説明

電池ケースの蓋の接合方法

【課題】生産性が高く、電池ケースの製造に際して高い精度を要求されることが無く、溶接の熱による悪影響を抑えることもできる電池ケースの蓋の接合方法を提供する。
【解決手段】電池ケース本体12に蓋16を接合する方法で、下側にいくに従いテーパー状に内径が広くなり上端部分内径は電池ケース本体12の上端部外径よりも小さいテーパー部5を有するカシメ孔3が形成された金型本体2と金型本体に備えた冷却手段6を有するカシメ金型1を用い、蓋16を載置した電池ケース本体12をカシメ孔3内に下方から、上端がテーパー部5の上端で内周側に押圧されるまで挿入し、カシメ孔3の内壁で電池ケース本体12の上端部分を内周側に押圧して蓋16の外周部分をかしめ、この状態で電池ケース本体12の上端部分の内周部分と蓋16の外周部分との当接箇所をレーザー溶接で接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にハイブリッド車や電気自動車に用いる電池ケースの蓋の接合方法及びそれに用いる金型に係り、より詳しくは、短時間で電池ケースの蓋を接合できるとともに、電池ケースの製造に際して高い精度を要求されることもない電池ケースの蓋の接合方法及びそれに用いる金型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車や電気自動車等に用いる電池として、リチウムイオン電池、ナトリウム電池、ニッケル水素電池等のいわゆる新型電池が採用されているが、これらの新型電池は、電池ケース内に、電極及び電解液などの電池構成部品が充填されて構成されており、電池ケースは、上部を開口とした、箱型あるいは円筒型の電池ケース本体と、この電池ケース本体の上部開口を塞ぐ蓋により構成されている。
【0003】
そして、このように構成される新型電池の製造は、電池ケース本体の中に電極及び電解液などの電池構成部品を充填した後に、電池ケース本体の上部に蓋を接合することによって行われる。
【0004】
ここで、電池ケース本体に蓋を接合する方法としては一般的に、レーザー溶接による方法が採用され、更に、このレーザー溶接の方法には、上向溶接方式と側面溶接方式とが存在する。
【0005】
このレーザー溶接による蓋の接合方式について図10を参照して説明すると、図10は、一般的な蓋の接合方式を説明するための図であり、図において31が電池ケース本体、32が蓋である。また、33は位置決め治具、34がエアシリンダ等の押圧手段であり、前記位置決め治具33は、互いに直交する壁3301を有する。
【0006】
そして、この従来の方式によって、電池ケース本体31の上部開口に蓋32を接合する場合には、電池ケース31内に電池構成部品を充填した後に、まず、電池ケース本体31における隣り合う2面のそれぞれを前記位置決め治具33の壁3301のそれぞれに当接させるとともに、図に示すように、壁3301に当接していない2面をエアシリンダ34等の押圧手段によって壁3301側に押し付けて、これにより電池ケース本体31の位置決めをする。
【0007】
そして次に、電池ケース本体31の上部開口を塞ぐようにして電池ケース本体31の上部に蓋32を載置し、その後に、レーザー溶接によって、蓋32を電池ケース本体31に接合する。
【0008】
ここで、電池ケース本体31と蓋32との関係を説明すると、図11は、上向溶接方式を採用する場合であり、この場合には、電池ケース本体31の上端部分について、内径を広げて肉厚を薄くすることで、電池ケース本体31の上端部分の内周に段差部35を形成する。
【0009】
また、電池ケース本体31における肉厚を薄くする上端内周の高さ寸法を、蓋32の厚み寸法と同寸法にするとともに、一方、蓋32は、その外径を、肉厚を薄くした電池ケース本体31の上端内周部分の内径と同一にする。
【0010】
そして、前記段差部35上に蓋の周縁部を載置することで、電池ケース本体31の上部開口を塞ぎつつ、蓋32を電池ケース本体31の上端に載置し、その後は、上面部分に位置する、蓋32の外周と電池ケース本体31の上端内周の接触部分(矢印で示す部分)の四辺を、レーザービームによって上側から溶接して、これにより蓋32を電池ケース本体31に接合する。
【0011】
一方、図12は、側面溶接方式を採用する場合であり、このような場合には、蓋32の下面に、電池ケース本体31の内径と同じ外形寸法にすることで電池ケース本体31の上端部内周に嵌合可能な嵌合部36を形成する。
【0012】
