電気集塵機
【課題】リーク電流の発生を防止でき、しかも、絶縁体層にピンホールがある場合にも、絶縁破壊等の不具合が発生しないようにした電気集塵機を提供する。
【解決手段】空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と、高圧電極210と低圧電極22とを交互に配し、それら高圧電極と低圧電極の間に発生する電界の力により荷電部にて電荷を与えられた微粒子を沈着保持する集塵部120とを備えた電気集塵機において、集塵部の高圧電極210が、導電体211と、導電体の外面を覆う体積固有抵抗値108 〜1013 Ωcmのオーダーの半絶縁体層212と、半絶縁体層の外面を覆う絶縁体層213の3層構造になっており、しかも、絶縁体層が半絶縁体層よりも吸湿性の低い材料で構成されている。
【解決手段】空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と、高圧電極210と低圧電極22とを交互に配し、それら高圧電極と低圧電極の間に発生する電界の力により荷電部にて電荷を与えられた微粒子を沈着保持する集塵部120とを備えた電気集塵機において、集塵部の高圧電極210が、導電体211と、導電体の外面を覆う体積固有抵抗値108 〜1013 Ωcmのオーダーの半絶縁体層212と、半絶縁体層の外面を覆う絶縁体層213の3層構造になっており、しかも、絶縁体層が半絶縁体層よりも吸湿性の低い材料で構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電部と集塵部を有し、集塵部が高圧電極(非集塵電極ともいう)と低圧電極(集塵電極ともいう)とで構成された電気集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気集塵機は、一般的に、図11(a)に示すように、矢印Sで示す送風方向の上流側に配された荷電部10と、下流側に配された集塵部20とから構成されており、電気集塵機内に吸い込まれた塵埃(微粒子)Saは荷電部10を通過する間に、放電線11とアース電極12との間に発生するコロナ放電によって荷電され、集塵部20を通過することで、図11(b)に示すように、高圧電極21(非集塵電極とも言う)と低圧電極(集塵電極とも言う)22との間に生じる電界による静電気力により低圧電極22側に沈着捕集される。集塵部20において、高圧電極21と低圧電極22は、それぞれ平板状に形成されて互いに一定の間隔を隔てて交互に配置されている。
【0003】
従来の電気集塵機においては、集塵部の高圧電極21が、図12に示すように、導電体121と、該導電体121の外面を覆う絶縁体層123とから構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、高圧電極が、半絶縁性樹脂(例えば、体積固有抵抗値1010〜1013Ωcmのオーダーの樹脂)で構成されたものも知られている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
図13は高圧電極が半絶縁性樹脂で構成された電気集塵機における電極の構造の例を示している。この図において、10は荷電部、20は集塵部で、荷電部10は放電線11とアース電極12とで構成され、集塵部20は高圧電極21と低圧電極22とで構成されている。
【0006】
この場合、アース電極12と低圧電極22は、一体のアース電極部材25として構成されている。また、高圧電極21は、図14に示すように、多数枚が一定の間隔で互いに平行に配列され、各両端部が配列方向に長く延びた連結バー23で連結されることにより、全体が一体の高圧電極部材24として構成されている。そして、図15に示すように、連結バー23に給電部材26が嵌合されることにより、給電部材26および連結バー23を介して各高圧電極21に高電圧の給電がなされるようになっている。
【特許文献1】特開平9−253525号公報
【特許文献2】特許第3516725号公報
【特許文献3】特許第3597405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の電気集塵機の中で、集塵部の高圧電極が、導電体と、その外面を覆う絶縁体層とで構成されているものは、電極への堆積塵埃等によるリーク電流の発生を極力防止することができるものの、絶縁体層のピンホール(電極形成時に生じる小さな孔)を皆無とすることが難しく、わずかであるがピンホールが形成されるものがある。このため、絶縁層にピンホールがあると、その箇所に電界が集中して、絶縁破壊を起こすおそれがある。そのため、絶縁破壊を起こさないように耐圧性能を上げることが要求される。また、電気集塵機の使用前(初期)に絶縁体層にピンホールが無かったとしても、数百ないし数千時間の使用後に絶縁破壊が起き、絶縁体層にピンホールが生じることがあった。
【0008】
