説明

電気通信ネットワーク加入者の個人データをバックアップする方法、装置、および関連サーバ

本発明は無線通信ネットワーク加入者の個人データをバックアップする方法に関し、データは移動体通信デバイスに保存され、ネットワークのサーバにバックアップされ、その間に、データの第1のサブセットはカードによって保存されることになるセットから作成され、バックアップのためにサーバに伝送される。本発明は、非同期バックアップ・モードを有し、これに従って、サーバにバックアップされることになるデータのサブセットの伝送後、ユーザ用に移動体を解放するためにある期間バックアップが遅延され、この期間の終わりにバックアップが再開されることを特徴とする。本発明は、また、関連するサーバおよびポータブル無線通信デバイスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信ネットワークの分野に関し、より具体的に言えば、これらのネットワークを使用する移動体デバイスまたは関連する加入者識別モジュール・カードに保存された電話帳などの、個人情報ファイルをバックアップする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GSMネットワーク(移動体通信向けグローバル・システムを意味する頭字語)などのこうしたネットワークでは、加入者はSIMカードを所有する(SIMは、加入者識別モジュールを意味する頭字語)。このSIMカードは、加入者が種々のアプリケーションおよび/またはサービスにアクセスできるように個別設定される。また、電話帳、日記等のファイルなどの個人情報も含まれる。
【0003】
現在のところオペレータは、SMS(ショート・メッセージ・サービスを意味する頭字語)などのネットワーク上の電気通信システムによって、その加入者がこの個人情報をサーバにバックアップできるようにする。
【0004】
ほとんどの技術的解決方法は、カードおよび/または移動体に記憶されたデータと、サーバのバックアップ・データベースに記憶されたデータとを同期させるためのメカニズムに依拠している。このメカニズムでは、必要となるコストのために、SMSの使用を最適化する目的で修正済みデータのみが転送される。
【0005】
現在のメカニズムでは、ネットワークがすべてのデータにおける変更を検出するので、初期の同期化または更新中にすべての情報を転送する必要があるという欠点がある。そのため加入者は、この初期の同期化オペレーションが完了してから自分の移動体が使用できるようになるまで、比較的長い時間待機しなければならない。
【0006】
255の電話番号とそれに関連付けられた名前が含まれる電話帳をバックアップするための待機時間は、5分と推定される。
【0007】
バックアップは、ユーザの要求があれば手操作で開始することができるが、ここでもユーザが移動体を長時間使用できなくなるようにする必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、前述の欠点をいっさい有さない電気通信ネットワーク・サーバ上に加入者データをバックアップするためのメカニズムを見つけることであり、データはカードおよび/または移動体に含まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明は、無線通信ネットワーク加入者の個人データをバックアップする方法に関し、データは移動体通信デバイスに記憶され、ネットワーク・サーバ上にバックアップされ、データの第1のサブセットはバックアップされることになるデータのバッチの中から作成され、バックアップのためにサーバに伝送される。
【0010】
上記方法は、サブセットがサーバに伝送されると、移動体をユーザのために解放するようにバックアップはある期間だけ遅延され、この期間の終わりにバックアップが再開されるという、いわゆる非同期バックアップ・モードを備えることを特徴とする。
【0011】
上記方法の他の特徴によれば、サーバまたは移動体は期間のカウントダウンを実施して、期間の終わりに再開信号をカードに伝送し、移動体は、カードからの命令に従ってカウントダウンを実施して、再開信号を伝送し、上記方法は、先行ステップを有し、これに従って、保存されることになるデータの量またはユーザが移動体を使用できるようにするために必要な待機時間が、所定のしきい値よりも大きいかどうかを判別し、大きい場合は非同期モードを使用してバックアップが実行され、大きくない場合はデフォルト・モードを使用してバックアップが実行される。
【0012】
さらに、本発明は、無線通信ネットワーク加入者の個人データをバックアップするためのサーバに関し、このデータは移動体通信デバイスまたは関連するカードに以前から記憶されており、当該サーバはバックアップされることになるバッチの中からデータの第1のサブセットをバックアップすることができる。
【0013】
