説明

電池ホルダー

【課題】 電源の瞬断現象を防ぐことができるだけでなく、乾電池が誤挿入されたとしても、乾電池の陰極板が陽極端子に接触することを未然に防止する。
【解決手段】 乾電池B1の陰極板3及び陽極キャップ4にそれぞれ接触する陰極端子10及び陽極端子20が、共に、圧縮コイルばねによって形成されている。乾電池装着状態では、陰極端子10及び陽極端子20を形成しているそれぞれの圧縮コイルばねが圧縮状態で陰極板3及び陽極キャップ4に弾接する。陽極端子20の配備箇所に、乾電池B1が陰陽逆装着されたときにその乾電池B1の陰極板3を受け止めて、陽極端子20が陰極板3に接触することを阻止するスペーサ30を設ける。スペーサ30はリブ31でなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモートコントローラ(以下「リモコン」という)や小型電気機器などの乾電池が駆動電源として用いられる機器に装備される電池ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電池ホルダーでは、乾電池の陰極板及び陽極キャップにそれぞれ接触する陰極端子及び陽極端子が備わっている。
【0003】
図8には従来の電池ホルダーに採用されていた陰陽極一体型の電極Aを側面図で示してある。この電極Aは、1本の線材の2箇所を正面視渦巻き形状に成形することによって陰極端子10と陽極端子20とを形成してある。そして、陰極端子10は、渦巻き部分が圧縮コイルばねとして形成された弾性電極とされているのに対し、陽極端子20は、渦巻き部分によって平坦な弾性を有しない面電極とされている。この電極Aによって直列接続された2本の乾電池(不図示)のうち、一方側の乾電池にあっては、その陰極板に圧縮コイルばねで形成された弾性電極としての陰極端子10が弾接し、他方側の乾電池の陽極キャップに、電極Aの面電極としての陽極端子20が接触する。
【0004】
一方、先行例として、電池の正極金属キャップ(上記陽極キャップに相当する)をコイルばねにより付勢して、衝撃に対して正極金属キャップとの接点を離れにくくすることが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、電池のプラス側の電極(上記陽極キャップに相当する)にりん青銅のリーフスプリングでなる電池端子を弾接させることによって、電池のプラス側の電極と電池端子との離間を防ぐことが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。さらに、電子機器内の乾電池ケースの両端に緩衝用のバネを設けることによって、乾電池ケースに加えられる衝撃を吸収させることも提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−69854号公報
【特許文献2】特開平7−50158号公報
【特許文献3】特開平8−162083公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8を参照して説明した電極Aが採用されている従来例としての電池ホルダーでは、乾電池の陽極キャップが平坦な弾性を有しない面電極としての陽極端子20に押し付けられているだけであることにより、衝撃が加えられたときに乾電池の陽極キャップが陽極端子20から瞬間的に離れて電源の瞬断現象を起こすおそれがあるという問題があった。
【0007】
また、誤挿入(逆挿入)により乾電池が陰陽逆装着されてしまい、乾電池の陰極板が上記陽極端子20に接触して回路がショートすることがあるという問題があった。
【0008】
上記した電源の瞬断現象を防ぐためには特許文献1〜3によって提案されている技術を有効活用することができるけれども、乾電池が誤挿入されると乾電池の陰極板と陽極端子20とが接触することに伴う問題は、上掲の特許文献1〜3によっては到底解決されるものではない。
【0009】
本発明は、以上の問題や状況に鑑みてなされたものであり、電源の瞬断現象を防ぐことができるだけでなく、乾電池が誤挿入されたとしても、乾電池の陰極板が陽極端子に接触することを未然に防止することができるようにして、誤挿入により乾電池の陰極板が陽極端子に接触して回路がショートするといった事態を防ぐことのできる電池ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電池ホルダーは、乾電池の陰極板及び陽極キャップにそれぞれ接触する陰極端子及び陽極端子を備え、それらの陰極端子及び陽極端子が共に圧縮コイルばねによって形成されている。そして、乾電池装着状態では、陰極端子及び陽極端子を形成しているそれぞれの上記圧縮コイルばねが圧縮状態で上記陰極板及び陽極キャップに弾接するように構成されていると共に、上記陽極端子の配備箇所に、乾電池が陰陽逆装着されたときにその乾電池の上記陰極板を受け止めることによって上記陽極端子がその陰極板に接触することを阻止するスペーサが設けられている。
