説明

電池パック

【課題】電磁波の影響を受け難く、充分な防水性能を有する電池パックを提供すること。
【解決手段】電池パック1は、電池2と、この電池2を特定方向に挟み込む一対のケース3、4と、特定方向と平行な軸周りの全周にわたり各ケース3、4にそれぞれ設定された溶着面と、電圧の印加を受けて発熱することにより前記各溶着面を溶融可能な発熱部材5とを備え、この発熱部材5は、溶着面同士の間に挟持された被挟持部を有し、この被挟持部は、前記軸周りの全周にわたる熱伝導が可能となるようにループ状に形成されているとともに、前記軸周りの少なくとも一部が電気的に遮断されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる一対のケース同士の間に電池が収納された電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱可塑性樹脂からなる一対のケースと、これらケース同士の間に収納された電池とを備えた電池パックが知られている。前記各ケースは、電池を挟むようにして互いの周縁部が溶着されている。この溶着の方法としては、通常は超音波溶着等の手法がとられるが、特に電池パックとして防水性が要求される場合には、超音波溶着では不充分な場合がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1のように、各ケースの接合面(周縁部)間に抵抗発熱体を挟み込み、この抵抗発熱体に電圧を印加させることに応じて発せられる熱により各ケースを溶融して溶着させることが行われている。
【0004】
前記特許文献1の溶着方法では、2本の抵抗発熱体を前記溶着面に沿うように組み合わせて使用しており、これら抵抗発熱体は、前記溶接面の全周で樹脂の溶融が行われるように、それぞれの両端が隣接又は接触して配置されている。
【特許文献1】特許第3053786号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の溶着方法では、抵抗発熱体を溶着面の全周に沿ったループ状とし、この抵抗発熱体に電圧を印加することにより、溶着面全周の溶融を可能としている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の溶着方法を用いて製造された電池パックを、電磁波を発生する電子機器(例えば、携帯無線端末等)に利用した場合、当該電子機器の使用時に前記抵抗発熱体が発熱してしまうことがある。つまり、電子機器からの電磁波による電磁誘導効果により、ループ状の抵抗発熱体に電流が流れてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電磁波の影響を受け難く、充分な防水性能を有する電池パックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、電池と、この電池を特定方向に挟み込む一対のケースと、前記特定方向と平行な軸周りの全周にわたり前記各ケースにそれぞれ設定された溶着面と、電圧の印加を受けて発熱することにより前記各溶着面を溶融可能な発熱部材とを備え、前記溶着面同士が溶着された各ケース間に前記電池が収納された電池パックであって、前記発熱部材は、前記軸周りの全周にわたり前記溶着面同士の間に挟持された被挟持部を有し、この被挟持部は、前記全周の一部が非連続となるように前記溶着面に沿って配置された導電性を有する線材と、前記非連続部分を補間するように前記線材に接続された絶縁性の絶縁材とを備えているとともに、この絶縁材を介して前記線材において生じた熱が前記軸周りの全周にわたり伝達可能とされていることを特徴とする電池パックである。
【0009】
本発明によれば、絶縁材を介して線材において生じた熱を前記軸周りの全周にわたり伝達可能とされているため、前記軸周りの全周にわたり各ケースの溶着面を溶融させて、これら溶着面同士を前記軸周りに途切れることなく確実に溶着することができる。したがって、充分な防水性能を得ることができる。
【0010】
さらに、前記被挟持部の線材は、前記全周の一部が非連続となるように溶着面に沿って配置されている、つまり、電気的には前記軸周りでループを形成していないため、周囲に電磁波が生じている環境下においても、被挟持部に誘導起電力が生じることはない。したがって、電磁波により受ける影響を少なくすることができる。
【0011】
