説明

電気集塵装置用の平板電極

【課題】電気集塵装置において電界を形成するために用いられる平板電極であって、平板電極間の沿面放電の発生の抑制、及び形成電界の強度の不均一の改善に資する平板電極を提供すること。
【解決手段】平板電極(7)は、シート片からなる電気絶縁体(17)と、電気絶縁体の片面上に形成された第1の導電部(19)及びこれに連なる第2の導電部(21)とを備える。第1の導電部は電気絶縁体の周縁の一部から他の一部に向けて伸びる帯条からなる。また、第2の導電部は、帯条より高い電気抵抗率を有する複数の線条(41)からなり、電気絶縁体の周縁から間隔をおいてかつ該周縁に沿って伸びる仮想閉曲線(43)内に存することを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気の浄化に関し、より詳細には空気中に浮遊する塵埃からなる微粒子に電荷を与え、これを捕捉するための電界を形成する電気集塵装置における前記電界の形成のために用いられる平板電極に関する。
【背景技術】
【0002】
電気集塵装置は複数の平板電極を備え、これらの平板電極は、浄化の対象である空気の通過空間を規定するように、互いに間隔をおいてかつ互いに重なり合うように配置される。各平板電極はシート片からなる電気絶縁体と、該電気絶縁体の片面上に形成された導電部とを備える。互いに隣接する2つの平板電極の導電部に異なる電圧を印加することにより、両平板電極間に電界が形成される。各平板電極の導電部は帯条からなり、該帯条は、両平板電極間での沿面放電の発生回避を目的として、前記電気絶縁体の周縁の一部から該周縁の他の一部に向けて伸びかつ該他の一部に至る手前で終わる。両平板電極間に受け入れられる空気は、先に、電気集塵装置に設けられたイオナイザーに通され、これにより、空気中に存する微粒子が負電荷又は正電荷を帯びた帯電微粒子とされる。帯電微粒子は、両平板電極間に送られると、両平板電極間の電界の作用により、いずれか一方の平板電極に吸着され、これにより電気集塵装置による集塵が行われる(後記特許文献1を参照)。
【0003】
前記平板電極の電気絶縁体は、これに対する電圧の印加により、導電部の下方領域及びその周辺領域の双方において帯電状態とされるところ、前記導電部の周辺領域はその下方領域に比べて印加電圧が及び難いため、前記周辺領域の電荷の分布密度が比較的粗であるのに対し前記下方領域の電荷の分布密度が比較的密となる。このことが、両平板電極間に形成される電界の強度の不均一と、これに伴う前記集塵効率の低下を生じさせていた。
【特許文献1】特開2008−12526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電気集塵装置において電界を形成するために用いられる平板電極であって、平板電極間の沿面放電の発生の抑制、及び形成電界の強度の不均一の改善に資する平板電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(請求項1に記載の発明の特徴)
請求項1に記載の発明は、電荷を付与された空気中の微粒子を捕捉するための電界を形成すべく互いに間隔をおいてかつ互いに重なり合うように配置される複数の平板電極に係り、シート片からなる電気絶縁体と、該電気絶縁体の片面上に形成された第1の導電部及び該第1の導電部に連なる第2の導電部とを備え、前記第1の導電部が、前記電気絶縁体の周縁の一部から他の一部に向けて伸びかつ該他の一部に至る手前で終わり、前記第2の導電部が、前記第1の導電部より高い電気抵抗率を有する複数の線条からなり、前記電気絶縁体の周縁から間隔をおいてかつ該周縁に沿って伸びる仮想閉曲線内に存することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、電気集塵装置に適用される平板電極について、該平板電極を構成する電気絶縁体の片面上に第1の導電部に加えて、これに連なる第2の導電部を設けたことから、該第2の導電部を介して、前記電気絶縁体の片面上における前記第1の導電部の周辺領域の電荷の分布密度を従来と比較してより高めることができ、これにより、前記電気集塵装置において平板電極間に形成される電界の強度の不均一性を改善することができる。