【0011】
このように構成された電池ホルダーによると、乾電池の陰極板及び陽極キャップにそれぞれ接触する陰極端子及び陽極端子が共に圧縮コイルばねによって形成されていることにより、乾電池の陰陽極の向きが正しく挿入されているときには、その乾電池が、陰極板に弾接する圧縮コイルばねでなる陰極端子と、陽極キャップに弾接する圧縮コイルばねでなる陽極端子とにより挟まれ、かつ、その乾電池を介して陰極端子と陽極端子とが弾性的に押し合うようになる。そのため、落下などの衝撃が電池ホルダーを備えた機器に加わったとしても、乾電池の陰極板や陽極キャップが陰極端子や陽極端子に接触したまま追従変位して電源の瞬断現象が防止される。
【0012】
また、陽極端子の配備箇所に、乾電池の誤挿入によって乾電池が陰陽逆装着されたときにその乾電池の陰極板を受け止めることによって陽極端子がその陰極板に接触することを阻止するスペーサが設けられていることにより、乾電池の誤挿入時には、乾電池の陰極板に陽極端子が接触して回路がショートするといった事態が未然に防止されることになる。
【0013】
本発明では、上記スペーサが、圧縮コイルばねでなる上記陽極端子を挟む両側に、乾電池の陽極キャップを挿入可能な間隔を隔てて設けられたリブでなる、という構成を採用することが可能である。この構成であれば、特別な部品を追加することなく、乾電池の誤挿入時に、乾電池の陰極板に陽極端子が接触して他の乾電池の陰極板とショートするといった事態が防止される。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、電源の瞬断現象を防ぐことができるだけでなく、乾電池が誤挿入されたとしても、乾電池の陰極板が陽極端子に接触して回路がショートするといった事態を未然に防止することができる。そして、このことが、乾電池の無駄な消耗を防いだり、当該電池ホルダーを備える機器の回路が保護されるという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る電池ホルダーの使用状態の平面図である。
【図2】乾電池が誤挿入された状態での図1のII部に相当する部分を拡大した部分平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る電池ホルダーの使用状態の平面図である。
【図4】乾電池が誤挿入された状態での図3のIV部に相当する部分を拡大した部分平面図である。
【図5】陰陽極一体型の電極Aの側面図である。
【図6】電極Aの正面図である。
【図7】電池ホルダーに乾電池を収容する作業を容易にするための対策講じた事例の説明図である。
【図8】従来の電池ホルダーに採用されていた電極の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る電池ホルダー1の使用状態の平面図、図2は乾電池が誤挿入された状態での図1のII部に相当する部分を拡大した部分平面図である。この電池ホルダー1は、当該電池ホルダー1に収容させた2本の乾電池B1,B2を直列に接続する機能を有している。また、この電池ホルダー1は、リモコンやその他の電気機器などの乾電池が駆動電源として用いられる機器に装備されている。
【0017】
電池ホルダー1は、2本の乾電池B1,B2を横並びに収容するための収容空間を形成している枠部10と、個々の乾電池B1,B2の陰極板3及び陽極キャップ4にそれぞれ接触する陰極端子10及び陽極端子20を備えている。そして、これらの陰極端子10及び陽極端子20が共に圧縮コイルばねによって形成されている。
【0018】
図5は2本の上記乾電池B1,B2を直列に接続するために採用されている陰陽極一体型の電極Aを側面図、図6はその電極Aの正面図である。この電極Aは、1本の線材の2箇所を正面視渦巻き形状に成形することによって陰極端子10と陽極端子20とを形成してある。そして、陰極端子10と陽極端子20とは、渦巻き部分が圧縮コイルばねとして形成された弾性電極とされていると共に、陰極端子20を形成している圧縮コイルばねの軸長が陽極端子10を形成している圧縮コイルばねの軸長よりも長くなっている。
【0019】
