説明

電気音響変換器およびアレイ状電気音響変換装置ならびに電気音響変換システム

【課題】工程を複雑化させずに製造できる電気音響変換器およびアレイ状電気音響変換装置ならびに電気音響変換システムを提供する。
【解決手段】電気音響変換器は、第1のスペーサと、第2のスペーサと、第1のスペーサおよび第2のスペーサにより外周部を支持される振動板と、振動板と対向する主面の少なくとも一部に第1の電極が形成される第1の基材と、振動板と対向する主面の少なくとも一部に第2の電極が形成される第2の基材とを備える。第1の基材における振動板との対向面が、第1の電極の表面よりも振動板に対して凸とされ、第2の基材における振動板との対向面が、第2の電極の表面よりも振動板に対して凸とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気音響変換器およびアレイ状電気音響変換装置ならびに電気音響変換システムに関する。本開示は、特に、デジタル信号を入力として振動を発生させ、音声などを再生する電気音響変換器およびアレイ状電気音響変換装置ならびに電気音響変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル方式により記録されたデータを入力として音声や音楽などを再生するデジタルスピーカの開発が進められている。
【0003】
デジタルスピーカは、例えば、複数個の電気音響変換器の群として構成される。音声信号の振幅変化に対応したアナログ信号を入力して音声や音楽などを再生するアナログスピーカと異なり、デジタルスピーカにおいては、個々の電気音響変換器が、入力信号のビットに対応して電気音響変換を行う。
【0004】
個々の電気音響変換器の発生させた音が、空間的に合成されることにより、デジタル方式により記録されたデータが、音声や音楽として我々に知覚される。個々の電気音響変換器の発生させる音は、例えば、パルス音であり、デジタルスピーカは、消費する電力が小さいという特長がある。
【0005】
デジタルスピーカとして、半導体製造技術の応用またはメカトロニクス技術の微小化により得られる微小電気機械システム(microelectromechanical system(MEMS))として構成されたデジタルスピーカが一般的に知られている。例えば、下記の特許文献1には、単進(unary)デジタル駆動信号に応答して音響出力を生成するデジタルスピーカモジュールが開示されている。例えば、下記の特許文献2には、符号器または復号器の形成された基板と統合されたオーディオ電気音響変換器システムが開示されている。また、例えば、下記の特許文献3には、配列された複数個の変換素子に関する駆動方法および駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−016675号公報
【特許文献2】特表2008−510378号公報
【特許文献3】国際公開第2009/066290号
【0007】
しかしながら、いわゆるMEMSとしてデジタルスピーカを製造しようとすると、工程の管理が複雑化し、デジタルスピーカ開発のために、膨大な期間や費用が必要となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
工程を複雑化させずに製造できるデジタルスピーカが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の好ましい実施態様は、
電気音響変換器が、第1のスペーサと、第2のスペーサと、振動板と、第1の基材と、第2の基材とを備える。
振動板は、第1のスペーサおよび第2のスペーサにより外周部を支持される。
第1の基材における、振動板と対向する主面の少なくとも一部に第1の電極が形成される。
第2の基材における、振動板と対向する主面の少なくとも一部に第2の電極が形成される。
第1の基材における振動板との対向面が、第1の電極の表面よりも振動板に対して凸とされる。
第2の基材における振動板との対向面が、第2の電極の表面よりも振動板に対して凸とされる。
【0010】
本開示の第2の好ましい実施態様は、
アレイ状電気音響変換装置が、第1のスペーサと、第2のスペーサと、振動板と、第1の基材と、第2の基材とを備える。
振動板は、第1のスペーサに形成される複数個の開口部および第2のスペーサに形成される複数個の開口部に対応する複数個の領域がそれぞれ独立して振動自在とされて第1のスペーサおよび第2のスペーサにより支持される。
第1の基材の振動板と対向する主面における、第1のスペーサに形成される複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される。
第2の基材の振動板と対向する主面における、第2のスペーサに形成される複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される。
アレイ状電気音響変換装置は、振動板においてそれぞれ独立して振動自在とされた領域のそれぞれを単位とする電気音響変換器を複数個備える。
【0011】
本開示の第3の好ましい実施態様は、
電気音響変換システムが、第1のスペーサと、第2のスペーサと、振動板と、第1の基材と、第2の基材と、1以上の上面側ドライバ回路と、1以上の底面側ドライバ回路とを備える。
振動板は、第1のスペーサに形成される複数個の開口部および第2のスペーサに形成される複数個の開口部に対応する複数個の領域がそれぞれ独立して振動自在とされて第1のスペーサおよび第2のスペーサにより支持される。
第1の基材の振動板と対向する主面における、第1のスペーサに形成される複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される。
第2の基材の振動板と対向する主面における、第2のスペーサに形成される複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される。
1以上の上面側ドライバ回路は、第1の基材の主面のうち、振動板と対向する主面とは反対側の主面上に配置され、第1の基材に形成された複数個の電極との電気的接続を有する。
1以上の底面側ドライバ回路は、第2の基材の主面のうち、振動板と対向する主面とは反対側の主面上に配置され、第2の基材に形成された複数個の電極との電気的接続を有する。
電気音響変換システムは、振動板においてそれぞれ独立して振動自在とされた領域のそれぞれを単位として、1以上の上面側ドライバ回路または1以上の底面側ドライバ回路からの駆動信号に応じて独立して駆動する電気音響変換器を複数個備える。
【0012】
本開示では、振動板の両面が、複数個の開口部が設けられた第1のスペーサおよび複数個の開口部が設けられた第2のスペーサにより支持される。第1のスペーサおよび第2のスペーサの外側には、第1の基材および第2の基材がそれぞれ配置される。第1の基材の主面のうち、振動板に対向する主面には、第1のスペーサに設けられた複数個の開口部に対応して、複数個の電極が配置される。第2の基材の主面のうち、振動板に対向する主面には、第2のスペーサに設けられた複数個の開口部に対応して、複数個の電極が配置される。
【0013】
第1の基材に配置された電極と、第1のスペーサと、振動板における、第1のスペーサおよび第2のスペーサに設けられた複数個の開口部に対応する領域のうちの1つと、第2のスペーサと、第2の基材に配置された電極とから、電気音響変換器の一単位が構成される。すなわち、振動板における、第1のスペーサおよび第2のスペーサに設けられた複数個の開口部に対応する領域のうちの1つが、電気音響変換器の一単位におけるダイヤフラム部として機能する。個々のダイヤフラム部の振動は、それぞれ独立している。
【0014】
第1の基材における振動板との対向面は、第1の電極の表面よりも振動板に対して凸とされ、第2の基材における振動板との対向面は、第2の電極の表面よりも振動板に対して凸とされる。そのため、ダイヤフラム部と、第1の基材に配置された電極および第2の基材に配置された電極との接触が防止される。第1のスペーサおよび第2のスペーサの厚さにより、ダイヤフラム部の振幅が管理され、電気音響変換器間におけるダイヤフラム部の最大変位のバラつきが抑制される。
【0015】
1枚の振動板が、第1のスペーサおよび第2のスペーサに設けられた複数個の開口部により区分されることにより、複数個のダイヤフラム部が構成される。したがって、本開示のアレイ状電気音響変換装置および電気音響変換システムは、独立して駆動する複数個の電気音響変換器の配列を備える。
【0016】
本開示では、いわゆるMEMSとして電気音響変換器を製造する必要がない。また、振動板を共通として複数個のダイヤフラム部が構成されるため、電気音響変換器およびアレイ状電気音響変換装置ならびに電気音響変換システムの製造工程が複雑化することはない。
【発明の効果】
【0017】
少なくとも1つの実施例によれば、工程を複雑化させずに製造できる電気音響変換器およびアレイ状電気音響変換装置ならびに電気音響変換システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1Aは、第1の実施形態にかかる電気音響変換システムの一構成例を示す平面図である。図1Bは、図1Aに示す電気音響変換システムの側面図である。
【図2】図2は、図1Aおよび図1Bに示す電気音響変換システムの分解斜視図である。
【図3】図3Aは、図2におけるP1部を拡大して示す図である。図3Bは、上側基材の上側スペーサとの対向面において、図2に示すP1部に対応する部分を拡大して示す図である。図3Cは、図3Bにおける複数個の電極のうちの1つとその周辺部を拡大して示す図である。
【図4】図4Aは、図2におけるP2部を拡大して示す図である。図4Bは、図2におけるP3部を拡大して示す図である。図4Cは、図4Bにおける複数個のダイヤフラム部のうちの1つとその周辺部を拡大して示す図である。
【図5】図5Aは、第1の実施形態にかかる電気音響変換システムを上側基材側から見た概略図である。図5Bは、電気音響変換システムおよびアレイ状電気音響変換装置における電気音響変換器の一単位を示す略線図である。
