説明

電気集塵システム及び電気集塵方法

【課題】インターバル荷電槌打を実施中に、荷電装置が故障した場合であっても、煤塵濃度値を環境規制値以下に抑制できるようにすると共に、石炭焚きのボイラシステムを効率良く運用できるようにする。
【解決手段】 電気集塵システムにおいて、荷電装置3の故障有無を検出する故障検出部6と、ここに得られる荷電装置3の故障有無を含む故障検出情報に基づいて集塵極槌打装置24aを制御する制御装置とを含み構成され、制御装置は、インターバル荷電槌打を常時実施するように集塵極槌打装置24aを制御し、インターバル荷電槌打の実施中に荷電装置3の故障有りが検出された場合に、インターバル荷電槌打からダンパ連動無荷電槌打へ運転モードを切り替え、その後、荷電装置3の故障状況及び、出口煙道の煤塵濃度値の検出に基づいてダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように集塵極槌打装置24aを制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力用の排ガス処理システムの通風系統に設けられて、ボイラ排気ガス(以下単に排ガスという)中の煤塵を除去する電気集塵装置及びその制御方法に適用可能な電気集塵システム及び電気集塵方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、石炭焚きのボイラシステムで石炭を燃焼し、高圧蒸気を生成し、蒸気タービンを駆動して発電機を回転し、電力を発生する石炭火力発電所が運用され、需要家に電力を供給している。この種の石炭火力発電所には排ガスを処理する排ガス処理システムが備えられている(特許文献1参照)。
【0003】
<石炭火力用の排ガス処理システムの通風系統の全体構成例>
図10は、従来例に係る火力発電所の通風系統の概略構成例を示すブロック図である。図10に示す火力発電所の通風系統によれば、いわゆる平衡通風式のボイラシステムが備えられ、石炭焚き火力発電所で一般的に用いられている。
【0004】
この火力発電所の通風系統は、火炉12に接続された空気予熱器11(図10においてAHと略記する)及び排ガス脱硝装置13の他に、押込通風機10(同図中FDFと略記する)、熱回収器14(同図中GGHと略記する)、電気集塵装置15(同図中EPと略記する)、誘引通風機30(同図中IDFと略記する)、排ガス脱硫装置32、再加熱器35及び煙突40を有して構成される。
【0005】
火炉12には図示しない石炭焚きのボイラシステムが備えられる。このボイラシステムでは、火炉12内の圧力を大気圧よりも僅かに下げた状態で燃焼を行っている。火炉12には図示しない煙道を介して排ガス脱硝装置13が接続される。排ガス脱硝装置13は排ガスから窒素酸化物を除去する。
【0006】
排ガス脱硝装置13には煙道を介して空気予熱器11が接続される。空気予熱器11は、火炉12から排ガス脱硝装置13を経た燃焼ガスと燃焼用の空気との間で熱交換し、当該空気を加熱する。加熱された燃焼用の空気は、火炉12で石炭燃料と共に燃焼して排ガスとなる。空気予熱器11には図示しないエアーダクトを介して押込通風機10が接続される。押込通風機10はボイラトップより燃焼用の空気を吸い込み、火炉12の内部へ供給する。
【0007】
空気予熱器11には煙道を介して熱回収器14が接続される。熱回収器14は排ガスから熱を吸収するように当該排ガスと未処理ガスとの間で熱交換する。熱回収器14には煙道を介して電気集塵装置15(Electrostatic Precipitator:以下で単にEPともいう)が接続される。電気集塵装置15は熱回収器14を経た排ガスから煤塵を除去する。電気集塵装置15は、直流高電圧によってコロナ放電を発生させ、ガス中の煤塵(ダスト)を帯電させて(放電極)、この帯電粒子を電界中(電極間)に通過させ、ガスと分離捕集(集塵極)して除去するものである。
【0008】
電気集塵装置15の出口煙道21(図11参照)には、誘引通風機30が接続される。誘引通風機30は火炉12の内部の圧力制御を行うため、煤塵が除去された、電気集塵装置15からの排ガスを吸引して排ガス脱硫装置32へ送り、煙突40より大気に放出するようになされる。誘引通風機30には煙道を介して排ガス脱硫装置32が接続される。排ガス脱硫装置32は排ガスから硫黄酸化物を除去する。
【0009】
排ガス脱硫装置32には煙道を介して再加熱器35が接続される。再加熱器35は、熱回収器14からの高温の未処理ガスと、硫黄酸化物除去後の排ガスとの間で熱交換をし、当該排ガスを所定温度まで昇温する。再加熱器35には煙道を介して煙突40が接続される。煙突40は再加熱器35、昇圧器(図示せず)を経て導かれる排ガスを大気へ放出する。
【0010】
このように平衡通風式のボイラシステムを備えた火力発電所の通風系統によれば、押込通風機10によって昇圧した空気を火炉12に供給すると共に、誘引通風機30によって排ガスを火炉12から引き出すことにより、火炉12の内部を負圧に保ちながら運転されている。これにより、排ガスや燃焼灰が火炉12から大気に漏れ出すことを抑制している。
【0011】
<電気集塵装置15の構成例>
次に、図11を参照して電気集塵装置15の構成例について説明をする。図11に示す電気集塵装置15は区分化され、その区分毎に荷電装置(図2参照)が配置されており、その全てを正常に稼働させることで、煤塵濃度の抑制を行っている。煤塵濃度は、環境規制値が定められており、ユニット運転に当たってはそれを遵守しなければならない。
【0012】
電気集塵装置15は所定の形状を成したケース15a及び区画板15bを有している。区画板15bはケース15aの内部において排ガスの流れに沿う方向(以下ガス流れ方向という)に配置され、当該区画板15bによってケース15aの内部が第1室16及び第2室17に分割されている。第1室16及び第2室17の入口は入口煙道18に接続され、その出口は出口煙道21に接続される。
【0013】
また、第1室16及び第2室17は、ガス流れ方向と直交する仮想面(ガス流れ方向と鉛直に交わる面)で3つのセクション1S〜3Sに区分(分割)されている。この3つのセクション1S〜3Sと区画板15bとにより、ケース15aの内部が6区画に分割される。第1室16はセクション1S〜3Sによって3つの区画室16a〜16cに分けられ、区画室16a〜16cがガス流れ方向の上流側から下流側に向かって前室、中間室及び後室に対応している。第2室17も同様にして3つの区画室17a〜17cに分けられ、区画室17a〜17cが前室、中間室及び後室に対応している。
【0014】
これら各区画室16a,16b,16c,17a,17b,17cは、それぞれ独立して集塵極1及び放電極2、後述する集塵極槌打装置24a,24b,24c,25a,25b,25c及び荷電単位を持っている。第1室16及び第2室17の入口煙道18には、それぞれ独立して開閉可能な入口ダンパ19,20が設けられている。第1室16及び第2室17の出口煙道21には、それぞれ独立して開閉可能な出口ダンパ22,23が設けられている。入口ダンパ19及び出口ダンパ22は、所定の時間をかけながら徐々に開閉される。
【0015】
電気集塵装置15によれば、第1室16の入口ダンパ19及び出口ダンパ22が全閉になされると、第1室16の入口煙道18から排ガスは流入せず、出口煙道21から流出もしない。第2室17の入口ダンパ20及び出口ダンパ23が全開になされると、第2室17の入口煙道18から排ガスが流入し、出口煙道21から流出する。このように、入口ダンパ19,20及び出口ダンパ22,23の開閉制御によって電気集塵装置15での排ガスの流れが制御される。
【0016】
電気集塵装置15では、煤塵を含有する排ガスが入口煙道18を通り、整流板(図示せず)によって流速分布が均一化された後、排ガスが集塵極1と放電極2との間に形成された電界(コロナ放電)に導入されるようになっている。排ガス中の煤塵は、放電極2による電界の静電力(クーロン力)によって集塵極1に吸引されて集塵される。
【0017】
各区画室16a,16b,16c,17a,17b,17cの集塵極1は、集塵極槌打装置24a,24b,24c,25a,25b,25cによってそれぞれ槌打されるように構成されている。そして、集塵極槌打装置24a,24b,24c,25a,25b,25cによる槌打の衝撃力によって集塵極1の表面から煤塵が剥離し、ホッパー41(図1参照)に落下させられた後、煤塵が捕集されるように構成されている。電気集塵装置15では、ダンパ開槌打及びダンパ閉槌打が行えるようになっている。
【0018】
<ダンパ開槌打時の動作例>
図12A〜Dを参照して、電気集塵装置15におけるダンパ開槌打時の制御方法について、第1室16を例に挙げて説明をする。電気集塵装置15を運転していると、例えば、第1室16の集塵極1には、次第に煤塵が堆積していく。
【0019】