なお、「絶縁性」とは、全く導電性を有しないという意味だけでなく、電磁波が生じている環境下において被挟持部に生じる誘導起電力が僅かであり、ほとんど発熱しない範囲内であれば、導電性を有する場合も含む趣旨である。
【0012】
前記電池パックにおいて、前記発熱部材は、前記線材のうち非連続部分を挟んだそれぞれの部分から前記各溶着面の外側に延びているとともに外部の電極を当接可能な被当接部をさらに有していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、被当接部が各溶着面の外側、つまり、電池の収納スペース(防水を要するスペース)の外側に延びているため、各溶着面の内側で電極を当接させる場合と比べて防水性能を阻害する要因を減らすことができる。
【0014】
つまり、各溶着面の内側で電極を当接させるためには、当該電極を挿通させるための孔をケースに形成することが必要となるが、この孔を塞がないと溶着面の内側における防水性能を得ることができないのに対し、前記構成のように各溶着面の外側で電極を当接させる場合には、少なくとも1つの被当接部については各溶着面の内側の範囲に孔を設けることが不要となり、防水性能を阻害する要因を減らすことができる。
【0015】
前記電池パックにおいて、前記被挟持部は、前記線材を2本備え、これら線材は、予め設定された2箇所の接続部同士を接続することによりループ状とすることが可能とされ、前記絶縁材は、少なくとも1箇所における接続部同士の間に介在していることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、2本の線材と絶縁材とをループ状に組み合わせることにより、線材及び絶縁材の双方に熱を伝達させて前記軸周りの全周にわたる熱伝導を実現しながら、前記軸周りの少なくとも一部である絶縁材の部分が線材の非連続部分を構成することになる。
【0017】
前記電池パックにおいて、前記絶縁材は、前記線材のうち非連続部分を挟んだ少なくとも一方の部分の外周面を被覆するものであることが好ましい。
【0018】
具体的に、前記絶縁材を、前記線材のうち非連続部分を挟んだ少なくとも一方の部分の外周面に巻き付けられたテープとすることができる。
【0019】
このようにすれば、線材にテープを巻き付けるだけの作業で絶縁材を形成することができる。
【0020】
また、前記絶縁材を、前記線材のうち非連続部分を挟んだ少なくとも一方の部分の外周面に形成された被膜とすることもできる。
【0021】
このようにすれば、被膜が形成された部分と他の部分とを物理的に接触させるだけの作業で、前記軸周りの全周にわたる熱伝導及び、前記軸周りの一部における絶縁の双方を実現することができる。
【0022】
なお、前記のように被膜を形成する場合、前記発熱部材のうち前記被挟持部の全範囲に被膜を形成すれば、前記被挟持部の全体における各線材の短絡を防止することができる。
【0023】
さらに、前記絶縁材を、前記線材のうち非連続部分を挟んだそれぞれの部分同士の間に設けられたものとすることもできる。
【0024】
このようにすれば、シート状の部材を線材同士の間に設けることによって当該線材同士の絶縁を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、電磁波による影響を少なくすることができるとともに充分な防水性能を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る電池パックを示す斜視図である。図2は、図1の電池パックの分解斜視図である。
【0028】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る電池パック1は、周囲に電磁波を発生する機能と周囲の電磁波を受ける機能とを有する無線機等に用いられるものである。
【0029】
電池パック1は、電池2と、電池2を挟み込む一対の第一ケース3及び第二ケース4と、これら第一ケース3と第二ケース4との間に設けられた発熱部材5とを備え、前記各ケース3、4が互いに溶着されたものである。なお、以下の説明では各ケース3、4が電池2を挟み込む方向(特定方向)を仮に上下方向として説明する。
【0030】
図3は、第一ケース3の平面図である。図4は、図3のIV部拡大図である。
【0031】
