説明

電気集塵デバイスおよびそれを用いた外気処理装置

【課題】空気などのガス中に含まれる塵埃を捕集して浄化する電気集塵デバイスにおいて、圧力損失が低く高い集塵効率を維持できるとともに、部品点数を少なくして組み立ての手間を軽減した電気集塵デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】風路内に、前記被処理ガス中の塵埃を帯電させる帯電部と、帯電された塵埃を捕集する集塵部と、集塵部に備えた電極を洗浄するための洗浄手段とを備えた電気集塵デバイスにおいて、前記洗浄手段を前記集塵電極の上方側に配置し、水を溜める貯留部と、前記集塵電極上に水を流すスリットを備えるとともに、前記集塵電極を支持する集塵電極支持部材を備えるという構成にしたことにより、圧力損失が低い構造で電極表面に確実に水膜を形成させ、電極表面を清浄な状態に保つことで高い集塵効率を維持するとともに、部品点数を少なくして組み立ての手間を軽減した電気集塵デバイスを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気などのガス中に含まれる塵埃を捕集して浄化する電気集塵デバイスおよびそれを用いた外気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気集塵デバイスは、主にコロナ放電により空気分子をイオン化し、外気に含まれる塵埃を帯電させる帯電部と、電極板を積層し、交互に異なる電圧を印加して電場を形成することにより、帯電部で帯電させた塵埃をクーロン力により捕集する集塵部とを備え、被処理ガス中の塵埃を電気的に集塵するものが知られている。
【0003】
この種の電気集塵デバイスでは、塵埃が上記帯電部や集塵部の各電極に付着することで集塵性能が徐々に低下してしまう。集塵性能を維持するために、電極表面に付着した塵埃を洗い流すための洗浄手段と、洗浄手段から噴霧された洗浄液を電極表面に流すための案内板を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、その電気集塵デバイスについて図11を参照しながら説明する。
【0005】
図11に示すように、電気集塵デバイス101はケーシング102と、風路103と、送風手段104とを備えている。そして風路103内に帯電部105と、集塵部106と、噴霧部107と、案内板108を備えている。案内板108には、被処理ガスを通過させるための流通孔109が設けられている。電気集塵デバイス101に被処理ガスが流入すると、被処理ガスは案内板108に設けられた流通孔109を通じて帯電部105に流入し、被処理ガス中の塵埃が帯電される。帯電された塵埃を含む被処理ガスは引き続き集塵部106に流入し、帯電された塵埃がクーロン力によって集塵側の電極に引き寄せられて捕捉、除去される。洗浄時には、噴霧部107から水を噴霧することにより、案内板108を通じて電極表面に水が流れ、付着した塵埃が洗い流される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−131795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の電気集塵デバイスにおいては、案内板を通じて電極表面に水を流すことにより、電極表面に水膜を形成させているが、被処理ガスが風路内に備えられた案内板に設けられた流通孔を通じて帯電部に流入する構造となっているため、圧力損失が大きいという課題を有していた。また、電極表面を洗浄する手段として、帯電部や集塵部を構成する部材とは別にノズルや案内板を備えているため、部品点数が多く、組み立てが煩雑になるという課題を有していた。