説明

電気部品用ソケット

【課題】ユニットの厚さ寸法を高精度に仕上げることが難しい場合であっても、ユニットの着座高さを安定させることが可能な電気部品用ソケットを提供する。
【解決手段】配線基板Pに固定され、ICパッケージ12が収容されるソケット本体14と、複数のコンタクトピン20が配設されたユニット13とを有し、ユニット13は、ソケット本体14に対して上下動自在に設けられ、複数のコンタクトピン20は、下側のプランジャ26が下方に付勢された状態で配線基板Pに所定の接圧で当接するように構成され、ソケット本体14とユニット13との間には、このユニット13を下方に押圧するコイルスプリング24が設けられたICソケット11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線基板上に配設され、半導体装置(以下「ICパッケージ」という)等の電気部品の試験等を行うため、この電気部品を収容する電気部品用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の「電気部品用ソケット」としては、例えば「電気部品」としてのICパッケージを着脱自在に収容するICソケットがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このICソケット11は、図4,図5に示すように、ユニット13に多数のコンタクトピン20が配設され、このユニット13がソケット本体14で挟み込まれて軽圧入で配線基板Pに固定された構造を有している。このような構造のICソケット11では、ソケット本体14に対してユニット13を容易に組み付けられるようにするため、ソケット本体14の凹部14aとユニット13の被挟持部13aとの間に所定量(例えば、0.1mm程度)のクリアランスC1が高さ方向(上下方向)に形成されている。特に、ユニット13を切削加工で作製する場合などにおいては、ユニット13の被挟持部13aの厚さ寸法T1を設計どおり高精度に仕上げることが難しいので、このクリアランスC1を大きくせざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−311170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のICソケット11にあっては、ソケット本体14とユニット13との間にクリアランスC1が形成されているため、図5に示すように、このICソケット11を配線基板Pに実装した際に、配線基板Pの図示省略のパッドに接触したコンタクトピン20の下側のプランジャ26の反力により、ユニット13全体が、クリアランスC1に等しい高さだけ配線基板Pから浮き上がってしまう。従って、その分だけユニット13の着座高さ(着座面Gの高さ)が設計値より高くなる。
【0006】
その結果、ソケット本体14に収容されたICパッケージ12を上方から押さえるために設けられた例えば回転構造を有する図示省略の押圧部材がICパッケージ12と干渉し、この押圧部材でICパッケージ12を正常に押圧できなくなる恐れがあった。
【0007】
また、ユニット13には多数のコンタクトピン20が設けられているため、こうしたユニット13の浮き上がりにより、配線基板Pのパッドとコンタクトピン20の下側のプランジャ26との間に異物が挟まり、この異物が挟まった部分については、配線基板Pのパッドとコンタクトピン20との間に接触不良が生じたり、隣接するパッドとコンタクトピン20との間が短絡したりする恐れもあった。
【0008】
そこで、この発明は、ユニットの厚さ寸法を高精度に仕上げることが難しい場合であっても、ユニットの着座高さを安定させることが可能な電気部品用ソケットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を達成するために、この発明は、配線基板に固定され、電気部品が収容されるソケット本体と、複数のコンタクトピンが配設されたユニットとを有し、前記ユニットは、前記ソケット本体に対して上下動自在に設けられ、前記複数のコンタクトピンは、下側の接触部が下方に付勢された状態で前記配線基板に所定の接圧で当接するように構成され、前記ソケット本体と前記ユニットとの間には、該ユニットを下方に押圧する弾性部材が設けられた電気部品用ソケットとしたことを特徴とする。
【0010】
他の特徴は、前記弾性部材の押圧力は、前記ソケット本体が前記配線基板に固定されたときに、前記ユニットの下面が前記配線基板の上面に当接するように、前記複数のコンタクトピンの前記接触部の反力より大きく設定されたことにある。
【0011】
他の特徴は、前記弾性部材には、前記ユニットの所定の最下位から下方への移動を拘束するストッパ部材が付設されたことにある。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、ユニットが弾性部材によって下方に押圧されているため、ICソケットを配線基板に実装した際に、コンタクトピンの接触部の反力が発生しても、ユニットの浮き上がりを抑制することができる。従って、ユニットの厚さ寸法を高精度に仕上げることが難しい場合であっても、ユニットの着座高さを安定させることが可能となる。その結果、例えば回転式の押圧部材によって電気部品を斜め上方から押圧する場合でも、その電気部品を正常に押圧することができると共に、配線基板のパッドに対して接触不良になるコンタクトピンの発生を回避することができる。
