説明

電気融着継手とその製造方法

【課題】従来、電気融着継手は継手本体の両側に発熱手段として電熱線巻回部を左右に分割して設定し、一方の電熱線巻回部から他方の電熱線巻回部に渡る渡り線部分の電熱線は単線となり、特定の支持構造のない極めて不安定な状態のまま、外筒と内筒の間に敷設され、渡り線部分の浮き上がり、断線などの故障が起こりやすいという問題があった。
【解決手段】、電気融着継手の内筒2の中央部に、軸方向に並列する係架突起25a、25bを形成し、両側に設定する電熱線螺旋状巻回部の一方の巻回終端部から他方の電熱線螺旋状巻回始端部に渡る渡り線部を、前記係架突起に係架して内筒を構成し、渡り線を内筒表面に固定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリエチレン管等、熱可塑性を有する合成樹脂管を電熱線の発熱によって融着接合する電気融着継手とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン管等の熱可塑性管材を継手接続する場合、接続しようとする配管材のそれぞれの端部を、それぞれ継手の受口に嵌入した状態で継手受口と接続される配管材との界面を溶融させて融着する電気融着継手(EF継手)が幅広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
水道配管等を継手接合する電気融着継手ついては、例えば特許文献1、2に示されるように、電熱線を螺旋状に巻回した発熱手段を管受口内周部に埋設し、継手本体の両側から継手する合成樹脂管の端部を管受口に挿入すると共に、発熱手段に通電して発熱させ、管受口の内周部及びこれに接する合成樹脂管の外周部の樹脂を溶融、融着するように構成されてきている。
【0004】
また、その製造については、特許文献3に記載のように、金型のコアピン(中子)の外周面に電熱線を直接巻き付けて金型の外型内に挿入し、その間に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出充填し、コアピンを抜き去る方法、特許文献4に記載のように、電気融着継手の内面を形成する内筒を予め成形し、内筒の外周面に電熱線を螺旋状に巻回した後に金型のコアピンにセットして溶融樹脂を射出充填する方法等が行われている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−230464号公報
【特許文献2】特開平5−157190号公報
【特許文献3】特開昭63−71323号公報
【特許文献4】特開昭59−157190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、内周面に継手する合成樹脂管の端部を突合する内周突条を一体的に成形した内筒を、コイル加工した電熱線に挿通し、コイルを内筒の両側に分割固定して電熱線の両端部に端子を設定し、これを金型のコアピンにセットして、その外周側に外筒を成形し、或いは内筒の外周に、両端側に電熱線を巻回するための一次成形体を成形した後、その外周面に二次成形体を成形するなどの方法が行われてきている。
【0007】
その場合、何れにしても、継手本体の両側に発熱手段として電熱線巻回部を分割して設定することになり、一方の電熱線巻回部から他方の電熱線巻回部に渡る渡り線部分の電熱線は単線となり、特定の支持構造のない極めて不安定な状態のまま、外筒と内筒の間に敷設されることとなる。
【0008】
そのまま、外筒の成形が行われると、渡り線が射出成形樹脂の圧力により外筒の表面側に浮き上がったり、断線したりする問題がある。電熱線が浮き上がった状態で通電されると電熱線の熱で継手表面が溶融し、故障や事故にも繋がりかねないし、断線の場合は通電しないので電気融着継手の製品として成り立たない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記した課題に対応しようとするものであり、内筒の中央部に、軸方向に並列して電熱線の屈曲部を係架固定する所要の係架突起を形成し、両側に設定する電熱線螺旋状巻回部の一方の巻回終端部から他方の電熱線螺旋状巻回始端部に渡る渡り線部を、係架突起に掛けて内筒を構成し、渡り線を内筒外表面に固定するようにした。
【0010】
すなわち、軸方向に並列する一対の係架突起を形成して、内筒の両側に設定する電熱線螺旋状巻回部の一方の巻回終端部から他方の電熱線螺旋状巻回始端部に渡る渡り線の屈曲部をこの係架突起に掛けて渡すことにより、渡り線が内筒の外表面に固定されて外筒成形時の射出成形樹脂の圧力にも外筒の表面側に浮き上がったり、断線したりするのを完全に防止できるようにした。
【0011】
更に、係架突起形成部の径方向に並列する位置に、継手する合成樹脂管の端部を突合する内周突条を形成する樹脂材料が流入する流入孔を穿設し、外筒の成形時に基本となる内筒の中央部に、継手する合成樹脂管の端部を突合する内周突条を形成する樹脂材料が流入することにより、外筒の成形と同時に同流入孔から樹脂材が内筒の内周面に回って内周突条が形成されるようにして、外筒を形成する樹脂が外側と内側から内筒を抱え込んで密着し内筒と外筒の一体性が強化されるようにした。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。1は電気融着継手の継手本体で、内筒2の外表面を外筒3が包着する形で形成され、外筒の両側端が管受口21、22を構成し、継手する合成樹脂管P1、P2の端部がそれぞれ双方から挿入されて、内筒の内周面中央部に形成された内周突条23に突合するまで挿入される。
【0013】
内筒2の外表面には、長手方向中央部に、継手する合成樹脂管の端部を突合する内周突条23を形成する樹脂材料が流入する流入孔24aが穿設され、これと径方向における中間位置に軸方向に直線状に並列する一対の係架突起25a、25bが形成されている。なお、この係架突起の形成位置は直線状でなく任意ずらした位置に並列するようにしても良いことは勿論である。
【0014】
また、内筒2の両側には、電熱線4を螺旋状に巻回するための螺旋溝5a、5bが刻設されており、電熱線4は螺旋溝5aから巻回されて、その終端部から渡り線4aとして係架突起25aの茎部に掛け、更に同25b茎部に斜めに掛け渡されて螺旋溝5bに巻回される。そしてその始端部と終端部にはそれぞれ、端子6が設定される。
なお、係架突起は、図示のように頂部に傘状の張出部を設けなくても電熱線4を係架できるものであればよい。また、電熱線4の巻回状況により、25a、25bの他にも必要に応じて所要部に設定して電熱線4を内筒2の外表面にしっかりと固定するようにする。
【0015】
このように構成された内筒2は、外筒3の成形金型(図示しない。)の成形スペースに、コアピンにセットされて収容され、樹脂材料の射出により、その外周側に外筒3が成形されるが、その際、射出される樹脂材料は流入孔24a、24bを通じて内筒2の内周面に回り、内筒2のコアピン(中子)に形成された成形溝に流入して内周突条23が外筒3と一体成形される。
【0016】
このように形成された電気融着継手は、継手本体1の両側の管受口21、22から継手する合成樹脂管P1、P2の端部を、それぞれ双方から、内筒の内周面中央部に形成された内周突条23に突合するまで挿入し、端子6を通じて電熱線4に通電して螺旋溝5aの電熱線巻回部及び螺旋溝5bの電熱線巻回部を発熱させ、管受口21、22の内周部及びこれに接する合成樹脂管P1、P2の外周樹脂を溶融、融着するものである。