【0007】
また、前記第1の導電部について、従来の導電部と同様、前記電気絶縁体の周縁の一部から他の一部に向けて伸びかつ該他の一部に至る手前で終わるものとすることにより、前記電気集塵装置における平板電極間における沿面放電の発生を抑制すると共に、前記第2の導電部について、前記第1の導電部より高い電気抵抗率を有するものとし、また、前記電気絶縁体の周縁に至る手前で終端するものとしたことから、前記第2の導電部の導入に伴う沿面放電の発生を抑制することができる。また、沿面放電が発生した場合にあってもリーク電流(放電電流)の値は比較的小さい。このため、いわゆる「リーク音」又は「バチ音」の発生を阻止し、また前記平板電極に吸着された多数の微粒子からなる付着物への引火の可能性を低減することができる。さらに、前記放電電流を電気回路上で検知し、これに基づいて電圧印加を停止することも引火防止に有用である。
【0008】
(請求項2に記載の発明の特徴)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記電気絶縁体が、前記複数の平板電極の相互間隔を維持するために用いられる複数のスペーサの貫通を許す複数の孔と、各孔の開口縁とその周囲を取り巻く仮想閉曲線との間に設けられた、前記第2の導電部が存在しない不存在領域とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、スペーサによって複数の平板電極の相互間隔が維持されるとき、互いに隣接する2つの平板電極が前記スペーサを介して接触するところ、各平板電極と前記スペーサとの間には、前記第2の導電部の不存在領域があることから、前記スペーサは前記第2の導電部に接しない。このことから、前記スペーサの表面を介する2つの平板電極の導電部相互間の沿面距離が十分に確保され、前記スペーサを介しての前記沿面放電の発生を防止することができる。また、前記スペーサを取り巻く前記第2の導電部の不存在領域は他の領域に比べて電荷の分布密度が粗となるため、前記スペーサと前記電気絶縁体との間への付着物の付着量は比較的少ない。このため、前記電気絶縁体が例えば洗浄が可能である合成樹脂からなる場合には、洗浄による前記平板電極からの付着物の剥離をより容易に行うことができる。
【0010】
(請求項3に記載の発明の特徴)
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明の構成要件を備えた上で、前記第2の導電部の不存在領域を規定する各孔の開口縁と前記仮想閉曲線との間の距離が、前記複数の平板電極間の相互間隔の2倍以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記第2の導電部の不存在領域を設けることは、実質的に、前記電気絶縁体における前記微粒子の捕捉面積の減少を招き、前記集塵に寄与しない部分の増大をもたらすものであるところ、これらとの調和を図る上で、前記不存在領域を規定する各孔の開口縁と前記仮想閉曲線との間の距離を前記平板電極間の相互間隔の2倍以下とすることが好ましい。
【0012】
(請求項4に記載の発明の特徴)
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記電気絶縁体が、互いに隣接する2つの平板電極の相互間隔を維持するために各平板電極にエンボス加工を施すことにより設けられた複数の突起と、互いに隣接する両平板電極の一方が他方の平板電極の突起の当接を許す、前記第2の導電部が存在しない不存在領域を有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、各平板電極に設けられた突起によって複数の平板電極の相互間隔が維持されるとき、互いに隣接する2つの平板電極は前記突起を介して相互に接触するところ、各平板電極は互いに隣接する両平板電極の一方が他方の平板電極の突起の当接を許す、前記第2の導電部が存在しない不存在領域を有することから、前記突起は前記第2の導電部に近接しない。このことから、前記突起の当接部及びその周辺に強電界が発生することはなく、厚みの薄い電気絶縁体を用いても電気絶縁体を壊すことはない。
【0014】