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、圧力損失が低い構造で電極表面に確実に水膜を形成させ、電極表面を清浄な状態に保つことで高い集塵効率を維持するとともに、部品点数を少なくして組み立ての手間を軽減した電気集塵デバイス、およびそれを用いた外気処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために、本発明は、被処理ガスが流れる風路内に、前記被処理ガス中の塵埃を帯電させる帯電部と、荷電電極と集塵電極とを交互に積層し、前記帯電部で帯電された塵埃を前記集塵電極上に捕集する集塵部と、前記集塵電極上に捕集された塵埃を洗浄するための洗浄手段とを備えた電気集塵デバイスにおいて、前記洗浄手段は前記集塵電極の上方側に配置されており、水を溜める貯留部と、前記集塵電極上に水を流すスリットを備えるとともに、前記集塵電極を支持する集塵電極支持部材を備えたことを特徴とする電気集塵デバイスであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被処理ガスが流れる風路内に、前記被処理ガス中の塵埃を帯電させる帯電部と、荷電電極と集塵電極とを交互に積層し、前期帯電部で帯電された塵埃を前記集塵電極上に捕集する集塵部と、前記集塵電極上に捕集された塵埃を洗浄するための洗浄手段とを備えた電気集塵デバイスにおいて、前記洗浄手段は前記集塵電極の上方側に配置されており、水を溜める貯留部と、前記集塵電極上に水を流すスリットを備えるとともに、前記集塵電極を支持する集塵電極支持部材を備えたという構成にしたことにより、圧力損失が低い構造で電極表面に確実に水膜を形成させ、電極表面を清浄な状態に保つことで高い集塵効率を維持するとともに、部品点数を少なくして組み立ての手間を軽減した電気集塵デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1の電気集塵デバイスの模式図
【図2】同電気集塵デバイスに備えた帯電部の正面図
【図3】同電気集塵デバイスに備えた帯電部の斜視図
【図4】同電気集塵デバイスに備えた帯電部の断面を示す構成図
【図5】同電気集塵デバイスに備えた集塵部の斜視図
【図6】同電気集塵デバイスに備えた集塵部の正面から見た断面を示す構成図
【図7】同電気集塵デバイスに備えた集塵部の側面から見た断面を示す構成図
【図8】同電気集塵デバイスに備えた洗浄手段を真下から見た平面図
【図9】同電気集塵デバイスに備えた洗浄手段の断面を示す構成図
【図10】本実施の形態2の外気処理装置の構成図
【図11】従来の電気集塵デバイスの構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の請求項1に記載の発明は、被処理ガスが流れる風路内に、前記被処理ガス中の塵埃を帯電させる帯電部と、荷電電極と集塵電極とを交互に積層し、前期帯電部で帯電された塵埃を前記集塵電極上に捕集する集塵部と、前記集塵電極上に捕集された塵埃を洗浄するための洗浄手段とを備えた電気集塵デバイスにおいて、前記洗浄手段は前記集塵電極の上方側に配置されており、水を溜める貯留部と、前記集塵電極上に水を流すスリットを備えるとともに、前記集塵電極を支持する集塵電極支持部材を備えたことを特徴とする電気集塵デバイスである。
【0013】
集塵電極の上方側に配置された洗浄手段の貯留部に水を供給すると、重力により洗浄手段に備えたスリットから水が流れ落ち、集塵電極表面に水膜が形成される。これにより集塵電極に堆積した塵埃が除去され、電極表面を清浄な状態に保つことができ、高い集塵効率を維持することが可能となる。この時、流入するガスは洗浄手段を通過しない構成となっているため、洗浄手段の配置による圧力損失がほとんどなく、電極表面に水膜を形成させることができる。
【0014】
また洗浄手段に集塵電極を支持する集塵電極支持部材を備えて一体化したことにより、別部材を設けることなく集塵電極を支持することができ、部品点数を少なくして組み立ての手間を軽減した電気集塵デバイスを提供することができる。
【0015】
本発明の請求項2に記載の発明は、集塵電極支持部材は、洗浄手段に備えたスリットに設けた突起部により構成されることを特徴とする請求項1に記載の電気集塵デバイスである。
【0016】
スリットに突起部を設けることにより、スリットの一部分にのみ、スリットよりも幅の狭い空間が形成される。この空間の幅を、集塵電極の厚みとほぼ同等とすることにより、集塵電極を突起部に挟んで支持することができる。
【0017】
本発明の請求項3に記載の発明は、洗浄手段に備えたスリットの下端に、集塵電極の奥行き方向に沿って、上方から下方に向かって拡がる傾斜を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の電気集塵デバイスである。