【図6】図6Aは、図5BのVIxz−VIxz断面を示す模式図である。図6Bは、図5BのVIyz−VIyz断面を示す模式図である。
【図7】図7Aは、電気音響変換器の他の構成例を示すXZ断面図である。図7Bは、電気音響変換器の他の構成例を示すYZ断面図である。
【図8】図8は、信号処理部および本開示の実施形態にかかる電気音響変換システムの具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図9】図9Aは、第2の実施形態にかかる電気音響変換システムの一構成例を示す平面図である。図9Bは、図9Aに示す電気音響変換システムの側面図である。
【図10】図10は、図9Aおよび図9Bに示す電気音響変換システムの分解斜視図である。
【図11】図11Aは、図10におけるQ1部を拡大して示す図である。図11Bは、図11Aに示すU部を拡大して示す図である。図11Cは、上側基材の上側スペーサとの対向面において、図11Aに示すU部と対応する部分を拡大して示す図である。
【図12】図12Aは、図10におけるQ2部を拡大して示す図である。図12Bは、振動部材の一構成例の断面を示す模式図である。
【図13】図13Aは、第2の実施形態にかかる電気音響変換システムを上側基材側から見た概略図である。図13Bは、電気音響変換システムおよびアレイ状電気音響変換装置における電気音響変換器の一単位を示す略線図である。
【図14】図14Aは、図13BのXIV−XIV断面を示す模式図である。図14Bは、電気音響変換器の他の構成例を示すXZ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、電気音響変換器およびアレイ状電気音響変換装置ならびに電気音響変換システムの実施形態について説明する。説明は、以下の順序で行う。
<1.第1の実施形態>
[電気音響変換システムの概略的構成]
(上側基材)
(上側スペーサ)
(振動部材)
(ドライバ回路)
[アレイ状電気音響変換装置の概略的構成]
[電気音響変換器の概略的構成]
[電気音響変換システムの動作の概略]
<2.第2の実施形態>
[電気音響変換システムの概略的構成]
(上側基材)
(上側スペーサ)
(振動部材)
[アレイ状電気音響変換装置の概略的構成]
[電気音響変換器の概略的構成]
<3.変形例>
【0020】
なお、以下に説明する実施形態は、電気音響変換器およびアレイ状電気音響変換装置ならびに電気音響変換システムの好適な具体例である。以下の説明においては、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、特に本開示を限定する旨の記載がない限り、電気音響変換器およびアレイ状電気音響変換装置ならびに電気音響変換システムの例は、以下に示す実施形態に限定されないものとする。
【0021】
<1.第1の実施形態>
[電気音響変換システムの概略的構成]
図1Aは、第1の実施形態にかかる電気音響変換システムの一構成例を示す平面図である。図1Bは、図1Aに示す電気音響変換システムの側面図である。図2は、図1Aおよび図1Bに示す電気音響変換システムの分解斜視図である。
【0022】
図1Bおよび図2に示すように、第1の実施形態にかかる電気音響変換システム1は、概略的には、上側基材7t、上側スペーサ5t、振動部材3、下側スペーサ5bおよび下側基材7bが順に積層された構成を有する。図1Aおよび図1Bならびに図2に示すように、上側基材7tには、例えば、4つのドライバ回路9at、9bt、9ctおよび9dtが配置される。上側基材7tの主面のうち、例えば、外部に露出した主面上に、配線パターン8Wtが形成される。配線パターンは、例えば、電極部および配線部の集合からなる。なお、下側基材7bも、図1Aに示す上側基材7tの構成例と同様の構成を有している。例えば、下側基材7bには、例えば、4つのドライバ回路9ab、9bb、9cbおよび9dbが配置され、下側基材7bの主面のうち、例えば、外部に露出した主面上に、配線パターン8Wbが形成される。
【0023】
電気音響変換システム1は、複数個の電気音響変換器を有する。振動部材3の一部をダイヤフラム部として、ダイヤフラム部およびダイヤフラム部の上下に配置される部材により、個々の電気音響変換器が構成される。後述するように、図2に示す構成例では、上側基材7tに形成された複数個の電極のうちの1つと、上側スペーサ部と、ダイヤフラム部と、下側スペーサ部と、下側基材7bに形成された複数個の電極のうちの1つとから電気音響変換器の一単位が構成される。
【0024】
複数個の電気音響変換器は、例えば、格子点と対応するように配置されてアレイ状電気音響変換装置を構成する。上側基材7tに形成された複数個の電極のそれぞれと、上側基材に配置されたドライバ回路9at、9bt、9ctおよび9dtとが、上側基材7tに形成された配線パターン8Wtにより電気的に接続される。同様にして、下側基材7bに形成された複数個の電極のそれぞれと、下側基材7bに配置されたドライバ回路9ab、9bb、9cbおよび9dbとが、下側基材7bに形成された配線パターン8Wbにより電気的に接続される。したがって、個々の電気音響変換器は、上側基材7tおよび下側基材7bに配置されたドライバ回路により駆動される。
【0025】
次に、図2〜図4を参照しながら、上側基材7tおよび下側基材7b、上側スペーサ5tおよび下側スペーサ5b、振動部材3ならびにドライバ回路9at、9bt、9ctおよび9dtについて順に説明を行う。なお、電気音響変換システム1は、振動部材3に関して略対称の構成を有する。したがって、下側基材7bおよび下側スペーサ5bは、振動部材3に関して、上側基材7tおよび上側スペーサ5tと対称に配置される。さらに、下側基材7bの構成は、上側基材7tの構成と略同様であり、下側スペーサ5bの構成は、上側スペーサ5tの構成と略同様である。そのため、以下の説明においては、下側基材7bの構成の具体的な説明、下側スペーサ5bの構成の具体的な説明および下側基材7bに配置されたドライバ回路9ab、9bb、9cbおよび9dbの具体的な説明を省略する。
【0026】
(上側基材)
上側基材7tは、振動部材3の支持体としての機能を有し、電気音響変換システム1の外形を構成する。図1Aおよび図1Bならびに図2では、上側基材7tの形状が平板状とされた構成例を示したが、これに限られない。また、上側基材7tの外形としては、四角形に限られない。
【0027】
図3Aは、図2におけるP1部を拡大して示す図である。以下では、個々の電気音響変換器または個々の電気音響変換器に対応する部材を識別する必要が生じた場合には、下付き文字により、これらを適宜識別することとする。
【0028】
図3Aに示すように、例えば、上側基材の主面上には、複数個の電極部と、複数個の配線部とが形成されている。上側基材に形成された複数個の電極部および複数個の配線部により、配線パターン8Wtが構成される。
【0029】
図3Aにおいて、破線で囲まれたU部が、複数個の電気音響変換器のうちの一単位に対応する。個々の電極部8etiは、複数個の電気音響変換器のうちの1つずつに対応して形成されており、個々の電極部8etiは、個々の配線部8wtiにより、後述するドライバ回路と電気的に接続される。
【0030】
個々の電極部8etiには、例えば、2つの貫通穴ht1iおよびht2iが形成されている。貫通穴ht1iおよびht2iは、後述する振動部材3の振動に伴って空気が出入りできるようにするために形成された空気穴である。図3Aでは、個々の電極部8etiに円状の2つの貫通穴ht1iおよびht2iが形成される例を示したが、貫通穴の個数や位置、形状、大きさなどはこれに限られない。
【0031】
図3Bは、上側基材の上側スペーサとの対向面において、図2に示すP1部に対応する部分を拡大して示す図である。図3Bにおいて、破線で囲まれたU部が、複数個の電気音響変換器のうちの一単位に対応する。なお、図3Bは、上側基材の一主面を拡大して示す図であるが、下側基材7bの構成が上側基材7tの構成と略同様であるため、図3Bは、図2に示すP5部を拡大して示す図に相当する。
【0032】
図3Bに示すように、上側基材7tの主面のうち、振動部材3に対向する側の主面上においても、複数個の電気音響変換器のうちの1つずつに対応して、複数個の電極が形成されている。上側基材7tの主面のうち、振動部材3に対向する側の主面上に形成された電極6etiは、該主面とは反対側の主面上に形成された電極部8etiと電気的に接続されている。したがって、振動部材3に対向する側の主面上に形成された電極6etiに対しては、電極部8etiおよび配線部8wtiを介して、後述するドライバ回路からの駆動電圧が印加される。
【0033】
図3Cは、図3Bにおける複数個の電極のうちの1つとその周辺部を拡大して示す図である。なお、図3Cにおいては、電極6etiならびに貫通穴ht1iおよびht2i以外の領域を網掛けで示した。
【0034】
図3Cに示すように、電極6etiは、例えば、円周の2箇所が中心に向けてくびれた形状(いわゆるダンベル形状)とされる。電極6etiの表面は、上側基材7tにおける振動部材3との対向面に対して凹とされる。すなわち、ダンベル形状のくびれた部分CP1iおよびCP2iは、振動部材3に向けて突出している。ダンベル形状のくびれた部分CP1iおよびCP2iは、後述するように、振動部材3と、電極6etiとの接触を防止するストッパとして機能する。
【0035】
振動部材3に対する駆動力をなるべく大きくする観点からは、振動部材3に対向する側の主面上に形成された電極6etiの面積が大きいことが好ましい。一方、配線が可能な領域を増やす観点からは、振動部材3に対向しない側の主面上に形成された電極部8etiの面積が小さいことが好ましい。そのため、図3A〜図3Cでは、振動部材3に対向する側の主面上に形成された電極6etiの形状と、該主面とは反対側の主面上に形成された電極部8etiの形状とが同一でない例を示したが、電極6etiおよび電極部8etiの形状は、これに限られない。
【0036】