上記方法は、データの第1のサブセットを受信および保存し、遅延命令に従ってこれを待機モードに配置する機能、および遅延命令の終わりに、後続のデータ・サブセットのバックアップを再開する機能、を実行することができる、いわゆる非同期「サーバ」バックアップ・プログラムを備えることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明は、バックアップ用にサーバにバックアップされることになるデータのバッチの中からデータの第1のサブセットを伝送することができるバックアップ・アプリケーションに記憶されたデータを含む、通信ネットワークの加入者所有のポータブル無線通信デバイスに関する。
【0015】
デバイス内のアプリケーションが、ユーザがデバイスを使用できることを確保するために、第1のサブセットに続くデータ・サブセットのバックアップを所与の期間だけ遅延させることができ、期間の終わりにバックアップを再開することができることを特徴とする。
【0016】
本発明によるデバイスは、無線通信機能を備えたPDA、携帯端末などのようにポータブルであり、チップ・カードを使用して、または使用せずに動作する、すべての無線通信デバイス(移動体)、ならびにチップ・カードを含む。
【0017】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面と共に提供される、本発明の特定の諸実施形態についての以下の説明を読めば明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この例では、SIMカード1を備えた加入者の移動体と、いわゆるSMSメッセージによってアクセスすることができるリモート・サーバ2とを有する、無線通信アーキテクチャが、GSMネットワークに使用される。移動体3は、無線通信インターフェースが備えられたPDA、携帯端末などの他の通信デバイスを含むこともできる。
【0019】
データは、事前に移動体デバイス内および/またはカード内に保存しておくことができる。この例では、データは初期にはカード内にある。
【0020】
サーバは、メッセージを受信および送信するための移動体との通信インターフェースと、加入者の個人データをバックアップするためのデータベースとを含む。
【0021】
サーバは、処理ユニット内に、本発明の変形形態に従って後に開発されるであろう種々の機能が実行可能な「サーバ」バックアップ・アプリケーション(サーバ専用)も含む。
【0022】
このプログラムは、個人データの第1のブロックを含む少なくとも1つのSMSメッセージを受信し、このブロックを保存する少なくとも1つの機能を実施する。
【0023】
好ましい変形形態によれば、プログラムは遅延命令を実施することができる。この命令は、サーバ・プログラム内に含めるか、またはカードおよび/または移動体によって作成されたSMSメッセージ内で受信することができる。
【0024】
サーバ・バックアップ・プログラムは、たとえば、クロックを開始するステップと、要求された待機時間の終わりにバックアップ・プロセスを再開するステップとを含むことができる。これを実行するために、後続のブロックのバックアップを再開するためのメッセージを作成し、移動体および/またはカードに送信することができる。
【0025】
一方、ポータブル無線通信デバイスは、SIMカードを有する移動体である。この例では、カードのチップは、記憶された個人データおよびカード特有のバックアップ・アプリケーションを含む。このプログラムは、既知の様式で、バックアップされる予定のデータのバッチの中から少なくとも1つのデータの第1のサブセットをバックアップするために、サーバに伝送することができる。
【0026】
しかしながらデータは、移動体デバイス内および/またはカード内に事前に保存しておくことができる。
【0027】
本発明の変形形態によれば、カード・アプリケーションは、データ・ブロックの2つのバックアップの間に加入者がデバイスを使用できることを確保するために、所与の期間にわたって、データの種々のサブセットまたはブロックのバックアップの間隔を空けるようにプログラムすることもできる。
【0028】
カードのバックアップ・プログラムは、好ましくは、特に、本発明による通常バックアップ・モード41および非同期モード40という、ユーザが選択することができるいくつかのバックアップ・モードを含む。
【0029】
本発明の方法について、初めに、好ましいモードによる図1との関連において説明する。
【0030】
ユーザの要求時に、または定期的に、既知のデータ・バックアップ・プロセスが実施される。このプロセスによれば、バックアップされるデータは、n個のサブセットまたはブロックに細分され、次に、それぞれが少なくとも1つのブロックと、送信されるブロック数のインジケーションと、ブロックの順序またはそれらを互いに連結する方法のインジケーションとを含むn個のSMSメッセージによって送信される。
【0031】
この例では、カードは、10個のブロックを形成する、バックアップされる予定の10個の電話番号およびアドレスを有する。初めに、カードは3つのサブセットを定義し、3つのブロックを含むサブセットを送信するように作成し、そのバッファ内に配置する。これを実行するために、ステップ10で、SMSメッセージを介してバッファのコンテンツをサーバに伝送するよう移動体に要求し、移動体はこれに従う。
【0032】
サーバは、ステップ11で、サブセットを受信してそのデータベース内に保存する。前述のサーバ・バックアップ・アプリケーションにより、本発明は、ある期間だけバックアップを遅延させることができる。