また、集塵部の高圧電極が半絶縁体で構成されているものは、ピンホールの問題は解消できるものの、高圧電極と低圧電極との間が付着塵埃等でブリッジ状態となった場合、ブリッジした部分にリーク電流が流れて、その部分の電界が消滅し、集塵効率が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮し、リーク電流の発生を防止でき、しかも、絶縁体層にピンホールがある場合にも、絶縁破壊等の不具合が発生しないようにした電気集塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と、高圧電極と低圧電極とを交互に配し、それら高圧電極と低圧電極の間に発生する電界の力により前記荷電部にて電荷を与えられた微粒子を沈着保持する集塵部とを備えた電気集塵機において、前記集塵部の高圧電極が、導電体と、該導電体の外面を覆う体積固有抵抗値108 〜1013 Ωcmのオーダーの半絶縁体層と、該半絶縁体層の外面を覆う絶縁体層とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電気集塵機であって、前記絶縁体層が、前記半絶縁体層よりも吸湿性の低い材料で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、高圧電極の最外面が絶縁体層で覆われているので、高圧電極と低圧電極との間が付着塵埃等でブリッジ状態となっても、リーク電流が流れるおそれがない。また、絶縁体層にピンホールがあっても、あるいは電気集塵機の使用により絶縁破壊が起こり、絶縁体層にピンホールが生じたとしても、その下側に半絶縁体層があるので、中の導電体が直接外部に露出することがなく、ピンホールのある箇所に電界が集中するのを防止できる。よって、絶縁破壊が起きて集塵効率が低下する心配がなく、また、ピンホールの管理も緩めることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、最外面の絶縁体層が吸湿を阻止するので、その下の半絶縁体層が吸湿性の高い材料で構成されている場合にも、その半絶縁体層への湿度の影響を防止することができる。従って、高湿度環境下においても、半絶縁体層の抵抗値は低くなることがなく、高圧電極は低湿度環境下と同様に、安定した高圧電圧値を維持することができ、高い集電効率を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
(実施形態)
図1は本発明の実施形態の電気集塵機の集塵部の原理構成を示す図、図2はその集塵部の高圧電極の構成を示す図で、(a)は高圧電極の端部の構成を示す斜視図、(b)は同端部の構成を一部のコーティング層を剥がして示す斜視図、図3(a)〜(c)はその高圧電極の作り方の例を順を追って示す図、図4はその高圧電極と給電部材との結合の仕方を示す図で、(a)は結合する前の状態を示す斜視図、(b)は結合部の側面図である。
【0016】
本実施形態の電気集塵機は、図10に示したものと同様に、空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と集電部とから構成されている。集電部は、図1および図2に示すように、高圧電極210と低圧電極22とを交互に配し、それら高圧電極210と低圧電極22の間に発生する電界の力により、荷電部にて電荷を与えられた微粒子を沈着保持する機能を果たす。
【0017】
本実施形態の電気集塵機の特徴は、集塵部120の高圧電極210を、導電体211と、導電体211の外面を覆う体積固有抵抗値108 〜1013 Ωcm(好ましくは1010〜1013Ωcm)のオーダーの半絶縁体層212と、半絶縁体層212の外面を覆う絶縁体層213とを有する3層構造に構成し、しかも、絶縁体層213を半絶縁体層212よりも吸湿性の低い材料で構成した点にある。
【0018】
図2に示すように、高圧電極210の端部は、受電部211aとして導電体211が露出した状態となっており、その受電部211aに、図4に示すように、断面コ字状の給電部材40を嵌め込んで、給電部材40に形成した爪42を1個ずつ曲げて受電部211aに加締め固定することにより、給電部材40を介して多数の高圧電極210の導電体211にそれぞれ高電圧を印加できるようになっている。このように高圧電極210を爪42で止めた場合は、給電部材40を導電体211に確実に接触させることができる。
【0019】
また、この高圧電極210を作る場合は、まず、図3(a)に示すように平板状の導電体211を用意し、その導電体211の外面に、(b)に示すように半絶縁体層212をコーティングし、更にその外面に、(c)に示すように絶縁体層213をコーティングする。半絶縁体層212や絶縁体層213のコーティングの方法としては、塗布、インサート成形、ラミネート、ディッピング等の種々の方法を採用することができる。また、例えば半絶縁体層212を形成する際には、(b’)のように、2枚の半絶縁体板(半絶縁体層212)の間に導電体211を挟むようにして構成してもよい。
【0020】
また、図5(a)に示すように、導電体211の外面に半絶縁体層212を形成した段階で、中途構成の高圧電極210Fを給電部材40に取り付け、その状態で、(b)に示すように全体を絶縁体層213で覆うようことにより、給電部材40と一体の3層構造の高圧電極210を得るようにしてもよい。
【0021】
この場合は、半絶縁体層212を形成した高圧電極210Fに対して給電部材40を取り付けた段階のものを、液状絶縁体を満たした液槽の中にいわゆる「どぶ漬け(ディッピング)」して絶縁体層213を形成する方法を採用するのが効率的である。
【0022】
また、図6に示すように、給電部材45を単純な断面形状の棒状のものとし、高圧電極210の受電部211aに孔211bを開け、その孔211bに棒状の給電部材45を圧入することで、給電部材45と高圧電極210を連結するようにしてもよい。
【0023】
本発明で用いることができる半絶縁体層212を構成する材料としては、吸湿性を有し、使用環境の温湿度において高電圧に対して108 〜1013 Ωcm、好ましくは1010 〜1013 Ωcmのオーダーの範囲にある体積固有抵抗値を有する樹脂を使用することができる。
