で
あった。しかしながら、融解の24時間後、電気穿孔後48時間培養した非凍結対照DC
と比較して、凍結培地中の細胞致死率は高水準であった(64%対24%,p=0.00
17)(表2;図11A)。
【0096】
成熟DCの凍結保存のために、未成熟Mo−DCを電気穿孔し、続いて、GM−CSF
およびIL−4を補足した培地中で2時間インキュベーションして、導入遺伝子の発現を
開始させた。これに続いて、DC成熟カクテルを添加し、EGFP発現および細胞生き残
りの水準を、形質移入の24時間後および48時間後に決めた。DCを、mRNA電気穿
孔および導入遺伝子発現の24時間後に凍結し、細胞生存率を、融解の6時間後および2
4時間後に決めた(表2、図1B)。融解の6時間後、DC培地は凍結を生き残るようで
あり、非凍結培地(p値、それぞれ0.0033および0.5183)と比較して、同様
の数のEGFP+細胞および、EGFP+細胞のMFI水準を有していた。成熟DCは、
凍結未成熟DCよりも、融解手順を生き残った(未成熟DCについて細胞致死率64%で
あり、培養の24時間後の成熟DCについて25%、p=0.00004)。
【実施例6】
【0097】
血清非含有培養プロトコールとポリ−I:C成熟刺激を組み合わせると、抹消血単核細
胞から、充分に成熟し生存力のあるCD83+DCが迅速に発生した。これは、単核細胞
のmRNA電気穿孔に基づいて、これらの短時間培養DCのための効率的かつ臨床的に適
用可能な抗原負荷手法を提供する。これらの短時間かつ血清を含まない培養Mo−DCの
T細胞活性化は、インフルエンザマトリクスタンパク質M1ペプチドをパルシングしマト
リクスタンパク質mRNAを電気穿孔したDCを用いるインフルエンザ抗原モデル系にお
いて高度に刺激的であると分かった。以下(対応図を含む)において、結果を、平均±標
準偏差として表す。スチューデントのt検定を用いて比較を確認した。p値≦0.05は
統計的に有意であると考えられる。
【0098】
A:ポリ−I:C成熟を用いるまたは用いない、短時間かつ血清を含まない試験管内培
養DCの特徴付け:PBMCから単核細胞を増やした後、GM−CSFのみを補足したA
IM−V培地において細胞を2日間培養した。成熟DCを得るために、培養の24時間後
にポリ−I:Cを添加した。培養細胞を、48時間の合計培養期間後、フローサイトメト
リーにより分析した。GM−CSFおよびIL−4を補足した血清非含有培地において6
〜7日間培養する古典的DCとの観察された相違は、血清非含有培養細胞の低い前方およ
び側方散乱プロフィールであった(図1、上側パネル)。しかしながら、これは、血清非
含有またはポリ−I:C誘発致死率によるものではない。何故なら、エチジウムブロミド
染色により、80%を超える平均生存力の細胞集団であることが示されたからである(図
14、下側パネル)。培養の48時間後に、免疫表現型化も行った(図15)。培養細胞
の大部分が、CD14発現のダウンレギュレーションを示し、特徴的単核細胞マーカーの
損失が示された。このダウンレギュレーションは、単核細胞の血清非含有培養が原因であ
る可能性が高い。何故なら、ヒトAB血清(1%)をDC培養培地に添加する実験条件に
おいて、CD14のダウンレギュレーションが観察されなかったからである(データは示
さず)。ポリ−I:Cを用いないで培養された細胞は、HLA−DRの穏やかな発現を示
し、小さいフラクションのみが、CD83の、および共刺激性分子CD80およびCD8
6の発現を示した。これは、典型的未成熟DC表現型に相当する。これに対して、ポリ−
I:Cにさらした細胞は、HLA−DR、CD83および、共刺激性分子CD80および
CD86の迅速なアップレギュレーションを示し、成熟DCの典型的表現型に相当する。
CD1aは、少しの割合の細胞上に存在していた(図15)。
【0099】
B:ポリ−I:C成熟血清非含有培養DCは、試験管内T細胞免疫反応の誘発において
、その未成熟対応物質より性能が高い:新培養細胞型もDCの機能的特性を有しているか
決めるために、修飾アロゲニック混合リンパ球反応(MLR)において、その刺激性能を
まず評価した。このために、未成熟および成熟DCを、アロゲニックPBMCと共に7日
間培養した。次に、刺激されたPBMCを、DCドナーからのPBMCで再刺激し、上清
中のIFN−γ分泌を、ELISAにより分析した(図16)。PBMC標的に対するI
FN−γ分泌水準に基づき、結果は、成熟DCが、未成熟DCよりも、アロゲニックML
R反応の誘発において、より性能が高い(未成熟DCについて3.1±0.1IU/ml
/6時間で、成熟DCについて21.3±0.8IU/ml/6時間、p=0.0004
)ことを示している。自己抗原特異的刺激性能を、インフルエンザモデル系において評価
し、DCに、HLA−A2制限インフルエンザマトリクスタンパク質M1特異的ペプチド
