説明

電気自動車の充電システム

【課題】電気自動車の航続距離は適正に確保する一方で、二次電池の延命化が実現可能な電気自動車の充電システムを提供する。
【解決手段】充電制御装置30は、蓄電池23の電池残量(SOC)が予め定めた閾値よりも低い状態で充電動作を開始し、その後、電池残量が前記閾値又はその近傍の値に到達した時刻t1に、連続充電動作を一時的に停止させSOCを前記閾値付近に維持する待機モードを実行するか否かを判定する。この待機モードの実行可否は、そのまま充電を継続した場合に満充電までに要する第1時間(t2〜t3)と、前記閾値へ到達した時刻t1と電気自動車20の使用開始予定時刻t4との時間差である第2時間とを比較することにより判定される。前記第2時間が前記第1時間よりも長い場合、充電制御装置30は、前記待機モードを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に備えられている二次電池に対して充電動作を行う充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車は普及しつつあるが、電気自動車の維持には車載電池である二次電池への充電動作が欠かせない。この充電動作を安全かつ確実に行わせるための各種の技術が提案されている。特許文献1には、車載電池に対して過度に急速充電が行われることに起因して、電池やトランス等が過剰昇温することを抑止する技術が開示されている。また、特許文献2には、車載電池が満充電状態となったことを的確に検知し、満充電後にさらに充電動作が継続されることを防止する技術が開示されている。
【0003】
ところで、電気自動車は、車載電池の容量の制限により、航続距離はガソリン車に比べて短い。このためユーザは、電気自動車での走行後に、次回の走行に備えて直ちに車載電池の充電を行うことが多い。結果として、車載電池は、満充電の状態で保持される期間が圧倒的に長くなる。しかしながら、車載電池として汎用されているリチウムイオン電池等の二次電池は、満充電状態のまま長期にわたって保存された場合、電池寿命が短くなってしまう特性を有している。例えば、一般的なリチウムイオン電池では、SOC(State of charge)が80%〜100%程度の高SOC領域で保存した場合と、50%〜80%程度の中SOC領域で保存した場合とを比較した場合、前者の方が、保存期間に対する電池の容量劣化度の上昇度合いが相当大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−57878号公報
【特許文献2】特開平10−257688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2は、車載電池の保護技術ではあるが、電池寿命の延命化を図るという観点の保護技術ではない。本発明は、上記の問題に鑑み、電気自動車の航続距離は適正に確保する一方で、二次電池の延命化が実現可能な電気自動車の充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の局面に係る電気自動車の充電システムは、電気自動車に搭載された二次電池に対する充電が実行可能な充電セッティングが行われた状態で、前記二次電池に対する充電動作を制御する充電制御手段と、前記二次電池の充電状態を検出する検出手段と、前記電気自動車の使用開始予定時刻の入力を受け付ける入力手段と、前記二次電池の電池残量についての閾値であって、満充電の電池残量よりも所定量だけ低い閾値を記憶する記憶手段と、を備え、前記充電制御手段は、前記二次電池の電池残量が前記閾値よりも低い状態で前記充電動作を開始し、その後、前記検出手段が検出する電池残量が前記閾値に到達したときに、そのまま充電を継続した場合に満充電までに要する第1時間と、前記閾値へ到達した時刻と前記使用開始予定時刻との時間差である第2時間とを比較し、前記第2時間が前記第1時間よりも長い場合に、前記二次電池の電池残量を実質的に増減させない待機モードを実行することを特徴とする(請求項1)。
【0007】
この構成によれば、前記第2時間が前記第1時間よりも長い場合に、前記二次電池の電池残量を実質的に増減させない待機モードが実行されるので、前記二次電池が使用開始予定時刻よりも過度に早く満充電に至ることが抑止される。つまり、前記二次電池が満充電の状態で長期間保持されることが抑止される。その結果、二次電池の劣化の進行が抑制され、二次電池の寿命を延伸させることができる。その一方で、使用開始予定時刻には前記二次電池が満充電の状態となるので、電気自動車の航続距離をフルに確保することができる。
【0008】
上記構成において、前記充電制御手段は、前記待機モードにおいて、充電電流の印加と遮断を繰り返すことで前記二次電池の電池残量を実質的に増減させないことが望ましい(請求項2)。
【0009】
