説明

電池ユニット

【課題】電池の液漏れに起因した回路基板の短絡等の虞が少なく、さらに電池から漏れ出た電解液で周囲を汚染してしまう虞が少ない電池ユニットを提供する。
【解決手段】本発明に係る電池ユニット1は、電池ブロック20と、電池ブロック20の下方に設けられた回路基板40と、電池ブロック20と回路基板40との間に設けられ、電池ブロック20の電池21から漏れ出た電解液を受ける受け金具30と、受け金具30の中に設けられた吸収シート51と、受け金具30の中に設けられ、吸収シート51に接しない位置に電池ブロック20を支持する台座52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池と回路基板とを備える電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に電池は、例えば過放電状態になると反応ガスで内部の圧力が上昇し、内部の圧力が一定圧力を超えたときに安全弁が開いて内部のガスが放出される。このときに内部のガスと一緒に電解液が安全弁から漏れ出てしまう場合がある。これがいわゆる液漏れと呼ばれる現象である。そして電池と回路基板とを備える電池ユニットにおいては、液漏れによって電池から漏れ出た電解液が回路基板に接すると、いわゆるエレクトロケミカルマイグレーション(electrochemical migration)によって回路基板に短絡等が生じ、それによって故障や発熱、発火等が生ずる虞がある。
【0003】
この場合、例えば電池の下方となる位置を避けて回路基板を配置すれば、液漏れによって電池から漏れ出た電解液が回路基板に接することを回避できる場合が多い。しかし電池の下方となる位置を避けて回路基板を配置するとなると、それによって電池ユニット内部のレイアウトの自由度が大幅に制限されてしまうことになり、電池ユニットの小型化の要請に充分に対応できない虞が生ずる。
【0004】
このような課題の解決を目的とした従来技術としては、例えば電池収容部の壁に孔を形成し、電池から漏れ出た電解液を、その孔を介して排出口へ導いて外部へ排出する構造が公知である(例えば特許文献1を参照)。当該従来技術によれば、液漏れによって電池から漏れ出た電解液は、回路基板に接しない経路で外部へ排出されるので、電池の液漏れに起因した回路基板の短絡等が生ずる虞を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−260606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の従来技術は、液漏れによって電池から漏れ出た電解液を排出口から外部へ排出するだけである。つまり上記の従来技術は、液漏れによって電池から漏れ出た電解液が外部へ垂れ流しになってしまうため、電池ユニット等の周囲を電解液で汚染してしまう虞が生ずる。
【0007】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、電池の液漏れに起因した回路基板の短絡等の虞が少なく、さらに電池から漏れ出た電解液で周囲を汚染してしまう虞が少ない電池ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、電池と、前記電池の下方に設けられた回路基板と、前記電池と前記回路基板との間に設けられ、前記電池から漏れ出た電解液を受ける電解液受け部と、前記電解液受け部の中に設けられた吸収材と、前記電解液受け部の中に設けられ、前記吸収材に接しない位置に前記電池を支持する電池支持部材と、を備える電池ユニットである。
【0009】
液漏れによって電池から漏れ出た電解液は、電池と回路基板との間に設けられた電解液受け部に受け止められ、その電解液受け部の中に設けられた吸収材に吸収されて保持される。それによって電池から漏れ出た電解液が回路基板に接してエレクトロケミカルマイグレーションに起因した短絡等が生ずる虞を低減することができる。また電解液受け部の中に設けられた電池支持部材によって、吸収材に接しない位置に電池が支持されるので、吸収材に吸収された電解液で電池に短絡が生ずる虞を低減することができる。そして電池から電解液受け部へ漏れ出た電解液は、吸収材に吸収され、吸収材で保持されるので、少なくとも吸収材で保持可能な限界量を超えない限り、電池ユニットの外側へ漏れ出ることはない。それによって電池から漏れ出た電解液が周囲を汚染してしまう虞を低減することができる。
【0010】
これにより本発明の第1の態様によれば、電池の液漏れに起因した回路基板の短絡等の虞が少なく、さらに電池から漏れ出た電解液で周囲を汚染してしまう虞が少ない電池ユニットを提供することができるという作用効果が得られる。
【0011】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記電解液受け部は、電解液が溢れ出る前に所定の経路で電解液を外側へ流出させる電解液流出路が形成されている、ことを特徴とする電池ユニットである。