【0033】
その一方で、カードは後続のブロックの送信を停止し、移動体を解放したままにするので、移動体の通常機能は使用可能であることが確保される。
【0034】
他方でサーバは、そのために含んでいるプログラムに従って、遅延のカウントダウンを実施する12。このカウントダウンのために、サーバの処理ユニットはクロックの開始からなるプログラムの1ステップを実行し、たとえば2分間という所与の時間が経過した場合13に、再開信号をカードに送信する。この例で、サーバは、後続のブロック(ブロック4〜10)が欠落している旨を伝えるメッセージを送信する14。サーバは、タイムテーブル、定期または不定期などの、バックアップの間隔空けの任意の他の同等の手段を実施することもできる。
【0035】
移動体を介してカードによって受信されたメッセージは、カードのバックアップ・アプリケーションがバックアップを再開するための信号として解釈するという意味において、カードを「喚起する」ものである。
【0036】
このメッセージに応答して、カードのバックアップ・アプリケーションは続く3つのブロック(4〜6)を作成し、移動体を介してそれらをSMSメッセージとして送信する(ステップ15)。
【0037】
続くブロックは、前述のように受信および保存され16、アプリケーションは新しい遅延のカウントダウンを開始する17という具合である。
【0038】
最後のブロックが送信および保存されると18、サーバは受信肯定応答の「OK」メッセージを送信し19、任意の長い連続する期間、ユーザの移動体を動作不能にすることなく、バックアップは終了する。
【0039】
本発明のこの実施形態の変形形態が、図2に示される。
【0040】
ブロック3〜10のサブセットのサーバへの伝送20、21後、カードによって移動体に送信されたSTK(SIMツールキット)コマンドを使用して、カードのバックアップ・アプリケーションは「バックアップを停止」し、さらにカードが、遅延をカウントダウンして上記遅延21の終わりにカードを「喚起する」ように、移動体に対して要求する、他のSTKコマンドを送信する。
【0041】
次に、移動体はクロックを実施し22、設定時刻23後に、STKコマンドを介してカードにウェイクアップ信号を送信する24。これに応答して、カード内のバックアップ・アプリケーションは第2のデータ・ブロック(6〜10)を作成し、サーバに送られることになるそれに対するSTKコマンドを使用して、移動体に送信する。
【0042】
次に、前述のように、カードは、X秒後にウェイクアップするように移動体に要求し(ステップ28)、その後、移動体内の他の遅延カウントダウンが効果的に開始される29という具合である。
【0043】
他方で、サーバは、受信した命令に従って、受信した種々のブロックをバックアップし27、最終ブロックを識別した場合に、受信肯定応答の「OK」メッセージを送信する(ステップ30)。
【0044】
図3に示された第3の変形形態では、ある移動体内に存在する「GET STATUS」命令が、方法を実施するように、具体的に言えばカードを喚起するように、または言い換えればバックアップを再開するための信号として方向転換される。
【0045】
この命令は一般に、移動体がスイッチオンされた場合およびその後定期的に、移動体によって使用されるため、移動体は、カードが所定の位置にあること、およびすべてが正常であることをチェックできる。
【0046】
カードがこの命令を受信すると31、カードのアプリケーションはOK応答を送信し、一定の遅延後に、または所与の時間に、次の「GET STATUS」命令を再発行するよう移動体に要求する命令を追加する機会を得る32。
【0047】
移動体は、カードの命令に続いて遅延のカウントダウンを開始し33、上記遅延の終わりに(ステップ35)「GET STATUS」信号を伝送する34。
【0048】
データの後続のブロック(4〜6)のバックアップは、受信された次の「GET STATUS」命令への応答として、その他、すべてのブロックが送信されるまで、受信肯定応答メッセージ37が前述と同じサーバから受信されるまで、実施されることになる。
【0049】
本発明の各代替実施形態では、カードのバックアップ・アプリケーションは、通常モードでバックアップされるデータの量に従って切断されるバックアップ時間を計算する38、ルーチンを含むことができる。
【0050】
カード・アプリケーションは、バックアップ・モード間の自動スイッチングを実行可能にするテスト・ステップ39も含むことができる。待機時間が所定のしきい値、たとえば1分よりも長い場合、本発明に従ってバックアップは非同期モード40で実行される。待機時間がしきい値より短い場合、バックアップはデフォルト時の通常モード41に従って実行される。テストは、待機時間に対応するデータの量にも適用可能であり、しきい値はデータの量として表すことが可能である。
【0051】
本アプリケーションは、画面上にメッセージを表示し、一方のモードまたは他方のモードに関する妥当性検査を取得することによって、ユーザが2つのモードのうちの1つを選択できるようにするものでもある。
【0052】