【0018】
これにより、スリットから集塵電極上に水が流れる際に、傾斜に沿って水を流すことが可能となり、水膜を形成させる範囲を拡げることができる。
【0019】
本発明の請求項4に記載の発明は、集塵電極の表面に親水性を付与したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電気集塵デバイスである。
【0020】
洗浄手段を用いて集塵電極を洗浄する際に、集塵電極の表面に親水性を付与することにより、電極表面に均一な水膜が形成される。これにより、電極上に捕集された塵埃が洗い流されやすくなって電極を清浄な状態に保つことができ、高い集塵効率を維持することが可能となる。
【0021】
本発明の請求項5に記載の発明は、荷電電極の表面の一部を、絶縁物で被覆したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電気集塵デバイスである。
【0022】
集塵部の荷電電極と集塵電極が向かい合っている部分において、荷電電極と集塵電極の両方に導電物が露出している場合、電極間に電圧を印加しながら集塵電極の表面に水膜を形成しようとすると、電極間隔を狭くしたり、洗浄手段から電極表面に供給された水が跳ねたりした場合に、水により一時的に電極間隔が狭くなり、スパークが発生する可能性がある。荷電電極の表面の一部を絶縁物で被覆することにより、電極間に電流が流れるのを防ぎ、スパークの発生を防止することができる。
【0023】
本発明の請求項6に記載の発明は、荷電電極に電圧を印加する電圧供給部材と、荷電電極との接点を、洗浄手段に備えたスリットの下端よりも高い位置に配置したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電気集塵デバイスである。
【0024】
荷電電極に確実に電圧を印加するためには、電圧供給部材と荷電電極との接点は導電物同士が接触していることが望ましいが、接点に洗浄手段から供給された水がかかってしまうと、スパークが発生したり、水を伝って電圧供給部材と集塵電極とが電気的につながって短絡したりする可能性がある。電圧供給部材と荷電電極との接点を、洗浄手段に備えたスリットの下端よりも高い位置に配置することにより、洗浄手段から供給される水が接点に触れるのを防ぎ、スパークの発生や短絡を防止することができる。
【0025】
本発明の請求項7に記載の発明は、外気を吸込む吸込口と室内へ処理した外気を吹出す吹出口を有する本体ケースと、この本体ケース内の前記吸込口と前記吹出口を結ぶ風路に設けた集塵手段および送風手段を備え、前記集塵手段として請求項1から6のいずれかに記載の電気集塵デバイスを備えたことを特徴とする外気処理装置である。
【0026】
これにより、圧力損失が低い構造で電極表面に確実に水膜を形成させ、電極表面を清浄な状態に保つことで高い集塵効率を維持できる外気処理装置を提供することができる。
【0027】
本発明の請求項8に記載の発明は、本体ケース内に水タンクを設け、前記水タンクと洗浄手段とをポンプにより接続し、水循環式としたことを特徴とする請求項7に記載の外気処理装置である。
【0028】
これにより、洗浄時に使用する水を循環させて再利用することができ、使用水量が小さく運転コストの低い外気処理装置を提供することができる。
【0029】
本発明の請求項9に記載の発明は、集塵手段と水タンクとの間に、塵埃除去フィルタを備えたことを特徴とする請求項7または8に記載の外気処理装置である。
【0030】
洗浄時に使用した水は塵埃を含んで汚れているため、塵埃を除去して排水、または循環再利用する必要がある。塵埃除去フィルタを備えることにより、汚れた水から塵埃を除去することができ、水をきれいにして排水、または循環再利用することが可能となる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0032】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照しながら説明する。
【0033】