図1〜図4を参照して、第一ケース3は、熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂:融点約250℃)からなり、上方へ開く有底容器状の部材である。具体的に、第一ケース3は、平面視で略長方形の底板6と、この底板6の周縁部に立設された4枚の側板7、側板8、側板9及び側板10と、これら側板7〜10のうち前記底板6の長辺に沿った側板8と側板10との間で前記底板6上に立設された仕切り板11とを備え、この仕切り板11及び前記側板8〜10に取り囲まれたスペースに電池2を収納するようになっている。
【0032】
前記側板7〜10のうち底板6の一方の短辺に沿った側板7は、略中央部分が切り欠かれている。一方、反対の短辺に沿った側板9及び前記側板8、10は、それぞれの内側が低い段差部9a、段差部8a、及び段差部10aとされている。
【0033】
仕切り板11は、前記段差部8a〜10aと同じ高さに形成され、これら段差部8a〜10a上面及び仕切り板11の上面には、上方へ開く溝部12が形成されている。つまり、溝部12は、上下方向と平行する軸周りの全周にわたり、段差部8a〜10a及び仕切り板11の上面に跨るようにして形成されている。
【0034】
また、図4に詳しく示すように、仕切り板11には、前記側板8に対する付け根部分において前記溝部12を側板7側(電池2の収納スペースの外側)へ拡張するように切り欠かれた切欠部14が形成されている。一方、図3に示すように、前記段差部9aと段差部10aとの間の角部には、溝部12を側板8及び仕切り板11側(電池2の収納スペースの内側)へ拡張するように切り欠かれた切欠部15が形成されている。
【0035】
図5は、図1の発熱部材5を示す平面図である。
【0036】
図3〜図5を参照して、発熱部材5は、前記溝部12に挿入可能な直径寸法を有する2本のワイヤー16及びワイヤー17と、このワイヤー17の一部に設けられた絶縁材18(図4参照)とを備えている。
【0037】
ワイヤー16、17は、それぞれ平面視で概ねL字型に折り曲げられたステンレス製の線材であり、それぞれ略同一の断面積を有している。これらワイヤー16、17は、互いの長辺16a、17a同士、短辺16b、17b同士を向かい合わせるようにして、前記溝部12に対応する長方形に組み合わせることができるようになっている(図3参照)。これら各長辺16a、17a同士、及び短辺16b、17b同士の長さはそれぞれ略同一とされている。
【0038】
ワイヤー16の長辺16aの自由端は、短辺16bの自由端側へ折り返された折り返し部16cとされている。一方、ワイヤー17の短辺17bの自由端は、長辺17aの自由端側へ折り返された折り返し部17cとされている。これら折り返し部16c、17cは前記第一ケース3の切欠部15に挿入されるようになっている(図3参照)。
【0039】
また、ワイヤー16の短辺16bの自由端は、当該短辺16bから長辺16aとは反対向きに90°に屈曲された第一屈曲部16dと、この第一屈曲部16dから短辺16bと平行となるように90°に屈曲された第二屈曲部16eとを有している。一方、ワイヤー17の長辺17aの自由端は、当該長辺17aから短辺17bと同じ向きに90°に屈曲された屈曲部17dとされている。
【0040】
そして、図3に示すように、前記ワイヤー16、17を第一ケース3の溝部12に挿入した状態においては、折り返し部16cと17cとが接続されるとともに(以下、この接続部分を第一接続部Aと称す)、図4に示すように、第一屈曲部16dがワイヤー17の長辺17aの側面に対し絶縁材18を介して接続した状態となる(以下、この接続部分を第二接続部Bと称す)。
【0041】
つまり、第一接続部Aにおいてワイヤー16、17が物理的及び電気的に接続される一方、第二接続部Bにおいては、ワイヤー16、17が絶縁材18を介して電気的に絶縁された状態で接続されることになる。
【0042】
図6は、図4のワイヤーと絶縁材との関係を示す断面図であり、(a)は絶縁材18としてテープを用いたもの、(b)は絶縁材18としてコーティングした被膜を利用したもの、(c)は絶縁材18としてシートを利用したものをそれぞれ示している。
【0043】
図6の(a)に示すように、絶縁性を有する合成樹脂(例えば、ポリイミド)からなるテープ18aを絶縁材18として利用することができる。つまり、ワイヤー17の外周にテープ18aを巻き付けて貼着することによりワイヤー16との間の絶縁を図ることができる。
【0044】
