説明

電池パック

【課題】 電池が一時的に高温化に曝された場合にも正常状態に復帰後は再使用でき、電池使用機器が高温度となった場合にも安全性を確保することができ、さらに電池電圧が低下した場合には、電池パック内の放電を停止させて劣化を防ぐことを可能とした電池パックを提供すること。
【解決手段】 二次電池2と保護回路により構成され、外部回路との接続端子3および4を有し、その保護回路は、放電用抵抗体82とバイメタルを有し該バイメタルにより周囲温度に依存して接点の開閉を行うサーマルプロテクタ40と、二次電池2の電圧に依存して放電用抵抗体82への通電を制御する制御回路9とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池とその保護手段から構成される電池パックに関するものであり、二次電池が高温となった場合に、異常な電池反応などを防止して安全を確保できる電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の高エネルギー密度の二次電池は、電池の劣化、あるいは電池の温度上昇等に対しても電池の安全性が確保されるように、充放電時に電池を保護する保護手段を一体として設けた電池パックとして実装され、電池使用機器に装着して用いられている。例えば、特許文献1に示されるように、電池に異常が生じた場合には、温度ヒューズの溶断によって電池パックを使用不能とすることが提案されている。
【0003】
また、特許文献2では、充電時に電池電圧が設定値よりも高い過充電状態が設定時間以上続いた場合に、温度ヒューズの加熱用の発熱抵抗体に通電して温度ヒューズを溶断し、電池パックを使用不能として過充電状態の継続によって危険な事態が発生することを防止することが提案されている。
【0004】
以上の保護手段は、過充電時に問題が生じた可能性がある電池を温度ヒューズの溶断によって使用不能とするものであり安全性は大きいが、電池が待機中または放電中に一時的に高温化に曝された場合にも使用不能となってしまい安全な状態に復帰しても使用できなかった。
【0005】
また、従来の電池パックでは、さまざまな分野で使用されている携帯電話等の電池使用機器が、暖房機器の近傍、あるいは自動車のダッシュボード等に放置されて高温度となった場合に安全性を確保することが出来なかった。
【0006】
上記の問題を解決するため本発明者らが未だ公開されていない特願2005−322318号において提案したサーマルプロテクタは、周囲が異常高温になったり電池が異常発熱すると、外部からの充放電を停止し、かつ電池パック内でサーマルプロテクタの放電用抵抗体を介して放電をすることで、電池を異常状態から安全状態に推移させることができる。また、セル電圧が低下し抵抗体への電流の供給量が小さくなり、かつ雰囲気温度・電池温度が設定値以下となると、再度使用が可能となる。
【0007】
上記サーマルプロテクタによる保護回路を設けた電池パックの一例を図2に示す。図2(a)は電池パックの構成を示す回路図、図2(b)、図2(c)はサーマルプロテクタの構造の一例を示す断面図であり、図2(a)、図2(b)は正常時の接続状態、図2(c)は異常時の接続状態を示す。
【0008】
図2(a)において、本電池パックは二次電池2と外部回路との接続端子3、4およびサーマルプロテクタ40を有し、サーマルプロテクタ40は、正常時、すなわちその作動温度以下のときは電池側端子31と出力側端子35を接続し、異常時、すなわちその作動温度以上のときは電池側端子31はサーマルプロテクタ内部の放電用抵抗体82に接続され二次電池2は放電用抵抗体82を通して放電される。
【0009】
図2(b)において、電池側端子31に接続された固定接点32にはバイメタルから構成されたバイメタル型可動片39の一端が接続され、正常時はバイメタル型可動片39の他端は出力側端子35の先端に設けた出力側接点34に接している。一方、作動温度以上の異常時には、図2(c)に示すようにバイメタル型可動片39は変形し、その他端は放電用抵抗体82の一端に設けた抵抗側接点37に接触する。
【0010】
【特許文献1】実開平6−57050号公報
【特許文献2】特許第3248851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述のサーマルプロテクタを単に保護回路とする電池パックは、放電により電池電圧が低下しても雰囲気温度が高い状態が継続している間は電池パック内での放電用抵抗体82を通した放電が停止せず、電池が深放電に陥ってしまい電池を劣化させてしまう可能性があった。
【0012】