(請求項5に記載の発明の特徴)
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記第2の導電部が複数の線条が互いに交差してなる網状を呈し、前記線条相互間の間隔が前記複数の平板電極間の相互間隔以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、互いに平行な線条相互の間隔を平板電極間の相互間隔以下とすることにより得られる網目の粗さは、前記電界の不均一を原因とする前記集塵効率の低下を抑える上で最適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電気集塵装置において電界を形成するために用いられる複数の平板電極の各々について、平板電極間の沿面放電の発生の抑制、及び形成電界の強度の不均一の改善に資するものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1を参照すると、空気浄化のために用いられる電気集塵装置1が、分解斜視図により概略的に示されている。
【0018】
電気集塵装置1は、開放両面を有するフレーム状のハウジング3と、空気の導入口を規定しまた導入される空気中に存する塵埃からなる微粒子に電荷を付与し、これらを帯電微粒子とするためのイオナイザー5と、複数の平板電極7が図1で見て上下方向に互いに間隔をおいてかつ互いに重なり合うように保持されてなる集塵パック9とを含む。前記空気の導入は、電気集塵装置1の一部としてハウジング3の外部に配置される送風機(図示せず)を作動させることにより行われる。
【0019】
イオナイザー5は、ハウジング3の一方の開放面(前面)に配置されかつハウジング3に保持される。また、集塵パック9は、ハウジング3の他方の開放面(後面)からハウジング3の内部に挿入されかつハウジング3に保持される。
【0020】
イオナイザー5は、図1で見て上下方向に互いに間隔をおいてかつ互いに重なり合うように平行に配置された放電電極板11と、互いに隣接する上下一対の放電電極板11間に配置されかつ両放電電極板11に沿って伸びる放電電極線13とを備える。放電電極板11と放電電極線13とにはこれらの間に例えば6kVの電位差が生じるように電圧を印加することにより、放電電極板11と放電電極線13との間にコロナ放電を生じさせることができる。これにより、放電電極板11と放電電極線13との間を通過する空気中の微粒子を正または負に帯電させることができる。
【0021】
帯電された前記微粒子は、集塵パック9において互いに隣接する上下一対の平板電極7が規定する空間15(図2)に通される。両平板電極7にはこれらの間に例えば1kV/mmの電位差が生じるように電圧が印加される。これにより、両平板電極7間の空間15に電界が生じ、空間15に通される前記帯電微粒子は、前記電界の作用を受けて、その極性に応じて、両平板電極7のいずれか一方に吸着される。これにより、空気の浄化が図られる。
【0022】
図3に示すように、集塵パック9を構成する複数の平板電極7は、それぞれ、紙製、塩化ビニルのような合成樹脂製のシート片からなる電気絶縁体17と、該電気絶縁体の表裏両面の一方である片面上に形成された第1の導電部19及び該第1の導電部に連なる第2の導電部21とを備える。電気絶縁体17は、図示の例では全体に細長い矩形の平面形状を有するが、前記矩形以外の任意の平面形状を有するものとすることを妨げない。
【0023】
複数の平板電極7はこれらの両端部においてそれぞれ一対のホルダ23により保持され、また、複数のスペーサ25を介して相互間隔(図示の例では3mmの等間隔)を維持されている。平板電極7には、その電気絶縁体17に、各スペーサ25の貫通を許す貫通孔27が設けられている。なお、符号28は、図1で見て集塵パック9の最上面及び最下面をそれぞれ規定する同様にシート片からなる一対のカバーを示す。
【0024】
図2及び図3に示すように、スペーサ25は、互いに間隔をおいて配置されかつ相互に連結された一対の柱状部29を有する。各柱状部29は、平板電極7の数量(枚数)に相当する数量のくびれ31を有し、これらのくびれ31は各柱状部29の長手方向に等間隔をおいて配置されている。各くびれ31は、平板電極7の一部を受け入れるための隙間を提供する。