をパルシングし、自己PBMCと共培養した。共培養の7日後に、培養したPBMCを、
M1ペプチドまたはE7対照ペプチドをパルシングしたT2細胞で再刺激した。6時間刺
激後、上清中のIFN−γ分泌をELISAにより分析した(図17Aおよび17B)。
インフルエンザM1標的に対するIFN−γ分泌水準に基づいて、結果は、成熟DCが、
自己免疫反応の誘発において、未成熟DCよりも、性能が高い(図17A、未成熟DCに
ついて2.3±0.3IU/ml/6時間で、成熟DCについて22.9±3.1IU/
ml/6時間、p=0.0006)ことを示している。この免疫反応の特異性は、インフ
ルエンザM1標的と比較して、対照HPV E7標的に対するIFN−γ生成の著しく低
い量により示された(図17A:成熟DCについてp=0.0079、未成熟DCについ
てp=0.0461;図4B:成熟DCについてp=0.0064)。IFN−γがCD
8+Tリンパ球により生成されたことを示すために、我々は、培養したPBMCをインフ
ルエンザ(T2/M1)または対照(T2/E7)標的で再刺激した後、IFN−γ分泌
細胞を、フローサイトメトリーにより検出するために直接染色するIFN−γ分泌アッセ
イを用いた(図18)。フローサイトメトリー分析は、M1ペプチドをパルシングした成
熟DCで最初に刺激したPBMC培地のCD8+ T−細胞集団中で検出可能なM1特異
的IFN−γ分泌T細胞を示した。この免疫反応は、未成熟DCで最初に刺激した培地中
では実質的に見られない。
【0100】
C:単核細胞のmRNA電気穿孔およびその後のDCへの分化:
先に最適化したmRNA電気穿孔プロトコールを用いて、我々は、前記DCの遺伝的修
飾の可能性を試した。これらの実験において、mRNA形質移入効率を調べるためにEG
FPレポーター遺伝子を用いた。最適化後、次のmRNA電気穿孔および培養プロトコー
ルにより、抗原負荷成熟DCが発生した。最初に、単核細胞を、CD14免疫ビーズ磁気
分離によりPBMCから単離した。電気穿孔後、細胞を、GM−CSFを補足した血清非
含有AIM−V培地中に再懸濁した。培養の24時間後、ポリ−I:Cを培地に添加して
成熟DCを得た。培養したDCを、単核細胞の電気穿孔の48時間後に分析した。DCに
培養したEGFP mRNA電気穿孔単核細胞と非電気穿孔単核細胞との間の散乱プロフ
ィールにおいて、差異は見られなかった(図19A)。DC培地中の平均電気穿孔関連致
死率は10%であった(3つの独立した実験の平均、図19B)。この低い細胞致死率は
、血清非含有培地条件が原因である可能性が高かった。何故なら、電気穿孔に続いて自家
血漿を添加すると、電気穿孔関連致死率が低下するからである(データは示さず)。EG
FP mRNA電気穿孔短期間培養DCと非電気穿孔DCとにおけるEGFP蛍光水準を
比較すると、データは、実際の全ての生存力のあるmRNA負荷DCにおいて低いが検出
可能なEGFP発現を示す(図19C)。培養細胞の表現型を、特徴的DCマーカーのた
めのフローサイトメトリーにより試験した(図20)。我々は、EGFP mRNA電気
穿孔短期間かつ血清非含有培養成熟DCと非電気穿孔DCとの間で表現型に差異を観察し
なかった。注目すべきことに、DCが接着性単核細胞から培養される図15に示すデータ
と比較して、CD14陽性単離単核細胞から成長したDCにおいて、CD14のダウン
レギュレーションがあまり観察されなかった(接着性PBMCから発生したCD14
Cについて10%未満で、CD14単核細胞から発生したCD14DCについて約5
0%)。
【0101】
D:mRNA負荷短期間培養成熟DCの刺激性能:
我々は、インフルエンザモデル系において、血清非含有培地中で迅速に分化して成熟D
CになるmRNA電気穿孔単核細胞が、PBMCと共培養する際に抗原特異的T細胞を刺
激し得るかどうか試験した。これらの試験において、単核細胞を、インフルエンザマトリ
クスタンパク質M1をコードしているmRNAを電気穿孔し、さらに上記のように成熟D
Cに培養した。次に、DCを、外因性サイトカインを添加せずに、自家PBMCと共培養
した。培養の7日後、処理したPBMCを、MHCクラスI制限抗原インフルエンザマト
リクスタンパク質M1ペプチドをパルシングしたT2細胞(T2/M1)で再刺激し、I
FN−γ分泌を6時間後にELISAにより決めた(図21)。ペプチドパルシングした
T2細胞で再刺激したときに、処理したPBMC培地中の活性化T細胞が、免疫優勢M1
マトリクスタンパク質ペプチドに対するIFN−γを生成した。この活性化の特異性は、
HPV E7ペプチドパルシングしたT2細胞に対する処理PBMC培地のバックグラウ
ンドIFN−γ生成のみにより示された(T2/M1対T2/E7、図8A:p=0.0
002、図8B:p<0.0001)。
【0102】
検討:
この研究の最初の部分において、我々はMo−DCのための選択的培養プロトコールを
記載している。この血清非含有培養およびポリ−I:C成熟プロトコールは、充分に成熟
し生存力があり高度に刺激的なCD83+DCを迅速に発生させた。観察された表現型特
性(図15)は、短時間の血清非含有培養DCのための同様のDC培養プロトコールにつ
いてのCzernieckiらによる以前の報告データに一致している(Czernie
cki,B.J.ら著、2001年.Diverse functional Activity of CD83+monocyte-d
erived dendritic cells and implications for cancer vaccines. Crit.Rev.Immunol.
第21巻:157頁)。接着性単核細胞から培養されたDC(図15,10%未満のCD
14+細胞)と磁気ビーズ単離単核細胞から培養されたDC(図20,約50%CD14
+細胞)との間のCD14ダウンレギュレーションにおける観察された相違は、同様にC
D14選択手順に起因され、例えば、B−、T−およびNK−細胞の消耗によるCD14
細胞の陰性選択とCD14細胞の陽性選択とを比較することにより更なる検討が提供
される。同様の観察が、接着性PBMCから成長した従来のDCをCD14陽性選択によ
り選別された単核細胞から発生したDCと比較したCavanaghらにより既に報告さ
れている(Cavanagh,L.L.ら著、1998年.Proleferation in monocyte-
derived dendritic cell cultures is caused by progenitor cells capable of myeloid
differentiation.Blood.第92巻:1598頁)。未成熟DCと比べて、HLA−DR
、CD80、CD86およびCD83のアップレギュレーションにより見られる、提示さ
れた短期間培養DCの比較的迅速な成熟は、先の報告によれば、Toll−like受容
体3を介するポリ−I:Cシグナリングが原因である(Alexopoulou,L.ら
著、2001年.Recognition of double-stranded RNA and activation of NF-KB by To
ll-like Receptor3.Nature第413巻:732頁)。このシグナリング経路は、DCによ
るIFN−α生成を誘発(Cella,M.ら著、1999年.Maturation,Activation,
and Protection of dendritic cells induced by double-stranded RNA.J.Exp.Med.第1
89巻:821頁)し、これは、強力な成熟刺激として作用することができる。さらに、
IFN−αのようなI型インターフェロンは、LI−15生成を誘発し、このようにして
、Tヘルパー1反応を強度に促進することができ、これは強力なCD8+T細胞反応の誘
発に必要である(Santini,S.M.ら著、2000年.TypeI Interferon as a
powerful adjuvant for monocyte-derived dendritic cell development and activity i
n vitro and in Hu-PBL-SCID mice. J.Exp.Med.第10巻:1777頁;Saikh,K
.U.ら著、2001年.IL-15-induced conversion of monocytes to mature dendriti
c cells. Clin.Exp.Immunol.第126巻:447頁)。これは、アロゲニックT細胞刺激
性能および自己T細胞刺激性能の両方において未成熟DCと成熟短期間培養DCを比較し
たときに観察される相違の説明となり得る。これらのデータは、インフルエンザ特異的メ
モリーT細胞を活性化するために成熟DCが必要とされることを記載しているBhard
wajらの最近の実験も確認している(Larsson,M.ら著、2000年.Requir
ement of mature dendritic cells for efficient activation of influenza A-specific
memory CD8+T cells.J.Immunol.第165巻:1182頁)。
【0103】
この研究の第2の部分は、これらの短期間血清非含有培養DCの遺伝的修飾に焦点を合
わせている。先に、我々は、血清およびGM−CSF+IL−4の存在下に培養されたD
C中へのmRNAの電気穿孔に基づく抗原負荷手法を開発した。この形質移入技術により
、EGFPレポーター遺伝子を用いてMo−DC中に導入遺伝子を高水準で発現させた。
形質移入細胞の70%以上が、高水準のEGFP発現を示し(フローサイトメトリーによ