そこで、本発明の課題は、電池が待機中または放電中に一時的に高温化に曝された場合にも正常状態に復帰後は再使用でき、携帯電話等の電池使用機器が、暖房機器の近傍、あるいは自動車のダッシュボード等に放置されて高温度となった場合にも安全性を確保することができることに加え、さらに電池電圧が低下した場合には、電池パック内の放電を停止させて劣化を防ぐことを可能とした電池パックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の電池パックは、二次電池と保護回路により構成された外部回路との接続端子を有する電池パックにおいて、前記保護回路は、放電用抵抗体とバイメタルを有し該バイメタルにより周囲温度に依存して接点の開閉を行うサーマルプロテクタと、前記二次電池の電圧に依存して前記放電用抵抗体への通電を制御する制御回路とから構成され、前記二次電池の温度が予め設定した温度以上に上昇した際に前記二次電池と前記接続端子との間の回路が遮断され、前記二次電池の温度が予め設定した温度以上に上昇しかつ前記二次電池の電圧が予め設定した電圧以上である場合に前記放電用抵抗体への通電回路が形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電池パックは、まず前記特願2005−322318号に記載の提案と同様、二次電池の温度が設定値以上に上昇した際に二次電池を出力回路から遮断するとともに、放電用抵抗体を通した二次電池の放電回路を形成するサーマルプロテクタを保護回路の一部として使用することにより、電池パックが一時的に高温度の環境に放置された場合に電池のエネルギーを放電用抵抗体によって放電させることができるので充電状態の電池が高温度に曝されたことによって生じる危険な状態を招くことがなく、二次電池や雰囲気の温度が低下した後には、再使用が可能となる。
【0015】
さらに、本発明では、先行発明と異なり、放電用抵抗体との接続を遮断する簡易的な制御回路を設けており、例え異常高温化であっても、電池電圧が設定値以下となった場合は電池パック内での放電を停止して電池が深放電状態になることを防ぐことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明による電池パックの一実施の形態を示す回路図である。図1(a)は、電池パックの温度が、サーマルプロテクタの作動温度以下の場合を説明する図であり、図1(b)は、電池パックの温度が、サーマルプロテクタの作動温度以上となった場合を説明する図である。
【0018】
本実施の形態の電池パックは、二次電池2と保護回路により構成され、外部回路との接続端子3および4を有し、その保護回路は、放電用抵抗体82とバイメタルを有し該バイメタルにより周囲温度に依存して接点の開閉を行うサーマルプロテクタ40と、二次電池2の電圧に依存して放電用抵抗体82への通電を制御する制御回路9とから構成されている。ここで、サーマルプロテクタ40は、図2に示したものと同様な構成である。また、二次電池2は、複数個接続されていてもよい。二次電池2の両端子間には、サーマルプロテクタ40と制御回路9からなる保護回路が接続されている。
【0019】
すなわち、二次電池2の負極側には、サーマルプロテクタ40の電池側端子31が接続され、出力側端子35は外部出力の接続端子4に接続されている。また、二次電池2の正極とサーマルプロテクタ40の抵抗側端子38の間には、サーマルプロテクタ40の動作時に二次電池2の電圧に依存して動作し、二次電池2の電圧が任意に設定された電圧以下となった場合には、二次電池2の正極とサーマルプロテクタ40の抵抗側端子38との間を遮断し、放電を停止する制御回路9が備えられている。
【0020】
制御回路9は、二次電池2に並列接続された2つの抵抗体11、12と、MOSFET10を備えている。MOSFET10のゲートは、抵抗体11と抵抗体12の間に配線され、2つの抵抗体の比率を調整することで、任意の二次電池2の電圧でMOSFET10のON(導通)/OFF(遮断)を制御することが可能である。
【0021】
制御回路9の抵抗体11および12は消費電流を考慮し、その抵抗値を設定する必要がある。例えば、二次電池2の電圧が4Vで両抵抗値の合計が10MΩであれば、消費電流も0.4μA程度となり、影響が小さい。
【0022】
サーマルプロテクタ40の動作は、図2と同様であり、電池パックの温度がサーマルプロテクタ40の作動温度よりも低い場合には、バイメタル型可動片39は、固定接点32と出力側接点34との間を接続して、二次電池2は充放電が可能な状態となる。
【0023】