【0025】
他方、平板電極7に設けられたスペーサ25のための貫通孔27は、全体に長円形を呈するところ、その一部である前記長円形の一端部において先細に形成されている。平板電極7の貫通孔27に通されたスペーサ25は、その一方の柱状部29のくびれ31に、貫通孔27の前記先細の一端部を規定する平板電極7の一部を受け入れ、平板電極7を支持する。
【0026】
また、集塵パック9を構成する複数の平板電極7は、後述する理由から、図2及び図3で見て、第1及び第2の導電部19,21が形成された電気絶縁体17の前記片面を上方に向けて、これらの両端部が交互に入れ替わるように互い違いに配置されている。スペーサ25のための貫通孔27は、複数の平板電極7がこのように互い違いに配置されるとき、互いに上下に隣接する両平板電極7の一方の貫通孔27と、他方の平板電極7の貫通孔27とが互いに上下方向に対向しかつ対向する両貫通孔27の前記先細の一端部が互いに逆向きとなるように、配置される。このため、互いに隣接する両平板電極7の一方及びその他方は、それぞれ、これらの各貫通孔27を貫通するスペーサ25により、該スペーサの両柱状部29の一方のくびれ31、及び、スペーサ25の他方の柱状部29のくびれ31において支持される。符号32は、平板電極7を互い違いに配置するときの位置決め用の円孔を示す。
【0027】
図4に示すように、各平板電極7を構成する電気絶縁体17は、例えば0.4mmの厚さ寸法を有し、また10Ω/cm以上の電気抵抗率を有する。図示の電気絶縁体17は、平板電極7の平面形状に合致するほぼ矩形の平面形状を有し、その矩形状の周縁を規定する一端部33及び他端部35と、これらの両端部33,35に連なる両側部37,39とを有する。また、電気絶縁体17の一端部33は、両側部37,39のほぼ中間に位置する突出部分40を有する。電気絶縁体17が合成樹脂製のシート片からなる場合には、平板電極7又は集塵パック9それ自体を水、洗浄液等を用いて洗浄することができ、これにより、平板電極7に付着した前記帯電微粒子からなる粉塵を取り除き、平板電極7の集合体である集塵パック9を再使用に供することができる。
【0028】
電気絶縁体17の片面上に設けられた第1の導電部19は、例えば100Ω/cmの電気抵抗率を有する。図示の第1の導電部19は、全体に帯状を呈し、電気絶縁体17の一端部33の突出部分40からこれを始端として他端部35に向けて伸び、かつ他端部35に至る手前で終わる。
【0029】
第1の導電部19は、その大部分が電気絶縁体17の両側部37,39間の中間位置ではなく、該中間位置から一方の側部37の方に偏った位置を側部37に沿って伸びるものとすることが望ましい。このような配置とすることにより、互いに隣接する上下一対の平板電極7の両第1の導電部19が、上下に相互に重なり合うこと又は対向することなく、平板電極7の両側部37,39間で水平方向に位置が互い違いに入れ替わるようにすることができる。その結果、両第1の導電部19相互間の距離(沿面距離)を、これらが上下に対向する場合と比べてより大きいものとし、これにより沿面放電の発生の可能性をより低減することができる。両平板電極7の第1の導電部19への前記電圧の印加により、両電気絶縁体17にそれぞれ正電荷及び負電荷が付与され、これにより両平板電極7間に前記電界が形成される。平板電極7への電圧の印加は、第1の導電部19の前記始端においてなされる。
【0030】
第2の導電部21は、好ましくは第1の導電部19と同一の導電性材料により形成され、図2及び図3に示すように、第1の導電部19である前記帯条より狭い幅寸法を有する複数の線条41からなる。これにより、第2の導電部21は第1の導電部19より高い抵抗率を有するものとされている。第2の導電部21は、電気絶縁体17の前記片面上を第1の導電部19から電気絶縁体17の前記周縁に向けて伸び、電気絶縁体17の第1の導電部19から離れた場所の帯電化に寄与する。これにより、電気絶縁体17をその片面上の広範囲にわたって、しかもより均一に帯電させることができ、また、これにより両平板電極7間に発生される前記電界の強度をより均一にし、電気集塵装置1の集塵効率をより一層向上させることができる。さらに、第2の導電部21の抵抗率が第1の導電部19の抵抗率より高いものに設定されていることから、第1の導電部19に加えて第2の導電部21をさらに設けたことによって生じる両隣接平板電極7間の沿面距離の低減に伴う沿面放電の電流が低減される。