この構成によれば、前記待機モードにおいて、前記二次電池の電池残量を容易に維持することができる。
【0010】
上記構成において、前記充電制御手段は、前記使用開始予定時刻に前記充電セッティングが解除されない場合に、充電電流を遮断して前記二次電池を自然放電させることが望ましい(請求項3)。
【0011】
この構成によれば、ユーザが電気自動車の使用をキャンセルした場合でも、前記二次電池が満充電状態で長期間保持されることを防止することができる。
【0012】
ここで、前記二次電池がリチウムイオン二次電池である場合、前記充電制御手段は、前記自然放電の後、前記検出手段が検出する電池残量が前記閾値又はその近傍の値に到達したときに、前記待機モードを実行することが望ましい(請求項4)。
【0013】
リチウムイオン二次電池は、過放電の状態が長く続くと電池特性が劣化する性質を有する。上記構成によれば、電池残量が前記閾値又はその近傍の値に到達したときに、前記待機モードが実行されるので、リチウムイオン二次電池が過放電の状態に至ることを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電気自動車の航続距離は適正に確保する一方で、二次電池の延命化が実現可能な電気自動車の充電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る電気自動車の充電システムの概要を模式的に示す図である。
【図2】電気自動車の二次電池の充電状態を示すグラフである。
【図3】充電制御手段の機能構成を示すブロック図である。
【図4】充電制御手段が実行する充電制御の態様(待機モード)を示すグラフである。
【図5】充電制御手段が実行する他の充電制御の態様を示すグラフである。
【図6】充電システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】充電システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電気自動車の充電システムSの概要を示す模式図である。本実施形態の充電システムSは、商用電力供給系統10から電力供給を受ける充電ステーション11を利用して、電気自動車20に充電を行わせるためのシステムである。
【0017】
商用電力供給系統10は、電力事業者により運営され、50Hz又は60Hzの商用交流電力を供給する送電系統である。充電ステーション11は、商用電力供給系統10から配電線101を通して商用電力を受電する受電設備12と、電気自動車20に充電を行わせる際の受電口となる充電コンセント13と、電気自動車20に備えられた二次電池(蓄電池23)に対する充電動作を制御する充電制御装置30(充電制御手段)とを含む。
【0018】
充電ステーション11は、一般家庭等に備えられる200V又は100Vの単相交流で電源とする普通充電設備でも、或いは、高電圧交流を電源とする急速充電設備でも良い。例えば電力事業者は、上記の如き充電ステーション11に対し、昼間電力料金の時間帯(7:00〜23:00)においては、通常の電力料金で電力を供給し、夜間電力料金の時間帯(23:00〜翌7:00)においては通常の電力料金よりも安価な電力料金で電力を供給する。
【0019】
電気自動車20は、充放電が可能な蓄電池23及びその充電コントローラ24が搭載され、当該蓄電池23の電気エネルギーを動力源とする自動車である。すなわち、蓄電池23は、図略の電動モータの電源、車両電装系統及びランプ系統等の電源となる。電気自動車20のボディには充電プラグが備えられている。この充電プラグには、充電ケーブル22の終端に取り付けられた充電コネクタ21が接続される。電気自動車20の充電プラグと充電コンセント13とが充電ケーブル22を介して電気的に接続されることで、蓄電池23に対する充電動作が実行可能な充電セッティング状態が形成される。
【0020】
蓄電池23は、図略のAC/DC変換部を介して商用電力で充電可能な二次電池であり、各種の二次電池を用いることができる。その中でも、リチウムイオン二次電池は、フル放電に至らない状態で充電を行う動作を繰り返しても充電電力量が低下しない特性を有していることから、本実施形態には好適である。この他、同様な特性を有するマグネシウムイオン電池も適用可能である。
【0021】
充電コントローラ24は、電気自動車20側に具備される自立的な充電制御部であって、前記AC/DC変換部から与えられる直流電力を用いて、蓄電池23に対する充電コントロールを行う。
【0022】
充電制御装置30は、電気自動車20の蓄電池23に対して前記充電セッティングが行われた状態で、蓄電池23に対する充電動作を充電ステーション11側において制御する。この充電制御装置30は、図1に示すように充電ステーション11に組み入れることができるが、充電ケーブル22の充電コネクタ21に搭載するようにしても良い。
【0023】