そこで、ダンパ開槌打時の制御方法によれば、図12A,Bに示す所定の稼働時間、入口ダンパ19及び出口ダンパ22を全開したまま、かつ、図12Dに示す所定の稼働時間、荷電状態(ON状態)にして、図12Cに示す稼働時間、集塵極槌打装置24a,24bによって第1室16の区画室16a(前室)及び区画室16b(中間室)の各々の集塵極1を槌打するようになされる。入口ダンパ19及び出口ダンパ22の全開動作は、誘引通風機30の動翼(図示せず)の開閉によるドラフト変動を抑制するためである。
【0020】
<ダンパ閉槌打時の動作例>
次に、図13A〜Dを参照して、電気集塵装置15におけるダンパ閉槌打時の制御方法について、第1室16を例に挙げて説明をする。ダンパ閉槌打時の制御方法によれば、槌打による煤塵の再飛散を抑制するために、図11に示した第1室16の入口ダンパ19及び出口ダンパ22を図13A,Bに示す所定のタイミングによって全閉し、排ガスの流れを一時的に遮断する。
【0021】
そして、この排ガスの流れを遮断している間に、集塵極槌打装置24a,24b,24cは、図13Cに示す所定のタイミングによって、区画室16a,16b,16cの集塵極1を槌打する。このとき、集塵極1は、無荷電(荷電OFF)状態である(ダンパ閉槌打)。更に、集塵極1のダンパ閉槌打後に電気集塵装置15が、図13Dに示す所定のタイミングによって、荷電(荷電ON)状態になされ、所定の鎮静時間が経過した後、入口ダンパ19及び出口ダンパ22が全開になされる。
【0022】
すなわち、集塵極槌打装置24a,24b,24cによる槌打の衝撃力によって集塵極1の表面から煤塵が剥離し、ホッパー41(図1参照)に落下してこれに捕集されると共に、槌打によって飛散した煤塵が電気集塵装置15の荷電ONによって捕集され、その後、入口ダンパ19及び出口ダンパ22が全開に移行されるので、煤塵が再飛散して出口煙道21から流出するのを抑制することができる。
【0023】
なお、石炭焚きのボイラシステムでは、電気集塵装置15が4基設けられており、ダンパ閉槌打に要する時間は、電気集塵装置15の1室当たり約30分である。従って、ダンパ閉槌打には、1基当たり1時間程度を要し、システム全体では4時間程度を要する。よって、一の電気集塵装置15では、タイマにより4時間サイクルで約30分間ずつ槌打を繰り返すようになされる。放電極2の槌打は、集塵極1の槌打方法に関係なく、入口ダンパ19及び出口ダンパ22を開けた状態で行われている(特許文献2)。
【0024】
また、特許文献3には電気集塵器の荷電停止時運転制御装置が開示されている。この荷電停止時運転制御装置によれば、検出手段、記憶手段、演算手段、判定手段及び、表示手段を備えて構成されている。検出手段は、電気集塵器が荷電停止した場合の、当該電気集塵器の区画ごとの区分開閉器の入・切状態を検出する。記憶手段には、規定値に適合しない場合の煤煙濃度と対策案を表した対策テーブルがあらかじめ記憶されている。
【0025】
演算手段は検出手段によって検出された入・切状態での当該電気集塵器の出口煤煙濃度を演算する。判定手段は演算手段によって演算された煤煙濃度が規定値に適合するかを判定する。これらを前提にして表示手段が、規定値に適合する場合はその旨を、規定値に適合しない場合は記憶手段に記憶されている対策テーブルを読出して対策案を抽出し、当該対策案を表示するようにした。このように荷電停止時運転制御装置を構成すると、電気集塵器の荷電停止時にも、適切な対応が演算され示されるので、排出煤煙濃度が規制値を超過するおそれがないというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開平 06−114288号公報(第2頁 図1)
【特許文献2】特開2010−022907号公報(第7頁 図2)
【特許文献3】特開2009−131758号公報(第4頁 図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
ところで、特許文献1乃至3に見られるような従来例に係る電気集塵装置15によれば、ダンパ開槌打(以下でインターバル荷電槌打ともいう)中に、荷電装置が故障した場合、当該荷電装置の系列や、その故障数等の故障区分により電気集塵効率が低下する。このため、煤塵濃度値が環境規制値を超過しないように、故障状況、出口煙道21の煤塵濃度値の動向を確認した上で、オペレータが運転継続の可否や負荷降下の要否等を判断して対応しなくてはならない。
【0028】
しかし、当該系列の電気集塵装置15において、故障対象の荷電装置が複数存在すると、電気集塵効率が低下し、煤塵濃度値が環境規制値を超過するおそれがある。電気集塵効率の低下度合いは、荷電装置の故障状況(区分数、位置関係)によって異なる場合が多い。このため、オペレータは、低下度合いを判断し、その状況に応じて入口ダンパ19,20や、出口ダンパ22,23の閉止や、負荷抑制や、ユニット停止等を実施しなくてはならない。このため、対応に遅れが生じると煤塵濃度値が環境規制値を超過するおそれがある。
【0029】
そこで、本発明はこのような課題を解決したものであって、インターバル荷電槌打を実施中に、荷電装置が故障した場合であっても、煤塵濃度値を環境規制値以下に抑制できるようにすると共に、石炭焚きのボイラシステムを効率良く運用できるようにした電気集塵システム及び電気集塵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る電気集塵システムは、燃焼用空気を火炉内に送り込む押込通風機と前記火炉内の圧力の制御を行う誘引通風機とを有した平衡通風式のボイラシステムの通風系統に設置され、前記火炉からの排ガス中の煤塵を除去するために、ケースの内部が複数に区画化され、それぞれが独立して荷電可能な区画室と、当該各区画室に設けられ前記煤塵を捕集する集塵極及び放電極と、前記集塵極及び放電極間を荷電する荷電装置と、前記排ガスの流通を制御するために当該ケースの入口煙道に設けられた入口ダンパ及び、出口煙道に設けられた出口ダンパと、前記集塵極を槌打する集塵極槌打装置とを備えた電気集塵システムにおいて、前記入口ダンパ及び前記出口ダンパを開いた状態で、かつ、前記集塵極及び放電極間を荷電した状態で前記区画室の前記集塵極に対して間欠的に槌打を繰り返す運転モードをインターバル荷電槌打とし、前記入口ダンパ及び前記出口ダンパを閉じた状態で、かつ、前記集塵極及び放電極間を無荷電状態で前記区画室の前記集塵極に対して所定の回数だけ槌打を行う運転モードをダンパ連動無荷電槌打としたとき、前記荷電装置の故障有無を検出する検出部と、前記検出部から得られる前記荷電装置の故障有無を含む故障情報に基づいて前記集塵極槌打装置を制御する制御装置とを含み構成され、前記制御装置は、前記インターバル荷電槌打を常時実施するように前記集塵極槌打装置を制御し、前記インターバル荷電槌打の実施中に前記荷電装置の故障有りが検出された場合に、前記インターバル荷電槌打から前記ダンパ連動無荷電槌打へ運転モードを切り替え、その後、前記荷電装置の故障状況及び、前記出口煙道の煤塵濃度の検出に基づいて前記ダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように前記集塵極槌打装置を制御することを特徴とするものである。
【0031】
本発明に係る電気集塵システムによれば、インターバル荷電槌打の実施中に、検出部は、荷電装置の故障有無を検出する。制御装置は、検出部から得られる荷電装置の故障有無を含む故障情報に基づいて集塵極槌打装置を制御する。これを前提にして制御装置が、インターバル荷電槌打を常時実施するように集塵極槌打装置を制御し、このインターバル荷電槌打の実施中に荷電装置の故障有りが検出された場合に、インターバル荷電槌打からダンパ連動無荷電槌打へ運転モードを切り替え、その後、荷電装置の故障状況及び、出口煙道の煤塵濃度の検出に基づいてダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように集塵極槌打装置を制御する。
【0032】
この制御によって、インターバル荷電槌打の実施中、荷電装置の故障が検出された場合、オペレータの判断を介さずに、即時に、運転モードをインターバル荷電槌打からダンパ連動無荷電槌打への自動切り替え、並びに、荷電装置の故障状況及び出口煙道の煤塵濃度の検出に基づくダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打への自動切り替えを実行できるようになる。しかも、ダンパ連動無荷電槌打では、入口ダンパ及び出口ダンパが閉止されることから、故障を起こした荷電装置の区画室から出口煙道へ流出する煤塵を抑制できるようになる。
【0033】
請求項2に係る電気集塵システムは、請求項1において、前記火炉から排出される排ガス中の煤塵の濃度を検出する濃度検出部を備え、前記制御装置は、前記濃度検出部から得られる煤塵濃度情報に基づく煤塵濃度値と、槌打方式を決定する判別基準値とを比較し、前記煤塵濃度値が判別基準値未満である場合は、前記ダンパ連動無荷電槌打から前記インターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように前記集塵極槌打装置を制御することを特徴とするものである。
【0034】