電池パックの温度が上昇してあらかじめ設定した作動温度以上となった場合には、サーマルプロテクタ40のバイメタル型可動片39が変形することによって、出力側接点34との間の接続を遮断するとともに、固定接点32と抵抗側接点37を接続する。
【0024】
このとき、二次電池2の電圧が設定電圧以上であった場合、制御回路9内のMOSFET10が導通し、二次電池2の充電エネルギーは、サーマルプロテクタ40内の放電用抵抗体82を発熱させて消費される。放電用抵抗82への通電によって電池の充電エネルギーは減少し、同時に放電用抵抗体82は、バイメタル型可動片39と熱的な結合がされる距離に配置されているので、放電用抵抗体82の発熱によりバイメタル型可動片39が過熱されて作動状態が維持される。放電用抵抗体82には、炭素皮膜抵抗体、ニッケルクロム合金、鉄クロムアルミニウム合金等の金属材料抵抗体、炭化ケイ素等のセラミック系材料、正温度係数抵抗体(PTC)等を用いることができる。
【0025】
電池から放電用抵抗体82への放電電流の供給が続くと、二次電池2の電圧は低下する。設定した電圧以下になると、MOSFET10が遮断状態となり、放電が停止する。このとき、電池パックの温度がバイメタル型可動片39の作動温度以下まで低下していれば、通常状態へと復帰する。
【0026】
以上の説明では、本実施の形態の電池パックが充電器と切り離された場合について説明を行ったが、電池パックが充電器に接続され周囲温度の上昇によってサーマルプロテクタ40が作動した場合には、充電器から電池へ充電電流が供給されることはなく、充電器が接続されていない場合と同様に動作する。また、周囲温度がサーマルプロテクタ40の作動温度以下の場合でも、二次電池2の発熱がサーマルプロテクタ40に充分に伝わるように配置した場合には、過充電によって二次電池の温度が上昇した場合にサーマルプロテクタ40が作動して過充電を停止させるようにすることができる。更には、過充電状態の電池を放電して通常状態に戻すことができる。
【0027】
以上のように本発明の電池パックでは、電池が待機中または放電中に一時的に高温化に曝された場合にも正常状態に復帰後は再使用でき、携帯電話等の電池使用機器が、暖房機器の近傍、あるいは自動車のダッシュボード等に放置されて高温度となった場合にも安全性を確保することができることに加え、さらに電池電圧が低下した場合には、電池パック内の放電を停止させて劣化を防ぐことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による電池パックの一実施の形態を示す回路図。図1(a)は、電池パックの温度が、サーマルプロテクタの作動温度以下の場合の説明図、図1(b)は、電池パックの温度が、サーマルプロテクタの作動温度以上となった場合の説明図。
【図2】サーマルプロテクタによる保護回路を設けた電池パックの一例を示す図。図2(a)は電池パックを示す回路図、図2(b)、図2(c)はサーマルプロテクタの構成の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0029】
2 二次電池
3、4 接続端子
8 制御回路側端子
9 制御回路
10 MOSFET
11、12 抵抗体
31 電池側端子
32 固定接点
34 出力側接点
35 出力側端子
37 抵抗側接点
38 抵抗側端子
39 バイメタル型可動片
40 サーマルプロテクタ
82 放電用抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と保護回路により構成された外部回路との接続端子を有する電池パックにおいて、前記保護回路は、放電用抵抗体とバイメタルを有し該バイメタルにより周囲温度に依存して接点の開閉を行うサーマルプロテクタと、前記二次電池の電圧に依存して前記放電用抵抗体への通電を制御する制御回路とから構成され、前記二次電池の温度が予め設定した温度以上に上昇した際に前記二次電池と前記接続端子との間の回路が遮断され、前記二次電池の温度が予め設定した温度以上に上昇しかつ前記二次電池の電圧が予め設定した電圧以上である場合に前記放電用抵抗体への通電回路が形成されることを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−41393(P2008−41393A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213419(P2006−213419)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】