説明

電気自動車又はハイブリッド電気自動車用試験システム

【課題】1つのシステムによりEV又はHEV(HV)に搭載されるモータの試験とEV又はHEV(HV)に搭載されるバッテリの充放電を可能にする。
【解決手段】EV又はHEV(HV)に搭載されるモータ200の出力軸201が連結されるダイナモメータ2と、モータ200又はダイナモメータ2に電力を供給する電源装置3と、電源装置3の電力をダイナモメータ2及びモータ200に供給するモータ試験用回路L1と、EV又はHEV(HV)に搭載されるバッテリ300が接続されて、電源装置3の電力をバッテリ300に供給する又はバッテリ300の電力を排出するバッテリ充放電用回路L2と、モータ試験用回路L1とバッテリ充放電用回路L2とを切り替える回路切替機構4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車(EV)又はハイブリッド電気自動車(HEV)等に搭載されるモータの動作性能等を試験するための試験システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)又はハイブリッド電気自動車(HEV)等に搭載されるモータの動作性能等を試験するためのモータ試験システムとして、特許文献1に示すように、EV又はHEVに搭載されるモータを動力吸収部であるダイナモメータに機械的に接続してモータの発生トルクを計測し、当該モータの出力トルク等を測定するものが考えられている。この試験システムには、ダイナモメータに電力を供給するためのダイナモ用電源と、モータを駆動させるためのモータ用電源とが設けられている。
【0003】
一方で、EV又はHEVに搭載されるバッテリの充放電試験を行うバッテリ試験システムとして、特許文献2に示すように、バッテリの温度、電圧及び電流等のバッテリ情報に基づいて電池容量(SOC;State of Charge)を算出し、この電池容量のデータに基づいて充放電装置を制御して、バッテリの電池容量を一定に保持するようにするものが考えられている。この試験システムにはバッテリを充放電させるためのバッテリ用電源が設けられている。
【0004】
従来、EV又はHEV用モータ試験及びEV又はHEV用バッテリの充放電の両方を行う場合には、モータ試験用システム及びバッテリ充放電システムの両方を用いる必要がある。
【0005】
しかしながら、モータ試験用システム及びバッテリ充放電システムの両方を用いると、上記の通り、各システム専用の電源を準備する必要があり、設備コストが高くなってしまうだけでなく、その設置スペースも大きくなってしまう。また、近年では、実際にEV又はHEVにモータ及びバッテリの両方を搭載した状態を模擬して、EV又はHEVの全体性能を検査できるようにするため、モータ試験システムとバッテリ充放電システムとの両方を設置するようになりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−91410号公報
【特許文献2】特開2002−90431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、1つのシステムによりEV又はHEVに搭載されるモータの試験とEV又はHEVに搭載されるバッテリの充放電を可能にすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る電気自動車用試験システムは、電気自動車又はハイブリッド電気自動車に搭載されるモータの出力軸が連結されるダイナモメータと、前記モータ又は前記ダイナモメータに電力を供給する電源装置と、前記電源装置の電力を前記ダイナモメータ及び前記モータに供給するモータ試験用回路と、電気自動車又はハイブリッド電気自動車に搭載されるバッテリが接続されて、前記電源装置の電力を前記バッテリに供給する又は前記バッテリの電力を排出するバッテリ充放電用回路と、前記モータ試験用回路と前記バッテリ充放電用回路とを切り替える回路切替機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、電源装置に対してモータ試験用回路及びバッテリ充放電用回路を切り替え可能に構成しているので、モータ試験用回路を導通させることにより、モータの動作性能等を試験することができる。また、バッテリ充放電用回路を導通させることで、バッテリの充放電を行うことができる。このように1つのシステムによりEV又はHEVに搭載されるモータの試験とEV又はHEVに搭載されるバッテリの充放電を可能にすることができる。その結果、バッテリ充放電専用の電源装置を用意する必要が無いので、設備コストを削減することができるとともに、設置スペースを省スペース化することができる。さらに、バッテリ充放電用回路によってバッテリの充放電を行い、所望の電池容量(SOC)にしたバッテリをそのまま動かすことなく回路を切り替えてモータに接続することで、そのバッテリを用いたモータの試験を行うこともできる。