【実施例2】
【0017】
図5はT型継手(チーズ)に関する実施例を示すもので、水平方向に接合される継手部は、垂直方向の接合管を受け入れるスペース間隔を空けて係架突起25a、25bが形成され、この並列直線に対して径方向に90度ずれた軸線上に垂直方向の接合管からの流体流入口7が開口されるので、渡り線はそれ以上の長さ係架突起25a、25b間の内筒外周壁面を緊張敷設されることになる。
【0018】
係架突起25a、25bが存在しない場合、電熱線の渡りは極めて不安定な状態で射出圧に曝され、浮き上がりや断線を防止することが極めて困難であったが、係架突起25a、25bに係架することにより、T型継手の場合でも、電熱線の浮き上がりや断線を確実に防止することができるものである。
【0019】
71は垂直方向の接合管P3の管受口72を構成する内筒で、電熱線巻回部は分割されることなく、単体で内筒71にコイル巻回されて始端部と終端部に端子6,6が設定され、外殻体に形成される突合部74まで挿入された接合管P3の外周樹脂を溶融、融着するものである。73は、実施例1における流入孔24bに対応する流入孔であるが、垂直方向接合管からの流体流入口7に対応する幅の内周突条が形成され、接合管P1、P2からの流体流通路が確保されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による電気融着継手の実施例を示すもので、要部を透視或いは縦断面として内筒と外筒の関係及び全体構造を示し、電熱線については渡り線部分について突起への係架状況を透視状態として示した継手全体の縦断面側面図
【図2】同じく、電熱線巻回螺旋溝を刻設し、電熱線を巻回して外筒の成形金型コアピンにセットする状態に形成した内筒の側面図
【図3】同じく、内筒に形成された係架突起の拡大側面図
【図4】同じく、両側から接合管を挿入れし、端面を内筒の内周突条に突合させて継手した状態を示す電気融着継手の全体縦断面側面図
【図5】同じく、T型継手について要部を透視或いは縦断面として内筒と外筒の関係及び全体構造を示す縦断面側面図
【符号の説明】
【0021】
1 電気融着継手の継手本体
2 電気融着継手の内筒
21 1次側管受口
22 2次側管受口
23 内周突条
24 内周突条成形樹脂流入孔
25 係架突起
26 係架突起の茎部
3 電気融着継手の外筒
4 電熱線
5 電熱線を巻回する螺旋溝
6 電熱線の通電端子
7 T型継手における垂直接合管流体の流入開口
71 T型継手における内筒
72 T型継手における垂直接合管の管受口
73 T型継手における内周突条成形樹脂流入孔
P 継手する合成樹脂管(接合管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に、軸方向に並列する係架突起を形成し、両側に設定する電熱線螺旋状巻回部の一方の巻回終端部から他方の電熱線螺旋状巻回始端部に渡る渡り線の屈曲部を、前記係架突起に掛けて渡り線を外表面に固定した内筒を用いて成形した電気融着継手
【請求項2】
内筒の中央部に、継手する合成樹脂管の端部を突合する内周突条を形成する樹脂材料が流入する流入孔を穿設し、外筒の成形時に、外筒の成形と同時に同流入孔から樹脂材が内筒の内周面に回って内周突条が形成されるようにして、外筒を形成する樹脂が外側と内側から内筒を抱え込んで密着するようにした請求項1記載の電気融着継手
【請求項3】
内筒の中央部に、継手する合成樹脂管の端部を突合する内周突条を形成する樹脂材料が流入する流入孔を穿設すると共に、軸方向に並列する係架突起を形成し、内筒の両側に設定する電熱線螺旋状巻回部の一方の巻回終端部から他方の電熱線螺旋状巻回始端部に渡る渡り線の屈曲部を、内筒に形成した前記係架突起に掛けて電熱線を巻回し、電熱線の両端に電熱端子を設定した内筒にコアピンを内装して外表成形器に設定して、外表面部を射出成形することを特徴とする電気融着継手の製造方法
【請求項4】
内筒の両側に螺旋状の巻回溝を形成して電熱線を巻回すようにした請求項3記載の電気融着継手の製造方法


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−104508(P2013−104508A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249912(P2011−249912)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000201593)前澤給装工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】