説明

電池パック及び電池パックのモールド部の再成形方法

【課題】モールド部に成形不良が生じた場合に廃棄することなく、合格品として再生することができ、製品の歩留りが向上し、資源が有効に利用され得る電池パック及び電池パックのモールド部の再成形方法を提供する。
【解決手段】電池パック1は、電池2の一側面に保護回路基板7を配し、端子7a及び検査端子7aが露出する状態で、前記一側面及び保護回路基板7を樹脂モールドしてなる。モールド部12は、端子窓12aと、保護回路基板7の四側面に対向する部分に周方向に略連続的に設けられた切り込み部12bと、切り込み部12bから剥離される剥離部12cと、剥離部12cの剥離後に電池2側に残存する残存部12dとを備えている。成形不良が生じた場合、剥離部12cを剥離し、残存部12dが付された電池2を金型内に再度配置して剥離部を再成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略直方体状等の多面体状をなす電池の一面に対向して端子基板を配し、端子基板の端子が露出する状態で、前記一面及び端子基板を樹脂モールドしてなる電池パック及び電池パックのモールド部の再成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ,モバイルコンピュータ,携帯電話機等の携帯電子機器の電源としては、円筒状又は直方体状をなし、充放電可能な例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池が主として用いられている。リチウムイオン二次電池(以下、電池という)の一例として、正極板及び負極板を、セパレータを介して巻回した電極群、並びに非水電解質を、Al又はAl合金製であり、略直方体状をなすケースに収納して構成されたものが挙げられる。
【0003】
前記電池の一側面に、過充電及び過放電を防止するための保護回路、及び電池から外部へ電力を取り出し、又は外部から電力を取り込むための端子を有する保護回路基板が配されて電池コアが構成される。保護回路基板と電池とはリードにより電気的に接続されている。
【0004】
前記電池コアの四側面を、絶縁性を有する例えば合成樹脂製の外装枠で覆う、又は電池コアを合成樹脂製の外装ケースに収納する等し、この電池コアをラベルで覆うことにより電池パックが得られる。
【0005】
また、電池の蓋部に、保護回路基板と保護素子、及びこれらを接続する配線部品を集約配置した後、保護回路基板の外面に設けられた入出力端子が露出する状態で保護回路基板及び蓋部をホットメルトモールディング(HMM)してなる電池パック(HMMパック)も知られている(例えば特許文献1)。また、特許文献2には、金型内に保護回路基板をしっかりと位置決めし、保持した状態で樹脂モールドして、パック電池を製造する方法について開示されている。
【0006】
図19は従来の電池パック(HMMパック)24を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
電池パック24は、電池2の蓋部4(図20参照)の外側に、4つの端子7a及び2つの検査端子7bを有する保護回路基板(端子基板)7を配し、端子7aの表面が端子窓32aから露出し、検査端子7bの表面が端子窓(図示せず)から露出する状態で、保護回路基板7等を合成樹脂製のモールド部32により封止することにより構成されている。
【0007】
図20に、保護回路基板7が配された電池2を樹脂モールドする方法を示す。金型19は上側金型19a、下側金型19b、及び補助金型19cからなる。図20の(a)は、保護回路基板7が配された電池2が上側金型19a及び下側金型19bの内部に収納された状態を示す正面図、(b)は下側金型19b及び補助金型19cに電池2が収納された状態を示す平面図、(c)は上側金型19aがセットされた場合の(b)のc−c線断面図である。
【0008】
電池2の一面が開口した略直方体状をなすAl又はAl合金製のケース3には、銅集電体に負極合剤を塗布してなる負極板、及びAl集電体に正極合剤を塗布してなる正極板がセパレータを介して巻回された扁平巻状の電極群、並びに非水電解質(図示せず)が収容されている。そして、(b)に示すように、ケース3の開口は、略矩形状をなすAl又はAl合金製の蓋部4により閉塞されている。
【0009】
蓋部4の中央部には、平板状の頭部及び円筒状の脚部を有し、断面視がT字状をなす負極端子5が、該負極端子5の表面を除いて、合成樹脂製であり、絶縁性を有するガスケット(図示せず)に包囲された状態で、蓋部4を貫通するように設けられている。負極端子5は、Ni材又はNiめっきを施した鋼材からなる。電池2は、ケース3、及び蓋部4の負極端子5が設けられている部分以外の部分が正極(端子)となる。
【0010】
蓋部4には、保護回路基板7が配されている。保護回路基板7は、電池2と対向する面に、電池2の過充電又は過放電等を防止するための保護回路を備えている(図示せず)。そして、保護回路基板7の外面には、外部へ電力を取り出し、また逆に充電のために外部から電力を取り込むための正極端子及び負極端子、温度端子、充電制御端子である上述の端子7a,7a,7a,7aが金めっきにより設けられている。