そして、嵌合部36を電池ケース本体31の上端内周に嵌合させることで、電池ケース本体31の上部開口を塞ぎつつ蓋を電池ケース本体31の上端に載置し、その後は、側面部分に位置する、電池ケース本体31の上端部分と蓋32の接触部分(矢印で示す部分)の四辺をレーザービームによって測方から溶接して、これにより蓋32を電池ケース本体31に接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−9868号公報
【特許文献2】特開2004−39445号公報
【特許文献3】特開2001−236929号公報
【特許文献4】特開平11−86809号公報
【特許文献5】特開平8−315790号公報
【特許文献6】特開平8−315789号公報
【特許文献7】特開平8−315788号公報
【特許文献8】特開平8−250079号公報
【特許文献9】特開平8−185835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上向溶接方式では、蓋32の外径を電池ケース本体31の上端内径と一致させなければならず、そのために、電池ケース本体と蓋の製造に際して精度が要求されるという問題点が指摘されている。
【0015】
即ち、例えば図13に示すように、蓋32の外径が電池ケース本体31の上端内径よりも小さく、それにより蓋32の外周と電池ケース本体31の内周との間に隙間37が生じてしまうと、レーザー溶接の際に、この隙間37の中にレーザービームが入ってしまい、電池ケース本体31と蓋32との接合が不十分になってしまうとともに、蓋32の外周と電池ケース本体31とが均等に溶けずに、ピンホールが発生したり仕上がりが悪くなってしまうという事態が考えられるために、上向溶接方式の場合には、電池ケース本体の蓋の製造に際しては高い精度が要求される。
【0016】
また、新型電池の電池ケース本体31は一般的に、電極及び電解液などの電池構成部品を入れ易くするために、図14に示すように、側面部分を少し膨らませて製造しており、蓋32の接合に先立って、電池構成部品を入れた後に、図15(a)に示すように、エアシリンダ等の押圧手段41によって、膨らんでいる部分を押して膨らみを直す工程があるが、このとき、電池ケース本体の両端部分は強度が高いために、図15(b)に示すように、エアシリンダ等の押圧手段41によって膨らんでいる部分を押圧したときに、膨らんでいた側面部分が、直線状にならずに凹んだ状態になってしまうことがある。
【0017】
そして、この状態で蓋32を強引に電池ケース本体31の上端に載置すると、電池ケース本体31の内周と蓋32の外周との間に隙間37が生じてしまうことがある。この状態における平面を示した図が図16であり、この状態において、蓋32の外周と電池ケース31の内周の接触部分のレーザー溶接を行うと、隙間37内にレーザービームが入ってしまい、それにより、電池ケース本体31と蓋32との接合が不十分になってしまうとともに、溶接の仕上がりが悪くなってしまうという事態が考えられる。
【0018】
一方、側面溶接方式の場合には、電池ケース本体31の上端が蓋32の下面に当接するために、電池ケース本体31や蓋32に高い精度が要求されることは少ないが、電池ケース本体の側面からレーザービームを照射するために、レーザービーム照射手段を電池ケース31の周囲で周回させなければならず、照射に時間がかかってしまい、それにより、上向溶接方式に比べると生産性が落ちてしまうという問題点が指摘されている。
【0019】
また、レーザー溶接により電池ケース本体と蓋の接合を行う場合には、レーザービームの熱により、電池ケース内に充填してある電池構成部品が悪影響を受けてしまうおそれも十分に考えられるが、従来はこの問題に対する有効な対策は採られていなかった。
【0020】
そこで、本発明は、溶接時間が短く生産性が高いとともに、電池ケースの製造に際して高い精度を要求されることも無く、更に、溶接の熱による悪影響を抑えることもできる、電池ケースの蓋の接合方法及びそれに用いる金型を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の電池ケースの蓋の接合方法は、
上端部内周に段差部が形成されるとともに上部を開口とした有底の電池ケース本体と、前記段差部上に周縁部が載置されることで前記電池ケース本体の上部の開口を塞ぐ蓋と、を有する電池ケースにおける前記蓋を、前記電池ケース本体に接合する方法であって、
下側にいくに従ってテーパー状に内径が広くなっているとともに上端部分の内径は電池ケース本体の上端部分の外径よりも小さい径としたテーパー部を有するカシメ孔が形成された金型本体と、該金型本体に備えた冷却手段と、を有するカシメ金型を用いて、