【0031】
第2の導電部21は、また、電気絶縁体17の前記周縁から間隔をおいてかつ該周縁に沿って伸びる矩形状の仮想閉曲線43の内部、すなわち仮想閉曲線43に取り囲まれた閉空間内に存するように、電気絶縁体17の前記片面上に配置されている。これにより、第2の導電部21は電気絶縁体17の前記周縁上に終端しない。これによれば、前記周縁上に終端するようにした場合と比べて、沿面放電の発生の可能性を低減することができる。仮想閉曲線43と電気絶縁体17の前記周縁との間の間隔は、仮想閉曲線43を設けることによって生じる、電気絶縁体17の片面における帯電領域の減少量と、これに伴う前記集塵効率の低下を考慮して、任意に定めることができる。
【0032】
第1の導電部19及び第2の導電部21は、金属蒸着技術を用いて、あるいは印刷技術、好ましくはシルク印刷技術を用いて、同一の電気伝導率を有する一種類のインクで同時に形成することができる。これによれば、第1の導電部19及び第2の導電部21の形成を電気導電率の異なる2種類のインクを用いて印刷する場合に比べて、平板電極7をより安価に製造することができる。
【0033】
また、図示の実施例においては、平板電極7の各貫通孔27の開口縁とその周囲を取り巻く例えば長円形の仮想閉曲線45との間に、第2の導電部21が存在しない環状の不存在領域47が設けられている。これにより、第2の導電部21は貫通孔27の開口縁上に至らず、前記開口縁上に至るようにした場合と比べて、スペーサ25の表面を経路とする沿面放電の可能性をより低減することができる。貫通孔27の開口縁とその周囲の仮想閉曲線45との間の間隔は、同様に、電気絶縁体17の片面における帯電領域の減少量と、これに伴う前記集塵効率の低下を考慮して、例えば、平板電極7間の距離の大きさの約2倍に設定することができる。また、第2の導電部21の不存在領域47は、第2の導電部21が存在する領域に比べて、帯電量が少ないことから、不存在領域47上への前記粉塵の付着量が少ない。このため、スペーサ25の周囲の洗浄をより容易に行うことができる。
【0034】
第2の導電部21を構成する複数の線条41は、例えばこれらが互いに交差してなる網目を呈するものとすることができる。前記網目を構成する互いに平行な各対の線条41間の間隔は任意に、好ましくは平板電極7の相互間隔以下の値、例えば3mmに設定することができ、また、線条41の幅寸法すなわち線幅についても、任意に定めることができる。複数の線条41は、図示の例に代えて、例えばこれらが等間隔をおいて互いに平行に伸びるストライプを呈するものとすることができる。
【0035】
図5〜図7を参照すると、図2〜図4に示す平板電極7とは異なる他の例の平板電極49が示されている。図6には複数の平板電極49を用いてなる集塵パック9が示されている。
【0036】
他の例に係る平板電極49は、次に述べる相違点を除き、図2〜図4に示す平板電極7と同一である。すなわち、平板電極49は、平板電極7に設けられた貫通孔27及びその周囲の不存在領域47の代わりに、これらの貫通孔27及び不存在領域47の形成位置と同じ位置に設けられた突起51と第2の導電部21が存在しない不存在領域53とを有する点においてのみ相違する。突起51は、集塵パック9を構成する複数の平板電極49相互間に空間15を保持するためのスペーサとしての機能を有する。このため、平板電極7相互間の間隔保持のために用いられたスペーサ25のための貫通孔27が設けられていない。
【0037】
平板電極49の突起51は、電気絶縁体17にエンボス加工を施すことにより形成され、截頭円錐形の全体形状を有する。突起51は、第1及び第2の導電部19,21が設けられた電気絶縁体17の片面に相対する他の片面からこれと直交する方向へ突出している。
【0038】
