説明

電気集塵装置およびそれを用いた空調装置

【課題】電撃防止構造の漏れ電流の増加または短絡を防止することで、集塵効率の低下などのない安定した集塵性能を得ることができ、また、集塵部を取り出す際には残留電荷が放電されている電気集塵装置を得ることができるという効果のある電気集塵装置およびそれを用いた空調装置を提供することを目的としている。
【解決手段】スイッチ5の開放、短絡を磁力により作用させることにより、収納されている状態で残留電荷を放電することができ、また、スイッチ5をスイッチボックス7で密閉構造とすることができ、塵埃の含む風路から絶縁が可能となり、スイッチ5に塵埃が蓄積され漏れ電流が増加し集塵効率が低下し、最終的には塵埃により短絡してしまうことがなく、安全性の高い電気集塵装置が提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄の分野において空気中の浮遊粒子状物質を除去することができる電気集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中に存在する粒子状浮遊物質、すなわち粉塵は喘息などの疾病の原因として知られており従来から除去の対象となる物質であったが、近年の研究において粒子径2.5マイクロメートル以下の粉塵(いわゆるPM2.5)が肺ガンなどの疾病を誘起する可能性があるとの報告があり、捕集技術の更なる向上が求められている。その中で電気集塵技術を用いた電気集塵装置は粒子径がマイクロメートル以下の小粒径の粉塵を捕集することに優れており、また低圧損な特性を持つことから注目を集め、更なる性能向上が求められている。
【0003】
従来、この種の電気集塵装置として、放電によって粉塵を帯電するイオン化手段を前段に設け、電極を積層し、交互に異なる電圧を印加して電界を形成して帯電した粉塵を捕集する構成を持つものが知られている。また、メンテナンスのために出し入れ可能であり、電撃防止として回転可能に支持した接触子をバネにより開閉をする構造を持つものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、その電気集塵装置について図3および図4を参照しながら説明する。図3および図4に示すように、枠体101に納められて集塵部102には回転自在に支持されたスイッチ103を内蔵している。スイッチ103は取付台104と接触子105とコイル状のバネ106とから構成されている。このようなスイッチ103を取り付けてなる集塵部102を集塵収納部107に収納させて使用するのであるが、集塵収納部107には接触子105に対向する位置に突起108を突設して有しており、この突起108は高圧接触板109が本体の高圧端子と接続されるのと相前後した適切なタイミングをとった時点で、先端部が接触子105に接触するように長さ設定されている。
【0005】
上記構成において、集塵部102を集塵収納部107に収納した際には、突起108がバネ106のバネ力に抗して接触子105を逆回転させるので高圧接触板109とは離れた状態になり、一方、集塵部102を取り出した場合には、バネ力によって接触子105が正回転するため、高圧接触板109と短絡して残留電荷が放電される。
【特許文献1】特開平2−298369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の電気集塵装置において、電撃防止構造が集塵部内に配置されていることにとり、スイッチ部近傍に塵埃が蓄積され漏れ電流が増加し集塵効率が低下する。また、最終的には塵埃により短絡してしまい、集塵できないという課題があり、漏れ電流の増加もしくは短絡を防止する電撃防止構造が要求されている。
【0007】
また、集塵部が集塵収納部に収納されている間は電荷が放電されず、集塵部を集塵収納部から取り外す際に電撃を受ける可能性があり、取り外す際には残留電荷が放電されている電撃防止構造が要求されている。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、電撃防止構造の漏れ電流の増加または短絡を防止することで、集塵効率の低下などのない安定した集塵性能を得ることができ、また、集塵部を取り出す際には残留電荷が放電されている電気集塵装置を得ることができるという効果のある電気集塵装置およびそれを用いた空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の集塵装置は上記目的を達成するために、導電性材料からなる高圧電極およびアース電極を電気絶縁材料からなる枠体で支持した集塵部と前記集塵部内に前記高圧電極と前記アース電極の間を開閉可能な接触子を有し、前記集塵部を出し入れ可能に収納する収納部と前記高圧電極および前記アース電極に正負の高電圧を印加する手段を備えた電気集塵装置において、前記接触子に磁石を設け、磁力により接触子の開閉を行うことを特徴とするものである。
