説明

電池、電池製造方法および袋詰電極

【課題】セパレータを熱溶着する際の熱による正極の劣化を低減または解消した電池を提供する。
【解決手段】セパレータ60の端部の少なくとも一部を熱溶着により接合して袋を形成し、当該袋内に正極50を配置した袋詰正極と、袋詰正極に積層され、正極50よりも大きい負極30と、を有し、熱溶着によりセパレータ60に形成される溶着部62は、積層方向から見て、負極30の外周よりも外側に設けられている電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池、電池製造方法および袋詰電極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な製品で二次電池が使用されている。二次電池は、正極、セパレータ、負極が積層された電池要素を含む。電池要素において、正極および負極がセパレータを介して、位置ズレせずに積層されることが重要である。積層ズレがあると、電池性能や電池の寿命の悪化の要因となるからである。
【0003】
そこで、正極と負極の位置ズレを防止するために、予め2枚のセパレータの端辺を熱溶着により接合して袋状に形成し、当該袋内に正極を配置した袋詰正極を用いることが提案されている(特許文献1参照)。正極は、セパレータの熱溶着部によって位置決めされているので、袋詰正極と、負極とを積層することで、積層ズレなく正極と負極とを積層できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3380935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の発明では、正極がセパレータ内で動いて位置がずれないように、正極の端辺からかなり近い位置で熱溶着されている(特許文献1の図3参照)。これでは、熱溶着の際の高熱が正極に伝搬され、正極が熱の影響により劣化する虞がある。
【0006】
加えて、特許文献1記載の発明では、袋詰正極とセパレータが同じ大きさに形成されている(特許文献1の図5参照)。これでは、セパレータの溶着部上に負極が位置し、セパレータの溶着部に微細な穴が形成される場合、負極が短絡してしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、セパレータを熱溶着する際の熱による正極の劣化を低減または解消し、溶着部による短絡も防止できる電池、電池製造方法および袋詰電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電池は、袋詰正極と、負極とを有する。袋詰正極は、セパレータの端部の少なくとも一部を熱溶着により接合して袋を形成し、当該袋内に正極を配置してなる。負極は、袋詰正極に積層され、正極よりも大きい。ここで、熱溶着によりセパレータに形成される溶着部は、積層方向から見て、負極の外周よりも外側に設けられている。
【0009】
本発明の電池製造方法は、2枚のセパレータ間に正極を挟み、セパレータの端部の少なくとも一部を熱溶着により接合して、袋詰正極を形成する工程(a)と、袋詰正極に、正極よりも大きい負極を積層する工程(b)と、を含む。工程(a)では、熱溶着によりセパレータに形成される溶着部が、後の工程(b)で負極が積層されたときに当該負極の外周よりも外側に設けられるように、予め前記正極から離れた位置においてセパレータの端部を熱溶着する。
【0010】
本発明の袋詰電極は、セパレータの端辺の少なくとも一部を熱溶着により接合して袋に形成し、当該袋内に第1電極を配置してなる。熱溶着によりセパレータに形成される溶着部は、第1電極よりも大きく極性が異なる第2電極を積層した状態で、積層方向から見て、第2電極の外周よりも外側に設けられている。
【0011】
本発明の電池の袋詰正極は、袋詰正極袋内において、正極の外面とセパレータの内面とが接着部材により相互に接着されている。また、本発明の袋詰電極は、袋内において、第1電極の外面とセパレータの内面とが接着部材により相互に接着されている。
【発明の効果】
【0012】
上記電池、電池製造方法によれば、袋詰正極と負極を積層した時に、負極の外縁よりも溶着部が外側に位置するので、少なくとも溶着部から負極の端部までの距離以上は、溶着部から正極までの距離が離れる。熱溶着により発生する熱による正極の劣化等を回避できる。加えて、負極がセパレータの溶着部と重ならないので、溶着部を通じた短絡が起こることがない。
【0013】