【0010】
前記バッテリ充放電用回路に設けられて、前記バッテリ充放電用回路を導通又は遮断するオンオフスイッチと、前記オンオフスイッチのオンオフ制御を行うスイッチ制御部とを備え、前記スイッチ制御部が、前記電源装置の電圧と前記バッテリの電圧との差が所定範囲内となった場合に前記オンオフスイッチをオンにすることが望ましい。なお、電源装置の電圧とは電源装置の出力電圧であり、バッテリの電圧とは端子間電圧である。これならば、電源装置の電圧とバッテリの電圧とが異なることによりバッテリ充放電用回路に生じる定格以上の大電流によりバッテリ等の例えばヒューズ等の遮断器が遮断して充放電ができないという問題を解決することができる。
【0011】
上記の電源装置の電圧とバッテリの電圧との差が最も顕著となるのは、モータ試験用回路からバッテリ充放電用回路に切り替えるときである。したがって、前記スイッチ制御部が、前記モータ試験用回路から前記バッテリ充放電用回路へ切り替える前は前記オンオフスイッチをオフとしており、前記モータ試験用回路から前記バッテリ充放電用回路へ切り替えた後において前記電源装置の電圧と前記バッテリの電圧との差が所定範囲内となった場合に、前記オンオフスイッチをオンにすることが望ましい。
【0012】
前記モータを電動機として駆動させることにより、前記ダイナモメータを発電機として駆動させて、前記ダイナモメータにより発電された電力を前記電源装置に蓄電するとともに、前記ダイナモメータを電動機として駆動させることにより、前記モータを発電機として駆動させて、前記モータにより発電された電力を前記電源装置に蓄電することが望ましい。これならば、エネルギをモータ試験用回路内で循環させることができるので、省エネルギ化を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、1つのシステムによりEV又はHEVに搭載されるモータの試験とEV又はHEVに搭載されるバッテリの充放電を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の電気自動車用試験システムの構成を示す図。
【図2】同実施形態のバッテリ充放電用回路の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係る電気自動車用試験システム100の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態の電気自動車用試験システム100は、電気自動車(EV)又はハイブリッド電気自動車(HEV)に搭載されるモータ200の動作性能試験、及びEV又はHEVに搭載されるバッテリ300の充放電を行うために用いられるものである。
【0017】
具体的にこのものは、図1に示すように、試験対象のモータ200の出力軸が連結されるダイナモメータ2と、モータ200及びダイナモメータ2に電力を供給する電源装置3と、この電源装置3の電力をダイナモメータ2及びモータ200に供給するモータ試験用回路L1と、試験対象のバッテリ300が接続されて、電源装置3の電力をバッテリ300に供給する又はバッテリ300の電力を排出するバッテリ充放電用回路L2と、バッテリ300をモータ200に接続するバッテリ−モータ接続回路L3と、モータ試験用回路L1とバッテリ充放電用回路L2とバッテリ−モータ接続回路L3とを切り替える回路切替機構4と、モータ200の動作性能試験をコントロールするモータ試験用コントローラ5と、バッテリ300の充放電をコントロールするバッテリ充放電用コントローラ6と、システム全体をコントロールする上位コントローラ7とを備えている。バッテリ300は、例えば鉛蓄電池等の複数の単電池を直列又は並列に接続してなる組電池である。なお、図1及び図2に示す各コントローラ等は信号ライン(破線で示している)により接続されており、各信号ラインで接続されたコントローラ等は相互に信号のやり取りを行う。なお、各コントローラ等は無線により相互に信号のやり取りを行うように構成しても良い。
【0018】