図1は本発明の実施の形態1の電気集塵デバイスの模式図、図2は同電気集塵デバイスに備えた帯電部の正面図、図3は同電気集塵デバイスに備えた帯電部の斜視図、図4は同電気集塵デバイスに備えた帯電部の断面を示す構成図、図5は同電気集塵デバイスに備えた集塵部の斜視図、図6は同電気集塵デバイスに備えた集塵部の正面から見た断面を示す構成図、図7は同電気集塵デバイスに備えた集塵部の側面から見た断面を示す構成図、図8は同電気集塵デバイスに備えた洗浄手段を真下から見た平面図、図9は同電気集塵デバイスに備えた洗浄手段の断面を示す構成図である。
【0034】
実施の形態1の電気集塵デバイスの構成を説明する。
【0035】
図1に示すように、電気集塵デバイス1は、被処理ガスが流れる風路2内に、前記被処理ガス中の塵埃を帯電させる帯電部3と、前記帯電部3で帯電された塵埃を捕集する集塵部4と、前記集塵部4で捕集した塵埃を洗浄するための洗浄手段5とを備えている。洗浄手段5は、集塵部4の上方側に配置している。
【0036】
図2および図3に示すように、帯電部3は、放電電極6と、放電電極6と所定の距離(本実施の形態では15mm)だけ離した位置に電極板である接地電極7とからなる。放電電極6は放電電極支持部材8に溶接やかしめ等で固定している。接地電極7は枠体9に固定し、枠体9と放電電極6とは電気的に絶縁するために、放電電極6を碍子10で電気的に浮かせている。
【0037】
本実施の形態では、放電電極6はステンレス製の先端の尖った針状のものを使用している。放電電極6は従来から様々な形態があり、例えば直径φ0.05mm〜φ0.3mm程度のワイヤ状の金属線や、板金を鋸歯状に打ち抜いたものなどがあり、どれを使用しても良い。
【0038】
コロナ放電を発生させるために、放電電極6には−7kVの直流の高電圧を印加する。なお、印加電圧は一例であり、3〜30kVで極性はマイナス、プラスのどちらでもよい。印加電圧は必要とする捕集性能、電気集塵装置の大きさ、高電圧電源にかけられるコストなどから設計者が自由に選べるが、全てがバランスよくなるように本実施の形態では−7kVとした。
【0039】
枠体9はアースに接続し、枠体9と電気的につながった接地電極7と放電電極6との間には電位差が発生する。これにより、放電電極6の先端に電界が集中し、高電圧が印加された放電電極6先端付近の空気が絶縁破壊を起こし、コロナ放電が生じる。帯電部3に流入した被処理ガスがここを通過する際に、被処理ガス中に含まれる塵埃は放電電極6に印加した電圧と同じ極性(本実施の形態ではマイナス)に帯電される。
【0040】
図4に示すように、接地電極7の端部で、放電電極6を支持する放電電極支持部材8とは反対側に位置している端部を導電性部材11として金属板で挟んでいる。この金属板を枠体9と電気的に接続することで、接地電極7の表面で発生したコロナ放電の電流を流すことが可能となる。本実施の形態では、金属板としてアルミ板を使用したが、導電性を有する材質であればよく、ステンレス等の金属や、導電性を有する樹脂等でも構わない。
【0041】
帯電部3の下流側には、集塵部4を配置する。図5、図6に示すように、集塵部4は高電圧を印加する荷電電極12と、それと対向してアースに接続された集塵電極13とが交互に一定の間隔で配置されている。集塵電極13の上方側には、洗浄手段5を備えている。
【0042】
本実施の形態では荷電電極12に−8kVを印加し、荷電電極12と集塵電極13との間隔は6mmである。これにより、荷電電極12と集塵電極13との間に電界が発生し、ここを帯電した塵埃が通過する際に、電界によるクーロン力が働き、帯電した塵埃が主に集塵電極13上に捕集される。
【0043】
本実施の形態では、荷電電極12を、絶縁物であるPETフィルムでラミネートしたアルミ板とした。集塵電極13には、表面に親水性塗料を塗装したアルミ製の電極板を使用している。集塵部の荷電電極12は高電圧を印加できるように接続し、集塵電極13は電気的にアースに接続する必要がある。その方法として前述したように、帯電部の接地電極7と同様の方法で行っても良いが、本実施の形態では、より簡単な構造になるように、各荷電電極12または集塵電極13の一部を、電圧供給部材14または集塵電極接地部材18に接触させることで導通している。また、荷電電極支持部材15を用いて、荷電電極12を挟み込んで支える構成とした。
【0044】