合意のためのそれぞれの要求を使用して、各モードによるバックアップ用の推定時間のインジケーションと一緒にメッセージを送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1の実施形態による、本発明の方法を示す図である。
【図2】第2の実施形態による、本発明の方法を示す図である。
【図3】第3の実施形態による、本発明の方法を示す図である。
【図4】本発明を完了するデータ・バックアップ・ルーチンのステップを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワーク加入者の個人データをバックアップする方法であって、前記データが移動体通信デバイスに記憶され、ネットワーク・サーバ内にバックアップされ、データの第1のサブセットが、バックアップされるデータのバッチの中から作成され、バックアップのために前記サーバに伝送され、
サブセットが前記サーバに伝送されると、前記移動体をユーザのために解放するように前記バックアップはある期間だけ遅延され(12,22,33)、この期間の終わりに前記バックアップが再開されるという、いわゆる非同期バックアップ・モード(40)を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記バックアップを再開するために、前記サーバが前記期間のカウントダウンを実施し(12)、前記期間の終わりに前記カードへ再開信号を送信する(14)ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バックアップを再開するために、前記移動体は前記期間のカウントダウンを実施し(22,33)、前記期間の終わりに前記カードへ再開信号を送信する(24,35)ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カードから前記命令を受信すると同時に前記移動体が前記カウントダウンを実施し、前記再開信号を送信することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カードがSTKコマンドによって前記移動体に命令を与えることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カードが「GET STATUS」コマンドによって命令を与えることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
バックアップされることになるデータの量、または前記移動体をユーザが使用できるようにするために必要な対応する待機時間が、所定のしきい値よりも大きいかどうかを判別し、
大きい場合は、前記バックアップが前記非同期バックアップ・モード(40)に従って実行され、
大きくない場合は、前記バックアップがデフォルト・モード(41)に従って実行される事前評価ステップ(38)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
無線通信ネットワーク加入者の個人データをバックアップするためのサーバであって、前記データが移動体通信デバイスに事前に記憶され、前記サーバが、バックアップされることになるデータのバッチの中からデータの第1のサブセットをバックアップすることができ、
データのサブセットを受信および保存し、遅延命令に従って待機モードに入る機能と、
前記遅延命令の終わりに、後続のデータ・サブセットのバックアップを再開する機能と、を実施することができる、いわゆる非同期「サーバ」バックアップ・プログラムを備えることを特徴とするサーバ。
【請求項9】
記憶されたデータと、バックアップ用に前記サーバにバックアップされることになるデータのバッチの中からデータの第1のサブセットを伝送することができる「デバイス」バックアップ・アプリケーションとを有する、通信ネットワークの加入者所有のポータブル無線通信デバイスであって、
前記「デバイス」アプリケーションが、非同期バックアップ・モード(40)に従って、
確実にユーザが前記デバイスを使用できるように、前記第1のサブセットに続くデータ・サブセットのバックアップを所与の期間だけ遅延させることができ、
前記期間の終わりに前記バックアップを再開することができることを特徴とするポータブル無線通信デバイス。
【請求項10】
非同期バックアップ・モード(40)および通常モード(41)を有することを特徴とする請求項9に記載のポータブル・デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−515118(P2007−515118A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544442(P2006−544442)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053507
【国際公開番号】WO2005/069659
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(397062397)ジェムプリュス (35)
【氏名又は名称原語表記】GEMPLUS
【Fターム(参考)】