図6に示すように、集塵パック9を構成する複数の平板電極49は、複数の平板電極7と同様に、互い違いに積み重ねられ、上方に位置する平板電極49の突起51がその直下に位置する下方の平板電極49の第1及び第2の導電部19,21の形成面である前記片面に接している。突起51は、前記上方の平板電極49の各突起51が、平板電極49の長手方向に関して、前記下方の平板電極49にその各突起51に隣接する位置で接するように配置されている。
【0039】
第2の導電部21が存在しない不存在領域53は、突起51の当接予定面を規定する。不存在領域53を設けることにより、電気絶縁体17が厚みの薄いものであっても、スペーサとしての突起51が、隣接平板電極49相互間での電気絶縁体17の絶縁破壊による導通を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】電気集塵装置の概略的な分解斜視図である。
【図2】集塵パックの概略的な側面図である。
【図3】集塵パックを構成する複数の平板電極の部分拡大斜視図である。
【図4】平板電極の平面図である。
【図5】他の例に係る平板電極の斜視図である。
【図6】図5に示す平板電極を用いてなる集塵パックの概略的な側面図である。
【図7】図5に示す平板電極の平面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 電気集塵装置
5 イオナイザー
7 平板電極
17 電気絶縁体
19 第1の導電部
21 第2の導電部
25 スペーサ
27 貫通孔
41 線条
43 仮想閉曲線
45 仮想閉曲線
47 第2の導電部の不存在領域
49 他の例の平板電極
51 突起
53 第2の導電部の不存在領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷を付与された空気中の微粒子を捕捉するための電界を形成すべく互いに間隔をおいてかつ互いに重なり合うように配置される複数の平板電極のそれぞれであって、
シート片からなる電気絶縁体と、該電気絶縁体の片面上に形成された第1の導電部及び該第1の導電部に連なる第2の導電部とを備え、
前記第1の導電部は、前記電気絶縁体の周縁の一部から他の一部に向けて伸びかつ該他の一部に至る手前で終わり、
前記第2の導電部は、前記第1の導電部より高い電気抵抗率を有し、前記電気絶縁体の周縁から間隔をおいてかつ該周縁に沿って伸びる仮想閉曲線内に存する、
ことを特徴とする、平板電極。
【請求項2】
前記電気絶縁体は、前記複数の平板電極の相互間隔を維持するために用いられる複数のスペーサの貫通を許す複数の孔と、各孔の開口縁とその周囲を取り巻く仮想閉曲線との間に設けられた、前記第2の導電部が存在しない不存在領域とを有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の平板電極。
【請求項3】
前記不存在領域を規定する各孔の開口縁と前記仮想閉曲線との間の距離が前記複数の平板電極間の相互間隔の2倍以下である、
ことを特徴とする、請求項2に記載の平板電極。
【請求項4】
前記電気絶縁体は、互いに隣接する2つの平板電極の相互間隔を維持するために各平板電極にエンボス加工を施すことにより設けられた複数の突起と、互いに隣接する両平板電極の一方が他の平板電極の突起の当接を許す、前記第2の導電部が存在しない不存在領域を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の平板電極。
【請求項5】
前記第2の導電部は複数の線条が互いに交差してなる網状を呈し、前記線条の相互間隔は前記複数の平板電極間の相互間隔以下である、
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の平板電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−268979(P2009−268979A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122202(P2008−122202)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000217675)電元オートメーション株式会社 (12)
【Fターム(参考)】