【0024】
このような吸湿性樹脂は、樹脂自体に吸湿性があり、上記の体積固有抵抗値を有するもの用いることもできるが、例えば、熱可塑性樹脂のような樹脂基材に吸水性樹脂を添加し、ブレンドすることにより吸湿性を付与した樹脂を用いることができる。
【0025】
また、このような樹脂は、樹脂中に配合された吸水性樹脂により吸収された水分によって半絶縁性を示すものであり、吸水性樹脂の配合量を調製することによって、樹脂の体積固有抵抗値を108 〜1013 Ωcmのオーダーの範囲となるように自由に調製できる。
【0026】
一般に、配合量は樹脂の種類により異なるが、5〜50重量%である。樹脂基材としては、例えば、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂のような熱可塑性樹脂があり、特に、ABS樹脂を基材として用いると、成形性、難燃性、耐熱性、耐衝撃性の優れたものが得られ、また、製造コストの面でも安価となる。
【0027】
また、樹脂自体が吸湿性を有している樹脂基材としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などがあげられる。また、このような熱硬化性樹脂の例として、なかでもフェノール樹脂を基材として用いた場合には、所望の抵抗値が得られ易く、好ましい結果が得られる。また、混合する吸水性樹脂としては、アクリル酸塩系、ポバール系、ポリアミド系などがあり、吸水能、抵抗値の持続性および基材樹脂との相溶性などを考慮して選択される。なお、このような吸湿性樹脂としては、例えば、マクスロイ(商品名、JSR社製)、スミライト(商品名、住友ベークライト社製)などの市販品を使用することができる。
【0028】
一方、絶縁体層213を構成する材料としては、テリオスコート(ホーロー皮膜:株式会社 日興製)や、PP(ポリプロピレン)、ウレタン等の樹脂を使用することができる。
【0029】
以上、本発明では、高圧電極210の最外面が絶縁体層213で覆われているので、高圧電極210と低圧電極22との間が付着塵埃等でブリッジ状態となっても、リーク電流が流れるおそれがない。また、絶縁体層213にピンホールがあっても、その下側に半絶縁体層212があるので、中の導電体211が直接外部に露出することがなく、ピンホールのある箇所に電界が集中するのを防止できる。よって、絶縁破壊が起きて集塵効率が低下する心配がなく、また、ピンホールの管理も緩めることができる。
【0030】
又、最外面の絶縁体層213が吸湿を阻止するので、その下の半絶縁体層212が吸湿性の高い材料で構成されている場合にも、その半絶縁体層212への湿度の影響を防止することができる。従って、高湿度環境下においても、半絶縁体層212の抵抗値は低くなることがなく、高圧電極210は低湿度環境下と同様に、安定した高圧電圧値を維持することができ、高い集電効率を維持することができる。
【0031】
次に本発明の効果を証明するための実験の内容について説明する。
【0032】
電気集塵機では、集塵部において低抵抗の粉塵を捕集した場合に、その粉塵により高圧電極と低圧電極の間にブリッジが発生することがあり、ブリッジが発生した場合は、異常放電(スパーク)を生じて、集塵効率が低下する現象を起こす。そこで、この実験では、そのことに対する耐性についてサンプルを用いて調べた。
【0033】
ここでは、実験として、図7(a)に示すように、ローソク80の炎81に金網82を翳し、不完全燃焼を起こさせて、カーボン(低抵抗の粉塵)を発生させる。
【0034】
一方、ローソク80の上方にファン85付きのケース83を配置し、ケース83の内部に電気集塵機の実験用のサンプル84をセットして、強制上昇流によりカーボンをサンプル84に集塵させて、初期時点からの集塵効率の経時変化(t1、t2、t3時間経過時点の集塵効率)を測定した。サンプルとしては、次に述べるA、B、C、Dの4つを用意し、初期の集塵効率を「1」とした。
【0035】
Aのサンプルは、本発明の実施形態に相当するもので、高圧電極が、導電体と半絶縁体層と絶縁体層の3層構造になったものである。
【0036】
Bのサンプルは、高圧電極が半絶縁体だけで構成されたものである。
【0037】
Cのサンプルは、Bのサンプルの高圧電極の半絶縁体層の上に更に絶縁体層を設けたものである。
【0038】
Dのサンプルは、高圧電極が導体のみで構成されたものである。
【0039】
実験の結果は、表1のようになった。これをグラフ化にしたものが図7(b)である。
【表1】
【0040】
サンプルAでは、経時変化が少なく、著しい集塵効率の低下は見られなかった。
【0041】
サンプルBでは、短時間で集塵効率が大幅に低下した。
【0042】
サンプルCでは、サンプルBよりも良い結果が出たが、まだ大きな集塵効率の低下が見られた。
【0043】
サンプルDでは、測定時間内にカーボンのブリッジによりスパークが発生し、集塵効率の維持が不可能になった。
【0044】
以上の結果により、低抵抗の粉塵によるブリッジ現象が起こった場合に、本発明の効果があることが証明された。
【0045】
次に別の実験を行った。この実験では、プレート型の高圧電極の耐絶縁性について調べた。サンプルのプレートは3種類あり、図8はサンプル毎の実験装置を示している。各装置毎に高圧電極の中央部にアース電位接触点を設定している。
【0046】
(a)のサンプルのプレート(高圧電極)は、半絶縁体153のみで構成され、プレートの両端に給電している。
【0047】