また上記袋詰電極によれば、袋詰電極に第2電極を積層した時に、第2電極の外縁よりも溶着部が外側に位置するので、少なくとも溶着部から第2電極の端部までの距離以上は、溶着部から第1電極までの距離が離れる。熱溶着により発生する熱による第1電極の劣化等を回避できる。加えて、負極がセパレータの溶着部と重ならないように形成されているので、溶着部を通じた短絡が起こることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【図2】リチウムイオン二次電池の分解斜視図である。
【図3】負極の平面図である。
【図4】袋詰正極の平面図である。
【図5】袋詰正極における正極の位置関係を示す図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】正極およびセパレータを位置合わせする様子を示す図である。
【図8】袋状のセパレータの他の実施形態を示す図である。
【図9】正極の一部にテープを取り付けた様子を示す図である。
【図10】図9に示す正極をセパレータで袋詰めした形態を示す図である。
【図11】図10に示す袋詰正極に負極を積層した様子を示す図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
図1はリチウムイオン二次電池(積層型電池)の外観を表した斜視図、図2はリチウムイオン二次電池の分解斜視図、図3は負極の平面図、図4は袋詰正極の平面図である。
【0017】
図1に示すとおり、リチウムイオン二次電池10は、扁平な矩形形状を有しており、正極リード11および負極リート12が外装材13の同一端部から導出されている。外装材13の内部には、充放電反応が進行する発電要素(電池要素)20が収容されている。
【0018】
図2に示すとおり、発電要素20は、負極30と袋詰正極40とが交互に積層されて形成される。負極30は、図3に示すように、ごく薄いシート状の負極集電体の両面に負極活物質層32が形成されてなる。負極30は、タブ部分34以外の部分に負極活物質層32が形成されている。
【0019】
正極50が、セパレータ60により挟み込まれてなる。正極50は、シート状の正極集電体の両面に正極活物質層52が形成されてなる。正極活物質層52は、正極50のタブ部分54以外に形成されている。正極50は、タブ部分54がセパレータ60の袋から引き出されている。正極活物質層52は、負極30の負極活物質層32よりも一回り小さく形成されている。2枚のセパレータ60は、図4に示すように、端部において溶着部62より相互に溶着されて、袋状に形成されている。溶着部62は、たとえば、熱溶着により形成される。
【0020】
なお、負極30と袋詰正極40とを交互に積層してリチウムイオン二次電池を製造する方法自体は、一般的なリチウム二次電池の製造方法であるため、詳細な説明は省略する。
【0021】
次に、袋詰正極40における正極50の位置について説明する。
【0022】
図5は袋詰正極における正極の位置関係を示す図、図6は図5のVI−VI線に沿った断面図である。図5では、負極30が袋詰正極40に積層されたときの位置を一点鎖線により示している。
【0023】
図5に示すように、本実施形態の袋詰正極40において、セパレータ60同士を溶着する溶着部62は、負極30を積層した状態で積層方向から見て、負極30の外周よりも外側に設けられている。正極50は、セパレータ60と重なる範囲において、負極30よりも小さいので、負極30よりも内側に形成される。
【0024】
つまり、図6に示すように、セパレータ60と重なる範囲において、負極30は、セパレータ60の溶着部62よりも内側に形成され、さらに、正極50は、負極30の外縁よりも内側に形成される。したがって、少なくとも、溶着部62と負極30の外縁、さらに、負極30の外縁から正極50の外縁までの距離だけ、正極50の外縁が溶着部62から離間されている。このように、負極30、正極50および溶着部62の大きさを定義しているので、熱溶着により溶着部62を形成する際には、正極50が溶着部62から十分に離間される。したがって、熱溶着により発生した熱による正極50の劣化を低減または防止できる。加えて、負極30と袋詰正極40とを積層しても、負極30がセパレータ60の溶着部62と重ならないので、溶着部を通じて負極30が短絡しない。
【0025】
なお、二次電池10の製造方法は、次の通りである。
【0026】
図7は、正極およびセパレータを位置合わせする様子を示す図である。
【0027】
負極30、正極50および溶着部62の上記の位置関係を満たすように、負極30、正極50およびセパレータ60を形成する。詳細には、セパレータ60よりも、負極30がタブ部分34を除いて小さく、タブ部分34を除く負極30よりも正極50がタブ部分54を除いて小さくなる大きさに、それぞれ形成する。正極50およびセパレータ60を形成したら、正極50とセパレータ60を位置合わせする。