【0013】
他の特徴によれば、弾性部材の押圧力が、ソケット本体が配線基板に固定されたときに、ユニットの下面が配線基板の上面に当接するように、複数のコンタクトピンの接触部の反力より大きく設定されているため、この接触部の反力の大小とは関係なく、ICソケットを配線基板に実装した際に、ソケット本体の下面の高さとユニットの下面の高さとをより正確に一致させることができる。
【0014】
他の特徴によれば、弾性部材に、ユニットの所定の最下位から下方への移動を拘束するストッパ部材が付設されているため、ユニットのソケット本体からの分離を防止し、ICソケットの配線基板への実装を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態に係る電気部品用ソケットの断面図である。
【図2】同実施の形態に係る電気部品用ソケットのユニットを示す拡大断面図である。
【図3】同実施の形態に係る電気部品用ソケットを配線基板に実装した状態を示す断面図である。
【図4】従来の電気部品用ソケットの断面図である。
【図5】従来の電気部品用ソケットを配線基板に実装した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1乃至図3には、この発明の実施の形態を示す。
【0018】
まず、構成を説明すると、図1中符号11は、「電気部品用ソケット」としてのICソケットで、このICソケット11は、配線基板P上に配設されるようになっており、「電気部品」であるICパッケージ12(図3参照)等のバーンイン試験等を行うために、このICパッケージ12の複数の球状端子12aとその配線基板Pとの電気的接続を図るものである。
【0019】
ICソケット11は、図1,図3に示すように、配線基板P上に固定され、ICパッケージ12が収容されるソケット本体14と、配線基板P上に配設され、ICパッケージ12が収容されるユニット13とを有している。
【0020】
このユニット13は、図1に示すように、平板状の第1プレート16と、この第1プレート16の上方に配設された平板状の第2プレート17と、この第2プレート17の上方に配設されたフローティングプレート18と、第1プレート16の下側に配設された円柱状の位置決めピン19とを備えている。第1プレート16及び第2プレート17は、スペーサ23によって所定の間隔を保持した状態で皿ねじ21及びナット22によって固定されている。また、第2プレート17の上方には、フローティングプレート18が、図示省略のスプリングにより上方に付勢されている。そして、これら第1プレート16、第2プレート17、フローティングプレート18には、図1,図2に示すように、それぞれ貫通孔16a、17c、18aが上下方向に貫通して多数形成されており、これらの貫通孔16a、17c、18aにはコンタクトピン20が配設されている。
【0021】
各コンタクトピン20はそれぞれ、図2に示すように、導電性の「接触部」としての下側のプランジャ26と、上側のプランジャ27と、これらのプランジャ26,27を互いに離間する上下方向へ付勢する導電性のスプリング29とを有している。
【0022】
また、ソケット本体14は、図1に示すように、四角形の枠形状を呈し、下部に凹部14aが形成されている。凹部14aの上側には上壁部15が形成されており、上壁部15にはユニット13が、「ストッパ部材」としてのリベット25により上下動自在に支持されている。また、上壁部15とユニット13との間には、「弾性部材」としてのコイルスプリング24が、上壁部15とユニット13とを互いに離間する上下方向へ付勢するように伸縮自在に配設されている。
【0023】
より詳しくは、図1に示すように、ユニット13の第2プレート17の周縁部に凹部17aが形成されると共に、ソケット本体14の上壁部15に凹部15aが形成され、これらの凹部17a,15aにコイルスプリング24が嵌着されて、上壁部15と第2プレート17(従って、ユニット13)とを互いに離反する上下方向に付勢している。さらに、ユニット13の第2プレート17の周縁部に貫通孔17bが形成されると共に、ソケット本体14の上壁部15に貫通孔15bが形成され、これらの貫通孔17b,15bにリベット25の軸部25aが貫通され、リベット25の下側及び上側のフランジ部25b,25cがそれぞれ第2プレート17の下面及び上壁部15の上面に当接している。そのため、ユニット13は、所定の最下位(図1に示す位置)から下方への移動をリベット25のフランジ部25bによって拘束されることになる。
【0024】
なお、このコイルスプリング24の押圧力は、ソケット本体14が配線基板Pに固定されたときに、ユニット13の下面13bが配線基板Pの上面に当接するように、コンタクトピン20の下側のプランジャ26の反力(スプリング29の付勢力)より大きく設定されている。
【0025】
次に、かかるICソケット11の使用方法について、図3を用いて説明する。