(b)のサンプルのプレート(高圧電極)は、半絶縁体153の内部に導電体152をインサートしたものであり、内部の導電体に一端側から給電している。
【0048】
(c)のサンプルのプレート(高圧電極)は、本発明の実施形態のものに相当し、半絶縁体153の内部に導電体152をインサートし、半絶縁体153の外側に絶縁体154をコーティングしている。そして、内部の導電体152に一端側から給電している。
【0049】
なお、絶縁体や半絶縁体としては、次の表2の樹脂を使用している。表2には、それぞれの樹脂の特性を示してある。
【表2】
【0050】
この実験の結果、次のようなことが分かった。
【0051】
まず、(a)の半絶縁体153のみで構成されたプレートの場合は、プレートの中央部がアース電位となった際に、プレート全体がアース電位となることが分かった。
【0052】
また、(b)の半絶縁体153の内部に導電体152をインサートしたプレートの場合は、プレートの中央のアース電位接触点のみがアース電位となる。しかし、吸湿時には、体積抵抗値の低下による放電の可能性があることが分かった。
【0053】
また、(c)の最外層に絶縁体154を設けたプレートの場合は、半絶縁体153の吸湿防止を図ることができると共に、耐絶縁性を向上させることができることが分かった。
【0054】
以上の結果により、本発明の効果があることが証明された。
【0055】
次に更に別の実験を行った。この実験では、絶縁体層をコーティングした場合と、しない場合のリーク電流と電圧の変化を測定した。実験条件は、30℃で湿度90%RHの環境下である。また、実験装置としては、図9に示すように、サンプルのプレート200の一方の端部に、電圧計201を備えた給電回路202を接続し、プレート200の中間部に、電流計203を備えたリーク回路204を接続したものを用いた。
【0056】
実験の結果、次の表3に示す結果が得られた。
【表3】
【0057】
この表から分かるように、最外層に絶縁体層を設けた場合は、設けない場合に比べてリーク電流が少なく、高電圧を維持できることが分かった。これにより、本発明の効果があることが証明された。
【0058】
(実施形態の変形例)
前記実施形態では、集塵部120の高圧電極210は、図10(a)に示すように、その導電体211が低圧電極との対向面のほぼ全域に亘って設けられているが、高圧電極210に十分に給電できれば、導電体211を低圧電極との対向面のほぼ全域に亘って設ける必要はない。例えば、図10(b)の第1変形例のように、導電体211を低圧電圧の対向面の半分程度の領域に設けても良い。このように構成すれば、ほぼ全域に亘って導電体211を設けた場合(図10(a))に比較して、高圧電極210の軽量化、ひいては電気集塵機の軽量化を図ることができ、天井埋込型の電気集塵機として好適な電気集塵機を得ることができる。
【0059】
又、高圧電極210の導電体211は、図10(c)の第2変形例に示すように、凹凸形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態の電気集塵機の集塵部の原理構成を示す図である。
【図2】同集塵部の高圧電極の構成を示す図で、(a)は高圧電極の端部の構成を示す斜視図、(b)は同端部の構成を一部のコーティング層を剥がして示す斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は図2の高圧電極の作り方の例を順を追って示す図である。
【図4】同高圧電極と給電部材との結合の仕方を示す図で、(a)は結合する前の状態を示す斜視図、(b)は結合部の側面図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例として、給電部材と高圧電極を結合してから最外殻の絶縁体層を形成する場合の例を示し、(a)は絶縁体層を形成する前の状態を示す斜視図、(b)は絶縁体層を形成した後の状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の変形例として、給電部材を棒状として高圧電極の受電部に貫通させた場合の例を示す斜視図である。
【図7】本発明の効果を証明する実験の内容を示す図で、(a)は実験装置を示す図、(b)は実験結果を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の効果を証明する別の実験の装置構成を示す図である。
【図9】本発明の効果を証明する更に別の実験の装置構成を示す図である。
【図10】(a)は前記実施形態に係る高圧電極の正面図、(b)は第1変形例に係る高圧電極の正面図、(c)は第2変形例に係る高圧電極の正面図である。
【図11】一般的な電気集塵機の原理構成を示す図であり、(a)は集塵前の状態、(b)は集塵後の状態を示す図である。
【図12】従来の電気集塵機の集塵部の概略構成を示す図である。
【図13】別の従来の電気集塵機の電極の構成を示す斜視図である。
【図14】図12の高圧電極の構成を示す斜視図である。
【図15】図12の高圧電極と給電部材の結合部の構造を示す図であり、(a)は結合前の状態を示す斜視図、(b)は結合後の状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0061】
22 低圧電極
120 集塵部
210 高圧電極
211 導電体
212 半絶縁体層
213 絶縁体層