【0011】
保護回路基板7のマイナス側の接続端子7dは、リード8及びPTC(Positive Temperature Coefficient)素子等の保護素子9を介し負極端子5と接続されており、プラス側の接続端子7cは、リード10及び蓋部4の一部分を介し前記電極群の正極板と接続されている。
【0012】
以上のように保護回路基板7等が配された電池2は金型19にセットされ、ランナー19dより、例えばポリアミド樹脂等の合成樹脂を略220℃に加温し、溶融させたものが流入され、ゲートからキャビティに充填されて固化されることにより、端子7a及び検査端子7bが端子窓32a等から露出した状態で、負極端子5、保護素子9、リード8,10、及び保護回路基板7等を封止したモールド部32が成形される。
【0013】
前記合成樹脂の充填時に、樹脂温度及び充填圧力が低い、並びに樹脂の流速が遅い等の不具合が発生した場合には成形不良が生じる。
図21は成形不良を示す図である。
(a)は、端子窓32aの窓枠に、樹脂不足により幅が細くなった幅狭部32f,32fが形成された状態を示す平面図である。
(b)は、保護回路基板7の外面にウエルド32gが生じた状態を示す平面図である。
(c)は、端子7aの外面に樹脂が被って樹脂被覆部32hが形成された状態を示す平面図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−315483号公報
【特許文献2】特開2003−229105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上のような成形不良が発生したHMMパックは、補修することができず、リパックが不可能であるため廃棄処分となっていた。
【0016】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、モールド部に成形不良が生じた場合にモールド部の一部分を容易に剥離して再成形することができるので、廃棄することなく、良品として再生することができ、製品の歩留りが向上して資源が有効に利用され得る電池パック、及び電池パックのモールド部の再成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1発明に係る電池パックは、多面体状をなす電池と、該電池の一面に対向して配され、該電池へ電力を入出力するための端子を有する端子基板と、前記端子が露出する状態で、前記一面及び端子基板を覆う合成樹脂製のモールド部とを備える電池パックにおいて、前記モールド部に、切り込み部が設けられていることを特徴とする電池パック。
【0018】
本発明においては、モールド部の成形時に、端子窓の窓枠等に合成樹脂の不足部分が生じたり、端子基板の外面にウエルドが生じたり、端子の外面に合成樹脂が被ったりする等の不良が発生した場合に、前記切り込み部からモールド部の一部分を剥離して、該一部分を再成形することができる。
【0019】
第2発明に係る電池パックは、第1発明において、前記切り込み部は、前記端子基板の側面に対向する部分に連続的又は断続的に設けられていることを特徴とする。
【0020】
モールド部の成形不良は、端子基板が配されている部分で生じやすい。また、モールド部の端子基板の側面に対向する部分は幅が狭くなっている(合成樹脂量が少ない)ので、本発明においては、モールド部の成形不良が生じやすい部分が切り込み部から容易に剥離され得る。従って、前記部分を再成形して、電池パックの合格品を良好に製造することができる。
【0021】
第3発明に係る電池パックは、第2発明において、前記モールド部は、前記電池と前記モールド部との接触面の端部に、前記モールド部の一部分を剥離する場合に、前記電池側に残存して剥離の起点となる板状の剥離基点部を備え、前記モールド部に、前記剥離基点部の平面の端部から、前記モールド部の突出方向外側に向けて、斜めに延びる切り込み部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、剥離基点部、及び斜めに延びる切り込み部が設けられているので、成形時にキャビティに合成樹脂材料を導くゲートの位置が電池寄りである場合等であっても、ゲートを含んだ状態で、モールド部の一部分を剥離することができる。従って、前記一部分が確実に再成形され得る。
【0023】
第4発明に係る電池パックは、第2発明において、前記電池の一面に隣接する面に、端面が前記モールド部の端部側に突出する状態で合成樹脂製のカバー部が設けられ、前記モールド部に、前記端面の端部から、前記モールド部の突出方向外側に向けて、斜めに延びる切り込み部が設けられていることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、成形時にキャビティに合成樹脂材料を導くゲートの位置が電池寄りである場合等であっても、前記カバー部の端面を剥離の起点とし、ゲートを含んだ状態で、モールド部の一部分を剥離することができる。従って、前記一部分が確実に再成形され得る。
【0025】