【0010】
この手段により、漏れ電流の増加もしくは短絡を防止できる電撃防止構造を有する電気集塵装置が得られる。
【0011】
また、他の手段は、前記収納部の前記接触子が配置される位置の近傍に、前記接触子の磁石と反発しあうように収納部側磁石を配置したことを特徴とするものである。
【0012】
この手段により、漏れ電流の増加もしくは短絡を防止できる電撃防止構造を有する電気集塵装置が得られる。
【0013】
また、他の手段は、前記収納部の前記接触子が配置される位置の近傍に、電磁石を配置したことを特徴とするものである。
【0014】
この手段により、取り外す際には残留電荷が放電されている電撃防止構造を有する電気集塵装置が得られる。
【0015】
また、他の手段は、前記磁石を配置固定した前記接触子は風路から完全に絶縁されるように、密閉構造となっていることを特徴とするのである。
【0016】
この手段により、漏れ電流の増加もしくは短絡を防止できる電撃防止構造を有する電気集塵装置が得られる。
【0017】
また、他の手段は、前記磁石は希土類磁石であることを特徴とするものである。
【0018】
この手段により、漏れ電流の増加もしくは短絡を防止できる電撃防止構造を有する電気集塵装置が得られる。
【0019】
また、他の手段は、前記希土類磁石は表面塗装処理が施されていることを特徴とするものである。
【0020】
この手段により、漏れ電流の増加もしくは短絡を防止できる電撃防止構造を有する電気集塵装置が得られる。
【0021】
また、他の手段は、前記集塵部には除菌あるいは抗ウィルス成分が含まれている溶液が添着されていることを特徴とするものである。
【0022】
この手段により、抗菌機能を有する電気集塵装置が得られる。
【0023】
また、他の手段は、前記除菌あるいは抗ウィルス成分はカテキン、タンニン酸、銀錯体イオン、次亜塩素酸イオン、過酸化水素、もしくはアルコールであることを特徴とするものである。
【0024】
この手段により、抗菌機能を有する電気集塵装置が得られる。
【0025】
また、他の手段は、請求項1乃至7いずれかに記載の電気集塵装置を搭載する空調装置としたものである。
【0026】
この手段により、空調機能と同時に高性能かつ性能低下の無い安定した空気清浄機能を有する空調装置が得られる。
【0027】
また、他の手段は、請求項8記載の空調装置は空気清浄機、加湿器、除湿機、エアーコンディショナー、換気装置の何れかであることを特徴とする空調装置としたものである。
【0028】
この手段により、高性能かつ性能低下の無い安定した空気清浄機能を有する空気清浄機、加湿器、除湿機、エアーコンディショナー、換気装置が得られる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、電撃防止構造の漏れ電流の増加または短絡を防止することで、集塵効率の低下などのない安定した集塵性能を得ることができ、また、集塵部を取り出す際には残留電荷が放電されている電気集塵装置を得ることができるという効果のある電気集塵装置およびそれを用いた空調装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の請求項1記載の発明は、導電性材料からなる高圧電極およびアース電極を電気絶縁材料からなる枠体で支持した集塵部と前記集塵部内に前記高圧電極と前記アース電極の間を開閉可能な接触子を有し、前記集塵部を出し入れ可能に収納する収納部と前記高圧電極および前記アース電極に正負の高電圧を印加する手段を備えた電気集塵装置において、前記接触子に磁石を設け、磁力により接触子の開閉を行うことを特徴とするものであり、接触子に接触することなく磁力によりスイッチを開閉できる作用を有する。
【0031】
本発明の請求項2記載の発明は、前記収納部の前記接触子が配置される位置の近傍に、前記接触子の磁石と反発しあうように収納部側磁石を配置したことを特徴とするものであり、漏れ電流の増加もしくは短絡を防止できる電撃防止構造を有する電気集塵装置が得られる。
【0032】