ダイナモメータ2は、その駆動軸21がモータ200の出力軸201とジョイント部材(不図示)を介して機械的に分離自在に連結されるものであり、例えば交流式発電機である。このダイナモメータ2は、駆動軸21がモータ200により回転されることにより電力を発生する発電機として機能するだけでなく、電源装置から電力が供給されることによって駆動軸21を回転して、当該駆動軸21に連結されたモータ200を発電機とする電動機として機能する。このダイナモメータ2はモータ試験用コントローラ5により駆動制御される。
【0019】
なお、このダイナモメータ2の駆動軸21に連結された出力軸201には、トルクセンサ8が設けられており、このトルクセンサ8により得られたトルク検出信号は、モータ試験用コントローラ5に出力される。
【0020】
電源装置3は、電力系統から受電した交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータ31と、当該AC/DCコンバータ31により変換された直流電力を交流電力に変換してダイナモメータ2に出力するためのDC/ACインバータ32と、前記AC/DCコンバータ31により変換された直流電力を充電する例えばコンデンサ等の蓄電部33と、当該蓄電部33に充電された直流電力又は前記AC/DCコンバータ31により変換された直流電力を所望の電圧値に変換するDC/DCコンバータ34と、それらをコントロールするための電源用コントローラ35とを備えている。
【0021】
電源用コントローラ35は、DC/DCコンバータ34を制御することで、電源装置3からモータ200又はバッテリ300に出力する直流電圧を調整するものである。具体的に電源用コントローラ35は、モータ試験モード(後述する回路切替機構4よりモータ試験用回路L1が導通する場合)では、モータ200(モータ用インバータ210)に出力する電源装置3の直流電圧値を調整し、バッテリ充放電モード(後述する回路切替機構4よりバッテリ充放電用回路L2が導通する場合)では、バッテリ300の所望の電池容量(SOC(State of Charge))に合わせて出力する電源装置3の直流電圧値を調整する。この電源用コントローラ35は、CPU、メモリ、入出力インターフェース等を備えた専用乃至汎用のコンピュータであり、前記メモリに格納された電源用制御プログラムに従ってCPUや周辺機器が協働することにより、DC/DCコンバータ34等を制御する。
【0022】
モータ試験用回路L1は、電源装置3のAC/DCコンバータ31とダイナモメータ2とを導通させるダイナモ用給電回路L11と、電源装置3のDC/DCコンバータ34とモータ200及びモータ用インバータ210とを導通させるモータ用給電回路L12とからなる。
【0023】
バッテリ充放電用回路L2は、電源装置3のDC/DCコンバータ34とバッテリ300とを導通させる回路である。
【0024】
バッテリ−モータ接続回路L3は、充放電されて所望のSOCとされたバッテリ300をモータ200に接続する回路である。
【0025】
回路切替機構4は、モータ試験用回路L1とバッテリ充放電用回路L2とを切り替えるスイッチ41と、バッテリ−モータ接続回路L3のオンオフを切り替えるスイッチ42とを有する。スイッチ41は、モータ試験用回路L1のうちモータ用給電回路L12とバッテリ充放電用回路L2との間に介在して設けられており、前記上位コントローラ7に設定された切替機構制御部71によって制御される。また、スイッチ42は、モータ試験用回路L1のうちモータ用給電回路L12とバッテリ−モータ接続回路L3との間に介在して設けられており、前記上位コントローラ7に設定された切替機構制御部71によって制御される。
【0026】
この切替機構制御部71は、例えばユーザからの入力信号を取得して電力を導通させる回路L1、L2、L3を切り替えることができる。その他、バッテリ充放電回路L2に設けられた給電コネクタ(不図示)にバッテリ300が接続されたことを検知するセンサ(不図示)を設けておき、このセンサの検知信号を取得して導通させる回路L1、L2を切り替えることもできる。また、切替機構制御部71は、後述するバッテリ用コントローラ310によりバッテリ300が所望のSOCになったことを検知して、スイッチ41が回路L1、L2の何れにも接続されない状態とするとともに、スイッチ42をオンしてバッテリ−モータ接続回路L3をオンにする。
【0027】
モータ試験用コントローラ5は、電気自動車用試験システム100におけるモータ試験全体を制御するものであり、CPU、メモリ、入出力インターフェース等を備えた専用乃至汎用のコンピュータであり、前記メモリに格納されたモータ試験用制御プログラムに従ってCPUや周辺機器が協働することにより、ダイナモメータ2及びモータ200等を制御する。
【0028】