【0012】
このような特徴によれば、例えば想定を越える量の電解液が電池から漏れ出てしまった場合であっても、その電解液は、電解液受け部から溢れ出る前に、所定の経路で電解液受け部の外側へ流出する。つまり万一、電解液受け部から電解液が流出する事態になった場合でも、その電解液の流出は所定の経路に限定される。
【0013】
したがって例えば、電解液受け部から電解液が流出する所定の経路に対応する部分に切り欠きを設ける等、回路基板の形状を工夫して、電解液受け部から電解液が流出する所定の経路を避けて回路基板を設ければよい。それによって電解液受け部から流出する電解液が回路基板に接することを回避できるので、エレクトロケミカルマイグレーションに起因した短絡等が生ずる虞を低減することができる。また電解液受け部から電解液が流出する所定の経路を避けて回路基板を配置することができない場合であっても、例えば電解液受け部から電解液が流出する所定の経路に対応する部分には電子部品を実装しない等の工夫によって、エレクトロケミカルマイグレーションに起因した短絡等が生ずる虞を低減することができる。
【0014】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第2の態様において、前記電解液流出路は、前記電池の下端より低い位置に形成されている、ことを特徴とする電池ユニットである。
このような特徴によれば、例えば想定を越える量の電解液が電池から漏れ出てしまった場合に、電解液受け部の電解液は、電池に接する前に電解液受け部の外側へ流出することになる。それによって電解液受け部の電解液で電池に短絡が生ずる虞を低減することができる。
【0015】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第2の態様又は第3の態様において、前記電解液流出路は、前記吸収材の上端より高い位置に形成されている、ことを特徴とする電池ユニットである。
このような特徴によれば、少なくとも電池から漏れ出た電解液が吸収材で保持可能な量であるうちは、電解液受け部の外側へ電解液が流出しないので、電池から漏れ出た電解液で周囲を汚染してしまう虞をより低減することができる。
【0016】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記吸収材は、前記電解液受け部の内底面に貼着されている、ことを特徴とする電池ユニットである。
このような特徴によれば、電解液を含んだ吸収材が電解液受け部の内底面から浮き上がって電池に接することに起因して電池に短絡が生ずる虞を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電池の液漏れに起因した回路基板の短絡等の虞が少なく、さらに電池から漏れ出た電解液で周囲を汚染してしまう虞が少ない電池ユニットを提供することができるという作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電池ユニットの外観斜視図。
【図2】本発明に係る電池ユニットの要部斜視図。
【図3】本発明に係る電池ユニットの要部を分解して図示した分解斜視図。
【図4】本発明に係る電池ユニットの図2のI−I断面を図示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る電池ユニット1の外観斜視図である。図2は、本発明に係る電池ユニット1の要部斜視図である。図3は、本発明に係る電池ユニット1の要部を分解して図示した分解斜視図である。図4は、本発明に係る電池ユニット1の断面図であり、図2のI−I断面を図示したものである。
【0020】
本発明に係る電池ユニット1は、筐体10と、2つの電池ブロック20と、受け金具30と、回路基板40と、吸収シート51と、2つの台座52とを備える。
【0021】
筐体10は、金属材料で形成された上筐体11と下筐体12とで構成されている。上筐体11は、底面が開口した箱形状をなしており、ネジ止め用の貫通孔が側部に2つずつ形成されている。下筐体12は、底面部121、左側面部122及び右側面部123を含む。下筐体12の左側面部122及び右側面部123は、内側へ突設された舌片部124がそれぞれ形成されており、舌片部124には雌ネジ孔が形成されている。また下筐体12の左側面部122及び右側面部123は、上端寄りに2つの貫通孔125がそれぞれ形成されており、上筐体11のネジ止め用の貫通孔に対応する部分に2つの雌ネジ孔126がそれぞれ形成されている。4つのネジ13は、上筐体11のネジ止め用の貫通孔を通じて下筐体12の雌ネジ孔126にそれぞれ螺合しており、それによって上筐体11が下筐体12に固定されている。
【0022】