充電制御装置30は、大略的に、蓄電池23が満充電の状態で長い時間保存されないようにする制御を行う。先に説明した通り、一般的なリチウムイオン電池では、SOCが80%〜100%程度の高SOC領域で保存した場合と、50%〜80%程度の中SOC領域で保存した場合とを比較した場合、前者の方が、保存期間に対する電池の容量劣化度の進行度合いが相当大きくなる。このため、高SOC領域で蓄電池23が保存される期間を可及的に減らすことが望ましいのであるが、航続距離が比較的短い電気自動車20あっては、ユーザにおいて、次回の走行に備えて常に満充電状態にしておきたいという心理が働く。
【0024】
図2は、一般的なユーザに使用される電気自動車における、蓄電池の充電状態の一例を示すグラフである。ここでは、11:00頃に電気自動車の使用が開始され、15:00過ぎに走行が終わり、その後、直ちに蓄電池への充電が開始された例を示している。一般に、ガソリン自動車においても1日あたりの走行距離は短く、一つの調査では、全自動車のうちの80%は、一日の走行距離が40km未満であるという結果が得られている。この程度の走行距離を電気自動車に置き換えると、蓄電池の放電深度は最大で30%程度である。また、かかる蓄電池を満充電に至らせるのに必要な充電時間は、2時間程度である。図2は、このような典型例を示している。
【0025】
ユーザが、図2の例のように電気自動車を毎日使用すると仮定するならば、17:00頃に蓄電池は満充電となることから、17:00〜翌11:00頃の間において蓄電池は満充電状態で保持されてしまうことになる。このような使用態様では、蓄電池が高SOC領域で保存される時間が極めて長くなり、蓄電池の劣化が促進されてしまうことになる。
【0026】
本実施形態の充電制御装置30は、上述の問題を解消する制御を行う。充電制御装置30は、蓄電池23の電池残量が所定の閾値よりも低い状態で充電動作を開始し、その後、電池残量が前記閾値又はその近傍の値に到達したときに、連続充電動作を一時的に停止させる待機モードを実行するか否かを判定する。この待機モードの実行可否は、そのまま充電を継続した場合に満充電までに要する第1時間と、前記閾値へ到達した時刻と電気自動車20の使用開始予定時刻との時間差である第2時間とを比較することにより判定される。前記第2時間が前記第1時間よりも長い場合、充電制御装置30は、前記待機モードを実行する。
【0027】
図3は、充電制御装置30の機能構成を示すブロック図である。充電制御装置30は、入力部31(入力手段)と、制御装置32(充電制御手段)とを含む。制御装置32は、CPU(Central Processing Unit)を備え、所定のプログラムが実行されることで前記CPUは、SOC検出部33、状態検知部34、充電制御部35、モード設定部36及び閾値記憶部37を有するように機能する。
【0028】
入力部31は、充電ステーション11に備えられる操作ボタンやテンキー等からなり、電気自動車20の使用開始予定時刻の入力をユーザから受け付ける。この他、入力部31は、充電動作に関する各種の設定、後述する閾値記憶部37に記憶される電池残量についての閾値の入力等も受け付ける。
【0029】
制御装置32のSOC検出部33は、電気自動車20の蓄電池23の残容量を検知する。例えば、SOC検出部33は、充電コントローラ24とデータ通信を行い、蓄電池23の残容量に関する情報を取得する。なお、充電コントローラ24は、例えば蓄電池23の開放電圧を測定し、測定した開放電圧から当該蓄電池23の残容量を求める。これに代えて、SOC検出部33は、蓄電池23に対する充電回路に電流計を設置する、或いは、充電ケーブル22を流れる電流が発生する電磁界を検出する変流器を設置して、上記電流計若しくは変流器で計測される電流値を積分することで放電容量を算出し、これを定格満充電容量から減じることで残容量を算出するものであっても良い。
【0030】
状態検知部34は、電気自動車20に対する充電環境を検知する。例えば、状態検知部34は、電気自動車20の充電プラグと充電コンセント13とが充電ケーブル22で接続され、充電ステーション11による蓄電池23の充電が物理的に実行可能な状態(充電セッティング状態)となっているか否かを検知する。
【0031】
充電制御部35は、蓄電池23に対する充電動作を制御する。充電制御部35は、「通常充電モード」と、「待機モード」との少なくとも2モードで、蓄電池23に対する充電動作が実行可能とされている。通常充電モードでは、充電制御部35は、定電流定電圧方式若しくは定電流ステップダウン方式により充電動作を行わせる。これに対し待機モードでは、充電制御部35は、SOCを実質的に増減させず略一定値に保つための充電制御を行う。
【0032】