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電部と集塵部を有し、集塵部が高圧電極(非集塵電極ともいう)と低圧電極(集塵電極ともいう)とで構成された電気集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気集塵機は、一般的に、図11(a)に示すように、矢印Sで示す送風方向の上流側に配された荷電部10と、下流側に配された集塵部20とから構成されており、電気集塵機内に吸い込まれた塵埃(微粒子)Saは荷電部10を通過する間に、放電線11とアース電極12との間に発生するコロナ放電によって荷電され、集塵部20を通過することで、図11(b)に示すように、高圧電極21(非集塵電極とも言う)と低圧電極(集塵電極とも言う)22との間に生じる電界による静電気力により低圧電極22側に沈着捕集される。集塵部20において、高圧電極21と低圧電極22は、それぞれ平板状に形成されて互いに一定の間隔を隔てて交互に配置されている。
【0003】
従来の電気集塵機においては、集塵部の高圧電極21が、図12に示すように、導電体121と、該導電体121の外面を覆う絶縁体層123とから構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、高圧電極が、半絶縁性樹脂(例えば、体積固有抵抗値1010〜1013Ωcmのオーダーの樹脂)で構成されたものも知られている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
図13は高圧電極が半絶縁性樹脂で構成された電気集塵機における電極の構造の例を示している。この図において、10は荷電部、20は集塵部で、荷電部10は放電線11とアース電極12とで構成され、集塵部20は高圧電極21と低圧電極22とで構成されている。
【0006】
この場合、アース電極12と低圧電極22は、一体のアース電極部材25として構成されている。また、高圧電極21は、図14に示すように、多数枚が一定の間隔で互いに平行に配列され、各両端部が配列方向に長く延びた連結バー23で連結されることにより、全体が一体の高圧電極部材24として構成されている。そして、図15に示すように、連結バー23に給電部材26が嵌合されることにより、給電部材26および連結バー23を介して各高圧電極21に高電圧の給電がなされるようになっている。
【特許文献1】特開平9−253525号公報
【特許文献2】特許第3516725号公報
【特許文献3】特許第3597405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の電気集塵機の中で、集塵部の高圧電極が、導電体と、その外面を覆う絶縁体層とで構成されているものは、電極への堆積塵埃等によるリーク電流の発生を極力防止することができるものの、絶縁体層のピンホール(電極形成時に生じる小さな孔)を皆無とすることが難しく、わずかであるがピンホールが形成されるものがある。このため、絶縁層にピンホールがあると、その箇所に電界が集中して、絶縁破壊を起こすおそれがある。そのため、絶縁破壊を起こさないように耐圧性能を上げることが要求される。また、電気集塵機の使用前(初期)に絶縁体層にピンホールが無かったとしても、数百ないし数千時間の使用後に絶縁破壊が起き、絶縁体層にピンホールが生じることがあった。
【0008】
また、集塵部の高圧電極が半絶縁体で構成されているものは、ピンホールの問題は解消できるものの、高圧電極と低圧電極との間が付着塵埃等でブリッジ状態となった場合、ブリッジした部分にリーク電流が流れて、その部分の電界が消滅し、集塵効率が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮し、リーク電流の発生を防止でき、しかも、絶縁体層にピンホールがある場合にも、絶縁破壊等の不具合が発生しないようにした電気集塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と、高圧電極と低圧電極とを交互に配し、それら高圧電極と低圧電極の間に発生する電界の力により前記荷電部にて電荷を与えられた微粒子を沈着保持する集塵部とを備えた電気集塵機において、前記集塵部の高圧電極が、導電体と、該導電体の外面を覆う体積固有抵抗値108 〜1013 Ωcmのオーダーの半絶縁体層と、該半絶縁体層の外面を覆う絶縁体層とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電気集塵機であって、前記絶縁体層が、前記半絶縁体層よりも吸湿性の低い材料で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、高圧電極の最外面が絶縁体層で覆われているので、高圧電極と低圧電極との間が付着塵埃等でブリッジ状態となっても、リーク電流が流れるおそれがない。また、絶縁体層にピンホールがあっても、あるいは電気集塵機の使用により絶縁破壊が起こり、絶縁体層にピンホールが生じたとしても、その下側に半絶縁体層があるので、中の導電体が直接外部に露出することがなく、ピンホールのある箇所に電界が集中するのを防止できる。よって、絶縁破壊が起きて集塵効率が低下する心配がなく、また、ピンホールの管理も緩めることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、最外面の絶縁体層が吸湿を阻止するので、その下の半絶縁体層が吸湿性の高い材料で構成されている場合にも、その半絶縁体層への湿度の影響を防止することができる。従って、高湿度環境下においても、半絶縁体層の抵抗値は低くなることがなく、高圧電極は低湿度環境下と同様に、安定した高圧電圧値を維持することができ、高い集電効率を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