前記電池ケース本体の段差部上に蓋の周縁部を載置することで、電池ケース本体の上部の開口を蓋で塞ぎつつ電池ケース本体の上部に蓋を載置して、
前記カシメ孔内にカシメ金型の下側から電池ケース本体を挿入するとともに、電池ケース本体の上端が少なくとも前記テーパー部の上端部分によって内周側に押圧されるまで電池ケース本体の挿入を進めて行くことで、カシメ孔の内壁で電池ケース本体の上端部分を内周側に押圧して電池ケース本体の上端部分の内周と蓋の外周部分をかしめて、
この状態において、電池ケース本体の上端部分の内周部分と蓋の外周部分との当接箇所をレーザー溶接によって接合する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電池ケースの蓋の接合方法では、上端部内周に段差部が形成されるとともに上部を開口とした有底の電池ケース本体と、この電池ケース本体の段差部上に周縁部が載置されることで電池ケース本体の上部の開口を塞ぐ蓋を有する電池ケースにおける蓋を、電池ケース本体に接合する方法としており、即ち、前述した上向溶接方式を採用しているために、側面溶接方式と異なり、溶接時間を短くすることが可能である。
【0023】
そしてこのとき、本発明の電池ケースの蓋の接合方法では、下側にいくに従ってテーパー状に内径が広くなっているとともに上端部分の内径は電池ケース本体の上端部分の外径よりも小さい径としたテーパー部を有するカシメ孔が形成された金型本体と、この金型本体に備えた冷却手段を有するカシメ金型を用いて、電池ケース本体の段差部上に蓋の周縁部を載置して本体ケースの上部の開口を蓋で塞いだ後に、カシメ孔内にカシメ金型の下側から電池ケース本体を挿入するとともに、電池ケース本体の上端が少なくとも前記テーパー部の上端部分によって内周側に押圧されるまで電池ケース本体の挿入を進めて行き、これにより、カシメ孔の内壁で電池ケース本体の上端部分を内周側に押圧して電池ケース本体の上端部分の内周と蓋の外周部分をかしめて、その後に、電池ケース本体の上端部分の内周部分と蓋の外周部分との当接箇所をレーザー溶接によって接合することとしているために、蓋の外周と電池ケース本体の内周とを密着させることができるので、電池ケースの製造に際して高い精度を要求することなく、電池ケース本体と蓋とを十分に接合させるとともに見栄えの良い仕上がりにすることも可能である。
【0024】
また、本発明におけるカシメ金型では、冷却手段を有している一方、蓋の接合においては、カシメ孔の内壁で電池ケース本体の上端部分を内周側に押圧して電池ケース本体の上端部分の内周部分と蓋の外周部分をかしめた状態で、レーザー溶接を行うために、レーザービームによる熱をカシメ金型に備えた冷却手段が吸収することができるので、溶接の熱により、電池ケース内に充填してある電池構成部品が悪影響を受けてしまうおそれも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の電池ケースの蓋の接合方法の実施例に用いるカシメ金型を説明するための図である。
【図2】図1におけるA−A線端面図である。
【図3】本発明の電池ケースの蓋の接合方法の実施例に用いる電池ケースを説明するための図である。
【図4】本発明の電池ケースの蓋の接合方法の実施例に用いるカシメ金型の作用を説明するための図である。
【図5】本発明の電池ケースの蓋の接合方法の実施例を説明するための図である。
【図6】本発明の電池ケースの蓋の接合方法の他の形態を説明するための図である。
【図7】本発明の電池ケースの蓋の接合方法の実施例に用いる蓋の他の形態を説明するための図である。
【図8】本発明の電池ケースの蓋の接合方法の実施例に用いる蓋の他の形態を説明するための図である。
【図9】本発明の電池ケースの蓋の接合方法の実施例に用いる電池ケース本体の他の形態を説明するための図である。
【図10】従来の電池ケースの蓋の接合方法を説明するための図である。
【図11】従来の上向溶接方式による電池ケースの蓋の接合方法を説明するための図である。
【図12】従来の側面溶接方式による電池ケースの蓋の接合方法を説明するための図である。
【図13】従来の上向溶接方式による電池ケースの蓋の接合方法の問題点を説明するための図である
【図14】従来の上向溶接方式による電池ケースの蓋の接合方法の問題点を説明するための図である
【図15】従来の上向溶接方式による電池ケースの蓋の接合方法の問題点を説明するための図である
【図16】従来の上向溶接方式による電池ケースの蓋の接合方法の問題点を説明するための図である
