説明

電池パックおよび電池パックの製造方法

【課題】簡単な構造で外装部の機械的強度の信頼性を確保できる電池パックおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】素電池に付属部品を取り付けた電池パックであって、素電池は端子部を設けており、付属部品は、電気接続用のリードとこのリードとの係合部を設けたフレームとを含んでおり、係合部にリードを係合させた状態で、リードと端子部とを溶接により接合している。このことにより、外力が作用した場合のフレームの移動を抑えることができ、フレームに外装カバーを取り付けたり、フレームに樹脂モールドを一体成形した構成において、外装カバーや樹脂モールドに外力が作用した場合に、これらの移動を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子部に電気接続用のリードを溶接した電池パックおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電池パックの薄型化、小型化に伴い、素電池上部の封口体側から正極リード、負極リードをとり、保護回路及び保護素子を素電池上部に集約させた外装部を備えた電池パックが主流になりつつある。
【0003】
図13は、従来の電池パックの一例の分解視図を示している。本図に示した電池パック120は、外装部を樹脂モールドで覆って一体成形した構成の一例であり、その縦方向高さ寸法および横方向長さ寸法に比して、その奥行き寸法が小さい、薄型化された扁平四角形状を有している。素電池121の正極端子122にリード123の一端が溶接され、負極端子124にリード125の一端が溶接される。リード123の他端は保護回路126に溶接され、リード125の他端は保護素子127の一端に溶接される。保護素子127の他端は、リード128の一端に溶接され、リード128の他端は保護回路126に溶接される。保護回路126と素電池121との間には、絶縁板130を介在させている。
【0004】
素電池121と外装カバー129との間に樹脂を注入することにより、素電池121の上部の各種部品及び外装カバー129と樹脂とが一体成形される。図13では、図示の便宜上、一体成形樹脂131を分離して図示している。電池パック120の完成状態では、一体成形樹脂131は素電池121の上部と外装カバー129との間にあり、これらと一体になっている。
【0005】
素電池121の下部には缶底カバー132が両面テープ133を介して貼り付けられる。素電池121の全周には、ラベル134が貼り付けられる。
【0006】
図14は、図13の電池パックの各部品を組み立てた状態の要部斜視図を示している。図13の構成では、保護回路及び保護素子を素電池121の上部に集約させており、図14のような完成品状態では、電池パックの薄型化、小型化を図ることができる。
【0007】
他方、図14の構成では、素電池121と、一体成形樹脂131とは別の構造体である。また、素電池121と外装カバー129との間に注入される樹脂は、その細部への充填性などを考慮して、比較的柔軟な樹脂材料(例えば、ポリアミド樹脂など)が用いられる。さらに、素電池121は金属材料(アルミニウムまたはアルミニウム合金など)にて形成されているため、このような樹脂材料とは基本的に接合されない。
【0008】
このため、図14に示したように、一体成形樹脂131に、外力により捻りであるツイストTや曲げMが作用した場合、一体成形樹脂131が素電池121から分離するように力が作用する。この場合、加わる外力が大きくなると、外装部の変形や破損が生じる可能性があった。
【0009】
特に、近年、携帯電子機器などに用いられるこのような電池パックを、携帯電子機器本体に装着される電池パックとは別に予備用の電池パックとして、電池パック単体にて持ち運びされる場合も増えつつある。このような電池パック単体にて持ち運びがなされるような場合にあっては、電池パックに対して不測の外力が付加される場合もある。したがって、電池パック単体での機械的強度を向上させることが求められている。
【0010】
このような問題を解決するため、各種構造が提案されている。例えば下記特許1、2には、カバー部分を素電池にねじ止めすることが提案されている。下記特許文献3−5には、素電池に樹脂モールドを一体成形する構成において、樹脂モールド内に、突出部を埋設させることが提案されている。下記特許文献6、7には、カバー部分と素電池との間に接続部品を介在させて、両者を結合することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−112725号公報
【特許文献2】特開2006−164531号公報
【特許文献3】特開2007−165328号公報
【特許文献4】特開2003−282039号公報
【特許文献5】特開2005−129528号公報
【特許文献6】特開2006−236735号公報
【特許文献7】特開2004−319144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記各特許文献に提案された構造は、外装部と素電池との結合力は高められるが、ねじ、突出部、接続部品といった新たな部材を追加する必要があり構造も複雑となる。