上側基材7tを構成する材料としては、例えば、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)と呼ばれる低温同時焼成セラミクスを使用することができる。LTCCは、酸化アルミニウムにガラス系材質を添加して900℃程度以下の温度下で焼成することにより得られるセラミクス材である。LTCCの焼成温度は、ガラス系材質が添加されない場合と比較して900℃程度以下と低いため、導体抵抗の小さい銅や銀を使った配線パターンが形成された基板を焼成することも可能である。したがって、例えば、配線パターンが形成された基板を含む積層基材を焼成して、内部に配線パターンが形成された積層基材を上側基材7tとすることも可能である。
【0037】
上側基材7tとして、例えば、MID(Molded Interconnect Device)と呼ばれる回路成形部品を使用することもできる。MIDは、樹脂構造体上に電気回路が形成された回路成形部品であり、めっきや蒸着のみにより電気回路の形成が可能なため、環境に優しいという特長を有する。上側基材7tにMIDを適用することにより、上側基材7tを、段差が形成された基材とすることも容易となる。
【0038】
上側基材7tを構成する材料としては、これに限られず、例えば、樹脂材料やガラスなどを使用してもよい。上側基材7tを構成する材料と、下側基材7bを構成する材料とが同一でなくてももちろんかまわない。
【0039】
電極部8eti、配線部8wtiおよび電極6etiを構成する材料としては、導体抵抗が小さい材料が好ましく、例えば、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組み合わせなどを挙げることができるが、これらに限られない。製造工程を複雑なものとしないようにする観点から、電極部8eti、配線部8wtiおよび電極6etiが、同一の材料から構成されることが好ましい。電極部8eti、配線部8wtiおよび電極6etiは、例えば、めっきや蒸着、スパッタリングなどにより形成することが可能である。
【0040】
(上側スペーサ)
図4Aは、図2におけるP2部を拡大して示す図である。図4Aは、上側スペーサ5tの一主面を拡大して示す図であるが、下側スペーサ5bの構成が上側スペーサ5tの構成と略同様であるため、図4Aは、図2におけるP4部を拡大して示す図にも相当する。
【0041】
図4Aに示すように、上側スペーサ5tには、複数個の電気音響変換器のうちの1つずつに対応して、複数個の開口部Htiが形成されている。なお、図4Aにおいては、開口部Hti以外の領域を網掛けで示した。
【0042】
上部スペーサ5tは、後述する振動部材3における上側基材7tに向けた方向への変位を確保するための部材である。したがって、個々の開口部Htiの面積は、個々の電極6etiの面積より大とされる。電極6etiを包括する円を想定したときに、該円の直径は、例えば、数mm程度とされるのに対して、開口部Htiの直径は、該円の直径よりも大とされる。
【0043】
上側スペーサ5tを構成する材料としては、電気絶縁性に優れた材料が好ましく、例えば、樹脂材料やガラス、ゴムなどを挙げることができるが、これらに限られない。
【0044】
(振動部材)
図4Bは、図2におけるP3部を拡大して示す図である。振動部材3は、電気音響変換において空気の振動を発生させるための振動板である。
【0045】
図4Bに示すように、振動部材3には、ダイヤフラム部Diが複数個配列されている。ダイヤフラム部Diは、上側スペーサ5tに設けられた複数個の開口部Htiと対応する位置に配置される。したがって、個々のダイヤフラム部Diは、紙面と垂直な方向(Z軸方向)に沿って独立して振動自在とされる。
【0046】
本開示では、個々の電気音響変換器におけるダイヤフラム部Diが、共通の部材上に配列される。したがって、本開示によれば、工程を複雑化させずに電気音響変換器およびアレイ状電気音響変換装置ならびに電気音響変換システムを製造することができる。
【0047】
振動部材3を構成する材料としては、導体抵抗が小さい材料が好ましく、例えば、金属材料を挙げることができる。金属材料としては、例えば、ステンレス鋼(stainless steel)、チタニウム、アルミニウム、ベリリウム、マグネシウム、ボロン化チタン、ジュラルミンなどが挙げられる。ステンレス鋼は、鉄にクロムやニッケルを含有させた合金である。ステンレス鋼は、オーステナイトステンレス鋼(austenitic stainless steel)またはフェライト系ステンレス鋼もしくはマルテンサイトステンレス鋼から適宜選択することができ、例えば、JIS規格の表記でSUS304、SUS304L、SUS316、SUS310S、SUS309S、SUS303、SUS301、SUS430、SUS440C、SUS420J2、SUS410S系などが好適である。
【0048】
図4Cは、図4Bにおける複数個のダイヤフラム部のうちの1つとその周辺部を拡大して示す図である。振動部材3を構成する材料として、例えば、ステンレス鋼などの金属材料を使用する場合には、個々のダイヤフラム部Diの変位をなるべく大きくするために、個々のダイヤフラム部の形状Diが、振動しやすい形状とされることが好ましい。具体的には、例えば、図4Cに示すように、個々のダイヤフラム部Diの外周部分に、スリットが設けられていることが好ましい。
【0049】
図4Cに示す構成例では、個々のダイヤフラム部の外周部分に、4つのスリットs1i、s2i、s3iおよびs4iが形成されている。すなわち、図4Cに示すダイヤフラム部Diの中心部分は、4つの腕部h1i、h2i、h3iおよびh4iにより支持される。なお、図4Bおよび図4Cにおいては、スリット以外の領域を網掛けで示した。
【0050】
4つの腕部h1i、h2i、h3iおよびh4iがカンチレバーとして機能するため、スリットを形成しない場合と比較して、ダイヤフラム部Diの中心部分の変位を大とすることができる。なお、図4Cでは、個々のダイヤフラム部Diの外周部分に、4つのスリットs1i、s2i、s3iおよびs4iが形成される例を示したが、スリットの個数や位置、形状、大きさなどはこれに限られない。
【0051】
(ドライバ回路)
ドライバ回路は、個々の電気音響変換器を駆動するための電流を供給する回路であり、例えば、トランジスタの組み合わせにより構成される。図1Aおよび図1Bならびに図2に示すように、例えば、上側基材7tには、4つのドライバ回路9at、9bt、9ctおよび9dtが配置される。上側基材7tに形成された電極6etiは、上側基材7tに配置されたドライバ回路9at、9bt、9ctおよび9dtのいずれかとの電気的接続を有している。同様に、例えば、下側基材7bには、4つのドライバ回路9ab、9bb、9cbおよび9dbが配置される。下側基材7bに形成された複数個の電極のそれぞれは、下側基材7bに配置されたドライバ回路9ab、9bb、9cbおよび9dbのいずれかとの電気的接続を有している。
【0052】
例えば、振動部材3をグラウンド電位とするとき、上側基材7tに形成された複数個の電極のうち、ある1つの電気音響変換器に対応する電極6etiを高電位とすると、該電気音響変換器のダイヤフラム部Diに静電気力が働き、ダイヤフラム部Diが上側基材7tに近づく。すなわち、ある1つの電気音響変換器のダイヤフラム部Diにおける+Z方向への変位は、上側基材7tに配置されたドライバ回路により制御される。なお、このとき、下側基材7bに形成された複数個の電極のうち、該電気音響変換器に対応する電極は、グラウンド電位とされる。
【0053】
同様にして、ある1つの電気音響変換器のダイヤフラム部Diにおける−Z方向への変位は、下側基材7bに配置されたドライバ回路により制御される。したがって、個々の電気音響変換器は、上側基材7tおよび下側基材7bに配置されたドライバ回路により駆動される。
【0054】
ドライバ回路は、後述するように、入力信号に応じ、電気音響変換器のダイヤフラム部を上側基材または下側基材に近づいた状態とするための駆動電流を供給する。なお、複数個の電気音響変換器のうち、いずれの電気音響変換器を駆動するかは、電気音響変換システム1の製造者が、適宜に設定可能である。
【0055】
[アレイ状電気音響変換装置の概略的構成]
図5Aは、第1の実施形態にかかる電気音響変換システムを上側基材側から見た概略図である。図5Aは、上側基材7tの一主面を示す図であるが、下側基材7bの構成が上側基材7tの構成と略同様であるため、図5Aは、電気音響変換システム1を下側基材7b側から見た概略図にも相当する。
【0056】
図5Aに示すように、複数個の電気音響変換器は、例えば、格子点と対応するように配置されてアレイ状電気音響変換装置11を構成する。アレイ状電気音響変換装置11における複数個の電気音響変換器の個数は、任意に設定することが可能である。アレイ状電気音響変換装置11における複数個の電気音響変換器の個数としては、具体的には、例えば、2のべき乗や2のべき乗より1少ない個数とすることができる。複数個の電気音響変換器の個数を例えば2のべき乗個とすることにより、複数個の電気音響変換器に対する駆動信号を生成するための回路が複雑となることを防止できる。
【0057】
複数個の電気音響変換器の配置も、任意に設定することが可能である。例えば、放射状や同心円状、多角形状、楕円状などに複数個の電気音響変換器を配置することができる。
【0058】
アレイ状電気音響変換装置11の外形も、任意に設定することが可能である。例えば、上側基材7tの外形が四角形状である場合、例えば、ドライバ回路9at、9bt、9ctおよび9dtは、四角形状の4辺に1つずつ配置される。このとき、複数個の電気音響変換器を複数の群に区分し、各群に属する複数個の電気音響変換器と、ドライバ回路9at、9bt、9ctおよび9dtのそれぞれとを対応づけることも可能である。
【0059】
例えば、図5Aでは、複数個の電気音響変換器が4つの群Ga、Gb、GcおよびGdに区分され、第1の群Gaに属する複数個の電気音響変換器と、ドライバ回路9atとが、配線パターン8Watにより接続された構成例を示している。図5Aにおいては、第2の群Gbに属する複数個の電気音響変換器を破線により現された円により示し、第3の群Gcに属する複数個の電気音響変換器を黒い円により示し、また、第4の群Gdに属する複数個の電気音響変換器を網掛けの円により示した。例えば、第2の群Gbに属する複数個の電気音響変換器は、ドライバ回路9btと接続され、第3の群Gcに属する複数個の電気音響変換器は、ドライバ回路9ctと接続され、また、第4の群Gdに属する複数個の電気音響変換器は、ドライバ回路9dtと接続される。