また、図6の(b)に示すように、ワイヤー17の外周に施された絶縁性材料のコーティング被膜18bを絶縁材18として利用することもできる。
【0045】
さらに、図6の(c)に示すように、ワイヤー16とワイヤー17との間に絶縁性を有する合成樹脂からなるシート18cを絶縁材18として利用することもできる。
【0046】
なお、前記図6(a)〜(c)に示す何れの場合においても、絶縁材18としてポリイミド(融点なし、短時間の使用限界温度(炭化劣化温度):480℃、連続使用温度280℃)を用いた場合には、当該絶縁材18の厚み寸法(各ワイヤー16、17間の隙間寸法)を0.5mm以下とすることが好ましい。
【0047】
再び図4を参照して、ワイヤー16の第二屈曲部16eとワイヤー17の屈曲部17dとは、水平方向(第一ケース3の底板6に沿った方向)に離間して平行に配置されることになる。詳しくは後述するが、第二屈曲部16e及び屈曲部17dに一本の電極D1(図1参照)が、前記折り返し部16c、17cに一本の電極D2(図1参照)がそれぞれ当接されることにより、ワイヤー16、17に電圧が印加される。つまり、前記接続部分B(絶縁材18)を挟んだ各ワイヤー16、17の両側に正負両極の電極D1、D2を当接させることにより、当該各ワイヤー16、17の全体に電圧が印加される。
【0048】
つまり、本実施形態では、前記第二屈曲部16e、屈曲部17d及び折り返し部16c、17cのうちの電極D1、D2に当接する部分が被当接部を構成し、ワイヤー16、17のうち前記第一ケース3の溝部12の底面と後述する第二ケース4のリブ20の下面との間に挟持される部分が被挟持部を構成している。
【0049】
次に、図2、図4及び図7を参照して第二ケース4について説明する。図7は、図4のVII−VII線断面図である。
【0050】
第二ケース4は、熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂:融点約250℃)からなり、下方へ開く有底容器状の部材である。具体的に、第二ケース4は、前記第一ケース3に対応した平面視で略長方形の天板19と、この天板19の周縁部に立設されたリブ20とを備えている。
【0051】
天板19は、前記第一ケース3の側板7〜10の内側に入り込むことができる大きさとされている。この天板19には、前記各ワイヤー16、17の第二屈曲部16e及び屈曲部17dの上部に第一トンネル21が、折り返し部16c、17cの上部に第二トンネル22がそれぞれ設けられている。
【0052】
各トンネル21、22は、それぞれ前記天板19から上方へ突出する突出部23と、この突出部23の上面から天板19の下面までを貫通する貫通孔24(図8参照)とを備えている。これら貫通孔24を通して前記各電極D1、D2がそれぞれ挿入される。なお、図示は省略するが、突出部23は、電池パック1の完成前の段階で潰されて、完成後の電池パックでは前記貫通孔24が塞がれた状態となっている。
【0053】
リブ20は、上下方向の軸回りの全周にわたり前記第一ケース3の溝部12(切欠部14及び切欠部15の形成された部分も含む)内に挿入可能な平面形状とされている。つまり、前記接続部A及び接続部B(図4参照)は、切欠部14及び15内でリブ20の下面と溝部12の底面との間に配置されている。そして、リブ20の下面(溶着面)は、溝部12の底面(溶着面)に対して溶着されている。
【0054】
以下、図8を参照して、電池パック1の製造方法について説明する。図8は、電池パック1の製造途中の段階における図4のVIII−VIII線断面図に相当する図である。
【0055】
まず、電池2を各ケース3、4の間に配置する。次いで、各ワイヤー16、17を溝部12内に挿入するとともに、この溝部12内に第二ケース4のリブ20を挿入して、図8に示すように、リブ20の下面を各ワイヤー16、17上に載置する。
【0056】
次に、前記各トンネル21、22の貫通孔24をそれぞれ通して電極D1、D2を挿入し、電極D1の先端面を第二屈曲部16e及び屈曲部17dに、電極D2の先端面を各折り返し部16c、17cに、それぞれ当接させる。なお、各電極D1、D2の挿入に応じてワイヤー16、17が下方へ逃げないように、第一ケース3の底板6には、台座25が立設されている。
【0057】
この状態で、例えば、電極D1を正極、電極D2を負極として電圧を印加することにより、各ワイヤー16、17がそれのもつ電気抵抗に応じて発熱し、当該各ワイヤー16、17に当接している両ケース3、4(溝部12の底面及びリブ20の先端面)の溶融が開始する。