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の電池ケースの蓋の接合方法では、上端部内周に段差部が形成されるとともに上部を開口とした有底の電池ケース本体と、前記段差部上に周縁部が載置されることで前記電池ケース本体の上部の開口を塞ぐ蓋を有する電池ケースにおける前記蓋を、電池ケース本体に接合する方法としており、カシメ金型を用いて電池ケース本体に蓋を接合することとしている。
【0027】
そして、カシメ金型は、カシメ孔が形成された金型本体を有しており、カシメ孔は、下側にいくに従ってテーパー状に内径が広くなっているとともに上端部分の内径は電池ケース本体の上端部分の外径よりもわずかに小さい径としたテーパー部を有している
【0028】
また、カシメ金型は冷却手段を有しており、この冷却手段は、例えばペルチェ素子としており、これを、金型本体に備えている。
【0029】
そして、このカシメ金型を用いた本発明の電池ケースの蓋の接合方法では、まず、電池ケース本体の段差部上に蓋の周縁部を載置することで、電池ケース本体の上部の開口を蓋で塞ぎつつ、電池ケース本体の上部に蓋を載置する。
【0030】
次に、蓋を載置した電池ケース本体の上方にカシメ金型が配置される状態にして、蓋を載置した電池ケース本体を上昇させ、あるいはカシメ金型を下降させることで、カシメ金型のカシメ孔内に、カシメ金型の下側から電池ケース本体を挿入する。
【0031】
そして、電池ケース本体の上端が少なくとも前記テーパー部の上端部分によって内周側に押圧されるまで電池ケース本体の挿入を進めて行くことで、カシメ孔の内壁で、電池ケース本体の上端部分を内周側に押圧して、これにより、電池ケース本体の上端部分の内周と、蓋の外周部分を、かしめて密着させる。
【0032】
そして、カシメ孔の内壁で電池ケース本体の上端部分の内周と蓋の外周部分をかしめている状態を維持しながら、電池ケース本体の上端部分の内周部分と、蓋の外周部分との当接箇所を、レーザー溶接によって接合する。
【実施例1】
【0033】
本発明の電池ケースの蓋の接合方法(以下、単に「蓋の接合方法」という。)の実施例について説明すると、本実施例の蓋の接合方法は、レーザー溶接による接合方法としているとともに、上向溶接方式としている。
【0034】
即ち、図3が本実施例の蓋の接合方法の対象とする電池ケースを示す図であり、図において11が電池ケースである。そして、本実施例の蓋の接合方法によって蓋を接合する電池ケース11は、図3に示すように、上部を開口13とした有底の箱型形状とした電池ケース本体12と、この電池ケース本体12の上部開口13を塞ぐ蓋16を有している。
【0035】
また、この電池ケース本体12の上端部分は、その外径を維持した状態で肉厚を薄くしており、即ち内径を広げることで、内周側に段差部14を形成し、電池ケース本体12の上端部分内周における段差部14の上方部分を嵌合空間15として、この嵌合空間15に蓋16を嵌合させて電池ケース本体11の上部の開口13を塞ぐこととしている。
【0036】
即ち、前記嵌合空間15の高さ寸法は、蓋16の厚み寸法と同寸法とし、一方、蓋16は、その外径を、肉厚を薄くした電池ケース本体12の上端内周部分の内径、即ち嵌合空間の外径と同一にして、蓋16の周縁部分を前記段差部14上に載置することで、前記嵌合空間15内に蓋16を嵌合して、電池ケース本体12の上部に蓋16を載置することとしている。
【0037】
そして、本実施例の蓋の接合方法では、このように構成される電池ケース11の蓋16を、カシメ金型を用いて電池ケース本体に接合することとしている。
【0038】
なお、本実施例において前記電池ケース本体12は、深絞りの方法により製造しているが、必ずしも深絞りで製造する必要はなく、その他、例えばよりコストの安いインパクトプレスによる方法で製造してもよい。
【0039】
次に、前記カシメ金型について図面を参照して説明すると、図1及び図2は、本実施例の蓋の接合方法に用いるカシメ金型を説明するための図であり、図1は斜視図、図2は図1におけるA−A線端面図で、図において1がカシメ金型である。
【0040】
そして、前記カシメ金型1は、金属等の一定以上の剛性を有する素材により構成された金型本体を備えている。即ち、図において2が金型本体であり、本実施例において金型本体2は、平面視野を六角形としており、中央部分には、電池ケース本体に蓋をかしめるためのカシメ孔3が形成されている。
【0041】