【0060】
このように、複数個の電気音響変換器を複数の群に区分し、各群に対応させてドライバ回路を複数個配置することにより、配線パターンが複雑となることを防止できる。なお、図5Aでは、複数個の電気音響変換器を、四角形状の対角線に沿って複数の群に区分したが、この例に限られない。ドライバ回路の個数や配置も、複数個の電気音響変換器の個数や配置に応じて、適宜設定することが可能である。
【0061】
[電気音響変換器の概略的構成]
図5Bは、電気音響変換システムおよびアレイ状電気音響変換装置における電気音響変換器の一単位を示す略線図である。電気音響変換器Tiは、具体的には、上側基材7tに形成された複数個の電極のうちの1つと、上側スペーサ部Stiと、ダイヤフラム部Diと、下側スペーサ部Sbiと、下側基材7bに形成された複数個の電極のうちの1つとから構成される。図5Bでは、上側基材7tの主面のうち、振動部材3に対向しない側の主面上に形成された電極部8etiと、上側基材7tの主面のうち、振動部材3に対向する側の主面上に形成された電極6etiと、上側スペーサ部Stiと、ダイヤフラム部Diとが重ね合わされた状態を示している。図5Bでは、下側基材7bの主面のうち、振動部材3に対向しない側の主面上に形成された電極部8ebi、下側基材7bの主面のうち、振動部材3に対向する側の主面上に形成された電極6ebiおよび下側スペーサ部Sbiの図示を省略した。また、図5Bにおいては、上側スペーサ部Stiの開口部Hti以外の領域を網掛けで示した。
【0062】
図6Aは、図5BのVIxz−VIxz断面を示す模式図である。図6Bは、図5BのVIyz−VIyz断面を示す模式図である。図6Aおよび図6Bに示すように、振動部材3の一部であるダイヤフラム部Diは、上側スペーサ5tの一部である上側スペーサ部Stiおよび下側スペーサ5bの一部である下側スペーサ部Sbiにより外周部を支持される。
【0063】
上側基材7tに形成された電極6etiまたは下側基材7bに形成された電極6ebiに対して、入力される音声信号に応じた駆動電圧が与えられることにより、上側基材7tおよび下側基材7bの間でダイヤフラム部Diが変位する。電極6ebiに対しては、電極部8ebiおよび配線部8wbiを介して、ドライバ回路からの駆動電圧が印加される。なお、上側スペーサ部Stiおよび下側スペーサSbiにより、ダイヤフラム部Diの外周部が支持されるので、個々の電気音響変換器Tiにおけるダイヤフラム部Diの変位は、それぞれ独立している。
【0064】
上側スペーサ部Stiおよび下側スペーサ部Sbiの厚さは、例えば、数μm程度とされる。上側スペーサ5tおよび下側スペーサ5bの厚さを調整することにより、ダイヤフラム部Diの振幅を容易に管理することができる。なお、ダイヤフラム部Diの厚さは、例えば、数μm程度とされる。
【0065】
ダイヤフラム部Diの変位が空気の振動を発生させる。ダイヤフラム部Diの変位に伴う空気の振動は、電極部8etiおよび電極6etiに形成された2つの貫通穴ht1iおよびht2iならびに電極部8ebiおよび電極6ebiに形成された2つの貫通穴hb1iおよびhb2iを介して外部へ伝達される。ダイヤフラム部Diの変位に伴う空気の振動が外部へ伝達されることにより、個々の電気音響変換器Tiにおける電気音響変換がなされる。個々の貫通穴ht1i、ht2i、hb1iおよびhb2iの直径は、例えば、数mm以下程度とされる。
【0066】
図6Aに示すように、上側基材において、図3Cに示すダンベル形状のくびれた部分CP1iおよびCP2iに対応する部分PR1iおよびPR2iは、電気音響変換器Tiの中心部分に向かって突出している。また、上側基材7tにおけるダイヤフラム部Diとの対向面は、電極6etiの表面に対して凸とされている。上側基材7tの厚さは、例えば、数十μm程度とされ、上側基材7tにおけるダイヤフラム部Diとの対向面と、電極6etiの表面との間には、例えば、1μm〜100μm程度のギャップが形成されている。すなわち、図6Bに示すgpは、1μm〜100μm程度とされる。同様に、下側基材7bにおけるダイヤフラム部Diとの対向面は、電極6ebiの表面に対して凸とされている。
【0067】
上側基材7tにおけるダイヤフラム部Diとの対向面が、上側基材7tに形成された電極6etiの表面に対して凸とされているため、ダイヤフラム部Diと、上側基材7tに形成された電極6etiとの接触が防止される。同様に、下側基材7bにおけるダイヤフラム部Diとの対向面が、下側基材7bに形成された電極6ebiの表面に対して凸とされているため、ダイヤフラム部Diと、下側基材7bに形成された電極6ebiとの接触が防止される。
【0068】
図7Aは、電気音響変換器の他の構成例を示すXZ断面図である。図7Bは、電気音響変換器の他の構成例を示すYZ断面図である。図7Aは、図6Aに対応する図であり、図7Bは、図6Bに対応する図である。
【0069】
図7Aおよび図7Bに示すように、電気音響変換器T2iの上側基材または下側基材を積層基材として構成してもよい。図7Aおよび図7Bでは、上側基材27tが基材27taおよび基材27tbの積層基材として形成され、下側基材27bが基材27baおよび基材27bbの積層基材として形成された例を示している。このとき、基材27ta、基材27tb、基材27baおよび基材27bbの厚さは、例えば、それぞれ数十μm程度とされる。
【0070】
上側基材または下側基材を積層基材として構成する場合には、例えば、電極部28eti、電極36eti、電極36ebi、電極部28ebiに形成する貫通穴を、スルーホールpt1i、pt2i、pb1iおよびpb2iとして形成することができる。なお、本明細書で「スルーホール」という場合には、孔部の内壁への導電層の形成方法は、めっきに限定されないものとする。
【0071】
上側基材27tを積層基材とすることにより、上側基材27tを、段差が形成された基材とすることも容易となる。上側基材27tにおけるダイヤフラム部Diとの対向面を、上側基材27tに形成された電極36etiの表面に対して凸とすることにより、ダイヤフラム部Diと、上側基材27tに形成された電極36etiとの接触を防止することができる。また、上側基材の内部に配線パターンを形成し、スルーホールを介して、ダイヤフラム部に対向する電極と、基材内部に形成された配線パターンとを電気的に接続させることも可能である。下側基材27bについても、上側基材27tと同様の構成とすることができる。
【0072】
[電気音響変換システムの動作の概略]
次に、図8を参照しながら、実施形態にかかる電気音響変換システムの動作の概略について説明を行う。
【0073】
図8は、信号処理部および本開示の実施形態にかかる電気音響変換システムの具体的な構成の一例を示すブロック図である。図8に示すように、デジタル方式により記録された音声信号は、信号処理部41を介して、電気音響変換システム1に入力される。
【0074】
信号処理部41は、具体的には、例えば、前処理部43、オーバーサンプリング部45、△Σ変換部47およびエンコーダ49を含み、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの集積回路として構成される。デジタルオーディオプレーヤなどから送られた音声信号は、例えば、光デジタル入力端子40およびオーディオインターフェース(Digital Audio Interface Receiver(DIR、DAIともいう。))42などを介して、信号処理部41に入力される。
【0075】
信号処理部41に対する入力信号は、まず、必要に応じて前処理部43に供給され、前処理部43により、Lチャンネル信号およびRチャンネル信号の合成や音量(利得)調整、イコライジングなどの前処理が施される。
【0076】
前処理の施された入力信号は、次に、オーバーサンプリング部45に供給される。オーバーサンプリング部45において、入力信号にオーバーサンプリングが施される。入力信号のサンプリング周波数は、44.1kHzや48kHzなどであり、このときのオーバーサンプリング比は、例えば、8倍とされる。
【0077】
オーバーサンプリングの施された入力信号は、次に、△Σ変換部47に供給される。△Σ変換部47において、入力信号に△Σ変調(Σ△変調とも呼ばれる。)が施され、量子化誤差(Quantization Error)に起因する量子化雑音(Quantization noise)が整形される。具体的には、入力信号に対して、高周波帯域に分布させた量子化雑音をデジタルローパスフィルタにより除去するノイズシェーピングが施される。その後、デシメーションフィルタにより、目的とするビット数に量子化語長が低減される。
【0078】
ここで、目的とするビット数は、電気音響変換システムが有する電気音響変換器の個数によって決定される。例えば、256個の電気音響変換器T0〜T255が配列された電気音響変換システムの場合、量子化語長は、8ビット(28=256)以下にまで低減される。
【0079】
量子化語長が低減された入力信号は、次に、エンコーダ49に供給される。△Σ変換部47からの出力は、例えば、8ビットのバイナリコードである。エンコーダ49は、8ビットのバイナリコードをサーモメータコード(Thermometer Code)に変換する。
【0080】
ここで、サーモメータコードとは、「0」および「1」の2値を用い、連続する「1」の個数により値を表現したコードのことをいう。サーモメータコードによる表現では、「1」の列が、あるビットから「0」の列に切りかわる。このような表現は、ビットの切りかわりが温度計の表示に似ていることから、サーモメータコードと呼ばれる。
【0081】
例えば、10進数で表現された5は、3ビットのバイナリコードでは101と表現される。一方、10進数で表現された5をサーモメータコードにより表現すると、0011111となる。これは、10進数で表現された5が、0*16+0*15+1*14+1*13+1*12+1*11+1*10と表現されることとほぼ対応している。