待機モードにおける充電制御は、例えば一定値に保つSOCを75%と定めた場合、充電動作により蓄電池23のSOCが75%に到達すると充電電流を遮断し、SOCが75%から所定値だけ低下すると充電動作を再開して充電電流を印加し、その後SOCが75%に到達すると充電電流を再び遮断するサイクルを繰り返す制御である。或いは、蓄電池23の自然放電によりSOCが75%を下回ると充電動作を行い、SOCが75%まで回復すると充電電流を遮断し、その後SOCが75%から所定値だけ低下すると充電動作を再開して充電電流を印加するというサイクルを繰り返す制御である。
【0033】
モード設定部36は、上記の通常充電モード、又は待機モードのいずれのモードにて充電制御部35に充電動作を実行させるかを決定する。この決定に際し、モード設定部36は、状態検知部34が充電セッティング状態を検知したタイミングで、入力部31から設定されている電気自動車20の使用開始予定時刻と、SOC検出部33が検出する蓄電池23のSOCとを参照する。また、閾値記憶部37に記憶される電池残量についての閾値も参照する。
【0034】
閾値記憶部37は、蓄電池23の電池残量についての閾値であって、満充電の電池残量よりも所定量だけ低い閾値を記憶する。リチウムイオン二次電池において、高SOC領域、中SOC領域及び低SOC領域を区別するならば、SOCが100%〜80%の場合が高SOC領域、80%〜50%が中SOC領域、50%以下が低SOC領域となる。前記閾値は、高SOC領域と中SOC領域とを区画するSOC(80%)よりも若干低い値、例えば75%に設定される。
【0035】
高SOC領域は、上述の通り、リチウムイオン二次電池の劣化が急激に進行する領域である。従って、高SOC領域の状態で蓄電池23が長時間保存されることを回避すべきである。一方、中SOC領域は、リチウムイオン二次電池の劣化が起こり難い領域である。また、低SOC領域は、リチウムイオン二次電池が放電終止電圧に至るまでの放電、つまり過放電に注意を払うべき領域であり、低SOC領域の状態での蓄電池23の長時間保存も回避すべきである。以上のことから、蓄電池23を長時間保存する場合は、中SOC領域内のSOCとすることが望ましい。さらに、中SOC領域の中でも上位領域(例えば70%〜80%の領域)で保持すれば、満充電に比較的短時間で到達できるのでより好ましい。これらの理由から、上記の「75%」という閾値は、一つの好適な閾値である。
【0036】
続いて、充電制御装置30により実行される充電制御の一例を図4、図5に基づき説明する。図4は、充電セッティング状態から電気自動車20の使用開始予定時刻までの間に行われる待機モードでの充電動作の一例を示すグラフである。ここでは、蓄電池23のSOC値の変化曲線41を示している。
【0037】
図4の例は、使用開始予定時刻がある時刻t4に設定され、蓄電池23のSOCが上記閾値(75%)以下の状態において充電セッティングが行われ、充電動作が開始された場合を想定している。時刻t1で蓄電池23のSOCが閾値に到達すると、モード設定部36は、時刻t1と時刻t4との時間差(第2時間)と、そのまま充電制御部35が通常充電モードで充電動作を継続した場合に満充電までに要する時間(第1時間)とを比較する。ここでは、前記第2時間が前記第1時間よりも長いので、モード設定部36は、充電モードを通常充電モードから待機モードに変更している。なお、前記第2時間が前記第1時間と同等又は短い場合は、そのまま通常充電モードで充電動作が継続される。さらに、充電セッティングの時点で閾値を超過している場合であって前記第2時間が前記第1時間よりも長い場合は、充電セッティング時から待機モードに入る。
【0038】
この場合、時刻t1で充電電流が遮断され待機状態に移行する。その後、SOC検出部33により定期的に蓄電池23のSOCが計測される。自然放電によりSOCが75%から所定値(2〜3%程度)だけ低下すると、充電制御部35が充電動作を再開して充電電流を印加し、SOCを回復させる。しかる後、SOCが75%に到達すると充電電流が再び遮断され、SOCが75%程度に維持される。
【0039】
続いて、蓄電池23のSOCを75%から100%とするのに要する時間(第1時間)に余裕時間αを加えた時間を、前記使用開始予定時刻t4から引いた時刻t2になると、モード設定部36は、充電モードを待機モードから通常充電モードに変更する。これにより、蓄電池23に対する連続的な充電動作が再開される。なお、余裕時間αはユーザが使用開始予定時刻t4より若干早く電気自動車20の使用を開始する場合を想定したもので、この余裕時間αの設定を省いてもよい。
【0040】
時刻t3で蓄電池23のSOCが100%に到達すると、充電制御部35による充電動作は完了する。以後、余裕時間αに相当する時間が待機時間となる。そして、使用開始予定時刻t4から電気自動車20の使用が開始されると、蓄電池23のSOCは徐々に低下する。時刻t5で電気自動車20の使用が終了し、充電セッティング状態とされると、上記と同様なルーチンが実行される。