2つの電池ブロック20は、筐体10の中に設けられている。より具体的には2つの電池ブロック20は、後述する受け金具30に設置されている。電池ブロック20は、6つの電池21、連結テープ22、2つの電極カバー23を含む。電池21は、例えば公知のニッケル水素二次電池、ニッケル・カドミウム二次電池等である。6つの電池21は、図示の如く電極の向きを互い違いにして2列3段に並べた状態で連結テープ22により連結され、電線(図示せず)で直列に接続されている。電極カバー23は、絶縁材料で形成されており、各電池21の電極を覆って電池間短絡を防止する。2つの電池ブロック20の左右の側面と上筐体11の内側面との間、2つの電池ブロック20の間には、クッション材25が設けられている。
【0023】
「電解液受け部」としての受け金具30は、2つの電池ブロック20と回路基板40との間に設けられており、電池ブロック20を構成する電池21から液漏れによって漏れ出た電解液を受ける部材である。受け金具30は、当該実施例では金属材料で形成されているが、特にこれに限定されるものではなく、どのような材料で形成してもよい。より具体的には受け金具30は、底面部31、前側面部32、左側面部33、右側面部34、後側面部35を含み、上面が開口された箱形状をなしている。受け金具30の左側面部33及び右側面部34は、2つの雌ネジ孔36がそれぞれ形成されている。4つのネジ14は、下筐体12の貫通孔125を通じて受け金具30の雌ネジ孔36にそれぞれ螺合しており、それによって受け金具30が下筐体12に固定されている。2つの電池ブロック20の前側面と受け金具30の前側面部32との間には、クッション材24が設けられている。また2つの電池ブロック20の後側面と受け金具30の後側面部35との間には、クッション材26が設けられている。
【0024】
受け金具30の前側面部32には、上端側を一部切り欠いて形成した切り欠き部321が設けられている。この「電解液流出路」としての切り欠き部321は、受け金具30から電解液が溢れ出る前に所定の経路で電解液を外側へ流出させるために設けられている。
【0025】
回路基板40は、2つの電池ブロック20の電池21の充放電制御回路等が実装されており、図示していない電線で2つの電池ブロック20に接続されている。回路基板40は、2つの電池ブロック20の下方に設けられている。より具体的には回路基板40は、回路基板40に形成された貫通孔を通じて下筐体12の舌片部124の雌ネジ孔に螺合するネジ42によって、下筐体12に固定されている。また回路基板40は、受け金具30の切り欠き部321に対応する部分に図示の如く切り欠き部41が形成されている。
【0026】
「吸収材」としての吸収シート51は、受け金具30の中に設けられており、電池21から液漏れによって漏れ出た電解液を吸収して保持する部材である。より具体的には吸収シート51は、例えば低密度発泡紙等の吸水性を有するシート状の部材であり、受け金具30の内底面(底面部31の上面)に設けられている。この吸収シート51は、受け金具30の内底面に貼着されているのが好ましい。これは本発明に必須の構成要素ではないが、このような構成とすることによって、電解液を含んだ吸収シート51が受け金具30の内底面から浮き上がって電池ブロック20の電池21に接することに起因して電池ブロック20の電池21に短絡が生ずる虞を低減することができる。
【0027】
「電池支持部材」としての2つの台座52は、受け金具30の中に設けられており、吸収シート51に接しない位置に2つの電池ブロック20を支持する部材である。より具体的には台座52は、一定の厚みを有する矩形板状の部材であり、例えば発泡スポンジ等で形成されている。
【0028】
このような構成の電池ユニット1は、液漏れによって電池ブロック20の電池21から漏れ出た電解液は、電池ブロック20の電池21と回路基板40との間に設けられた受け金具30に受け止められ、その受け金具30の中に設けられた吸収シート51に吸収されて保持される。それによって電池ブロック20の電池21から漏れ出た電解液が回路基板40に接してエレクトロケミカルマイグレーションに起因した短絡等が生ずる虞を低減することができる。また受け金具30の中に設けられた2つの台座52によって、吸収シート51に接しない位置に電池ブロック20が支持されるので、吸収シート51に吸収された電解液で電池ブロック20の電池21に短絡が生ずる虞を低減することができる。そして電池ブロック20の電池21からの受け金具30へ漏れ出た電解液は、吸収シート51に吸収され、吸収シート51で保持されるので、少なくとも吸収シート51で保持可能な限界量を超えない限り、電池ユニット1の外側へ漏れ出ることはない。それによって電池ブロック20の電池21から漏れ出た電解液が周囲を汚染してしまう虞を低減することができる。
【0029】
このようにして本発明によれば、電池ブロック20の電池21の液漏れに起因した回路基板40の短絡等の虞が少なく、さらに電池ブロック20の電池21から漏れ出た電解液で周囲を汚染してしまう虞が少ない電池ユニット1を提供することができる。
【0030】
