説明

電気車用変速システム

【課題】構造が簡単で、廉価に製作することができる、新たな1段/2段変速構造を備えた電気車用変速システムを提供する。
【解決手段】モータ100と連結されて回転する入力シャフト120と、入力シャフト120に設置され、両側面に1段挿入ユニット165aと2段挿入ユニット165bが突出形成されたシンクロナイジングギヤ155と、シンクロナイジングギヤ155の両側面と対向するように配置された1段ギヤ115及び2段ギヤと110、1段ギヤ115に固定され、1段挿入ユニット165aが挿入される1段締結ホール135が形成された1段プレート130と、2段ギヤ110に固定され、2段挿入ユニット165bが挿入される2段締結ホール160が形成された2段プレート170と、シンクロナイジングギヤ155を軸方向に動かす変速シャフト140と、を有して構成されている。これにより、モータの回転が、1段ギヤまたは2段ギヤに伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動力を効率よく駆動ホイールに伝達し、その入力軸のトルク及び回転速度を効果的に増減できる電気車用変速システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車は、モータの特性が優れていて、単一ギヤ比を有する減速機だけで作動したり、1段及び2段で作動するのが大部分である。単一減速機だけを使用する場合、モータの容量が大きくなければならないので、モータの性能を効率的に利用するために、2段変速システムが適用されている。
【0003】
電気自動車は、バッテリーの保存能力に限界があり、最大走行距離が短いため、動力の伝達効率が最大化される手動変速機が幅広く適用されてきたが、最近、自動変速機を備えた電気自動車が開発されている。〔例えば、特許文献1〜3参照〕
【0004】
運転の便宜のために、1段と2段を自動的に変速するシステムが開発されていて、既存のシンクロナイジング機構及びFアクチュエーターが利用されている。一方、シンクロナイジング機構は、その構造が複雑で、高価であるため、構造が比較的簡単で、廉価な新たな変速機構が研究開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−176409号公報
【特許文献2】特開平08−156653号公報
【特許文献3】特開2004−150450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の事情に鑑みてなされた本発明の目的は、構造が簡単で、比較的廉価で製作することができる、新たな1段/2段変速構造を備えた電気車用変速システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気車用変速システムは、モータと連結されて回転する入力シャフトと、入力シャフトに設置され、入力シャフトと共に回転すると共に、その軸方向にスライディングするように両側面に1段挿入ユニットと2段挿入ユニットがそれぞれ突出して形成されたシンクロナイジングギヤと、シンクロナイジングギヤの両側面と対向するように配置されて、入力シャフトにより回転するように設置された1段ギヤ及び2段ギヤと、1段ギヤに固定され、1段挿入ユニットが挿入される1段締結ホールが形成された1段プレートと、2段ギヤに固定され、2段挿入ユニットが挿入される2段締結ホールが形成された2段プレートと、1段挿入ユニットが1段締結ホールに挿入され、または2段挿入ユニットが2段締結ホールに挿入されて、シンクロナイジングギヤの回転力を1段ギヤまたは2段ギヤに伝達するようにシンクロナイジングギヤを軸方向に動かす変速シャフトと、を有して構成されている。
【0008】
特に、入力シャフトは、シンクロナイジングギヤの回転中心部を貫通して配置され、入力シャフトとシンクロナイジングギヤは互いにスプールライン結合される。また、入力シャフトは、1段ギヤと2段ギヤの回転中心部を貫通して配置され、1段ギヤと入力シャフトの間、及び2段ギヤ及び入力シャフトの間にはそれぞれ軸ベアリングが介在される。
【0009】
1段プレートと2段プレートは、円形のリング形態でなり、1段締結ホールは、1段プレートに沿って一定間隔で配列され、2段締結ホールは、2段プレートに沿って一定間隔で配列される。
【0010】
シンクロナイジングギヤの両側面には、1段挿入ユニットと2段挿入ユニットが固定されており、1段挿入ユニットと2段挿入ユニットはそれぞれ、シンクロナイジングギヤの側面に固定された外部ハウジングと、外部ハウジングに挿入され、その先端部は外部に突出した内部ハウジングと、内部ハウジングの先端部の内部に回転可能に装着され、その一側は外部に突出したボールと、を含んで構成される。そして、ボールの外周面一側には、ボールと密着してボールベアリングが備えられている。
【0011】
電気車用変速システムは、さらに、外部ハウジングの内部に設置され、内部ハウジングを外側方向に弾性支持する弾性部材を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態による電気車用変速システムは、新たな構造を利用して2段及び1段のギヤ変速を行うことができ、その構造が簡単で、製造及び組立てが容易で、維持補修も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態による電気車用変速システムの概略的な全体側面図である。