【0013】
本発明は、前記のような従来の課題を解決するものであり、簡単な構造で外装部の機械的強度の信頼性を確保できる電池パックおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0015】
本発明の第1態様によれば、端子部を有する素電池と、素電池より電池パック外部へ電気を取り出すための付属部品と、素電池の端子部および付属部品を覆う外装部材とを備え、付属部品は、素電池の端子部と溶接により接続され、端子部と付属部品とを電気的に接続する帯状の電気接続用リードと、リードとの係合部を有し、外装部材を保持するフレームとを含む、電池パックを提供する。
【0016】
本発明の第2態様によれば、端子部を有する素電池と、素電池より電池パック外部へ電気を取り出すための付属部品と、素電池の端子部および付属部品を覆う外装部材とを備え、付属部品は、素電池の端子部と溶接により接続され、端子部と付属部品とを電気的に接続する帯状の電気接続用リードと、リードとの係合部を有し、外装部材を保持するフレームとを含み、フレームにリードが貫通される開口と、開口の内周面から内向きに突出される突出部とが形成され、フレームの開口における互いに対向する内周面を係合部として、帯状のリードの幅方向の両端面が内周面に当接されて、リードの幅方向においてフレームがリードに係合されるとともに、リードと素電池の端子部との溶接による接続箇所において、帯状のリードの幅方向における寸法が、素電池の端子部の同方向における寸法よりも大きく形成され、端子部よりも幅方向に突出されたリードの素電池側の面が突出部と係合される、電池パックを提供する。
【0017】
本発明の第3態様によれば、素電池の一端面に形成された端子部がフレームの開口内に位置されるように、フレームを素電池に対して位置決めし、フレームの開口における内周面と帯状の電気接続用リードの幅方向の端面とが当接するようにリードを配置することで、開口より露出された端子部上にリードを配置し、リードと端子部とを溶接することで、帯状のリードにおける少なくとも幅方向においてフレームを固定し、その後、端子部、リード、およびフレームを覆うように外装部材をフレームに取り付ける、電池パックの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電池パックにおいて、簡単な構造で外装部の機械的強度の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電池パックの分解斜視図
【図2】本実施の形態に係る電池パックの斜視図
【図3】図1において、外装カバーを取り付ける前の素電池の上部の拡大図
【図4】本実施の形態において、素電池上部に樹脂モールドを一体成形した状態を示す斜視図
【図5】図1において、負極リード及び正極リードを素電池に溶接した状態を示す斜視図
【図6】図5のA−A線における断面図
【図7】図5のB−B線における断面図
【図8】本実施の形態に係るフレーム、負極リード及び正極リードを示す斜視図
【図9】本実施の形態に係るインサート成形したフレームを示す斜視図
【図10】本発明の別の実施の形態に係る電池パックおいて、付属部品の一部の分解斜視図
【図11】図10の状態から、負極リード及び正極リードに加え、第3のリードを素電池に溶接した状態を示す斜視図
【図12】図11のC−C線における断面図
【図13】従来の電池パックの一例の分解視図
【図14】図13の従来の電池パックの各部品を組み立てた状態の要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の電池パックによれば、フレームに設けた係合部にリードを係合させた状態で、リードと素電池に設けた端子部とを溶接により接合している。このことにより、外力が作用した場合のフレームの移動を抑えることができる。すなわち、フレームに外装部材を取り付けた構成において、外装部材に外力が作用した場合に、これらの移動を抑えることができ、簡単な構造で外装部の機械的強度の信頼性を確保することができる。
【0021】
また、電池パックにおいて、フレームにリードが貫通される開口が形成され、フレームの開口における互いに対向する第1内周面を係合部として、帯状のリードの幅方向の両端面が第1内周面に当接されて、リードの幅方向においてフレームがリードに係合されていることが好ましい。この構成によれば、少なくとも、リードの幅方向に付加される外力に対する機械的強度を高めることができ、特に、ねじりが作用した際のフレームの移動防止を図ることができる。
【0022】
さらに、フレームの開口における第1内周面と交差する第2内周面をさらに係合部として、帯状のリードの長手方向の端面が当接されて、リードの長手方向においてフレームがリードに係合されていることが好ましい。この構成によれば、リードの幅方向に加えて長手方向に付加される外力に対する機械的強度を高めることができ、特に、ねじりが作用した際のフレームの移動防止をさらに図ることができる。
【0023】