図1のように、上記電極Aは枠部2の一端側に取り付けられていて、収容空間に横並びに収容された2本の乾電池B1,B2のうちの一方の乾電池B1の陽極キャップ4に陽極端子20が接触し、他方の乾電池B2の陰極板3に陰極端子10が接触している。
【0020】
これに対し、枠部2の他端側には、個別に製作された陰極端子20と陽極端子10とが横並びに組み付けられていて、これらの陰極端子20及び陽極端子10についても、共に線材を渦巻き形状に成形することによって形成された圧縮コイルばねが採用されている。これらの陰極端子20や陽極端子10は、図5及び図6を参照して説明した電極Aに備わっている陰極端子20や陽極端子10を個別に切り離したものに相当していて、個々の陰極端子20や陽極端子10が、図示していない配線基板などに形成されている電気回路に個別に接続されている。
【0021】
また、枠部2の一端側及び他端側の両方に、当該枠部2の壁面から内側に向けて突き出た一対のリブ31,31がそれぞれ設けられていて、これらのリブ31,31によってスペーサ30が形成されている。これらの各スペーサ30は、一方側の乾電池B1又は他方側の乾電池B2が誤挿入されてそれらが陰陽逆装着されたときに、誤挿入された乾電池の陰極板3を受け止めることによって陽極端子20がその陰極板3に接触することを阻止する作用を発揮する。したがって、図2のように、一対のリブ31,31の枠部2の壁面からの出幅Hは、圧縮コイルばねでなる陽極端子20の無負荷状態での軸長Lよりも長くなっている。また、リブ31,31の先端と陽極端子20の無負荷状態での先端との間隔Sは、乾電池の陽極キャップ4の端面からの高さよりも短くなっている。さらに、一対のリブ31,31の相互間隔寸法は、一方側の乾電池B1又は他方側の乾電池B2の陽極キャップ4の外周直径寸法よりも長くなっている。
【0022】
以上のように構成された電池ホルダーにおいて、2本の乾電池B1,B2の陰陽極が図1のように正しく収容空間に挿入されているときには、それぞれの乾電池B1,B2の陰極板3,3が圧縮コイルばねでなる陰極端子10,10に接触し、かつ、それぞれの乾電池B1,B2の陽極キャップ4,4が圧縮コイルばねでなる陽極端子20,20に接触して、圧縮コイルばねでなる陰極端子10と、圧縮コイルばねでなる陽極端子20とにより挟まれ、しかも、それぞれの乾電池B1,B2を介して、各乾電池B1,B2に対応している陰極端子10と陽極端子20とが矢印a,bのように弾性的に押し合う。そのため、当該電池ホルダーを備えた機器などが落下したり他の原因によって機器に衝撃が加わったときには、それぞれの乾電池B1,B2の陰極板3や陽極キャップ4が、その相手方である陰極端子10や陽極端子20に接触したまま追従変位して電源の瞬断現象が防止される。なお、2本の乾電池B1,B2の陰陽極が図1のように正しく収容空間に挿入されているときには、各乾電池B1,B2の陽極キャップ4が一対のリブ31,31の相互間に挿入されていて、しかも、陽極キャップ4が設けられている側の端面が一対のリブ31,31によって受け止められている。
【0023】
図2は一方側の乾電池B1が誤挿入されてその乾電池が陰陽逆装着されている状態を示している。この状態では、一方側の乾電池B1の平坦な陰極板3が一対のリブ31,31によって受け止められ、しかも、一対のリブ31,31の枠部2の壁面からの出幅Hが、圧縮コイルばねでなる陽極端子20の無負荷状態での軸長Lよりも長くなっていることにより、陽極端子20と乾電池B1の陰極板3との相互間には隙間Sが形成される。その結果、陽極端子20に乾電池B1の陰極板3が接触して回路がショートするといった事態が起こり得なくなる。他方の乾電池B2が誤挿入されてその乾電池B2が陰陽逆装着された場合も同様である。
【0024】
なお、図1には無負荷状態での陰極端子10や陽極端子20の形状を仮想線で示した。
【0025】
図3は本発明の他の実施形態に係る電池ホルダー1の使用状態の平面図、図4は乾電池が誤挿入された状態での図3のIV部に相当する部分を拡大した部分平面図である。この電池ホルダー1では、スペーサ30の構成や、陰極端子10や陽極端子20の弾性の大きさが、図1及び図2を参照して説明した電池ホルダー1とは相違している。その他の構成は図1及び図2を参照して説明した電池ホルダー1と同様であるので、同一又は相応する部分に同一の符号を付すことによって説明が重複することを回避することとする。
【0026】