【0028】
正極50とセパレータ60の位置合わせでは、たとえば、図6に示すように、それぞれの中心線を特定して、中心線を合わせる。これにより幅方向の位置合わせができる。長さ方向の位置合わせは、たとえば、正極50の活物質層52が設けられている部分(塗工部分)を検出し、セパレータ60の長さ方向の端部から所定の位置に塗工部分を合わせる。
【0029】
位置合わせした状態で、2枚セパレータ60間に正極50を挟んで、図5に示す溶着位置により溶着部62を形成する。これにより、正極50がセパレータ60の袋内に配置される。形成された袋詰正極40は、負極30と、図5に示す位置関係に位置合わせされ、複数が積層される。積層されてできた発電要素20は、外装材に収納され、電池10が形成される。
【0030】
以上のように、図5に示す負極30、正極50、セパレータ60および溶着部62の位置関係および大小関係に基づいて、正極50の端部がセパレータ60の溶着部62から離れるように、溶着部62を形成する。換言すると、負極30と袋詰正極40を積層した時に、負極30の外縁よりも溶着部62が外側に位置するので、少なくとも溶着部62から負極30の端部までの距離以上は、溶着部62から正極50の距離が離れる。したがって、熱溶着により発生する熱による正極50の劣化等を回避できる。また、熱溶着前には、正極50とセパレータ60とを位置合わせするので、正確に正極50をセパレータ60内に配置できる。
【0031】
なお、上記実施形態では、図1に示すように、正極リード11および負極リード12が外装材13の同一端部から導出されている場合について説明した。しかし、これに限定されない。正極リード11および負極リード12がたとえば反対の端部から導出されてもよい。この場合、二次電池10の発電要素20を形成する際には、タブ部分34、54が相互に反対向きになるように負極30と袋詰正極40が積層される。
【0032】
また、上記実施形態では、正極50がセパレータ60に袋詰めされる例について説明した。しかし、これに限定されない。セパレータ60に負極30を袋詰めしてもよい。この場合、負極30の方が正極50よりも小さく形成される。
【0033】
(袋状のセパレータの作成)
図8は、袋状のセパレータの他の実施形態を示す図である。
【0034】
上記実施形態では、2枚のシート状のセパレータ60の端部の一部を熱溶着して、袋状のセパレータを形成していた。しかし、これに限定されない。図8に示すように、1枚のシート状のセパレータを折り返して、重なった端部の少なくとも一部を熱溶着により接合して袋を形成してもよい。図8に示す形態によると、1枚の縦長のセパレータ60の間に正極50を挟み、縦方向に折り返している。したがって、図4に示す形態と比べると、セパレータ60の両側を熱溶着により接合するだけでよい。すなわち、図8中だと、左右の側辺に溶接部62が形成される。
【0035】
あるいは、図示していないが、図4の1枚のセパレータ60に比べて、約2倍の横幅を有する1枚のセパレータ60を用意し、間に正極50を挟んで横方向に折り返してもよい。この場合、図8中の側辺の一方と、下辺に溶接部62が形成される。
【0036】
(正極の固定)
図9〜図12を参照して、袋詰正極40内において正極50の位置を固定した形態について説明する。
【0037】
図9は正極の一部にテープを取り付けた様子を示す図、図10は図9に示す正極をセパレータで袋詰めした形態を示す図、図11は図10に示す袋詰正極に負極を積層した様子を示す図、図12は図11のXII−XII線に沿った断面図である。
【0038】
図9に示すように、正極50の正極タブ部分54の一部には表面に接着性を有するテープ(接着部材)63が取り付けられている。テープ63は、たとえば両面に粘着性を有する両面テープである。テープ63は、正極タブ部分54の積層方向の両平面に取り付けられている。
【0039】
図10に示すにように、正極50にテープ63が取り付けられた状態で、セパレータ60が正極50の両面に積層される。セパレータ60は、外縁が溶着部62により溶着されて袋状に形成される。できた袋詰正極40では、正極50の正極タブ部分54に取り付けられたテープ63は、セパレータ60の袋内において、セパレータ60の内面と接着する。これにより、正極50は、セパレータ60に固定され、すなわち、セパレータ60と一体化される。特に、図9、図10に示す形態では、テープ63は正極タブ部分54に取り付けられているので、正極タブ部分54のセパレータ60に対する位置がズレない。
【0040】