第5発明に係る電池パックのモールド部の再成形方法は、第1乃至第4発明のいずれかの電池パックのモールド部の再成形方法であって、前記モールド部に不良が発生した場合に、前記切り込み部から前記モールド部の一部分を剥離する工程と、前記一部分が剥離された電池パックを金型内に配置し、前記一部分に対応するキャビティ部分に溶融した前記合成樹脂を注入し、モールド部を再成形する工程とを有することを特徴とする。
【0026】
本発明においては、モールド部の成形時に不良が発生した場合に、切り込み部からモールド部の一部分を剥離し、該一部分を再成形することができる。従って、モールド部の成形不良が生じた電池パックを廃棄することなく、良品として再生することができ、製品の歩留りが向上し、資源が有効に利用され得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、モールド部の一部分を容易に剥離して再成形することができるので、モールド部の成形不良が生じた場合に電池パックを廃棄することなく、良品として再生することができ、製品の歩留りが向上して、資源が有効に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電池パックを示す斜視図である。
【図2】(a)は本発明の実施の形態1に係る電池パックを示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】図2(b)のA部分の拡大図である。
【図4】(a)は本発明の実施の形態1に係るモールド部から剥離部を剥離した状態を示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】図4(b)のA部分の拡大図である。
【図6】(a)は本発明の実施の形態1に係るモールド部の剥離部を成形した状態を示す平面図であり、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図7】図6(b)のA部分の拡大図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る電池パックを示す一部正面図である。
【図9】(a)は本発明の実施の形態3に係る電池パックを示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図10】図9(b)のA部分の拡大図である。
【図11】(a)は本発明の実施の形態3に係る電池パックのモールド部から剥離部を剥離した状態を示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図12】図11(b)のA部分の拡大図である。
【図13】(a)は本発明の実施の形態3に係る電池パックのモールド部の剥離部を成形した状態を示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図14】図13(b)のA部分の拡大図である。
【図15】(a)は本発明の実施の形態4に係る電池パックを示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図16】(a)は本発明の実施の形態4に係る電池パックのモールド部から剥離部を剥離した状態を示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図17】(a)は本発明の実施の形態5に係る電池パックを示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図18】本発明の実施の形態5に係る電池パックのモールド部から剥離部を剥離した状態を示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図19】(a)は従来の電池パックを示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図20】(a)は、保護回路基板が配された電池が上側金型及び下側金型の内部に収納された状態を示す正面図、(b)は下側金型及び補助金型に電池が収納された状態を示す平面図、(c)は上側金型がセットされた場合の(b)のc−c線断面図である。
【図21】(a)は端子窓の窓枠に、樹脂不足により幅が細くなった幅狭部が形成された状態を示す平面図、(b)は、保護回路基板の外面にウエルド生じた状態を示す平面図、(c)は、端子の外面に樹脂が被って樹脂被覆部が形成された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る電池パック1を示す斜視図、図2(a)は電池パック1を示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図であり、図3は図2(b)のA部分の拡大図である。図2中、図19と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
そして、電池パック1のリチウムイオン二次電池としての電池2の蓋部に、保護回路基板7と保護素子、及びこれらを接続する配線部品を集約配置する構成は上述の電池パック24の構成と同一である。なお、図2及び図3において、ラベル20は省略してある。