【0058】
前記電極D1、D2に供給する電力は、各ケース3、4の材質に応じて決定される。具体的に、各ケース3、4をポリカーボネート樹脂により構成した本実施形態では、各ワイヤー16、17がポリカーボネート樹脂の融点(約250℃)より若干高い260〜270℃となるように電力を設定する。
【0059】
ここで、本実施形態では、各ワイヤー16、17が略同一の断面積を有しているとともに、これらワイヤー16、17の長辺16a、17a同士、及び短辺16b、17b同士の長さがそれぞれ略同一とされている。つまり、各電極D1、D2間を結ぶ2つの経路長及びその断面積が略同一とされているため、当該各電極D1、D2間の抵抗発熱量がワイヤー16、17のそれぞれについて略同一となる。したがって、各ケース3、4の周方向における溶着ムラを抑制することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、短時間の使用限界温度が480℃であるポリイミド樹脂を絶縁材18として利用しているため、この使用限界温度を維持することができる時間以内の発熱時間となるように前記電圧の電力の供給時間が設定されている。これにより、前記260〜270℃の温度範囲においてポリイミド樹脂の炭化劣化が防止されている。
【0061】
次に、前記溶融の開始に合わせて、第二ケース4を第一ケース3側へ押圧する。この押圧により、溶融された樹脂によって溝部12内が満たされる。そして、所定の押圧位置(本実施形態では0.35mmだけ押圧した位置)で押圧を停止するとともに電圧の印加を停止することにより、前記溶融樹脂が硬化して両ケース3、4が互いに溶着される。
【0062】
次いで、第一トンネル21及び第二トンネル22に対し、それぞれ所定の超音波ホーンを上から近接させて突出部23を潰すことにより貫通孔24を閉鎖する。本実施形態では、平面視において溝部12の内側位置に第二トンネル22の貫通孔24が形成されているため、当該貫通孔24の閉鎖しなければ電池2の防水が実現されない。反対に、本実施形態では、平面視において第一トンネル21の貫通孔24が溝部12の外側に配置されているため、当該第一トンネル21の貫通孔24を閉鎖させなくても電池2の防水性に影響はない。
【0063】
以上説明したように、前記実施形態によれば、絶縁材18を介してワイヤー16、17において生じた熱を上下方向の軸回りの全周にわたり伝達可能とされているため、前記軸周りの全周にわたり各ケースの溶着面(溝部12の底面及びリブ20の下面)を溶融させて、これら溶着面同士を軸回りに途切れることなく確実に溶着することができる。したがって、充分な防水性能を得ることができる。
【0064】
さらに、前記ワイヤー16、17は、前記全周の一部が絶縁材18によって非連続とされている、つまり、電気的には前記軸周りでループを形成していないため、周囲に電磁波が生じている環境下においても、誘導起電力が生じることはない。したがって、電磁波により受ける影響を少なくすることができる。
【0065】
前記実施形態のように、電極D1と当接する第二屈曲部16e、屈曲部17dが溝部12の外側、つまり、電池の収納スペース(各側板8〜10及び仕切り板11で囲まれたスペース)の外側に延びている構成とすれば、溝部12の内側で電極を当接させる場合(例えば、折り返し部16c、17c)と比べて防水性能の阻害要因を減らすことができる。
【0066】
つまり、溝部12の内側で電極D1を当接させるためには、当該電極D1を挿通させるための孔をケース3又は4に形成することが必要となるが、この孔を塞がないと溝部12の内側における防水性能を得ることができないのに対し、前記実施形態のように溝部12の外側で電極D1を当接させる場合には、少なくとも第二屈曲部16e、屈曲部17dに電極D1を当接させるためには溝部12の内側の範囲に孔を設けることが不要となり、防水性能の阻害要因を減らすことができる。
【0067】
なお、前記実施形態では、第一トンネル21に貫通孔24を形成しているが、この貫通孔24はケース4の溝部12の外側の範囲に設けられているに過ぎず、塞いでも塞がなくても防水性能には影響しないものである。
【0068】
また、前記実施形態において第二屈曲部16e、屈曲部17dだけでなく折り返し部16c、17cについても溝部12の外側となるように構成すれば、さらに阻害要因を減らすことができる。