(実施形態)
図1は本発明の実施形態の電気集塵機の集塵部の原理構成を示す図、図2はその集塵部の高圧電極の構成を示す図で、(a)は高圧電極の端部の構成を示す斜視図、(b)は同端部の構成を一部のコーティング層を剥がして示す斜視図、図3(a)〜(c)はその高圧電極の作り方の例を順を追って示す図、図4はその高圧電極と給電部材との結合の仕方を示す図で、(a)は結合する前の状態を示す斜視図、(b)は結合部の側面図である。
【0016】
本実施形態の電気集塵機は、図10に示したものと同様に、空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と集電部とから構成されている。集電部は、図1および図2に示すように、高圧電極210と低圧電極22とを交互に配し、それら高圧電極210と低圧電極22の間に発生する電界の力により、荷電部にて電荷を与えられた微粒子を沈着保持する機能を果たす。
【0017】
本実施形態の電気集塵機の特徴は、集塵部120の高圧電極210を、導電体211と、導電体211の外面を覆う体積固有抵抗値108 〜1013 Ωcm(好ましくは1010〜1013Ωcm)のオーダーの半絶縁体層212と、半絶縁体層212の外面を覆う絶縁体層213とを有する3層構造に構成し、しかも、絶縁体層213を半絶縁体層212よりも吸湿性の低い材料で構成した点にある。
【0018】
図2に示すように、高圧電極210の端部は、受電部211aとして導電体211が露出した状態となっており、その受電部211aに、図4に示すように、断面コ字状の給電部材40を嵌め込んで、給電部材40に形成した爪42を1個ずつ曲げて受電部211aに加締め固定することにより、給電部材40を介して多数の高圧電極210の導電体211にそれぞれ高電圧を印加できるようになっている。このように高圧電極210を爪42で止めた場合は、給電部材40を導電体211に確実に接触させることができる。
【0019】
また、この高圧電極210を作る場合は、まず、図3(a)に示すように平板状の導電体211を用意し、その導電体211の外面に、(b)に示すように半絶縁体層212をコーティングし、更にその外面に、(c)に示すように絶縁体層213をコーティングする。半絶縁体層212や絶縁体層213のコーティングの方法としては、塗布、インサート成形、ラミネート、ディッピング等の種々の方法を採用することができる。また、例えば半絶縁体層212を形成する際には、(b’)のように、2枚の半絶縁体板(半絶縁体層212)の間に導電体211を挟むようにして構成してもよい。
【0020】
また、図5(a)に示すように、導電体211の外面に半絶縁体層212を形成した段階で、中途構成の高圧電極210Fを給電部材40に取り付け、その状態で、(b)に示すように全体を絶縁体層213で覆うようことにより、給電部材40と一体の3層構造の高圧電極210を得るようにしてもよい。
【0021】
この場合は、半絶縁体層212を形成した高圧電極210Fに対して給電部材40を取り付けた段階のものを、液状絶縁体を満たした液槽の中にいわゆる「どぶ漬け(ディッピング)」して絶縁体層213を形成する方法を採用するのが効率的である。
【0022】
また、図6に示すように、給電部材45を単純な断面形状の棒状のものとし、高圧電極210の受電部211aに孔211bを開け、その孔211bに棒状の給電部材45を圧入することで、給電部材45と高圧電極210を連結するようにしてもよい。
【0023】
本発明で用いることができる半絶縁体層212を構成する材料としては、吸湿性を有し、使用環境の温湿度において高電圧に対して108 〜1013 Ωcm、好ましくは1010 〜1013 Ωcmのオーダーの範囲にある体積固有抵抗値を有する樹脂を使用することができる。
【0024】
このような吸湿性樹脂は、樹脂自体に吸湿性があり、上記の体積固有抵抗値を有するもの用いることもできるが、例えば、熱可塑性樹脂のような樹脂基材に吸水性樹脂を添加し、ブレンドすることにより吸湿性を付与した樹脂を用いることができる。
【0025】
また、このような樹脂は、樹脂中に配合された吸水性樹脂により吸収された水分によって半絶縁性を示すものであり、吸水性樹脂の配合量を調製することによって、樹脂の体積固有抵抗値を108 〜1013 Ωcmのオーダーの範囲となるように自由に調製できる。
【0026】
一般に、配合量は樹脂の種類により異なるが、5〜50重量%である。樹脂基材としては、例えば、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂のような熱可塑性樹脂があり、特に、ABS樹脂を基材として用いると、成形性、難燃性、耐熱性、耐衝撃性の優れたものが得られ、また、製造コストの面でも安価となる。
【0027】
また、樹脂自体が吸湿性を有している樹脂基材としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などがあげられる。また、このような熱硬化性樹脂の例として、なかでもフェノール樹脂を基材として用いた場合には、所望の抵抗値が得られ易く、好ましい結果が得られる。また、混合する吸水性樹脂としては、アクリル酸塩系、ポバール系、ポリアミド系などがあり、吸水能、抵抗値の持続性および基材樹脂との相溶性などを考慮して選択される。なお、このような吸湿性樹脂としては、例えば、マクスロイ(商品名、JSR社製)、スミライト(商品名、住友ベークライト社製)などの市販品を使用することができる。