請求項3に係る電気集塵システムは、請求項2において、前記制御装置は、前記煤塵濃度値が判別基準値以上となる場合、前記ダンパ連動無荷電槌打を実施するように前記集塵極槌打装置を制御することを特徴とするものである。
【0035】
請求項4に係る電気集塵システムは、請求項2において、前記ケースの内部が縦列及び横列に区画化され、それぞれが独立して荷電可能な区画室となされ、前記荷電装置が区画室毎に配置され、前記制御装置は、前記インターバル荷電槌打の実施中に複数の前記区画室の荷電装置に故障有りが検出された場合であって、前記ボイラシステムによって駆動される発電機の出力を下げる動作を負荷降下としたとき、縦列に区画化された複数の前記区画室の荷電装置の故障が検出された場合は、前記ダンパ連動無荷電槌打から前記インターバル荷電槌打へ運転モードを切り替える共に、前記入口ダンパ及び出口ダンパを閉止し、前記排ガス中の煤塵の濃度検出に基づいて前記負荷降下を実行し、横列に区画化された複数の前記区画室の荷電装置の故障が検出された場合は、前記入口ダンパ及び出口ダンパを半閉すると共に、前記排ガス中の煤塵の濃度検出に基づいて前記ダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように前記集塵極槌打装置を制御することを特徴とするものである。
【0036】
請求項5に係る電気集塵方法は、燃焼用空気を火炉内に送り込む押込通風機と前記火炉内の圧力の制御を行う誘引通風機とを有した平衡通風式のボイラシステムの通風系統に設置され、前記火炉からの排ガス中の煤塵を除去するために、ケースの内部が複数に区画化され、それぞれが独立して荷電可能な区画室と、当該各区画室に設けられ前記煤塵を捕集する集塵極及び放電極と、前記集塵極及び放電極間を荷電する荷電装置と、前記排ガスの流通を制御するために当該ケースの入口煙道に設けられた入口ダンパ及び、出口煙道に設けられた出口ダンパと、前記集塵極を槌打する集塵極槌打装置とを備えた電気集塵システムが、前記荷電装置の故障有無を検出するステップと、検出によって得られた前記荷電装置の故障有無を含む故障情報に基づいて前記集塵極槌打装置を制御するステップとを含み実行し、前記集塵極槌打装置を制御する際に、前記入口ダンパ及び前記出口ダンパを開いた状態で、かつ、前記集塵極及び放電極間を荷電した状態で前記区画室の前記集塵極に対して間欠的に槌打を繰り返す運転モードをインターバル荷電槌打とし、前記入口ダンパ及び前記出口ダンパを閉じた状態で、かつ、前記集塵極及び放電極間を無荷電状態で前記区画室の前記集塵極に対して所定の回数だけ槌打を行う運転モードをダンパ連動無荷電槌打としたとき、前記インターバル荷電槌打を常時実施するステップと、前記インターバル荷電槌打の実施中に前記荷電装置の故障有りが検出された場合に、前記インターバル荷電槌打から前記ダンパ連動無荷電槌打へ運転モードを切り替えるステップと、前記荷電装置の故障状況及び、出口煙道の煤塵濃度の検出に基づいてダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるステップとを実行することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る電気集塵システム及び電気集塵方法によれば、荷電装置の故障有無を含む故障情報に基づいて集塵極槌打装置を制御する制御装置を備え、この制御装置は、荷電装置の故障有りが検出された場合に、インターバル荷電槌打からダンパ連動無荷電槌打へ運転モードを切り替え、その後、荷電装置の故障状況及び、出口煙道の煤塵濃度の検出に基づいてダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように集塵極槌打装置を制御するものである。
【0038】
この構成によって、インターバル荷電槌打の実施中、荷電装置の故障が検出された場合、オペレータの判断を介さずに、即時に、運転モードをインターバル荷電槌打からダンパ連動無荷電槌打への自動切り替え、並びに、荷電装置の故障状況及び出口煙道の煤塵濃度の検出に基づくダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打への自動切り替えを実行できるようになる。しかも、インターバル荷電槌打においても、入口ダンパ及び出口ダンパが閉止されることから、故障を起こした荷電装置の区画室から出口煙道へ流出する煤塵を抑制できるようになる。これにより、インターバル荷電槌打の実施中に荷電装置が故障した場合であっても、煤塵濃度値が環境規制値を超過するおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る実施形態としての電気集塵システム100の制御系の概略構成例を示すブロック図である。
【図2】区画室16a等における電気集塵装置15の内部構成例を示すブロックである。
【図3】電気集塵装置15における通風系統の構成例を示す概略図である。
【図4】インターバル荷電槌打時の制御例を示す概略図である。
【図5】1荷電区分のトリップ時の制御例を示す概略図である。
【図6】縦列2荷電区分以上のトリップ時の制御例を示す概略図である。
【図7】横列2〜4荷電区分のトリップ時の制御例を示す概略図である。
【図8】電気集塵装置15の制御例(その1)を示すフローチャートである。
【図9】電気集塵装置15の制御例(その2)を示すフローチャートである。
【図10】従来例に係る火力発電所の通風系統の概略構成例を示すブロック図である。
【図11】電気集塵装置15の概略構成例を示す平面断面図である。
【図12】(A)〜(D)はダンパ開槌打時の制御例を示すタイムチャートである。
【図13】(A)〜(D)はダンパ閉槌打時の制御例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電気集塵システム及び電気集塵方法について説明する。図1に示す電気集塵システム100は、石炭焚きのボイラシステムに適用可能なものであり、平衡通風式のボイラシステムの通風系統に設置され、火炉12からの排ガス中の煤塵を除去するように機能する。電気集塵システム100は、電気集塵装置15、EP灰処理装置42、ダンパ駆動装置43、煤塵濃度検出装置44、操作部54及び制御装置55を有して構成される。
【0041】
電気集塵装置15には、従来技術において説明した電気集塵装置15の構成と同一ものが使用される。従って、以下の説明において、既に説明した部材と同一の部材には、同一の符号を付して重複説明を省略する。電気集塵装置15は集塵極槌打装置24a〜24c,25a〜25cや、放電極荷電装置26a〜26c,27a〜27c等から構成されている。
【0042】
集塵極槌打装置24a及び放電極荷電装置26aは、図3に示す区画室16aに設けられる。集塵極槌打装置24aは槌打制御信号S24aに基づいて制御される。槌打制御信号S24aは、制御装置55から集塵極槌打装置24aに出力される。放電極荷電装置26aは荷電制御信号S26aに基づいて制御される。荷電制御信号S26aは、制御装置55から放電極荷電装置26aに出力される。また、放電極荷電装置26aは、図2に示す荷電装置3の故障有無を検出して故障検出信号S6aを発生する。故障検出信号S6aは、放電極荷電装置26aから制御装置55に出力される。
【0043】
集塵極槌打装置24b及び放電極荷電装置26bは、図3に示す区画室16bに設けられる。集塵極槌打装置24bは槌打制御信号S24bに基づいて制御される。槌打制御信号S24bは、制御装置55から集塵極槌打装置24bに出力される。放電極荷電装置26bは荷電制御信号S26bに基づいて制御される。荷電制御信号S26bは、制御装置55から放電極荷電装置26bに出力される。また、放電極荷電装置26bは、図2に示す荷電装置3の故障有無を検出して故障検出信号S6bを発生する。故障検出信号S6bは、放電極荷電装置26bから制御装置55に出力される。
【0044】
集塵極槌打装置24c及び放電極荷電装置26cは、図3に示す区画室16cに設けられる。集塵極槌打装置24cは槌打制御信号S24cに基づいて制御される。槌打制御信号S24cは、制御装置55から集塵極槌打装置24cに出力される。放電極荷電装置26cは荷電制御信号S26cに基づいて制御される。荷電制御信号S26cは、制御装置55から放電極荷電装置26cに出力される。また、放電極荷電装置26cは、図2に示す荷電装置3の故障有無を検出して故障検出信号S6cを発生する。故障検出信号S6cは、放電極荷電装置26cから制御装置55に出力される。
【0045】
集塵極槌打装置25a及び放電極荷電装置27aは、図3に示す区画室17aに設けられる。集塵極槌打装置25aは槌打制御信号S25aに基づいて制御される。槌打制御信号S25aは、制御装置55から集塵極槌打装置25aに出力される。放電極荷電装置26aは、荷電装置3の故障有無を検出して故障検出信号S6a発生する。故障検出信号S6aは、放電極荷電装置26aから制御装置55に出力される。また、放電極荷電装置27aは、図2に示す荷電装置3の故障有無を検出して故障検出信号S7aを発生する。故障検出信号S7aは、放電極荷電装置27aから制御装置55に出力される。