【0026】
まず、図3に示すように、配線基板P上にICソケット11を実装し、ソケット本体14を配線基板Pに固定する。これにより、各コンタクトピン20は、下側のプランジャ26が配線基板Pの図示省略の各パッドに接触した後、このパッドに押し上げられる形でスプリング29の弾性に抗して上昇する。しかも、ユニット13を下方に押圧しているコイルスプリング24の押圧力は、上述したとおり、コンタクトピン20の下側のプランジャ26の反力より大きい。そのため、ユニット13の下面13bは、配線基板Pから浮き上がることなく、配線基板Pの上面に当接した状態を維持する。従って、ユニット13の下面13bの高さがソケット本体14の下面14bの高さに略一致し、ユニット13の着座高さ(着座面Gの高さ)が設計値に一致する。そのため、ユニット13の厚さ寸法を高精度に仕上げることが難しい場合(例えば、ユニット13を切削加工で作製する場合など)であっても、ユニット13の着座高さを安定させることができる。
【0027】
続いて、図3に示すように、ICソケット11のフローティングプレート18上にICパッケージ12を収容し、図示省略の押圧部材を回動させてICパッケージ12を下方に押圧する。これにより、フローティングプレート18がICパッケージ12と共に下降し、ICパッケージ12の各球状端子12aが各コンタクトピン20の上側のプランジャ27に接触する。その結果、ICパッケージ12の各球状端子12aと配線基板Pの各パッドとが各コンタクトピン20を介して互いに導通した状態となる。
【0028】
このとき、上述したとおり、ユニット13の着座高さが設計値に一致しているため、例えば回転式の押圧部材によるICパッケージ12の押圧に際して、この押圧部材がICパッケージ12と干渉する事態は発生せず、ICパッケージ12を所定の押圧力で正常に押圧することができる。また、ユニット13が配線基板Pから浮き上がらないため、配線基板Pのパッドと各コンタクトピン20の下側のプランジャ26との間に異物が挟まる事態は発生せず、すべてのコンタクトピン20と配線基板Pのパッドとの接触状態を良好に保つことができる。
【0029】
また、コイルスプリング24には、上述したとおり、リベット25が付設されているため、ユニット13がソケット本体14から分離する事態を防止することができる。これにより、ICソケット11の配線基板Pへの実装を円滑に行うことが可能となる。
【0030】
この状態で、ICパッケージ12に電流を流してバーンイン試験等を行う。このとき、上述したとおり、ICパッケージ12が所定の押圧力で正常に押圧されていると共に、すべてのコンタクトピン20と配線基板Pのパッドとの接触状態が良好に保たれているため、バーンイン試験等を支障なく行うことができる。
【0031】
なお、上記実施の形態では、「電気部品用ソケット」としてICソケット11にこの発明を適用したが、これに限らず、他の装置にも適用できることは勿論である。
【0032】
また、上記実施の形態では、下側のプランジャ26と上側のプランジャ27とスプリング29の3部品から構成されたコンタクトピン20について説明したが、これ以外の構成のコンタクトピン20にもこの発明を適用することができる。
【0033】
さらに、上記実施の形態では、第1プレート16、第2プレート17、フローティングプレート18等から構成されたユニット13について説明したが、これ以外の構成のユニット13にもこの発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
11 ICソケット(電気部品用ソケット)
12 ICパッケージ(電気部品)
13 ユニット
13b 下面
14 ソケット本体
20 コンタクトピン
24 コイルスプリング(弾性部材)
25 リベット(ストッパ部材)
26 下側のプランジャ(接触部)
P 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に固定され、電気部品が収容されるソケット本体と、複数のコンタクトピンが配設されたユニットとを有し、
前記ユニットは、前記ソケット本体に対して上下動自在に設けられ、
前記複数のコンタクトピンは、下側の接触部が下方に付勢された状態で前記配線基板に所定の接圧で当接するように構成され、
前記ソケット本体と前記ユニットとの間には、該ユニットを下方に押圧する弾性部材が設けられたことを特徴とする電気部品用ソケット。
【請求項2】
前記弾性部材の押圧力は、前記ソケット本体が前記配線基板に固定されたときに、前記ユニットの下面が前記配線基板の上面に当接するように、前記複数のコンタクトピンの前記接触部の反力より大きく設定されたことを特徴とする請求項1に記載の電気部品用ソケット。
【請求項3】
前記弾性部材には、前記ユニットの所定の最下位から下方への移動を拘束するストッパ部材が付設されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気部品用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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