【0069】
前記実施形態のように、接続部Bにおいて、ワイヤー16、17の間に絶縁材18が介在した構成とすることにより、2本のワイヤー16、17をループ状に組み合わせることにより、各ワイヤー16、17及び絶縁材18の双方に熱を伝達させて軸回りの全周にわたる熱伝導を実現しながら、軸回りの少なくとも一部である絶縁材18によりワイヤー16、17を電気的に被接続とすることになる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係る電池パックを示す斜視図である。
【図2】図1の電池パックの分解斜視図である。
【図3】第一ケースの平面図である。
【図4】図3のIV部拡大図である。
【図5】図1の発熱部材を示す平面図である。
【図6】図4のワイヤーと絶縁材との関係を示す断面図であり、(a)は絶縁材としてテープを用いたもの、(b)は絶縁材としてコーティングした被膜を利用したもの、(c)は絶縁材としてシートを利用したものをそれぞれ示している。
【図7】図7は、図4のVII−VII線断面図である。
【図8】電池パック1の製造途中の段階における図4のVIII−VIII線断面図に相当する図である。
【符号の説明】
【0071】
A、B 接続部
D1、D2 電極
1 電池パック
2 電池
3、4 ケース
5 発熱部材
12 溝部
16、17 ワイヤー(発熱材)
18 絶縁材
18a テープ
18b コーティング被膜
18c シート
24 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、この電池を特定方向に挟み込む一対のケースと、前記特定方向と平行な軸周りの全周にわたり前記各ケースにそれぞれ設定された溶着面と、電圧の印加を受けて発熱することにより前記各溶着面を溶融可能な発熱部材とを備え、前記溶着面同士が溶着された各ケース間に前記電池が収納された電池パックであって、
前記発熱部材は、前記軸周りの全周にわたり前記溶着面同士の間に挟持された被挟持部を有し、この被挟持部は、前記全周の一部が非連続となるように前記溶着面に沿って配置された導電性を有する線材と、前記非連続部分を補間するように前記線材に接続された絶縁性の絶縁材とを備えているとともに、この絶縁材を介して前記線材において生じた熱が前記軸周りの全周にわたり伝達可能とされていることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記発熱部材は、前記線材のうち非連続部分を挟んだそれぞれの部分から前記各溶着面の外側に延びているとともに外部の電極を当接可能な被当接部をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記被挟持部は、前記線材を2本備え、これら線材は、予め設定された2箇所の接続部同士を接続することによりループ状とすることが可能とされ、前記絶縁材は、少なくとも1箇所における接続部同士の間に介在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記絶縁材は、前記線材のうち非連続部分を挟んだ少なくとも一方の部分の外周面を被覆するものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電池パック。
【請求項5】
前記絶縁材は、前記線材のうち非連続部分を挟んだ少なくとも一方の部分の外周面に巻き付けられたテープであることを特徴とする請求項4に記載の電池パック。
【請求項6】
前記絶縁材は、前記線材のうち非連続部分を挟んだ少なくとも一方の部分の外周面に形成された被膜であることを特徴とする請求項4に記載の電池パック。
【請求項7】
前記絶縁材は、前記線材のうち非連続部分を挟んだそれぞれの部分同士の間に設けられたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電池パック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−37973(P2009−37973A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203291(P2007−203291)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】