図7に示すように、荷電電極12に電圧を印加する電圧供給部材14と、荷電電極12との接点は、洗浄手段5の下端よりも高い位置に配置した。荷電電極12の表面を絶縁化あるいは半導電化し、電圧供給部材14および荷電電極12と電圧供給部材14の接点に水がかからない構造とすることにより、荷電電極12と集塵電極13との間に水が溜まってもスパークを防止することができる。
【0045】
図8に示すように、洗浄手段5は水を溜める貯留部16と、集塵電極13上に水を流すスリット17を備えるとともに、集塵電極13を挟み込んで支持するための集塵電極支持部材19を備えている。スリット17は、集塵電極13の表面に水を流し、水膜を形成させるために必要な空隙が設けられる幅、例えば1.5mmとした。集塵電極支持部材19は、スリット17に設けられた複数の突起部からなり、突起部の高さは0.5mmとした。本実施の形態では、集塵電極13を固定できるように、突起部の数を3つとした。
【0046】
集塵部4の組立に際しては、初めに荷電電極12を電圧供給部材14および荷電電極支持部材15を用いて固定し、次に集塵部4と洗浄手段5とを固定した上で、洗浄手段5に備えたスリット17に設けた集塵電極支持部材19に集塵電極13を挟み込んで固定し、最後に集塵電極接地部材18を組み込んで固定することにより、組立がスムーズに行えるため好ましい。
【0047】
図9に示すように、スリット17の下端には、集塵電極13の奥行き方向(ガスの流れと平行方向)に沿って、上方から下方に向かって拡がる傾斜20を設けている。
【0048】
洗浄手段5に備えた貯留部16に水が供給されると、重力によりスリット17を通じて集塵電極13の表面に水が流れ落ち、集塵電極13の表面に水膜が形成される。
【0049】
実施の形態1の電気集塵デバイスの作用を説明する。
【0050】
帯電部3に備えた放電電極6には−10kVの直流高電圧を印加し、接地電極7および枠体9はアースに接続する。これにより、放電電極6と接地電極7との間に電位差が発生するため、放電電極6の先端に電界が集中し、高電圧が印加された放電電極6先端付近の空気が絶縁破壊を起こし、コロナ放電が生じる。集塵部4に備えた荷電電極12には−8kVの直流高電圧を印加し、集塵電極13はアースに接続する。これにより、荷電電極12と集塵電極13との間に電界が発生する。
【0051】
送風手段(図示せず)が駆動し、被処理ガスが電気集塵デバイス1に流入すると、帯電部3を通過する際に被処理ガスに含まれる塵埃が帯電される。続いて帯電された塵埃を含む被処理ガスは集塵部4に流入する。集塵部4を通過する際に、電界によるクーロン力が働き、帯電した塵埃が集塵電極13上に捕集される。
【0052】
水供給手段(図示せず)により洗浄手段5に水が供給されると、洗浄手段5に備えた貯留部16に水が溜まり、重力によりスリット17を通じて集塵電極13の表面に水が流れ落ち、集塵電極13の表面に水膜が形成される。このとき、集塵電極13上に捕集された塵埃は洗い流され、水とともに排出される。
【0053】
実施の形態1の電気集塵デバイスの効果を説明する。
【0054】
上記構成とすることにより、集塵電極13の表面に水膜が形成されて集塵電極13に堆積した塵埃が除去され、電極表面を清浄な状態に保つことができ、高い集塵効率を維持することが可能となる。また流入する被処理ガスは洗浄手段5を通過しない構成となっているため、洗浄手段5の配置による圧力損失がほとんどなく、電極表面に水膜を形成させることができる。
【0055】
また洗浄手段5に集塵電極13を支持する集塵電極支持部材19を備えて一体化したことにより、別部材を設けることなく集塵電極13を支持することができ、部品点数を少なくして組み立ての手間を軽減した電気集塵デバイスを提供することができる。
【0056】
また本実施の形態では、集塵電極支持部材19は、洗浄手段5に備えたスリット17に設けた突起部とした。スリット17に突起部を設けることにより、スリット17の一部分にのみ、スリット17よりも幅の狭い空間が形成される。この空間の幅を、集塵電極13の厚みとほぼ同等とすることにより、集塵電極13を突起部に挟んで支持することができる。
【0057】