【0046】
集塵極槌打装置25b及び放電極荷電装置27bは、図3に示す区画室17bに設けられる。集塵極槌打装置25bは槌打制御信号S25bに基づいて制御される。槌打制御信号S25bは、制御装置55から集塵極槌打装置25bに出力される。放電極荷電装置26bは、荷電装置3の故障有無を検出して故障検出信号S6bを発生する。故障検出信号S6bは、放電極荷電装置26bから制御装置55に出力される。また、放電極荷電装置27bは、図2に示す荷電装置3の故障有無を検出して故障検出信号S7bを発生する。故障検出信号S7bは、放電極荷電装置27bから制御装置55に出力される。
【0047】
集塵極槌打装置25c及び放電極荷電装置27cは、図3に示す区画室17cに設けられる。集塵極槌打装置25cは槌打制御信号S25cに基づいて制御される。槌打制御信号S25cは、制御装置55から集塵極槌打装置25cに出力される。放電極荷電装置27cは荷電制御信号S27cに基づいて制御される。荷電制御信号S27cは、制御装置55から放電極荷電装置27cに出力される。また、放電極荷電装置27cは、図2に示す荷電装置3の故障有無を検出して故障検出信号S7cを発生する。故障検出信号S7cは、放電極荷電装置27cから制御装置55に出力される。
【0048】
この実施形態では、電気集塵装置15を制御する際に、制御装置55が故障検出部6(図2参照)等から得られる荷電装置3(図2参照)の故障有無を含む故障情報に基づいて集塵極槌打装置24a等を制御する。制御装置55は、インターバル荷電槌打を常時、主体的に実施するように集塵極槌打装置24a〜24c,25a〜25bを制御し、インターバル荷電槌打の実施中に、区画室16a等の荷電装置3の故障有りが検出された場合に、インターバル荷電槌打からダンパ連動無荷電槌打へ運転モードを切り替えるように集塵極槌打装置24a等を制御する。
【0049】
ここにインターバル荷電槌打とは、図11で説明した入口ダンパ19,20及び出口ダンパ22,23を開いた状態で、かつ、集塵極1を荷電状態で区画室16a,16b,16cの集塵極1に対して間欠的に槌打を繰り返す運転モードをいう(ダンパ開槌打に相当)。ダンパ連動無荷電槌打とは、入口ダンパ19,20及び出口ダンパ22,23を閉じた状態で、かつ、集塵極1を無荷電状態で区画室16a,16b,16cの集塵極1に対して所定の回数だけ槌打を行う運転モードをいう(ダンパ閉槌打に相当)。
【0050】
これにより、通常運転時にインターバル荷電槌打を主体的に実行し、必要に応じてダンパ連動無荷電槌打を実行できるようになる。しかも、荷電装置3の故障数や、故障位置等に対応してダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを戻すようになされる。
【0051】
煤塵濃度検出装置44は濃度検出部の一例を構成し、火炉12から排出される排ガス中の煤塵の濃度値(以下で煤塵濃度値Dbという)を検出する。煤塵濃度検出装置44は、制御装置55に接続され、測定ポイントは、例えば、出口煙道21付近であり、煤塵除去後の排気ガスの煤塵濃度値Dbを検出できる位置である。この位置に図示しない煤塵濃度検出センサが配置され、この煤塵濃度検出センサから煤塵濃度検出装置44へ煤塵濃度検出信号S44が出力される。
【0052】
煤塵濃度検出装置44は、煤塵濃度検出信号S44をアナログ・ディジタル変換した後の煤塵濃度情報D44を制御装置55に出力する。煤塵濃度情報D44には出口煙道21の煤塵濃度値Dbが含まれている。もちろん、入口煙道18付近や、誘引通風機30の下流側に測定ポイントを設けて、そこから排出される煤塵除去後の排気ガスの煤塵濃度値Dbを検出して煤塵濃度情報を制御装置55に出力するようにしてもよい。
【0053】
制御装置55は、煤塵濃度検出装置44から得られる濃度検出信号に基づいて集塵極槌打装置24a,24b,24c,25a,25b,25cを制御する(煤塵濃度の傾向監視制御)。この煤塵濃度の傾向監視制御によれば、煤塵濃度値Dbの判別基準値(環境基準値:閾値)をDthとしたとき、Db<Dthとなる場合は、『手動(ダンパ連動無荷電槌打)』から『自動(インターバル荷電槌打)』へ切り替えて煤塵濃度制御を実行する。Db≧Dthとなる場合は、負荷降下を実施するようになされる。ここに負荷降下とは、当該ボイラシステムによって駆動される発電機の出力を下げる動作をいう。煤塵濃度値Dbの判別基準値は、例えば、Dth=50mg/m3Nが設定される。
【0054】
この例で、制御装置55は、煤塵濃度検出装置44から得られる煤塵濃度情報に基づく煤塵濃度値Dbと、槌打方式を決定する判別基準値(Dth=50mg/m3N)とを比較し、煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth未満である場合(Db<Dth)は、ダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように集塵極槌打装置24a〜24c,25a〜25cを制御する。この切り替え制御により、煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth未満である場合は、ダンパ連動無荷電槌打を中止して運転モードをインターバル荷電槌打へ戻し、排ガス中の煤塵の濃度検出を継続する軽微な制御に移行できるようになる。
【0055】
また、制御装置55は、煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth以上となる場合(Db≧Dth)、ダンパ連動無荷電槌打を実施するように集塵極槌打装置24a〜24c,25a〜25cを制御する。この制御により、煤塵濃度値Dbが判別基準値以上となる場合、ダンパ連動無荷電槌打によって、入口ダンパ19,20及び出口ダンパ22,23を閉じた状態で、かつ、集塵極1及び放電極2間を無荷電状態で区画室16a〜16cや、区画室17a〜17c等の集塵極1に対して所定の回数だけ槌打が行われるので、火炉のドラフト変動等を伴うが、インターバル荷電槌打に比べて集塵極1の煤塵の清掃効果を高めることができる。
【0056】
EP灰処理装置42は、電気集塵装置15の各々の区画室16a,16b,16cから排出される煤塵をホッパー41を通じて取り込み、灰処理制御信号S42に基づいて煤塵を処理して石膏化する。煤塵を石膏化するには所定の灰処理時間(以下でEP灰処理時間という)を要する。EP灰処理装置42は、制御装置55に接続され、EP灰処理時間を示すEP灰処理情報D42を制御装置55に出力する。灰処理制御信号S42は制御装置55からEP灰処理装置42へ出力される。
【0057】
ダンパ駆動装置43は、ダンパ駆動情報D43に基づいて入口ダンパ19,20及び出口ダンパ22,23を駆動する。ダンパ駆動装置43は制御装置55に接続される。ダンパ駆動情報D43は制御装置55からダンパ駆動装置43へ出力される。ダンパ駆動装置43はダンパ駆動情報D43をデコードしてダンパ制御信号S19,S20,S22,S23を生成する。
【0058】
ダンパ制御信号S19は、ダンパ駆動装置43から入口ダンパ19を駆動する図示しないモータへ出力される。ダンパ制御信号S20は、ダンパ駆動装置43から入口ダンパ20を駆動する図示しないモータへ出力される。ダンパ制御信号S22は、ダンパ駆動装置43から出口ダンパ22を駆動する図示しないモータへ出力される。ダンパ制御信号S23は、ダンパ駆動装置43から出口ダンパ23を駆動する図示しないモータへ出力される。
【0059】
制御装置55には槌打モード選択用の操作部54が接続され、電気集塵システム100において、インターバル荷電槌打又はダンパ連動無荷電槌打のいずれか一方を選択するように操作される。操作部54には、運転選択表示部56、槌打選択表示部57及び4個の選択ボタン54a〜54dが設けられる。
【0060】
運転選択表示部56は、電気集塵装置15を自動モード又は手動モードで運転するかの選択を表示する表示器である。運転選択表示部56の下方には、自動モードの選択ボタン54a及び手動モードの選択ボタン54bが配設される。選択ボタン54aは電気集塵装置15を自動運転する際に押下操作される(自動モード選択)。選択ボタン54bは電気集塵装置15を手動運転する際に押下操作される(手動モード選択)。
【0061】
槌打選択表示部57は、電気集塵装置15において、インターバル運転(ダンパ開荷電槌打)又はダンパ連動運転(ダンパ閉無荷電槌打)のどちらを選択するかを表示する表示器である。槌打選択表示部57の下方には、インターバル運転の選択ボタン54c及びダンパ連動運転の選択ボタン54dが配設される。選択ボタン54cは電気集塵装置15においてインターバル運転を選択する際に押下操作される。選択ボタン54dは電気集塵装置15においてダンパ連動運転を選択する際に押下操作される。
【0062】