また本発明に係る電池ユニット1において受け金具30は、上記説明した実施例のように、受け金具30から電解液が溢れ出る前に所定の経路で電解液を外側へ流出させる切り欠き部321を設けるのが好ましい。これは本発明に必須の構成要素ではないが、このような構成とすることによって、例えば想定を越える量の電解液が電池ブロック20の電池21から漏れ出てしまった場合であっても、その電解液は、受け金具30から溢れ出る前に、切り欠き部321から受け金具30の外側へ流出することになる。つまり万一、受け金具30から電解液が流出する事態になった場合でも、その電解液の流出は所定の経路に限定される。
【0031】
そして上記説明した実施例のように、例えば回路基板40の所定位置(受け金具30から電解液が流出する所定の経路に対応する部分)に切り欠き部41を形成すれば、受け金具30の切り欠き部321から流出する電解液が回路基板40に接しないようにすることができる。つまり回路基板40の形状を工夫して、受け金具30の切り欠き部321から電解液が流出する所定の経路を避けて回路基板40を設ける。それによって受け金具30から流出する電解液が回路基板40に接することを回避できるので、エレクトロケミカルマイグレーションに起因した短絡等が生ずる虞を低減することができる。また受け金具30から電解液が流出する所定の経路を避けて回路基板40を配置することができない場合であっても、例えば受け金具30から電解液が流出する所定の経路に対応する部分には電子部品を実装しない等、回路基板40に実装する電子部品のレイアウト等を工夫することによって、エレクトロケミカルマイグレーションに起因した短絡等が生ずる虞を低減することができる。
【0032】
また受け金具30の切り欠き部321は、2つの電池ブロック20の下端より低い位置に形成されているのが好ましい。これは本発明に必須の構成要素ではないが、このような構成とすることによって、例えば想定を越える量の電解液が電池ブロック20の電池21から漏れ出てしまった場合に、受け金具30の電解液は、電池ブロック20の電池21に接する前に受け金具30の外側へ流出することになる。それによって受け金具30の電解液で電池ブロック20の電池21に短絡が生ずる虞を低減することができる。
【0033】
また受け金具30の切り欠き部321は、吸収シート51の上端より高い位置に形成されているのが好ましい。これは本発明に必須の構成要素ではないが、このような構成とすることによって、少なくとも電池ブロック20の電池21から漏れ出た電解液が吸収シート51で保持可能な量であるうちは、受け金具30の外側へ電解液が流出しないことになる。それによって電池ブロック20の電池21から漏れ出た電解液で周囲を汚染してしまう虞をより低減することができる。
【0034】
尚、本発明は、上記説明した実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であること言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 電池ユニット
10 筐体
20 電池ブロック
21 電池
30 受け金具
40 回路基板
51 吸収シート
52 台座
321 受け金具の切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
前記電池の下方に設けられた回路基板と、
前記電池と前記回路基板との間に設けられ、前記電池から漏れ出た電解液を受ける電解液受け部と、
前記電解液受け部の中に設けられた吸収材と、
前記電解液受け部の中に設けられ、前記吸収材に接しない位置に前記電池を支持する電池支持部材と、を備える電池ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電池ユニットにおいて、前記電解液受け部は、電解液が溢れ出る前に所定の経路で電解液を外側へ流出させる電解液流出路が形成されている、ことを特徴とする電池ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の電池ユニットにおいて、前記電解液流出路は、前記電池の下端より低い位置に形成されている、ことを特徴とする電池ユニット。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電池ユニットにおいて、前記電解液流出路は、前記吸収材の上端より高い位置に形成されている、ことを特徴とする電池ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電池ユニットにおいて、前記吸収材は、前記電解液受け部の内底面に貼着されている、ことを特徴とする電池ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−69646(P2013−69646A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209335(P2011−209335)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(510206213)FDKトワイセル株式会社 (36)
【Fターム(参考)】