【0030】
電池パック1は、電池2の蓋部の外側に、正極端子、負極端子、温度端子、充電制御端子である端子7a,7a,7a,7a、及び検査端子7b,7bを有する保護回路基板7を配し、端子7a,7a,7a,7a、及び検査端子7b,7bの表面が端子窓12a,12a,12a,12a等から露出する状態で保護回路基板7等を合成樹脂製のモールド部12により封止することにより構成されている。モールド部12が設けられた電池2の二平面及び二側面は合成樹脂製のラベル20により覆われている。
【0031】
電池パック1のモールド部12は、電池パック24のモールド部32と同様にして成形される。
本実施の形態のモールド部12は、上述の端子窓12aと、保護回路基板7の4つの側面に対向する部分に周方向に略連続的に設けられ、断面視が横向きの略V字状をなす切り込み部(スリット)12b(図3参照)と、該切り込み部12bから剥離され、モールド部12の上側部分に対応する剥離部12cと、該剥離部12cの剥離後に電池2側に残存する残存部12dとを備えている。
【0032】
以下に、電池パック1のモールド部12の再成形方法について説明する。
保護回路基板7等が配された電池2を金型内に配置し、例えばポリアミド樹脂等の合成樹脂を略220℃に加温し、溶融させたものを、ランナーを介しゲート19eより流入させ、キャビティに充填して固化させることにより、端子7a及び検査端子7bが露出した状態で、負極端子、保護素子、リード、及び保護回路基板7等を封止したモールド部12が成形される。なお、本実施の形態の金型は、前記切り込み部12bを形成するための凸部が設けられていること以外は、上述の金型19と同様の構成を有する。
【0033】
モールド部12の成形時に、上述の幅狭部32fと同様に端子窓12aの窓枠に、樹脂不足により幅が細くなった幅狭部が形成される、保護回路基板7の外面に前記ウエルド32gと同様のウエルドが生じる、端子7aの外面に樹脂が被って前記樹脂被覆部32hと同様の樹脂被覆部が形成される等の不良が生じた場合、剥離部12cの端部を掴んで引っ張って、切り込み部12bから剥離部12cをゲート19eとともに剥離する。図2(a)に示すように、モールド部12の保護回路基板7に対向する部分は幅が狭くなっているので、切り込み部12bから剥離部12cは容易に剥離される。
【0034】
図4はモールド部12から剥離部12cを剥離した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図5は図4(b)のA部分の拡大図である。図4及び図5に示すように、剥離部12cが剥離されたので、保護回路基板7が露出している。剥離部12cが剥離されることにより、上述の幅狭部及び樹脂被覆部が形成されていた場合、この不良部分も取り除かれることになる。
【0035】
次に、剥離部12cが剥離された電池2を前記金型内に配置し、剥離部12cに対応するキャビティ部分にゲート19eより前記合成樹脂を流入させて充填させ、新たに剥離部12eを成形する。不良部分としてウエルドが形成されていた場合には、該不良部分に合成樹脂が充填されて、ウエルドが消失することになる。
図6は剥離部12eを成形した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図7は図6(b)のA部分の拡大図である。図6及び図7に示すように、残存部12dに剥離部12eが連設され、新たに切り込み部12bが設けられている。
【0036】
以上のように、本実施の形態においては、モールド部12の成形時に不良が発生した場合に、切り込み部12bから剥離部12cをゲート19eとともに剥離し、残存部12dが付された電池2を再度金型内に配置して、ゲート19eから合成樹脂を注入するので、剥離部12eを容易に確実に再成形することができる。従って、モールド部12の成形不良が生じた電池パックを廃棄することなく、良品(合格品)として再生することができ(リパックすることができ)、製品の歩留りが向上して資源が有効に利用され得る。
なお、本実施の形態においては、金型成形により切り込み部12bが設けられる場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、モールド部12の成形後に、カッター等によって切り込み部12bを設けることにしてもよい。但し、金型成形により切り込み部12bを設ける方が、切り込み部12bの設置位置が一定し、精度が良好であるので好ましい。
【0037】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る電池パック11は、実施の形態1に係る電池パック1と同様の構成を有し、切り込み部12fが保護回路基板7の4つの側面に対向する部分に断続的に(ミシン目状に)設けられている点が実施の形態1に係る電池パック1の切り込み部12bと異なる。図中、図2と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
図8は、電池パック11を示す一部正面図である。
上述したように、切り込み部12fは、保護回路基板7の側面に対向して、周方向にミシン目状に設けられている。