ここで、前記カシメ孔3について説明すると、図2において、前記カシメ孔3は、上端部4を有しており、本実施例においてこの上端部4は、電池ケース11の蓋16の厚み寸法と同程度の高さ寸法としており、また、電池ケース本体11と同様の輪郭にするとともに、その輪郭の寸法は、電池ケース本体11の上端部分の外形寸法よりもわずかに小さい寸法としている。即ち、前記上端部4は、電池ケース11の上端部分に対して、寸法をわずかに小さくした相似形の輪郭を有する孔としている。
【0042】
そして、前記上端部4の下方には、テーパー部が連続して形成されている。即ち、図において5がテーパー部であり、このテーパー部5は、下側にいくに従ってテーパー状に径が広くなっているとともに、上端部分の輪郭及び輪郭の寸法は、前記上端部4の輪郭及び輪郭の寸法と同じとした孔であり、即ち、テーパー部5の上端部分の輪郭及び輪郭の寸法は、前記上端部4と同様に、電池ケース11の上端部分に対して寸法がわずかに小さい相似形とした孔としている。
【0043】
次に、図1において6は、冷却手段であり、本実施例においてこの冷却手段としては、ペルチェ素子を用いている。即ち、本実施例におけるカシメ金型1では、前記金型本体2の表面部分に合計4組のペルチェ素子6をそれぞれ取り付けるとともに、このペルチェ素子6にはそれぞれ、ペルチェ素子6に電流を流すためのリード線7が接続されており、これにより、レーザー溶接によって金型本体2に伝わってきた熱を外部に放出することとしている。
【0044】
即ち、周知の通り、ペルチェ素子は、2種類の金属の接合部に電流を流すと片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルチェ効果を利用した板状の半導体であり、直流電流を流すと、一方の面が吸熱し、反対面に発熱が起こる特性を有している。そこで、本実施例におけるカシメ金型1では、このペルチェ素子を金型本体に備えて、レーザー溶接により金型本体2に伝わった熱をペルチェ素子6によって放出することとしている。
【0045】
但し、本発明においてカシメ金型1に備える冷却手段は、必ずしもペルチェ素子に限定されるものではなく、その他、例えば、金型本体2の内部に流路を形成して、この流路を用いて、外部の冷却水を金型本体2の内部を介して循環させ、これによって、循環させている冷却水によってレーザー溶接により金型本体2に伝わった熱を吸収してもよく、またその他、金型本体2を冷却可能な手段であればいずれの手段を用いてもよい。
【0046】
次に、このように構成される本実施例におけるカシメ金型1の作用について図4を参照して説明すると、図において、蓋16を嵌合空間15内に嵌合した電池ケース本体12を、カシメ金型1における金型本体2のカシメ孔3内に、カシメ金型1の下側から挿入していき、テーパー部5内を進めていくと、前述したようにテーパー部5の上端部分の輪郭及び輪郭の寸法は、電池ケース本体11の上端部分の外形寸法よりもわずかに小さい寸法としているため、図4(a)に示すように、電池ケース11は、テーパー部5の上端部分の存在によって、進行が遮られる。
【0047】
そして、この状態で電池ケース11を強引に上方へ進めていくと、電池ケース本体12の上端部分は、テーパー部5の上端部分の内周部分、あるいはカシメ孔3の上端部4の内周によって、即ち、カシメ孔3の内壁によって、内周側に押圧されていく。
【0048】
そうすると、図4(b)に示すように、電池ケース本体12の上端部分は内周側に変形していき、電池ケース本体12の上端部分の内周と蓋16の外周部分は、かしめられ、密着されることになる。
【0049】
そのため、例えば図4(a)に示すように、蓋16を電池ケース本体12の嵌合空間15内に入れた嵌合したときに、電池ケース本体12の内周と蓋16の外周との間に隙間17が生じてしまっている場合でも、本実施例のカシメ金型1を用いることにより、電池ケース本体12の上端部分の内周と蓋16の外周部分を、かしめて密着した状態にすることができるので、電池ケース本体12と蓋16とを十分に接合させるとともに見栄えの良い仕上がりにすることが可能であり、従って、本実施例の蓋の接合方法によれば、電池ケース本体や蓋の製造に際して、高い精度が要求されることが無い。
【0050】
また、カシメ孔3によって電池ケース本体12の上端部分の内周と蓋16の外周部分をかしめて密着した後に、その状態でレーザー溶接を行うことで、電池ケース11に加えられたレーザーの熱をカシメ金型1に逃がすことができるとともに、このカシメ金型1に移動した熱は、カシメ金型1に備えた冷却手段としてのペルチェ素子6によって外部に放出されるため、溶接の熱により、電池ケース内に充填してある電池構成部品が悪影響を受けてしまうことも防止することができる。