り測定して、10〜10の相対的蛍光)、形質移入後にその表現型特性を維持した(
Van Tendeloo,V.ら著、2001年.Highly efficient gene delivery b
y mRNA electroporation in human hematopoietic cells:Superiority to lipofection a
nd passive pulsing of mRNA and to electroporation of plasmid cDNA for tumor anti
gen loading of dendritic cells.Blood.第98巻:49頁;Ponsaerts,P.
ら著、2002年.mRNA-electroporated mature dendritic cells retain transgene ex
pressin,phenotypical properties and stimulatory capacity after cryopreservation.
Leukemia(印刷中))。しかし、この研究において示される、短期間血清非含有培養DCの
形質移入用のこの技術を用いて、形質移入細胞において実質的細胞致死率を得た(データ
は示さず)。DCワクチンは、効果的になるために、高度のDC生存力を有さなくてはな
らないので、我々は、その後に迅速にDCに分化される新しい単核細胞を形質移入しよう
とした。図19のデータにより示されるように、細胞生存力は高く、抗原は、この手法を
用いる場合、実質的に全ての細胞において初期電気穿孔の2日後に、DC中でなお検出可
能であった。注目すべきことに、GM−CSFおよびIL−4の存在下に血清中で培養さ
れたDCの電気穿孔に関する以前の結果(Van Tendeloo,V.ら著、200
1年.Highly efficient gene delivery by mRNA electroporation in human hematopoie
tic cells:Superiority to lipofection and passive pulsing of mRNA and to electrop
oration of plasmid cDNA for tumor antigen loading of dendritic cells. Blood.第9
8巻:49頁;Ponsaerts,P.ら著、2002年.mRNA electroporated matu
re dendritic cells retain transgene expression,phenotypical properties and stimu
latory capacity after cryopreservation. Leukemia(印刷中))と比べて、タンパク質発
現、例えばEGFPの水準が、24時間後(データを示さず)および48時間後(図19
c)に単核細胞においてかなり低かった。EGFP−mRNAで電気穿孔し続いて成熟D
Cに分化した単核細胞は、非電気穿孔対照DCと比較して、EGFP蛍光の小さなシフト
しか示さなかった。これは、一次非培養単核細胞においてタンパク質高発現水準を得る際
の困難さにより説明することができる(データは示さず)。しかしながら、DC中での高
水準の抗原発現が、より強力な免疫反応の誘発に必須であるという総意は未だ得られてい
ない。ここで、我々は、これら短期間培養DCにおける抗原発現の低い水準にも拘わらず
、インフルエンザモデル系における特定の免疫反応を非常に効率的に開始することができ
るという機能的証拠を提供する。我々の研究室における以前の実験(Ponsaerts
,P.ら著、2002年.mRNA-electroporated mature dendritic cells retain transg
ene expressin,phenotypical properties and stimulatory capacity after cryopreserv
ation. Leukemia(印刷中))は、インフルエンザマトリクスタンパク質mRNA電気穿孔し
た従来のDC、すなわち、GM−CSFおよびIL−4を補足した血清含有培地において
6〜7日間培養され、TNF−α、PGE、IL−1およびIL−6からなるカクテル
で成熟させたDCの刺激性能に焦点を合わせていた。自己インフルエンザ特異的T細胞活
性化の点において最終的結果を比較すると、抗原mRNA負荷従来DCおよび短期間培養
DCは同様の結果を与え、このプロトコールの妥当性が示された。
【0104】
結論として、抹消血単核細胞のこの組み合わされた血清非含有培養とポリ−I:C成熟
(および任意のmRNA電気穿孔)が、充分に成熟した生存力があり高度に刺激性のCD
83DCを迅速に発生させた。この生体外プロトコールにより、時間が重大に短くなり