【0039】
本実施の形態においては、実施の形態1と同様に、モールド部12の成形時に不良が発生した場合に、切り込み部12fからモールド部12の剥離部12cをゲートとともに剥離し、残存部12dが付された電池2を再度金型内に配置して、ゲートから合成樹脂を注入することにより剥離部を容易に確実に再成形することができる。従って、モールド部12の成形不良が生じた電池パックを廃棄することなく、良品として再生することができ、製品の歩留りが向上して資源が有効に利用され得る。
【0040】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る電池パック21は、実施の形態1に係る電池パック1と同様の構成を有し、剥離部13cの形状が電池パック1の剥離部12cの形状と異なる点、並びに剥離起点部13e及び切り込み部13fが設けられている点が実施の形態1に係る電池パック1と異なる。
図9(a)は電池パック21を示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図であり、図10は図9(b)のA部分の拡大図である。図9及び図10中、図2及び図3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
本実施の形態のモールド部13は、端子窓13a、切り込み部13b、剥離部13c、残存部13d、板状の剥離起点部13e、及び切り込み部13fを備えている。剥離起点部13eは、電池2とモールド部13との接触面の端部に設けられており、剥離部13cを剥離する場合に、電池2側に残存して剥離の起点となる。そして、切り込み部13bは、保護回路基板7の4つの側面に対向する部分に周方向に略連続的に設けられており、切り込み部13f(図10参照)は、剥離基点部13eの平面の端部から、モールド部13の突出方向外側に向けて、斜めに延びるように設けられている。
【0042】
以下に、電池パック21のモールド部13の再成形方法について説明する。
保護回路基板7等が配された電池2を金型内に配置し、例えばポリアミド樹脂等の合成樹脂を略220℃に加温し、溶融させたものを、ランナーを介しゲート19eより流入させ、キャビティに充填して固化させることにより、端子7a及び検査端子7bが露出した状態で、負極端子、保護素子、リード、及び保護回路基板7等を封止したモールド部13が成形される。なお、本実施の形態の金型は、切り込み部13b、切り込み部13f、及び剥離起点部13eが形成されるように構成されていること、ゲート19eが電池2寄りに配されていること以外は、上述の金型19と同様の構成を有する。
【0043】
モールド部13の成形時に、上述の幅狭部、ウエルド、及び樹脂被覆部等の不良部分が発生した場合に、剥離部13cの剥離起点部13eの上側部分を掴んで引っ張り、切り込み部13f,13bから切り離すことにより、剥離起点部13eとの接触面を起点として、剥離部13cはゲート19eとともに容易に剥離される。剥離部13cが剥離されることにより、上述の幅狭部及び樹脂被覆部が形成されていた場合、この不良部分も取り除かれることになる。
【0044】
図11はモールド部13から剥離部13cを剥離した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図12は図11(b)のA部分の拡大図である。図11及び図12に示すように、剥離部13cが剥離されたので、保護回路基板7が露出している。そして、剥離部13cが剥離されるので、上述の幅狭部及び樹脂被覆部が形成された不良部分も取り除かれることになる。
【0045】
次に、剥離部13cが剥離された電池2を前記金型内に配置し、剥離部13cに対応するキャビティ部分にゲート19eより前記合成樹脂を流入させて充填させ、新たに剥離部13gを成形する。不良部分としてウエルドが形成されていた場合には、該不良部分に合成樹脂が充填されて、ウエルドが消失することになる。
図13は剥離部13gを成形した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図14は図13(b)のA部分の拡大図である。図13及び図14に示すように、残存部13dに剥離部13gが連設され、新たに切り込み部13b,13fが設けられている。
【0046】
本実施の形態においては、剥離基点部13e、及び斜めに延びる切り込み部13fが設けられているので、ゲート19eの位置が電池2寄りである場合等であっても、モールド部13の成形時に不良が発生したときに、ゲート19eを含んだ状態で、切り込み部13b,13fから剥離部13cを容易に剥離することができる。従って、電池パック21を廃棄することなく、容易に確実に良品として再生することができ、製品の歩留りが向上し、資源が有効に利用され得る。
【0047】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4に係る電池パック22は、実施の形態1に係る電池パック1と同様の構成を有し、モールド部14が略コの字状をなす点が実施の形態1に係る電池パック1のモールド部12と異なる。