【0082】
上述の例では、10進数で表現された5を、7ビットのサーモメータコードにより表現した。これは、3ビットのバイナリコードで表現できる最大の数111(10進数で表現すると7)をサーモメータコードで表現するには、7ビットを必要とするからである。同様に、8ビットのバイナリコードで表現できる数をサーモメータコードで表現するには、255ビットを必要とする。
【0083】
サーモメータコードで表現されたエンコーダ49の出力は、駆動信号としてドライバ回路9atなどに供給される。図8に示す個々のドライバD1、D2、・・・、D4は、例えば、32ビットのシリアルイン/パラレルアウトの高耐圧ドライバである。ドライバD1は、例えば、ドライバ回路9atおよびドライバ回路9abを含む。同様に、ドライバD2は、例えば、ドライバ回路9btおよびドライバ回路9bbを含み、ドライバD3は、例えば、ドライバ回路9ctおよびドライバ回路9cbを含み、ドライバD4は、例えば、ドライバ回路9dtおよびドライバ回路9dbを含む。上側基材または下側基材のいずれか一方の側にのみ、ドライバD1、D2、・・・、D4などを配置するようにしてももちろんかまわない。
【0084】
上側基材に形成された電極のうちの1つに対応する、下側基材に形成された電極に対しては、上側基材に形成された電極に対する出力とは反転した出力が取りだされる。エンコーダ49から出力されるサーモメータコードが、例えば、0000・・・0011111(10進数で表現すると5)であったとする。このとき、ドライバD1、D2、・・・、D4は、例えば、上側基材に形成された電極のうちの5つを高電位とし、5つの電気音響変換器のダイヤフラム部が上側基材に近づいた状態とする。すなわち、あるサーモメータコードにおける「1」の個数は、ダイヤフラム部が上側基材に近づいた状態とされた電気音響変換器の個数を示すことになる。なお、あるサーモメータコードにおける「0」の個数は、ダイヤフラム部が下側基材に近づいた状態とされた電気音響変換器の個数を示す。
【0085】
電気音響変換システム1が動作状態にあるとき、個々のダイヤフラム部Diは、上側基材に近づいた状態または下側基材に近づいた状態のいずれかの状態とされる。
【0086】
例えば、電気音響変換システム1が有する電気音響変換器の個数が、全部で256個であったとする。初期状態として、例えば、256個の電気音響変換器のうち、128個の電気音響変換器のダイヤフラム部が上側基材に近づいた状態とされ、残りの128個の電気音響変換器のダイヤフラム部が下側基材に近づいた状態とされる。
【0087】
初期状態から、例えば、10進数で表現すると130となるサーモメータコードがエンコーダ49から出力されると、下側基材に近づいた状態とされた128個の電気音響変換器のダイヤフラム部のうちの2個が、上側基材に近づいた状態に変化する。
【0088】
次に、10進数で表現すると125となるサーモメータコードがエンコーダ49から出力されたとする。すると、上側基材に近づいた状態とされた130個の電気音響変換器のダイヤフラム部のうちの5個が、下側基材に近づいた状態に変化する。すなわち、サーモメータコードの変化したビットの数は、サーモメータコードの変化の前後において駆動されるべき電気音響変換器の個数に対応する。
【0089】
このように、サーモメータコードで表現された駆動信号に基づいて、サーモメータコードのビットの変化に応じて、電気音響変換が行われる。
【0090】
なお、図8では、電気音響変換システム1が信号処理部41を含まない構成例を示したが、電気音響変換システム1が信号処理部41を含んでいてもよい。
【0091】
複数個の電気音響変換器のうち、いずれの電気音響変換器を駆動させるかは、任意に設定することができる。例えば、個々の電気音響変換器の稼働時間を均等にしたり、所望する指向性にあった遅延が生じるような位置の電気音響変換器を選択したりすることも可能である。
【0092】
ところで、デジタルスピーカにおいては、個々の電気音響変換器から生成された音の空間的に合成された結果が、電気音響変換システムからの出力となる。そのため、個々の電気音響変換器の音響特性が、全て同等であることが好ましい。
【0093】
多数の電気音響変換器を同時に駆動させる場合には、個々の電気音響変換器の間の差が相殺されうるため、個々の電気音響変換器の音響特性には、ある程度のバラつきが許容されうる。しかしながら、駆動させる電気音響変換器の個数が少ない場合には、複数個の電気音響変換器のうち、いずれの電気音響変換器を駆動させるかの選択肢が急激に減少する。
【0094】
本開示によれば、上側基材におけるダイヤフラム部の対向面が、上側基材に形成された電極の表面に対して凸とされるため、ダイヤフラム部と、上側基材に形成された電極との接触を防止することができる。同様に、下側基材におけるダイヤフラム部の対向面が、下側基材に形成された電極の表面に対して凸とされるため、ダイヤフラム部と、下側基材に形成された電極との接触を防止することができる。さらに、本開示によれば、上側スペーサおよび下側スペーサの厚さを調整することにより、ダイヤフラム部の振幅を容易に管理することができる。すなわち、本開示によれば、電気音響変換器の間におけるダイヤフラム部の最大変位のバラつきを抑制して、個々の電気音響変換器の音響特性のバラつきを抑制することができる。したがって、本開示によれば、電気音響変換システムの性能を向上させることができる。
【0095】
本開示によれば、いわゆるMEMSとして電気音響変換器を製造する必要がないので、工程を複雑化させずに電気音響変換器およびアレイ状電気音響変換装置ならびに電気音響変換システムを製造することができる。したがって、膨大な期間や費用を必要とせずに、MEMSの場合と比較して大型の電気音響変換システムを製造することも容易となる。
【0096】
<2.第2の実施形態>
[電気音響変換システムの概略的構成]
図9Aは、第2の実施形態にかかる電気音響変換システムの一構成例を示す平面図である。図9Bは、図9Aに示す電気音響変換システムの側面図である。図10は、図9Aおよび図9Bに示す電気音響変換システムの分解斜視図である。
【0097】
図9Bおよび図10に示すように、第2の実施形態にかかる電気音響変換システム51は、概略的には、上側基材57t、上側スペーサ55t、振動部材53、下側スペーサ55bおよび下側基材57bが順に積層された構成を有する。第1の実施形態においては、振動部材3として導体抵抗が小さい材料が選択された構成例を示したが、第2の実施形態では、振動部材53が、主として樹脂材料からなる点で第1の実施形態と相違する。振動部材53を構成する材料として樹脂材料を選択することにより、個々のダイヤフラム部の変位を大とすることができ、電気音響変換システム51から得られる音圧を大とすることができる。
【0098】
電気音響変換システム51は、複数個の電気音響変換器を有する。振動部材53の一部をダイヤフラム部として、ダイヤフラム部およびダイヤフラム部の上下に配置される部材により、個々の電気音響変換器が構成される。複数個の電気音響変換器は、例えば、格子点と対応するように配置されてアレイ状電気音響変換装置を構成する。上側基材57tに形成された複数個の電極のそれぞれと、上側基材に配置されたドライバ回路59at、59bt、59ctおよび59dtとが、上側基材57tに形成された配線パターン58Wtにより電気的に接続される。同様にして、下側基材57bに形成された複数個の電極のそれぞれと、下側基材57bに配置されたドライバ回路59ab、59bb、59cbおよび59dbとが、下側基材57bに形成された配線パターン58Wbにより電気的に接続される。
【0099】
次に、図10〜図12を参照しながら、上側基材57tおよび下側基材57b、上側スペーサ55tおよび下側スペーサ55bならびに振動部材53について順に説明を行う。なお、電気音響変換システム51は、振動部材53に関して略対称の構成を有する。また、下側基材57bの構成は、上側基材57tの構成と略同様であり、下側スペーサ55bの構成は、上側スペーサ55tの構成と略同様である。さらに、ドライバ回路59at、59bt、59ctおよび59dtは、第1の実施形態にかかるドライバ回路9at、9bt、9ctおよび9dtと同様の構成をとることができる。したがって、以下の説明においては、下側基材57bの構成の具体的な説明、下側スペーサ55bの構成の具体的な説明ならびにドライバ回路59at、59bt、59ct、59dt、59ab、59bb、59cbおよび59dbの具体的な説明を省略する。
【0100】
(上側基材)
上側基材57tは、振動部材53の支持体としての機能を有し、電気音響変換システム51の外形を構成する。図9Aおよび図9Bならびに図10では、上側基材57tの形状が平板状とされた構成例を示したが、これに限られない。また、上側基材57tの外形としては、四角形に限られない。
【0101】
図11Aは、図10におけるQ1部を拡大して示す図である。図11Aに示すように、例えば、上側基材の主面上には、複数個の電極部と、複数個の配線部とが形成されている。上側基材に形成された複数個の電極部および複数個の配線部により、配線パターン58Wtが構成される。
【0102】
図11Aにおいて、破線で囲まれたU部が、複数個の電気音響変換器のうちの一単位に対応する。個々の電極部58etiは、複数個の電気音響変換器のうちの1つずつに対応して形成されており、個々の電極部58etiは、個々の配線部58wtiにより、ドライバ回路と電気的に接続される。
【0103】
図11Bは、図11Aに示すU部を拡大して示す図である。図11Cは、上側基材の上側スペーサとの対向面において、図11Aに示すU部と対応する部分を拡大して示す図である。図11Cは、上側基材の一主面を拡大して示す図であるが、下側基材57bの構成が上側基材57tの構成と略同様であるため、図11Cは、図10に示すQ5部を拡大して示す図に相当する。
【0104】
図11Cに示すように、上側基材57tの主面のうち、振動部材53に対向する側の主面上においても、複数個の電気音響変換器のうちの1つずつに対応して、複数個の電極が形成される。