、古典的培養プロトコールと比べて成熟DCの調製に用いることができる。これは、実験
室的実験に重要であるのみならず、臨床的免疫治療プロトコールにおいても重要である。
【実施例7】
【0105】
成人骨髄のmRNA電気穿孔
合計細胞:二千万NC
EPパラメーター:300V、150μF(mRNA設定)または260V、1050
μF(DNA設定)
細胞を、IMDM中で2回洗い、電気穿孔洗浄緩衝液(Electroporatio
n Wash Buffer)中で1回洗い、Optimix培地中、5百万細胞/20
0μlで再懸濁した。EGFP mRNA20μgを、電気穿孔直前に細胞に添加した。
DNA設定を用いた場合、Optimix(登録商標)300μlを細胞に添加した(合
計体積500μl)。ショック後、細胞を直ちに、IL−3、IL−6および幹細胞因子
を補足した暖かい培養培地(IMDM,FCS10%)3mlに入れた。EGFP分析は
24〜96時間目に、表現型分析はFACSにより96時間目に行った。結果を表6に要
約する。
【表6】

【0106】
この実験は、本発明のmRNA電気穿孔技術が、ヒト骨髄単核細胞を効率25〜30%
まで形質移入することができることを示している。骨髄フラクション(CD33+細胞)
において、特に単核細胞フラクション(CD14+細胞)、および造血幹細胞を含む造血
前駆体フラクション(CD34+細胞)において、高度のEGFP発現が観察された。リ
ンパ球フラクション(CD7+およびCD19+細胞)において、低いが矛盾のない形質
移入水準が観察され、抹消血において得られたデータに一致していた(図22A〜E参照
)。
【実施例8】
【0107】
マウス胎児幹細胞のmRNA電気穿孔
合計細胞:千五百万ES細胞
ESパラメーター:300V,150μF(mRNA設定)
五百万のES細胞を10/6に融解し、ゼラチンコートした75cmフラスコ内の培
地に入れ、三百万のマイトマイシンC処理マウス胎児線維芽細胞(MEF)フィーダー細
胞で48時間処理した。次に、ES細胞をトリプシン処理し、DMEM中で3回洗い、電
気穿孔洗浄緩衝液中で1回洗い、Optimix培地中に七百五十万細胞/200μlで
再懸濁した。EGFP mRNA20μgまたはRNase非含有水(擬(mock))20
μlを、電気穿孔の直前に細胞に添加した。ショック後、細胞を直ちに、百万MEFフィ
ーダー細胞をES細胞培地8mlに添加してまたは添加しないで、ゼラチンコートした2
5cmフラスコ内に入れた(DMEM,FBS15%,グルタミン,ソディウムピルベ
ート,NEAA,β−MEおよび抗生物質)。EGFP蛍光を、EPの24時間後に蛍光
顕微鏡検査により調べ、同時にEGFPおよび表現型分析を、EPの48時間後にFAC
Sにより行った(結果を、図23AおよびBに示す)。
【0108】
この実験により、本発明のmRNA電気穿孔技術が、マウス胚幹(ES)細胞を効率9
0%を超える水準まで形質移入することができることが示され、マウスES細胞をおよび
おそらくヒトES細胞をも一時的に遺伝的に修飾する有効な手段が示されている。このこ
とは、マスター調節遺伝子の導入遺伝子発現によりES細胞の分化を制御するのに有用で
あり得、分化を、試験管内で分化した細胞および組織の大規模発生のための異なる系統に
ゆがめさせ、または偏向させる。
【実施例9】
【0109】
成人末梢血のmRNA電気穿孔
合計細胞:千万NC
ESパラメーター:300V,150μF(mRNA設定)
新鮮なPBMCを、IMDM中で2回洗い、電気穿孔洗浄緩衝液中で1回洗い、Opt
imix培地中に五百万細胞/200μlで再懸濁した。
【0110】
EGFP mRNA20μgまたはRNase非含有水(擬(mock))20μlを、電気
穿孔の直前に細胞に添加した。ショック後、細胞を直ちに、暖かい培養培地(IMDM、
10%FCS)3ml中に入れた。同時にEGFPおよび表現型分析を、24時間後にF
ACSにより行った(結果を、図24A〜Cに示す)。
【0111】
この実験により、本発明のmRNA電気穿孔技術が、ヒト末梢血単核細胞を効率4%ま
で形質移入することができることが示される。低いが矛盾のない形質移入水準が、主に、
単核細胞フラクション(CD14+細胞)において観察され、Tリンパ球(CD3+細胞
)およびナチュラルキラー(NK)細胞において低い程度に観察された。B細胞(CD1
9+細胞)は、現行の電気穿孔パラメーターを用いて形質移入することができず、この型
の細胞のさらなる最適化を保証する。
【実施例10】
【0112】
A:μs範囲でのmRNAの電気穿孔(ソフトパルス;通常法):未成熟(d6)また
は成熟(d7)Mo−DCを、それぞれOpti−Mem(登録商標)または洗浄溶液O
ptimix(登録商標)で1回洗った。細胞を、電気穿孔緩衝液(Opti−Mem(
登録商標)、Optimix(登録商標)または、Isoosomolar電気穿孔緩衝