図15(a)は電池パック22を示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図15中、図2と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
本実施の形態の電池パック22のモールド部14は、上述したように、保護回路基板7が配されている電池2の側面に隣接する二側面も覆うように、略コの字状をなしている。
前記二側面のうちの一方の側面に負極端子17が設けられており、該負極端子17は保護回路基板7のマイナス側の接続端子とリード(図示せず)により接続されている。
モールド部14は、端子窓14aと、保護回路基板7の4つの側面に対向する部分に周方向に略連続的に設けられた切り込み部14bと、該切り込み部14bから剥離される剥離部14cと、該剥離部14cの剥離後に電池2側に残存する残存部14dとを備えている。
【0049】
本実施の形態においては、モールド部14の成形時に、上述の幅狭部、ウエルド、及び樹脂被覆部等の不良部分が発生した場合に、剥離部14cの角側端部を掴んで引っ張り、切り込み部14bから切り離すことにより、剥離部14cはゲートとともに容易に剥離され得る。剥離部14cが剥離されることにより、上述の幅狭部及び樹脂被覆部が形成されていた場合、この不良部分も取り除かれることになる。
【0050】
図16はモールド部14から剥離部14cを剥離した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図16に示すように、剥離部14cが剥離されたので、保護回路基板7が露出している。
【0051】
そして、剥離部14cが剥離された電池2を金型内に配置し、剥離部14cに対応するキャビティ部分にゲートより前記合成樹脂を流入させて充填させ、新たに剥離部を成形する。不良部分としてウエルドが形成されていた場合には、該不良部分に合成樹脂が充填されて、ウエルドが消失することになる。
【0052】
本実施の形態においては、実施の形態1と同様に、モールド部14の成形時に不良が発生した場合に、切り込み部14bから剥離部14cをゲートとともに剥離し、残存部14dを付した電池2を再度金型内に配置して、ゲートから合成樹脂を注入することにより剥離部を再成形することができる。従って、電池パック22を廃棄することなく、良品として容易に確実に再生することができ、製品の歩留りが向上し、資源が有効に利用され得る。
【0053】
実施の形態5.
本発明の実施の形態5に係る電池パック23は、実施の形態1に係る電池パック1と同様の構成を有し、モールド部15が設けられている電池2の側面に隣接する二側面を覆う合成樹脂製のカバー部16,16を備える点が実施の形態1に係る電池パック1と異なる。
図17(a)は電池パック23を示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図17中、図2と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
前記カバー部16,16は、モールド部15の両端部にそれぞれ端面が突出する状態で、前記二側面に設けられている。
前記二側面のうちの一方の側面に負極端子17が設けられており、該負極端子17は保護回路基板7のマイナス側の接続端子とリード(図示せず)により接続されている。
【0055】
モールド部15は、端子窓15a、切り込み部15b、剥離部15c、残存部15d、及び切り込み部15eを備えている。切り込み部15bは、保護回路基板7の4つの側面に対向する部分に周方向に略連続的に設けられており、切り込み部15eは、剥離部15cの、前記カバー部16の端面との接触面の端部からモールド部15の突出方向外側に向けて、斜めに延びるように設けられている。
【0056】
モールド部15の成形時に、上述の幅狭部、ウエルド、及び樹脂被覆部等の不良部分が発生した場合に、剥離部15cの前記接触面の上側部分を掴んで引っ張り、切り込み部15e,15bから切り離すことにより、剥離部15cはゲートとともに容易に剥離される。上述の幅狭部及び樹脂被覆部が形成されていた場合、この不良部分も取り除かれる。
【0057】
図18はモールド部15から剥離部15cを剥離した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図18に示すように、剥離部15cが剥離されたので、保護回路基板7が露出している。
【0058】
そして、剥離部15cが剥離された電池2を金型内に配置し、剥離部15cに対応するキャビティ部分にゲートより前記合成樹脂を流入させて充填させ、新たに剥離部を成形する。不良部分としてウエルドが形成されていた場合には、該不良部分に合成樹脂が充填されて、ウエルドが消失することになる。
【0059】
本実施の形態においては、実施の形態3と同様に、モールド部15の成形時に不良が発生した場合に、切り込み部15b,15eから剥離部15cをゲートとともに剥離し、残存部15dを有する電池2を再度金型内に配置して、ゲートから合成樹脂を注入することにより剥離部を容易に確実に再成形することができる。従って、電池パック23を廃棄することなく、良品として再生することができ、製品の歩留りが向上して資源が有効に利用され得る。