操作部54は時刻入力部を兼ねており、図示しない数字の0〜9等のテンキーが設けられ、従来方式と同様にして、ダンパ連動無荷電槌打を実施する開始時刻及び終了時刻を入力するように操作される。上述の開始時刻及び終了時刻は、ダンパ連動無荷電槌打の稼働設定時間である。この例では、操作部54によって入力されたダンパ連動無荷電槌打を実施する稼働設定時間以外はインターバル荷電槌打を実施するようになされる。
【0063】
インターバル荷電槌打に関して、操作部54を使用して槌打時間(槌打タイマ)が設定される。例えば、区画室16a,17aの集塵極槌打装置24a,25aは4秒間だけ集塵極1の槌打動作を実行し、その後、29秒間その槌打動作を停止する。区画室16b,17bの集塵極槌打装置24b,25bは、4秒間だけ集塵極1の槌打動作を実行し、その後、63秒間その槌打動作を停止する。区画室16c,17cの集塵極槌打装置24c,25cは、4秒間だけ集塵極1の槌打動作を実行し、その後、96秒間その槌打動作を停止する。このような槌打時間が操作部54を使用して設定される。操作部54は上述の操作で得られた、自動モード又は手動モード、インターバル運転又はダンパ連動運転、稼働設定時間、槌打時間等を示す操作情報D54を制御装置55に出力する。
【0064】
制御装置55にはモニタ58が接続される。モニタ58には、従来方式と同様にして通風系統図や、インターバル運転又はダンパ連動運転時の稼働設定時間、槌打時間等のスケジュール画面を表示するようになされる。もちろん、スケジュール画面に限られることはない。例えば、インターバル荷電槌打の実施中に、不本意に荷電装置3が故障した場合、その故障した区画室16a等の位置と共に荷電装置3をモニタ58に表示するようになされる。故障した荷電装置は通風系統図内に表示すると確認し易くなる。スケジュール画面等は制御装置55からモニタ58へ出力される表示情報D58に基づいて表示される。
【0065】
制御装置55内にはメモリ51、CPU53及びタイマ52が設けられる。タイマ52は、インターバル荷電槌打又はダンパ連動無荷電槌打を実施する際の時間情報をCPU53に出力する。メモリ51には、初期設定時等に入力された情報、例えば、インターバル荷電槌打又はダンパ連動無荷電槌打の稼働設定時間や、槌打時間等に関するスケジュール情報が記憶される。
【0066】
もちろん、メモリ51に故障した区画室16a等の位置と共に荷電装置3の故障情報、発生日、原因、対処方法等を記録してもよい。後日のメンテナンスの参考にできるようになる。また、メモリ51には全系列(A,B)の区画室16a〜16c、17a〜17c等の位置と共に荷電装置3の故障判定情報として、例えば、故障判別値「0」が記憶される(故障参照マップ)。故障参照マップは、荷電装置3の故障判別時、故障検出部6から出力される故障検出信号S6a等をアナログ・ディジタル変換(以下A/D変換という)した後の故障検出データと故障判別値「0」とを比較し、両者の一致検出に使用される。
【0067】
ここで、図2を参照して、1つの区画室16a等における電気集塵装置15の内部構成例について説明する。図2に示す区画室16a等における電気集塵装置15は、集塵極槌打装置24a及び放電極荷電装置26aを有して構成される。他の区画室16b,16c,17a〜17cについても同様にして構成されるので、その説明は省略する。
【0068】
集塵極槌打装置24aは、集塵極1及び槌打装置4を有している。集塵極1は例えば、ホッパー41を見通せる位置に配設される。集塵極1には例えば、表面に波形状を有し、かつ、所定の表面積を有したステンレス板が使用される。集塵極1の一端は、例えば、電流計5を介して荷電装置3に接続される。
【0069】
槌打装置4は集塵極1に隣接して配設されている。槌打装置4はハンマー駆動機構を有しており、槌打制御信号S24aに基づいてハンマー駆動機構により集塵極1を槌打するようになされる。槌打制御信号S24aは、制御装置55から槌打装置4へ出力される。
【0070】
また、放電極荷電装置26aは、放電極2、荷電装置3、電流計5及び故障検出部6を有している。上述の集塵極1と対峙する位置には放電極2が設けられる。放電極2にはステンレス製のワイヤー部材(以下で放電ワイヤーという)等から構成される。放電極2の一端は開放され、その他端は荷電装置3に接続される。
【0071】
荷電装置3は、集塵極1及び放電極2間を荷電する。例えば、荷電装置3は荷電制御信号S26aに基づいてコロナ放電を発生させるための高電圧HVを発生する。荷電装置3には放電用のトランスが使用される。荷電装置3によって発生された高電圧HVは、集塵極1及び放電極2間に印加される。荷電装置3は、図1に示した制御装置55に接続される。荷電制御信号S26aは、制御装置55から荷電装置3に出力される。
【0072】
この例で、電流計5は集塵極1と荷電装置3との間に接続される。電流計5は集塵極1及び放電極2間を流れる充電電流(以下でEP電流という)を測定して当該EP電流を指示(指針)する。電流計5は集塵極1と荷電装置3との間に限られることはなく、荷電装置3と放電極2との間に接続してもよい。
【0073】
電流計5には故障検出部6が接続され、荷電装置3の故障有無を検出して故障検出信号S6aを制御装置55に出力する。故障検出部6は、例えば、電流計5が何らかのEP電流を測定している場合は、荷電装置3の故障無しを示すハイレベルの故障検出信号S6aを発生する。
【0074】
また、故障検出部6は電流計5が何らのEP電流を測定していない場合は、荷電装置3の故障有りを示すローレベルの故障検出信号S6aを発生する。EP電流が流れないケースとしては、放電極2を構成する放電ワイヤー等の断線が考えられる。故障検出部6は図1に示した制御装置55に接続され、故障検出信号S6aを制御装置55に出力する。
【0075】
もちろん、荷電装置3の故障有無を検出する基準値として、EP電流の上限値を設け、この上限値を越えるEP電流を測定している場合にも、荷電装置3の故障有りを示すローレベルの故障検出信号S6aを発生するようにしてもよい。集塵極1と荷電装置3との間の離隔距離にもよるが、当該集塵極1と荷電装置3に多く煤塵が滞在し、集塵極1と荷電装置3の間が橋絡して電気的に導通状態となった場合が想定されるためである。これらにより、1つの区画室16a等における電気集塵装置15の内部を構成する。
【0076】
続いて、図3を参照して、電気集塵システム100における通風系統の構成例について説明する。図3に示す電気集塵システム100の通風系統によれば、2つの煙道系列が備えられる。例えば、ケース15aの内部が縦列及び横列に区画化され、それぞれが独立して荷電可能な区画室となされ、図2に示した荷電装置3が区画室毎に配置される。
【0077】
この例では、2つの煙道系列をA系列及びB系列としたとき、A系列には、2系統の電気集塵ユニットA1,A2が並列に設けられる。電気集塵ユニットA1には電気集塵装置15が2基設けられる。電気集塵ユニットA2にも電気集塵装置15が2基設けられる。各々の電気集塵装置15が図11に示したようにユニット化されている。B系列にも電気集塵装置15が同様にして設けられるが、その説明は省略する。
【0078】
図3において、電気集塵ユニットA1のセクション1Sの区画室16aの集塵極槌打装置24a(図1参照)は、便宜上、符号A1−11で示す。そのセクション2Sの区画室16bの集塵極槌打装置24b(図1参照)は、同様に、符号A1−21で示す。そのセクション3Sの区画室16cの集塵極槌打装置24c(図1参照)は、同様に、符号A1−31で示す。そのセクション1Sの区画室17aの集塵極槌打装置25a(図1参照)は、同様に、符号A1−12で示す。
【0079】
そのセクション2Sの区画室17bの集塵極槌打装置25b(図1参照)は、同様に、符号A1−22で示す。そのセクション3Sの区画室17cの集塵極槌打装置25c(図1参照)は、同様に、符号A1−32で示す。これらの集塵極槌打装置A1−11,A1−21,A1−31,A1−12,A1−22,A1−32は制御装置55によって制御される。
【0080】
また、電気集塵ユニットA1の入口ダンパ19(図1参照)は、符号A1−1で示す。入口ダンパ20(図1参照)は、符号A1−2で示す。出口ダンパ22(図1参照)は、符号A1−3で示す。出口ダンパ23(図1参照)は、符号A1−4で示す。これらの入口ダンパA1−1、入口ダンパA1−2、出口ダンパA1−3及び出口ダンパA1−4は、図1に示したダンパ駆動装置43によって駆動される。
【0081】
電気集塵ユニットA2のセクション1Sの第1室16には、電気集塵ユニットA1と同様にして集塵極槌打装置A2−11が設けられる。そのセクション2Sの第1室16には集塵極槌打装置A2−21が設けられる。そのセクション3Sの第1室16には集塵極槌打装置A2−31が設けられる。そのセクション1Sの第2室17には集塵極槌打装置A2−12が設けられる。そのセクション2Sの第2室17には集塵極槌打装置A2−22が設けられる。そのセクション3Sの第2室17には集塵極槌打装置A2−32が設けられる。これらの集塵極槌打装置A2−11,A2−21,A2−31,A2−12,A2−22,A2−32は制御装置55によって制御される。