また、フレームの開口における互いに対向する第1内周面から内向きに突出する突出部が係合部として形成され、帯状のリードにおける素電池側の面が突出部と当接されて、リードの厚み方向においてフレームがリードに係合されていることが好ましい。この構成によれば、リードの厚み方向に付加される外力に対する機械的強度を高めることができ、特に、曲げが作用した際のフレームの移動防止を図ることができる。さらに、上述のリードの幅方向および長手方向における係合と、この厚み方向における係合とを組み合わせることで、ねじりおよび曲げの両方に対する機械的強度を向上させることができる。
【0024】
また、リードと素電池の端子部との溶接による接続箇所において、帯状のリードの幅方向における寸法が、素電池の端子部の同方向における寸法よりも大きく形成され、端子部よりも幅方向に突出されたリードの素電池側の面が突出部と係合されていることが好ましい。
【0025】
また、フレームの開口を貫通したリードにおける素電池側の面が重ねて配置される規制面が開口の周縁の少なくとも一部に形成され、規制面をさらに係合部として、リードの厚み方向においてフレームがリードに係合されていることが好ましい。この構成によっても、曲げが作用した際のフレームの移動防止を図ることができる。
【0026】
また、インサート成形によりフレームの係合部がリードと一体的に形成されていることが好ましい。この構成によれば、電池パックの組立工程(製造工程)において、フレームにリードを係合させる工程を省くことができる。
【0027】
また、素電池は、縦方向高さ寸法および横方向長さ寸法に比して奥行き寸法が小さい扁平四角形状を有し、素電池の縦方向の端面を取付面として外装部材および付属部品が取り付けられ、帯状のリードの幅方向が奥行き方向、厚み方向が縦方向であり、素電池の取付面における横方向の両端部それぞれに端子部が設けられ、それぞれの端子部に対応するように複数の係合部がフレームに設けられていることが好ましい。この構成によれば、外装部の機械的強度の確保に一層有利になる。
【0028】
本発明の電池パックの製造方法によれば、素電池の一端面に形成された端子部がフレームの開口内に位置されるように、フレームを素電池に対して位置決めし、フレームの開口における内周面と帯状の電気接続用リードの幅方向の端面とが当接するようにリードを配置することで、開口より露出された端子部上にリードを配置し、リードと端子部とを溶接することで、帯状のリードにおける少なくとも幅方向においてフレームを固定している。このような方法によれば、端子部に対するリードの位置決めをフレームを用いて容易にしながら、その後、リードを端子部に溶接することで、少なくともリードの幅方向に付加される外力に対するフレーム等の機械的強度を高めることができる。したがって、特に、ねじりが作用した際のフレームの移動防止を図ることができる電池パックを高い生産性にて製造することができる。
【0029】
また、リードの長手方向においてもフレームを係合させることで、同方向に付加される外力に対するフレーム等の機械的強度を高めることができる。さらに効果的に、ねじりが作用した際のフレームの移動防止を図ることができる。
【0030】
また、リードの厚み方向においてもフレームを係合させることで、同方向に付加される外力に対するフレーム等の機械的強度を高めることができる。よって、ねじりに加えて曲げが作用した際のフレームの移動防止を図ることができる。
【0031】
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
(実施の形態1)
最初に、図1を参照しながら、電池パックの概略構成を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る電池パック1の分解斜視図である。図1は、素電池2、及びこれに取り付ける各種付属部品を示している。素電池2は、例えばアルミ又はアルミ合金で形成された厚さの薄い角形の外装缶3内に、発電要素を内蔵したものである。素電池2は、例えば、角形リチウムイオン電池であり、携帯電話やモバイル機器等に用いられる。なお、付属部品とは、素電池2から電池パック1の外部へ電気を取り出すための各種部品である。また、電池パック1は、その縦方向高さ寸法および横方向長さ寸法に比して、その奥行き寸法が小さい、薄型化された扁平四角形状を有している。
【0033】
外装缶3の開口部は、封口体4により封止されている。封口体4には、負極端子5、正極端子6を設けている。封口体4には、両面テープ8を介して樹脂製のフレーム9が取り付けられる。
【0034】
負極端子5には、負極リード10が溶接により接合され、正極端子6には正極リード11が溶接により接合される。負極リード10に、保護素子12の一端の端子13を溶接により接合する。負極リード10及び正極リード11の材料は、負極端子5及び正極端子6の材料に合わせて決定すればよく、例えばニッケル、鉄、ステンレス鋼等が挙げられる。また、負極リード10及び正極リード11は、帯状部材として形成されている。
【0035】