液)中、1〜4×10/mlの最終細胞濃度に調節した。次に、細胞懸濁液0.2〜0
.8mlを、1.5ml反応管内で、IVT mRNA(〜20μg/2×10細胞)
と混合した。室温で最大3分間インキュベーションした後、細胞懸濁液を0.4cmギャ
ップ電気穿孔キュベット内に移した。Multiporator(登録商標)(Eppe
ndorf,Hamburg,ドイツ)またはECM830(登録商標)(Genetr
onics BTX,San Diego,CA,USA)を用いて電圧400およびパ
ルス時間500μsで細胞を刺激した。その直後、細胞懸濁液を6ウエルプレートに移し
た(1×10DC/ウエル/GM−CSFおよびIL−4を補足した培養培地3ml)
。未成熟DCの場合、IL−1β、IL−6、TNF−αおよびPGEを添加すること
により終末成熟を誘発した。FCM分析を、24〜96時間の範囲に行った。通常の設定
を表7に要約する。
【表7】

【0113】
B:μs範囲での電気穿孔によるMo−DCへのmRNA形質移入、電圧の形質移入効
率および生存度への影響:
Mo−DCの90%以上が、電圧400Vおよびパルス時間500μsを用いるEGF
P+であった(図25A)。電圧をさらに上げると、平均蛍光強度(MFI)の増加によ
り示されるように、導入遺伝子の発現を増加させた。速度論的分析は、電気穿孔の96時
間後でも、MFIが僅かにしか低下しなかったことを示した。細胞生存度をプロピジウム
ヨージド(propidium jodide)で決めると、電圧の上昇は、死んだ細胞の割合を僅かにしか
増加させなかったことが示された(図25B)。電気穿孔の96時間後でも電圧600V
を用いると、死んだ細胞の量は僅かに約16%である。
【0114】
C:パルス型の形質移入効率および表現型への影響:
指数関数的減衰または方形パルスを発する二つの電気穿孔機を比較すると、パルスの型
が、Mo−DCの電気穿孔を未成熟段階で行なう場合に形質移入効率に影響がないことが
示された(図26)。指数関数的減衰パルスと比較すると、方形パルスの発信は、電気穿
孔を成熟DCで行う場合、導入遺伝子の発現を高めた。表現型FCM−分析は、Mo−D
Cをその未成熟段階で電気穿孔し、続いて成熟カクテルIL−1β+IL−6+TNF−
a+PGE2を添加すると、成熟Mo−DCの電気穿孔と比べて導入遺伝子の発現を高め
たことを示した(図27)。この効果は、初期(CD83)に、および成熟Mo−DCの
晩期に現れる(CD25)表面抗原について示される。
【0115】
D:電気穿孔キュベット当たりの細胞数のスケールアップ:効率的に電気穿孔し得るキ
ュベット当たりの最大細胞数を決めるために、スケールアップ実験を行った。細胞懸濁液
の体積を増加させると、導入遺伝子の発現が僅かに増加した(図28A)。効率的電気穿
孔は、0.4cmギャップキュベットの最大体積0.8mlを用いて、32×10Mo
−DCまで可能であった。電気穿孔直後の細胞数の計算は、60%を超える回収率を示し
た(図28B)。24時間の培養時間後でも、失われた細胞は少量であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裸の線形ポリヌクレオチドの一種もしくは二種以上またはその混合物で造血細胞または幹細胞を形質移入する方法であって、造血細胞または幹細胞および形質移入すべき裸の線形ポリヌクレオチドを含む懸濁液を100〜250μFの静電容量、300〜600Vで100μs〜1msのソフトパルスを用いて電気穿孔することを含んでなる方法。
【請求項2】
ソフトパルスが、矩形波パルスまたは指数関数的減衰パルスである請求項に記載の方法。
【請求項3】
ソフトパルスが350〜500Vで300〜600μsである請求項に記載の方法。
【請求項4】
電気穿孔法が4mmキュベットにおいて行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法であって、形質移入すべき裸の線形ポリヌクレオチドが、修飾されたまたは修飾されていない、限定または非限定DNA、RNAまたはDNA−RNAハイブリッドを含む、前記方法。
【請求項6】
形質移入すべき裸の線形ポリヌクレオチドが、修飾されたかまたは修飾されていない、限定または非限定のRNAである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
裸の線形ポリヌクレオチドがmRNAである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法であって、
(i)懸濁液中の細胞の濃度が100〜1×10細胞/mlであり;および/または
(ii)形質移入すべき裸の線形ポリヌクレオチドの濃度が1×10−7〜1×10−5mmol/mlである、
前記方法。
【請求項9】