【0041】
図4の例は、ユーザが使用開始予定時刻t4に予定通りに電気自動車20の使用を開始した場合の例であるが、ユーザが使用開始予定時刻t4に電気自動車20の使用を開始しなかったり、使用開始予定時刻を時刻t4よりも後の時刻に再設定したりすることがある。図5は、使用開始予定時刻t4以降に行われる待機モードでの充電動作の一例を示すグラフである。ここでも、蓄電池23のSOC値の変化曲線42を示している。
【0042】
時刻t4までは、図4の例と同じである。時刻t4でユーザが電気自動車20の使用を開始しない場合、つまり、状態検知部34が充電セッティング状態の解除を検知しない場合、充電制御部35は充電電流を遮断し、蓄電池23の自然放電を開始させる。これにより、徐々に蓄電池23のSOCは低下してゆく。
【0043】
自然放電が進行し、SOCが高SOC領域から中SOC領域に入り、上記閾値(75%)まで低下する時刻t6になると、モード設定部36は、充電モードを待機モードに設定する。これにより、蓄電池23のSOCは、図中の符号42Aの実線で示す通り、閾値付近の値に維持される。時刻t6において待機モードが実行されない場合、図中の符号42Bの点線で示す通り、自然放電がさらに進行してSOCは一層低下し、SOCが満充電に対して大きく離れてしまうことになる。そうすると、蓄電池23を満充電状態に復帰させるのに時間を要すると共に、過放電が問題となる低SOC領域にまでSOCが低下してしまう懸念もある。しかし、時刻t6以降は待機モードでSOCが維持されることから、このような不具合は生じない。以後、使用開始予定時刻が再設定された場合は、その時刻に合わせて満充電に至るよう、先に図4で説明した充電制御と同様な制御が実行されるものである。
【0044】
次に、充電制御装置30の動作を、図6、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。制御装置32の状態検知部34は、電気自動車20の蓄電池23に対し充電可能であるか否か、つまり充電ケーブル22が接続された充電セッティング状態であるか否かを判定する(ステップS1)。充電可能でない場合(ステップS1でNO)、充電制御装置30は、そのまま待機する。
【0045】
充電可能である場合(ステップS1でYES)、SOC検出部33は、充電コントローラ24とデータ通信を行い、蓄電池23のSOC情報を取得する(ステップS2)。そして、モード設定部36が、閾値記憶部37に格納されているSOCの閾値(例えばSOC=75%)を読み出し、取得した蓄電池23のSOCと比較する(ステップS3)。
【0046】
蓄電池23のSOCが閾値以下である場合(ステップS3でNO)、モード設定部36は充電モードを「通常充電モード」に設定する。そして、充電制御部35は、蓄電池23に対して通常充電モードで充電動作を開始する(ステップS4)。その後、SOC検出部33により、蓄電池23のSOCが定期的に検知され、モード設定部36はSOCが閾値を超過するか否かを判定する(ステップS5)。
【0047】
充電セッティング時において蓄電池23のSOCが閾値を超過している場合(ステップS3でYES)、或いは、通常充電モードの充電で蓄電池23のSOCが閾値を超過した場合(ステップS5でYES)、モード設定部36は、そのまま充電を継続した場合に満充電までに要する第1時間T1に余裕時間αを加えた時間を算出する(ステップS6)。そして、モード設定部36は、閾値に到達した現在の時刻から使用開始予定時刻までの第2時間T2と、上記第1時間T1+αの時間とを比較する(ステップS7)。
【0048】
第2時間T2の方が第1時間T1+αより長い場合(ステップS7でYES)、モード設定部36は充電モードを「待機モード」に設定する。以降、充電制御部35は、当該待機モードで充電動作を実行し、蓄電池23のSOCを、閾値付近で略一定に維持する(ステップS8)。この待機モードが実行される間、モード設定部36は上記ステップS7の判定を繰り返す。
【0049】
第2時間T2が第1時間T1+αと同等若しくは短い状態である場合(ステップS7でNO)、モード設定部36は充電モードを「通常充電モード」に設定する(ステップS9)。以降、充電制御部35は、当該通常充電モードで蓄電池23に対して充電動作を実行する。この充電動作は、蓄電池23が満充電になるまで継続される(ステップS10)。
【0050】
蓄電池23が満充電に至った後(ステップS10でYES)、モード設定部36は、使用開始予定時刻が到来しているか否かを判定する(ステップS11)。使用開始予定時刻が到来したら(ステップS11でYES)、モード設定部36は、状態検知部34が充電セッティングの解除を検知しているか否かを確認する(ステップS12)。
【0051】