保護素子12の他端の端子14は、基板状の保護回路15の端子16に溶接により接合する。正極リード11には、保護回路15のリード17を溶接により接合する。保護素子12及び保護回路15は、過充電・過電流・過放電等を防止するための保護手段である。
【0036】
樹脂成形品である外装カバー18(外装部材)の孔19と、フレーム9の固定爪20とを係合させることにより、外装カバー18がフレーム9に固定されることになる。素電池2の下部には、両面テープ20を介して缶底カバー21が取り付けられる。素電池2の全周には、ラベル22が貼り付けられる。なお、フレーム9は、例えば、電気的絶縁性を有している。また、フレーム9により外装カバー18が支持されるという観点からは、フレーム9は、ねじりや曲げなど外力に耐えることができるような剛性を有する樹脂材料により形成されていることが好ましい。なお、フレーム9の形成材料の例としては、ポリカーボネイトなどがある。
【0037】
図2は、組立てが完了した状態の電池パック1の斜視図を示している。図2の状態では、図1に示した各種付属部品が外装カバー18内に収納されていることになる。
【0038】
図3は、図1において、外装カバー18を取り付ける前の素電池2の上部の拡大図を示している。フレーム9は保護回路15を支持している。保護回路15には各種電装品を搭載している。さらに保護回路15には、コンタクトパッド23が取り付けられている。コンタクトパッド23は、開口24を形成しており、開口24の位置に外部接続用端子が取り付けられることになる。なお、本実施の形態では、フレーム9、保護回路15、コンタクトパッド23、外部接続用端子、およびリードなどが、付属部品に含まれる。
【0039】
保護回路15の端子16に、保護素子12(図1)の他端の端子14を溶接により接合している。保護回路15のリード17に、正極リード11を溶接により接合している。
【0040】
図3の状態で電気接続は完了している。この状態から、フレーム9に図1に示した外装カバー18を取り付けると、図2に示した状態になる。外装カバー18の孔19と、フレーム9の固定爪20とが係合して、外装カバー18がフレーム9に固定されている。
【0041】
図4は、素電池2上部の別の構成を示す斜視図である。本図に示した構成は、図2のように、外装カバー18を取り付ける仕様に代えて、素電池2の上部に樹脂モールド30を一体成形した構成である。樹脂モールド30は、図3に示した状態の素電池2を金型に搭載し、素電池2上部の金型で囲まれた空間内に、樹脂を充填して成形することができる。図4の構成では、樹脂モールド30内に図1に示した各種付属部品が一体に埋設されていることになる。なお、このような樹脂モールド30における樹脂は、素電池2の上面に取り付けられる付属部品を覆って一体的な樹脂モールド30を形成しているため、素電池2の上面の正極端子6および負極端子5、ならびに付属部品を覆う外装部材の別の形態ということができる。
【0042】
図5は、図1において、負極リード10及び正極リード11を素電池2に溶接した状態を示す斜視図である。フレーム9に形成した係合部33に、負極リード10を係合させている。同様に係合部34に、正極リード11を係合させている。
【0043】
図5の状態では、負極リード10は、素電池2の負極端子5(図1)に溶接により接合しており、正極リード11は素電池2の正極端子6(図1)に溶接により接合している。このため、負極リード10及び正極リード11は、素電池2の厚み方向(X方向)、幅方向(Y方向)、高さ方向(Z方向)のいずれにおいても、位置移動することはない。なお、本実施の形態では、帯状部材である負極リード10及び正極リード11の幅方向がX方向、長手方向がY方向、厚み方向がZ方向となっている。
【0044】
図6は、図5のA−A線における断面図である。外装缶3の開口部は、封口体4により封止されている。封口体4には、絶縁体7を介して負極端子5が取り付けられている。フレーム9の係合部33には、開口35を形成しており、開口35におけるX方向に対向するそれぞれの内周面35a(第1内周面)に、負極リード10の幅方向のそれぞれの端面10aが当接している。これにより、フレーム9が負極リード10にX方向において係合した状態とされている。
【0045】
前記の通り、負極リード10は、負極端子5に溶接により接合しており、図5に示したX方向、Y方向、Z方向のいずれにおいても、位置移動することはない。このことにより、負極リード10に係合させたフレーム9に外力が作用した場合、フレーム9のX方向の位置移動は抑えられることになる。さらに、図5の矢印a、bで示した回転方向の移動も抑えられることになる。
【0046】
また、開口35においては、X方向に対向するそれぞれの内周面35aの他にも、Y方向に対向するそれぞれの内周面(第2内周面)に、負極リード10の長手方向の端面が当接している。これにより、フレーム9が負極リード10にさらにY方向において係合した状態とされている。したがって、負極リード10に係合させたフレーム9に外力が作用した場合、フレーム9のY方向の位置移動が抑えられることになる。さらに、図5の矢印a、bで示した回転方向の移動をさらに効果的に抑えることができる。
【0047】