【0028】
一方、絶縁体層213を構成する材料としては、テリオスコート(ホーロー皮膜:株式会社 日興製)や、PP(ポリプロピレン)、ウレタン等の樹脂を使用することができる。
【0029】
以上、本発明では、高圧電極210の最外面が絶縁体層213で覆われているので、高圧電極210と低圧電極22との間が付着塵埃等でブリッジ状態となっても、リーク電流が流れるおそれがない。また、絶縁体層213にピンホールがあっても、その下側に半絶縁体層212があるので、中の導電体211が直接外部に露出することがなく、ピンホールのある箇所に電界が集中するのを防止できる。よって、絶縁破壊が起きて集塵効率が低下する心配がなく、また、ピンホールの管理も緩めることができる。
【0030】
又、最外面の絶縁体層213が吸湿を阻止するので、その下の半絶縁体層212が吸湿性の高い材料で構成されている場合にも、その半絶縁体層212への湿度の影響を防止することができる。従って、高湿度環境下においても、半絶縁体層212の抵抗値は低くなることがなく、高圧電極210は低湿度環境下と同様に、安定した高圧電圧値を維持することができ、高い集電効率を維持することができる。
【0031】
次に本発明の効果を証明するための実験の内容について説明する。
【0032】
電気集塵機では、集塵部において低抵抗の粉塵を捕集した場合に、その粉塵により高圧電極と低圧電極の間にブリッジが発生することがあり、ブリッジが発生した場合は、異常放電(スパーク)を生じて、集塵効率が低下する現象を起こす。そこで、この実験では、そのことに対する耐性についてサンプルを用いて調べた。
【0033】
ここでは、実験として、図7(a)に示すように、ローソク80の炎81に金網82を翳し、不完全燃焼を起こさせて、カーボン(低抵抗の粉塵)を発生させる。
【0034】
一方、ローソク80の上方にファン85付きのケース83を配置し、ケース83の内部に電気集塵機の実験用のサンプル84をセットして、強制上昇流によりカーボンをサンプル84に集塵させて、初期時点からの集塵効率の経時変化(t1、t2、t3時間経過時点の集塵効率)を測定した。サンプルとしては、次に述べるA、B、C、Dの4つを用意し、初期の集塵効率を「1」とした。
【0035】
Aのサンプルは、本発明の実施形態に相当するもので、高圧電極が、導電体と半絶縁体層と絶縁体層の3層構造になったものである。
【0036】
Bのサンプルは、高圧電極が半絶縁体だけで構成されたものである。
【0037】
Cのサンプルは、Bのサンプルの高圧電極の半絶縁体層の上に更に絶縁体層を設けたものである。
【0038】
Dのサンプルは、高圧電極が導体のみで構成されたものである。
【0039】
実験の結果は、表1のようになった。これをグラフ化にしたものが図7(b)である。
【表1】
【0040】
サンプルAでは、経時変化が少なく、著しい集塵効率の低下は見られなかった。
【0041】
サンプルBでは、短時間で集塵効率が大幅に低下した。
【0042】
サンプルCでは、サンプルBよりも良い結果が出たが、まだ大きな集塵効率の低下が見られた。
【0043】
サンプルDでは、測定時間内にカーボンのブリッジによりスパークが発生し、集塵効率の維持が不可能になった。
【0044】
以上の結果により、低抵抗の粉塵によるブリッジ現象が起こった場合に、本発明の効果があることが証明された。
【0045】
次に別の実験を行った。この実験では、プレート型の高圧電極の耐絶縁性について調べた。サンプルのプレートは3種類あり、図8はサンプル毎の実験装置を示している。各装置毎に高圧電極の中央部にアース電位接触点を設定している。
【0046】
(a)のサンプルのプレート(高圧電極)は、半絶縁体153のみで構成され、プレートの両端に給電している。
【0047】
(b)のサンプルのプレート(高圧電極)は、半絶縁体153の内部に導電体152をインサートしたものであり、内部の導電体に一端側から給電している。
【0048】
(c)のサンプルのプレート(高圧電極)は、本発明の実施形態のものに相当し、半絶縁体153の内部に導電体152をインサートし、半絶縁体153の外側に絶縁体154をコーティングしている。そして、内部の導電体152に一端側から給電している。
【0049】
なお、絶縁体や半絶縁体としては、次の表2の樹脂を使用している。表2には、それぞれの樹脂の特性を示してある。
【表2】
【0050】
この実験の結果、次のようなことが分かった。
【0051】
まず、(a)の半絶縁体153のみで構成されたプレートの場合は、プレートの中央部がアース電位となった際に、プレート全体がアース電位となることが分かった。
【0052】
また、(b)の半絶縁体153の内部に導電体152をインサートしたプレートの場合は、プレートの中央のアース電位接触点のみがアース電位となる。しかし、吸湿時には、体積抵抗値の低下による放電の可能性があることが分かった。
【0053】
また、(c)の最外層に絶縁体154を設けたプレートの場合は、半絶縁体153の吸湿防止を図ることができると共に、耐絶縁性を向上させることができることが分かった。
【0054】
以上の結果により、本発明の効果があることが証明された。
【0055】
次に更に別の実験を行った。この実験では、絶縁体層をコーティングした場合と、しない場合のリーク電流と電圧の変化を測定した。実験条件は、30℃で湿度90%RHの環境下である。また、実験装置としては、図9に示すように、サンプルのプレート200の一方の端部に、電圧計201を備えた給電回路202を接続し、プレート200の中間部に、電流計203を備えたリーク回路204を接続したものを用いた。