懸濁液中の細胞の濃度が1×10〜5×10細胞/mlである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
懸濁液中の細胞の濃度が4×10細胞/mlである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
形質移入すべき裸の線形ポリヌクレオチドの濃度が4×10−6〜6×10−6mmol/mlである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法であって、
(i)造血細胞または幹細胞が哺乳動物細胞であり、ならびに/または
(ii)幹細胞が該幹細胞の誘導体を含み、造血細胞が単核細胞、造血幹細胞およびそれらの誘導体、骨髄CD34前駆体由来樹状細胞、CD34前駆体由来ランゲルハンス細胞、および単核細胞由来樹状細胞(Mo−DC)を含む、
前記方法。
【請求項13】
哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
幹細胞が胚幹細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
造血細胞が未成熟Mo−DCと成熟Mo−DCとを含む単核細胞由来樹状細胞(Mo−DC)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
造血細胞がMo−DCであり、裸の線形ポリヌクレオチドがmRNAであり、形質移入を、低電圧、低静電容量および高細胞濃度で実施する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
形質移入を、250〜300Vの電圧、150〜250μFの静電容量および1×10〜4×10細胞/mlの細胞濃度で、7〜10msのパルス時間で行う、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1、5または16に記載の方法であって、裸の線形ポリヌクレオチドが、
(i)真核細胞中で発現すべきタンパク質またはペプチドをコードし、前記タンパク質またはペプチドは真核細胞中において機能を有してもまたは有さなくてもよく、線形ポリヌクレオチドが、腫瘍抗原、微生物抗原、ウイルス抗原、免疫刺激性または寛容原性分子、抗アポトーシス分子、接着およびホーミング分子、並びに抗原処理分子をコードし;
(ii)分化調整遺伝子、分化関連遺伝子および組織特異的遺伝子を含む機能的または調整配列である、
前記方法。
【請求項19】
造血細胞がヒト成熟Mo−DCであり、および/または形質移入すべき線形ポリヌクレオチドがmRNAであり、当該方法は、形質移入したMo−DCを、成熟刺激を提供することによりさらに成熟させることをさらに含んでよい、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
造血細胞がヒト未成熟Mo−DCであり、および/または形質移入すべき裸の線形ポリヌクレオチドがmRNAであり、当該方法は、形質移入した細胞を、成熟カクテルを提供することにより成熟させることをさらに含んでよい、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
成熟カクテルが、IL−1β、IL−6、TNF−α、PGE、リポ多糖、免疫刺激DNA配列、CD40リガンドおよびポリ−I:Cからなる群より選択される化合物の一種または二種以上を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
成熟カクテルがIL−1β、IL−6、TNF−αおよびPGEを含む混合物である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
さらに、形質移入細胞の凍結保存を含む、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図22E】
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【図22F】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−50395(P2011−50395A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265545(P2010−265545)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【分割の表示】特願2003−507290(P2003−507290)の分割
【原出願日】平成14年6月21日(2002.6.21)
【出願人】(503467159)エヌ.ヴイ.アントワープ イノベーティーセントラム (1)
【出願人】(503071185)
【Fターム(参考)】