具体的にモータ試験用コントローラ5は、以下のようにモータ試験を行うべくダイナモメータ2及びモータ200を制御する。つまり、モータ試験用コントローラ5は、予め入力された運転パターン(例えば10.15モードや11モード等の走行モード)に基づいて、アクセル操作量及びブレーキ操作量を求めて、トルク指令(加速、減速)を算出し、このトルク指令に基づいてモータ200を駆動制御する。そして、このとき発生する負荷トルクをトルクセンサ8により検出して、予め設定した電気自動車の慣性量及び走行抵抗から、そのとき発生する理論加速度を算出する。そして、この理論加速度を積分して得られる理論車両速度相当の回転数が得られるように、ダイナモメータ2を制御する。同時に、運転パターンに含まれる目標速度を前記理論車両速度とを比較し、その差がゼロとなるようにトルク指令値を制御することにより、目標速度パターンに応じた回転パターンでモータ200を回転させる。
【0029】
バッテリ充放電用コントローラ6は、電気自動車用試験システム100におけるバッテリの充放電を制御するものであり、CPU、メモリ、入出力インターフェース等を備えた専用乃至汎用のコンピュータであり、前記メモリに格納されたバッテリ充放電用制御プログラムに従ってCPUや周辺機器が協働することにより、電源装置3及びバッテリ300等を制御する。
【0030】
具体的にバッテリ充放電用コントローラ6は、バッテリ300に設けられたバッテリ用コントローラ310から得られるバッテリ情報に基づいて上位コントローラ7からの指示に従い、当該バッテリ300が所望の電池容量(SOC)となるように電源装置3を制御する。つまり、上位コントローラ7は、バッテリ300を所望の電池容量とするために電源装置3が出力すべき電圧及び電流をバッテリ充放電用コントローラ6を経由して電源用コントローラ35に出力する。この電圧データを取得した電源用コントローラ35は、この電圧及び電流データに基づいて電源装置3のDC/DCコンバータ34を制御する。
【0031】
なお、バッテリ用コントローラ(BCU:Battery Contorol Unit)310は、CPU、メモリ、入出力インターフェース等を備えた専用乃至汎用のコンピュータであり、前記メモリに格納されたバッテリ用制御プログラムに従ってCPUや周辺機器が協働することにより、バッテリ300の電流、電圧及び温度を検出するとともに、それらに基づいて電池容量(SOC)を算出する。
【0032】
上位コントローラ7は、電気自動車用試験システム100を用いてモータ試験を行うモータ試験モードとバッテリの充放電を行うバッテリ充放電モードとを切り替えるものであり、CPU、メモリ、入出力インターフェース等を備えた専用乃至汎用のコンピュータであり、前記メモリに格納されたモータ試験用制御プログラムに従ってCPUや周辺機器が協働することにより、モータ試験用コントローラ5及びバッテリ充放電用コントローラ6を管理するとともに、前記回路切替機構4を制御する切替機構制御部71として機能する。なお、上位コントローラ7とモータ試験用コントローラ5及びバッテリ充放電用コントローラ6とは有線又は無線により通信可能に構成されている。
【0033】
具体的に上位コントローラ7は、切替機構制御部71により、回路切替機構4のスイッチ41を切り替えるための制御信号をスイッチ41に出力して、モータ試験モードとバッテリ充放電モードとを切り替える。モータ試験モードにおいてはモータ試験用回路L1(具体的にはモータ用給電回路L12)が導通し、バッテリ充放電モードにおいてはバッテリ充放電用回路L2が導通する。
【0034】
しかして本実施形態の電気自動車用試験システム100は、図2に示すように、バッテリ充放電用回路L2に設けられたオンオフスイッチ9と、当該オンオフスイッチ9をオンオフ制御するスイッチ制御部72とをさらに有する。
【0035】
オンオフスイッチ9は、DC/DCコンバータ34の出力側に設けられたLCフィルタからなる出力フィルタ341よりもバッテリ側に設けられており、本実施形態では、バッテリ300の正極端子側に接続されるラインL21及び負極端子側に接続されるラインL22それぞれにスイッチ91、92を設けることで構成されている。
【0036】
スイッチ制御部72は、前記上位コントローラ7に設定されており、モータ試験用回路L1からバッテリ充放電用回路L2へ切り替える前はオンオフスイッチ9をオフとしており、モータ試験用回路L1からバッテリ充放電用回路L2へ切り替えた後において電源装置3の出力電圧とバッテリ300の端子間電圧とが同一又はその差が所定範囲内となった場合に、オンオフスイッチ9をオンにする。
【0037】