【0051】
次に、このような作用を有する本実施例のカシメ金型1を用いて電池ケース本体に蓋を接合する本発明の実施例について図5を参照して説明すると、図5は、本実施例の蓋の接合方法によって電池ケース本体12に蓋16を接合するためのシステム21の一部を示す図であり、図5におけるシステム21では、搬送ラインを構成するコンベア22を備えており、このコンベア22によって、電池ケース本体12をタクト送りすることとしている。
【0052】
また、搬送ラインの途上には搬送されてくる電池ケース本体12の嵌合空間15内に蓋16を嵌合させるための手段を備えており、この蓋16を嵌合空間15内に装挿する手段の後に、前記カシメ金型1が配設されている。
【0053】
即ち、図において1がカシメ金型1であり、図5に示すシステムでは、コンベア21の上方にカシメ金型1を配設するとともに、コンベア22を挟んで前記カシメ金型1の下方にはリフト23が配設されている。
【0054】
そして、リフト23により、前記カシメ金型1の下方まで搬送されてきた電池ケース本体12を押し上げて、電池ケース本体12の上方部分を前記カシメ孔3内に挿入させ、これにより、前述の方法によって、電池ケース本体12に蓋16をかしめることとしている。
【0055】
また、図において24はレーザー溶接手段であり、このレーザー溶接手段24は、前記リフト23によって電池ケース本体11に蓋16がかしめられた電池ケース11における電池ケース本体12と蓋16との接触部分を、レーザー溶接するために用いられる。
【0056】
更に、図において25は、カシメ金型1のカシメ孔3内に装挿されている電池ケース11をカシメ孔3から下方に取り出すための押圧手段であり、この押圧手段25を下方側に回動させることで、電池ケース11の蓋16を叩き、これにより、電池ケース11をカシメ孔3内から下方に落下させることとしている。
【0057】
そして、このようなシステムにおいて、電極及び電解液などの電池構成部品が充填された状態でコンベア22により搬送されてきた電池ケース本体12の嵌合空間15にまず、蓋16の周縁部が前記段差部14上に載置され、これにより、電池ケース本体12の上部の開口13を蓋16で塞ぎつつ、電池ケース本体12の嵌合空間15内に蓋16が装挿される。
【0058】
次に、蓋16が電池ケース本体12の嵌合空間15内に装挿された状態の電池ケース本体12が前記カシメ金型1の下方にまで搬送されてきたときに、コンベア22の搬送が停止するとともに、リフト23によって電池ケース本体12が上昇され、これにより、電池ケース本体12がカシメ金型1のカシメ孔3内に、下側から挿入されていく。
【0059】
そして、電池ケース本体12は、その上端が、少なくとも前記テーパー部5の上端部分によって内周側に押圧されるまで挿入されていき、これにより、前述したように、カシメ孔3の内壁で電池ケース本体12の上端部分が内周側に押圧され、電池ケース本体12の上端部分の内周と蓋16の外周部分がかしめられて密着される。
【0060】
次に、この、カシメ孔3の内壁によって電池ケース本体12の上端部分の内周と蓋16の外周部分がかしめられている状態で、電池ケース本体12の上端部分の内周部分と、蓋16の外周部分との当接箇所にレーザー溶接手段24によってレーザービームが照射され、これにより、電池ケース本体12に蓋16が接合されて新型電池が完成する。
【0061】
そして、その後は、押圧手段25によって電池ケース11が下方側に押圧されるとともに、リフト23によって、完成した新型電池がコンベア22上に戻されて、その後に、コンベアがタクト送りされ、前述と同様な手順により、新たにカシメ金型1の下方に搬送されてきた電池ケース本体12について蓋16が接合され、以後は、処理対象となる電池ケース本体12が無くなるまでこの処理が繰り返される。
【0062】
なおレーザー溶接に際しては、まず点付溶接を行い、その後に全周溶接を行うこととしてもよく、これによれば生産安定性を良くすることが可能である。
【0063】
また、図6は、回転テーブル27を用いて電池ケース本体12を搬送するシステム26を示した図であり、このシステム26では、電池ケース本体12を回転テーブル27によって搬送することとしており、その搬送途上に、カシメ金型、リフト、レーザー溶接手段等が備えられた接合エリア29が配設されたシステムとしている。
【0064】