【0105】
図11Bおよび図11Cに示すように、個々の電極部58etiの例えば中央には、スルーホールpthiが形成される。上側基材57tの主面のうち、振動部材53に対向する側の主面上に形成された電極56etiは、スルーホールpthiにより、該主面とは反対側の主面上に形成された電極部58etiと電気的に接続される。したがって、振動部材53に対向する側の主面上に形成された電極56etiに対しては、電極部58eti、配線部58wtiおよびスルーホールpthiを介して、ドライバ回路からの駆動電圧が印加される。
【0106】
後述する振動部材53の振動に伴って発生する空気の振動は、スルーホールpthiを介して外部に伝えられることになる。そのため、スルーホールの直径はなるべく大きくされることが好ましい。一方、振動部材53に対する駆動力をなるべく大きくする観点からは、振動部材53に対向する側の主面上に形成された電極56etiの面積が大きいことが好ましい。特に、ダイヤフラム部の中央部分に対する静電気力の伝達が大きいことが好ましい。
【0107】
ここで、電極部58etiの中央にスルーホールpthiを形成する場合、ダイヤフラム部の中央部分に働く静電気力が小さくなることを防止しようとして、スルーホールpthiの直径を小さくすると、空気の流れが妨げられてしまう。
【0108】
そこで、図11Bに示す構成例では、電極部58etiの中央に形成されたスルーホールpthiを囲むようにして、6つの貫通穴hht1i、hht2i、hht3i、hht4i、hht5iおよびhht6iが設けられている。6つの貫通穴hht1i、hht2i、hht3i、hht4i、hht5iおよびhht6iは、例えば、スルーホールpthiを中心とする正六角形の頂点に対応する位置に配置される。なお、図11Bおよび図11Cにおいては、電極部58eti、配線部58wti、電極56eti、スルーホールpthiならびに貫通穴hht1i、hht2i、hht3i、hht4i、hht5iおよびhht6i以外の領域を網掛けで示した。
【0109】
スルーホールpthiの直径は、例えば、数mm以下程度とされ、個々の貫通穴hht1i、hht2i、hht3i、hht4i、hht5iおよびhht6iの直径は、例えば、それぞれ数mm以下程度とされる。
【0110】
スルーホールに加えて貫通穴を形成することにより、ダイヤフラム部の中央部分に対する静電気力の伝達を確実としながら、振動部材53の振動に伴って発生する空気の振動を確実に外部に伝達することができる。
【0111】
なお、図11Bでは、個々の電極部58etiに円状のスルーホールおよび貫通穴が形成される例を示したが、スルーホールおよび貫通穴の個数や位置、形状、大きさなどはこれに限られない。また、例えば、貫通穴を全てスルーホールとしてもかまわない。図11Bおよび図11Cでは、振動部材53に対向する側の主面上に形成された電極56etiの形状と、該主面とは反対側の主面上に形成された電極部58etiの形状とが同一の例を示したが、これに限られない。
【0112】
上側基材57tを構成する材料としては、第1の実施形態と同様に、例えば、LTCCやMIDなどを使用することができる。または、上側基材57tとしてプリント基板を使用することもできる。プリント基板としては、例えば、紙基材にフェノール樹脂を含浸させた紙フェノール基板、紙基材にエポキシ樹脂を含浸させた紙エポキシ基板、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたガラスコンポジット基板、ガラス繊維で織られた布にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ基板などを挙げることができる。
【0113】
上側基材57tを構成する材料としては、これに限られず、例えば、樹脂材料やガラスなどを使用してもよい。上側基材57tを構成する材料と、下側基材57bを構成する材料とが同一でなくてももちろんかまわない。
【0114】
電極部58eti、配線部58wtiおよび電極56etiを構成する材料としては、導体抵抗が小さい材料が好ましく、例えば、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組み合わせなどを挙げることができるが、これらに限られない。
【0115】
(上側スペーサ)
図12Aは、図10におけるQ2部を拡大して示す図である。図12Aは、上側スペーサ55tの一主面を拡大して示す図であるが、下側スペーサ55bの構成が上側スペーサ55tの構成と略同様であるため、図12Aは、図10におけるQ4部を拡大して示す図にも相当する。
【0116】
図12Aに示すように、上側スペーサ55tには、複数個の電気音響変換器のうちの1つずつに対応して、複数個の開口部Atiが形成されている。なお、図12Aにおいては、開口部Ati以外の領域を網掛けで示した。
【0117】
上部スペーサ55tは、後述する振動部材53における上側基材57tに向けた方向への変位を確保するための部材である。したがって、個々の開口部Atiの面積は、個々の電極56etiの面積より大とされる。電極56etiの直径は、例えば、数mm程度とされるのに対して、開口部Atiの直径は、電極56etiの直径よりも大とされる。
【0118】
上側スペーサ55tを構成する材料としては、電気絶縁性に優れた材料が好ましく、例えば、樹脂材料やガラス、ゴムなどを挙げることができるが、これらに限られない。
【0119】
(振動部材)
図12Bは、振動部材の一構成例の断面を示す模式図である。第1の実施形態では、振動部材としてステンレス鋼などの金属材料を使用する構成例を示したが、第2の実施形態では、振動部材53が、樹脂材料と導電性材料との積層体として構成される。
【0120】
図12Bに示すように、振動部材53は、基材層53a、導電層53bおよび絶縁層53cが順に積層された構成を有している。
【0121】
基材層53aは、例えば、樹脂材料からなるフィルムである。基材層53aに樹脂材料を使用することにより、振動部材53に加えられる静電気力に対する、振動部材53の変位を大とすることができる。基材層53aを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(polyphenylene sulfide(PPS))、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephtalate(PET))、ポリカーボネート(Polycarbonate(PC))、シクロオレフィンポリマ(Cycloolefin Polymer(COP))、ポリエーテルスルフォン(Polyethersulphone(PES))、ポリエチレンナフタレート(Polyethylenenaphthalate(PEN))、トリアセチルセルロース(Triacetylcellulose(TAC))、ポリイミド(Polyimide)、ポリメタクリル酸メチル(polymethylmethacrylate(PMMA))、アラミド(Aramid(芳香族ポリアミド))などを挙げることができる。
【0122】
導電層53bは、振動部材53の電位を、例えば、グラウンド電位とするために設けられる。導電層53bを構成する材料としては、例えば、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組み合わせなどを挙げることができる。導電層53bは、基材層53aを支持基材として、蒸着やめっき、スパッタリングなどにより形成される。導電層53bは、具体的には、例えば、金の蒸着層とされる。
【0123】
絶縁層53cは、導電層53bと、上側基材57tに形成された電極56etiとの短絡を防止するために設けられる層である。絶縁層53cを構成する材料としては、例えば、樹脂材料を挙げることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマ、ポリエーテルスルフォン、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル、アラミドなどを挙げることができる。絶縁層53cの形成には、例えば、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、ダイコート法、ディップ法、スプレーコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スピンコート法などを適用することができる。
【0124】
図12Aに示すように、上側スペーサ55tには、複数個の電気音響変換器のうちの1つずつに対応して、複数個の開口部Atiが形成されている。隣接する開口部の中心間の距離は、例えば、数mm程度とされ、振動部材53における、上側スペーサ55tに設けられた複数個の開口部Atiと対応する部分が、個々の電気音響変換器におけるダイヤフラム部として機能する。
【0125】
[アレイ状電気音響変換装置の概略的構成]
図13Aは、第2の実施形態にかかる電気音響変換システムを上側基材側から見た概略図である。図13Aは、上側基材57tの一主面を示す図であるが、下側基材57bの構成が上側基材57tの構成と略同様であるため、図13Aは、電気音響変換システム51を下側基材57b側から見た概略図にも相当する。
【0126】
図13Aに示すように、複数個の電気音響変換器は、例えば、格子点と対応するように配置されてアレイ状電気音響変換装置61を構成する。アレイ状電気音響変換装置61における複数個の電気音響変換器の個数は、任意に設定することが可能である。複数個の電気音響変換器の配置も、任意に設定することが可能である。例えば、放射状や同心円状、多角形状、楕円状などに複数個の電気音響変換器を配置することができる。
【0127】
アレイ状電気音響変換装置61の外形も、任意に設定することが可能である。例えば、上側基材57tの外形が四角形状である場合、例えば、ドライバ回路59at、59bt、59ctおよび59dtは、四角形状の4辺に1つずつ配置される。このとき、複数個の電気音響変換器を複数の群に区分し、各群に属する複数個の電気音響変換器と、ドライバ回路59at、59bt、59ctおよび59dtのそれぞれとを対応づけることも可能である。