本発明の請求項3記載の発明は、前記収納部の前記接触子が配置される位置の近傍に、電磁石を配置したことを特徴とするものであり、電磁石の磁極を切り替えることにより、接触子を開閉することができる作用を有する。
【0033】
この手段により、取り外す際には残留電荷が放電されている電撃防止構造を有する電気集塵装置が得られる。
【0034】
本発明の請求項4記載の発明は、前記磁石を配置固定した前記接触子は風路から完全に絶縁されるように、密閉構造となっていることを特徴としたものであり、接触子が風路にないため、接触子近傍に塵埃が付着することはないという作用を有する。
【0035】
本発明の請求項5記載の発明は、前記磁石は希土類磁石であることを特徴としたものである。
【0036】
本発明の請求項6記載の発明は、前記希土類磁石は表面塗装処理が施されていることを特徴としたものである。
【0037】
本発明の請求項7記載の発明は、前記集塵部には除菌あるいは抗ウィルス成分が含まれている溶液が添着されていることを特徴としたものである。
【0038】
本発明の請求項8記載の発明は、前記除菌あるいは抗ウィルス成分はカテキン、タンニン酸、銀錯体イオン、次亜塩素酸イオン、過酸化水素、もしくはアルコールであることを特徴としたものである。
【0039】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0040】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態を図1〜2を用いて説明する。
【0041】
図に示すように、集塵部1は導電性材料からなる高圧電極2およびアース電極3を交互に配置し、電気絶縁材料からなる枠体4にて固定されている。集塵部1の内部には高圧電極2とアース電極3を開放、短絡するために回転自在に支持されたスイッチ5を有し、そのスイッチ5には永久磁石6が固定されており、スイッチボックス7で覆われている。永久磁石6はエネルギー積の大きい希土類磁石を用い、錆を防止するために表面塗装処理を施してある。また、集塵部1には除菌あるいは抗ウィルス成分が含まれているカテキン、タンニン酸、銀錯体イオン、次亜塩素酸イオン、過酸化水素、アルコールなどの溶液が添着されている。一方、本体のケーシング8は集塵部1を収納する収納部9が構成されており、集塵部1を出し入れ可能な構成としている。収納部9には高圧端子10およびアース端子11が配置されており、集塵部1が収納部9に挿入されて状態で高圧電極2およびアース電極3にそれぞれ正負の高電圧を供給する。また、ケーシング8には収納部9に集塵部1が収納された状態でスイッチ5の永久磁石6に近接する位置に電磁石12を配置し、電磁石巻線13には順方向電流14または逆方向電流15を流すことにより磁界の切り替えをすることが可能となっている。
【0042】
上記構成において、ケーシング8の収納部9に集塵部1を収納し、運転を開始するときは電磁石巻線13に順方向電流14を流すことにより、永久磁石6との間で互いに反発する磁界を発生させ、スイッチ5を開放した後に高圧端子10およびアース端子11から高圧電極2およびアース電極3にそれぞれ高電圧を供給し、詳細構成は省略するが、前面(図上で前面)に吸込み口、背面(図上で背面)に吹出し口をそれぞれ開口しており、本体送風機(図示せず)により吸込み口から吸い込まれた塵埃を集塵部1にて集塵して取り除き、吹出し口より排出する。運転を停止するときは高電圧の供給を停止した後に電磁石巻線13に逆方向電流15を流すことにより、永久磁石6と互いに引合う磁界を発生させることによりスイッチ5を短絡させ、高圧電極2およびアース電極3の残留電荷を放電する。
【0043】
このような本発明の実施の形態1によれば、磁力によるスイッチ5の開放、短絡ができるため、スイッチ5をスイッチボックス7で密閉構造とすることができ、塵埃の含む風路から絶縁が可能となり、スイッチ5に塵埃が蓄積され漏れ電流が増加し集塵効率が低下し、最終的には塵埃により短絡してしまうことがない電気集塵装置が提供することができる。
【0044】
また、運転を停止し集塵部1が収納部9に収納されている状態で残留電荷を放電することができるため、集塵部1のメンテナンスのために取り外す際には残留電荷による電撃を受けることがない電撃防止構造を有する電気集塵装置が提供することができる。
【0045】
また、永久磁石6に低温不可逆減磁のない希土類磁石を用いることにより、集塵部1内の高電圧のより発生した磁界による不可逆減磁が起こらず磁力の低下することがないため、より信頼性、安全性の高い電気集塵装置が提供することができる。