開口35の内周面35aからは、内向きに突出部36が突出している。突出部36に負極リード10の片面10b(すなわち、素電池2側の面10b)が当接している。これにより、フレーム9が負極リード10にX方向において係合した状態とされている。したがって、フレーム9に外力が作用した場合、フレーム9のZ方向の位置移動は抑えられることになる。さらに、図6の矢印c、dで示した回転方向の移動も抑えられることになる。
【0048】
また、図6に示すような開口35の突出部36と負極リード10とのZ方向における係合を行うために、X方向における負極リード10の幅寸法が、負極端子5の同方向の寸法よりの大きくなるように、負極リード10を形成することが好ましい。このように負極リード10および負極端子5を形成することで、両者の溶接による接合箇所において、負極リード10の両端縁を負極端子5よりもX方向外向きに突出させることができ、この突出した両端縁を開口35の突出部36と係合させることができる。また、絶縁性を有するフレーム9の突出部36が、突出した負極リード10の両端縁と、金属材料により形成される封口体4との間に介在して配置されるため、負極リード10が封口体4に接触することを確実に防止できる。
【0049】
図7は、図5のB−B線における断面図である。封口体4に、正極端子6が溶接により接合されている。フレーム9の係合部34には、開口40を形成しており、開口40におけるX方向に互いに対向する内周面40a(第1内周面)に、正極リード11の幅方向のそれぞれの端面11aが当接している。これにより、フレーム9が正極リード11にX方向において係合した状態とされている。
【0050】
前記の通り、正極リード11は、正極端子6に溶接により接合しており、図5に示したX方向、Y方向、Z方向のいずれにおいても、位置移動することはない。このことにより、正極リード11に係合させたフレーム9に外力が作用した場合、フレーム9のX方向の位置移動は抑えられることになる。さらに、図5の矢印a、bで示した回転方向の移動も抑えられることになる。
【0051】
また、開口40においては、X方向に対向するそれぞれの内周面40aの他にも、Y方向に対向するそれぞれの内周面(第2内周面)に、正極リード11の長手方向の端面が当接している。これにより、フレーム9が正極リード11にさらにY方向において係合した状態とされている。したがって、正極リード11に係合させたフレーム9に外力が作用した場合、フレーム9のY方向の位置移動が抑えられることになる。さらに、図5の矢印a、bで示した回転方向の移動をさらに効果的に抑えることができる。
【0052】
また、係合部34には、図1に示した規制面41も含んでいる。規制面41は、正極リード11の一部の台座となる平面部である。図3および図5等に示すように、開口40を貫通して配置された正極リード11における一方の端部が、段上に折り曲げられるとともに、開口40の上面側の周縁の一部に形成された規制面41上に、この正極リード11の端部が重ねて配置されている。これにより正極リード11の当該端部と、規制面41とがZ方向において係合された状態となっている。このことにより、フレーム9に外力が作用した場合、フレーム9のZ方向の位置移動は抑えられることになる。さらに、図7の矢印c、dで示した回転方向の移動も抑えられることになる。
【0053】
特に、図7に示すように、X方向における正極リード11の幅寸法を、同方向における正極端子の幅寸法よりも大きく設定できないような場合にあっては、このような規制面41を用いることで、Z方向においてフレーム9と正極リード11とを確実に係合させることができる。
【0054】
また、図3に示すように、規制面41上に正極リード11を配置させた状態にて、さらに正極リード11上にリード17を重ねて配置させることで、リード17と正極リード11との重ね合わせ箇所をスポット溶接により容易に接合することができる。また、このスポット溶接に際には、規制面41が、両リード11、17を受ける台座として機能させることができる。
【0055】
なお、図7では内周面40aに、図6の突出部36に相当する形状を設けていないが、設けた仕様としてもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、素電池2の負極端子5および正極端子6に溶接された負極リード10および正極リード11に対して、フレーム9を係合させることで、フレーム9を固定するような構造が採用されている。このような観点からは、負極リード10および正極リード11では、必要な剛性を確保できるようにその材質や厚みなどを設定することが望ましい。例えば、リード材料としてニッケルが用いられるような場合にあっては、その厚みを0.15mm〜0.2mm程度へと従来のものよりも増加させておくことが好ましい。
【0057】
ここで、図2に示したように、電池パック1の完成品状態では、素電池2の上部には外装カバー18が取り付けられている。外装カバー18内にフレーム9が収納されており、外装カバー18はフレーム9に取り付けられている。このため、外装カバー18に、外力により捻りであるツイストTや曲げMが作用した場合、外装カバー18が素電池2から分離するように力が作用する。この場合、外装カバー18に固定されたフレーム9も一体になって変位しようとする。