【0128】
例えば、図13Aでは、複数個の電気音響変換器が4つの群Gra、Grb、GrcおよびGrdに区分され、第1の群Graに属する複数個の電気音響変換器と、ドライバ回路59atとが、配線パターン58Watにより接続された構成例を示している。図13Aにおいては、第2の群Grbに属する複数個の電気音響変換器を破線により現された円により示し、第3の群Grcに属する複数個の電気音響変換器を黒い円により示し、また、第4の群Grdに属する複数個の電気音響変換器を網掛けの円により示した。例えば、第2の群Grbに属する複数個の電気音響変換器は、ドライバ回路59btと接続され、第3の群Grcに属する複数個の電気音響変換器は、ドライバ回路59ctと接続され、また、第4の群Grdに属する複数個の電気音響変換器は、ドライバ回路59dtと接続される。
【0129】
なお、図13Aでは、複数個の電気音響変換器を、四角形状の対角線に沿って複数の群に区分したが、この例に限られない。ドライバ回路の個数や配置も、複数個の電気音響変換器の個数や配置に応じて、適宜設定することが可能である。
【0130】
[電気音響変換器の概略的構成]
図13Bは、電気音響変換システムおよびアレイ状電気音響変換装置における電気音響変換器の一単位を示す略線図である。電気音響変換器T3iは、具体的には、上側基材57tに形成された複数個の電極のうちの1つと、上側スペーサ部S3tiと、ダイヤフラム部D3iと、下側スペーサ部S3biと、下側基材57bに形成された複数個の電極のうちの1つとから構成される。図13Bでは、上側基材57tの主面のうち、振動部材53に対向しない側の主面上に形成された電極部58etiと、上側基材57tの主面のうち、振動部材53に対向する側の主面上に形成された電極56etiと、上側スペーサ部S3tiと、ダイヤフラム部D3iとが重ね合わされた状態を示している。また、図13Bにおいては、上側スペーサ部S3tiの開口部Ati以外の領域を網掛けで示した。
【0131】
図14Aは、図13BのXIV−XIV断面を示す模式図である。図14Aに示すように、振動部材53の一部であるダイヤフラム部D3iは、上側スペーサ55tの一部である上側スペーサ部S3tiおよび下側スペーサ55bの一部である下側スペーサ部S3biにより外周部を支持される。上側スペーサ部S3tiおよび下側スペーサ部S3biにより、ダイヤフラム部D3iの外周部が支持されるので、個々の電気音響変換器T3iにおけるダイヤフラム部D3iの変位は、それぞれ独立している。
【0132】
上側スペーサ部S3tiおよび下側スペーサ部S3biの厚さは、例えば、数十μm程度とされる。振動部材53を構成する基材層53a、導電層53bおよび絶縁層53cの厚さは、例えば、それぞれ数μm程度の厚さとされる。ダイヤフラム部D3iの厚さは、これらの値の和である。なお、上側基材57tおよび下側基材57bの厚さは、例えば、0.1mm〜10mm程度とされる。
【0133】
図14Aに示す構成例では、電極部58etiおよび電極56etiならびに電極部58ebiおよび電極56ebiが、金からなる導電層58aおよび銅からなる導電層58cの積層体により構成されている。導電層58aおよび導電層58cの積層体の厚さは、例えば、数十μm程度とされる。なお、開口部Atiとそれ以外の領域との境界と、電極56etiの周縁との間の距離d1は、例えば、数十μm程度とされる。また、電極56etiの周縁と、貫通穴の周縁との間の距離d2は、例えば、10〜500μm程度とされる。
【0134】
ダイヤフラム部D3iの変位が空気の振動を発生させる。ダイヤフラム部D3iの変位に伴う空気の振動は、電極部58etiおよび電極56etiならびに電極部58ebiおよび電極56ebiに形成されたスルーホールおよび貫通穴を介して外部へ伝達される。
【0135】
ダイヤフラム部D3iが変位していない状態において、ダイヤフラム部D3iの表面と、電極56etiの表面との間には、数μm程度のギャップが設けられている。なお、第1の実施形態では、振動部材3が導電性を有する材料により構成されることから、上側基材7tにおけるダイヤフラム部Diとの対向面が、電極6etiの表面に対して凸とされていた。第2の実施形態では、振動部材53の導電層53bが、基材層53aおよび絶縁層53cに覆われているため、ダイヤフラム部D3iと、上側基材57tに形成された電極56etiとが接触しても短絡は起こらない。もちろん、第1の実施形態と同様に、上側基材57tにおけるダイヤフラム部D3iとの対向面を、電極56etiの表面に対して凸とし、下側基材57bにおけるダイヤフラム部D3iとの対向面を、電極56ebiの表面に対して凸としてもかまわない。
【0136】
図14Bは、電気音響変換器の他の構成例を示すXZ断面図である。図14Bに示す電気音響変換器T4iでは、上側基材67tにおけるダイヤフラム部D3iとの対向面が、電極66etiの表面に対して凸とされている。また、下側基材67bにおけるダイヤフラム部D3iとの対向面が、電極66ebiの表面に対して凸とされている。このようにすることで、電気音響変換器間におけるダイヤフラム部の最大変位のバラつきが抑制され、個々の電気音響変換器の音響特性のバラつきが抑制される。
【0137】
<3.変形例>
以上、好適な実施形態について説明してきたが、好適な具体例は、上述した説明に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
【0138】
例えば、アレイ状電気音響変換装置または電気音響変換システムの形状を、全体として曲面形状としてもよい。アレイ状電気音響変換装置または電気音響変換システムにおける複数個の電気音響変換器の数や配置、形状は、任意に設定が可能である。また、電極に形成する貫通穴の数や配置、形状も、任意に設定が可能である。
【0139】
本開示の技術は、例えば、テレビ、ラジオ、オーディオ、カメラ、ビデオカメラ、ラップトップ型コンピュータ、携帯情報端末(personal digital assistance(PDA))、スマートフォン、携帯電話などにも適用が可能である。デジタルスピーカは、アナログスピーカと比較して低消費電力であるため、本開示の技術は、例えば、電気自動車の車載用スピーカに特に好適である。本開示の技術は、可搬性のある電子機器だけでなく、建築物に設置されたデジタルサイネージや、標識などにも適用が可能である。
【0140】
上述の実施形態において挙げた構成、方法、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、形状、材料および数値などを用いてもよい。上述の実施形態の構成、方法、形状、材料および数値などは、本開示の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0141】
例えば、本開示は以下のような構成もとることができる。
(1)
第1のスペーサと、
第2のスペーサと、
前記第1のスペーサおよび前記第2のスペーサにより外周部を支持される振動板と、
前記振動板と対向する主面の少なくとも一部に第1の電極が形成される第1の基材と、
前記振動板と対向する主面の少なくとも一部に第2の電極が形成される第2の基材と
を備え、
前記第1の基材における前記振動板との対向面が、前記第1の電極の表面よりも前記振動板に対して凸とされ、
前記第2の基材における前記振動板との対向面が、前記第2の電極の表面よりも前記振動板に対して凸とされる電気音響変換器。
(2)
前記振動板を構成する材料が、金属材料である(1)に記載の電気音響変換器。
(3)
前記金属材料が、ステンレス鋼である(2)に記載の電気音響変換器。
(4)
前記振動板の中心部が、前記外周部と前記中心部との間に形成された複数個の腕部により支持される(2)または(3)に記載の電気音響変換器。
(5)
前記振動板が変位することにより生じる空気の振動が、前記第1の電極および前記第2の電極に形成された開口部を介して外部に伝播する(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の電気音響変換器。
(6)
前記第1の電極に形成された開口部の個数が、2以上である(5)に記載の電気音響変換器。
(7)
前記第2の電極に形成された開口部の個数が、2以上である(5)または(6)に記載の電気音響変換器。
(8)
前記第1の基材の表面上に形成される第1の配線部と、
前記第2の基材の表面上に形成される第2の配線部と
をさらに備え、
前記第1の電極と前記第1の配線部とが、前記第1の電極に形成された前記2以上の開口部のうちの少なくとも1つを介して電気的に接続され、
前記第2の電極と前記第2の配線部とが、前記第2の電極に形成された前記2以上の開口部のうちの少なくとも1つを介して電気的に接続される(7)に記載の電気音響変換器。
(9)
前記第1の基材および前記第2の基材のうち、少なくとも一方を構成する材料が、金属酸化物の焼成体である(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の電気音響変換器。
(10)
前記第1の基材および前記第2の基材のうち、少なくとも一方を構成する材料が、樹脂材料である(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の電気音響変換器。
(11)
第1のスペーサと、
第2のスペーサと、
前記第1のスペーサに形成される複数個の開口部および前記第2のスペーサに形成される複数個の開口部に対応する複数個の領域がそれぞれ独立して振動自在とされて前記第1のスペーサおよび前記第2のスペーサにより支持される振動板と、
前記振動板と対向する主面における、前記第1のスペーサに形成される前記複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される第1の基材と、
前記振動板と対向する主面における、前記第2のスペーサに形成される前記複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される第2の基材と