【0060】
なお、前記実施の形態1乃至5においては、剥離部がゲートに対応する部分を含み、切り込み部から剥離部をゲートとともに剥離し、残存部が付された電池2を再度金型内に配置し、ゲートから合成樹脂を注入して剥離部を再成形する場合につき説明しているがこれに限定されるものではない。同一の金型を用いてモールド部を再成形する場合は剥離部がゲートに対応する部分を含み、切り込み部から剥離部をゲートとともに剥離する必要があるが、異なる金型を用いて再成形する場合は、剥離部がゲートに対応する部分を含む必要はない。また、異なる金型を用いて再成形する場合、切り込み部は設けず、切り込み部の跡部分を塞ぐように、剥離部に対応する部分を設けることにしてもよい。
【0061】
そして、前記実施の形態1乃至5においては、電池パック1,11,21,22,23が保護素子を備える場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、また、保護回路を実装した保護回路基板7を備える場合には限定されない。
さらに、電池2は平面視が略直方体状を有する場合には限定されず、蓋部の平面視が略正円状又は長円状等を有する電池であってもよい。
また、前記実施の形態3乃至5においては、切り込み部13b,14b,15bが保護回路基板7の側面の周方向に略連続的に設けられている場合につき説明しているがこれに限定されず、ミシン目状に設けられるものであってもよい。また、切り込み部の形状も略V字状に限定されるものではない。
【0062】
そして、前記実施の形態1乃至5においては、電池2がリチウムイオン二次電池である場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、Ni・水素二次電池、Ni・カドミウム二次電池等の他の二次電池、又は一次電池であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1、11、21、22、23 電池パック
2 電池
3 ケース
4 蓋部
5、17 負極端子
7 保護回路基板
7a 端子
7b 検査端子
7c、7d 接続端子
8、10 リード
12、13、14、15 モールド部
12a、13a、14a、15a 端子窓
12b、12f、13b、13f、14b、15b、15e 切り込み部
12c、12e、13c、13g、14c、15c 剥離部
12d、13d、14d、15d 残存部
13e 剥離起点部
16 カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面体状をなす電池と、該電池の一面に対向して配され、該電池へ電力を入出力するための端子を有する端子基板と、前記端子が露出する状態で、前記一面及び端子基板を覆う合成樹脂製のモールド部とを備える電池パックにおいて、
前記モールド部に、切り込み部が設けられていることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記切り込み部は、前記端子基板の側面に対向する部分に連続的又は断続的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記モールド部は、前記電池と前記モールド部との接触面の端部に、前記モールド部の一部分を剥離する場合に、前記電池側に残存して剥離の起点となる板状の剥離基点部を備え、
前記モールド部に、前記剥離基点部の平面の端部から、前記モールド部の突出方向外側に向けて、斜めに延びる切り込み部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記電池の一面に隣接する面に、端面が前記モールド部の端部側に突出する状態で合成樹脂製のカバー部が設けられ、
前記モールド部に、前記端面の端部から、前記モールド部の突出方向外側に向けて、斜めに延びる切り込み部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電池パック。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電池パックのモールド部の再成形方法であって、
前記モールド部に不良が発生した場合に、前記切り込み部から前記モールド部の一部分を剥離する工程と、
前記一部分が剥離された電池パックを金型内に配置し、前記一部分に対応するキャビティ部分に溶融した前記合成樹脂を注入し、モールド部を再成形する工程と
を有することを特徴とする電池パックのモールド部の再成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−60609(P2011−60609A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209673(P2009−209673)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(597176832)三洋ジーエスソフトエナジー株式会社 (94)
【Fターム(参考)】