【0058】
一方、前記の通り、フレーム9は、図5の矢印a、bで示した回転方向の移動が抑えられている。このため、外装カバー18に、図2に示したツイストTが作用しても、外装カバー18の変位は抑えられることになる。
【0059】
次に、図2において、外装カバー18に、曲げMが作用した場合は、外装カバー18には、外装カバー18を素電池2の上部から浮き上がらせる力が作用することになる。この場合、外装カバー18に固定されたフレーム9も一体になって変位しようとする。
【0060】
一方、前記の通り、フレーム9は、図6、7の矢印c、dで示した回転方向の移動が抑えられている。このため、外装カバー18に、図2に示した曲げMが作用しても、外装カバー18の変位は抑えられることになる。
【0061】
以上、外装カバー18の変位が抑えられることについて、図2の例で説明したが、図4のように樹脂モールド30を一体成形した場合であっても同様である。すなわち、樹脂モールド30に外力が作用しても、樹脂モールド30として一体化されているフレーム9の移動が抑えられているため、樹脂モールド30の変位は抑えられることになる。
【0062】
したがって、本実施の形態の構成は、外装カバー18に、ツイストTや曲げMが作用しても、外装カバー18や樹脂モールド30の変位は抑えられ、外装部の機械的強度の信頼性を確保することができる。また、機械的強度の確保のために、専用部品を追加する必要はない。このため、部品点数や製造工数を増加させることはなく、コスト上昇を抑えることができる。
【0063】
さらに、素電池2についても、加工や専用部品の追加の必要がなく、素電池2は、他機種との共用化を図ることができ、このこともコスト面で有利になる。
【0064】
図8は、フレーム9、負極リード10及び正極リード11を示す斜視図である。フレーム9、負極リード10及び正極リード11は、図8の状態では、それぞれ独立した別部品として取り扱うことができる。この場合、図1の例では、フレーム9を封口体4に、両面テープ8により取り付けた後に、図5のように、フレーム9の係合部33、34に、負極リード10及び正極リード11を係合させることになる。
【0065】
具体的には、封口体4の負極端子5および正極端子6が、フレーム9の開口35、40内に位置されるように、フレーム9を封口体4に対して位置決めして、フレーム9を封口体4に、両面テープ8にて取り付ける。その後、フレーム9の開口35、40内に嵌め合うように、負極リード10および正極リード11を配置することで、負極端子5および正極端子6に対して、適切な位置に負極リード10および正極リード11を配置することができる。この状態において、負極リード10および正極リード11の上面側からスポット溶接を行うことで、負極端子5に負極リード10を接合するとともに、正極端子6に正極リード11を接合して、フレーム9をそれぞれのリード10、11に確実に係合させることができる。したがって、電池パック1の組み立て作業をより効率的に行うことができ、生産性を向上させることもできる。
【0066】
一方、フレーム9に、あらかじめ負極リード10及び正極リード11を一体化させておいてもよい。このような一体化は、インサート成形が適している。
【0067】
図9は、インサート成形したフレーム9を示す斜視図である。図9のフレーム9には、負極リード10及び正極リード11を、インサート成形により接合している。より具体的には、金型内にあらかじめ負極リード10及び正極リード11を挿入しておき、金型内に樹脂を注入することにより、フレーム9と、負極リード10及び正極リード11とを一体にした成形品が得られる。
【0068】
図9に示したフレーム9を用いれば、電池パックの組立工程において、フレーム9に負極リード10及び正極リード11を係合させる工程を省くことができる。
【0069】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2に係る電池パックについて説明する。実施の形態1では、素電池2の端子部が2個であったのに対し、本実施の形態では3個になっている。これに伴い、フレームの構造を変更し、リードの個数も1個増加させている。これ以外の構成は、実施の形態1と同様である。このため、実施の形態1と同等の構成については、同一番号を付して説明は省略する。
【0070】
図10は、実施の形態2に係る電池パック51において、付属品の一部の分解斜視図を示している。本図の図示は、リードを素電池52に接合するまでの部品を図示している。リードを素電池52に接合した後の付属部品の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるので、説明は省略する。
【0071】
封口体4には、負極端子5及び正極端子6に加えて、第3の端子45を設けている。第3の端子45は、正極、負極のいずれであってもよい。これに伴い、フレーム46には、係合部33、34に加え、第3の係合部47を形成している。さらに、負極リード10及び正極リード11に加えて、第3のリード48を設けている。フレーム46は、両面テープ8を介し封口体4に取り付けられる。