また本実施の形態では、洗浄手段5に備えたスリット17の下端に、集塵電極13の奥行き方向に沿って、上方から下方に向かって拡がる傾斜20を設けた。これにより、スリット17から集塵電極13上に水が流れる際に、傾斜20に沿って水を流すことが可能となり、水膜を形成させる範囲を拡げることができる。
【0058】
また本実施の形態では、集塵電極13の表面に親水性塗料を塗装することにより、電極表面に親水性を付与した。洗浄手段5を用いて集塵電極13を洗浄する際に、集塵電極13の表面に親水性を付与することにより、電極表面に均一な水膜が形成される。これにより、電極上に捕集された塵埃が洗い流されやすくなって電極を清浄な状態に保つことができ、高い集塵効率を維持することが可能となる。
【0059】
また本実施の形態では、荷電電極12の表面の一部を、絶縁物であるPETフィルムで被覆した。集塵部4の荷電電極12と集塵電極13が向かい合っている部分において、荷電電極12と集塵電極13の両方に導電物が露出している場合、電極間に電圧を印加しながら集塵電極13の表面に水膜を形成しようとすると、電極間隔を狭くしたり、洗浄手段5から電極表面に供給された水が跳ねたりした場合に、水により一時的に電極間隔が狭くなり、スパークが発生する可能性がある。荷電電極12の表面の一部を絶縁物で被覆することにより、電極間に電流が流れるのを防ぎ、スパークの発生を防止することができる。
【0060】
また本実施の形態では、荷電電極12に電圧を印加する電圧供給部材14と、荷電電極12との接点を、洗浄手段5に備えたスリット17の下端よりも高い位置に配置した。荷電電極12に確実に電圧を印加するためには、電圧供給部材14と荷電電極12との接点は導電物同士が接触していることが望ましいが、接点に洗浄手段5から供給された水がかかってしまうと、スパークが発生したり、水を伝って電圧供給部材14と集塵電極13とが電気的につながって短絡したりする可能性がある。電圧供給部材14と荷電電極12との接点を、洗浄手段5に備えたスリット17の下端よりも高い位置に配置することにより、洗浄手段5から供給される水が接点に触れるのを防ぎ、スパークの発生や短絡を防止することができる。
【0061】
なお、本実施の形態では放電電極6が高電圧、枠体9がアースとなっているが、逆にしても同様の効果が得られる。
【0062】
なお、本実施の形態では荷電電極12に印加する電圧を−8kV、集塵電極13に印加する電圧を0kV(すなわちアース)、荷電電極12と集塵電極13との間隔を6mmとしたが、これに限定されるものではなく、所望の集塵性能を達成できる値であればよい。
【0063】
なお、本実施の形態では荷電電極12に高電圧を、集塵電極13に0kV(すなわちアース)を印加するための構造として、電圧供給部材14および集塵電極接地部材18を用い、荷電電極12を支えるための構造として荷電電極支持部材15を用いたが、これに限定されるものではなく、要件を満たす構造であればどのような構造でも構わない。
【0064】
なお、本実施の形態では荷電電極12を、アルミ板をフィルムでラミネートした電極板としたが、これに限定されるものではなく、本実施の形態と同等の効果が得られる構成の電極板であればよい。例えば表面抵抗率を10の7〜12乗Ω/□オーダーとなるよう半導電化したセラミックスや樹脂等を用いて電極板を作製することができる。
【0065】
なお、本実施の形態では集塵電極13を、表面に親水性塗料を塗装したアルミ製の電極板としたが、これに限定されるものではなく、親水性と導電性を兼ね備える電極板であればよい。例えばステンレス等の金属板の表面に親水性を付与した電極板や、導電性を有する樹脂板の表面に親水性を付与した電極板などを用いることができる。
【0066】
なお本実施の形態では、スリット17の幅を1.5mmとしたが、これに限定されるものではなく、集塵電極13の表面に水膜を形成させることができるように水を流せる構成であればよい。
【0067】
なお本実施の形態では、集塵電極支持部材19を3つの突起部により構成したが、これに限定されるものではなく、集塵電極13を固定でき、かつ洗浄手段5と一体化した構成であればよい。例えば、集塵電極支持部材19を板バネ形状としてもよい。
【0068】
なお本実施の形態では、洗浄に使用する液体は水としたが、集塵電極13に堆積した塵埃の除去能力を高めるために、洗剤を混入するなどした洗浄液を使用してもよい。