袋詰正極40を搬送等しても、正極50は袋状のセパレータ60内で位置がズレない。したがって、図11に示すように、負極30および袋詰正極40を積層する際に、負極30と袋詰正極40とを位置合わせすれば、負極30と袋詰正極40内の正極50との位置も画一的に決まる。負極30と袋詰正極40とを積層したときのテープ63の断面図は図12に示す通りである。テープ63は、正極タブ部分54の両面を、セパレータ60の一部64の内面と接着し、正極50の位置を固定している。
【0041】
以上のように、正極50を固定することによって、袋詰正極40内で正極50が動いて、負極30と袋詰正極40との積層時に、負極30と正極50とが接触することがない。負極30と袋詰正極40を多数積層して組電池を形成し、組電池を製造工程において運搬したり、あるいは、組電池を車両に搭載したりして、外部の振動や衝撃が伝わる環境下でも、正極50は袋詰正極40内で安定的に相対位置が保たれる。正極50の位置が次第にズレて、負極30と接触し、短絡するようなことはない。
【0042】
なお、上記形態では、正極50の正極タブ部分54の両面に接着性を有するテープ63を取り付ける形態について説明したが、これに限定されない。正極50の相対位置がセパレータ60に対して固定されれば、正極タブ部分54の片面にだけテープ63を取り付けてもよい。また、テープ63を取り付ける位置も、セパレータ60の縁に沿わず、多少セパレータ60の袋内あるいは袋外であってもよい。
【0043】
また、上記形態では、袋詰電極として、セパレータ60内に正極50を固定する形態を示したが、これに限定されない。セパレータ60内に負極30を固定してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 二次電池、
20 発電要素、
30 負極、
32 負極活物質層、
34 負極タブ部分、
40 袋詰正極、
50 正極、
52 正極活物質層、
54 正極タブ部分、
60 セパレータ、
62 溶着部、
63 テープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータの端部の少なくとも一部を熱溶着により接合して袋を形成し、当該袋内に正極を配置した袋詰正極と、
前記袋詰正極に積層され、前記正極よりも大きい負極と、
を有し、
前記熱溶着により前記セパレータに形成される溶着部は、積層方向から見て、前記負極の外周よりも外側に設けられている電池。
【請求項2】
前記袋詰正極内において、前記正極の外面と前記セパレータの内面とは接着部材により相互に接着されている請求項1記載の電池。
【請求項3】
2枚のセパレータ間に正極を挟み、前記セパレータの端部の少なくとも一部を熱溶着により接合して、袋詰正極を形成する工程(a)と、
前記袋詰正極に、前記正極よりも大きい負極を積層する工程(b)と、
を含み、
前記工程(a)では、前記熱溶着により前記セパレータに形成される溶着部が、後の工程(b)で前記負極が積層されたときに当該負極の外周よりも外側に設けられるように、予め前記正極から離れた位置において前記セパレータの端部を熱溶着する電池製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)において、前記セパレータ間に前記正極を挟む際には、前記正極の中心線を検出し、当該中心線を前記セパレータの中心線に合わせる請求項3記載の電池製造方法。
【請求項5】
前記袋詰正極は、2枚のセパレータの端部の少なくとも一部を熱溶着により接合して袋を形成している請求項3または請求項4に記載の電池製造方法。
【請求項6】
前記袋詰正極は、1枚のセパレータを折り返して、重なった端部の少なくとも一部を熱溶着により接合して袋を形成している請求項3または請求項4に記載の電池製造方法。
【請求項7】
セパレータの端辺の少なくとも一部を熱溶着により接合して袋に形成し、当該袋内に第1電極を配置した袋詰電極であって、
前記熱溶着により前記セパレータに形成される溶着部は、前記第1電極よりも大きく極性が異なる第2電極を積層した状態で、積層方向から見て、前記第2電極の外周よりも外側に設けられている袋詰電極。
【請求項8】
前記袋内において、前記第1電極の外面と前記セパレータの内面とは接着部材により相互に接着されている請求項7記載の袋詰電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−227117(P2012−227117A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−290357(P2011−290357)
【出願日】平成23年12月29日(2011.12.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】