【0072】
図11は、図10の状態から、負極リード10及び正極リード11に加え、第3のリード48を素電池52に溶接した状態を示す斜視図である。フレーム46に形成した係合部33に負極リード10を係合させ、係合部34に正極リード11を係合させている。さらに、第3のリード48を第3の係合部47に係合させている。
【0073】
図11の状態では、負極リード10は、素電池52の負極端子5に溶接により接合しており、正極リード11は素電池52の正極端子6に溶接により接合している。さらに、第3のリード48は第3の端子45に溶接により接合している。
【0074】
図12は、図11のC−C線における断面図である。図12に示した断面構造は、図6に示した負極端子5近傍の断面構造と同様である。このため、図12に示した断面構造においても、図6に示した断面構造と同様の効果が得られることになる。具体的には下記の通りである。
【0075】
封口体4には、第3の端子45が取り付けられている。この第3の端子45に第3のリード48を溶接により接合している。このための、第3のリード48は、図10に示した素電池2の厚み方向(X方向)、幅方向(Y方向)、高さ方向(Z方向)のいずれにおいても、位置移動することはない。
【0076】
フレーム46の係合部47には、開口53を形成しており、開口53の内周面53aに第3のリード48の端面48aが係合している。このことにより、フレーム46に外力が作用した場合、フレーム46のX方向の位置移動は抑えられることになる。さらに、図11の矢印a、bで示した回転方向の移動も抑えられることになる。
【0077】
開口53の内周面53aからは、突出部54が突出している。突出部54に第3のリード48の片面48bが係合している。このことにより、フレーム46に外力が作用した場合、フレーム46のZ方向の位置移動は抑えられることになる。さらに、図11の矢印c、dで示した回転方向の移動も抑えられることになる。
【0078】
したがって、実施の形態2では、実施の形態1に比べ、図12に示した断面構造が追加されていることにより、外装部の機械的強度の信頼性確保に一層有利になる。また、実施の形態2の構成では、図11に示したように、素電池52の付属部品の取付面の長手方向の一端に正極リード11を接合しており、他端に第3のリード48を接合している。すなわち、素電池52の幅方向の両端において、外装部の強度が高められており、この点においても、外装部の機械的強度の信頼性確保に一層有利になる。
【0079】
なお、実施の形態1、2においては、フレームに係合させたリードを素電池に接合すると、フレームは素電池に固定されることになる。このため、フレームと素電池との間の両面テープ8(図1、図10)は、フレームの仮り止め用として用いてもよいが、省いてもよい。
【0080】
また、実施の形態1では、フレームに係合させたリードを素電池に溶接により接合した部分が2箇所の例を示し、実施の形態2では3箇所の例を示したが、4箇所以上であってもよい。また、少なくとも1箇所あれば、外装部の機械的強度の信頼性確保に役立つことになる。
【0081】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0082】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明に係る電池パックによれば、簡単な構造で外装部の機械的強度の信頼性を確保することができるので、本発明に係る電池パックは、例えば携帯電話やモバイル機器に用いる電池パックとして有用である。
【符号の説明】
【0084】
1,51 電池パック
2,52 素電池
5 負極端子
6 正極端子
9,46 フレーム
10 負極リード
10a 負極リードの端部
10b 負極リードの片面
11 正極リード
11a 正極リードの端部
33,34 係合部
35,40,53 開口
35a,40a,53a 開口の内周面
36 突出部
45 第3の端子
47 第3の係合部
48 第3のリード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子部を有する素電池と、
素電池より電池パック外部へ電気を取り出すための付属部品と、
素電池の端子部および付属部品を覆う外装部材とを備え、
付属部品は、
素電池の端子部と溶接により接続され、端子部と付属部品とを電気的に接続する帯状の電気接続用リードと、
リードとの係合部を有し、外装部材を保持するフレームとを含む、電池パック。
【請求項2】
フレームにリードが貫通される開口が形成され、フレームの開口における互いに対向する第1内周面を係合部として、帯状のリードの幅方向の両端面が第1内周面に当接されて、リードの幅方向においてフレームがリードに係合される、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