【0082】
また、電気集塵ユニットA2の入口には、電気集塵ユニットA1と同様にして、入口ダンパA2−1及び入口ダンパA2−2が設けられる。その出口には出口ダンパA2−3及び出口ダンパA2−4が設けられる。これらの入口ダンパA2−1、入口ダンパA2−2、出口ダンパA2−3及び出口ダンパA2−4も、図1に示したようなダンパ駆動装置43によって駆動される。
【0083】
なお、A系列の入口煙道18とB系列の入口煙道18との間には入口コモンダンパ49が設けられ、電気集塵装置15の入口側において、A系列の煙道とB系列の煙道との間で電気集塵前の排ガスを連絡(連通)できるようになっている。また、A系列の出口煙道21とB系列の出口煙道21との間には出口コモンダンパ59が設けられ、電気集塵装置15の出口側において、A系列の煙道とB系列の煙道との間で電気集塵後の排ガスを連絡(連通)できるようになっている。
【0084】
例えば、A系列の電気集塵ユニットA1,A2等の保守等において、入口コモンダンパ49、出口コモンダンパ59の開閉動作に協働して、入口ダンパA1−1、入口ダンパA1−2、入口ダンパA2−1、入口ダンパA2−2、出口ダンパA1−3、出口ダンパA1−4、出口ダンパA2−3、出口ダンパA2−4を開閉動作することで、A系列の電気集塵ユニットA1,A2をパスできるようになっている。
【0085】
ここで、図4を参照して、インターバル荷電槌打の設定例について説明する。図4に示すインターバル荷電槌打によれば、槌打タイマを設定して集塵極槌打装置A1−11,A1−21,A1−31,A1−12,A1−22,A1−32等を制御するようになされる。
【0086】
この例では、図4に示す入口ダンパA1−1,A1−2及び出口ダンパA1−3,A1−4を全開した状態で、かつ、図2に示した集塵極1及び放電極2の間を荷電した状態で区画室16a,16b,16c等の集塵極1に対して間欠的に槌打を繰り返すように、集塵極槌打装置A1−11,A1−21,A1−31,A1−12,A1−22,A1−32等を制御する。図4に示す梨地は、図2に示した集塵極1及び放電極2の間を荷電している状態である。
【0087】
【表1】

【0088】
電気集塵ユニットA1の集塵極槌打装置A1−11,A1−21,A1−31,A1−12,A1−22,A1−32の槌打タイマによれば、図4に示す区画室16a,17aが割り当てられたセクション1Sの集塵極槌打装置A1−11,A1−12が、表1に示すように、4秒間だけ集塵極1の槌打動作を実行し、その後、29秒間その槌打動作を停止する。区画室16b,17bが割り当てられたセクション2Sの集塵極槌打装置A1−21,A1−22は、4秒間だけ集塵極1の槌打動作を実行し、その後、63秒間その槌打動作を停止する。区画室16c,17cが割り当てられたセクション3Sの集塵極槌打装置A1−31,A1−32は、4秒間だけ集塵極1の槌打動作を実行し、その後、96秒間その槌打動作を停止する。
【0089】
このような槌打タイマの設定に基づいて集塵極槌打装置A1−11,A1−21,A1−31,A1−12,A1−22,A1−32が制御される。この例では、集塵極槌打装置A1−11,A1−21,A1−31,A1−12,A1−22,A1−32が終日24時間の稼働設定時間に渡って、槌打タイマに基づくインターバル荷電槌打を実行する。図4に示す電気集塵ユニットA2の集塵極槌打装置A2−11,A2−21,A2−31,A2−12,A2−22,A2−32についても同様に制御され、更に、B系列の電気集塵ユニットB1,B2についても同様に制御される。
【0090】
続いて、図5を参照して、1荷電区分のトリップ時の制御例について説明する。図5に示す1荷電区分のトリップ時の制御例によれば、インターバル荷電槌打の実施中に、当該系列の電気集塵装置15において、1荷電区分の故障が検出された場合は、当該系列で故障対象となっている電気集塵装置15の入口ダンパ19,20及び出口ダンパ22,23を閉止せずに、煤塵濃度値Dbの監視を強化するようにした。ここに1荷電区分とは、荷電装置3が配置された区画室16a〜16c,17a〜17cの1つをいう。
【0091】
この煤塵濃度値Dbの監視強化の結果、煤塵濃度値Dbが上昇する場合、制御装置55は、インターバル荷電槌打であることを確認した上、当該系列の故障対象となった電気集塵装置15の入口ダンパ19,20及び出口ダンパ22,23を閉止するようにダンパ駆動装置43(図1参照)を制御する。これにより、インターバル荷電槌打を主体とし、排ガス中の煤塵濃度値Dbを検出する軽微な監視制御を継続できるようになる。
【0092】
続いて、図6を参照して、縦列2荷電区分以上のトリップ時の制御例について説明する。図6に示す縦列2荷電区分以上のトリップ時の制御例によれば、インターバル荷電槌打の実施中に、電気集塵装置15において、当該系列の複数の区画室16a〜16c,17a〜17c等で2荷電区分以上の故障が検出された場合であって、縦列に区画化された複数の区画室16a〜16c又は区画室17a〜17cの荷電装置3の故障が検出された場合は、一旦、インターバル荷電槌打からダンパ連動無荷電槌打へ運転モードを切り替え、煤塵濃度値Dbの監視を強化する。
【0093】
その後、制御装置55は煤塵濃度値Dbの監視強化に対応して、ダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替える共に、入口ダンパ19,20及び出口ダンパ22,23を閉止し、排ガス中の煤塵濃度値Dbの検出に基づいて負荷降下を実行する。
【0094】
なお、故障対象の荷電装置3が同系列の2荷電区分以上である場合であって、1荷電区分の荷電装置3のみの故障原因で煤塵濃度値Dbが上昇する場合は、インターバル荷電槌打であることを確認すると共に、当該系列で故障対象(故障区分)となった電気集塵装置15の入口ダンパ19又は20及び、出口ダンパ22又は23を閉止する。
【0095】
また、既にダンパ連動無荷電槌打中の場合は、運転モードをインターバル荷電槌打へ切り替えた後、故障対象の電気集塵装置15の入口ダンパ19又は20及び、出口ダンパ22又は23を閉止するようにダンパ駆動装置43(図1参照)を制御する。これらの制御によって、縦列に区画化された複数の区画室16a〜16c,17a〜17cの荷電装置3の故障が検出された場合は、ダンパ連動無荷電槌打を中止して運転モードをインターバル荷電槌打へ戻し、排ガス中の煤塵濃度値Dbの検出を継続する軽微な監視制御に移行できるようになる。
【0096】
続いて、図7を参照して、横列2〜4荷電区分のトリップ時の制御例について説明する。図7に示す横列2〜4荷電区分のトリップ(故障)時の制御例によれば、インターバル荷電槌打の実施中に、電気集塵装置15において、当該系列の複数の区画室16a〜16c,17a〜17c等で2荷電区分以上の故障が検出された場合であって、当該系列で横列に区画化された複数の区画室16a,17a、区画室16b,17b又は区画室16c,17bcの荷電装置3の故障が検出された場合も、一旦、インターバル荷電槌打からダンパ連動無荷電槌打へ運転モードを切り替え、煤塵濃度値Dbの監視を強化する。
【0097】
その後、制御装置55は煤塵濃度値Dbの検出に基づいてダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように集塵極槌打装置24a,25a、集塵極槌打装置24b,25b又は集塵極槌打装置24c,25cを制御する共に、当該系列の入口ダンパ19,20及び出口ダンパ22,23を半閉(50%)する。その後、制御装置55は排ガス中の煤塵濃度値Dbの監視を強化するようにした。
【0098】
例えば、煤塵濃度値Dbの監視強化の結果、煤塵濃度値Dbが上昇する場合は、負荷降下を実施する。この負荷降下では、当該ボイラシステムによって駆動される発電機の出力を下げるようになされる。なお、横列5荷電区分以上のトリップが発生した場合は、電気集塵装置15の入口ダンパ19,20及び出口ダンパ22,23を駆動せずに、即時、発電機の出力を下げて負荷降下を実施する。これにより、入口ダンパ19,20及び出口ダンパ22,23を半閉した状態でインターバル荷電槌打を実行できるようになる。
【0099】
続いて、本発明に係る電気集塵方法について、図8及び図9を参照して、電気集塵システム100の制御例(その1,2)を説明する。この電気集塵システム100では、インターバル荷電槌打の実施中に、当該系列の荷電装置3が故障した場合、運転モードがダンパ連動無荷電槌打に切り替わるが、その故障状況(故障区分数、位置関係、煤塵濃度値Db)に対応してインターバル荷電槌打へ復帰する制御を自動化した。この例では、故障対象の荷電装置3(故障区分)の系列、及び、その故障数(荷電区分)を区画室毎に確認するようにした。また、故障対象の荷電装置3が複数存在する場合は、同系列か他系列かで制御を分岐するようにした。
【0100】