【0069】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について図面を参照しながら説明する。実施の形態1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0070】
図10は本発明の実施の形態2の外気処理装置の構成図である。
【0071】
実施の形態2の外気処理装置の構成を説明する。
【0072】
図10に示すように、外気処理装置21は外気を吸込む吸込口23と室内へ処理した外気を吹出す吹出口24を有する本体ケース22と、この本体ケース22内の前記吸込口23と前記吹出口24を結ぶ風路25に設けた集塵手段26および送風手段27を備えている。集塵手段26として、本発明の実施の形態1の電気集塵デバイス1を搭載している。
【0073】
また本体ケース22内には水タンク28を備え、水タンク28と集塵手段26内に備えた洗浄手段5とを、ポンプ29により接続している。集塵手段26と水タンク28との間には、塵埃除去フィルタ30を備えている。塵埃除去フィルタ30は、ステンレスのメッシュからなる。
【0074】
実施の形態2の基本的な作用、効果は実施の形態1と同様である。
【0075】
送風手段27が駆動し、外気が吸込口23から外気処理装置21に流入すると、風路25内に備えた集塵手段26において、外気に含まれる塵埃が捕集される。塵埃が除去されて清浄となった外気は、吹出口24を通じて室内に供給される。
【0076】
集塵手段26に捕集された塵埃を洗浄する際には、ポンプ29が駆動し、水タンク28に溜まった水が集塵手段26に供給され、集塵手段に堆積した塵埃が洗い流される。塵埃を含んだ水は重力で下方へ流れ、塵埃除去フィルタ30を通過する際に水から塵埃が取り除かれ、きれいになった水が水タンク28へと戻り、再度ポンプ29を通じて循環する。
【0077】
上記構成により、圧力損失が低い構造で電極表面に確実に水膜を形成させ、電極表面を清浄な状態に保つことで高い集塵効率を維持できる外気処理装置21を提供することができる。
【0078】
また、水循環式としたことにより、洗浄時に使用する水を循環させて再利用することができ、使用水量が小さく運転コストの低い外気処理装置21を提供することができる。
【0079】
また、塵埃除去フィルタを備えたことにより、汚れた水から塵埃を除去することができ、水をきれいにして排水、または循環再利用することが可能となる。
【0080】
なお本実施の形態では、水タンク28を備え、水タンク28と集塵手段26内に備えた洗浄手段5とをポンプ29により接続し、水を循環させることができる構成としたが、これに限定されるものではなく、集塵手段26に水を供給できる構成であればよい。例えば、水を豊富に使用できる環境であれば、集塵手段26に水道直結で水を供給し、集塵手段26から排出される水を水タンク28に溜めることなく排水する構成としてもよい。
【0081】
なお本実施の形態では、集塵手段26と水タンク28との間に、塵埃除去フィルタ30を備えたが、これに限定されるものではなく、集塵手段26を流れた後の水に含まれる塵埃を除去できるように、水を循環させる経路のいずれかに配置すればよい。また塵埃除去フィルタ30はステンレスのメッシュとしたが、これに限定されるものではなく、水に含まれる塵埃を除去できるフィルタであればよい。
【0082】
なお本実施の形態では、ポンプ29を本体ケース22の外部に配置したが、これに限定されるものではなく、水を循環させることができる構成であればよい。例えば、水中ポンプを水タンク28内に備えることで水を循環させてもよい。
【0083】