【0056】
実験の結果、次の表3に示す結果が得られた。
【表3】
【0057】
この表から分かるように、最外層に絶縁体層を設けた場合は、設けない場合に比べてリーク電流が少なく、高電圧を維持できることが分かった。これにより、本発明の効果があることが証明された。
【0058】
(実施形態の変形例)
前記実施形態では、集塵部120の高圧電極210は、図10(a)に示すように、その導電体211が低圧電極との対向面のほぼ全域に亘って設けられているが、高圧電極210に十分に給電できれば、導電体211を低圧電極との対向面のほぼ全域に亘って設ける必要はない。例えば、図10(b)の第1変形例のように、導電体211を低圧電圧の対向面の半分程度の領域に設けても良い。このように構成すれば、ほぼ全域に亘って導電体211を設けた場合(図10(a))に比較して、高圧電極210の軽量化、ひいては電気集塵機の軽量化を図ることができ、天井埋込型の電気集塵機として好適な電気集塵機を得ることができる。
【0059】
又、高圧電極210の導電体211は、図10(c)の第2変形例に示すように、凹凸形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態の電気集塵機の集塵部の原理構成を示す図である。
【図2】同集塵部の高圧電極の構成を示す図で、(a)は高圧電極の端部の構成を示す斜視図、(b)は同端部の構成を一部のコーティング層を剥がして示す斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は図2の高圧電極の作り方の例を順を追って示す図である。
【図4】同高圧電極と給電部材との結合の仕方を示す図で、(a)は結合する前の状態を示す斜視図、(b)は結合部の側面図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例として、給電部材と高圧電極を結合してから最外殻の絶縁体層を形成する場合の例を示し、(a)は絶縁体層を形成する前の状態を示す斜視図、(b)は絶縁体層を形成した後の状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の変形例として、給電部材を棒状として高圧電極の受電部に貫通させた場合の例を示す斜視図である。
【図7】本発明の効果を証明する実験の内容を示す図で、(a)は実験装置を示す図、(b)は実験結果を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の効果を証明する別の実験の装置構成を示す図である。
【図9】本発明の効果を証明する更に別の実験の装置構成を示す図である。
【図10】(a)は前記実施形態に係る高圧電極の正面図、(b)は第1変形例に係る高圧電極の正面図、(c)は第2変形例に係る高圧電極の正面図である。
【図11】一般的な電気集塵機の原理構成を示す図であり、(a)は集塵前の状態、(b)は集塵後の状態を示す図である。
【図12】従来の電気集塵機の集塵部の概略構成を示す図である。
【図13】別の従来の電気集塵機の電極の構成を示す斜視図である。
【図14】図12の高圧電極の構成を示す斜視図である。
【図15】図12の高圧電極と給電部材の結合部の構造を示す図であり、(a)は結合前の状態を示す斜視図、(b)は結合後の状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0061】
22 低圧電極
120 集塵部
210 高圧電極
211 導電体
212 半絶縁体層
213 絶縁体層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と、高圧電極と低圧電極とを交互に配し、それら高圧電極と低圧電極の間に発生する電界の力により前記荷電部にて電荷を与えられた微粒子を沈着保持する集塵部とを備えた電気集塵機において、
前記集塵部の高圧電極が、導電体と、該導電体の外面を覆う体積固有抵抗値108 〜1013 Ωcmのオーダーの半絶縁体層と、該半絶縁体層の外面を覆う絶縁体層とを有することを特徴とする電気集塵機。
【請求項2】
請求項1に記載の電気集塵機であって、
前記絶縁体層が、前記半絶縁体層よりも吸湿性の低い材料で構成されていることを特徴とする電気集塵機。
【請求項1】
空気中の微粒子に電荷を与える荷電部と、高圧電極と低圧電極とを交互に配し、それら高圧電極と低圧電極の間に発生する電界の力により前記荷電部にて電荷を与えられた微粒子を沈着保持する集塵部とを備えた電気集塵機において、
前記集塵部の高圧電極が、導電体と、該導電体の外面を覆う体積固有抵抗値108 〜1013 Ωcmのオーダーの半絶縁体層と、該半絶縁体層の外面を覆う絶縁体層とを有することを特徴とする電気集塵機。
【請求項2】
請求項1に記載の電気集塵機であって、
前記絶縁体層が、前記半絶縁体層よりも吸湿性の低い材料で構成されていることを特徴とする電気集塵機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−94635(P2010−94635A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269119(P2008−269119)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】
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