充電セッティングが解除されていれば(ステップS12でYES)、ユーザが電気自動車20の使用を開始したことになるので、そのまま処理を終える。一方、充電セッティングが解除されていない状態であれば(ステップS12でNO)、モード設定部36は、充電制御部35に充電電流を遮断させる(ステップS13)。これにより、蓄電池23の自然放電が開始されることになる。
【0052】
次いで、モード設定部36は、蓄電池23のSOCが閾値以下、つまり中SOC領域まで低下したか否かを確認する(ステップS14)。SOCが閾値以下ではない場合(ステップS14でYES)、モード設定部36は、入力部31から使用開始予定時刻の再設定が有ったか否かを確認する(ステップS15)。使用開始予定時刻の再設定が有った場合(ステップS15でYES)、ステップS6に戻って、新たな使用開始予定時刻を基準として、同様な処理が行われる。一方、使用開始予定時刻の再設定が無い場合(ステップS15でNO)、ステップS12に戻って処理が繰り返される。
【0053】
これに対し、SOCが閾値以下であれば(ステップS14でYES)、モード設定部36は、充電モードを「待機モード」に設定する。以降、充電制御部35は、当該待機モードで充電動作を実行し、蓄電池23のSOCを、閾値付近で略一定に維持する(ステップS16)。そして、この待機モードを実行しつつ、ステップS15の確認を定期的に行うものである。
【0054】
以上説明した本実施形態に係る電気自動車20の充電システムによれば、蓄電池23が使用開始予定時刻よりも過度に早く満充電に至ることが抑止される。つまり、蓄電池23が満充電の状態で長期間保持されることが抑止される。その結果、蓄電池23の劣化の進行が抑制され、蓄電池23の寿命を延伸させることができる。その一方で、使用開始予定時刻には蓄電池23が満充電の状態となるので、電気自動車20の航続距離をフルに確保することができる利点がある。
【符号の説明】
【0055】
S 電気自動車の充電システム
11 充電ステーション
12 受電設備
13 充電コンセント
20 電気自動車
21 充電コネクタ
22 充電ケーブル
23 蓄電池(二次電池)
24 充電コントローラ
30 充電制御装置(充電制御手段)
31 入力部(入力手段)
32 制御装置(充電制御手段)
33 SOC検出部
34 状態検知部
35 充電制御部
36 モード設定部
37 閾値記憶部
44 充電制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車に搭載された二次電池に対する充電が実行可能な充電セッティングが行われた状態で、前記二次電池に対する充電動作を制御する充電制御手段と、
前記二次電池の充電状態を検出する検出手段と、
前記電気自動車の使用開始予定時刻の入力を受け付ける入力手段と、
前記二次電池の電池残量についての閾値であって、満充電の電池残量よりも所定量だけ低い閾値を記憶する記憶手段と、を備え、
前記充電制御手段は、
前記二次電池の電池残量が前記閾値よりも低い状態で前記充電動作を開始し、その後、前記検出手段が検出する電池残量が前記閾値に到達したときに、
そのまま充電を継続した場合に満充電までに要する第1時間と、前記閾値へ到達した時刻と前記使用開始予定時刻との時間差である第2時間とを比較し、前記第2時間が前記第1時間よりも長い場合に、前記二次電池の電池残量を実質的に増減させない待機モードを実行することを特徴とする電気自動車の充電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電気自動車の充電システムにおいて、
前記充電制御手段は、前記待機モードにおいて、充電電流の印加と遮断を繰り返すことで前記二次電池の電池残量を実質的に増減させないことを特徴とする電気自動車の充電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気自動車の充電システムにおいて、
前記充電制御手段は、前記使用開始予定時刻に前記充電セッティングが解除されない場合に、充電電流を遮断して前記二次電池を自然放電させることを特徴とする電気自動車の充電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電気自動車の充電システムにおいて、
前記二次電池がリチウムイオン二次電池であり、
前記充電制御手段は、前記自然放電の後、前記検出手段が検出する電池残量が前記閾値又はその近傍の値に到達したときに、前記待機モードを実行することを特徴とする電気自動車の充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−244663(P2012−244663A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109504(P2011−109504)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】