【図2】図1における2段挿入ユニット(165b)の部分詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付した図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による電気車用変速システムの概略的な全体側面図である。図1を参照すると、電気車用変速システムは、モータ100、入力シャフト120、1段ギヤ115、2段ギヤ110、軸ベアリング105、1段プレート130、2段プレート170、シンクロナイジングギヤ155、1段挿入ユニット165a、2段挿入ユニット165b、及び変速シャフト140を主要構成部としている。
【0015】
入力シャフト120には、2段ギヤ110と1段ギヤ115が配置されている。このとき、2段ギヤ110と1段ギヤ115は、軸方向への動きは固定されているが、2段ギヤ110と入力シャフト120の間、及び1段ギヤ115と入力シャフト120の間にはそれぞれ軸ベアリング105が介在していて、入力シャフト120に対し回転可能に配置されている。
【0016】
また、入力シャフト120の、2段ギヤ110と1段ギヤ115の間に位置する部位にはシンクロナイジングギヤ155が配置されている。シンクロナイジングギヤ155は、入力シャフト120にスプールライン部125を通してスプールラインに結合され、入力シャフト120の軸方向に動くことが可能であり、入力シャフト120と共に回転する構造である。
【0017】
2段ギヤ110のシンクロナイジングギヤ155と対向する側面には2段プレート170が固定されて、2段ギヤ110と2段プレート170は共に回転する構造である。同じように、1段ギヤ115のシンクロナイジングギヤ155と対向する側面には1段プレート130が固定されて、1段ギヤ115と1段プレート130は共に回転する構造である。そして、2段ギヤ110と1段ギヤ115は、入力シャフト120の回転を出力軸(図示していない)を通して駆動ホイールに選択的に伝達するようになる。
【0018】
2段プレート170と1段プレート130に対応して、シンクロナイジングギヤ155の両側面には2段挿入ユニット165bと1段挿入ユニット165aがそれぞれ突出して形成され、2段挿入ユニット165bと1段挿入ユニット165aは、シンクロナイジングギヤ155と共に回転する。
【0019】
2段プレート170には、2段挿入ユニット165bと対応して1段締結ホール135が形成され、1段プレート130には、1段挿入ユニット165aと対応して2段締結ホール160が形成されている。
【0020】
シンクロナイジングギヤ155の上部側には、変速シャフト140が配置され、シンクロナイジングギヤ155の外周面には溝150が形成され、変速シャフト140の一側には溝150内に挿入される突起145が形成されている。変速シャフト140が、アクチュエーター(図示していない)などによって入力シャフト120の軸方向に動くと、突起145が溝150に入る構造によってシンクロナイジングギヤ155が入力シャフト120の軸方向に動く構造である。
【0021】
以上の構成で、シンクロナイジングギヤ155が、入力シャフト120で(図1上で)左側に動くと、2段挿入ユニット165bが1段締結ホール135に挿入され、入力シャフト120とシンクロナイジングギヤ155の回転が2段プレート170と2段ギヤ110に伝達される。逆に、シンクロナイジングギヤ155が入力シャフト120で(図1上で)右側に動くと、1段挿入ユニット165aが2段締結ホール160に挿入され、入力シャフト120とシンクロナイジングギヤ155の回転が1段プレート130と1段ギヤ115に伝達される。
【0022】
2段挿入ユニット165bと1段挿入ユニット165aそれぞれの先端部は、円形に形成されていて、1段締結ホール135と2段締結ホール160のそれぞれにスムーズに挿入され、この結果ギヤ変速がスムーズに行われる。
【0023】
次に、2段挿入ユニット165bの詳細を図2を参照して説明する。ここでは、2段挿入ユニット165bで説明するが、1段挿入ユニット165aも同じ構成である。
【0024】
2段挿入ユニット165bは、シンクロナイジングギヤ155の側面に固定され、外部ハウジング200、内部ハウジング210、ボール230、及びボールベアリング220を有する構成である。
【0025】
外部ハウジング200は、シンクロナイジングギヤ155の側面に固定され、その内部には内部ハウジング210の後端部が挿入されている。内部ハウジング210は、先端部が外部ハウジング200から外に突出していて、その最先端部には、ボール230が装着されている。そのボール230は、外周面一側にボールベアリング220が密着されていて、ボール230が円滑に回転できるようになっている。
【0026】
外部ハウジング200の内部には、さらに弾性部材240が装着されて、内部ハウジング210を外側に弾性支持している。
【0027】