を備え、
前記振動板においてそれぞれ独立して振動自在とされた領域のそれぞれを単位とする電気音響変換器を複数個備えるアレイ状電気音響変換装置。
(12)
前記複数個の電気音響変換器が、格子点と対応して配置される(11)に記載のアレイ状電気音響変換装置。
(13)
第1のスペーサと、
第2のスペーサと、
前記第1のスペーサに形成される複数個の開口部および前記第2のスペーサに形成される複数個の開口部に対応する複数個の領域がそれぞれ独立して振動自在とされて前記第1のスペーサおよび前記第2のスペーサにより支持される振動板と、
前記振動板と対向する主面における、前記第1のスペーサに形成される前記複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される第1の基材と、
前記振動板と対向する主面における、前記第2のスペーサに形成される前記複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される第2の基材と、
前記第1の基材の主面のうち、前記振動板と対向する主面とは反対側の主面上に配置され、前記第1の基材に形成された複数個の電極との電気的接続を有する1以上の上面側ドライバ回路と、
前記第2の基材の主面のうち、前記振動板と対向する主面とは反対側の主面上に配置され、前記第2の基材に形成された複数個の電極との電気的接続を有する1以上の底面側ドライバ回路と
を備え、
前記振動板においてそれぞれ独立して振動自在とされた領域のそれぞれを単位として、前記1以上の上面側ドライバ回路または前記1以上の底面側ドライバ回路からの駆動信号に応じて独立して駆動する電気音響変換器を複数個備える電気音響変換システム。
(14)
前記上面側ドライバ回路および前記底面側ドライバ回路がそれぞれ2以上であり、
前記第1の基材の外形および前記第2の基材の外形が四角形状とされ、
前記2以上の上面側ドライバ回路が、前記第1の基材の周縁部に沿って配置され、
前記2以上の底面側ドライバ回路が、前記第2の基材の周縁部に沿って配置される(13)に記載の電気音響変換システム。
(15)
前記複数個の電気音響変換器が、2以上の群に区分され、
それぞれの群に属する1以上の電気音響変換器が、前記2以上の上面側ドライバ回路のうち、それぞれの群に対応した上面側ドライバ回路および前記2以上の底面側ドライバ回路のうち、それぞれの群に対応した底面側ドライバ回路により駆動される(14)に記載の電気音響変換システム。
(16)
前記複数個の電気音響変換器が、格子点と対応して四角形状に配置されるとともに、該四角形状の対角線に基づいて2以上の群に区分される(15)に記載の電気音響変換システム。
【符号の説明】
【0142】
1,51・・・電気音響変換システム
3,53・・・振動部材
5t,55t・・・上側スペーサ
5b,55b・・・下側スペーサ
6eti,36eti,36ebi・・・電極
7t,27t,57t,67t・・・上側基材
7b,27b,57b,67b・・・下側基材
8Wt,8Wb,58Wt,58Wb・・・配線パターン
9at,9bt,9ct,9dt・・・ドライバ回路
11,61・・・アレイ状電気音響変換装置
41・・・信号処理部41
i,T2i,T3i,T4i・・・電気音響変換器
i,D3i・・・ダイヤフラム部
Hti,Ati・・・開口部
Sti,S3ti・・・上側スペーサ部
Sbi,S3bi・・・下側スペーサ部
h1i,h2i,h3i,h4i・・・腕部
ht1i,ht2i・・・貫通穴
pt1i,pt2i,pb1i,pb2i・・・スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスペーサと、
第2のスペーサと、
前記第1のスペーサおよび前記第2のスペーサにより外周部を支持される振動板と、
前記振動板と対向する主面の少なくとも一部に第1の電極が形成される第1の基材と、
前記振動板と対向する主面の少なくとも一部に第2の電極が形成される第2の基材と
を備え、
前記第1の基材における前記振動板との対向面が、前記第1の電極の表面よりも前記振動板に対して凸とされ、
前記第2の基材における前記振動板との対向面が、前記第2の電極の表面よりも前記振動板に対して凸とされる電気音響変換器。
【請求項2】
前記振動板を構成する材料が、金属材料である請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項3】
前記金属材料が、ステンレス鋼である請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項4】
前記振動板の中心部が、前記外周部と前記中心部との間に形成された複数個の腕部により支持される請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項5】
前記振動板が変位することにより生じる空気の振動が、前記第1の電極および前記第2の電極に形成された開口部を介して外部に伝播する請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項6】
前記第1の電極に形成された開口部の個数が、2以上である請求項5に記載の電気音響変換器。
【請求項7】
前記第2の電極に形成された開口部の個数が、2以上である請求項6に記載の電気音響変換器。
【請求項8】
前記第1の基材の表面上に形成される第1の配線部と、
前記第2の基材の表面上に形成される第2の配線部と
をさらに備え、
前記第1の電極と前記第1の配線部とが、前記第1の電極に形成された前記2以上の開口部のうちの少なくとも1つを介して電気的に接続され、
前記第2の電極と前記第2の配線部とが、前記第2の電極に形成された前記2以上の開口部のうちの少なくとも1つを介して電気的に接続される請求項7に記載の電気音響変換器。
【請求項9】
前記第1の基材および前記第2の基材のうち、少なくとも一方を構成する材料が、金属酸化物の焼成体である請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項10】
前記第1の基材および前記第2の基材のうち、少なくとも一方を構成する材料が、樹脂材料である請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項11】
第1のスペーサと、
第2のスペーサと、
前記第1のスペーサに形成される複数個の開口部および前記第2のスペーサに形成される複数個の開口部に対応する複数個の領域がそれぞれ独立して振動自在とされて前記第1のスペーサおよび前記第2のスペーサにより支持される振動板と、
前記振動板と対向する主面における、前記第1のスペーサに形成される前記複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される第1の基材と、
前記振動板と対向する主面における、前記第2のスペーサに形成される前記複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される第2の基材と
を備え、
前記振動板においてそれぞれ独立して振動自在とされた領域のそれぞれを単位とする電気音響変換器を複数個備えるアレイ状電気音響変換装置。
【請求項12】
前記複数個の電気音響変換器が、格子点と対応して配置される請求項11に記載のアレイ状電気音響変換装置。
【請求項13】
第1のスペーサと、
第2のスペーサと、
前記第1のスペーサに形成される複数個の開口部および前記第2のスペーサに形成される複数個の開口部に対応する複数個の領域がそれぞれ独立して振動自在とされて前記第1のスペーサおよび前記第2のスペーサにより支持される振動板と、
前記振動板と対向する主面における、前記第1のスペーサに形成される前記複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される第1の基材と、
前記振動板と対向する主面における、前記第2のスペーサに形成される前記複数個の開口部に対応する複数個の領域のそれぞれに電極が形成される第2の基材と、
前記第1の基材の主面のうち、前記振動板と対向する主面とは反対側の主面上に配置され、前記第1の基材に形成された複数個の電極との電気的接続を有する1以上の上面側ドライバ回路と、
前記第2の基材の主面のうち、前記振動板と対向する主面とは反対側の主面上に配置され、前記第2の基材に形成された複数個の電極との電気的接続を有する1以上の底面側ドライバ回路と
を備え、
前記振動板においてそれぞれ独立して振動自在とされた領域のそれぞれを単位として、前記1以上の上面側ドライバ回路または前記1以上の底面側ドライバ回路からの駆動信号に応じて独立して駆動する電気音響変換器を複数個備える電気音響変換システム。
【請求項14】
前記上面側ドライバ回路および前記底面側ドライバ回路がそれぞれ2以上であり、
前記第1の基材の外形および前記第2の基材の外形が四角形状とされ、
前記2以上の上面側ドライバ回路が、前記第1の基材の周縁部に沿って配置され、
前記2以上の底面側ドライバ回路が、前記第2の基材の周縁部に沿って配置される請求項13に記載の電気音響変換システム。
【請求項15】
前記複数個の電気音響変換器が、2以上の群に区分され、
それぞれの群に属する1以上の電気音響変換器が、前記2以上の上面側ドライバ回路のうち、それぞれの群に対応した上面側ドライバ回路および前記2以上の底面側ドライバ回路のうち、それぞれの群に対応した底面側ドライバ回路により駆動される請求項14に記載の電気音響変換システム。
【請求項16】
前記複数個の電気音響変換器が、格子点と対応して四角形状に配置されるとともに、該四角形状の対角線に基づいて2以上の群に区分される請求項15に記載の電気音響変換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−58889(P2013−58889A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195678(P2011−195678)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】