【0046】
また、集塵部1には除菌あるいは抗ウィルス成分が含まれている溶液が添着されているため集塵された塵埃に含まれる菌、ウィルスの増殖を抑えることができる作用を有する電気集塵装置が提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電気集塵装置は、集塵部の電撃防止構造に磁力を用いることにより比接触で開放、短絡動作ができるため、接触子を風路から絶縁することができ、安定して高い集塵性能を得ることができるという効果を有し、空気環境を向上させる用途として有用である。
【0048】
また、本発明の電気集塵装置は、電磁石により磁界の向きを切り替えることにより、集塵部が本体ケーシング内に収納されている状態で残留電荷を放電することができるため、メンテナンス時においてもより安全性の高い電気集塵装置を得ることができ、長期間において安定した集塵性能を得ることができるという効果を有する。このような電気集塵装置は、空気清浄機、加湿器、除湿機、エアーコンディショナー、換気装置のような空気調和装置に搭載し、室内の冷暖房、湿度制御といった空調を行いながら清浄化された室内空間を提供する用途として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1の電気集塵装置を示す構成図
【図2】本発明の実施の形態1の電気集塵装置を示す構成図
【図3】従来の集塵装置を示す構成図
【図4】従来の集塵装置を示す斜視図
【符号の説明】
【0050】
1 集塵部
2 高圧電極
3 アース電極
4 枠体
5 スイッチ
6 永久磁石
7 スイッチボックス
8 ケーシング
9 収納部
10 高圧端子
11 アース端子
12 電磁石
13 電磁石巻線
14 順方向電流
15 逆方向電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料からなる高圧電極およびアース電極を電気絶縁材料からなる枠体で支持した集塵部と前記集塵部内に前記高圧電極と前記アース電極の間を開閉可能な接触子を有し、前記集塵部を出し入れ可能に収納する収納部と前記高圧電極および前記アース電極に正負の高電圧を印加する手段を備えた電気集塵装置において、前記接触子に磁石を設け、磁力により接触子の開閉を行うことを特徴とする電気集塵装置。
【請求項2】
前記収納部の前記接触子が配置される位置の近傍に、前記接触子の磁石と反発しあうように収納部側磁石を配置したことを特徴とする請求項1記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記収納部の前記接触子が配置される位置の近傍に、電磁石を配置したことを特徴とする請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記磁石を配置固定した前記接触子は風路から完全に絶縁されるように、密閉構造となっていることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項5】
前記接触子に配置された前記磁石は希土類磁石であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項6】
前記希土類磁石は表面塗装処理が施されていることを特徴とする請求項5に記載の電気集塵装置。
【請求項7】
前記集塵部には除菌あるいは抗ウィルス成分が含まれている溶液が添着されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項8】
前記除菌あるいは抗ウィルス成分はカテキン、タンニン酸、銀錯体イオン、次亜塩素酸イオン、過酸化水素、もしくはアルコールであることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかに記載の電気集塵装置を搭載する空調装置。
【請求項10】
請求項9記載の空調装置は空気清浄機、加湿器、除湿機、エアーコンディショナー、換気装置の何れかであることを特徴とする空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−226289(P2009−226289A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73300(P2008−73300)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】