これにより、シンクロナイジングギヤ155が(図1上で)左側に動くと、先ず、ボール230が2段プレート170の側面に接したとき、弾性部材240の弾性力が作用することで、シンクロナイジングギヤ155と2段プレート170の回転速度の差でボール230が回転でき、変速時の衝撃が緩和される。シンクロナイジングギヤ155がさらに(図1上で)左側に動くと、ボール230、内部ハウジング210および外部ハウジング200を含めた2段挿入ユニット165bが1段締結ホール135内に順次に挿入されていく。
【0028】
上記の形態で、2段プレート170と1段プレート130は、円形のリング形態からなるのが好ましく、1段締結ホール135と2段締結ホール160は、2段プレート170と1段プレート130に沿って設定された間隔をおいて形成されるのが好ましい。
【0029】
本発明の実施形態による電気車用変速システムは、新たな構造を利用して2段及び1段のギヤ変速を行うことができ、その構造が簡単で、製造及び組立てが容易で、維持補修も容易である。
【0030】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されず、本発明の実施形態から当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって容易に変更されて均等であると認められる範囲の全ての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0031】
100:モータ
105:軸ベアリング
110:2段ギヤ
115:1段ギヤ
120:入力シャフト
125:スプールライン部
130:1段プレート
135:1段締結ホール
140:変速シャフト
145:突起
150:溝
155:シンクロナイジングギヤ
160:2段締結ホール
165a:1段挿入ユニット
165b:2段挿入ユニット
170:2段プレート
200:外部ハウジング
210:内部ハウジング
220:ボールベアリング
230:ボール
240:弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと連結されて回転する入力シャフトと、
前記入力シャフトに設置され、前記入力シャフトと共に回転すると共に、その軸方向にスライディングするように両側面に1段挿入ユニットと2段挿入ユニットがそれぞれ突出して形成されたシンクロナイジングギヤと、
前記シンクロナイジングギヤの両側面と対向するように配置されて、前記入力シャフトにより回転するように設置された1段ギヤ及び2段ギヤと、
前記1段ギヤに固定され、前記1段挿入ユニットが挿入される1段締結ホールが形成された1段プレートと、
前記2段ギヤに固定され、前記2段挿入ユニットが挿入される2段締結ホールが形成された2段プレートと、
前記1段挿入ユニットが前記1段締結ホールに挿入され、または前記2段挿入ユニットが前記2段締結ホールに挿入されて、前記シンクロナイジングギヤの回転力を前記1段ギヤまたは前記2段ギヤに伝達するように前記シンクロナイジングギヤを軸方向に動かす変速シャフトと、
を有していることを特徴とする電気車用変速システム。
【請求項2】
前記入力シャフトが、前記シンクロナイジングギヤの回転中心部を貫通して配置され、前記入力シャフトと前記シンクロナイジングギヤは互いにスプールライン結合されることを特徴とする請求項1に記載の電気車用変速システム。
【請求項3】
前記入力シャフトが、前記1段ギヤと前記2段ギヤの回転中心部を貫通して配置され、前記1段ギヤと前記入力シャフトの間、及び前記2段ギヤ及び前記入力シャフトの間にはそれぞれ軸ベアリングが介在されることを特徴とする請求項1に記載の電気車用変速システム。
【請求項4】
前記1段プレートと前記2段プレートは、円形のリング形態でなり、前記1段締結ホールは、前記1段プレートに沿って一定間隔で配列され、前記2段締結ホールは、前記2段プレートに沿って一定間隔で配列されることを特徴とする請求項1に記載の電気車用変速システム。
【請求項5】
前記シンクロナイジングギヤの両側面に固定された前記1段挿入ユニットと前記2段挿入ユニットは、
前記シンクロナイジングギヤの側面に固定された外部ハウジングと、
前記外部ハウジングに挿入され、その先端部は外部に突出した内部ハウジングと、
前記内部ハウジングの先端部の内部に回転可能に装着され、その一側は外部に突出したボールと、を含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気車用変速システム。
【請求項6】
前記外部ハウジングの内部に設置され、前記内部ハウジングを外側方向に弾性支持する弾性部材をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の電気車用変速システム。
【請求項7】
前記外部ハウジングには、前記ボールの外周面一側と密着するボールベアリングが備えられていることを特徴とする請求項5に記載の電気車用変速システム。

【図1】
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【図2】
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