このスイッチ制御部72は、オンオフスイッチ9よりも電源装置側の電圧、つまり電源装置3のDC/DCコンバータ34の出力電圧を検知する電圧センサ10からの電圧検出信号を取得するとともに、オンオフスイッチ9よりもバッテリ側の電圧、つまりバッテリ300に内蔵されたBMC310から端子間電圧を示す電圧信号を取得する。そして、これら取得した電源装置3の出力電圧とバッテリ300の端子間電圧とが同一又はその差が所定範囲内であるか否かを判断する。なお、所定範囲内とは、バッテリ300内に内蔵された遮断器(例えばヒューズ)320によりバッテリ300内の回路が遮断されない程度の電流値となる電圧差である。
【0038】
所定範囲内でない場合には、上位コントローラ7は、バッテリ充放電用コントローラ6に制御信号を出力し、バッテリ充放電用コントローラ6は、電源装置3の出力電圧を制御する電源用コントローラ35に制御信号を出力して、電源装置3の出力電圧が、バッテリ300の端子間電圧となるようにする。或いは、上位コントローラ7は、バッテリの端子間電圧を制御するBCU310に制御信号を出力して、バッテリ300の端子間電圧が、電源装置3の出力電圧となるようにする。
【0039】
具体的に上位コントローラ7は、HCUを経由して図2に示すスイッチS1、S3をオン、スイッチS2にするとともに、スイッチ91、92をオフにする。そうすると、バッテリ内の電池330からコンデンサに電力が供給されて、当該コンデンサ340の容量に応じて電荷が溜まり電圧(例えば300V)が生じる。そして、上位コントローラ7は、コンデンサ340に電荷が溜まった後、HCUを経由してスイッチS1をオフ、スイッチS2、S3をオンにするとともに、スイッチ92をオン、スイッチ91をオフにして、DC/DCコンバータ34の出力電圧(コンバータ34の出力端子間電圧)がコンデンサ340の電圧(例えば300V)となるようにDC/DCコンバータ34を電圧制御する。そして、DC/DCコンバータ34の出力電圧とコンデンサ340の電圧とが同じ電圧になった後に、スイッチ91をオンにする。
【0040】
なお、スイッチ92をオン、スイッチ91をオフにして、DC/DCコンバータ34の出力電圧を制御しているので、コンデンサ340の基準電圧とDC/DCコンバータ34の基準電圧とを共通化することができ、コンデンサ340の電圧とDC/DCコンバータ34の出力電圧とを合わせ易くすることができる。また、バッテリ300内に設けたスイッチS1〜S3、遮断器320、コンデンサ340等により、バッテリ300内への突入電流を防ぐことができる。
【0041】
また、本実施形態の電気自動車量試験システム100は、モータ試験モードにおいて、モータ200を電動機として駆動させることにより、ダイナモメータ2を発電機として駆動させて、ダイナモメータ2により発電された回生電力を電源装置3内の蓄電部33に蓄電するようにしている(図1の矢印B)。同じくモータ試験モードにおいて、ダイナモメータ2を電動機として駆動させることにより、モータ200を発電機として駆動させて、モータ200により発電された回生電力を電源装置3内の蓄電部33に蓄電するようにしている(図1の矢印A)。このようにモータ試験モードにおいて発生する回生電力を蓄電部33に蓄電可能に構成しているので、エネルギをモータ試験用回路L1内で循環させることができ、省エネルギ化を実現することができる。
【0042】
このように構成した本実施形態に係る電気自動車用試験システム100によれば、回路切替機構4によりモータ試験用回路L1を導通させることで、モータ200の動作性能等を試験することができる。また、回路切替機構4によりバッテリ充放電用回路L2を導通させることで、バッテリ300の充放電を行い、所望の電池容量(SOC)に調節することができる。このように1つのシステムにより、EV又はHEVに搭載されるモータ200の試験とEV又はHEVに搭載されるバッテリ300の充放電とを可能にすることができる。したがって、バッテリ充放電専用の電源装置を用意する必要が無いので、設備コストを削減することができるとともに、設置スペースを省スペース化することができる。さらに、バッテリ充放電用回路L2によってバッテリ300の充放電を行い、所望の電池容量(SOC)にしたバッテリ300をそのまま動かすことなくバッテリ−モータ接続回路L3に切り替えてバッテリ300とモータ200とを接続することで、そのバッテリ300を用いたモータ200の試験を行うこともできる。
【0043】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0044】