フレームの開口における第1内周面と交差する第2内周面をさらに係合部として、帯状のリードの長手方向の端面が当接されて、リードの長手方向においてフレームがリードに係合される、請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
フレームの開口における互いに対向する第1内周面から内向きに突出する突出部がさらに係合部として形成され、帯状のリードにおける素電池側の面が突出部と当接されて、リードの厚み方向においてフレームがリードに係合される、請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
リードと素電池の端子部との溶接による接続箇所において、帯状のリードの幅方向における寸法が、素電池の端子部の同方向における寸法よりも大きく形成され、端子部よりも幅方向に突出されたリードの素電池側の面が突出部と係合される、請求項4に記載の電池パック。
【請求項6】
フレームにリードが貫通される開口が形成されるとともに、開口における互いに対向する内周面から内向きに突出する突出部がさらに係合部として形成され、帯状のリードにおける素電池側の面が突出部と当接されて、リードの厚み方向においてフレームがリードに係合される、請求項1に記載の電池パック。
【請求項7】
フレームの開口を貫通したリードにおける素電池側の面が重ねて配置される規制面が開口の周縁の少なくとも一部に形成され、規制面をさらに係合部として、リードの厚み方向においてフレームがリードに係合される、請求項2に記載の電池パック。
【請求項8】
フレームにリードが貫通される開口が形成され、フレームの開口を貫通したリードにおける素電池側の面が重ねて配置される規制面が、開口の周縁の一部に形成され、規制面を係合部として、リードの厚み方向においてフレームがリードに係合される、請求項1に記載の電池パック。
【請求項9】
インサート成形によりフレームの係合部がリードと一体的に形成されている、請求項1に記載の電池パック。
【請求項10】
素電池は、縦方向高さ寸法および横方向長さ寸法に比して奥行き寸法が小さい扁平四角形状を有し、素電池の縦方向の端面を取付面として外装部材および付属部品が取り付けられ、帯状のリードの幅方向が奥行き方向、厚み方向が縦方向である、請求項4に記載の電池パック。
【請求項11】
素電池の取付面における横方向の両端部それぞれに端子部が設けられ、それぞれの端子部に対応するように複数の係合部がフレームに設けられている、請求項10に記載の電池パック。
【請求項12】
端子部を有する素電池と、
素電池より電池パック外部へ電気を取り出すための付属部品と、
素電池の端子部および付属部品を覆う外装部材とを備え、
付属部品は、
素電池の端子部と溶接により接続され、端子部と付属部品とを電気的に接続する帯状の電気接続用リードと、
リードとの係合部を有し、外装部材を保持するフレームとを含み、
フレームにリードが貫通される開口と、開口の内周面から内向きに突出される突出部とが形成され、
フレームの開口における互いに対向する内周面を係合部として、帯状のリードの幅方向の両端面が内周面に当接されて、リードの幅方向においてフレームがリードに係合されるとともに、
リードと素電池の端子部との溶接による接続箇所において、帯状のリードの幅方向における寸法が、素電池の端子部の同方向における寸法よりも大きく形成され、端子部よりも幅方向に突出されたリードの素電池側の面が突出部と係合される、電池パック。
【請求項13】
素電池の一端面に形成された端子部がフレームの開口内に位置されるように、フレームを素電池に対して位置決めし、
フレームの開口における内周面と帯状の電気接続用リードの幅方向の端面とが当接するようにリードを配置することで、開口より露出された端子部上にリードを配置し、
リードと端子部とを溶接することで、帯状のリードにおける少なくとも幅方向においてフレームを固定し、
その後、端子部、リード、およびフレームを覆うように外装部材をフレームに取り付ける、電池パックの製造方法。
【請求項14】
フレームの開口における内周面と、帯状のリードの幅方向および長手方向の端面とが当接するように、開口より露出された端子部上にリードを配置して、リードと端子部とを溶接することで、帯状のリードにおける幅方向および長手方向においてフレームを固定する、請求項13に記載の電池パックの製造方法。
【請求項15】
フレームの開口における内周面と帯状のリードの幅方向および長手方向の端面とが当接するとともに、フレームの開口の内周面から内向きに突出する突出部とリードの素電池側の面とをさらに当接させるように、開口より露出された端子部上にリードを配置して、リードと端子部とを溶接することで、帯状のリードにおける幅方向、長手方向、および厚み方向においてフレームを固定する、請求項14に記載の電池パックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−219035(P2010−219035A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35045(P2010−35045)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】