これらを制御条件にして、図8に示すフローチャートのステップST1で制御装置55はインターバル荷電槌打の実施中に荷電装置3の故障有無を検出する。例えば、制御装置55は荷電装置3の故障有無を縦列及び横列の各区画室毎に検出するように図2に示した故障検出部6を制御する。故障検出部6は、荷電装置3の故障(トリップ)発生の有無を検出して故障検出信号S6aを制御装置55に出力する。故障検出部6は、荷電装置3の故障無しを示すハイレベルの故障検出信号S6a又は、荷電装置3の故障有りを示すローレベルの故障検出信号S6aを発生する。
【0101】
この例で、図3に示した縦列及び横列の各区画室16a〜16c,17a〜17c等で、故障検出部6によって荷電装置3の故障有りが検出された場合は、ステップST2で制御装置55は自動(インターバル荷電槌打)→手動(ダンパ連動無荷電槌打)へ運転モードを切り替えて煤塵濃度値Dbを監視する煤塵濃度制御を実行する。ここで縦列及び横列に区画化され、荷電装置3が配置された区画室16a〜16c,17a〜17cを荷電区分という。
【0102】
次にステップST3で制御装置55は、故障対象の荷電装置3が2荷電区分以上有るか否かを判別して制御を分岐する。この判別の際に、制御装置55は、メモリ51から故障参照マップを読み出す。故障参照マップには全系列(A,B)の区画室16a〜16c、17a〜17c等の位置と共に荷電装置3の故障判定情報として、故障判別値「0」が記憶されている。制御装置55は、故障検出部6から出力される故障検出信号S6a等をA/D変換する。
【0103】
このA/D変換後の故障検出データには、故障検出部6によって得られた荷電装置3の故障有無を示す故障検出情報が含まれている。この故障検出データと故障判別値「0」とを比較し、例えば、故障判別値「0」と、故障検出データに基づくEP電流=「0」とが一致し、その一致個数が2以上存在することで、荷電装置3の故障対象が2荷電区分以上有るか否かを判別できるようになる(判別基準)。
【0104】
2荷電区分以上の故障箇所が検出された場合は、ステップST4で故障対象の荷電装置3が同一系列(縦列2荷電区分)であるか否かに対応して制御を分岐する。この制御の際のメモリ51から読み出された故障参照マップには、荷電装置3の故障判定情報と共に、A系列の区画室16a〜16c、17a〜17c等の位置と、B系列の区画室16a〜16c、17a〜17c等の位置とが記憶されている。制御装置55は、故障対象の荷電装置3が、A系列の区画室16a〜16c、17a〜17c等に存在するのか、B系列の区画室16a〜16c、17a〜17c等に存在するのかを故障参照マップで判別できるようになる。
【0105】
A系列又はB系列等の同一系列(縦列2荷電区分)において、2荷電区分以上の故障箇所が検出された場合は、ステップST5で制御装置55は、既にダンパ連動無荷電槌打を終了しているか否かを判別する。この例では、ステップST2で制御装置55は自動(インターバル荷電槌打)→手動(ダンパ連動無荷電槌打)へ運転モードを切り替っている。既に、ダンパ連動無荷電槌打を終了している場合は、ステップST6でダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替える。
【0106】
上述のステップST5でダンパ連動無荷電槌打を未だ終了していない場合及び、上述の運転モードを切り替えた後は、ステップST7で制御装置55が故障検出データに基づいて集塵極槌打装置24a等を制御する。例えば、制御装置55は、図6に示す故障対象の区画室16a等の入口ダンパ19及び出口ダンパ22を閉止する。
【0107】
その後、ステップST8で制御装置55は、出口煙道21(EP出口)の煤塵濃度値Dbと判別基準値Dth(環境基準値)とを比較して制御を分岐する(煤塵濃度の傾向監視制御)。判別基準値Dthはメモリ51から読み出したものを使用する。この煤塵濃度の傾向監視制御によれば、煤塵濃度値Dbの判別基準値をDthとしたとき、出口煙道21の煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth未満である場合(Db<Dth)は、手動(ダンパ連動無荷電槌打)から自動(インターバル荷電槌打)へ切り替えて煤塵濃度制御を実行する。
【0108】
出口煙道21の煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth以上となった場合(Db≧Dth)は、ステップST9で負荷降下を実行する。この負荷降下では、当該ボイラシステムによって駆動される発電機の出力を下げるようになされる。また、作業員は故障した荷電装置3を修理して故障原因を除去する。例えば、断線した放電ワイヤー等を新品部材と交換する。故障原因が除去されると、故障検出部6は、「荷電装置3の故障(トリップ)発生無し」を検出してハイレベルの故障検出信号S6aを制御装置55に出力するようになる。
【0109】
そして、ハイレベルの故障検出信号S6aを入力した制御装置55は、ステップST10で運転モードを手動(ダンパ連動無荷電槌打)から自動(インターバル荷電槌打)へ切り替えて煤塵濃度値Dbの制御する煤塵濃度制御を実行する。その後、ステップST1に戻る。
【0110】
上述のステップST3で故障箇所が2荷電区分未満である場合は、ステップST11で制御装置55は、出口煙道21の煤塵濃度値Dbと判別基準値Dthとを比較して制御を分岐する。出口煙道21(EP出口)の煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth以上となった場合は、ステップST5に戻り、上述のステップST6,ST7,ST8及びST9の制御を経てステップST1に戻る。
【0111】
また、ステップST11で出口煙道21の煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth未満となった場合は、ステップST14に移行して、制御装置55は、手動(ダンパ連動無荷電槌打)→自動(インターバル荷電槌打)へ運転モードを切り替えて煤塵濃度値Dbの制御する煤塵濃度制御を実行する。これにより、インターバル荷電槌打を常時実施できるようになる。
【0112】
そして、ステップST15で制御装置55は、出口煙道21(EP出口)の煤塵濃度値Dbと判別基準値Dthとを比較して制御を分岐する。出口煙道21の煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth以上となった場合は、ステップST16で、制御装置55は、自動(インターバル荷電槌打)→手動(ダンパ連動無荷電槌打)へ運転モードを切り替えて煤塵濃度値Dbの制御する煤塵濃度制御を実行する。その後、ステップST8に戻る。
【0113】
上述のステップST4で同一系列において、2荷電区分以上の故障箇所が検出されない場合は、ステップST12で制御装置55は、故障箇所が横列4荷電区分以下であるか否かを判別して制御を分岐する。
【0114】
故障箇所が横列4荷電区分以下である場合は、ステップST13に移行して制御装置55は、対象出口煙道21ダンパを50%だけ閉止する。その後、ステップST11に戻って制御装置55は、出口煙道21(EP出口)の煤塵濃度値Dbと判別基準値Dthとを比較して制御を分岐する。出口煙道21の煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth以上となった場合は、ステップST5に戻り、上述のステップST6,ST7,ST8及びST9の制御を経てステップST1に戻る。
【0115】
上述のステップST11で出口煙道21の煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth未満である場合及び、上述のステップST8で出口煙道21の煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth未満である場合は、ステップST14で制御装置55は、手動(ダンパ連動無荷電槌打)→自動(インターバル荷電槌打)へ運転モードを切り替えて煤塵濃度値Dbの監視する煤塵濃度制御を実行する。
【0116】
その後、ステップST15で制御装置55は、出口煙道21の煤塵濃度値Dbと判別基準値Dthとを比較して制御を分岐する。出口煙道21の煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth以上となった場合は、ステップST16で、制御装置55は、自動(インターバル荷電槌打)→手動(ダンパ連動無荷電槌打)へ運転モードを切り替える煤塵濃度制御を実行する。その後、ステップST8に戻る。
【0117】
ステップST15で出口煙道21の煤塵濃度値Dbが判別基準値Dth未満である場合は、ステップST1に戻って、制御装置55は煤塵濃度値Dbの監視を強化するべく、荷電装置3の故障有無の検出(監視)を継続するようになる。
【0118】
このように実施形態に係る電気集塵システム100によれば、インターバル荷電槌打の実施中に、制御装置55は、故障検出部6から得られる荷電装置3の故障有無を含む故障検出情報に基づいて、インターバル荷電槌打を常時実施するように集塵極槌打装置24a〜24c、25a〜25cを制御すると共に、ダンパ駆動装置43を制御する。