また、水タンク28に抗菌処理を施してもよい。水タンク28に長期間水を溜めておくと、集塵手段26に捕集されて洗い流された塵埃に細菌等が含まれていた場合、水タンク28の中でそれらの菌が繁殖して不衛生な状態になる恐れがある。水タンク28に抗菌処理を施すことによって、菌等の繁殖を防止し、不衛生な状態になることを防ぐことができる。抗菌処理としては、銀‐ゼオライトや銀‐リン酸ジルコニウムなどの無機系抗菌剤や、カチオン界面活性剤などの有機系抗菌剤を水タンク28の表面に塗布する、クロムメッキやニッケルメッキなどの抗菌メッキを施す、などの手法を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明にかかる電気集塵デバイス、およびそれを用いた外気処理装置により、圧力損失が低い構造で電極表面に確実に水膜を形成させ、電極表面を清浄な状態に保つことで高い集塵効率を維持するとともに、部品点数を少なくして組み立ての手間を軽減した電気集塵デバイスの提供、および高い集塵効率を維持できる外気処理装置の提供が可能となるので、空気清浄機や住宅向け換気送風機器等として有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 電気集塵デバイス
2 風路
3 帯電部
4 集塵部
5 洗浄手段
6 放電電極
7 接地電極
8 放電電極支持部材
9 枠体
10 碍子
11 導電性部材
12 荷電電極
13 集塵電極
14 電圧供給部材
15 荷電電極支持部材
16 貯留部
17 スリット
18 集塵電極接地部材
19 集塵電極支持部材
20 傾斜
21 外気処理装置
22 本体ケース
23 吸込口
24 吹出口
25 風路
26 集塵手段
27 送風手段
28 水タンク
29 ポンプ
30 塵埃除去フィルタ
101 電気集塵デバイス
102 ケーシング
103 風路
104 送風手段
105 帯電部
106 集塵部
107 噴霧部
108 案内板
109 流通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスが流れる風路内に、
前記被処理ガス中の塵埃を帯電させる帯電部と、
荷電電極と集塵電極とを交互に積層し、前期帯電部で帯電された塵埃を前記集塵電極上に捕集する集塵部と、
前記集塵電極上に捕集された塵埃を洗浄するための洗浄手段とを備えた電気集塵デバイスにおいて、
前記洗浄手段は、
前記集塵電極の上方側に配置されており、水を溜める貯留部と、前記集塵電極上に水を流すスリットを備えるとともに、前記集塵電極を支持する集塵電極支持部材を備えたことを特徴とする電気集塵デバイス。
【請求項2】
集塵電極支持部材は、洗浄手段に備えたスリットに設けた突起部により構成されることを特徴とする請求項1に記載の電気集塵デバイス。
【請求項3】
洗浄手段に備えたスリットの下端に、集塵電極の奥行き方向に沿って、上方から下方に向かって拡がる傾斜を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の電気集塵デバイス。
【請求項4】
集塵電極の表面に親水性を付与したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電気集塵デバイス。
【請求項5】
荷電電極の表面の一部を、絶縁物で被覆したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電気集塵デバイス。
【請求項6】
荷電電極に電圧を印加する電圧供給部材と、荷電電極との接点を、洗浄手段に備えたスリットの下端よりも高い位置に配置したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電気集塵デバイス。
【請求項7】
外気を吸込む吸込口と室内へ処理した外気を吹出す吹出口を有する本体ケースと、
この本体ケース内の前記吸込口と前記吹出口を結ぶ風路に設けた集塵手段および送風手段を備え、前記集塵手段として請求項1から6のいずれかに記載の電気集塵デバイスを備えたことを特徴とする外気処理装置。
【請求項8】
本体ケース内に水タンクを設け、前記水タンクと洗浄手段とをポンプにより接続し、水循環式としたことを特徴とする請求項7に記載の外気処理装置。
【請求項9】
集塵手段と水タンクとの間に、塵埃除去フィルタを備えたことを特徴とする請求項7または8に記載の外気処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−205974(P2012−205974A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71634(P2011−71634)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】