図3及び図4に示した他の実施形態に係る電池ホルダー1において、スペーサ30は、枠部2の壁面から内側に向けて突き出た弾性を有する傾斜した一対のリブ32,32によって形成されていて、これらの一対のリブ32,32が押圧荷重を受けて撓み変形するようになっている。また、リブ32,32を撓み変形させるのに要する押圧荷重の大きさは、圧縮コイルばねでなる陰極端子10や陽極端子20をそれらの弾性に抗して軸方向に圧縮するのに要する押圧荷重よりも大きく定められている。さらに、圧縮コイルばねでなる陰極端子10をその弾性に抗して軸方向に圧縮するのに要する押圧荷重の大きさが、圧縮コイルばねでなる陽極端子20をその弾性に抗して軸方向に圧縮するのに要する押圧荷重の大きさよりも小さく定められている。
【0027】
この実施形態によっても、2本の乾電池B1,B2の陰陽極が図2のように正しく収容空間に挿入されているときには、それぞれの乾電池B1,B2の陰極板3,3が圧縮コイルばねでなる陰極端子10,10に接触し、かつ、それぞれの乾電池B1,B2の陽極キャップ4,4が圧縮コイルばねでなる陽極端子20,20に接触して、圧縮コイルばねでなる陰極端子10と、圧縮コイルばねでなる陽極端子20とにより挟まれ、しかも、それぞれの乾電池B1,B2を介して、各乾電池B1,B2に対応している陰極端子10と陽極端子20とが矢印a,bのように弾性的に押し合う。そのため、当該電池ホルダーを備えた機器などが落下したり他の原因によって機器に衝撃が加わったときには、それぞれの乾電池B1,B2の陰極板3や陽極キャップ4が、その相手方である陰極端子10や陽極端子20に接触したまま追従変位して電源の瞬断現象が防止される。
【0028】
図4は一方側の乾電池B1が誤挿入されてその乾電池が陰陽逆装着されている状態を示している。この状態では、一方側の乾電池B1の平坦な陰極板3が一対のリブ32,32によって受け止められ、しかも、一対のリブ32,32の枠部2の壁面からの出幅Hが、圧縮コイルばねでなる陽極端子20の無負荷状態での軸長Lよりも長くなっていることにより、陽極端子20と乾電池B1の陰極板3との相互間に隙間Sが形成されて、陽極端子20に乾電池B1の陰極板3が接触して回路がショートするといった事態が起こり得なくなる。他方の乾電池B2が誤挿入されてその乾電池B2が陰陽逆装着された場合も同様である。
【0029】
なお、図3には無負荷状態での陰極端子10や陽極端子20の形状を仮想線で示した。
【0030】
図7は電池ホルダーに乾電池を収容する作業を容易にするための対策を、他の実施形態として説明した図3又は図4のリブ32に講じた事例を示している。この事例では、リブ32に傾斜した呼込みガイド面33を具備させておき、その呼込みガイド面33を図示のように滑らせて乾電池B1(又は乾電池B2)を収容空間に嵌め込むことができるように構成してある。矢印Cは収容空間に嵌め込むときに乾電池B1を押し下げる方向を示している。この対策を講じておくと、乾電池B1(又は乾電池B2)を収容空間に嵌め込むときに、呼込みガイド面33がその乾電池B1を収容空間に案内するので嵌込み作業を容易に行うことができるだけでなく、リブ32が押圧荷重を受けて撓み変形するために嵌込み作業をいっそう容易に行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0031】
3 乾電池の陰極板
4 乾電池の陽極キャップ
10 陰極端子
20 陽極端子
30 スペーサ
31,32 リブ
B1,B2 乾電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾電池の陰極板及び陽極キャップにそれぞれ接触する陰極端子及び陽極端子を備え、それらの陰極端子及び陽極端子が共に圧縮コイルばねによって形成されている電池ホルダーにおいて、
乾電池装着状態では、陰極端子及び陽極端子を形成しているそれぞれの上記圧縮コイルばねが圧縮状態で上記陰極板及び陽極キャップに弾接するように構成されていると共に、上記陽極端子の配備箇所に、乾電池が陰陽逆装着されたときにその乾電池の上記陰極板を受け止めることによって上記陽極端子がその陰極板に接触することを阻止するスペーサが設けられていることを特徴とする電池ホルダー。
【請求項2】
上記スペーサが、圧縮コイルばねでなる上記陽極端子を挟む両側に、乾電池の陽極キャップを挿入可能な間隔を隔てて設けられたリブでなる請求項1に記載した電池ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−54316(P2011−54316A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200226(P2009−200226)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】