そして、ロードエリア28において、電極及び電解液などの電池構成部品が充填された電池ケース本体12がテーブル27上に固定され、電池ケース本体12が接合エリア29に搬送されてきたときに、テーブル27の回転が停止するとともに電池ケース本体12に蓋16が接合して、その後、完成した新型電池はアンロードエリア30においてラインから取り出される構成としており、本発明の蓋の接合方法では、このようなシステムにおいて電池ケース本体に蓋を接合しても良い。
【0065】
そして、いずれの場合でも、本実施例の蓋の接合方法では、上向溶接方式を採用しているために、側面溶接方式と異なり溶接時間を短くすることが可能であるとともに、カシメ金型によって電池ケース本体の上端部分の内周と蓋の外周部分をかしめて、その状態で電池ケース本体の上端部分の内周部分と蓋の外周部分との当接箇所をレーザー溶接によって接合することとしているために、電池ケースの製造に際して高い精度が要求されることなく、電池ケース本体と蓋とを十分に接合させるとともに見栄えの良い仕上がりにすることも可能である。
【0066】
また、本実施例の蓋の接合方法では、カシメ金型に冷却手段を有している一方、蓋の接合においては、カシメ孔の内壁で電池ケース本体の上端部分を内周側に押圧して電池ケース本体の上端部分の内周部分と蓋の外周部分をかしめた状態でレーザー溶接を行うために、レーザービームによる熱をカシメ金型に備えた冷却手段が吸収することができるので、溶接の熱により、電池ケース内に充填してある電池構成部品が悪影響を受けてしまうおそれも防止できる。
【0067】
従って、本実施例の蓋の接合方法によれば、溶接時間が短く生産性が高いとともに、電池ケースの製造に際して高い精度を要求されることも無く、更に、溶接の熱による悪影響を抑えることも可能である。
【0068】
なお、前述の説明では、電池ケース11が箱型形状の場合を説明したが、電池ケースは必ずしも箱型である必要は無く、その他、円筒形状であってもよい。そしてこの場合には、前記カシメ金型におけるカシメ孔もまた、平面視野を円形とした上端部と、同じく平面視野が円形であるとともに下方に行くに従って径が広がったテーパー部を有する形態にする。
【0069】
また、前述の説明では、蓋16が平板状の場合について説明したが、その他、図7に断面図で示すように、周縁部分を下方側に傾斜させて、断面形状が台形状になるように構成した蓋16bを用いてもよく、この場合には、カシメ孔3の内壁で電池ケース本体12の上端部分が内周側に押圧されると、電池ケース本体12の上端部分の内周と蓋16bにおける周縁部分の傾斜させた箇所がかしめられることになる。
【0070】
そうすると、蓋16bは断面形状を台形状にしているために、電池ケース本体12の上端部分の内周で蓋16bにおける周縁部分が押圧されると、押圧された周縁部分は内径側に変形するため、電池ケース本体12の上端部分による蓋16bの押圧を強固に行うことが可能であるので、それにより、電池ケース本体11の肉厚に誤差があるときでも、その誤差を十分に吸収して、より確実に、電池ケース本体12の上端部分の内周と蓋16bの外周部分をかしめることが可能となる。
【0071】
この図7に示す蓋16bを電池ケース本体11に接合する場合を示した図が図8であり、図8(a)は電池ケース本体12をカシメ孔3内に挿入している状態を示しており、図8(b)は、図8(a)の状態で電池ケース本体12を強引に上方へ進めていくことで、電池ケース本体12の上端部分が、カシメ孔3の内壁によって内周側に押圧されることで内周側に変形していき、蓋16bの外周部分にかしめられた状態を示しており、図において、電池ケース本体11の肉厚等の誤差により、電池ケース本体12の内周と蓋16bの外周との間に隙間17が生じてしまっている場合や、隙間17の間隔に相違がある場合でも、それらの隙間17や隙17の間隔の相違を吸収して、電池ケース本体12の上端部分の内周と蓋16bの外周部分をかしめることが可能となる。
【0072】
更に、前述の説明において電池ケース本体12の上端部分は、外径を維持した状態で肉厚を薄くして内径を広げることで内周側に段差部14を形成した形態としたが、その他、図9に示すように、例えばローラー等によって、電池ケース本体12の上端部分より少し下に下がった箇所に内径側に凸状とした溝18を形成することで、内周側に段差部14bを形成した形態としてもよく、更にこのとき、電池ケース本体12の上端部は外側に向けて変形させるとともに、前述の図7に示す形態の蓋16bを用いるとよく、そうすると、前述のように、電池ケース本体12による蓋16bの押圧を強固に行うことが可能なため、図9(b)に示すように、電池ケース本体12の誤差を吸収して、電池ケース本体12と蓋16b間の隙間を無くすることができる。