【0119】
このインターバル荷電槌打の実施中に、荷電装置3の故障有りが検出された場合、インターバル荷電槌打からダンパ連動無荷電槌打へ運転モードを切り替え、その後、荷電装置3の故障状況及び、出口煙道21の煤塵濃度の検出に基づいてダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように集塵極槌打装置24a〜24c、25a〜25cを制御する。
【0120】
これらの制御の自動化により、故障状況の自動判別に基づいて、その状況に応じた荷電制御及び入口ダンパ19,20、出口ダンパ22,23を自動的に開閉できるので、インターバル荷電槌打の実施中、荷電装置3の故障が検出された場合、オペレータの判断を介さずに、即時に、運転モードをインターバル荷電槌打からダンパ連動無荷電槌打への自動切り替え、並びに、荷電装置3の故障状況及び出口煙道21の煤塵濃度値Dbの検出に基づくダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打への自切り替えを実行できるようになる。
【0121】
しかも、インターバル荷電槌打でも、入口ダンパ19,20、出口ダンパ22,23が閉止されることから、故障を起こした荷電装置の区画室から出口煙道へ流出する煤塵を抑制できるようになる。これにより、インターバル荷電槌打の実施中に荷電装置3が故障した場合であっても、煤塵濃度値Dbを環境規制値以下に抑制できるので、煤塵濃度値Dbが環境規制値(判別基準値Dth)を超過する事態を防止できるようになる。石炭焚きのボイラシステムを効率良く運用できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、石炭火力用の排ガス処理システムの通風系統に設けられて、煤塵を除去する電気集塵装置及びその制御方法に適用して極めて好適である。
【符号の説明】
【0123】
1 集塵極
2 放電極
3 荷電装置
4 槌打装置
6 故障検出部
10 押込通風機
11 空気予熱器
12 火炉
13 排ガス脱硝装置
14 熱回収器
15 電気集塵装置
15a ケース
15b 区画板
16 第1室
16a 区画室(前室)
16b 区画室(中間室)
16c 区画室(後室)
17 第2室
17a 区画室(前室)
17b 区画室(中間室)
17c 区画室(後室)
18 入口煙道
19,20,A1−1,A1−2 入口ダンパ
21 出口煙道
22,23,A1−3,A1−4 出口ダンパ
24a,24b,24c,A1−11,A1−21,A1−31 集塵極槌打装置
25a,25b,25c,A1−12,A1−22,A1−32 集塵極槌打装置
26a,26b,26c,27a,27b,27c 放電極荷電装置
30 誘引通風機
32 排ガス脱硫装置
35 再加熱器
40 煙突
100 電気集塵システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼用空気を火炉内に送り込む押込通風機と前記火炉内の圧力の制御を行う誘引通風機とを有した平衡通風式のボイラシステムの通風系統に設置され、前記火炉からの排ガス中の煤塵を除去するために、ケースの内部が複数に区画化され、それぞれが独立して荷電可能な区画室と、当該各区画室に設けられ前記煤塵を捕集する集塵極及び放電極と、前記集塵極及び放電極間を荷電する荷電装置と、前記排ガスの流通を制御するために当該ケースの入口煙道に設けられた入口ダンパ及び、出口煙道に設けられた出口ダンパと、前記集塵極を槌打する集塵極槌打装置とを備えた電気集塵システムにおいて、
前記入口ダンパ及び前記出口ダンパを開いた状態で、かつ、前記集塵極及び放電極間を荷電した状態で前記区画室の前記集塵極に対して間欠的に槌打を繰り返す運転モードをインターバル荷電槌打とし、
前記入口ダンパ及び前記出口ダンパを閉じた状態で、かつ、前記集塵極及び放電極間を無荷電状態で前記区画室の前記集塵極に対して所定の回数だけ槌打を行う運転モードをダンパ連動無荷電槌打としたとき、
前記荷電装置の故障有無を検出する検出部と、
前記検出部から得られる前記荷電装置の故障有無を含む故障情報に基づいて前記集塵極槌打装置を制御する制御装置とを含み構成され、
前記制御装置は、
前記インターバル荷電槌打を常時実施するように前記集塵極槌打装置を制御し、
前記インターバル荷電槌打の実施中に前記荷電装置の故障有りが検出された場合に、前記インターバル荷電槌打から前記ダンパ連動無荷電槌打へ運転モードを切り替え、その後、前記荷電装置の故障状況及び前記出口煙道の煤塵濃度の検出に基づいて前記ダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように前記集塵極槌打装置を制御することを特徴とする電気集塵システム。
【請求項2】
前記火炉から排出される排ガス中の煤塵の濃度を検出する濃度検出部を備え、
前記制御装置は、
前記濃度検出部から得られる煤塵濃度情報に基づく煤塵濃度値と、槌打方式を決定する判別基準値とを比較し、
前記煤塵濃度値が判別基準値未満である場合は、
前記ダンパ連動無荷電槌打から前記インターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように前記集塵極槌打装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の電気集塵システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記煤塵濃度値が判別基準値以上となる場合は、
前記ダンパ連動無荷電槌打を実施するように前記集塵極槌打装置を制御することを特徴とする請求項2に記載の電気集塵システム。
【請求項4】
前記ケースの内部が縦列及び横列に区画化され、それぞれが独立して荷電可能な区画室となされ、
前記荷電装置が区画室毎に配置され、
前記制御装置は、
前記インターバル荷電槌打の実施中に複数の前記区画室の荷電装置に故障有りが検出された場合であって、
前記ボイラシステムによって駆動される発電機の出力を下げる動作を負荷降下としたとき、
縦列に区画化された複数の前記区画室の荷電装置の故障が検出された場合は、前記ダンパ連動無荷電槌打から前記インターバル荷電槌打へ運転モードを切り替える共に、前記入口ダンパ及び出口ダンパを閉止し、前記排ガス中の煤塵濃度の検出に基づいて前記負荷降下を実行し、
横列に区画化された複数の前記区画室の荷電装置の故障が検出された場合は、前記入口ダンパ及び出口ダンパを半閉すると共に、前記排ガス中の煤塵の濃度検出に基づいて前記ダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるように前記集塵極槌打装置を制御することを特徴とする請求項1乃至3に記載の電気集塵システム。
【請求項5】
燃焼用空気を火炉内に送り込む押込通風機と前記火炉内の圧力の制御を行う誘引通風機とを有した平衡通風式のボイラシステムの通風系統に設置され、前記火炉からの排ガス中の煤塵を除去するために、ケースの内部が複数に区画化され、それぞれが独立して荷電可能な区画室と、当該各区画室に設けられ前記煤塵を捕集する集塵極及び放電極と、前記集塵極及び放電極間を荷電する荷電装置と、前記排ガスの流通を制御するために当該ケースの入口煙道に設けられた入口ダンパ及び、出口煙道に設けられた出口ダンパと、前記集塵極を槌打する集塵極槌打装置とを備えた電気集塵システムが、
前記荷電装置の故障有無を検出するステップと、
検出によって得られた前記荷電装置の故障有無を含む故障情報に基づいて前記集塵極槌打装置を制御するステップとを含み実行し、
前記集塵極槌打装置を制御する際に、
前記入口ダンパ及び前記出口ダンパを開いた状態で、かつ、前記集塵極及び放電極間を荷電した状態で前記区画室の前記集塵極に対して間欠的に槌打を繰り返す運転モードをインターバル荷電槌打とし、
前記入口ダンパ及び前記出口ダンパを閉じた状態で、かつ、前記集塵極及び放電極間を無荷電状態で前記区画室の前記集塵極に対して所定の回数だけ槌打を行う運転モードをダンパ連動無荷電槌打としたとき、
前記インターバル荷電槌打を常時実施するステップと、
前記インターバル荷電槌打の実施中に前記荷電装置の故障有りが検出された場合に、前記インターバル荷電槌打から前記ダンパ連動無荷電槌打へ運転モードを切り替えるステップと、
前記荷電装置の故障状況及び、前記出口煙道の煤塵濃度の検出に基づいて前記ダンパ連動無荷電槌打からインターバル荷電槌打へ運転モードを切り替えるステップとを実行することを特徴とする電気集塵方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−206000(P2012−206000A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72557(P2011−72557)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】