例えば、電源用コントローラのメモリに実際のバッテリの挙動を示す挙動プログラムを格納して、モータ試験装置においてモータに給電する電源装置をバッテリ模擬装置として機能させても良い。なお、挙動プログラムは、バッテリをモデル化したデータを用いて構成されている。電源用コントローラは、この挙動プログラムに基づいて、DC/DCコンバータ等を制御する。
【0045】
また、前記実施形態の電源装置は、ダイナモメータ及びモータで共通のものを用いているが、それぞれ異なる電源装置を用いても良い。この場合、バッテリの充放電に用いる電源は、それらのうち一方を用いればよい。
【0046】
さらに、前記実施形態では切替機構制御部によりスイッチを制御するように構成しているが、回路切替機構が機械式スイッチを有しており、この機械式スイッチをユーザが手動で切り替えるように構成しても良い。
【0047】
さらに、前記実施形態の電気自動車用試験システムにおいて、バッテリの充放電特性試験、サイクル寿命試験等を行うように構成しても良い。具体的には、バッテリ充放電用コントローラに充放電特性試験プログラム又はサイクル寿命試験プログラムを格納しておき、これらのプログラムに従ってCPUや周辺機器を協働させて試験を行う。
【0048】
その上、前記実施形態の各コントローラは、それぞれ機能ごとに物理的に別体に形成されて有線又は無線により通信可能に構成しても良いし、上位コントローラとモータ試験用コントローラ又はバッテリ充放電用コントローラとを物理的に一体に構成しても良い。また、各コントローラが発揮する機能を別のコントローラで発揮するように構成しても良い。
【0049】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
100・・・電気自動車用試験システム
200・・・モータ
201・・・出力軸
300・・・バッテリ
2 ・・・ダイナモメータ
3 ・・・電源装置
4 ・・・回路切替機構
L1 ・・・モータ試験用回路
L2 ・・・バッテリ充放電用回路
71 ・・・切替機構制御部
72 ・・・スイッチ制御部
9 ・・・オンオフスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車又はハイブリッド電気自動車に搭載されるモータの出力軸が連結されるダイナモメータと、
前記モータ又は前記ダイナモメータに電力を供給する電源装置と、
前記電源装置の電力を前記ダイナモメータ及び前記モータに供給するモータ試験用回路と、
電気自動車又はハイブリッド電気自動車に搭載されるバッテリが接続されて、前記電源装置の電力を前記バッテリに供給する又は前記バッテリの電力を排出するバッテリ充放電用回路と、
前記モータ試験用回路と前記バッテリ充放電用回路とを切り替える回路切替機構とを備える電気自動車用試験システム。
【請求項2】
前記バッテリ充放電用回路に設けられて、前記バッテリ充放電用回路を導通又は遮断するオンオフスイッチと、
前記オンオフスイッチのオンオフ制御を行うスイッチ制御部とを備え、
前記スイッチ制御部が、前記電源装置の電圧と前記バッテリの電圧との差が所定範囲内となった場合に前記オンオフスイッチをオンにする請求項1記載の電気自動車用試験システム。
【請求項3】
前記スイッチ制御部が、前記モータ試験用回路から前記バッテリ充放電用回路へ切り替える前は前記オンオフスイッチをオフとしており、前記モータ試験用回路から前記バッテリ充放電用回路へ切り替えた後において前記電源装置の電圧と前記バッテリの電圧との差が所定範囲内となった場合に、前記オンオフスイッチをオンにする請求項2記載の電気自動車用試験システム。
【請求項4】
前記モータを電動機として駆動させることにより、前記ダイナモメータを発電機として駆動させて、前記ダイナモメータにより発電された電力を前記電源装置に蓄電するとともに、
前記ダイナモメータを電動機として駆動させることにより、前記モータを発電機として駆動させて、前記モータにより発電された電力を前記電源装置に蓄電する請求項1、2又は3記載の電気自動車用試験システム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−3138(P2013−3138A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86589(P2012−86589)
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【出願人】(592096443)ホリバ インスツルメンツ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】HORIBA INSTRUMENTS INCORPORATED
【Fターム(参考)】