【0073】
またこのとき、前述の場合と同様に、カシメ時に点付溶接を行い、その後に次工程において蓋16bの全周を溶接する方法を採用することで、生産安定性を高めることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、上向溶接方式によって電池ケース本体に蓋を溶接する方法において、電池ケースの製造に際して高い精度が要求されることを無くするとともに溶接の熱による悪影響を少なくすることを可能にしているため、ケースと蓋とを溶接により接合する、容器における蓋の接合方法の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 カシメ金型
2 金型本体
3 カシメ孔
4 カシメ孔の上端部
5 カシメ孔のテーパー部
6 ペルチェ素子
7 リード線
11 電池ケース
12 電池ケース本体
13 電池ケース本体の上部の開口
14、14b 段差部
15 嵌合空間
16、16b 蓋
17 隙間
18 溝
21、26 蓋の接合システム
22 コンベア
23 リフト
24 レーザー溶接手段
25 押圧手段
27 回転テーブル
28 ロードエリア
29 接合エリア
30 アンロードエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部内周に段差部(14、14b)が形成されるとともに上部を開口(13)とした有底の電池ケース本体(12)と、前記段差部(14、14b)上に周縁部が載置されることで前記電池ケース本体(12)の上部の開口(13)を塞ぐ蓋(16、16b)と、を有する電池ケースにおける前記蓋(16、16b)を、前記電池ケース本体(12)に接合する方法であって、
下側にいくに従ってテーパー状に内径が広くなっているとともに上端部分の内径は電池ケース本体(12)の上端部分の外径よりも小さい径としたテーパー部(5)を有するカシメ孔(3)が形成された金型本体(2)と、該金型本体(2)に備えた冷却手段(6)と、を有するカシメ金型(1)を用いて、
前記電池ケース本体(12)の段差部(14、14b)上に蓋(16、16b)の周縁部を載置することで、電池ケース本体(12)の上部の開口(13)を蓋(16、16b)で塞ぎつつ電池ケース本体(12)の上部に蓋(16、16b)を載置して、
前記カシメ孔(3)内にカシメ金型(1)の下側から電池ケース本体(12)を挿入するとともに、電池ケース本体(12)の上端が少なくとも前記テーパー部(5)の上端部分によって内周側に押圧されるまで電池ケース本体(12)の挿入を進めて行くことで、カシメ孔(3)の内壁で電池ケース本体(12)の上端部分を内周側に押圧して電池ケース本体(12)の上端部分の内周と蓋(16、16b)の外周部分をかしめて、
この状態において、電池ケース本体(12)の上端部分の内周部分と蓋(16、16b)の外周部分との当接箇所をレーザー溶接によって接合する、ことを特徴とする電池ケースの蓋の接合方法。
【請求項2】
請求項1の電池ケースの蓋の接合方法に用いるカシメ金型であって、
下側にいくに従ってテーパー状に内径が広くなっているとともに上端部分の内径は電池ケース本体(12)の上端部分の外径よりも小さい径としたテーパー部(5)を有するカシメ孔(3)が形成された金型本体(2)と、
該金型本体(2)に備えた冷却手段(6)と、を有することを特徴とするカシメ金型。
【請求項3】
前記冷却手段(6)は、金型本体(2)に備えたペルチェ素子であることを特徴とする請求項2に記載のカシメ金型。
【請求項4】
前記冷却手段(6)は、金型本体(2)に形成した冷却水循環用流路であることを特徴とする請求項2に記載のカシメ金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−26175(P2013−26175A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162855(P2011−162855)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【特許番号】特許第5060642号(P5060642)
【特許公報発行日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【出願人】(595067073)三習工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】